(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1弁体と、第2弁体と、入力ポートと出力ポートとが中間流路を挟んで第1軸線上に形成されたボディと、前記中間流路に対し前記入力ポート側に形成された第1弁座と、前記中間流路に対し前記出力ポート側に形成された第2弁座と、第1テーパ面と第2テーパ面とにより楔状に形成され、前記第1軸線に沿う第1軸線方向と直交する第2軸線方向に移動可能な弁棒に接続された弁棒楔部と、を有し、前記弁棒の移動に伴って連動する前記弁棒楔部が、前記第1弁体と前記第2弁体とを、前記第1軸線方向に対し、互いに反対側に同時に移動させることにより、前記第1弁座に対し前記第1弁体が、かつ、前記第2弁座に対し前記第2弁体が、それぞれ同時に当接または離間することにより、前記中間流路を流れる流体の流れを制御する仕切り弁において、
前記第1弁体は、前記第1軸線方向に対し、前記第1弁座に当接する第1当接面とは反対側に、第1頂部を形成して突出する第1突起部を有し、前記第2弁体は、前記第1軸線方向に対し、前記第2弁座に当接する第2当接面とは反対側に、第2頂部を形成して突出する第2突起部を有すること、
前記第1突起部が前記第1テーパ面と接触した状態で摺動すると同時に、前記第2突起部が前記第2テーパ面と接触した状態で摺動することにより、前記第1弁体が前記第1弁座に、かつ、前記第2弁体が前記第2弁座に、それぞれ当接して閉弁すること、
前記第1突起部と前記第2突起部とは何れも、半球型形状に形成されていること、
前記第1弁体は、前記第1突起部と別体で、前記第1当接面を有する板状の第1基部を有し、前記第1突起部が前記第1基部に着脱可能に取り付けられていること、及び
前記第2弁体は、前記第2突起部と別体で、前記第2当接面を有する板状の第2基部を有し、前記第2突起部が前記第2基部に着脱可能に取り付けられていること、
少なくとも前記第1基部と前記第2基部とは、樹脂で形成されていること、
前記第2軸線方向に貫通する開口部を内部に有するガイド部材が設けられ、前記第1弁体と前記第2弁体と前記弁棒楔部とが、前記ガイド部材の前記開口部の内面により、回り止めの規制を受けて保持された状態で、直進移動すること、
を特徴とする仕切り弁。
【背景技術】
【0002】
直線状の流路において、対向する位置に形成された2つの弁座の間で、この流路と直交する方向に配置された弁棒の移動に伴って連動する弁棒楔部により、2つの弁体を同時に押圧して、それぞれの弁座に当接させて閉弁させる仕切り弁として、例えば、非特許文献のカタログに開示された仕切り弁がある。
図9は、非特許文献に開示された仕切り弁を示す説明図であり、
図10は、
図9中、Y部を構成する部品を示す分解斜視図である。非特許文献の仕切り弁101は、
図9及び
図10に示すように、ボディ110に形成された第1弁座114及び第2弁座115と、ボンネット161の貫通孔に挿通されたステム120と、このステム120先端に接続する楔部123と、第1弁座114と当接または離間する第1弁体130と、第2弁座115と当接または離間する第2弁体140と、第1押圧部材135と、第2押圧部材145と、を有する。第1押圧部材135は、楔部123の一方側テーパ面123aと略平行な第1楔部当接面135aを有し、第2押圧部材145は、楔部123の他方側テーパ面123bと略平行な第2楔部当接面145aを有する。
【0003】
非特許文献の仕切り弁101は、ステム120を上下方向に移動させて弁の開閉を行う。この仕切り弁101は、閉弁にあたり、ステム120先端の楔部123を下側に移動させて、楔部123を第1押圧部材135と第2押圧部材145とに同時に押圧させることにより、押圧された第1押圧部材135を介して第1弁体130を第1弁座114に当接させる。また、第1押圧部材135と共に押圧された第2押圧部材145を介して第2弁体140を第2弁座115に当接させる。
【0004】
非特許文献の仕切り弁101では、楔部123に作用する鉛直方向下側の押圧力Fが、楔部123の一方側テーパ面123aを第1押圧部材135の第1楔部当接面135aに面接触させた状態で摺動させることにより、鉛直方向下方に作用する下方側分力と、流路方向の一方側(
図9中、左側)に作用する一方側分力Faとに分けられる。そして、第1押圧部材135に作用するこの一方側分力Faで押圧されることにより、第1弁体130が、第1弁座114に向けて移動し閉弁する。
【0005】
これと同時に、楔部123に作用する鉛直方向下側の押圧力Fが、楔部123の他方側テーパ面123bを第2押圧部材145の第2楔部当接面145aに面接触させた状態で摺動させることにより、鉛直方向に作用する下方側分力と、流路方向の他方側(
図9中、右側)に作用する他方側分力Fbとに分けられる。そして、第2押圧部材145に作用するこの他方側分力Fbにより押圧されることにより、第2弁体140が、第2弁座115に向けて移動し閉弁する。
【0006】
なお、非特許文献の仕切り弁では、楔部を挟む一方側と他方側との両側において、構成する部材や部位がそれぞれ、左右対称に配置され、両側とも実質的に同じものであるため、以下、紙面の都合上、説明の中には、楔部の一方側テーパ面と他方側テーパ面とを「テーパ面」と、第1押圧部材と第2押圧部材とを「押圧部材」と、第1弁体と第2弁体とを「弁体」と、第1弁座と第2弁座とを「弁座」と、それぞれ総称して使用している部分もある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、非特許文献の仕切り弁のような従来技術には、以下のような問題があった。非特許文献の仕切り弁では、楔部123の一方側テーパ面123aを第1押圧部材135の第1楔部当接面135aに面接触させると同時に、楔部123の他方側テーパ面123bを第2押圧部材145の第2楔部当接面145aに面接触させる構造であるため、当該仕切り弁の製造時の組付け精度に起因して、一方側分力Faの大きさ及びその向きと、他方側分力Fbの大きさ及びその向きとが、楔部123を挟む左右両側で異なることがある。また、非特許文献の仕切り弁の開閉動作を繰り返し行っていると、面接触し摺動する部分が経時的に偏磨耗して、一方側分力Faと他方側分力Fbとの間で、力の大きさと向きに差異が生じることがある。また、非特許文献の仕切り弁では、楔部123の一方側テーパ面123aを第1押圧部材135の第1楔部当接面135aに面接触させると同時に、楔部123の他方側テーパ面123bを第2押圧部材145の第2楔部当接面145aに面接触させる構造であるため、面接触部分における接触抵抗や磨耗に起因して、締切り性能にバラツキが生じる。
【0009】
また、非特許文献の仕切り弁は、その製造時に、楔部123の一方側テーパ面123aと第1押圧部材135の第1楔部当接面135aとの面接触状態、及び楔部123の他方側テーパ面123bと第2押圧部材145の第2楔部当接面145aとの面接触状態を、一方側分力Faと他方側分力Fbとを流路の軸線AX上に作用するよう、設定されている。しかしながら、弁の開閉動作を繰り返し行っていると、楔部のテーパ面と押圧部材の楔部当接面とが面接触し摺動する部分が経時的に磨耗するため、ステム120が、製造時に設定された位置よりもさらに鉛直方向下側に下がった位置で、ステム120からの押圧力Fが楔部123に伝達されるようになる。そのため、ステム120から伝達された押圧力Fを一方側分力Faと他方側分力Fbとに分散して作用する位置が、流路の軸線AXから下がってしまう。流路の軸線AXから下がった位置で一方側分力Faが作用すると、第1弁体130は、軸線AXを境に、第1弁座114の下側に部分的に偏って当接し、第1弁座114の上側では、十分なシール力で閉弁できる状態まで当接できず、第1弁座114の上下両側で、第1弁体130の当接状態が異なってくる。一方側分力Faと同様、流路の軸線AXから下がった位置で他方側分力Fbが作用すると、第2弁体140は、流路の軸線AXを境に、第2弁座115の下側に部分的に偏って当接し、第2弁座115の上側では、十分なシール力で閉弁できる状態まで当接できず、第2弁座115の上下両側で、第2弁体140の当接状態が異なってくる。
【0010】
このように、一方側分力(または他方側分力)の大きさや、一方側分力(または他方側分力)の向きが、楔部を挟む左右両側で異なってしまうと、各弁体がそれぞれの弁座に、左右均等に当接できず、左右両側の弁座とも均一なシール力で閉弁できない。また、弁の開閉動作を繰り返し行っているうちに、一方側分力(または他方側分力)の作用位置が、流路の軸線より下がってしまうと、弁体と弁座との当接状態が、流路の軸線を境とする上下両側で異なり、各弁体がそれぞれの弁座に、上下均等に当接できず、左右両側の弁座とも均一なシール力で閉弁できない。よって、弁体と弁座との当接状態が、楔部を挟む左右両側均等に、かつ流路の軸線を境とする上下両側均等になっていないと、流体の流れを精度良く制御することができない。すなわち、非特許文献の仕切り弁のように、楔部のテーパ面と押圧部材の楔部当接面とが面接触で摺動する構造になっていると、楔部のテーパ面と押圧部材の楔部当接面とが面接触し摺動する部分が経時的に磨耗するため、当該仕切り弁を長期間にわたって使用するのが困難となり、磨耗した部分等を早期に交換や補修を行うメンテナンスがより頻繁に必要となる。
【0011】
その一方で、作業者は、メンテナンスを行うまでの暫くの間、非特許文献の仕切り弁のような仕切り弁を使用するにあたり、弁体を弁座に押圧する力、すなわち一方側分力(または他方側分力)を、使用開始当初よりも次第に大きくして弁体を弁座に密着させることで、流体洩れを防いでいる。特に、非特許文献の仕切り弁のような仕切り弁で、楔部に掛かる押圧力を調整するのに、ステムと連結したハンドルを、作業者による手動操作で回転させて調整する手動式仕切り弁では、作業者が、閉弁操作時に正方向に回転させるハンドルの回転角度を使用開始当初より増やして、楔部に掛ける押圧力を大きくし、一方側分力(または他方側分力)を大きくしている。このとき、作業者は、押圧力が不十分で弁体が弁座に密着できていないときに、一旦ハンドルを逆方向に回転して開弁状態となる位置まで戻した後、開弁状態から再びハンドルを正方向に回転し、閉弁できる押圧力を弁体に伝達できるまで、この操作を繰り返し行うため、作業者に掛かる負担が大きい。また、楔部のテーパ面と押圧部材の楔部当接面とが面接触で摺動する構造になっていると、テーパ面と楔部当接面との間の摩擦力が大きく作用することから、楔部に掛ける押圧力をより大きくする操作を行うときに、作業者に掛かる負担が大きくなる。そして、上述した磨耗が過大に成長してしまったところで、楔部に掛ける押圧力をいくら大きくしても、流体洩れのないよう、安定した状態で、弁体を弁座に当接させることができなくなり、流体が、弁体と弁座との間から漏れ出してしまう。弁体と弁座との間から流体漏れが起これば、仕切り弁の分解整備が必要となる。
【0012】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、直線状の流路に、弁棒楔部を挟んで対向する位置に配置された第1弁座と第2弁座とに対し、第1弁体と第2弁体とを同時に、弁棒先の弁棒楔部の2つのテーパ面に伝達された弁棒からの押圧力で押圧して閉弁する仕切り弁において、弁の開閉動作を複数回繰り返し行っても、安定したシール力で閉弁することができる仕切り弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の問題点を解決するために、本発明の仕切り弁は、次の構成を有している。
【0014】
(1)第1弁体と、第2弁体と、入力ポートと出力ポートとが中間流路を挟んで第1軸線上に形成されたボディと、中間流路に対し入力ポート側に形成された第1弁座と、中間流路に対し出力ポート側に形成された第2弁座と、第1テーパ面と第2テーパ面とにより楔状に形成され、第1軸線に沿う第1軸線方向と直交する第2軸線方向に移動可能な弁棒に接続された弁棒楔部と、を有し、弁棒の移動に伴って連動する弁棒楔部が、第1弁体と第2弁体とを、第1軸線方向に対し、互いに反対側に同時に移動させることにより、第1弁座に対し第1弁体が、かつ、第2弁座に対し第2弁体が、それぞれ同時に当接または離間することにより、中間流路を流れる流体の流れを制御する仕切り弁において、第1弁体は、第1軸線方向に対し、第1弁座に当接する第1当接面とは反対側に、第1頂部を形成して突出する第1突起部を有し、第2弁体は、第1軸線方向に対し、第2弁座に当接する第2当接面とは反対側に、第2頂部を形成して突出する第2突起部を有すること、第1突起部が第1テーパ面と接触した状態で摺動すると同時に、第2突起部が第2テーパ面と接触した状態で摺動することにより、第1弁体が第1弁座に、かつ、第2弁体が第2弁座に、それぞれ当接して閉弁することを特徴とする。
(2)(1)に記載する仕切り弁において、第1突起部と第2突起部とは何れも、半球型形状に形成されていること、を特徴とする。
(3)(1)または(2)に記載する仕切り弁において、第1弁体は、第1突起部と別体で、第1当接面を有する板状の第1基部を有し、第1突起部が第1基部に着脱可能に取り付けられていること、及び第2弁体は、第2突起部と別体で、第2当接面を有する板状の第2基部を有し、第2突起部が第2基部に着脱可能に取り付けられていること、を特徴とする。
(4)(3)に記載する仕切り弁において、少なくとも第1基部と第2基部とは、樹脂で形成されていること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
上記構成を有する本発明の仕切り弁の作用・効果について説明する。
【0016】
(1)第1弁体と、第2弁体と、入力ポートと出力ポートとが中間流路を挟んで第1軸線上に形成されたボディと、中間流路に対し入力ポート側に形成された第1弁座と、中間流路に対し出力ポート側に形成された第2弁座と、第1テーパ面と第2テーパ面とにより楔状に形成され、第1軸線に沿う第1軸線方向と直交する第2軸線方向に移動可能な弁棒に接続された弁棒楔部と、を有し、弁棒の移動に伴って連動する弁棒楔部が、第1弁体と第2弁体とを、第1軸線方向に対し、互いに反対側に同時に移動させることにより、第1弁座に対し第1弁体が、かつ、第2弁座に対し第2弁体が、それぞれ同時に当接または離間することにより、中間流路を流れる流体の流れを制御する仕切り弁において、第1弁体は、第1軸線方向に対し、第1弁座に当接する第1当接面とは反対側に、第1頂部を形成して突出する第1突起部を有し、第2弁体は、第1軸線方向に対し、第2弁座に当接する第2当接面とは反対側に、第2頂部を形成して突出する第2突起部を有すること、第1突起部が第1テーパ面と接触した状態で摺動すると同時に、第2突起部が第2テーパ面と接触した状態で摺動することにより、第1弁体が第1弁座に、かつ、第2弁体が第2弁座に、それぞれ当接して閉弁することを特徴とするので、第1弁体を第1弁座に、第2弁体を第2弁座にそれぞれ当接させて閉弁するには、第2軸線方向一方側に掛かる弁棒の押圧力が、弁棒楔部に伝達され、第1軸線方向に対し、入力ポート側に作用する入力ポート側分力と、出力ポート側に作用する出力ポート側分力とに分けられる。このとき、第1突起部の第1頂部近傍と弁棒楔部の第1テーパ面とが、かつ第2突起部の第2頂部近傍と弁棒楔部の第2テーパ面とが、それぞれ摺動するとき、第1突起部側と第2突起部側ともそれぞれほぼ点接触状態で接触している。
【0017】
すなわち、本発明の仕切り弁では、第1突起部の第1頂部近傍と弁棒楔部の第1テーパ面との点接触位置と、かつ第2突起部の第2頂部近傍と弁棒楔部の第2テーパ面との点接触位置とが、中間流路の第1軸線上に位置したところで、入力ポート側分力により、第1弁体が押圧されて第1弁座に当接し閉弁させる。このとき、第1軸線を中心とする径方向に対する第1弁体と第1弁座との当接部位が、第1軸線を中心とする第1弁座の当接面(第1弁体が当接する面)の周方向全周に亘って、各当接部位とも均一になり、第1弁座に当接する第1弁体のシール力が、安定した状態で得ることができる。第1弁体が押圧されて第1弁座に閉弁させるのと同時に、出力ポート側分力とにより、第2弁体が押圧されて第2弁座に当接し閉弁させる。このとき、第1軸線を中心とする径方向に対する第2弁体と第2弁座との当接部位が、第1軸線を中心とする第2弁座の当接面(第2弁体が当接する面)の周方向全周に亘って、均一になり、第2弁座に当接する第2弁体のシール力が、安定した状態で得ることができる。また、第1突起部の第1頂部近傍と弁棒楔部の第1テーパ面との点接触位置と、かつ第2突起部の第2頂部近傍と弁棒楔部の第2テーパ面との点接触位置とは、弁棒楔部を境に左右両側で、バランスのとれた位置となっている。そのため、第1弁座に当接する第1弁体のシール力と、第2弁座に当接する第2弁体のシール力とに、シール力の差異が生じ難い。また、当該仕切り弁の製造時の組付け精度に起因して、第1弁座に当接する第1弁体のシール力と、第2弁座に当接する第2弁体のシール力とのシール力の差異が生じ難い。
【0018】
特に、第1突起部の第1頂部近傍と弁棒楔部の第1テーパ面との点接触位置と、かつ第2突起部の第2頂部近傍と弁棒楔部の第2テーパ面との点接触位置とが、中間流路の第1軸線上に位置し、第1弁体の中心に第1突起部を、第2弁体の中心に第2突起部をそれぞれ配置されていれば、入力ポート側分力の向きと出力ポート側分力の向きが、当該仕切り弁を長期間使用しても、第1軸線方向に沿って真直ぐな向きに維持される。そのため、第1弁座に当接する第1弁体のシール力と、第2弁座に当接する第2弁体のシール力が、第1軸線を境とする上下両側で、第1弁座の周方向全体と第2弁座の周方向全体に、それぞれ均等に作用して、経時的に低下するのを抑えて安定した状態で維持できる。また、第1突起部の第1頂部近傍と弁棒楔部の第1テーパ面とが、かつ第2突起部の第2頂部近傍と弁棒楔部の第2テーパ面とが、何れもほぼ点接触であるため、楔部の両側テーパ面を各押圧部材の楔部当接面にそれぞれ面接触して摺動させる従来の仕切り弁に比して、偏磨耗し難い。よって、弁の開閉動作が複数回繰り返し行われても、流体洩れのないよう、第1弁体が第1弁座に、第2弁体が第2弁座にそれぞれ、均一な状態で当接して、軽微な力で高い密着力で閉弁することが、より長い期間、維持することができる。特に制御する流体が、例えば、零下162℃という極低温のLNG等、可燃性流体である場合でも、流体洩れのないよう、高い密着力で閉弁することが維持できる。
【0019】
また、第1突起部の第1頂部近傍と第1テーパ面とが、及び、第2突起部の第2頂部近傍と第2テーパ面とが、何れもほぼ点接触であり、かつ第2軸線方向一方側に掛かる弁棒の押圧力が、第1突起部を介して第1弁体の中心から第1弁座に、及び第2突起部を介して第2弁体の中心から第2弁座にそれぞれ、直接伝達される。そのため、第1突起部の第1頂部近傍と第1テーパ面との相対的な磨耗と、第2突起部の第2頂部近傍と第2テーパ面との相対的な磨耗とが、楔部の各テーパ面と押圧部材の各楔部当接面とを面接触させて摺動させた従来の仕切り弁に比して、抑制できる。よって、磨耗した部分等の交換や補修を行うメンテナンスの回数もより少なく抑制でき、コストの低減を図ることができる。また、弁の開閉弁動作が複数回繰り返し行われても、弁棒楔部と、第1弁体の第1突起部及び第2弁体の第2突起部とが磨耗し難いことから、その磨耗粉が、流路内を流れる流体に混入することがほとんどない。
【0020】
従って、本発明の仕切り弁では、弁の開閉動作を複数回繰り返し行っても、安定したシール力で閉弁ことができる、という優れた効果を奏する。
【0021】
(2)(1)に記載する仕切り弁において、第1突起部と第2突起部とは何れも、半球型形状に形成されていること、を特徴とするので、弁棒への押圧力が第1弁体に掛かり、第1弁体が、弁棒楔部の第1テーパ面に作用する入力ポート側分力により押圧されて入力ポート側に移動すると、半球型形状の第1突起部との接触部位が、弁棒楔部の第1テーパ面で移動する。同時に、第2弁体が、弁棒楔部の第2テーパ面に作用する出力ポート側分力により押圧されて出力ポート側に移動すると、半球型形状の第2突起部との接触部位が、弁棒楔部の第2テーパ面で移動する。これにより、弁棒楔部は、第1テーパ面の同じ部位で、及び第2テーパ面の同じ部位でそれぞれ、磨耗しなくなる。また、第1突起部と第2突起部とが何れも、半球型形状に形成されていると、弁棒楔部の第1テーパ面に対する第1突起部の第1頂部近傍との接触状態(当たり面や角度等)が、経時的に変化し難い。また、弁棒楔部の第2テーパ面に対する第2突起部の第2頂部近傍との接触状態(当たり面や角度等)が、経時的に変化し難い。
【0022】
そのため、入力ポート側分力の向きと出力ポート側分力の向きとが、当該仕切り弁の使用期間がより長い間、第1軸線方向に沿って真直ぐな向きに維持され、第1弁座に当接する第1弁体のシール力や、第2弁座に当接する第2弁体のシール力が、経時的に低下するのを抑えられ、安定した状態で維持できる。これにより、第1弁体が第1弁座に、第2弁体が第2弁座にそれぞれ、各当接部位とも全周に亘って均一な状態で当接し、流体洩れのないよう、高い密着力で当接し閉弁することが、より長い期間、維持することができる。
【0023】
また、弁棒楔部の第1テーパ面と第1弁体の第1突起部の第1頂部近傍との磨耗や、弁棒楔部の第2テーパ面と第2弁体の第2突起部の第2頂部近傍との磨耗とが、より小さく抑制することができる。そのため、本発明の仕切り弁と、楔部の両側テーパ面と各押圧部材の楔部当接面とをそれぞれ面接触させて摺動させた従来の仕切り弁とのそれぞれに、弁棒への押圧力を同じ大きさで掛けた場合、本発明の仕切り弁では、第1弁体を第1弁座に当接させるのに必要な入力ポート側分力と、第2弁体を第2弁座に当接させるのに必要な出力ポート側分力とが、より小さくすることができ、弁棒への押圧力から第1弁体と第2弁体とに伝達させる力のロスが小さくできる。よって、第1弁体側と第2弁体側の両方を閉弁するのに、押圧力を掛けた弁棒を第2軸線方向一方側に移動させ、弁棒楔部に掛かる第2軸線方向一方側の押圧力が、楔部の両側テーパ面と各押圧部材の楔部当接面とをそれぞれ面接触させて摺動させた従来の仕切り弁に比して、小さくできる。
【0024】
特に、本発明の仕切り弁が、弁棒楔部に掛かる押圧力を調整するのに、例えば、弁棒と連結したハンドル車等を、作業者による手動操作で回転させる構造である場合でも、入力ポート側分力の向きと出力ポート側分力の向きとが、第1軸線方向に沿って真直ぐな向きに維持されたまま作用し易くなる。そのため、作業者が閉弁操作時にハンドル車を一方向に回転させることにより、閉弁して流体を遮断させるための締付力も、楔部の両側テーパ面と各押圧部材の楔部当接面とをそれぞれ面接触させて摺動させた従来の仕切り弁に比して、小さく抑えることができ、閉弁操作に係る作業者の負担が低減できる。また、本発明の仕切り弁が、上記ハンドル車による回転運動を弁棒の上下運動に変換するのに、弁棒にねじを設けた構造である場合、本発明の仕切り弁では、第1弁体及び第2弁体により流体を遮断させるための締付力が低減できるため、弁棒を上下させるねじピッチを大きくすることができ、弁の開閉に伴うハンドル車の回転操作回数が、上記構造と同じ構造で構成された従来の仕切り弁に比べ、低減できる。
【0025】
また、本発明の仕切り弁では、第1突起部と第2突起部とが何れも、例えば、金属製で形成されていると、第1突起部の第1頂部近傍と弁棒楔部の第1テーパ面とは、及び、第2突起部の第2頂部近傍と弁棒楔部の第2テーパ面とは、何れも点接触に近い状態で接触できるため、上述した磨耗が小さくなる。そして、好ましくは、第1突起部と第2突起部とに、耐摩耗性を施す対策が行われていると良い。
【0026】
(3)(1)または(2)に記載する仕切り弁において、第1弁体は、第1突起部と別体で、第1当接面を有する板状の第1基部を有し、第1突起部が第1基部に着脱可能に取り付けられていること、及び第2弁体は、第2突起部と別体で、第2当接面を有する板状の第2基部を有し、第2突起部が第2基部に着脱可能に取り付けられていること、を特徴とするので、弁棒楔部の第1テーパ面との間で第1突起部が、または第2テーパ面との間で第2突起部が、摩擦力をそれぞれ受けて磨耗しても、第1突起部や第2突起部を交換するだけで、第1弁体の第1基部や第2弁体の第2基部が継続して使用できる。また、第1弁体を、第1基部と第1突起部とを異なる材質で構成した場合や、第2弁体を、第2基部と第2突起部とを異なる材質で構成した場合には、このような第1弁体や第2弁体が簡単に製造できる。
【0027】
(4)(3)に記載する仕切り弁において、少なくとも第1基部と第2基部とは、樹脂で形成されていること、を特徴とするので、樹脂は金属より変形し易い性質があることから、第1基部の第1当接面と第1弁座とが密着し易く、第1弁座に当接する第1弁体のシール性能が大きく確保できる。また、第2基部の第2当接面と第2弁座とが密着し易く、第2弁座に当接する第2弁体のシール性能が大きく確保できる。
【0028】
特に、制御する流体が、例えば、零下162℃という極低温のLNG等の流体である場合、用いる樹脂は、極低温にも耐え得る材質にする必要がある。この場合、樹脂が、例えば、ポリ・エーテル・エーテル・ケトン(PEEK)と、カーボン繊維との複合材樹脂(PEEK・カーボン繊維複合樹脂)であれば、この種の樹脂は、耐摩耗性、圧縮強度等の機械的性質が、例えば、零下162℃という極低温でも、常温と同程度に維持できる材料であることから、本発明の仕切り弁は、このような極低温の流体の流れを制御する場合にも適用できる。また、制御する流体が、例えば、零下162℃という極低温のLNG等、可燃性流体である場合でも、このような可燃性流体の接触により、上記PEEK・カーボン繊維複合樹脂の変質は生じない。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明に係る仕切り弁について、実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、実施形態に係る仕切り弁を示す説明図であり、開弁状態を示す。
図3は、閉弁状態を示す図である。本実施形態では、
図1において、左右方向を第1軸線方向L1とし、この第1軸線方向L1と直交する第2軸線方向L2を上下方向とする。
図2以降の図面についても、
図1に図示した方向に準じる。また、
図1乃至
図3では、図を見易くするため、弁駆動部に関係する一部を正面図で図示し、その他は断面図で図示されている。
【0031】
本実施形態の仕切り弁1は、零下162℃という極低温のLNG(本発明の流体に対応)を製造する設備に配設され、一次側(入力ポート11側)から流れるLNGを、二次側(出力ポート12側)に流すのを制御する目的で用いられる。
【0032】
はじめに、仕切り弁1の全体的な構成について、
図1及び
図3を用いて簡単に説明する。仕切り弁1は、
図1に示すように、ボディ10、弁棒20、弁棒楔部材22(本発明の弁棒楔部に対応)、第1弁体30、第2弁体40、蓋61、ハンドル63、ヨーク支持部材64、カバー65、ヨークスリーブ68等から構成されている。ボディ10は、金属からなり、本実施形態では、圧縮強度等の機械的性質が零下162℃という極低温下でも常温と同程度に維持できるよう、所定の添加材を含有させたステンレス材からなる。このボディ10には、入力ポート11と出力ポート12とが、中間流路13を挟んで第1軸線AX上に形成され、第1弁座14が、中間流路13に対し入力ポート11側に、第2弁座15が、中間流路13に対し出力ポート12側に、それぞれ形成されている。ボディ10と蓋61とは、ボルト締めで固定されている。
【0033】
弁棒20は、第1軸線AXに沿う第1軸線方向L1と直交する第2軸線方向L2に延びる丸棒状の部材である。弁棒20は、金属からなり、本実施形態では、圧縮強度等の機械的性質が零下162℃という極低温下でも常温と同程度に維持できるよう、所定の添加材を含有させたステンレス材からなる。この弁棒20の第2軸線方向L2の一端(
図1中、上側)側には、雄ネジ29が第2軸線方向L2に沿って形成されている。また、弁棒20の第2軸線方向L2の一端には、ヨークスリーブ68が、弁棒20に対し、その軸心を中心に回転可能であると共に、第2軸線方向L2に対し、ヨーク支持部材64に固定された状態で配設されている。このヨークスリーブ68には、弁棒20を第2軸線方向L2に移動させるためのハンドル63が取り付けられており、ハンドル63の回転に伴って、ヨークスリーブ68も回転するようになっている。ヨークスリーブ68には、弁棒20の端部を挿通可能な孔が形成されており、弁棒20の雄ネジ29と螺合する雌ネジ69がこの孔に形成されている。本実施形態に係る仕切り弁1では、作業者が手動でハンドル63を回転させると、ハンドル63の回転と共に、ヨークスリーブ68が自転することにより、ヨークスリーブ68の雌ネジ69と螺合する雄ネジ29が、雌ネジ69と相対的に第2軸線方向L2に移動して、弁棒20が第2軸線方向L2に移動できるようになっている。
【0034】
弁棒20は、ヨーク支持部材64と共に固定されたパッキン箱67の貫通孔を挿通しており、第2軸線方向L2に移動しても、このパッキン箱67の貫通孔と当該弁棒20の外周との間からLNGの漏れがないよう、パッキン66Aと、ランタンリング66Bと、パッキン66Cとにより、気密にシールされている。また、弁棒20の第2軸線方向L2の他端側(
図1中、下側)端部には、弁棒下端部21が形成されている。弁棒下端部21は、弁棒20の他の部分の径より径大な上側径大部21Aと下側径大部21Cとを有し、上側径大部21Aと下側径大部21Cとの間に、上側径大部21A及び下側径大部21Cより径小な中間径小部21Bを有している。本実施形態に係る仕切り弁1では、上側径大部21Aには、先端が一端(
図1の上側)に向けて窄むテーパ状で、弁棒20の軸心を中心とする環状に形成された逆座21Aaが形成されている。弁棒20のうち、上側径大部21Aの逆座21Aaとパッキン箱67との間の中間部分は、蓋61の蓋挿通孔62Hに挿通され、この中間部分の周囲は、カバー65等で覆われている。
【0035】
次に、
図1中、X部内に図示された弁体駆動部について、
図4乃至
図6を用いて説明する。
図4は、
図1中、X部を構成する部品を示す分解斜視図である。
図5は、
図4中、A−A矢視断面図である。
図6は、実施形態に係る仕切り弁に構成された第1弁体と第2弁体を示す説明図であり、
図6中、左側は
図4中、B−B矢視断面図、右側は
図4中、C−C矢視断面図である。弁体駆動部は、
図4に示すように、弁棒楔部材22、第1弁体30、第2弁体40、及び弁体ガイド50からなる。
【0036】
はじめに、弁棒楔部材22について説明する。弁棒楔部材22は、弁棒20の弁棒下端部21と接続され、第2軸線方向L2に対し、弁棒20の移動に伴って連動させる部材である。弁棒楔部材22は、本実施形態では、例えば、ステンレス材等の金属からなる。この弁棒楔部材22は、
図5に示すように、楔形成部22Aと、この楔形成部22Aと一体で接続する弁棒連結部22Bとからなる。
【0037】
楔形成部22Aは、第1テーパ面23aと第2テーパ面23bとが楔状に形成された楔23を有している。第1テーパ面23aと第2テーパ面23bとは、第2軸線方向L2に対し、弁棒連結部22Bとは反対側で窄む形状であり、第1テーパ面23aと第2テーパ面23bとのテーパ角とも、本実施形態では、第2軸線方向L2に対し、θ=3°となっている。楔形成部22Aでは、第2軸線方向L2と直交する方向に突出するピン状の引掛け部24,24が、第1テーパ面23aと第2テーパ面23bから設けられている。引掛け部24,24は、楔23と一体で形成されていても良いし、楔23と別体で第1テーパ面23aと第2テーパ面23bとにそれぞれ挿入されていても良い。
【0038】
弁棒連結部22Bは、略円盤状の楔部接続部25Aと、この楔部接続部25Aと平行に離間して配置された略U字型形状の弁棒下端接触部25Bと、を有している。弁棒下端接触部25Bの内側には、弁棒20のうち、弁棒下端部21の中間径小部21Bを収容可能な切欠き26が形成されている。楔部接続部25Aと弁棒下端接触部25Bとの間は、弁棒下端部21の下側径大部21Cと係合可能な係合部28となっている。この係合部28は、切欠き26の径方向(
図5中、左右方向)の内周面より外側の内周面27に囲まれた空間であり、切欠き26と連通している。弁棒楔部材22は、弁棒下端部21の下側径大部21Cを弁棒連結部22Bの係合部28に収納し、切欠き26を通じて側方から挿入した中間径小部21Bを弁棒下端接触部25Bで覆い、弁棒下端接触部25Bの逆座接触部上面25Baの上方位置に上側径大部21Aを配置することにより、弁棒20と固定して連結されている。楔形成部22Aと弁棒連結部22Bとは、楔部接続部25Aと楔23とが溶接接合されて、繋がっている。
【0039】
次に、第1弁体30について説明する。第1弁体30は、第1弁座14と当接または離間する弁体である。第1弁体30は、第1軸線方向L1に対し、第1弁座14に当接するフラット状の第1当接面31aとは反対側に、第1当接面31aと平行な第1反対側面31bを有し、この第1反対側面31b側に、第1頂部33Tを形成して突出する半球型形状の第1突起部33を有している。
【0040】
具体的には、本実施形態では、この第1弁体30は、第1突起部33と別体で、第1当接面31aを有する板状の第1基部31を有し、第1突起部33が第1基部31に着脱可能に取り付けられている。第1突起部33は、第1弁体30の第1当接面31aと第1弁座14とが当接して閉弁した状態において、入力ポート11と中間流路13とを結ぶ流路の径方向中央に相当する位置、すなわち、第1弁体30のうち、第1当接面31aの径方向中央部に対応する位置の第1反対側面31b側に、最大外周径Φ5mm程度に形成されて配置されている。
【0041】
また、この第1突起部33は、第1基部31内に埋め込まれる第1固定部34を有している。本実施形態では、第1基部31は、ポリ・エーテル・エーテル・ケトン(PEEK)と、カーボン繊維との複合材樹脂(PEEK・カーボン繊維複合樹脂)で成形されていると共に、第1突起部33は、圧縮強度等の機械的性質が零下162℃という極低温下でも常温と同程度に維持できるよう、所定の添加材を含有させたステンレス材等の金属からなる。なお、第1基部31の材質を、第1突起部33と同様、圧縮強度等の機械的性質が零下162℃という極低温下でも常温と同程度に維持できるよう、所定の添加材を含有させたステンレス材等の金属としても良い。
【0042】
この第1基部31には、第1軸線方向L1に沿う厚み方向THに貫通する貫通孔31Hが穿孔されている。また、第1基部31の第1反対側面31bには、弁棒楔部材22において、楔形成部22Aの楔23の引掛け部24と係合可能な第1スリット35が凹設されている。さらに、第1反対側面31bには、第1固定部34を挿入して第1突起部33を第1基部31に固定させるための第1凹部32が形成されている。
【0043】
次に、第2弁体40について説明する。第2弁体40は、第2弁座15と当接または離間する弁体であり、第1弁体30の第1基部31の貫通孔31Hを除いて、第1弁体30と同じ形状及び大きさとなっている。第2弁体40は、第1軸線方向L1に対し、第2弁座15に当接するフラット状の第2当接面41aとは反対側に、第2当接面41aと平行な第2反対側面41bを有し、この第2反対側面41b側に、第2頂部43Tを形成して突出する半球型形状の第2突起部43を有している。
【0044】
具体的には、本実施形態では、この第2弁体40は、第2突起部43と別体で、第2当接面41aを有する板状の第2基部41を有し、第2突起部43が第2基部41に着脱可能に取り付けられている。第2突起部43は、第2弁体40の第2当接面41aと第2弁座15とが当接して閉弁した状態において、出力ポート12と中間流路13とを結ぶ流路の径方向中央に相当する位置、すなわち、第2弁体40のうち、第2当接面41aの径方向中央部に対応する位置の第2反対側面41b側に、最大外周径Φ5mm程度に形成されて配置されている。つまり、仕切り弁1に組付けられた状態では、第1突起部33の第1頂部33Tと第2突起部43の第2頂部43Tとが第1軸線AX上に配置されている。
【0045】
また、この第2突起部43は、第2基部41内に埋め込まれる第2固定部44を有している。本実施形態では、第1基部31と同様、第2基部41は、ポリ・エーテル・エーテル・ケトン(PEEK)と、カーボン繊維との複合材樹脂(PEEK・カーボン繊維複合樹脂)で成形されている。第2突起部43は、圧縮強度等の機械的性質が零下162℃という極低温下でも常温と同程度に維持できるよう、所定の添加材を含有させたステンレス材等の金属からなる。なお、第2基部41の材質を、第2突起部43と同様、圧縮強度等の機械的性質が零下162℃という極低温下でも常温と同程度に維持できるよう、所定の添加材を含有させたステンレス材等の金属としても良い。
【0046】
第2基部41の第2反対側面41bには、弁棒楔部材22において、楔形成部22Aの楔23の引掛け部24と係合可能な第2スリット45が凹設されている。また、第2反対側面41bには、第2固定部44を挿入して第2突起部43を第2基部41に固定させるための第2凹部42が形成されている。
【0047】
次に、弁体ガイド50について説明する。弁体ガイド50は、入力ポート11側と出力ポート12側の両方で同時に弁の開閉動作を行うときに、第1弁体30、第2弁体40、及び弁棒楔部材22を、第2軸線方向L2に摺動させる部材である。弁体ガイド50は、金属からなり、本実施形態では、圧縮強度等の機械的性質が零下162℃という極低温下でも常温と同程度に維持できるよう、所定の添加材を含有させたステンレス材からなる。
【0048】
弁体ガイド50には、
図1乃至
図4に示すように、円柱の断面である円内に、略長方形形状の断面を有して第2軸線方向L2に貫通する開口部52が形成されている。開口部52では、互いに対向する短辺側両側面に、この短辺側側面から凹設されたガイドスリット53,53がそれぞれ形成されている。ガイドスリット53,53の溝幅(
図4中、左上‐右下方向の大きさ)は、楔形成部22Aの楔23の最も厚い部分の大きさ(
図5中、左右方向の大きさ)に対応した一様の大きさであり、弁棒楔部材22の両側部(
図4中、左下‐右上方向両側の端部)が、ガイドスリット53,53内を上下に直進移動できるようになっている。すなわち、ガイドスリット53,53は、弁の開閉動作時に、第1弁体30と、第2弁体40と、第1,第2弁体30,40の間に挟まれた弁棒楔部材22とが開口部52内で回転するのを規制する回り止め機能となっている。
【0049】
また、開口部52は、長辺側側面である開口部第1側面52aと開口部第2側面52bとを有している。開口部第1側面52aは、第1弁体30が開口部52に挿入された状態では、第1弁体30の第1基部31の第1当接面31aと当接し、第2軸線方向L2に対し第1弁体30等の上下動時に、第1当接面31aが開口部第1側面52aを摺動する。また、開口部第2側面52bは、第2弁体40が開口部52に挿入された状態では、第2弁体40の第2基部41の第2当接面41aと当接し、第2軸線方向L2に対し第2弁体30等の上下動時に、第2当接面41aが開口部第2側面52bを摺動する。
【0050】
次に、仕切り弁1の動作について説明する。仕切り弁1では、第2軸線方向L2に対し弁棒20の移動に伴って連動する弁棒楔部材22が、第1弁体30と第2弁体40とを、第1軸線方向L1に対し、互いに反対側に同時に移動させる。これにより、第1弁座14に対し第1弁体30の第1基部31の第1当接面31aが、かつ、第2弁座15に対し第2弁体40の第2基部41の第2当接面41aが、それぞれ同時に当接または離間することで、中間流路13を流れるLNGの流れが制御される。また、仕切り弁1では、第1弁体30の第1基部31の第1当接面31aが第1弁座14に当接して閉弁するまでには、第1弁体30の第1突起部33のうち、主に第1頂部33T近傍が、弁棒楔部材22の楔形成部22Aにおいて、楔23の第1テーパ面23aと接触した状態で摺動する。これと同時に、第2弁体40の第2基部41の第2当接面41aが第2弁座15に当接して閉弁するまでには、第2弁体40の第2突起部43のうち、主に第2頂部43T近傍が、弁棒楔部材22の楔形成部22Aにおいて、楔23の第2テーパ面23bと接触した状態で摺動する。
【0051】
具体的に、
図1乃至
図3、及び
図6を用いて説明する。仕切り弁1の開弁状態では、弁棒20が所定の上方位置にあり、弁棒下端部21では、上側径大部21Aの逆座21Aaが、
図1に示すように、蓋61の蓋挿通孔62Hの開口縁部と当接しており、中間流路13内のLNGが、蓋挿通孔62Hを通じて外部に洩れるのを阻止している。この状態では、第1弁体30と第2弁体40とが、楔23の引掛け部24,24を、第1弁体30の第1基部31の第1スリット35と、第2弁体40の第2基部41の第2スリット45の上側側面を懸架した状態で、引き上げられている。開弁状態では、第1弁体30及び第2弁体40は、LNGが入力ポート11から中間流路13を通じて出力ポート12へ流れるときに、LNGの流れを遮断し乱さない位置に配置されている。
【0052】
また、開弁状態における第1弁体30の配置位置では、第1基部31にある第1突起部33の第1頂部33T近傍は、弁棒楔部材22の楔形成部22Aのうち、楔23の第1テーパ面23aを押圧していないフリー状態となっている。また、この状態における第2弁体40の配置位置では、第2基部41にある第2突起部43の第2頂部43T近傍は、弁棒楔部材22の楔形成部22Aのうち、楔23の第2テーパ面23bを押圧していないフリー状態となっている。
【0053】
次に、開弁状態から閉弁状態にするには、作業者が、ハンドル63を一方向(例えば、時計回り方向)に回転させ、ハンドル63による回転運動を、雄ネジ29と雌ネジ69との螺合により直線運動に変換して、弁棒20を第2軸線方向L2下側に移動させて、弁棒楔部材22、第1弁体30及び第2弁体40を下降させる。
図2に、下降中の第1弁体及び第2弁体が中間流路においてボディと接触した直後の中間状態を示す。
【0054】
第1弁体30及び第2弁体40が、中間流路13におけるボディ10の内周面の最も低い位置(
図1及び
図2中に図示した中間流路13の示す下側の線の位置)に到達した状態(中間状態)では、第1弁体30と第2弁体40とは、引掛け部24,24の上側側面により、開弁状態で懸架されたままになっている。そして、第1突起部33の第1頂部33T近傍は、弁棒楔部材22の楔23の第1テーパ面23aと接触した状態にあるものの、この第1テーパ面23aを押圧していないフリー状態となっている。そのため、たとえ第1弁体30が第1弁座14に当接した状態、またはそれに近い状態であっても、第1弁座14に対し第1弁体30を押圧させていないため、第1弁体30は、シール力を持って第1弁座14を閉弁していない。
【0055】
また、第2突起部43の第2頂部43T近傍は、弁棒楔部材22の楔23の第2テーパ面23bと接触した状態にあるものの、この第2テーパ面23bを押圧していないフリー状態となっている。そのため、たとえ第2弁体40が第2弁座15に当接した状態、またはそれに近い状態であっても、第2弁座15に対し第2弁体40を押圧させていないため、第2弁体40は、シール力を持って第2弁座15を閉弁していない。
【0056】
次に、中間状態から閉弁状態にするには、作業者が、ハンドル63を、中間状態からさらに一方向に回転させて、弁棒20を第2軸線方向L2下側に移動させ弁棒楔部材22を下降させる。弁棒20が、中間状態の位置からさらに第2軸線方向L2下側に下降すると、楔23の第1テーパ面23aが、静止している第1弁体30と相対的に移動し、第1弁体30の第1突起部33の第1頂部33T近傍が楔23の第1テーパ面23aと接触する位置が、楔23の中でも、第2軸線方向L2上側の幅広部位側に変化する。これと同時に、楔23の第2テーパ面23bが、静止している第2弁体40と相対的に移動し、第2弁体40の第2突起部43の第2頂部43T近傍が楔23の第2テーパ面23bと接触する位置が、楔23の中でも、第2軸線方向L2上側の幅広部位側に変化する。
【0057】
このとき、第1突起部33の第1頂部33T近傍は、既に中間状態で、楔23の第1テーパ面23aと接触しているため、弁棒楔部材22を中間状態の位置からさらに下降させるには、
図3に示すように、弁棒楔部材22を第2軸線方向L2下側に押圧する閉弁押圧力Fが必要となる。閉弁押圧力Fは、弁棒20を第2軸線方向L2下側に移動させることにより、発生させる。弁棒楔部材22に作用した閉弁押圧力Fは、楔23の第1テーパ面23aと接触する第1突起部33の第1頂部33T近傍に局部的に作用して、第1軸線方向L1に平行な入力ポート側分力Faと、第2軸線方向L2下側に作用する分力とに分けられる。そして、第1突起部33の第1頂部33T近傍で受けたこの入力ポート側分力Faにより、第1弁体30が、第1弁座14に密着できるまで押圧される。第1弁座14への密着力を強くするには、閉弁押圧力Fを大きくして弁棒楔部材22をさらに下降させ、入力ポート側分力Faをより大きくして、第1弁座14と当接した第1当接面31aの接触面圧(シール力)が大きくなるよう、第1弁体30の第1基部31を第1弁座14に押圧させる。かくして、第1弁体30と第1弁座14とが、LNGが洩れないよう、シール力を大きく持って当接し、閉弁する。
【0058】
また、第1突起部33の第1頂部33T近傍と同時に、第2突起部43の第2頂部43T近傍も、既に中間状態で、楔23の第2テーパ面23bと接触しているため、弁棒楔部材22を中間状態の位置からさらに下降させるには、
図3に示すように、弁棒楔部材22を第2軸線方向L2下側に押圧する閉弁押圧力Fが必要となる。閉弁押圧力Fは、前述したように、楔23の第1テーパ面23aと接触する第1突起部33の第1頂部33T近傍に局部的に作用させるときに、既に発生させた押圧力である。弁棒楔部材22に作用した閉弁押圧力Fは、楔23の第2テーパ面23bと接触する第2突起部43の第2頂部43T近傍に局部的に作用して、第1軸線方向L1に平行な出力ポート側分力Fbと、前述した第2軸線方向L2下側に作用する分力とに分けられる。そして、第2突起部43の第2頂部43Tで受けたこの出力ポート側分力Fbにより、第2弁体40が、第2弁座15に密着できるまで押圧される。第2弁座15への密着力を強くするには、閉弁押圧力Fをさらに大きくして弁棒楔部材22を下降させると、入力ポート側分力Faがより大きくなると同時に、出力ポート側分力Fbも大きくなる。そして、第2弁座15と当接した第2当接面41aの接触面圧(シール力)が大きくなるよう、第2弁体40の第2基部41を第2弁座15に押圧させる。かくして、第2弁体40と第2弁座15とが、LNGが洩れないよう、シール力を大きく持って当接し、閉弁する。
【0059】
なお、弁棒20に閉弁押圧力Fをかけて弁棒楔部材22を下降させて入力ポート側分力Faを発生させるときに、弁棒20の下降に伴い、
図3に示すように、引掛け部24,24が、第1弁体30の第1基部31の第1スリット35と、第2弁体40の第2基部41の第2スリット45の両方の上側側面から離れ、下側側面に近付く。そして、引掛け部24,24が、第1弁体30の第1基部31の第1スリット35と第2弁体40の第2基部41の第2スリット45の両方の下側側面に接触すると、それ以上の力で、第1弁体30を第1弁座14に、及び第2弁体40を第2弁座15に、それぞれ押圧できなくなる。そのため、仕切り弁1の通常の使用範囲において、引掛け部24が、第1スリット35と第2スリット45との両方の下側側面に接触にしない位置で、第1,第2弁体30,40による十分な締付力が得られるよう、第1スリット35と第2スリット45との第2軸線方向L2の幅に余裕を持たせて、第1スリット35と第2スリット45とを設定しておくことが重要である。
【0060】
閉弁状態から開弁状態にするには、ハンドル63を他方向(例えば、反時計回り方向)に回転させれば良いので、その説明は省略する。
【0061】
ここで、仕切り弁1の二次側(出力ポート12側)の閉弁性能を確認するため、流れる流体の圧力と、第2弁体と第2弁座との間の流体の漏洩量と、閉弁押圧力を発生させるのに必要なハンドルの回転角との関係について、確認調査を行った。
調査条件は、
(1)流体:N
2
(2)流体の温度:20℃(常温)
(3)流体の一次側圧力:1.5(MPa)、3.0(MPa)、5.47(MPa)、7.44(MPa)
(4)閉弁して流体の流れを遮断している時間:2(min.)
(5)ハンドルの基準角度:第2弁体40が第2弁座15に当接した状態であるものの、第2弁体40が第2弁座15を押圧していない状態(
図2に示す状態)を、ハンドルの回転角0(deg.)とする。
(6)ハンドルの最大許容回転角:360(deg.)
(7)調査繰り返し回数:ハンドル回転角45(deg.)の場合、何れの一次側圧力とも3回、180(deg.)の場合、一次側圧力7.44(MPa)で2回
【0062】
調査結果を
図7に示す。
図7から容易に理解できるように、一次側圧力が5.47(MPa)までの範囲では、第2弁体40を第2弁座15に当接させて閉弁するのに必要な出力ポート側分力Fbを作用させるのに、ハンドル回転角を45(deg.)だけ回転させれば、第2弁体40と第2弁座15からN
2洩れが0(cc/min.)となり、中間流路13と出力ポート12側が十分に気密されていることが判る。一方、一次側圧力が7.44(MPa)になると、N
2洩れを安定した状態で防ぐには、第2弁体40を第2弁座15に当接させて閉弁するのに必要な出力ポート側分力Fbを作用させるのに、ハンドル63を180(deg.)まで回転させる必要があることが判る。
【0063】
次に、調査結果の考察を行う。弁棒20からの閉弁押圧力Fが第2弁体40に伝達されていない無荷重状態では、ハンドル63の回転トルクが2.5(N・m)であった。そして、一次側圧力1.5(MPa)の場合、洩れなく閉弁できるまでのハンドル63のハンドル回転角は、45(deg.)であった。その一方、出力ポート側分力Fbを作用させて第2弁体40を第2弁座15に当接させて閉弁したときの閉弁荷重状態では、ハンドル63の回転トルクは、3(N・m)であった。つまり、第2弁体40を押圧する出力ポート側分力Fbを発生させるのに、作業者は、実質的に0.5(N・m)の回転トルクでハンドル63を回転させれば良く、このような0.5(N・m)という回転トルク値は、ハンドル63に荷重をほとんど掛けていない軽さであり、ハンドル63で締め付ける感覚を持たない軽さ(回転に伴う負荷)になっている。勿論、一次側圧力1.5(MPa)以外の場合でも、作業者に伴うハンドル63の回転負荷がほとんどない結果を得ている。
【0064】
これに対し、従来技術の仕切り弁として、第1,第2弁体30,40に代えて、2つの弁体が一体で楔形状に形成された金属製の従来型弁体を、楔形成部22Aに相当する楔部と面接触で、弁棒からの押圧力を従来型弁体に伝達させることにより、従来型弁体を従来型弁座に当接させて閉弁する構造の従来の仕切り弁についても、上述した確認調査を行った。調査によれば、従来型弁体を従来型弁座に当接した状態から閉弁状態になるまでハンドル車を回転させ、N
2洩れが0(cc/min.)となるよう、出力ポート側分力を作用させるのに、実質的な回転トルクが約13(N・m)であった。つまり、従来技術の仕切り弁では、閉弁するのに必要な従来型弁体の締切力を得るのに、ハンドル車を約13(N・m)の回転トルクで回さなければならなかったが、本実施形態の仕切り弁1では、前述したように、0.5(N・m)の回転トルクで回転させれば良い。従って、本実施形態の仕切り弁1を用いれば、閉弁するのに必要な締切力を、従来技術の仕切り弁よりも約97%も小さく抑制することができるという点で、有意性があることが検証できた。
【0065】
前述した構成を有する本実施形態に係る仕切り弁1の作用・効果について説明する。
【0066】
(1)第1弁体30と、第2弁体40と、入力ポート11と出力ポート12とが中間流路13を挟んで第1軸線AX上に形成されたボディ10と、中間流路13に対し入力ポート11側に形成された第1弁座14と、中間流路13に対し出力ポート12側に形成された第2弁座15と、第1テーパ面23aと第2テーパ面23bとにより楔状に形成され、第1軸線AXに沿う第1軸線方向L1と直交する第2軸線方向L2に移動可能な弁棒20に接続された弁棒楔部材22と、を有し、弁棒20の移動に伴って連動する弁棒楔部材22が、第1弁体30と第2弁体40とを、第1軸線方向L1に対し、互いに反対側に同時に移動させることにより、第1弁座14に対し第1弁体30が、かつ、第2弁座15に対し第2弁体40が、それぞれ同時に当接または離間することにより、中間流路13を流れるLNGの流れを制御する仕切り弁1において、第1弁体30は、第1軸線方向L1に対し、第1弁座14に当接する第1当接面31aとは反対側に、第1頂部33Tを形成して突出する第1突起部33を有し、第2弁体40は、第1軸線方向L1に対し、第2弁座15に当接する第2当接面41aとは反対側に、第2頂部43Tを形成して突出する第2突起部43を有すること、第1突起部33が第1テーパ面23aと接触した状態で摺動すると同時に、第2突起部43が第2テーパ面23bと接触した状態で摺動することにより、第1弁体30が第1弁座14に、かつ、第2弁体40が第2弁座15に、それぞれ当接して閉弁することを特徴とするので、第1弁体30を第1弁座14に、第2弁体40を第2弁座15にそれぞれ当接させて閉弁するには、第2軸線方向L2下側(一方側)に掛かる弁棒20の閉弁押圧力Fが、弁棒楔部材22に伝達され、第1軸線方向L1に対し、入力ポート11側に作用する入力ポート側分力Faと、出力ポート12側に作用する出力ポート側分力Fbとに分けられる。このとき、第1突起部33の第1頂部33T近傍と弁棒楔部材22の第1テーパ面23aとが、かつ第2突起部43の第2頂部43T近傍と弁棒楔部材22の第2テーパ面23bとが、それぞれ摺動するとき、第1突起部33側と第2突起部43側ともそれぞれほぼ点接触状態で接触している。
【0067】
すなわち、本実施形態の仕切り弁1では、第1突起部33の第1頂部33T近傍と弁棒楔部材22の第1テーパ面23aとの点接触位置と、かつ第2突起部43の第2頂部43T近傍と弁棒楔部材22の第2テーパ面23bとの点接触位置とが、中間流路13の第1軸線AX上に位置したところで、入力ポート側分力Faにより、第1弁体30が押圧されて第1弁座14に当接し閉弁させる。このとき、第1軸線AXを中心とする径方向に対する第1弁体30と第1弁座14との当接部位が、第1軸線AXを中心とする第1弁座14の周方向全周に亘って、各当接部位ともより均一になり、第1弁座14に当接する第1弁体30のシール力が、安定した状態で得ることができる。第1弁体30が押圧されて第1弁座14に閉弁させるのと同時に、出力ポート側分力Fbとにより、第2弁体40が押圧されて第2弁座15に当接し閉弁させる。このとき、第1軸線AXを中心とする径方向に対する第2弁体40と第2弁座15との当接部位が、第1軸線AXを中心とする第2弁座15の周方向全周に亘って、より均一になり、第2弁座15に当接する第2弁体40のシール力が、安定した状態で得ることができる。また、第1突起部33の第1頂部33T近傍と弁棒楔部材22の第1テーパ面23aとの点接触位置と、かつ第2突起部43の第2頂部43T近傍と弁棒楔部材22の第2テーパ面23bとの点接触位置とは、弁棒楔部材22を境に左右両側で、バランスのとれた位置となっている。そのため、第1弁座14に当接する第1弁体30のシール力と、第2弁座15に当接する第2弁体40のシール力とに、シール力の差異が生じ難い。また、当該仕切り弁1の製造時の組付け精度に起因して、第1弁座14に当接する第1弁体30のシール力と、第2弁座15に当接する第2弁体40のシール力とのシール力の差異が生じ難い。
【0068】
特に、第1突起部33の第1頂部33T近傍と弁棒楔部材22の第1テーパ面23aとの点接触位置と、かつ第2突起部43の第2頂部43T近傍と弁棒楔部の第2テーパ面23bとの点接触位置とが、中間流路13の第1軸線AX上に位置し、第1弁体30の中心に第1突起部33を、第2弁体40の中心に第2突起部43をそれぞれ配置されていれば、入力ポート側分力Faの向きと出力ポート側分力Fbの向きが、当該仕切り弁1を長期間使用しても、第1軸線方向L1に沿って真直ぐな向きに維持される。そのため、第1弁座14に当接する第1弁体30のシール力と、第2弁座15に当接する第2弁体40のシール力が、第1軸線AXを境とする上下両側で、第1弁座14の周方向全体と第2弁座15の周方向全体に、それぞれ均等に作用して、経時的に低下するのを抑えて安定した状態で維持できる。また、第1突起部33の第1頂部33T近傍と弁棒楔部材22の第1テーパ面23aとが、かつ第2突起部43の第2頂部43T近傍と弁棒楔部材22の第2テーパ面23bとが、何れもほぼ点接触であるため、楔部の両側テーパ面を各押圧部材の楔部当接面にそれぞれ面接触して摺動させる従来の仕切り弁に比して、偏磨耗し難い。よって、弁の開閉動作が複数回繰り返し行われても、流体(LNG)洩れのないよう、第1弁体30が第1弁座14に、第2弁体40が第2弁座15にそれぞれ、均一な状態で当接して、軽微な力で高い密着力で閉弁することが、より長い期間、維持することができる。特に制御する流体が、本実施形態のように、零下162℃という極低温のLNG等、可燃性流体である場合でも、流体(LNG)洩れのないよう、高い密着力で閉弁することが維持できる。
【0069】
また、第1突起部33の第1頂部33T近傍と楔23の第1テーパ面23aとが、及び、第2突起部43の第2頂部43T近傍と楔23の第2テーパ面23bとが、何れもほぼ点接触であり、かつ第2軸線方向L2一方側に掛かる弁棒20の閉弁押圧力Fが、第1突起部33を介して第1弁体30の中心から第1弁座14に、及び第2突起部43を介して第2弁体40の中心から第2弁座15にそれぞれ、直接伝達される。そのため、第1突起部33の第1頂部33T近傍と第1テーパ面23aとの相対的な磨耗と、第2突起部43の第2頂部43T近傍と第2テーパ面23bとの相対的な磨耗とが、楔部の各テーパ面と押圧部材の各楔部当接面とを面接触させて摺動させた従来の仕切り弁に比して、抑制できる。よって、磨耗した部分等の交換や補修を行うメンテナンスの回数もより少なく抑制でき、コストの低減を図ることができる。また、弁の開閉弁動作が複数回繰り返し行われても、弁棒楔部材22と、第1弁体30の第1突起部33及び第2弁体40の第2突起部43とが磨耗し難いことから、その磨耗粉が、流路内を流れるLNGに混入することがほとんどない。特に制御する流体が、本実施形態のように、零下162℃という極低温の可燃性流体(LNG)である場合、磨耗粉がLNGに混入することに起因した第1弁体30、第2弁体40等のメンテナンスの頻度が、より少なく抑制することができ、ひいてはメンテナンスに掛かるコストが低減できる。
【0070】
従って、本実施形態の仕切り弁1では、弁の開閉動作を複数回繰り返し行っても、磨耗粉がLNGに混入するのを抑えて、安定したシール力で閉弁ことができる、という優れた効果を奏する。
【0071】
(2)第1突起部33と第2突起部43とは何れも、半球型形状に形成されていること、を特徴とするので、弁棒20への閉弁押圧力Fが第1弁体30に掛かり、第1弁体30が、弁棒楔部材22の第1テーパ面23aに作用する入力ポート側分力Faにより押圧されて入力ポート11側に移動すると、半球型形状の第1突起部33との接触部位が、弁棒楔部材22の第1テーパ面23aで移動する。同時に、第2弁体40が、弁棒楔部材22の第2テーパ面23bに作用する出力ポート側分力Fbにより押圧されて出力ポート12側に移動すると、半球型形状の第2突起部43との接触部位が、弁棒楔部材22の第2テーパ面23bで移動する。これにより、弁棒楔部材22は、第1テーパ面23aの同じ部位で、及び第2テーパ面23bの同じ部位でそれぞれ、磨耗しなくなる。また、第1突起部33と第2突起部43とが何れも、半球型形状に形成されていると、弁棒楔部材22の第1テーパ面23aに対する第1突起部33の第1頂部33T近傍との接触状態(当たり面や角度等)が、経時的に変化し難い。また、弁棒楔部材22の第2テーパ面23bに対する第2突起部43の第2頂部43T近傍との接触状態(当たり面や角度等)が、経時的に変化し難い。
【0072】
そのため、入力ポート側分力Faの向きと出力ポート側分力Fbの向きとが、当該仕切り弁1の使用期間がより長い間、第1軸線方向L1に沿って真直ぐな向きに維持され易くなり、第1弁座14に当接する第1弁体30のシール力や、第2弁座15に当接する第2弁体40のシール力が、経時的に低下するのを抑えられ、安定した状態で維持できる。これにより、第1弁体30が第1弁座14に、第2弁体40が第2弁座15にそれぞれ、各当接部位とも全周に亘って均一な状態で当接し、流体(LNG)洩れのないよう、高い密着力で当接し閉弁することが、より長い期間、維持することができる。
【0073】
また、弁棒楔部材22の第1テーパ面23aと第1弁体30の第1突起部33の第1頂部33T近傍との磨耗や、弁棒楔部材22の第2テーパ面23bと第2弁体40の第2突起部43の第2頂部近傍との磨耗とが、より小さく抑制することができる。そのため、本実施形態の仕切り弁1と、楔部の両側テーパ面と各押圧部材の楔部当接面とをそれぞれ面接触させて摺動させた従来の仕切り弁とのそれぞれに、弁棒20への閉弁押圧力F(押圧力)を同じ大きさで掛けた場合、本実施形態の仕切り弁1では、第1弁体30を第1弁座14に当接させるのに必要な入力ポート側分力Faと、第2弁体40を第2弁座15に当接させるのに必要な出力ポート側分力Fbとが、より小さくすることができ、弁棒20への閉弁押圧力Fから第1弁体30と第2弁体40とに伝達させる力のロスが小さくできる。よって、第1弁体30側と第2弁体40側の両方を閉弁するのに、閉弁押圧力Fを掛けた弁棒20を第2軸線方向L2下側に移動させ、弁棒楔部材22に掛かる第2軸線方向L2下側の閉弁押圧力Fが、楔部の両側テーパ面と各押圧部材の楔部当接面とをそれぞれ面接触させて摺動させた従来の仕切り弁に比して、小さくできる。
【0074】
特に、本実施形態の仕切り弁1の仕切り弁が、弁棒楔部材22に掛かる閉弁押圧力Fを調整するのに、本実施形態のように、弁棒20と連結したハンドル63を、作業者による手動操作で回転させる構造である場合でも、入力ポート側分力Faの向きと出力ポート側分力Fbの向きが、第1軸線方向L1に沿って真直ぐな向きに維持されたまま作用し易くなる。そのため、作業者が閉弁操作時にハンドル63を一方向に回転させることにより、閉弁してLNGを遮断させるための第1,第2弁体30,40による締付力も、楔部の両側テーパ面と各押圧部材の楔部当接面とをそれぞれ面接触させて摺動させた従来の仕切り弁に比して、小さく抑えることができ、閉弁操作に係る作業者の負担が低減できる。
【0075】
また、本実施形態1の仕切り弁1のように、楔部23に掛かる閉弁押圧力Fを調整するのに、弁棒20と連結したハンドル63を、作業者による手動操作で回転させて調整する手動式の仕切り弁1の場合には、第1,第2弁体30,40によりLNGを遮断させるための締付力が低減できるため、弁棒20を上下させるねじ(雄ネジ29と雌ネジ69)ピッチを大きくすることができる。これにより、第1,第2弁体30,40の開閉に伴うハンドル63の回転操作回数が、ハンドル車による回転運動を弁棒の上下運動に変換するのに、弁棒にねじを設けた構造で構成された従来の仕切り弁に比べ、低減できる。
【0076】
また、本実施形態の仕切り弁1では、第1突起部33と第2突起部43とが何れも、例えば、金属製で形成されていると、第1突起部33の第1頂部33T近傍と弁棒楔部材22の第1テーパ面23aとは、及び、第2突起部43の第2頂部43T近傍と弁棒楔部材22の第2テーパ面23bとは、何れも点接触に近い状態で接触できるため、上述した磨耗が小さくなる。そして、好ましくは、第1突起部33と第2突起部43とに、耐摩耗性を施す対策が行われていると良い。
【0077】
ところで、楔部の両側テーパ面と各押圧部材の楔部当接面とをそれぞれ面接触させて摺動させた従来の仕切り弁では、入力ポート側に作用させる一方側分力と、出力ポート側に作用させる他方側分力とを、流路方向に沿って真直ぐに作用させるには、楔部のテーパ面と押圧部材の楔部当接面とに対し、例えば、平面度、平行度等の加工精度や組付け精度を高精度にして製造する必要がある。その上、特にテーパ面や押圧部材の楔部当接面に磨耗対策を施せば、仕切り弁がコスト高になる。また、楔部と弁体との間に押圧部材が必要であるため、従来の仕切り弁はコスト高である。
【0078】
これに対し、本実施形態の仕切り弁1では、半球型形状の第1突起部33の第1頂部33T近傍と弁棒楔部材22の第1テーパ面23aとは、及び、半球型形状の第2突起部43の第2頂部43T近傍と弁棒楔部材22の第2テーパ面23bとは、何れも点接触に近い状態で接触できる。そのため、弁棒楔部材22の製造時に、第1テーパ面23a及び第2テーパ面23bと、面接触させる相手側部材がないため、第1テーパ面23a及び第2テーパ面23bに対し加工精度や組付け精度を比較的ラフにして形成することができる。また、第1突起部33や第2突起部43は半球型形状であるため、弁棒楔部材22の第1テーパ面23a及び第2テーパ面23bに対し、これらの第1突起部33、第2突起部43の接触面積は小さく、特に耐摩耗性を有する処理を施さなくても良い。よって、製造コストが低減できる。また、本実施形態の仕切り弁1は、楔部と弁体との間に押圧部材を必要とする従来の仕切り弁と異なり、弁棒楔部材22に作用する閉弁押圧力Fを、第1弁体30と第2弁体40に直接伝えるため、部品点数が削減できてコストが安価になる。
【0079】
(3)第1弁体30は、第1突起部33と別体で、第1当接面31aを有する板状の第1基部31を有し、第1突起部33が第1基部31に着脱可能に取り付けられていること、及び第2弁体40は、第2突起部43と別体で、第2当接面41aを有する板状の第2基部41を有し、第2突起部43が第2基部41に着脱可能に取り付けられていること、を特徴とするので、弁棒楔部材22の第1テーパ面23aとの間で第1突起部33が、または第2テーパ面23bとの間で第2突起部43が、摩擦力をそれぞれ受けて磨耗しても、第1突起部33や第2突起部43を交換するだけで、第1弁体30の第1基部31や第2弁体40の第2基部41が継続して使用できる。また、第1弁体30を、第1基部31と第1突起部33とを異なる材質で構成した場合や、第2弁体40を、第2基部41と第2突起部43とを異なる材質で構成した場合には、このような第1弁体30や第2弁体40が簡単に製造できる。
【0080】
(4)少なくとも第1基部31と第2基部41とは、樹脂で形成されていること、を特徴とするので、樹脂は金属より変形し易い性質があることから、第1基部31の第1当接面31aと第1弁座14とが密着し易く、第1弁座14に当接する第1弁体30のシール性能が大きく確保できる。また、第2基部41の第2当接面41aと第2弁座15とが密着し易く、第2弁座15に当接する第2弁体40のシール性能が大きく確保できる。
【0081】
特に、本実施形態に係る仕切り弁1では、樹脂は、ポリ・エーテル・エーテル・ケトンと、カーボン繊維との複合材樹脂(PEEK・カーボン繊維複合樹脂)であるので、耐摩耗性、圧縮強度等の機械的性質が、例えば、零下162℃という極低温でも、常温と同程度に維持できる材料である。制御する流体が、本実施形態のように、零下162℃という極低温のLNG等、可燃性流体である場合でも、このような可燃性流体の接触により、PEEK・カーボン繊維複合樹脂の変質は生じない。よって、本実施形態の仕切り弁1は、このような極低温の可燃性流体の流れを制御する場合に適用することができる。
【0082】
また、本実施形態に係る仕切り弁1では、第1基部31には、第1軸線方向L1に沿う厚み方向THに貫通する貫通孔31Hが穿孔されているので、第1弁体30を第1弁座14に当接させて閉弁すると同時に、第2弁体40を第2弁座15に当接させて閉弁した状態において、揮発性の流体が、中間流路に残留するのを防止することができる。すなわち、本実施形態のように、零下162℃という極低温で、揮発性の高い物性のLNG等、揮発性を有する流体の流れを制御する場合、第1弁体30を第1弁座14に当接させて閉弁すると同時に、第2弁体40を第2弁座15に当接させて閉弁した状態でも、このような揮発性の流体は、中間流路13に残留することがある。中間流路13に残留した揮発性の流体は、貫通孔31Hを通じて中間流路13から入力ポート11に還流し、中間流路13において、揮発性の流体の残留を防ぐことができる。
【0083】
以上において、本発明を実施形態に即して説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できる。
【0084】
例えば、実施形態では、第1弁体30の第1基部31の第1当接面31aと、第2弁体40の第2基部41の第2当接面41aを、共に全面フラット形状とした。しかしながら、第1弁体の第1基部の第1当接面や、第2弁体の第2基部の第2当接面の面形状は、実施形態に限定されず適宜変更可能である。その一例として、変形例に係る第1弁体の第1基部の第1当接面と、第2弁体の第2基部の第2当接面の面形状を、
図8に示す。
図8に示すように、変形例に係る第1弁体30Aでは、第1当接面36bは、段差を有した第1外側平面36aと第1内側平面36cとの間を繋ぎ、第1弁座14と当接可能な位置に配置されたテーパ面で形成されている。また、第2弁体40Aでも、第2当接面46bは、段差を有した第2外側平面46aと第2内側平面46cとの間を繋ぎ、第2弁座15当接可能な位置に配置されたテーパ面で形成されている。