(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5855596
(24)【登録日】2015年12月18日
(45)【発行日】2016年2月9日
(54)【発明の名称】電動機とその輸送方法
(51)【国際特許分類】
H02K 15/02 20060101AFI20160120BHJP
【FI】
H02K15/02 A
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-80238(P2013-80238)
(22)【出願日】2013年4月8日
(65)【公開番号】特開2014-204594(P2014-204594A)
(43)【公開日】2014年10月27日
【審査請求日】2015年1月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】特許業務法人サクラ国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100103333
【弁理士】
【氏名又は名称】菊池 治
(74)【代理人】
【識別番号】100173451
【弁理士】
【氏名又は名称】井澤 彪
(72)【発明者】
【氏名】北湯口 一也
【審査官】
鈴木 重幸
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭58−028572(JP,U)
【文献】
特開平09−224347(JP,A)
【文献】
特開平05−122884(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K15/00−15/16
H02K 5/00− 5/26
H02K11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
側面の軸心をはさんで互いに対称な2か所にくぼみが形成された水平に延びる回転軸と、
前記回転軸を回転支持する軸受と、
前記軸受を支持するブラケットと、
前記ブラケットに取り付けられて前記回転軸が貫通する外側油切りと、
前記外側油切りに着脱可能に取り付けられた2個の電動機輸送保護装置と、
を備えた電動機であって、
前記2個の電動機輸送保護装置それぞれは、
前記外側油切りに着脱可能に取り付けられてねじ棒貫通孔が形成された取り付け部材と、
前記ねじ棒貫通孔を貫通するねじ棒と、
前記ねじ棒貫通孔に前記ねじ棒を貫通させて前記ねじ棒の先端を前記回転軸のくぼみに押し当てることにより前記回転軸の回転を阻止する状態で前記取り付け部材に対して前記ねじ棒を一時的に固定可能なねじ棒固定部材と、
を有し、
前記2個の電動機輸送保護装置の前記ねじ棒の先端が、前記2か所のくぼみそれぞれに押し当てられるように配置されていることを特徴とする電動機。
【請求項2】
前記ねじ棒固定部材それぞれは、前記ねじ棒が前記ねじ棒貫通孔を貫通した状態で、前記取り付け部材をはさんで、前記ねじ棒に螺合する2個のナットを含むこと、を特徴とする請求項1に記載の電動機。
【請求項3】
前記取り付け部材それぞれは、前記外側油切りの外側端部に取り付け可能であること、を特徴とする請求項1または請求項2に記載の電動機。
【請求項4】
前記外側油切りに複数の取り付けボルトが貫通する取り付けボルト孔が形成されており、
前記ブラケットに前記複数の取り付けボルトが螺合する取り付けボルト受容ねじ穴が形成されており、
前記取り付け部材それぞれには、前記複数の取り付けボルトが通る取り付けボルト溝が形成されており、
前記複数の取り付けボルトを、前記取り付け部材の前記取り付けボルト溝および前記外側油切りの前記取り付けボルト孔を通して前記取り付けボルト受容ねじ穴と螺合させることにより、前記取り付け部材および前記外側油切りを前記ブラケットに固定可能に構成されていること、
を特徴とする請求項3に記載の電動機。
【請求項5】
軸心をはさんで互いに対称な2か所の側面にくぼみが形成された水平に延びる回転軸と、前記回転軸を回転支持する軸受と、前記軸受を支持するブラケットと、前記ブラケットに取り付けられて前記回転軸が貫通する外側油切りと、を備えた電動機の輸送方法であって、
それぞれにねじ棒貫通孔が形成された2個の取り付け部材を、前記外側油切りの軸心をはさんで互いに対称な2か所に取り付ける取り付け部材取り付けステップと、
前記取り付け部材取り付けステップの後に、前記2個の取り付け部材のそれぞれの前記ねじ棒貫通孔に2個のねじ棒を貫通させて前記2個のねじ棒の先端を前記回転軸の前記2か所のくぼみそれぞれに押し当てることにより前記回転軸の回転を阻止する状態で前記2個のねじ棒を前記2個の取り付け部材に固定する固定ステップと、
前記固定ステップの後に、前記電動機を輸送する輸送ステップと、
前記輸送ステップの後に前記電動機を設置する設置ステップと、
前記設置ステップの後に、前記2個のねじ棒が前記回転軸の前記2か所のくぼみに押し当てられた状態から解除する解除ステップと、
を有することを特徴とする電動機輸送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電動機とその
輸送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電動機を工場で製造した後に設置場所へ搬送するに当たり、輸送中に回転軸が回転したり振動したりしないように、回転軸を一時的に固定する必要がある(特許文献1参照)。そのために、止金を用いて回転軸をその端面から軸方向に押し付けて回転軸を固定する方法などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭63−182667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電動機を輸送するために用いられる止金などの輸送保護装置は、電動機を設置した後は不要となり、廃棄されることが多い。そのため、廃棄される部分の材料をなるべく少なくして、無駄を減らすことが望まれている。
【0005】
この発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、電動機の輸送保護のために必要な輸送保護装置をなるべく少ない材料で実現して、省資源とコスト低減を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る電動機は、側面
の軸心をはさんで互いに対称な2か所にくぼみが形成された水平に延びる回転軸と、前記回転軸を回転支持する軸受と、前記軸受を支持するブラケットと、前記ブラケットに取り付けられて前記回転軸が貫通する外側油切りと、前記外側油切りに着脱可能に取り付けられた
2個の電動機輸送保護装置と、を備えた電動機であって、前記
2個の電動機輸送保護装置
それぞれは、前記外側油切りに着脱可能に取り付けられてねじ棒貫通孔が形成された取り付け部材と、前記ねじ棒貫通孔を貫通するねじ棒と、前記ねじ棒貫通孔に前記ねじ棒を貫通させて前記ねじ棒の先端を前記回転軸のくぼみに押し当てることにより前記回転軸の回転を阻止する状態で前記取り付け部材に対して前記ねじ棒を一時的に固定可能なねじ棒固定部材と、を有
し、前記2個の電動機輸送保護装置の前記ねじ棒の先端が、前記2か所のくぼみそれぞれに押し当てられるように配置されていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る電動機輸送方法は、
軸心をはさんで互いに対称な2か所の側面にくぼみが形成された水平に延びる回転軸と、前記回転軸を回転支持する軸受と、前記軸受を支持するブラケットと、前記ブラケットに取り付けられて前記回転軸が貫通する外側油切りと、を備えた電動機の輸送方法であって、
それぞれにねじ棒貫通孔が形成された
2個の取り付け部材を、前記外側油切り
の軸心をはさんで互いに対称な2か所に取り付ける取り付け部材取り付けステップと、前記取り付け部材取り付けステップの後に、前記
2個の取り付け部材の
それぞれの前記ねじ棒貫通孔に
2個のねじ棒を貫通させて前記
2個のねじ棒の先端を前記回転軸の
前記2か所のくぼみ
それぞれに押し当てることにより前記回転軸の回転を阻止する状態で前記
2個のねじ棒を前記
2個の取り付け部材に固定する固定ステップと、前記固定ステップの後に、前記電動機を輸送する輸送ステップと、前記輸送ステップの後に前記電動機を設置する設置ステップと、前記設置ステップの後に、前記
2個のねじ棒が前記回転軸の前記
2か所のくぼみに押し当てられた状態から解除する解除ステップと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、電動機の輸送保護のために必要な輸送保護装置を少ない材料で実現して、省資源とコスト低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係る電動機の一実施形態の要部正面図である。
【
図3】
図2の取り付け部材の一つだけを取り出して示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本発明に係る電動機の一実施形態について説明する。
図1は、本発明に係る電動機の一実施形態の要部正面図である。
図2は
図1のII方向矢視側面図である。
図3は、
図2の取り付け部材の一つだけを取り出して示す側面図である。
【0012】
電動機は、水平方向に延びる回転軸11と、回転軸11を回転支持する軸受12とを有する。電動機は2個の軸受12を有するが、
図1には負荷側の軸受12のみを示している。軸受12はブラケット13に支持され、ブラケット13はケーシング14の端部に取り付けられている。ブラケット13の外側端部には外側油切り15が取り付けられている。外側油切り15の中央には開口があって、この開口を回転軸11が貫通して延びている。
【0013】
ケーシング14の内部には、図示しない固定子が固定され、回転軸11には図示しない回転子が固定されていて、固定子は回転子の半径方向外側を取り囲むように配置されている。
【0014】
ブラケット13の軸方向端部に複数の取り付けボルト受容ねじ穴16が形成されていて、また、外側油切り15に複数の取り付けボルト孔17が形成されている。取り付けボルト18を、外側油切り15の取り付けボルト孔17を通してブラケット13の取り付けボルト受容ねじ穴16にねじ込むことにより、外側油切り15がブラケット13に固定されている。
【0015】
電動機輸送保護装置21が、外側油切り15に着脱可能に取り付けられている。図示の例では、2個の電動機輸送保護装置21が、軸心をはさんで反対位置に取り付けられている。各電動機輸送保護装置21は、取り付け部材22と、取り付け部材22に取り付けられたねじ棒23と、2個のナット(ねじ棒固定部材)24とを備えている。
【0016】
取り付け部材22は、ほぼ長方形の平板をその一辺に平行な折線で直角に折り曲げられて、長方形の第1平面部25と長方形の第2平面部26とが形成されている。第1平面部25には、一つのねじ棒貫通孔27が形成されている。第2平面部26には、折線の反対の辺に向かって延びてその辺で開いた溝(スロット)28が、2個、互いに平行に配置されている。
【0017】
取り付け部材22は、外側油切り15の外側端部に取り付けられる。このとき、第2平面部26の取り付け部材22の折線に対して外側の面が外側油切り15の外側端部に押し付けられるように配置され、第1平面部25が回転軸11から遠い側に位置するような向きとする。これにより、第1平面部25は、回転軸11の外側油切り15から突出した部分と対向する位置になっている。
【0018】
2本の取り付けボルト18が、第2平面部26の溝28および外側油切り15の取り付けボルト孔17を通って、ブラケット13の取り付けボルト受容ねじ穴16に挿入されて、ねじ込まれる。これにより、取り付け部材22が外側油切り15およびブラケット13に固定される。
【0019】
取り付け部材22を取り付ける前に、取り付けボルト18によって外側油切り15がブラケット13に取り付けられている。そして、取り付け部材22を取り付ける際は、取り付けボルト18を緩めて、取り付け部材22を回転軸の半径方向外側から内側に向けてスライドさせ、取り付け部材22の溝28で各取り付けボルト18を挟み込むようにして取り付け部材22を取り付けることができる。
【0020】
電動機の設置後に、取り付け部材22は取り外される。このとき、取り付けボルト18を緩めて、取り付け部材22を回転軸の半径方向外側に向けてスライドさせ、取り付け部材22を取り外した後に、取り付けボルト18を再度締め付け直して、ブラケット13と外側油切り15の結合を再度確実なものとすればよい。
【0021】
ねじ棒23はねじ棒貫通孔27に挿通される。ねじ棒23には雄ねじが形成され、この雄ねじに2個のナット24がねじ込まれる。ねじ棒23の先端が回転軸11の側面に押し付けられた状態で、取り付け部材22の両側から2個のナット24を挟みつけることにより、ねじ棒23が取り付け部材22に対して固定される。回転軸11の側面にはくぼみ30が形成されており、ねじ棒23の先端がくぼみ30に入り込むことにより、回転軸11の回転を阻止することができる。
【0022】
電動機の設置後にねじ棒23を撤去するときは、ナット24を緩めて、ねじ棒23を撤去すればよい。
【0023】
なお、電動機の設置後は、取り付け部材22は必ずしも取り外さなくてもよく、さらに、ねじ棒23が回転軸11と接触する位置になければ、ねじ棒23を撤去しなくてもよい。
【0024】
この実施形態によれば、電動機の輸送保護のために必要な輸送保護装置を少ない材料で実現して、省資源とコスト低減を図ることができる。しかも、輸送保護装置の着脱作業も簡単である。
【0025】
また、ブラケット13と外側油切り15とを結合するための取り付けボルト18を用いて取り付け部材22を取り付けるので、取り付け部材22を取り付けるための余計なボルトを必要とせず、省資源となる。
【0026】
[他の実施形態]
本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0027】
たとえば、上記実施形態では一つの電動機に2個の電動機輸送保護装置21を取り付ける例を示したが、電動機輸送保護装置21の数は、1個でも、3個以上でもよい。
【0028】
また、上記実施形態では取り付け部材22を外側油切り15の外側端部に取り付けるものとしたが、たとえば、ブラケット13の側面に取り付け部材22を取り付けることもできる。
【符号の説明】
【0029】
11 回転軸
12 軸受
13 ブラケット
14 ケーシング
15 外側油切り
16 取り付けボルト受容ねじ穴
17 取り付けボルト孔
18 取り付けボルト
21 電動機輸送保護装置
22 取り付け部材
23 ねじ棒
24 ナット(ねじ棒固定部材)
25 第1平面部
26 第2平面部
27 ねじ棒貫通孔
28 溝(スロット)
30 くぼみ