(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、今般、セラミックプレートの温度を測定するにあたり、熱電対をセラミックプレートに埋設することを考えた。その場合、ウエハの均熱性が熱電対によって損なわれないようにする必要があった。
【0005】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、埋設された熱電対によってウエハ載置面の均熱性が損なわれることのないサセプターを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明のサセプターは、
円盤状のセラミックプレートと、
該セラミックプレートの中に前記セラミックプレートを構成する粒子と接触した状態で埋設され、互いに異なる組成の第1及び第2素線の先端同士を接合した測温部を有する熱電対と、
を備えたものである。
【0008】
このセラミックプレートでは、熱電対の測温部をセラミックプレート内の任意の位置に配置した状態で埋設すれば、その任意の位置の温度を容易に測定することができる。また、熱電対を内蔵しているが、セラミックプレートを構成する粒子と接触した状態で埋設されているため、熱電対とセラミックプレートを構成する粒子との間に空隙が存在する場合に比べて、ウエハ載置面の均熱性が高くなる。すなわち、埋設された熱電対によってウエハ載置面の均熱性が損なわれることがない。
【0009】
本発明のサセプターにおいて、前記第1及び第2素線は、耐熱温度が前記セラミックプレートの焼結温度以上であることが好ましい。こうすれば、セラミックプレートを焼結する前の成形体に熱電対を埋設したあとその成形体を焼結することができる。
【0010】
ここで、W−Re合金は、高融点金属(3000℃以上)であり、各種のセラミック(例えばAlN,Al
2O
3,MgOなど)の焼結温度以上の耐熱性を有するため、熱電対の素線の材質として有用である。また、WやW−Re合金は、各種のセラミックと熱膨張係数が近いため、セラミック原料粉と一体焼結したとしてもクラックが発生しにくい。こうしたことから、W−Re熱電対は熱電対の素線として使用するのに適している。また、PtやPt−Rh合金も、良好な耐熱性を有するため、熱電対の素線の材質として有用である。PtやPt−Rh合金を利用した熱電対としては、B熱電対、R熱電対、S熱電対が知られている。例えば、B熱電対を使用する場合、焼結温度が1450℃以下のセラミックを用いることが好ましい。AlNやAl
2O
3を1450℃以下で焼結するためには、AlN原料粉又はAl
2O
3原料粉にMgF
2の粉体を0.1〜3wt%添加すればよい。なお、PtやPt−Rh合金は、WやW−Re合金に比べて酸化雰囲気でも劣化しにくいという利点を有する。
【0011】
本発明のサセプターにおいて、前記熱電対は、素線のままの状態で埋設されていてもよいし、前記第1及び第2素線を互いに離間した状態で被覆する保護管を備えた状態で埋設されていてもよい。前者の場合には、セラミックプレートに占める熱電対の体積割合が小さいため、熱電対が均熱性に影響を及ぼすことはほとんどない。後者の場合には、第1及び第2素線が保護管で覆われているため、製造時や使用時にそれらが断線するおそれがない。保護管を備えた熱電対としては、例えばアルミナや窒化アルミニウムなどのセラミック製の保護管を第1及び第2素線に被せた熱電対のほか、シース熱電対なども含まれる。
【0012】
本発明のサセプターにおいて、前記熱電対は、前記セラミックプレートのうちウエハ載置面とは反対側の面の近い位置に形成されていてもよい、こうすれば、熱電対がウエハ載置面の均熱性へ及ぼす影響を小さくすることができる。
【0013】
本発明のサセプターにおいて、前記熱電対は、前記測温部が前記ウエハ載置面の近くになるように屈曲されていてもよい。こうすれば、熱電対によって測定された温度はウエハ温度とほとんど一致する。
【0014】
本発明のサセプターにおいて、前記熱電対は、前記測温部が前記セラミックプレートの外周側に配置されていてもよい。こうすれば、外周側の温度を測定するのに適したサセプターを提供することができる。
【0015】
本発明のサセプターにおいて、前記第1素線の末端に設けられた第1端子は前記第1素線と同じ材料からなり、前記第2素線の末端に設けられた第2端子は前記第2素線と同じ材料からなることが好ましい。第1端子と第1素線とが異なる材料からなる場合には、第1端子と第1素線との間にも起電力が生じるため、その起電力を補正する必要があるが、ここでは第1端子と第1素線とが同じ材料からなるため、そのような補正は不要である。第2端子と第2素線についても同様である。この場合、更に、第1端子に接続される導線は第1素線と同じ材料からなり、第2端子に接続される導線は第2素線と同じ材料からなることが好ましい。こうすれば、第1素線と第1端子と第1導線とがすべて同じ材料のため、各接続部分で起電力が生じることがない。第2素線と第2端子と第2導線についても同様である。なお、第1及び第2端子は、セラミックプレートに設けられた穴を介してセラミックプレートの外部に露出していてもよい。また、測温部がセラミックプレートの外周側に配置されるとき、第1及び第2端子は、セラミックプレートの中央側に配置されていてもよい。
【0016】
本発明のサセプターにおいて、前記セラミックプレートに取り付けられた中空のシャフトと、該シャフトのうち前記セラミックプレートと反対側に取り付けられた支持部材とを備え、前記シャフトの内部は不活性ガスでパージされていてもよい。こうすれば、熱電対に接続された導線がシャフト内で露出していたとしても、シャフト内は不活性ガスでパージされているため、酸化を防止することができる。例えば、熱電対の各素線や各端子にW−Re合金を使用する場合には、各端子に接続される導線にもW−Re合金を使用することが好ましいが、W−Re合金は酸化雰囲気で劣化しやすいため、シャフト内を不活性ガスでパージするのが好ましい。一方、熱電対の各素線や各端子にPtやPt−Rh合金を使用する場合には、各端子に接続される導線にもPtやPt−Rh合金を使用することが好ましいが、PtやPt−Rh合金は酸化雰囲気でも劣化しにくいため、シャフト内を不活性ガスでパージしなくても構わない(もちろん不活性ガスでパージしてもよい)。
【0017】
本発明のサセプターにおいて、前記熱電対は、前記セラミックプレートの中に放射線状に複数埋設されていてもよい。こうすれば、セラミックプレートの外周側の複数点を測温できるため、半導体製造プロセスでウエハの温度分布を調べることができる。
【0018】
本発明のサセプターの製法は、円盤状のセラミックプレートの中に該セラミックプレートを構成する粒子と接触した状態で熱電対を埋設したサセプターを製造する方法であって、
前記熱電対又は焼成したあとに前記熱電対になる熱電対前駆体を、セラミック成形体に埋設した状態でホットプレス焼成する工程
を含むもの、
又は、
前記熱電対又は焼成したあとに前記熱電対になる熱電対前駆体を、セラミック成形体とセラミック焼結体との間に挟み込んだ状態でホットプレス焼成する工程
を含むものである。
【0019】
本発明のサセプターの製法によれば、上述した本発明のサセプターを容易に作製することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の好適な実施形態を以下に図面を参照しながら説明する。
図1はサセプター10の縦断面図、
図2はサセプター10の主要構成を表す斜視図である。
【0022】
サセプター10は、半導体の製造工程で半導体ウエハを加熱するための台として使用するものであり、表面がウエハ載置面Sである円盤状のセラミックプレート20と、このセラミックプレート20のウエハ載置面Sとは反対側の面(裏面)に接合された中空状のシャフト40とを備えている。
【0023】
セラミックプレート20は、窒化アルミニウムやアルミナなどに代表されるセラミック材料からなる円盤状のプレートである。このセラミックプレート20には、内周側抵抗発熱体22と外周側抵抗発熱体24とが埋設されている。両発熱体22,24は、例えばタングステンや炭化タングステンを主成分とするコイルで構成されている。内周側抵抗発熱体22は、セラミックプレート20の中央付近に配設された正極端子22aから端を発し、一筆書きの要領でセラミックプレート20の中心を含む小円領域Z1のほぼ全域に配線されたあと正極端子22aの隣に設けられた負極端子22bに至るように形成されている。外周側抵抗発熱体24は、セラミックプレート20の中央付近に配設された正極端子24aから端を発し、一筆書きの要領で小円領域Z1よりも外周側の環状領域Z2のほぼ全域に配線されたあと正極端子24aの隣に設けられた負極端子24bに至るように形成されている。両発熱体22,24の配線パターンの具体例は、ここでは図示しないが、例えば特許文献1の
図1のパターンなどが挙げられる。
【0024】
このセラミックプレート20の内部には、セラミックプレート20の中央側から外周面の手前に至るように外周側熱電対50が埋設されている。この外周側熱電対50は、セラミックプレート20の外周付近の温度を測定するものであり、セラミックプレート20の中にセラミックプレート20を構成する粒子と接触した状態で埋設されている。また、外周側熱電対50は、互いに材料組成の異なる第1及び第2素線51,52(
図2参照)と、第1及び第2素線51,52の先端を接合した測温部50aとを備えている。各素線51,52は、セラミックプレート20の焼結温度以上の耐熱性を有しており、シースや保護管などに覆われておらず、そのまま埋設されている。また、第1素線51は第1端子53を末端に有し、第2素線52は第2端子54を末端に有している。各端子53,54はセラミックプレート20の中央側に配置され、測温部50aはセラミックプレート20の外周側に配置されている。
【0025】
外周側熱電対50としては、例えばW−Re熱電対やPt−Rh熱電対などが挙げられる。WやW−Re合金は、高融点金属(3000℃以上)であり、各種のセラミック(例えばAlN,Al
2O
3,MgOなど)の焼結温度以上の耐熱性を有する。また、W−Re合金は、各種のセラミックと熱膨張係数が近いため、セラミック原料粉と一体焼結したとしてもクラックが入りにくい。こうしたことから、W−Re合金は外周側熱電対50の各素線51,52の材質として有用である。W−Re熱電対としては、Wからなる第1素線51とReを26%含むWからなる第2素線52との組み合わせ(W−W/26%Re)、Reを5%含むWからなる第1素線51とReを26%含むWからなる第2素線52との組み合わせ(W/5%Re−W/26%Re)、Reを3%含むWからなる第1素線51とReを25%含むWからなる第2素線52との組み合わせ(W/3%Re−W/25%Re)などがある。なお、%は重量%を表す(以下同じ)。線径は、例えば直径φ0.08〜0.5mmである。
【0026】
また、PtやPt−Rh合金も良好な耐熱性を有するため、外周側熱電対50の各素線51,52の材質として有用である。PtやPt−Rh合金を利用した熱電対としては、B熱電対(Rhを30%含むPtからなる第1素線51とRhを6%含むPtからなる第2素線52との組合せ)、R熱電対(Rhを13%含むPtからなる第1素線51とPtからなる第2素線52との組合せ)、S熱電対(Rhを10%含むPtからなる第1素線51とPtからなる第2素線52との組合せ)が知られている。例えば、B熱電対を使用する場合、焼結温度が1450℃以下のセラミックプレートを用いることが好ましい。AlNやAl
2O
3を1450℃以下で焼結するためには、AlN原料粉又はAl
2O
3原料粉にMgF
2の粉体を0.1〜3重量%添加すればよい。なお、Pt−Rh熱電対は、W−Re熱電対に比べて酸化雰囲気でも劣化しにくいという利点を有する。線径については、W−Re熱電対と同様である。
【0027】
シャフト40は、セラミックプレート20と同じ材料で形成されている。このシャフト40は、一端がセラミックプレート20に接合され、他端が支持台46にOリングを介して気密に接続されている。シャフト40の内部には、内周側抵抗発熱体22の正極端子22a及び負極端子22bのそれぞれに接続される給電棒42a,42bや外周側抵抗発熱体24の正極端子24a及び負極端子24bのそれぞれに接続される給電棒44a,44bが配置されている。また、シャフト40の内部には、セラミックプレート20の中央付近の温度を測定する内周側熱電対48が配置されるほか、外周側熱電対50の第1及び第2端子53,54にそれぞれ接合された第1及び第2導線55,56も配置されている。各導線55,56の線径は、例えば直径φ1〜4mmである。内周側熱電対48は、セラミックプレート20の裏面中央に設けられた凹部に差し込まれ、先端の測温部48aがセラミックプレート20に接触している。
【0028】
ここで、外周側熱電対50について、更に説明する。第1素線51と第1端子53と第1導線55とは、すべて同じ材質であることが好ましい。例えば第1素線51と第1端子53とが異なる材質の場合には、その接続部分でも起電力が生じるため補正が必要であり、第1端子53と第1導線55とが異なる材質の場合にも、同じく補正が必要となる。これに対して、第1素線51と第1端子53と第1導線55とがすべて同じ材質の場合には、そのような補正が不要となる。同様の理由で、第2素線52と第2端子54と第2導線56子とは同じ材質であることが好ましい。
【0029】
次に、サセプター10の製造例について説明する。まず、第1素線51と第2素線52とを用意し、第1素線51の先端と第2素線52の先端とを溶接して測温部50aを形成し、外周側熱電対50とする。なお、外周側熱電対50は、市販品を用いてもよい。続いて、第1素線51の末端に第1端子53を接合し、第2素線52の末端に第2端子54を接合する。そして、セラミックプレート20の原料となるセラミック原料粉を用意し、内周側抵抗発熱体22、外周側抵抗発熱体24、各端子22a,22b,24a,24b、外周側熱電対50、各端子53,54をセラミック原料粉に埋設し、そのセラミック原料粉を加圧してセラミック成形体とする。続いて、そのセラミック成形体を第1及び第2素線51,52の耐熱温度未満の温度でホットプレス焼成し、セラミックプレート20とする。セラミックプレート20は、直径はセラミック成形体と同じだが、厚さはセラミック成形体の半分程度になる。続いて、セラミックプレート20の裏面から各端子22a,22b,24a,24b,53,54に向けて穴を開けて各端子22a,22b,24a,24b,53,54を穴内に露出させる。また、セラミックプレート20の裏面中央には、内周側熱電対48を差し込むための凹部を形成する。続いて、セラミックプレート20の中央にシャフト40を接合する。なお、接合は、ロウ接合でもよいし固相接合でもよいし固液接合でもよい。その後、シャフト40の内部において、各給電棒42a,42b,44a,44bを各端子22a,22b,24a,24bに接続し、各導線55,56を各端子53,54に接続し、内周側熱電対48の測温部48aをセラミックプレート20の凹部に差し込む。最後に、シャフト40の下端をOリングを介して支持台46に取り付ける。なお、各給電棒42a,42b,44a,44b、各導線55,56及び内周側熱電対48は、気密状態を保つように支持台46を上下方向に貫通するように組み付ける。
【0030】
以上説明した本実施形態のサセプター10によれば、外周側熱電対50の測温部50aをセラミックプレート20の外周付近の位置に配置した状態で埋設されているため、その位置の温度を容易に測定することができる。また、外周側熱電対50を内蔵しているが、セラミックプレート20を構成する粒子と接触した状態で埋設されているため、外周側熱電対50とセラミックプレート20を構成する粒子との間に空隙が存在する場合に比べて、ウエハ載置面Sの均熱性が高くなる。つまり、埋設された熱電対によってウエハ載置面Sの均熱性が損なわれることがない。
【0031】
また、外周側熱電対50の各素線51,52はいずれもセラミックプレート20の焼結温度以上の耐熱性を有しているため、セラミックプレート20を焼結する前の成形体に外周側熱電対50を素線のまま埋設したあとその成形体を焼結することができる。そして、焼結後も、外周側熱電対50の熱電対としての機能は維持される。
【0032】
更に、外周側熱電対50は、素線のままの状態で埋設されているため、セラミックプレート20に占める外周側熱電対50の体積割合が小さく、外周側熱電対50が均熱性に影響を及ぼすことはほとんどない。
【0033】
更にまた、外周側熱電対50は、セラミックプレート20のうちウエハ載置面Sとは反対側の面の近い位置に形成されているため、外周側熱電対50がウエハ載置面Sの均熱性へ及ぼす影響を小さくすることができる。
【0034】
そしてまた、第1素線51と第1端子53と第1導線55とは同じ材料からなり、第2素線52と第2端子54と第2導線56とは同じ材料からなるため、それぞれの接続部分で起電力が生じることがない。接続部分で起電力が生じる場合にはその起電力を補正する必要があるが、本実施形態ではそのような補正は不要である。
【0035】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0036】
例えば、上述した実施形態において、
図3に示すように、支持台46に上下方向の貫通孔を設け、その貫通孔にガスパージ用のノズル47を気密に挿入し、シャフト40の内部を不活性ガスでパージしてもよい。こうすれば、外周側熱電対50に接続された第1及び第2導線55,56がシャフト40の内部で露出していたとしても、シャフト40の内部は不活性ガスでパージされているため、酸化を防止することができる。例えば、WやW−Re合金は、酸化雰囲気で劣化しやすいため、第1及び第2導線55,56としてWやW−Re合金が使用されている場合には、シャフト40の内部を不活性ガスでパージするのが好ましい。一方、PtやPt−Rh合金は、酸化雰囲気でも劣化しにくいため、第1及び第2導線55,56としてPtやPt−Rh合金が使用されている場合には、シャフト40の内部を不活性ガスでパージすることは必ずしも必要ではない。なお、支持台46には、ノズル47と共に図示しないガス抜き孔が形成され、このガス抜き孔を開放するとシャフト40の内部ガスが放出され、閉鎖するとシャフト40の内部は密閉される。ノズル47を介して不活性ガスをパージする場合には、こうしたガス抜き孔の開閉を調整しながら行う。
【0037】
上述した実施形態では、第1及び第2素線51,52を有する外周側熱電対50が1つだけ埋設されたセラミックプレート20を使用したが、
図4に示すように、外周側熱電対50が放射線状に複数埋設されたセラミックプレート120を使用してもよい。こうすれば、セラミックプレート120の外周側の複数点(
図4では6点)を測温できるため、半導体製造プロセスでウエハの温度分布を調べることができる。
【0038】
上述した実施形態のセラミックプレート20を
図5に示す手順で作製してもよい。なお、ここでは、説明の便宜上、セラミックプレート20中の外周側熱電対50、第1及び第2端子53,54以外の部材については図示及び説明を省略する。まず、上述した第1実施形態と同様にして、第1端子53及び第2端子54の付いた外周側熱電対50を用意する。続いて、セラミックプレート20より薄いセラミックベース60を用意する。このセラミックベース60は、セラミック原料粉をプレスした成形体でもよいし、そうした成形体を積層した積層体でもよいし、そうした成形体を焼成したセラミック焼結体でもよい。続いて、そのセラミックベース60の表面に、第1端子53及び第2端子54を備えた外周側熱電対50をはめ込むことのできる溝62を設ける(
図5(a)参照)。その溝62に、第1端子53及び第2端子54を備えた外周側熱電対50をセットし(
図5(b)参照)、その上にセラミック原料粉又はその原料粉を加圧成形したセラミック成形体を載せた後、プレスして積層成形体62とする(
図5(c)参照)。最後にその積層成形体62をホットプレス焼成してセラミックプレート20とする(
図5(d)参照)。なお、セラミックベース60に溝62を設けるとき、第1及び第2端子53,54をはめ込むことのできる溝だけ切っておき、第1及び第2素線51,52はセラミックベース60の上に載せるようにしてもよい。
【0039】
あるいは、
図6に示す手順でセラミックプレート20と類似のセラミックプレート220を作製してもよい。なお、ここでも、説明の便宜上、セラミックプレート220中の外周側熱電対250、第1及び第2端子253,254以外の部材については図示及び説明を省略する。まず、外周側熱電対50を用意する代わりに、第1素線の材質を含んでなる第1ペーストと第2素線の材質を含んでなる第2ペーストとを用意する。続いて、セラミックプレート220より薄いセラミックベース270を用意する。このセラミックベース270は、セラミック原料粉をプレスした成形体でもよいし、そうした成形体を積層した積層体でもよいし、そうした成形体を焼成したセラミック焼結体でもよい。続いて、セラミックベース270の中央側に窪み272を設け(
図6(a)参照)、その窪み272からセラミックベース270の外周側に向かって第1ペーストを印刷し、第1線状部材274とする(
図6(b)参照)。これにより、窪み272は第1ペーストで充填される。続いて、セラミック原料粉をそのまま又はシート状にした層状体276を積層し、その層状体276のうちセラミックベース270の中央側と外周側にそれぞれ窪み278,280を設ける(
図6(c)参照)。中央側の窪み278は、先ほどの中央側の窪み272と上下方向に重ならないように設ける。外周側の窪み280は、第1線状部材274の外周側の端部に繋がるように設ける。続いて、窪み278から窪み280まで第2ペーストを印刷し、第2線状部材282とする(
図6(d)参照)。外周側の窪み280に充填された第2ペーストは、第1線状部材274と接触して接点275を形成する。この結果、第1線状部材274と第2線状部材282と接点275とを備えた熱電対前駆体284ができあがる。その後、その上にセラミック原料粉又はその原料粉を加圧成形したセラミック成形体を載せた後、プレスして積層成形体286とする(
図6(e)参照)。最後にその積層成形体286をホットプレス焼成してセラミックプレート220とする(
図6(f)参照)。これにより、熱電対前駆体284の第1及び第2線状部材274,282は焼成されて第1及び第2素線251,252となり、接点275は焼成されて測温部250aとなり、外周側熱電対250ができあがる。また、窪み272に充填された第1ペーストが第1端子253になり、中央側の窪み278に充填された第2ペーストが第2端子254となる。なお、
図6では、第1素線251と第2素線252とは同一水平面上に形成されておらず、別々の面に形成される。
【0040】
上述した実施形態では、セラミックプレート20の中に両発熱体22,24を埋設したが、セラミックプレート20のうち両発熱体22,24とウエハ載置面Sとの間に、高周波電極や静電電極を埋設してもよい。
【0041】
上述した実施形態では、第1素線51と第1端子53と第1導線55はすべて同じ材料としたが、第1素線51と第1端子53と第1導線55はすべて異なる材料であってもよいし、2つが同じで1つが異なる材料であってもよい。その場合には、異なる材料を接続する部分で起電力が生じるため、その起電力を補正する回路を組み込む必要があるが、そうした回路を組み込めば精度よく測温することができる。この点は、第2素線52と第2端子54と第2導線56についても同様である。
【0042】
上述した実施形態において、
図7に示すように、外周側熱電対50の先端付近を上向きに屈曲することにより、測温部50aがウエハ載置面Sの近くになるようにしてもよい。こうすれば、外周側熱電対50によって測定された温度はウエハ温度とほとんど一致する。
【0043】
上述した実施形態では、外周側熱電対50を素線のままセラミックプレート20に埋設したが、
図8に示すように、シース(金属保護管)57に絶縁材58を充填し、その絶縁材58に第1及び第2素線51,52を互いに接触しないように挿通したシース熱電対150をセラミックプレート20に埋設してもよい。こうすれば、両素線51,52はシース57で被覆されているため、製造時や使用時に素線51,52が断線するのを防止できる。通常、シース57はSUS製、絶縁材58はMgOであるが、セラミックスの焼成温度に耐えることを考慮すれば、シース57はMo製やTa製などが好ましく、絶縁材58はBNやHfO
2などが好ましい。外周側熱電対50を素線のままセラミックプレート20に埋設すると、ヒータ線に流れる交流電流によるノイズを受けるため安定した温度が測れないおそれがあるが、
図8では素線51,52をMo製やTa製のシース57で覆っているため、ノイズの影響を受けず、安定した温度測定が可能となる。なお、シース熱電対150の代わりに、セラミックプレート20と同じ材料からなる保護管で両素線51,52を被覆してもよい。この場合、両素線51,52が測温部50a以外で接触しないように離間した状態で保護管内を挿通させる。
【実施例】
【0044】
[実施例1]
以下のようにして、実施例1のサセプター310を作製した。
図9はその製造工程図である。このサセプター310の構成要素のうち、上述した実施形態のサセプター10(
図1)と同じ構成要素については、同じ符号を付した。サセプター310では、端子22a,22b,24a,24bや給電棒42a,42b,44a,44b、内周側熱電対48を取り付けなかった。
【0045】
まず、AlN成形体(直径φ350mm×厚さ40mm)を作製した(
図9(a)参照)。AlN原料粉は、純度99%のものを使用した。また、焼結助材として、MgF
2の粉体をAlN原料粉100重量部に対して3重量部添加した。このAlN成形体の中には、中央付近の小円領域Z1に内周側抵抗発熱体22、その小円領域Z1の外周側の環状領域Z2に外周側抵抗発熱体24を、それぞれAlN成形体の上面から30mmの位置に埋設した。両発熱体22,24としては、Moコイルを使用した。また、外周側熱電対50をAlN成形体の上面から15mmの位置に埋設した。外周側熱電対50としては、B熱電対(第1素線51(+側):Pt−30%Rh,第2素線52(−側):Pt−6%Rh、但し%は重量%)を使用した。このB熱電対は、測温部50aとは反対側の端部に円柱形状(φ4mm×高さ4mm)でMo製の第1及び第2端子53,54が溶接又はかしめされたものであり、各素線51,52の線径は、φ0.5mmのものを用いた。続いて、このAlN成形体をホットプレス法で焼成し、セラミックプレート20とした(
図9(b)参照)。焼成は1400℃で行った。このような低い温度であっても、焼結助材としてMgF
2を添加したため、AlN成形体は焼結した。また、得られたセラミックプレート20は、直径φ350mm×厚さ20mmとなった。ホットプレス焼成のため、厚さだけ収縮した。その結果、ウエハ載置面Sから両発熱体22,24までの距離は7.5mm、ウエハ載置面Sから外周側熱電対50までの距離は15mmになった。続いて、セラミックプレート20に対し、第1及び第2端子53,54の位置に裏面から穴を開けた(
図9(c)参照)。続いて、セラミックプレート20とシャフト40とをAlロウ接合(TCB接合)により接合し、最後に、第1端子53には、Pt−30%Rhの第1導線55(φ3.0mm)をロウ付けし、第2端子54には、Pt−6%Rhの第2導線56(φ3.0mm)をロウ付けした(
図9(d)参照)。ロウ材にはAu−Niを用いた。得られたサセプター310の透過X線画像を観察したところ、各素線51,52の断線はみられなかった。また、各端子53,54からのクラックもみられなかった。
【0046】
[実施例2]
図10は、実施例2のサセプター10の説明図であり、(a)は平面図、(b)は縦断面図である。実施例2のサセプター10は、
図1のサセプター10と同じものであり、上述した実施形態における製造例に準じて作製した。B熱電対は素線径φ0.5mmのものを用い、第1及び第2端子53,54はMo製で円柱形状(φ4mm×高さ4mm)のものを用いた。
図1のサセプター10の内周側抵抗発熱体22と外周側抵抗発熱体24に電力を印加し、ウエハ載置面Sの温度分布を赤外線カメラを使用して計測し、内周側熱電対48の測温部48aの位置(IN)における温度と外周側熱電対50の測温部50aの位置(OUT)における温度とがほぼ一定になるように印加電力を手動で調整した。そのときの両熱電対48,50の温度指示値を比較した。本来は、両熱電対48,50の温度指示値(IN,OUTの温度)をフィードバックして両発熱体22,24の印加電力を調整し、所望の均熱性が得られるように制御するのであるが、ここでは、試験のためにIN,OUTの温度がほぼ一定になるようにして両熱電対48,50の温度測定値を読み取った。その結果を表1に示す。表1から明らかなように、赤外線カメラによるサセプター10のウエハ載置面SでのOUTの温度指示値と、外周側熱電対50の温度指示値とは、コンマ数℃しか違わず、ほとんど差がなかった。この結果から、外周側熱電対50の温度は正確に計測できていると判断した。
【0047】
【表1】