(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5855521
(24)【登録日】2015年12月18日
(45)【発行日】2016年2月9日
(54)【発明の名称】注出栓
(51)【国際特許分類】
B65D 39/04 20060101AFI20160120BHJP
【FI】
B65D39/04 C
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-101385(P2012-101385)
(22)【出願日】2012年4月26日
(65)【公開番号】特開2013-227052(P2013-227052A)
(43)【公開日】2013年11月7日
【審査請求日】2014年10月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】110001542
【氏名又は名称】特許業務法人銀座マロニエ特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100080687
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 順三
(74)【代理人】
【識別番号】100077126
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 盛夫
(74)【代理人】
【識別番号】100107227
【弁理士】
【氏名又は名称】藤谷 史朗
(72)【発明者】
【氏名】早川 茂
【審査官】
中野 裕之
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭61−142150(JP,A)
【文献】
特開2011−111230(JP,A)
【文献】
特開2010−173698(JP,A)
【文献】
特開2007−145352(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 39/04
B65D 47/08
B65D 47/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物の注出経路を形成する注出筒を有し、下向きに開放された環状溝を打栓によって容器の口頚部先端に嵌合させて固定保持する内外二重の筒体からなるベースキャップと、このベースキャップに着脱可能に保持され、前記注出筒をその内側に収める蓋体とを備えた注出栓であって、
前記蓋体の下面に、該蓋体の装着状態で前記注出筒の注出経路内に嵌挿され、該注出経路の空間領域を狭める凸部を設け、
該凸部は、前記注出筒の内周壁に摺動可能に当接する環状壁部と、この環状壁部の下端部に一体連結して該注出経路を閉塞する障壁部からなり、
前記障壁部は、水平姿勢を維持する壁体と、この壁体の下面縁部にそれに沿って一体的につながり、該下面縁部から最下端に向けて伸延する傾斜辺を備えた垂下片、または、径方向の中央部が最も下向きに突出した円錐壁体、または、対向位置の一方が最も高く、もう一方が最も低い傾斜壁体からなることを特徴とする注出栓。
【請求項2】
前記ベースキャップに、前記蓋体の周壁に連係して該蓋体の開放を阻止する係止片を設けたことを特徴とする請求項1に記載した注出栓。
【請求項3】
前記蓋体は、前記ベースキャップにおいて揺動可能に連結するヒンジを有することを特徴とする請求項1または2に記載した注出栓。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器内の内容物の注出する注出筒を有し、ベースキャップの環状溝部を、打栓によって容器の口頚部先端に嵌合させて固定保持する構造の注出栓に関するものである。
【背景技術】
【0002】
醤油やドレッシング等の調味材を入れる容器は、通常、その口頚部に、内容物を通す経路を形成する注出筒を備えた注出栓(瓶の開閉装置)が装着されており、容器内の内容物を使い切るまでの間は、ねじ込み式の蓋体やヒンジタイプの蓋体あるいはアンダーカットによる嵌合タイプの蓋体を注出栓に適合させて容器を密封状態に保持するようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ところで、この種の注出栓においては、とくに、液状の味噌等、粘度の高いものが内容物として充填されていると、内容物の注出回数が増すにつれ、注出筒の経路上部、蓋体の下面あるいは、側面に内容物が付着していき、これが乾燥、固化して内容物のスムーズな注出が行えなくなるばかりか、蓋体を注出栓に適合させて密封することができなくなる不具合がある。
【0004】
このため、従来は、需要者が、乾燥、固化した内容物を引き剥がす面倒な作業を行うことによって対処していたが、この場合、衛生面からも好ましいとはいえない状況にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実公昭60─30197号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、注出筒の経路内における内容物の付着、蓋体下面、側面への内容物の付着を回避して内容物のスムーズな注出を継続可能にするとともに、蓋体による容器の確実な密封を実現できる注出栓を提案するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、内容物の注出経路を形成する注出筒を有し、下向きに開放された環状溝を打栓によって容器の口頚部先端に嵌合させて固定保持する内外二重の筒体からなるベースキャップと、このベースキャップに着脱可能に保持され、前記注出筒をその内側に収める蓋体とを備えた注出栓であって、前記蓋体の下面に、該蓋体の装着状態で前記注出筒の注出経路内に嵌挿され、該注出経路の空間領域を狭める凸部を設け
、該凸部は、前記注出筒の内周壁に摺動可能に当接する環状壁部と、この環状壁部の下端部に一体連結して該注出経路を閉塞する障壁部からなり、前記障壁部は、水平姿勢を維持する壁体と、この壁体の下面縁部にそれに沿って一体的につながり、該下面縁部から最下端に向けて伸延する傾斜辺を備えた垂下片、または、径方向の中央部が最も下向きに突出した円錐壁体、または、対向位置の一方が最も高く、もう一方が最も低い傾斜壁体からなることを特徴とする注出栓である。
【0008】
上記の構成からなる注出栓においては、
1)ベースキャップに、前記蓋体の周壁にその先端部を連係させて該蓋体の開放を阻止する係止片を設けること、
2)蓋体は、前記ベースキャップにおいて揺動可能に連結するヒンジを有するものを適用すること、が本発明の課題解決のための具体的手段として好ましい。
【発明の効果】
【0009】
上記の構成からなる本発明の注出栓によれば、蓋体の下面に、該蓋体の装着状態で注出筒の注出経路内に嵌挿され、該注出経路の空間を狭める凸部を設けたため、内容物の付着、固化する領域が小さくなり、容器内の内容物を出し切るまでスムーズな注出が可能となる。
【0010】
また、本発明による上記構成の注出栓においては、凸部として、注出筒の内周壁に摺動可能に当接する環状壁部と、この環状壁部の下端部に一体連結して該注出経路を閉塞する障壁部からなるものにて構成をしたため、注出筒の内周壁に内容物が付着していても、蓋体を締めるとき、環状壁部、障壁部にて付着した内容物が掻き落とされ、付着した内容物が乾燥、固化するのを防ぐことができる。また、環状壁部は、注出筒の内周壁に摺動可能に当接するため、シール性も確保される。
【0011】
また、本発明による注出栓によれば、障壁部として、水平姿勢を維持する壁体と、この壁体の下面縁部に沿って一体的につながり、該下面縁部から最下端に向けて伸延する傾斜辺を備えた垂下片からなるものにて構成したため、注出筒の内周壁に付着した内容物を効率よく掻き落とすことができるのに加え、壁体の下面に付着した内容物を、垂下片の傾斜片に沿って流下させることができる。
【0012】
また、本発明による注出栓によれば、障壁部を、径方向の中央部が最も下向きに突出した円錐壁体にて構成したため、注出筒の内周壁に付着した内容物を効率よく掻き落とすことができるとともに、該円錐壁体の傾斜面を通して注出筒内に存在する内容物を流下させることが可能となる。
【0013】
また、本発明による注出栓によれば、障壁部を、対向位置の一方が最も高く、もう一方が最も低い傾斜壁体にて構成するようにしたため、該傾斜壁体の外表面に沿わせて注出筒内の内容物を流下させることが可能となる。
【0014】
また、上記の構成からなる本発明の注出栓によれば、ベースキャップに、前記蓋体の周壁部に連係して該蓋体の開放を阻止する係止片を設けるようにしたため、蓋体が不用意に開放するのを防止することができる。
【0015】
また、本発明の注出栓によれば、蓋体に、ベースキャップにおいて揺動可能に連結するヒンジを設けるようにしたため、蓋体の開閉操作が容易となり、しかも、該蓋体を開放しても、該蓋体は、ベースキャップから離れることがないため、蓋体を紛失するのを防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に従う注出栓の実施の形態を断面について模式的に示した図である。
【
図2】
図1に示した注出栓において、蓋体を開放した状態で示した図である。
【
図4】
図1に示した注出栓の底面を示した図である。
【
図5】本発明に従う注出栓の他の実施の形態を示した図である。
【
図6】本発明に従う注出栓の他の実施の形態を示した図である。
【
図7】本発明に従う注出栓の他の実施の形態を示した図である。
【
図8】本発明に従う注出栓を容器の口頚部から取り外す場合の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を用いて本発明をより具体的に説明する。
図1は、本発明に従う注出栓(合成樹脂等で成形される)の実施の形態を模式的に示した図であり、
図2は、
図1に示した注出栓につき、その蓋体を開放した状態を示した図であり、
図3は、本発明に従う注出栓の外観斜視図である。
【0018】
図における符号1は、注出栓の主要構成部材であるベースキャップである。このベースキャップ1は、内容物の注出経路nを形成するリップ付きの注出筒1aを有し、下向きに開放された環状溝1bを、打栓によって容器の口頚部先端2に嵌合させて固定保持する内外二重の筒体1c、1dから構成されている。
【0019】
また、符号3は、ベースキャップ1の外側に位置する筒体1dの周りを取り囲む環状帯である。この環状帯3と筒体1dとの相互間には、その底面を
図4に示すように、それらの下端部で該環状帯3と筒体1dを相互につなぐとともに該環状帯3の引き起こしにより破断可能な複数の連結片4(
図8参照)と、1箇所において破断不能に連結する連結部5(蓋体がヒンジにより開閉できるものである場合に、該ヒンジの対向位置に設けられる)が設けられている。ここに、本発明の実施の形態では、環状帯3とベースキャップ1の筒体1dとの一体化を図って単一の筒体(一重の筒体)で構成することも可能であり、この点については、限定されない。
【0020】
また、6は、ベースキャップ1に着脱可能に保持され、注出筒1aをその内側に収める蓋体である。この蓋体6は、ベースキャップ1の外端の周りに当接可能な下端面を有する周壁6aと、この周壁6aの上端に一体転結する天壁6bからなり、ヒンジhを介してベースキャップ1の筒体1dの周りを取り囲む環状帯3に揺動可能に連結されている。
【0021】
蓋体6は、ここでは、ヒンジタイプのものを例として示し、蓋体6の周壁6aの内側下部に形成した係合凸部6cを、ベースキャップ1の上部外周壁に設けた係合凹部1eに嵌合させる構造のものを例として示してある。
【0022】
本発明においては、上記蓋体6を、ねじ部によって螺合可能なものを適用することも可能であり、この点についてはとくに限定されない。
【0023】
また、7は、蓋体6の天壁6bに一体的に設けられた凸部である。この凸部7は、注出筒1aの内周壁に摺動可能に当接する環状壁部7aと、この環状壁部7aの下端部に一体連結して注出筒1aの注出経路を閉塞する障壁部(水平姿勢を維持する壁体からなる)7bから構成されており、この凸部7によって注出筒1aの経路nの空間領域を狭めるようになっている。
【0024】
また、8は、障壁部7bを構成する壁体の下面縁部にそれに沿って一体的につながる垂下片である。この垂下片8は、
図3に示す如く、ヒンジhが設けられた位置に近接して形成された湾曲形状を有するものを例として示してあり、壁体の下面縁部から最下端に向けて伸延する少なくとも2つの傾斜辺8aを有していて、壁体に内容物が付着している状態で蓋体6を締めたときに、該垂下片8の傾斜辺8aに沿って付着した内容物を速やかに流下させることができるようになっている。
【0025】
また、9は、蓋体6の天壁6bに形成された凹部を覆い隠すカバーである。カバー9は、凹部の周壁に嵌合する環状の脚部9aと、この脚部9aの上端に一体連結する天板9bからなる。蓋体6と、凸部7は、一体成形により形成されるものであり、このとき、蓋体6の天壁6bには、凹部が形成されることとなるが、該カバー9は、その凹部を覆い隠すために配置される。これにより凹部へのゴミの侵入を阻止することができる。なお、図示はしないが、カバー9を設ける代わりにタックシール等で覆うこともできる。また、カバー9は、その色彩を蓋体6と異なる色彩にすることで装飾効果を高めることが可能であり、さらに、天壁6bに形成された凹部の内側には、付属物品や能書等を収納することもできる。
【0026】
また、10は、環状帯3に設けられた係止片である。この係止片10はその基部10aが弾性変形可能になっており、先端爪部10bを、蓋体6の周壁6aに一体的に設けられた摘み部(指の引掛け部)6a
1に連係させることによって蓋体6の不用意な開放を阻止するようになっている。
【0027】
係止片10は、容器を開封するときその基部10aから先端爪部10bを引きちぎり、これによって初めて蓋体6の開閉を可能とするバージン機能を付与するようにしてもよく、この場合、不正な開封がおこなわれたかどうか容易に把握することができる。
【0028】
とくに、障壁部7bを構成する壁体の下面縁部に垂下片8を設けた蓋体6にあっては、該垂下片8の先端部が注出筒1aの経路から出ることがないように、揺動角度を規制するのが好ましく、そのためヒンジhが設けられた部位の周壁6aに、蓋体6がある程度開いたところでベースキャップ1の筒体1dあるいは環状帯3に当接して該蓋体6の揺動を阻止するストッパーを設けるのが好ましい。
【0029】
上記の構成からなる注出栓では、蓋体6を閉じるとき、凸部7の環状壁部7aにより付着した内容物が掻き落とされ、しかも、注出筒1aの注出経路nの空間領域が凸部7によって狭められるため、その部位で内容物が乾燥、固化することが少なくなり、内容物を使い切るまでスムーズな注出が行える。
【0030】
また、凸部7の障壁部7bに内容物が付着した場合、付着した内容物は、垂下片8の傾斜辺8aを伝わって流下することが可能である。
【0031】
図5は、凸部7の障壁部7bを、径方向の中央部が最も下向きに突き出した円錐壁体にて構成した例を示したものである。
【0032】
障壁部7bを円錐壁体で構成した場合に、注出筒1aの注出経路nの空間領域をより狭めることが可能となり、注出経路nにおいて内容物が乾燥、固化するのを防ぐことができる。また、この場合、障壁部7bに付着した内容物は、円錐体の傾斜面を通りその中央部から容器内へと流下することとなる。
【0033】
図6は、凸部7の障壁部7bを、蓋体6の摘み部(指の引掛け部)6a
1側で最も高くし、その対向位置(ヒンジhを設けた側)で最も低くした傾斜壁体で構成した例を示したものである。
【0034】
障壁部7bを図示の如き傾斜壁体で構成することによっても、注出筒1aの注出経路nの空間をより狭めることが可能となり、注出経路nにおいて内容物が乾燥、固化するのを防ぐことができるとともに、障壁部7bに付着した内容物は、傾斜壁体の傾斜面を通りその端縁から流下することとなる。
【0035】
なお、本発明の注出栓としては、ベースキャップ1の筒体1cを容器の口頚部に沿って延長してその末端部に、破断予定溝に沿って破断可能な隔壁11を設け、この隔壁11につながるプルリング12の引っ張りにより該隔壁11を引きちぎって内容物の注出口を形成する、
図7に示すようなバージンタイプの注出栓を構成してもよい。
【0036】
本発明に従う注出栓は、内容物が注出経路nに付着して乾燥、固化するのを効果的に抑制することができる他、
図8に示すように、蓋体6を掴んで上方に引っ張りあげることで連結片4を破断して該環状帯3を引き起こすことが可能であり、この環状帯3の引き起こしにより、該環状帯3がベースキャップ1の筒体1dから外れることとなり、ベースキャップ1の容器の口頚部に対する嵌合力は弱まる。そして、該環状帯3の引き起こし動作をそのまま継続することでベースキャップ1は、連結部5を通して引きあげられて容器の口頚部2から簡単に外すことができ、容器と注出栓の分別廃棄が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明によれば、注出筒内での内容物の乾燥、固化を回避して容器内の内容物を使い切るまでスムーズに注出し得る注出栓が提供できる。
【符号の説明】
【0038】
1 ベースキャップ
1a 注出筒
1b 環状溝
1c 筒体
1d 筒体
1e 係合凹部
2 口頚部先端
3 環状帯
4 連結片
5 連結部
6 蓋体
6a 周壁
6b 天壁
6c 係合凸部
7 凸部
7a 環状壁部
7b 障壁部
8 垂下片
8a 傾斜辺
9 カバー
10 係止片
10a 基部
10b 先端爪部
11 隔壁
12 プルリング
n 注出経路
h ヒンジ