(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5855507
(24)【登録日】2015年12月18日
(45)【発行日】2016年2月9日
(54)【発明の名称】鍛造成形装置および鍛造成形方法
(51)【国際特許分類】
B21J 5/02 20060101AFI20160120BHJP
B21K 1/14 20060101ALI20160120BHJP
F16D 3/20 20060101ALI20160120BHJP
【FI】
B21J5/02 C
B21K1/14 A
F16D3/20 J
【請求項の数】9
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-77284(P2012-77284)
(22)【出願日】2012年3月29日
(65)【公開番号】特開2013-202681(P2013-202681A)
(43)【公開日】2013年10月7日
【審査請求日】2014年11月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(72)【発明者】
【氏名】繆 家▲か▼
(72)【発明者】
【氏名】世良 昌
(72)【発明者】
【氏名】牧野 俊介
【審査官】
矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−055918(JP,A)
【文献】
特開平07−124794(JP,A)
【文献】
米国特許第05195349(US,A)
【文献】
特開平06−091339(JP,A)
【文献】
特開昭59−133927(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21J 5/02
B21K 1/14
F16D 3/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方ダイスと下方ダイスとを有する金型と、下方パンチと、上方パンチとを備え、前記上方ダイスと下方ダイスとが重ね合わされた状態でキャビティが形成されている前記金型が下降して、この金型のキャビティ内に前記下方パンチのみ又は前記下方パンチと上方パンチとが押し込まれて、このキャビティ内のワークを圧縮する鍛造成形装置であって、
前記金型の下降の下死点における前記下方パンチと下方ダイスの相対的位置関係を維持するように前記下方パンチを下方から押し上げることによって、キャビティ内においてワークが圧縮されてなる成形品と下方パンチとの間の空間形成を規制する押し上げ機構を備え、
前記押し上げ機構を、前記下方パンチを載置する載置台に付設されて、前記下方パンチを押し上げるプランジャ機構にて構成したことを特徴とする鍛造成形装置。
【請求項2】
前記下方パンチが、下方パンチ本体と、該下方パンチ本体に対して上下方向に係合する支持体とで構成され、該支持体を前記プランジャ機構が下方から押し上げることを特徴とする請求項1に記載の鍛造成形装置。
【請求項3】
前記下方パンチを下方に押し下げる作用を成すシリンダ機構を備え、該シリンダ機構は、前記上方ダイスと下方ダイスとが重ね合わされた状態で、該シリンダ機構のシリンダ室内を大気圧状態とする切換手段を備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の鍛造成形装置。
【請求項4】
前記プランジャ機構は、前記シリンダ機構のシリンダ室内の大気圧状態において、前記下方パンチを押し上げることを特徴とする請求項3に記載の鍛造成形装置。
【請求項5】
前記プランジャ機構は、前記下方パンチの下部と当接するプランジャと該プランジャを上方に弾性的に押圧する押圧部材を備えることを特徴とする請求項4に記載の鍛造成形装置。
【請求項6】
上方ダイスと下方ダイスとを有する金型と、下方パンチと、上方パンチと、前記下方パンチを載置する載置台に付設されたプランジャ機構とを使用し、前記上方ダイスと下方ダイスとが重ね合わされた状態でキャビティが形成されている前記金型が下降して、この金型のキャビティ内に前記下方パンチのみ又は前記下方パンチと上方パンチとが押し込まれて、このキャビティ内のワークを圧縮する鍛造成形方法であって、
前記金型の下降の下死点における前記下方パンチと下方ダイスの相対的位置関係を維持するように前記下方パンチを下方から前記プランジャ機構で押し上げることによって、キャビティ内においてワークが圧縮されてなる成形品と下方パンチとの間の空間形成を規制することを特徴とする鍛造成形方法。
【請求項7】
前記下方パンチを下方に押し下げる作用を成すシリンダ機構のシリンダ室内を大気圧状態とし、この状態で、前記下方パンチを下方から前記プランジャ機構で押し上げることを特徴とする請求項6に記載の鍛造成形方法。
【請求項8】
前記金型の下死点が過ぎて、前記下方ダイスから前記上方ダイスが離間した後、前記下方パンチを上方へ駆動させることによって前記下方ダイスから成形品を離型させ、その後、前記下方パンチを下方に押し下げる作用を成すシリンダ機構にて、前記下方パンチを前記下方ダイスよりも相対的に押し下げて、次のワークを、前記下方ダイスに投入することを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の鍛造成形方法。
【請求項9】
前記成形品が等速自在継手の内側継手部材構成品であることを特徴とする請求項6〜請求項8のいずれか1項に記載の鍛造成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、等速自在継手の内側継手部材等の鍛造品を成形する鍛造成形装置および鍛造成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来には、例えば、トリポード型等速自在継手のトリポード部材を成形する場合、閉塞鍛造金型にて鍛造成形する(特許文献1)。また、閉塞鍛造金型装置として、
図15から
図21に示すものがある。この場合の閉塞鍛造金型装置は、上方ダイス1と下方ダイス2とを有する金型3と、上方ダイス1と下方ダイス2とが重ね合わされた状態で形成されるキャビティ4に押し込まれる上方パンチ5及び下方パンチ6とを備える。下方パンチ6は、下方パンチ本体7と支持体8とで構成される。
【0003】
また、下方ダイス2はダイスホルダ9にて保持され、このダイスホルダ9に、下方パンチ6を下方に押し下げる作用を持つシリンダ機構10が付設されている。この場合、ダイスホルダ9の下面に開口する軸方向孔を設け、この孔をもってシリンダ機構10のシリンダ室11を構成している。また、このシリンダ室11にはピストンロッド12が嵌入されている。このピストンロッド12は支持体8に保持されている。支持体8は、下方パンチ本体7が内嵌される筒部8aと、この筒部8aの下部に設けられた外鍔部8bとからなり、この外鍔部8bからピストンロッド12が立設されている。そして、シリンダ室11には流体圧供給手段15が連設されている。
【0004】
下方パンチ本体7は、上部にパンチ部7aが形成され、下部に大径ボス部7bが形成されている。また、支持体8の筒部8aの内径面の上方開口側に小径部16が形成され、この小径部16の段差部16aが下方パンチ本体7の大径ボス部7bの段差部17に係合する。このため、流体圧供給手段15からシリンダ室11にエア圧が供給されることにより、下方パンチ本体7は下方へ押し下げられる。
【0005】
上方ダイス1には上方パンチ5が嵌入される孔18が設けられ、下方ダイス2には下方パンチ本体7が嵌入される孔部19が設けられている。また、孔18の下方開口部18aと、孔部19の上方開口部19aとで前記キャビティ4を構成し、上方パンチ5の下端面(パンチ部)にて、キャビティ4の上方開口部を塞ぎ、下方パンチ本体7のパンチ部7aがキャビティ4の下方開口部に突入状態となってこの下方開口部を塞ぐ。
【0006】
次に、前記のように構成された閉塞鍛造金型装置にて、製品を鍛造成形する方法を説明する。まず
図15に示すように、上方ダイス1と下方ダイス2とを離間させた開状態として、キャビティ4を構成する下方ダイス2の孔部19の開口部19aにワークWを投入する。この場合、下方パンチ本体7のパンチ部7aにてワークWを受けることになる。
【0007】
次に、上方ダイス1を下降させて、
図16に示すように、この上方ダイス1の下面を下方ダイス2の上面に重ね合わせる。その後、
図17に示すように、上方ダイス1と下方ダイス2とを下降させて、下方パンチ本体7のパンチ部7aをキャビティ4内に突入させる。これによって、キャビティ4内においてワークWを圧縮して製品を成形する。そして、
図18から
図21に示すように、上方ダイス1を上昇させた後、ノックアウトピン20を上昇させて下方パンチ本体7を上昇させることによって、製品(成形品)Sを取り出せばよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−343592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、前記装置においては、
図17に示すように製品を成形した後、シリンダ室11の内圧のため、
図18に示すように、下方パンチ本体7と製品(成形品)Sとの間に空間Kが形成される。このため、
図19に示すように、上方ダイス1を上昇させた場合、この空間Kの容積が最大に拡大する。その後は、
図20に示すように、この空間Kの容積が減少し、これに伴い空間Kの圧力が上昇する。このため、
図21に示すように、下方パンチ本体7を上昇させて成形品Sを取り出す場合、成形品Sが下方ダイス2から離型される際に、成形品Sの姿勢が不安定となり、成形品Sが飛び出すという所謂「飛び出し現象」が現れる。
【0010】
このような飛出現象は鍛造プレス回転数が高速化するに伴い著しくなる。このため、このような閉塞鍛造での生産性の向上の妨げとなっていた。ところで、成形品の飛び出しを防ぐためには、成形品の下方パンチまたは下方ダイスとの食い付き力を高めればよい。食い付き力を高めるには、金型形状に工夫を凝らすか接触面を増加させればよい。しかしながら、下方パンチへの成形品の食い付き力を高めると搬送装置に負荷がかかることになる。また、下方ダイスとの食い付き力を高めると、成形荷重が増加して金型寿命が短くなる等の問題点があった。
【0011】
そこで、本発明は斯かる実情に鑑み、プレス回転数が高速になっても成形品の安定した姿勢を保持でき、生産性に優れた鍛造成形装置および鍛造成形方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の鍛造成形装置は、上方ダイスと下方ダイスとを有する金型と、下方パンチと、上方パンチとを備え、前記上方ダイスと下方ダイスとが重ね合わされた状態でキャビティが形成されている前記金型が下降して、この金型のキャビティ内に前記下方パンチのみ又は前記下方パンチと上方パンチとが押し込まれて、このキャビティ内のワークを圧縮する鍛造成形装置であって、前記金型の下降の下死点における前記下方パンチと下方ダイスの相対的位置関係を維持するように前記下方パンチを下方から押し上げることによって、キャビティ内においてワークが圧縮されてなる成形品と下方パンチとの間の空間形成を規制する押し上げ機構を備え
、前記押し上げ機構を、前記下方パンチを載置する載置台に付設されて、前記下方パンチを押し上げるプランジャ機構にて構成したことを特徴とする。
【0013】
本発明の鍛造成形装置によれば、押し上げ機構にて、成形品と下方パンチとの間の空間形成を規制することができる。このため、成形品を金型から取り出す際の成形品の飛び出し現象を防止できる。
【0014】
上記構成において、前記下方パンチが、下方パンチ本体と、該下方パンチ本体に対して上下方向に係合する支持体とで構成され、該支持体を前記
プランジャ機構が下方から押し上げてもよい。
【0015】
このようにすれば、押し上げ機構をノックアウトピンから離隔して配設することが可能なので、押し上げ機構の設計の自由度が向上する。
【0016】
上記何れかの構成において、前記下方パンチを下方に押し下げる作用を成すシリンダ機構を備え、該シリンダ機構は、前記上方ダイスと下方ダイスとが重ね合わされた状態で、該シリンダ機構のシリンダ室内を大気圧状態とする切換手段を備えることができる。
【0017】
このような切換手段を備えたシリンダ機構では、切換手段にてシリンダ室内が大気圧状態となるようにすることによって、押し上げ機構による下方パンチの押し上げが安定する。すなわち、シリンダ室内が大気圧状態でなければ、シリンダ室の内圧が高まり、押し上げ機構による下方パンチの押し上げが難しいものとなる。これに対して、シリンダ室内が大気圧状態であれば、シリンダ室の内圧が高まらず、押し上げ機構によって下方パンチを安定して押し上げることができる。
【0018】
また、この構成において、前記
プランジャ機構は
、前記シリンダ機構のシリンダ室内の大気圧状態において、前記下方パンチを押し上げ
ることができる
。
【0019】
更に、この構成において、前記プランジャ機構は、前記下方パンチの下部と当接するプランジャと該プランジャを上方に弾性的に押圧する押圧部材を備えることができる。このようにすれば、プランジャ機構の構成がシンプルであるため、その製造コストの上昇を抑制できる。
【0020】
本発明の鍛造成形方法は、上方ダイスと下方ダイスとを有する金型と、下方パンチと、上方パンチと
、前記下方パンチを載置する載置台に付設されたプランジャ機構とを使用し、前記上方ダイスと下方ダイスとが重ね合わされた状態でキャビティが形成されている前記金型が下降して、この金型のキャビティ内に前記下方パンチのみ又は前記下方パンチと上方パンチとが押し込まれて、このキャビティ内のワークを圧縮する鍛造成形方法であって、前記金型の下降の下死点における前記下方パンチと下方ダイスの相対的位置関係を維持するように前記下方パンチを下方から
前記プランジャ機構で押し上げることによって、キャビティ内においてワークが圧縮されてなる成形品と下方パンチとの間の空間形成を規制することを特徴とする。
【0021】
本発明の鍛造成形方法によれば、成形品と下方パンチとの間の空間形成を規制することができる。このため、成形品を金型から取り出す際の成形品の飛び出し現象を防止できる。
【0022】
上記の鍛造成形方法において、前記下方パンチを下方に押し下げる作用を成すシリンダ機構のシリンダ室内を大気圧状態とし、この状態で、前記下方パンチを下方から
前記プランジャ機構で押し上げることが好ましい。
【0023】
また、上記何れかの鍛造成形方法において、前記金型の下死点が過ぎて、前記下方ダイスから前記上方ダイスが離間した後、前記下方パンチを上方へ駆動させることによって前記下方ダイスから成形品を離型させ、その後、前記下方パンチを下方に押し下げる作用を成すシリンダ機構にて、前記下方パンチを前記下方ダイスよりも相対的に押し下げて、次のワークを、前記下方ダイスに投入することが好ましい。
【0024】
上記何れかの鍛造成形方法において、成形品が等速自在継手の内側継手部材構成品であるように設定できる。ここで、内側継手部材構成品とは、ゼッパタイプやアンダーカットフリーの固定式等速自在継手の内側継手部材やトリポードタイプの摺動式等速自在継手の内側継手部材としてのトリポード部材等である。
【発明の効果】
【0025】
本発明では、成形品を金型から取り出す際の成形品の飛び出し現象を防止できるので、ワーク投入及び成形品の取り出しを安定して行うことができる。このため、プレスの高速化に対応することができ、生産性の向上を図ることができる。
【0026】
押し上げ機構がプランジャ機構にて構成することによって、成形品と下方パンチとの間の空間形成を安定して規制することができ、特に、プランジャ機構が、下方パンチの下部と当接するプランジャと該プランジャを上方に弾性的に押圧する押圧部材を備えたものであれば、空間形成の規制を簡易な構成で行うことができ、低コスト化に寄与する。
【0027】
切換手段を備えたものでは、安定した鍛造成形装置の稼動が可能となって、生産性の向上を一層図ることができる。
【0028】
本発明の鍛造成形方法によって、内側継手部材やトリポード部材等の内側継手部材構成品を成形することができ、これらの生産性の向上を達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の実施形態を示す鍛造成形装置の断面図である。
【
図2】前記鍛造成形装置の流体圧供給手段の回路図である。
【
図3】前記鍛造成形装置のワーク投入状態の断面図である。
【
図4】前記鍛造成形装置の金型合わせ状態の断面図である。
【
図5】前記鍛造成形装置の金型プレス状態の断面図である。
【
図6】前記鍛造成形装置の金型が下死点を越えた状態の断面図である。
【
図7】前記鍛造成形装置の上方ダイスが離間した状態の断面図である。
【
図8】前記鍛造成形装置のノックアウト途中の断面図である。
【
図9】前記鍛造成形装置のノックアウト完了状態の断面図である。
【
図10】前記鍛造成形装置の初期状態に戻した状態の断面図である。
【
図11】前記鍛造成形装置にて成形された鍛造成形品を用いたトリポード型等速自在継手の横断面図である。
【
図12】前記トリポード型等速自在継手の縦断面図である。
【
図13】前記トリポード型等速自在継手の要部拡大図である。
【
図14】前記鍛造成形品から成形されたトリポード部材の断面図である。
【
図15】従来の鍛造成形装置のワーク投入状態の断面図である。
【
図16】前記
図15の鍛造成形装置の金型合わせ状態の断面図である。
【
図17】前記
図15の鍛造成形装置の金型プレス状態の断面図である。
【
図18】前記
図15の鍛造成形装置の金型が下死点を越えた状態の断面図である。
【
図19】前記
図15の鍛造成形装置の上方ダイスが離間した状態の断面図である。
【
図20】前記
図15の鍛造成形装置のノックアウト途中の断面図である。
【
図21】前記
図15の鍛造成形装置のノックアウト完了状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態を図面に従って説明する。
【0031】
図1は本発明の鍛造成形装置を示し、この鍛造成形装置は、上方ダイス21と下方ダイス22とを有する金型23と、上方ダイス21と下方ダイス22とが重ね合わされた状態で形成されるキャビティ24に押し込まれる上方パンチ25及び下方パンチ26とを備える。本実施形態では、下方パンチ26は、下方パンチ本体27と、該下方パンチ本体27に対して上下方向に係合する支持体28とで構成される。
【0032】
下方ダイス22はダイスホルダ29にて保持され、このダイスホルダ29に、下方パンチ26を下方に押し下げる作用を持つシリンダ機構30が付設されている。この場合、ダイスホルダ29の下面に開口する軸方向孔を設け、この孔をもって前記シリンダ室31を構成している。また、このシリンダ室31にはピストンロッド32が嵌入されている。このピストンロッド32は支持体28に保持されている。支持体28は、下方パンチ本体27が内嵌される筒部28aと、この筒部28aの下部に設けられた外鍔部28bとからなり、この外鍔部28bからピストンロッド32が立設されている。また、シリンダ室31には流体圧供給手段35が連設されている。この場合、バランス性を考慮して、ピストンロッド32が嵌入されるシリンダ室31が周方向に沿って所定ピッチで複数(例えば、3個)配設される。
【0033】
下方パンチ本体27は、上部にパンチ部27aが形成され、下部に大径ボス部27bが形成されている。また、支持体28の筒部28aの内径面の上方開口側に小径部36が形成され、この小径部36の段差部36aが下方パンチ本体27の大径ボス部27bの段差部37に対して上下方向に係合する。
【0034】
そして、上方ダイス21には上方パンチ25が嵌入される孔40が設けられ、下方ダイス22には下方パンチ本体27が嵌入される孔部41が設けられている。また、孔40の下方開口部40aと、孔部41の上方開口部41aとで前記キャビティ24を構成し、上方パンチ25の下端面(パンチ部)25aにて、キャビティ24の上方開口部を塞ぎ、下方パンチ本体27のパンチ部27aがキャビティ24の下方開口部に突入状態となってこの下方開口部を塞ぐ。
【0035】
流体圧供給手段35は切換手段Cとしての切換弁45とリリーフ弁46とを備える。そして、
図2(b)に示す状態に切換弁45を切り換えれば、図外のエア供給源からコック47を介して、この流体圧供給手段35にエアが供給される。これによって、切換弁45を介して、ダイスホルダ29に開設された通路48にエアが導入され、この通路48からシリンダ室31内に供給される。また、
図2(a)に示す状態に切換弁45を切り換えれば、エア供給源からの流体圧供給手段35へのエア供給が停止し、シリンダ室31内が大気圧状態となる。
【0036】
ところで、この鍛造成形装置には、支持体28を下方から押し上げる押し上げ機構Pが設けられている。すなわち、押し上げ機構Pは、下方パンチ26を載置する載置台Tに付設されたプランジャ機構50にて構成される。プランジャ機構50は、載置台Tに設けられる上下方向に延びる孔部51に配置されるものであって、下方パンチ26の下部と当接するプランジャ52と該プランジャ52を上方に弾性的に押圧する押圧部材53を備える。具体的には、例えば押圧部材53はコイルスプリングからなる。孔部51の底とプランジャ52との間に押圧部材53が介在され、これによって、プランジャ52が上方向に弾性的に押圧される。なお、このプランジャ機構50は、ピストンロッド32に対応して周方向に沿って複数(例えば、3個)が配設される。
【0037】
流体圧供給手段35が
図2(b)に示す状態で、シリンダ室31内にエアが供給された状態では、
図3に示すように、シリンダ室31内の圧力およびピストンロッド32等の重量によって、プランジャ機構50のプランジャ52の先端は、載置台Tから突出しない。これに対して、流体圧供給手段35が
図2(a)に示す状態で、シリンダ室31内が大気圧状態では、
図6〜9に示すように、ピストンロッド32の重量等に抗して、プランジャ機構50のプランジャ52の先端は、載置台Tから突出することが可能である。
図6〜9に示す状態では、プランジャ機構50のプランジャ52は、押圧部材53の弾性力によって、支持体28の外鍔部28bを支持している。これによって、下方パンチ本体27が支持体28と係合することによって支持体28から受ける下方への力が相殺され、下方パンチ本体27は、そのパンチ部27aが大気圧により成形品Sに対して密着した状態となり、前記
図18に示すような空間Kは形成されない。
【0038】
図9に示す状態から、流体圧供給手段35によってシリンダ室31内にエアが供給されると、シリンダ室31内の圧力およびピストンロッド32等の重量によって、プランジャ機構50のプランジャ52は、載置台Tの孔部51内に押し戻される。そして、プランジャ52が孔部51内に全て嵌入されて、
図10に示す状態となり、その後、次のワークを投入すると
図3に示す状態となる。
【0039】
次に、前記のように構成された鍛造成形装置を用いた鍛造成形方法を説明する。成形品Sとしては、例えば、等速自在継手のトリポード部材等を構成するための鍛造成形品である。まず、
図3に示すように、上方ダイス21と下方ダイス22と離間させた金型開状態として、下方ダイス22の孔部41の上方開口部41aにワークWを投入する。この際、下方パンチ本体27は、そのパンチ部27aが、上方ダイス
21と下方ダイス
22とが重ね合わされた際に形成されるキャビティ24内に突入されない上下方向位置とされ、このパンチ部27aにてワークWを受ける。この状態では、流体圧供給手段35からシリンダ機構30のシリンダ室31にエア圧を供給して、下方パンチ本体27を押し下げておく。この状態で、プランジャ機構50のプランジャ52は、孔部51内に全て嵌入されている。
【0040】
次に、
図4に示すように、プレス角度170°で、上方ダイス21と下方ダイス22と重ね合わせるとともに、
図2(b)に示す状態から切換弁45を
図2(a)に示す状態に切り換えて、シリンダ室31内を大気圧状態とする。その後、重ね合わされた上方ダイス21と下方ダイス22とを
図5に示すように下降させる。これによって、キャビティ24が形成され、このキャビティ24内に下方パンチ本体27のパンチ部27aが突入状態となる。このため、キャビティ24内においてワークWが圧縮されて製品(成形品)Sが成形される。
【0041】
その後、下死点(プレス角度180°)に到達した後、金型23が
図6に示すように上昇する。この際、シリンダ室31内が大気圧状態なので、ピストンロッド32の重量等に抗して、プランジャ機構50のプランジャ52の先端は、載置台Tから突出する。これにより、成形品Sに対して、下方パンチ本体27が下降せず、前記
図18に示すような空間Kが形成されない。なお、この
図6は、プレス角度が180°〜190°である。
【0042】
次に、
図7及び
図8に示すように、上方ダイス21を下方ダイス22から離型させる。
図7はプレス角度が190°の状態を示し、
図8はプレス角度が190°〜250°の状態を示している。その後、
図9に示すように、ノックアウトピン60を上昇させて、下方パンチ本体27を上昇させる。これによって、成形品Sを下方ダイス
22の開口部41aから押し出して、この金型23から取り出す。この間も、プランジャ52の先端は、押圧部材53の弾性力により、載置台Tから突出した状態で、下方パンチ26の支持体28の下部を支持したままである。これよって、成形品Sに対して、下方パンチ本体27が下降せず、前記
図18に示すような空間Kが形成されない。従って、成形品Sを金型23から取り出す際の成形品Sの飛び出し現象を防止できる。
【0043】
その後は、
図10に示すように、切換弁45を
図2(b)に示す状態に切り換えて、シリンダ機構30のシリンダ室31にエア圧を供給する。これによって、押圧部材53の弾性力に抗して、プランジャ52と共に支持体28を押し下げる。これに伴い、支持体28に係合する下方パンチ本体27が押し下げられ、次のワークWの投入開始状態となる。
【0044】
以上のサイクルを順次繰り返すことによって、ワークWを成形品Sに成形していくことができる。このように、本発明によれば、押し上げ機構Pにて、成形品Sと下方パンチ本体27との間の空間形成を規制することができる。これによって、成形品Sを金型23から取り出す際の成形品Sの飛び出し現象を防止でき、ワークW投入及び成形品Sの取り出しを安定して行うことができる。従って、プレスの高速化に対応することができ、生産性の向上を図ることができる。
【0045】
押し上げ機構Pをプランジャ機構50にて構成することによって、成形品Sと下方パンチ本体27との間の空間形成を安定して規制することができ、特に、プランジャ機構50が、下方パンチ26の支持体28の下部と当接するプランジャ52と該プランジャ52を上方に弾性的に押圧する押圧部材53を備えたものであれば、空間形成の規制を簡易な構成で行うことができ、低コスト化に寄与する。
【0046】
切換手段Cを備えたものでは、安定した鍛造成形装置の稼動が可能となって、生産性の向上を一層図ることができる。
【0047】
図11から
図14に前記鍛造成形装置にて成形した鍛造成形品を用いたトリポード型等速自在継手を示す。トリポード型等速自在継手は、外側継手部材210と内側継手部材であるトリポード部材220とローラ230とで主要部が構成されている。連結すべき駆動側と従動側の二軸の一方の軸(駆動軸)が外側継手部材210の底部から一体的に延び、他方の軸(図示せず)がトリポード部材220(
図14参照)と結合される。
【0048】
外側継手部材210は一端が開口した有底筒状で、その内周に軸方向に延びる三本のトラック溝212が円周方向等間隔に形成されている。トリポード部材220は円筒状のボス部222から半径方向外側に突出した三本の脚軸224を有し、これら脚軸224が外側継手部材210のトラック溝212に挿入され、そのトラック溝212と係合してトルク伝達を行う。脚軸224には針状ころ240を介してローラ230が回転自在に外嵌され、このローラ230がトラック溝212の互いに対向する一対のローラ案内面214に沿って転動することで連結二軸間の角度変位と軸方向変位を円滑にする。なお、ボス部222には、軸孔(スプライン付き)222aが形成されている。
【0049】
図13は
図11の部分拡大図で、脚軸224、針状ころ240およびローラ230を示す。脚軸224の外周面は針状ころ240の内側転動面を構成し、ローラ230の内周面は針状ころ240の外側転動面を構成している。複数の針状ころ240は、脚軸224の外周面とローラ230の内周面との間に総ころ状態で配設されている。
【0050】
これら針状ころ240は、脚軸224の付け根部に外嵌されたインナワッシャ250と半径方向内側で接すると共に、脚軸224の先端部に外嵌されたアウタワッシャ260と半径方向外側で接している。このアウタワッシャ260は、脚軸224の先端部に形成された環状溝226に丸サークリップ等の止め輪270を嵌合させることにより抜け止めされている。
【0051】
トリポード部材220は、
図1等に記載された鍛造成形装置にて成形された鍛造成形品にて構成される。すなわち、鍛造成形品を成形した後、軸孔222aに対応する部位の穴抜きを行い、次に、脚軸224に、止め輪270が嵌合する環状溝226等を形成することによってトリポード部材220が成形される。
【0052】
本発明の鍛造成形方法によって、等速自在継手のトリポード部材等の内側継手部材構成品を成形することができ、これらの生産性の向上を達成できる。
【0053】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく種々の変形が可能であって、例えば、成形品Sとしては、等速自在継手の内側継手部材構成品に限るものではなく、他の種々の鍛造成形品(鍛造製品)とすることができる。トリポード型等速自在継手として、前記実施形態では、ローラが1つのシングルローラタイプであったが、ローラが2つのダブルローラタイプであってもよい。
【0054】
前記実施形態では、下方パンチ26のみがキャビティ24内に押し込まれるものであったが、下方パンチ26と上方パンチ25とが押し込まれるものであってもよい。シリンダ機構30として前記実施形態では、エアを用いるエアシリンダ機構であったが、油圧シリンダ機構であってもよい。
【符号の説明】
【0055】
21 上方ダイス
22 下方ダイス
23 金型
24 キャビティ
25 上方パンチ
26 下方パンチ
27 下方パンチ本体
28 支持体
30 シリンダ機構
31 シリンダ室
32 ピストンロッド
50 プランジャ機構
52 プランジャ
53 押圧部材
C 切換手段
P 押し上げ機構
S 成形品
T 載置台
W ワーク