(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
連続鋳造装置におけるオペレータは、トラブルを回避しつつ、生産性を落とすことなく、しかも納期を確実に守れるように鋳片の型組(生産スケジュール)を決定しなくてはならない。このとき、経験豊富なオペレータであれば、受注している鋳片の納期、鋼種の接続可能性、過去のトラブル情報などの様々な情報を、広範囲な観点から過去の様々な経験を並列的に判断しつつ、所望の型組(生産スケジュール)を決めることができる。
【0007】
しかしながら、経験の浅いオペレータでは、上述したように過去の様々な経験を並列的に判断しつつ型組を決定することが困難である場合が多い。また、経験豊富なオペレータであっても、型組作業には数時間といった多大な時間を要しているのが実情である。
この状況を改善すべく、特許文献1や特許文献2の技術を採用しようとしても、特許文献1の技術は、生産に必要な工程、設備での工数に基づいて作成した予備生産計画を、予備計画での制約条件を維持しつつ、負荷容量を越えている工程、設備の負荷を軽減し、実現可能な生産計画を作成するためのプログラムに関する技術であり、製鋼工程における生
産スケジュール決定に適用できるものとは考え難い。すなわち、連続鋳造機における型組作業に適用できる技術を開示するものとはなっていない。
【0008】
特許文献2の技術も、客先を効率よく巡回する順路の適切な計画を支援することが可能な業務支援システムであり、連続鋳造機における型組作業に適用不可能なものと思われる。
つまり、現状では、連続鋳造装置における生産スケジュールを決定するための技術は開発されるにいたっておらず、オペレータの経験に頼った人的作業に基づき、型組作業が行われているのが実情である。
【0009】
さらには、一旦決定された生産スケジュール(型組)に対しては、生産スケジュールを最適化するための修正や、その後の生産現場の事情による修正などの微調整ともいえる変更がしばしばおこなわれる。このような変更も、オペレータの経験に頼った人的作業によっておこなわれるため、上述の生産スケジュールの決定と同様に、経験の浅いオペレータにとっては過去の様々な経験を並列的に判断しつつ型組を変更することは困難であり、また、経験豊富なオペレータにとっても多大な時間が必要となる。
【0010】
そこで、本発明は上記問題点に鑑み、様々な製品を製造するに際して決定された生産スケジュールを、オペレータの経験度合いに左右されることなく、効率的に変更することができるような変更作業の支援システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の目的を達成するため、本発明においては以下の技術的手段を講じた。
本発明に係る生産スケジュールの変更支援システムは、生産単位を連続的に処理し製品を製造する工程で用いる生産スケジュールの変更作業の支援システムであって、前記支援システムは、オペレータが確認可能な表示器と当該オペレータが操作可能な入力デバイスとを有し、前記表示器には、生産単位の内容を示す生産項目を処理順に並べた「生産スケジュールエリア」が設定され、前記入力デバイスをオペレータが操作し前記生産スケジュールに並べられた生産単位を選択すると、前記表示器は、当該生産スケジュール内に並べられた他の生産単位のうち前記選択された生産単位と入れ替え可能な生産単位を、前記選択された生産単位の属性に基づいて表示し、前記表示器の表示を参照しつつ入力デバイスをオペレータが操作することで、前記選択された生産単位と前記入れ替え可能な生産単位とを入れ替えて、生産スケジュールの変更作業を行うように構成されていることを特徴とする。
【0012】
好ましくは、前記選択された生産単位の属性は、前記選択された生産単位と前記入れ替え可能な生産単位との間の類似性であるとよい。
好ましくは、前記選択された生産単位の属性は、前記選択された生産単位と前記入れ替え可能な生産単位とを入れ替えた後での前記生産スケジュールにおける生産性であるとよい。
【0013】
好ましくは、前記入れ替え可能な生産単位の属性は、前記選択された生産単位の納期であるとよい。
好ましくは、前記入力デバイスをオペレータが操作することで、前記生産スケジュールに並べられた生産単位を複数選択すると、前記表示器は、前記選択された複数の生産単位と共通する属性を有する生産単位を表示するとよい。
【0014】
好ましくは、前記生産単位を連続的に処理し製品を製造する工程は、連続鋳造装置で鋳片を鋳造する工程であり、前記生産単位は、連続鋳造装置における鋳造単位であるチャージとされているとよい。
なお、本発明にかかる生産スケジュールの変更支援システムの最も好ましい形態は、生産単位を連続的に処理し製品を製造する工程で用いる生産スケジュールの変更作業の支援システムであって、前記支援システムは、オペレータが確認可能な表示器と当該オペレータが操作可能な入力デバイスとを有し、前記表示器には、生産単位の内容を示す生産項目を処理順に並べた「生産スケジュールエリア」が設定され、前記入力デバイスをオペレータが操作し前記生産スケジュールに並べられた生産単位を選択すると、前記表示器は、当該生産スケジュール内に並べられた他の生産単位のうち前記選択された生産単位と入れ替え可能な生産単位を表示するものとされ、前記表示器に表示された入れ替え可能な生産単位は、「選択された生産単位の属性と、当該選択された生産単位の前後となる生産単位の属性との間の連続性」を基にして選択されたものとされ、前記表示器の表示を参照しつつ入力デバイスをオペレータが操作することで、前記選択された生産単位と前記入れ替え可能な生産単位とを入れ替えて、生産スケジュールの変更作業を行うように構成されていることを特徴とする。
この場合、前記入力デバイスをオペレータが操作することで、前記生産スケジュールに並べられた生産単位を複数選択すると、前記表示器は、前記選択された複数の生産単位の属性間で共通する前記連続性を有する生産単位を表示するとよい。
また、前記生産単位を連続的に処理し製品を製造する工程は、連続鋳造装置で鋳片を鋳造する工程であり、前記生産単位は、連続鋳造装置における鋳造単位であるチャージとされているとよい。
この場合、前記生産単位の属性として、型番、鋼種、前後の鋼種との接続パターン、クロップ量、鋼種成分の上限値乃至は下限値、納期のいずれか1つ以上を採用するとよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の生産スケジュールの変更支援システムによれば、様々な製品を製造するに際して決定された生産スケジュールを、オペレータの経験度合いに左右されることなく、効率的に変更することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図を参照しながら、以下に、本発明の実施形態による生産スケジュールの変更支援システム10Bを説明する。
本実施形態による変更支援システム10Bは、例えば製鉄所内において様々な製品を製造するに際し、既に何らかの手法により決定された生産スケジュールの「変更作業」を支援するものであり、適用対象としては、様々な生産単位(生産タスク)を連続的に生産する工程が考えられる。
【0018】
以下、一つの実施形態として、製鋼工程において鋳片3を製造する連続鋳造装置1を用いて様々な鋳片3を連続的に製造する工程を例にあげ、この連続鋳造装置1において決定された生産スケジュールの変更を支援するシステムについて説明する。
図1に示す連続鋳造装置1は、スラブ連続鋳造装置1であり、鋳型2の下端から引き抜かれた鋳片3は、複数のサポートロール4で支持されつつ曲げられ、最後は水平方向に引き抜かれるようになる。
【0019】
連続鋳造装置1は、溶鋼を一時的に蓄え鋳型2へ注入するタンディッシュ5と、溶鋼を鋳造する鋳型2と、鋳型2から出たスラブ等の鋳片3を支えつつ移送する複数のサポートロール4を有している。
このような構成の連続鋳造装置1では、取鍋により運ばれてきた溶鋼がタンディッシュ5に注がれ、注がれた溶鋼はタンディッシュ5に設けた浸漬ノズル6を介して鋳型2に注入される。鋳型2では注入された溶鋼が冷却(1次冷却)され、その表面部のみが凝固した状態の鋳片3となって、鋳型2下部から引き抜かれる。
【0020】
引き抜かれた鋳片3は、各サポートロール4で保持され、最終的には水平方向となるところまで湾曲し、水平になった鋳片3は下流側に備えられたガス切断機(図示せず)により鋳片3に分割される。なお、連続鋳造装置1では、同一鋼種の鋳造を連続的に行うことはもちろん、鋼種の異なる溶鋼を連続的に供給し、成分の異なった鋳片3が連なるように製造することもある。
【0021】
さて、
図3に示すように、連続鋳造装置1で鋳造を行うにあたっては、複数のチャージ(生産単位)が予め何らかの手法(例えば、後述の決定支援システム10A)で決定された順番で処理されるようになっている。これらチャージのそれぞれには、型番、鋼種(鋼種名)、クロップ量、各種成分値、納期などの内容(生産項目)が関連付けられて1つの処理単位とされている。なお、生産単位に関連付けられた生産項目、すなわち、型番、鋼種(鋼種名)、次鋼種との接続パターン(以下では、単に接続パターンと呼ぶ)、クロップ量、各種成分の上限下限、納期などを、本実施形態では生産単位の属性と呼ぶこともある。
【0022】
そして、日付毎(鋳造日毎)に、生産単位の属性等を勘案しながらチャージの鋳造順序(生産順序)が決められている。なお、連続鋳造装置1では、機種によって違いはあるが、1チャージは数十t〜数百tであり、また、1日に10〜30チャージの鋳造が可能である。
このような複数のチャージ(生産単位)の生産順序を決定するには、例えば、鋼種が略同じであったり、納期が同じであったりするチャージが前後に並ぶように選択されることが多い。特に、類似の鋼種が連続するようにチャージを選択した場合は、両チャージ間で生じるクロップをできるだけ少なくしたり、両チャージの鋳造速度をほぼ同じにしたりといった良好な条件で鋳片3を製造することができる。
【0023】
このように、鋳片3を鋳造するに際して、前後のチャージの様々な条件を考慮して生産
スケジュールを決定するのがよい。
言い換えれば、連続鋳造装置1をコントロールするオペレータMは、数多くのチャージから、受注している鋳片3の納期、鋳片3同士(鋼種同士)の接続可能性などの生産単位の属性、過去のトラブル情報などを考慮して生産スケジュールを決定する必要がある。
【0024】
しかしながら、経験の浅いオペレータMでは、数多くのチャージから適切なチャージを素早く選択して全体の生産スケジュールを決定することは困難である。
さらに、生産スケジュールが決定された後においても、生産スケジュール内に配列されたチャージを入れ替えて、一旦決定された生産スケジュールを変更することもある。この生産スケジュールの変更は、生産スケジュールを最適化するためや、鋳片3の受注の変動に合わせるために常に行われており、生産スケジュールの決定同様に、経験の浅いオペレータMにとって困難な作業であるとともに、経験豊富なオペレータMにとっても長時間を要する負担の大きな作業となっている。
【0025】
そこで、本実施形態の変更支援システム10Bは、既に決定された生産スケジュール内で変更対象となるチャージを選択すると、当該変更対象のチャージと入れ替え可能なチャージを、決定された生産スケジュール内のチャージ、又はこれから生産スケジュールに組み込まれる予定のチャージの中から検索して表示する。このような表示によって、オペレータMの経験度合いに左右されることなく、適切に生産スケジュールを変更することができるようにするものである。
[前提となる実施形態]
以下、本実施形態に係る連続鋳造装置1の生産スケジュールの変更支援システム10Bを説明する前に、その前提となる生産スケジュールの決定支援システム10Aについて、構成及び作動態様を説明する。その後に、この決定支援システム10Aで決定した生産スケジュールを変更する変更支援システム10Bについて説明する。
【0026】
生産スケジュールの決定支援システム10Aと変更支援システム10Bは、ともに生産スケジュールを作成する作成システム10に含まれるシステムである。なお、本実施形態では、生産スケジュールを決定することを「型組を行う」と呼ぶこともある。
図2に示すように、決定支援システム10Aは、連続鋳造装置1を制御する操業システムとは別に設けられたオフラインのシステムであって、オペレータMが確認可能な表示器11(支援モニタ)と、オペレータMが操作可能な入力デバイス12とを有している。
【0027】
支援モニタ11は、液晶モニタやCRTモニタで構成されており、オペレータMが駐在するコントロール室内に設置されており、必要に応じてオペレータMによって視認可能な状態となっている。この支援モニタ11に表示される情報は、コンピュータ13に格納された型組決定モデルによって決定されるようになっている。型組決定モデルは、表計算ソフトで構成されたり、プログラム言語によってプログラム化されたりといった形態で、ハードディスクで構成された記憶装置に記憶されている。この型組決定モデルがMPUなどで構成された演算装置によって演算されて、支援モニタ11に表示する情報が決定される。
【0028】
コンピュータ13は、当該コンピュータ13に対する指示や外部からの信号を取り込むための入力デバイス12や演算結果を表示する出力デバイスを備えている。入力デバイス12としては、オペレータMが操作可能なマウス、キーボード、タッチパネルなどがあり、出力デバイスは、前述の支援モニタ11などである。
図2に示すように、オペレータMが入力デバイス12を操作することで、支援モニタ11上に配置された生産スケジュールに関する項目、即ち、生産単位の内容を示す生産項目である属性(型番、鋼種、接続パターン、クロップ、各種成分の上限下限、納期など)を該支援モニタ11上で再配置することによって、支援モニタ11上で生産スケジュールの決定及び変更作業を行うことができる。
【0029】
図3に示すように、支援モニタ11には、生産項目を処理順に並べる生産スケジュールエリアA1と、生産単位の優先度に応じて生産項目を表示する生産優先度エリアA2とが設定されている。
支援モニタ11の画面の下部分は、生産優先度エリアA2であり、この生産優先度エリアA2よりも上部側の部分は生産スケジュールエリアA1である。生産優先度エリアA2には、2つ以上のパラメータで生産単位の優先度(生産優先度)が評価された生産項目が、その生産優先度に応じて配置されている。この実施形態では、パラメータとして、納期と生産性が採用されている。なお、別のパラメータとして、鋳片3サイズなども考えられる。
【0030】
生産優先度エリアA2を見ると、左上に行くほど納期が短く且つ生産性が悪くなっているため生産優先度の高い領域とされ、右下に行くほど納期が長く且つ生産性が良いとなっているため生産優先度の低い領域とされている。
なお、ある鋼種は、他の鋼種と鋳造した場合の生産性低下度合や、各鋼種を接続したときの接続方法やクロップ量は予め決定されてデータベースに記録されている。このデータベースに記録された生産性と鋼種との関係や、各鋼種を接続したときの接続方法やクロップ量等は、コンピュータ13内の型組決定モデルに送られるようになっている。
【0031】
生産スケジュールエリアA1では、左から右へ日付毎の生産スケジュールが示されており、同じ日付では上側から下側に順に、生産単位(チャージ)の内容を示す生産項目が配置されている。
このように、生産優先度エリアA2をオペレータMが見ることによって優先度の高い生産単位(チャージ)を知ることができると共に、生産スケジュールエリアA1をオペレータMが見ることによって生産状況を把握することができる。そのうえで、オペレータMは、入力デバイス12を用いて、生産優先度エリアA2に配置された生産項目を生産スケジュールエリアA1に移動させることによって型組を行い、生産スケジュールを作成することができる。
[本発明の実施形態]
上述した生産スケジュールの決定支援システム10Aでは、様々な製品を製造するに際して、オペレータMの経験度合いに左右されることなく、効率的な生産スケジュールの決定を確実且つ迅速に行うことが可能となる。
【0032】
しかしながら、決定支援システム10Aによって決定された生産スケジュールを、オペレータMが変更する場合がある。本実施形態における生産スケジュールの決定支援システム10Aは、斯かる変更作業を支援するための変更支援システム10Bを含むものとなっている。この変更支援システム10Bについて以下に説明する。なお、生産スケジュールの決定支援システム10Aと、生産スケジュールの変更支援システム10Bとは、コンピュータ13にて同時に実行され、同じ支援モニタ11上に表示されるものとなっている。
【0033】
以下、生産スケジュールの変更支援システム10Bについて、説明する。
まず、
図3を参照しながら説明する。決定支援システム10Aによって生産スケジュールとして決定された生産スケジュールエリアA1のチャージのうち、前後のチャージのつながりが良好でない場合や、納期が変更になった場合などに、一旦決定された順番を変更する必要が生じる。そのとき、変更支援システム10Bは、変更の対象となるチャージの代替となりうる(交換しうる)チャージを生産スケジュールエリアA1及び生産優先度エリアA2から検索して、オペレータMに提示することができる。交換可能なチャージを検索するためには、オペレータMによる検索条件の指定が必要であり、変更支援システム10Bは、検索条件指定のための検索画面A3(検索インタフェース)を提供する。
【0034】
まず、
図3において、オペレータMが入力デバイス12を操作して生産スケジュールエリアA1内のチャージを選択する。具体的には、入力デバイス12であるマウスを用いて支援モニタ11の画面上のポインタなどを、例えば7月27日のNo.4に並べられた鋼種名「KL011MK」の位置に移動させる。その位置でマウスを右クリックすると、鋼種名「KL011MK」のチャージと交換しうるチャージを検索するインタフェースが検索画面として起動する。
【0035】
図4(a)は、インタフェースが起動したときに最初に表示される第1検索画面A31を示している。この第1検索画面A31は、既に支援モニタ11の画面上に表示されている生産スケジュールエリアA1及び生産優先度エリアA2に重なるように表示される。
図4(a)では、オペレータMが選択したチャージの属性が表示されている。チャージ
の属性として、例えば、鋳造納期が「2011年8月7日」、ビレットサイズが「△△△mm」、鋼種が「KL011MK」、所属グループが「グループA鋼種かつ強靭鋼」であることが示されている。この第1検索画面A31では、オペレータMが、選択されたチャージ(選択チャージ)を基準として検索条件を指定して、選択されたチャージと交換しうるチャージを検索することができる。
【0036】
例えば、鋳造納期について、選択されたチャージの納期は2011年8月7日であるが、オペレータMは、この納期を基準として、より早い納期のチャージを検索するのか、同じ納期のチャージを検索するのか、又はより遅い納期のチャージを検索するのかを選択する。
図4(a)では、「同じ」という項目に二重丸印のチェックマークが入っているが、オペレータMは、入力デバイス12であるマウスを用いて「より早い」又は「より遅い」の項目をクリックしてチェックマークを変更することができる。
【0037】
同様に、ビレットサイズについても、選択されたチャージの△△△mmを基準として、より大きいサイズのチャージ、同じサイズのチャージ、又はより小さいサイズのチャージを検索するのかを、チェックマークを変更して選択する。同一乃至は類似のサイズを連続して鋳造するのであれば、生産が容易なものとなる。すなわち、スケジュール変更の指標として、生産単位の類似性を考慮していることになる。
【0038】
さらに
図4(a)の第1検索画面A31では、オペレータMが、検索の対象となるチャージの所属グループを、検索条件として指定できるようにもなっている。
図4(a)では、「希釈鋼種」と「強靱鋼」の2つ所属グループにチェックマークが付されているが、これは、選択されたチャージの所属グループを示しているだけであるので、オペレータMの判断によって2つに限らず任意の所属グループにチェックマークを付してもよい。同一乃至は類似の鋼種を連続して鋳造するのであれば、クロップ量も少ない上にトラブルも少ないものとなる。すなわち、スケジュール変更の指標として、生産単位の類似性を考慮していることになる。
【0039】
図4(a)の第1検索画面A31に示す属性だけを指定して、選択されたチャージと交換しうるチャージを検索してもよいが、さらに詳細な属性を指定して検索したい場合、オペレータMは、第1検索画面A31で「詳細」と書かれたボタンを入力デバイス12で選択しクリックする。
第1検索画面A31における「詳細」ボタンのクリックによって、
図4(b)に示す第2検索画面A32が、第1検索画面A31に代わって表示される。
【0040】
図4(b)は、第1検索画面A31に表示された情報に加えて、選択されたチャージ(選択チャージ)の前後に配置されたチャージの鋼種(前鋼種及び後鋼種)と、前後のチャージとの「繋がり」の項目、及びその繋がりにおいて生じる廃棄せざるを得ない部分の量(「クロップ量」)の項目が表示される。
前鋼種及び後鋼種とも、「繋がり」の項目では、例えば、「マルチ」、「SB(シーケンスブロック)」、「希釈」、及び「不可」のいずれかが選択可能となっており、
図4(b)では、前鋼種「AY322MI」の項目「繋がり」として、「希釈」にチェックマークが付され、クロップ量が5t(ton)生じることが示されている。クロップ量の右隣には、このクロップ量を基準として、より少ないクロップ量のチャージを検索するのか、同じクロップ量のチャージを検索するのか、又はより多いクロップ量のチャージを検索するのかを指定できるチェック欄が用意されている。
【0041】
図4(b)では、「同じ」という項目に二重丸印のチェックマークが入っているが、オペレータMは、入力デバイス12であるマウスを用いて「より少ない」又は「より多い」の項目をクリックしてチェックマークを変更することができる。
後鋼種「LH214MM」も同様に、「繋がり」として、「希釈」にチェックマークが付され、クロップ量が3t(ton)生じることが示されている。クロップ量の右隣チェック欄では、項目「同じ」に二重丸印のチェックマークが入っている。
【0042】
図4(b)の第2検索画面A32に示されるように、前後のチャージとの繋がりやクロップ量を指定することで、オペレータMは、選択されたチャージ「KL011MK」の代替としてより適したチャージを検索することができる。このように、生産単位の連続性を
勘案しつつ鋳造するのであれば、生産性が非常に良いものになる。すなわち、スケジュール変更の指標として、生産スケジュールにおける生産性を考慮していることになる。
【0043】
図5を参照しつつ、オペレータMが、
図4(b)の第2検索画面A32を用いて交換可能なチャージを検索したときの結果について説明する。オペレータMは、
図4(b)に示すように鋼種「KL011MK」のチャージを選択し「検索」ボタンを押したため、
図5では鋼種「KL011MK」の部分が太線で強調表示されている。これと同時に、強調表示された鋼種「KL011MK」のチャージと交換(代替)可能なチャージが、色彩や明度に変化によって点滅するなど、選択されたチャージとは異なる方法で強調表示される。
【0044】
図5では、生産スケジュールエリア(A1)で7月28日に配置された鋼種「NH336BC」のチャージと鋼種「CX162QA」のチャージ、及び生産優先度エリア(A2)の最も左側の欄に表示された鋼種「CA068NX」のチャージが、交換可能なチャージ(交換チャージ)として強調表示されている。オペレータMは、これら強調表示された交換チャージのうちひとつを選び、入力デバイス12を用いた所謂ドラッグアンドドロップ(Drag & Drop)などによって、矢印で示すように交換チャージを選択チャージの位置まで移動させて交換チャージと選択チャージの位置を入れ替える。
【0045】
上述のような交換チャージの検索によって、オペレータMは、これら強調表示されたチャージのみに注目するだけで、選択されたチャージと入れ替える交換チャージを選択することができる。このことは、経験の浅いオペレータMにとっては、無数にあるといえるほどの鋼種の中から交換チャージを選択しなくてはならないという負担を軽減することなり、熟練したオペレータMにとっては、最適な交換チャージを探す手間を大幅に削減し作業時間を短縮できるというメリットを生む。
【0046】
図4(b)の第2検索画面A32は、選択チャージの前後のチャージとの繋がりやクロップ量を指定するものであったが、選択チャージと交換チャージを実際に入れ替えた場合、交換チャージの前後のチャージと移動後の選択チャージとの繋がりやクロップ量を考慮した方が、精度の高い生産スケジュールの変更及び修正が可能となる。
図6は、交換チャージの前後のチャージと選択チャージとの繋がりやクロップ量を考慮した検索を行うための第3検索画面A33を示している。
【0047】
第3検索画面A33では、選択チャージを交換チャージの位置へ移動させたときの、前後のチャージとの繋がり方及びクロップ量を指定できるチェック欄が、「交換先での選択チャージの繋がり方」として用意されている。第3検索画面A33は、第2検索画面A32での検索をさらに詳細に行うための検索インタフェースであるので、第2検索画面A32で検索条件を指定した後に、入力デバイス12による所定の操作を経て支援モニタ11の画面に表示される。すなわち、第3検索画面A33の上側部分の表示は、第2検索画面A32と同じである。
【0048】
前後のチャージ共、繋がり方については、交換前の現状の繋がり方と同じ繋がり方(同じ)とするか、どのような繋がり方でもよい(任意)とするか、または、現状の繋がり方以外の繋がり方(現状以外)とするかを指定することができる。
また、クロップ量については、交換前の現状の繋がり方と同じ量(同じ)とするか、どのような量でもよい(任意)とするか、または現状よりも減らす(減らす)とするかを指定することができる。さらに、選択チャージと交換チャージを入れ替えた後における選択チャージ側と交換チャージ側で生じるクロップの総量を、入れ替え前の現状と同じとするか、任意とするか、または減らすとするかを指定することができる。
【0049】
図6に示す第3検索画面A33を用いれば、選択チャージ側の繋がりやクロップ量だけでなく交換チャージ側の繋がりやクロップ量も考慮した、いわば全体の収支を考慮した検索(選択した生産項目と入れ替え可能な生産項目の検索)が可能となる。全体の収支を考慮することは、経験の浅いオペレータMは言うに及ばず、熟練したオペレータMにとっても時間を要する作業であるので、第3検索画面A33は生産スケジュールの変更及び修正に非常に有効なインタフェースであるといえる。
【0050】
最後に、
図7を参照して、上記第1検索画面A31〜第3検索画面A33を用いて交換チャージを検索する際の補助検索画面A34について説明する。
オペレータMが、生産スケジュールを変更する際に、ある複数のチャージを選択して、それら選択したチャージに共通する属性を持つチャージを探したい場合がある。補助検索画面A34は、このような共通属性を持つチャージを検索するためのインタフェースである。
【0051】
図7では、オペレータMが選択した2つのチャージのそれぞれの鋼種「BR479HI」と「NH336BC」が表示されるとともに、各鋼種が、希釈鋼、ばね鋼、快削鋼、肌焼鋼、強靱鋼、清浄鋼等のどのグループに属するかが一覧で表示されている。
図7では、鋼種「BR479HI」は、希釈鋼種かつばね鋼であり、鋼種「NH336BC」は、希釈鋼種かつ強靱鋼であることが示されている。
【0052】
ここで、画面上部に示されている“and”を選択して検索すると、選択された2つの鋼種「BR479HI」及び「NH336BC」に共通するグループである希釈鋼種に属するチャージが検索される。仮に、共通するグループが希釈鋼種とばね鋼の2つであった場合、希釈鋼種かつばね鋼に属するチャージが検索される。また、画面上部に示されている“or”を選択して検索すると、各鋼種が属するグループのチャージが検索される。つまり、
図7の補助検索画面A34によれば、2つの鋼種「BR479HI」及び「NH336BC」が共通に属する希釈鋼種のチャージと、鋼種「BR479HI」が属するばね鋼のチャージと、鋼種「NH336BC」が属する強靱鋼のチャージとが、それぞれ検索される。
【0053】
この補助検索画面A34を用いれば、生産スケジュールにおいてある複数のチャージが連続している理由を、鋼種を手がかりに調べつつ交換可能なチャージを検索するなど、いわゆる逆引き辞書のような検索が可能となる。
上述のように、生産スケジュールの決定システム10によれば、製鉄所内において様々な製品(金属材製品など)を製造するに際して、オペレータMの経験度合いに左右されることなく、効率的な生産スケジュールの決定及び変更を行うことができる。また、熟練したオペレータMでも数時間といった多大な時間を要していた型組作業が、本発明の支援システム10を用いることで30分程度で済むようになり、作業の効率化を図ることが可能となった。
【0054】
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。特に、今回開示された実施形態において、明示的に開示されていない事項、例えば、運転条件や操業条件、各種パラメータ、構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な値を採用している。
【0055】
例えば、実施形態として、連続鋳造機1における型組を例示して説明したが、連続熱処理炉などのように、複数存在する処理対象(処理圧延材)から、所定の処理対象を抽出し、それらをシーケンシャルに処理するような工程での生産スケジューリングに対し、本発明は好適である。
また、本実施形態の変更支援システム10Bの適用は、決定支援システム10Aにより決定された生産スケジュールの変更に限定されるものではない。オペレータMが経験を基に作成した生産スケジュールに対し、本実施形態の変更支援システム10Bを用いて変更を加えるようにしてもよい。
【0056】
また、変更支援システム10Bの第1検索画面A31〜A34を、決定支援システム10Aの支援モニタ11とは別のモニタに表示されるようにしても何ら問題なく本発明を実施することができる。