(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記膨出部が上記中心軸方向に変位していないときの、ピン穴形成部の中心軸方向長さD1に対する、膨出部の上記中心軸方向の変位が最大であるときのピン穴形成部の中心軸方向長さD2の比D2/D1が、1.2以上1.8以下の範囲から選択される請求項1から6のいずれかに記載のモールドピン
【背景技術】
【0002】
タイヤの加硫成形工程では、モールドを備えた加硫装置が用いられている。モールドとしては、割モールド及びツーピースモールドが用いられうる。割モールドは、通常、複数のセグメントと、上下一対のサイドプレートとを備えている。セグメントの平面視形状は実質的に円弧状である。複数のセグメントがリング状に連結されることにより、リング状のキャビティ面が形成されうる。
【0003】
スパイクタイヤでは、そのトレッド面に、氷上性能を維持するための多数のスパイクピンが突設されている。このスパイクタイヤ用のモールドでは、そのキャビティ面に、複数本のピンが突設されている。このピンにより、タイヤのトレッド面に、スパイクピンを装着するためのスパイクピン用穴が形成される。モールドに突設されたこのピンを、ここではモールドピンと呼ぶ。
【0004】
図8(a)には、モールドピンの一例が示されている。このモールドピン102は、モールドに装着される装着部104と、タイヤに埋没してスパイクピン用穴を形成するホール形成部106とを有している。タイヤには、このホール形成部106と略相似形且つやや小さい形状のスパイクピン用穴が形成される。装着部104とホール形成部106とは同軸状である。装着部104には、モールド(図示せず)のねじ穴に螺合しうる雄ネジTHが形成されている。
【0005】
図8(b)には、モールドピンの他の例が示されている。このモールドピン112のホール形成部114の先端には、フランジ部(膨出部)116が形成されている。その他の部分の構造は、上記モールドピン102と同一であるため、同一符号を付してその説明が省略される。このモールドピン112によれば、そのホール形成部114と略相補的な形状のスパイクピン用穴がタイヤに形成される。すなわち、底部に拡径部を有するスパイクピン用穴が形成される。このスパイクピン用穴には、その基端にフランジ部を有する図示しないスパイクピンが装着される。スパイクピンのフランジ部は、上記スパイクピン用穴の拡径部に係合する。このスパイクピンは、スパイクピン用穴から抜けにくい。
【0006】
タイヤの加硫後にモールドを開いて型抜きする際、モールドピンの先端がタイヤのスパイクピン用穴の開口縁に引っ掛かり易い。これにより、上記開口縁からひび割れが生じるおそれがある。トレッドパターン表面を損傷するおそれがある。上記引っ掛かりの一因は、タイヤに埋没しているモールドピンの中心軸方向(長手方向ともいう)と、モールドのセグメントの開移動の方向とが一致していないことである。各セグメントのキャビティ面の周方向両端近傍に突設されているモールドピンの長手方向は、セグメントの移動方向に対し、角度をなして傾斜している。すなわち、モールドピンの長手方向(ホールの長手方向でもある)に抜かれるのではなく、長手方向から傾斜した方向に平行移動させられる。その結果、モールドピンがスパイクピン用穴をこじ開けるように移動することになる。
【0007】
このようなスパイクピン用穴開口縁との引っ掛かりを抑制するモールドピンに関し、特開2012−45845号公報に提案された技術が知られている。
【0008】
また、トレッドのキャップ層ゴムの物性を変更して低硬度とすることにより、スパイクピン用穴の開口縁へのモールドピンの引っ掛かりを抑制することは可能である。しかし、キャップ層のゴムが柔らかいと、装着されたスパイクピンが動きやすくなり、耐ピン抜け性能が低下するおそれがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、前述した現状に鑑みてなされたものであり、その目的は、スパイクタイヤに対して、スパイクピンの耐ピン抜け性能が向上したピン用穴を形成することができ、また、タイヤの加硫成型時に、モールドからのタイヤの取り外しが容易となり、上記スパイクピン用穴の開口周縁の傷の発生を抑制しうるモールドピンを提供すること、及び、このモールドピンを備えたタイヤ成形用モールドを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るモールドピンは、
タイヤのトレッド面にスパイクピン装着用の穴を形成するためのモールドピンであって、
モールドに挿入されて固定される部分である装着部と、
タイヤに埋没してスパイクピン用穴を形成する部分であるピン穴形成部とを備えており、
このピン穴形成部が、その先端又は先端近傍に形成された膨出部を有しており、
この膨出部が、装着部に対して、ピン穴形成部の中心軸方向に変位可能に構成されている。
【0012】
好ましくは、上記膨出部が、上記装着部に対して、膨出部の中心軸回りに回転可能に構成されている。
【0013】
好ましくは、上記装着部が、上記ピン穴形成部と同軸状に形成された案内空間と、この案内空間内に形成された係止部とを有しており、
上記ピン穴形成部が、その基端に形成された被係止部を有しており、
このピン穴形成部が、上記案内空間により、その中心軸方向の変位を案内されており、
上記係止部に、上記被係止部が係止することにより、ピン穴形成部の上記案内空間からの離脱が阻止されている。
【0014】
好ましくは、上記ピン穴形成部が、上記装着部に固定された基部と、この基部の中心軸方向に変位可能な伸縮部とを有しており、
上記膨出部が、この伸縮部の先端又は先端近傍に形成されており、
上記基部が、同軸状の案内空間と、この案内空間内に形成された係止部とを有しており、
上記伸縮部が、その基端に形成された被係止部を有しており、
この伸縮部が、上記案内空間により、基部の中心軸方向の変位を案内されており、
上記係止部に、上記被係止部が係止することにより、伸縮部の上記案内空間からの離脱が阻止されている。
【0015】
好ましくは、上記ピン穴形成部及び上記膨出部のうちの少なくとも膨出部が、上記装着部に対して、揺動可能に構成されている。
【0016】
好ましくは、上記揺動が、膨出部の上記変位が最大に至ったときに可能となるように構成されている。
【0017】
好ましくは、上記膨出部が上記中心軸方向に変位していないときの、ピン穴形成部の中心軸方向長さD1に対する、膨出部の上記中心軸方向の変位が最大であるときのピン穴形成部の中心軸方向長さD2の比D2/D1が、1.2以上1.8以下の範囲から選択される。
【0018】
好ましくは、上記ピン穴形成部が円柱状外形を有し、上記膨出部が円板状外形を有し、
ピン穴形成部の直径Bに対する膨出部の直径Aの比A/Bが、1.2以上3.5以下である。
【0019】
本発明に係るタイヤ用モールドは、
リング状に配置された、平面視が円弧状の成形用キャビティ面を有する複数のセグメントと、
各セグメントの半径方向内側に配置された、成形用キャビティ面を有する上下一対のサイドプレートとを備えており、
上記セグメントのキャビティ面に、複数のモールドピンが突設されており、
このモールドピンの突出方向が、キャビティ面の円弧の中心を向いており、
上記モールドピンが、前述したいずれかのモールドピンから構成されている。
【0020】
好ましくは、上記キャビティ面及びモールドピンのうち少なくともモールドピンに、摩擦低減用の表面処理が施されている。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、スパイクタイヤに対して、スパイクピンの耐ピン抜け性能が向上したスパイクピン用穴を形成することが可能であり、タイヤの加硫成型時に、モールドからのタイヤの取り外しが容易となり、上記スパイクピン用穴の開口周縁の傷の発生を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0024】
図1は、本発明の一実施形態に係るタイヤ用モールド(以下、単にモールドという)2を示す平面図である。このモールド2は、タイヤの加硫装置に備えられている。
図2は
図1のII−II線に沿った拡大断面図である。
図2において、上下方向がタイヤの軸方向であり、左右方向がタイヤの半径方向である。紙面に垂直な方向がタイヤの周方向である。このモールド2は、複数のセグメント4と、上下一対のサイドプレート6と、上下一対のビードリング8とを備えている。
図2には、後述のローカバーR及びブラダー10もともに示されている。
【0025】
図1に示されるように、サイドプレート6は、セグメント4の半径方向内側に配置されている。セグメント4の平面形状は実質的に円弧状である。複数のセグメント4がリング状に連結される。セグメント4の数は通常3以上20以下である。
図1には、9個のセグメント4を備えたモールド2が例示されている。各セグメント4の内周面はキャビティ面12を構成している。サイドプレート6及びビードリング8は実質的にリング状である。このモールド2はいわゆる「割モールド」である。
【0026】
図2に示されるように、各セグメント4のキャビティ面12には、複数本のモールドピン14が突設されている。このモールドピン14は、成型されるタイヤのトレッド面に、スパイクピン用穴PHを形成する。モールドピン14の突設方向は、平面視では、モールドの(タイヤの)半径方向内向きである。
図1に示されるように、平面視では、モールドピン14は、モールドの中心に向けて突設されている。
図2に示されるように、正面視では、モールドピン14は、タイヤの赤道面に平行にされている。複数本のモールドピン14の配置は、タイヤのトレッドパターンに応じて設定される。
【0027】
このモールド2が用いられるスパイクタイヤの製造工程においては、まず、予備成形によってローカバーRが得られる。このローカバーRは、モールド2が開いておりブラダー10が収縮している状態で、モールド2の内部(キャビティ)に投入される。この段階では、ローカバーRのゴム組成物は未架橋状態である。
【0028】
モールド2が閉じられる。すなわち、上下一対のサイドプレート6同士が接近して閉じるとともに、複数のセグメント4同士が接近し合って閉じる。ローカバーRは、モールド2の内面(キャビティ面12)とブラダー10とに囲まれたキャビティ内に収容される。ブラダー10が、ガスの充填によって膨張する。ローカバーRはブラダー10によってモールド2のキャビティ面12に押しつけられ、加圧される。同時にローカバーRは、加熱される。
【0029】
加圧と加熱とによりゴム組成物が流動する。ゴムは、流動しながらキャビティ面12にめり込む。これにより、タイヤの外面が形成される。同時に、モールドピン14のキャビティへの突出部分がゴムの内部に埋没する。タイヤの外面には、前述のトレッド面の溝が含まれる。サイドウォールに文字、記号等の装飾物が設けられている場合は、この装飾物もこの外面に含まれる。タイヤのトレッド面には、埋没している上記モールドピン14が抜き取られることにより、スパイクピン用穴PHが形成される。
【0030】
加熱の継続により、ゴムが架橋反応を起こし、タイヤが得られる。ローカバーRが加圧及び加熱される工程は、加硫工程と称される。キャビティ面12のうち、セグメント4の範囲においてタイヤのトレッド部が形成され、サイドプレート6の範囲においてタイヤのサイド部が形成され、ビードリング8の範囲においてビード部が形成される。
【0031】
加硫工程が終了すると、モールド2が開かれ、キャビティからタイヤが取り出される。
図1及び
図2における二点鎖線は、モールド2が開かれるときのセグメント4の移動を示している。各セグメント4は、
図1に示されるように、平面視で、半径方向外方に向けて同時に移動する。また、各セグメント4は、半径方向に移動するとともに、
図2に示されるように、正面視で、赤道面から軸方向に離間する方向にも移動する場合もある。
【0032】
各セグメント4における、キャビティ面12の周方向中央から離間した位置のモールドピン14にとっては、セグメント4の移動方向がモールドピン14の中心軸方向と一致しない。セグメント4の移動方向がモールドピン14の中心軸方向に対して所定角度傾斜している。上記モールドピン14は、モールド2が開かれる際に、上記のような方向に移動させられても、タイヤのスパイクピン用穴PHに引っ掛かりにくい構造を有している。
【0033】
図3には、上記モールドピン14が示されている。このモールドピン14は、モールド2に挿入されて固定される部分である装着部16と、タイヤTに埋没してスパイクピン用穴PHを形成する部分であるピン穴形成部18とを備えている。装着部16及びピン穴形成部18は、ともに、基本的に円柱状外形を有している。装着部16とピン穴形成部18とは、同軸状に直列に接合されている。
【0034】
装着部16には、モールドのセグメント4に固定するための雄ネジTHが形成されている。この雄ネジTHの下端部、つまり、装着部16のピン穴形成部18側の端部には、円板部20が形成されている。この円板部20により、モールドピン14がセグメント4に螺着されるときの位置決めがなされる。この円板部は、モールドのキャビティ面から突出し、タイヤのゴム内に没入する形態であってもよい。
【0035】
ピン穴形成部18は、装着部16に対して抵抗溶接等によって接合された基部22と、この基部22に対し、中心軸方向に進退可能に連結された伸縮部24とを有している。基部22は円筒状を呈し、伸縮部24は円柱状を呈している。基部22と伸縮部24とは、同軸状に配置されている。基部22の内部空間22aに、伸縮部24がその基端(上端)から挿入されている。この内部空間22aにより、基部22と伸縮部24とはテレスコピックに連結されている。この内部空間22aは、伸縮部24に対する案内空間である。
【0036】
この伸縮部24は、その先端(下端)に形成された膨出部(フランジ部)26を有している。この膨出部26は、スパイクピン用穴PHの奥底に、スパイクピンに対する効果的な係止用拡径部を形成するためのものである。膨出部26は、略円板状を呈している。
【0037】
伸縮部24の基端には、拡径された円板状の被係止部28が形成されている。基部22の先端には、係止部30が形成されている。この係止部30は円輪状を呈している。係止部30の貫通孔30aの内径は、伸縮部24の本体24aの外径よりやや大きく、被係止部28の外径より小さい。伸縮部24の本体24aは、この係止部30を通過するが、上記被係止部28は、係止部30に係止される。
【0038】
上記伸縮部24が基部22から引き出されると、その被係止部28が、係止部30に係止して停止する(
図3(a))。タイヤの加硫成型時では、ローカバーRが未加硫の柔らかい状態では、モールドピン14がゴムの中でこのような伸長状態になりうる。伸縮部24が基部22内に押し込まれると、その膨出部26の上面が、基部22の下端に当接して停止する(
図3(b))。タイヤTの加硫成型時では、タイヤTが加硫終了後の固い状態では、モールドピン14がこのような短縮状態になりうる。
【0039】
このように、伸縮部24が基部22に対して進退可能にされることにより、膨出部26が装着部16に対してその中心軸方向に進退可能に構成される。また、伸縮部24は、基部22に対してその中心軸回りに回転可能になっていることも明らかである。このように、膨出部26を含んだピン穴形成部18が、装着部16に対して進退可能且つ回転可能になる。このような動作により、モールドからタイヤTを取り外すときに、スパイクピン用穴PHとピン穴形成部18との摩擦が軽減される。その結果、スパイクピン用穴PHに対するピン穴形成部18の引っ掛かりが大幅に緩和される。スパイクピン用穴PHの開口周縁の傷の発生が抑制されうる。
【0040】
上記膨出部26は、伸縮部24の本体24aの先端に対し、ネジによって固定されている。これは、モールドピン14の組立を容易にする観点からである。しかし、かかる膨出部26の形成方法には限定されない。膨出部26と伸縮部24の本体24aとを一体に形成してもよい。
【0041】
図4には、他のモールドピン34が示されている。このモールドピン34は、互いに同軸状且つテレスコピックに連結された装着部36とピン穴形成部38とを備えている。装着部36には、モールドのセグメント4に固定するための雄ネジTHが形成されている。ピン穴形成部38は、その先端に形成された膨出部(フランジ部)40を有している。装着部36は円筒状を呈し、ピン穴形成部38は基本的に円柱状を呈している。モールドピン34の組立容易のために、円筒状の装着部36の上端は、円板状の蓋36bが溶接によって固着されている。しかし、かかる製法には限定されない。膨出部40は、略円板状を呈している。このモールドピン34も、そのピン穴形成部38が、装着部36に対して進退可能且つ回転可能にされている。
【0042】
装着部36の内部空間36aに、ピン穴形成部38がその基端から挿入されている。この内部空間36aにより、装着部36とピン穴形成部38とはテレスコピックに連結されている。この内部空間36aは、ピン穴形成部38に対する案内空間である。このピン穴形成部38の基端には、拡径された円板状の被係止部42が形成されている。装着部36の先端には、円輪状の係止部44が形成されている。係止部44の貫通孔44aの内径は、ピン穴形成部38の外径よりやや大きく、被係止部42の外径よりやや小さい。ピン穴形成部38の被係止部42は、係止部44に係止される。
【0043】
ピン穴形成部38が装着部36内に押し込まれると、その被係止部42が、装着部36内の上端に当接して停止する(
図4(a))。タイヤの加硫時に、ゴムが硬化することにより、図示のごとくピン穴形成部38が装着部36内に押し込まれる。ピン穴形成部38が装着部36から引き出されると、その被係止部42が、係止部44に係止して停止する(
図4(b))。このように、ピン穴形成部38が装着部36に対して進退可能に構成されている。膨出部40が装着部36に対して中心軸方向に変位可能に構成されている。ピン穴形成部38は、装着部36に対してその中心軸回りに回転可能になっていることも明らかである。
【0044】
タイヤの加硫終了後に、セグメント4が開かれるとき、
図4(b)に示されるように、ピン穴形成部38がこのような進出状態となる。この動作により、モールドからタイヤTを取り外すときに、スパイクピン用穴PHに対するピン穴形成部38の引っ掛かりが大幅に緩和される。ピン穴形成部38の伸長や回転により、スパイクピン用穴PHとピン穴形成部38との摩擦が軽減されるからである。スパイクピン用穴PHの開口周縁の傷の発生が抑制されうる。
【0045】
このモールドピン34について、ピン穴形成部38が進退はするが回転はし得ないように変更することは容易である。まず、装着部36の内周面に中心軸方向の図示しない案内溝を形成する。ピン穴形成部38の被係止部42の外周面に、上記案内溝に係合する被案内凸部を形成する。かかる構成により、ピン穴形成部38は、装着部36に対して回転不能且つ進退可能にされうる。この構成は前述した
図3のモールドピン14に対しても適用可能である。
【0046】
図5には、他のモールドピン46が示されている。このモールドピン46は、上記
図4に示されたモールドピン34とその全体構成が類似している。このモールドピン46と
図4のモールドピン34との相違点は、ピン穴形成部50の基端の被係止部52の形状、及び、装着部48の先端の係止部54の形状である。その他の部材は、
図4のモールドピン34の部材と実質的に同様であるため、同一符号を付すことにより、その説明が省略される。かかる構成により、このモールドピン46は、ピン穴形成部50が、装着部48に対して、伸長及び中心軸回りの回転が可能であり、後述するように揺動も可能である。この構成では、装着部48に対して膨出部40が回転可能且つ揺動可能であるといえる。
【0047】
このモールドピン46では、その被係止部52が球状を呈している。このモールドピン46の係止部54は、上記被係止部52が係止した状態で、ピン穴形成部50が360°方向に揺動しうるような形状に形成されている。具体的には、係止部54の貫通孔54aの上側、すなわち、装着部48の内部空間48a側には、貫通孔54aの周囲に球面状に凹んだ座ぐり56が形成されている。この座ぐり56には、
図5(a)に示されるように、上記球状の被係止部52が摺接しうる。係止部54の貫通孔54aの下側には、貫通孔54aの周囲に、下方に円錐状に開いた切り欠き58が形成されている。この切り欠き58には、揺動時のピン穴形成部50が当接しうる(
図5(a))。このように、被係止部52が係止部54に係止するまで伸長したピン穴形成部50は、360°方向に揺動することができる。ピン穴形成部50が装着部48の内部空間48aに押し込まれると、その被係止部52が、装着部48内の上端に当接して停止する(
図5(b))。
【0048】
図5(c)は、タイヤTの加硫終了後に、セグメント4が開かれるときの、モールドピン46の姿勢が例示されている。ピン穴形成部50は、伸長したときに装着部48に対して揺動しうるので、スパイクピン用穴PHとの摩擦が一層軽減されうる。この作用は、セグメント4のキャビティ面の中央ではなく両端近傍に突設されているモールドピン46にとってより有効である。このように配置されたモールドピン46では、その中心軸に対してセグメント4の移動方向Mが傾斜しているからである(
図5(c))。また、この場合、必要に応じてピン穴形成部50の伸長可能長さを短くすればさらに好ましい。
【0049】
図5のモールドピン46は、概して、
図4のモールドピン34の被係止部42が球状に変更され、係止部44に球面状の座ぐりと円錐状の切り欠きとが形成されたものと言える。揺動式のモールドピンとしては、かかる構成に限定されない。例えば、
図3のモールドピン14の伸縮部24基端の被係止部28が球状に変更され、基部22先端の係止部30に球面状の座ぐりと円錐状の切り欠きとが形成されたものでもよい。
【0050】
図6には、他のモールドピン60が示されている。このモールドピン60は、装着部16と、この装着部16に同軸状且つ直列に接合されたピン穴形成部62とを備えている。装着部16は、
図3のモールドピン14の装着部16と同様の構成であるため、その説明が省略される。ピン穴形成部62は、
図6(a)に示されるように、装着部16の先端に固定された基部64と、この基部64に対して中心軸方向に進退可能且つ揺動可能に連結された伸縮部66とを有している。伸縮部66は、その先端に形成された膨出部40を含んでいる。
【0051】
図6(b)に示されるように、上記基部64は、溶接、ねじ込み、削り出しによる一体形成等により、装着部16と一体化されている。基部64は、円柱状部材から形成されている。基部64は、円柱状部材の中心線を挟んだ両側に、互いに平行に切除されてなる一対の平面64aを有している。基部64には、その中心軸方向に延び、一方の平面64aから他方の平面64aまで貫通する長孔64bが形成されている。
【0052】
図6(c)に示されるように、上記伸縮部66は、円柱状部材から形成されている。伸縮部66には、その中心軸方向に沿って、上端から下端近傍までを切除してなる凹所68が形成されている。この凹所68は、上記基部64の外径と相補的な内部形状を有している。すなわち、凹所68は、伸縮部66の中心軸に平行な対向する一対の平面68aと、その先端に底部68bとを有している。伸縮部66が基部64に組み付けられたとき、この平面68aは、基部64の一対の平面64aに対し、平行に近接して対向する。凹所68の基端(上端)近傍には、一対の平面68a間に、軸部材70が掛け渡される。この軸部材70は、伸縮部66を基部64に嵌め込むときに、伸縮部66に形成された図示しない装着孔及び基部64の長孔64bを通し、固着されている。
【0053】
この軸部材70が、長孔64bに沿って移動することにより、伸縮部66が装着部16の中心軸方向に変位する。この長孔64bは、伸縮部66に対する案内空間である。伸縮部66が基部64から引き出されると、その軸部材70が、基部64の長孔64bの先端部64cに係止して停止する(
図3(a))。この長孔64bの先端部64cが係止部であり、上記軸部材70が被係止部であるといえる。
【0054】
このモールドピン60では、ピン穴形成部62は中心軸回りに回転可能にされていない。しかし、回転可能にすることは容易である。例えば、装着部16を円筒状に形成し、ピン穴形成部62の基部64を、
図4に示されるように、被係止部42及び係止部44を用いて装着部16に連結すればよい。また、同様の構成を用いて膨出部40を伸縮部66に対して回転可能にすることも容易である。
【0055】
以上説明されたモールドピン14、34、46、60は、膨出部が伸縮可能に構成されている。また、この膨出部が、伸縮可能な構成に加えて、装着部に対して膨出部の中心軸回りに回転可能に構成されうる。さらに、これらの構成に加えて、ピン穴形成部全体が、装着部に対して揺動可能に構成されうる。又は、ピン穴形成部のうち膨出部を含む一部分が、装着部に対して揺動可能にも構成されうる。かかる膨出部の動作により、モールドの開時に、スパイクピン用穴PHとピン穴形成部との摩擦の軽減される。スパイクピン用穴PHに対するピン穴形成部の引っ掛かりが緩和される。
【0056】
図4に代表して示されるごとく、ピン穴形成部がその先端に膨出部を備えたモールドピン14、34、46、60について、そのピン穴形成部38における膨出部40を除く部分の最大外径をBとする。膨出部40の最大外径をAとする。このとき、外径Bに対する外径Aの比A/Bが、1.2以上3.5以下であるのが好ましい。上記比A/Bが3.5より大きいと、たとえモールド2のキャビティ面12やモールドピンにシリコーン塗布等を行っても、膨出部40がスパイクピン用穴PHの開口縁に引っ掛かるおそれがある。この場合、タイヤTがモールド2のセグメント4から外れにくくなる。比A/Bが3.5以下であると、スパイクピン用穴PHの奥底に効果的な拡径部を備えたスパイクピン用穴PHを形成することができる。しかし、この比A/Bが1.2未満であると、スパイクピン用穴PHに効果的な係止用拡径部を形成することが難しくなるおそれがある。
【0057】
膨出部の最大外径Aは、4.8mm以上7.5mm以下が好ましい。この最大外径Aが4.8mm未満であると、スパイクピン用穴の拡径部が小さくなり、フランジ付きスパイクピンの打ち込みが難しくなるおそれがある。一方、最大外径Aが7.5mmを超えると、スパイクピン用穴の拡径部が大きくなり、フランジ付きスパイクピンの耐ピン抜け性能が低下するおそれがある。
【0058】
ピン穴形成部の最大外径Bは、2.0mm以上3.5mm以下が好ましい。この最大外径Bが2.0mm未満であると、スパイクピンの打ち込みが難しくなるおそれがある。一方、最大外径Bが3.5mmを超えると、スパイクピンの耐ピン抜け性能が低下するおそれがある。
【0059】
上記膨出部40の最大太さ及びピン穴形成部38の最大太さを、ともに最大外径A、Bとした前提は、膨出部40及びピン穴形成部38のいずれもが、円柱状外形等、円形断面を有していることである。例えば、
図3から
図6に示されたモールドピン14、34、46、60等が該当する。しかし、ピン穴形成部及び膨出部の各横断面形状が、正方形、正六角形等の正多角形であってもよい。この場合、上記A及びBはそれぞれ、最大対角線長さを表すことになる。
【0060】
図4に代表して示されるごとく、上記膨出部40及びピン穴形成部38が伸長していないときの、ピン穴形成部38の装着部36からの中心軸方向突出長さをD1とする。膨出部40及びピン穴形成部38が最大に伸長しているときの、ピン穴形成部38の装着部36からの中心軸方向突出長さをD2とする。このとき、D1に対するD2の比D2/D1が、1.2以上1.8以下であるのが好ましい。上記比D2/D1が1.2未満であると、上記「モールド取られ」の改善効果が低減するおそれがある。一方、上記比D2/D1が1.8より大きいと、ピン穴形成部38の伸縮ストロークが大き過ぎ、「モールド取られ」が生じるおそれがある。
【0061】
ピン穴形成部38の短縮時の長さD1は、最適なスパイクピンの長さに適合させる観点から、8.5mm以上10.5mm以下が好ましい。この長さD1が8.5mm未満であると、スパイクピンの突出量が大きくなり、スパイクピンが抜けやすくなるおそれがある。この長さD1が10.5mmを超えると、スパイクピンの突出量が小さくなるおそれがある。この長さD1の好ましい範囲(8.5mm以上10.5mm以下)と、前述した比D2/D1の好ましい範囲(1.2以上1.8以下)とを考え合わせると、膨出部40及びピン穴形成部38の最大伸長時の中心軸方向長さD2の好ましい範囲は、10.2mm以上18.9mm以下と言える。
【0062】
上記「モールド取られ」の防止効果を一層向上させるため、すなわち、モールドとタイヤとの離型性を確保するため、タイヤの表面、金型のキャビティ面及びモールドピンに摩擦低減用の表面処理を施すのが好ましい。この表面処理として、シリコーンコーティング、フッ素コーティング等が挙げられる。特に、金属面であるキャビティ面に対しては、金属メッキ、ショットブラスト等も採用されうる。モールドピンは可動部を有するため、金属メッキ、特に硬質クロームメッキが好ましい。
【0063】
モールドピンの材質としては、構造用炭素鋼、とくにS45Cが好ましい。この場合、ピンの表面に硬質クロムメッキ等の低摩擦係数のメッキを施すのが好ましい。
【0064】
モールドのクリーニングは、従来のショット材による方法ではなく、レーザークリーニングが好ましい。なぜなら、伸縮構造を有するモールドピンが装着されているので、ゴムのかすが溜まる可能性があるため、レーザークリーニングのように、これを効率良く除去できる洗浄法が好ましいからである。
【0065】
前述した各モールドピン14、34、46、60の、ピン穴形成部の短縮時の長さをD1とすると、このピン穴形成部によって形成された加硫後のタイヤのスパイクピン用穴PHの深さC(図示せず)の上記深さD1に対する比C/D1は、約0.95となる。これは、ゴムのシュリンクによるものである。
【0066】
以上説明されたいずれのモールドピン14、34、46、60が用いられても、タイヤTのトレッドには、
図7に示されるようなスパイクピン用穴PHが形成される。このスパイクピン用穴PHは、モールドピンのピン穴形成部に対応した形状の軸孔部PH1を含んでいる。また、モールドピンの膨出部に対応した形状の拡径部PH2も形成される。スパイクピン用穴PHは、加硫後のゴムのシュリンクにより、モールドピンと略相似形且つモールドピンよりやや小さい形状を呈している。拡径部PH2は、軸孔部PH1の奥端、又は、奥端近傍に形成されれる。上記スパイクピン用穴PHには、図示のごときスパイクピンSPが装着される。スパイクピンSPの外形は、スパイクピン用穴PHのそれよりやや大きい。スパイクピンSPは、円柱形の本体SP1と、本体SP1の基端に同軸状に形成された円板状のフランジ部SP2とを有している。フランジ部SP2の外径は、本体SP1の外径より大きい。スパイクピンSPがスパイクピン用穴PHに装着されたとき、フランジ部SP2が拡径部PH2に嵌合する。スパイクピンSPは、
図7に示される形状のものには限定されない。
【実施例】
【0067】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
【0068】
実施例及び比較例として、基本的には
図4から
図8等の構造を有する複数種類のモールドピンが用意された。それそれのモールドピンが、表1から3に示すように互いに異なる構造及び異なる寸法を有している。これらのモールドピンが装着されたモールドを用いることにより、各モールドピンの外形及び寸法に応じたスパイクピン用穴を有する供試タイヤが製造された。モールドピンを除いたモールド自体は全例同一仕様である。供試タイヤのサイズは、いずれも205/60R16である。全供試タイヤに対して、モールドからのタイヤの取り外し易さの評価試験(モールド取られ評価試験)、及び、目視によるタイヤ傷評価試験が行われた。
【0069】
[モールド取られ評価試験]
後述する各例のモールドピンが装着されたモールドを用いて、それぞれ100本のタイヤが製造された。供試タイヤの製造時に、モールドが開かれた際、問題なくモールドから取り出せたタイヤの本数を指数化した。指数が大きいほど良好である。この場合、セグメントにタイヤが付いた状態でこのセグメントが開いた場合、これもモールド取られと判定した。
【0070】
[タイヤ傷評価試験]
後述の各例のモールドピンが装着されたモールドによるタイヤの表面に現れた、モールドピンの影響による傷の個数を測定した。各例について100本のタイヤが製造された(上記モールド取られ評価試験に供されたタイヤ)。各タイヤのモールドから取り出された際の目視検査により、100本のタイヤのうち、傷の発生が認められなかったタイヤの本数を指数化した。指数が大きいほど良好である。
【0071】
[実施例1−3]
実施例1から3として、
図4に示されたモールドピン34から、わずかに構造変更されたモールドピンが所定数製造された。これらのモールドピンは、前述したように、
図4のモールドピン34の装着部36の内壁面に中心軸方向の案内溝が形成されたものであり、ピン穴形成部38の被係止部42の外周面に、上記案内溝に係合する被案内凸部が形成されたものである。かかる構成により、本モールドピンは、ピン穴形成部が装着部に対して、進退はするが回転及び揺動はし得ないようにされている。実施例1から3のモールドピンの仕様は、表1に示された以外は同一である。これらのモールドピンが装着されたモールドが用いられて、前述の試験が実施された。試験による評価結果は表1に示されるとおりである。
【0072】
[実施例4]
実施例4として、上記実施例1と同一構造のモールドピンが所定数製造された。このモールドピンが、実施例1のモールドピンと異なっているのは、モールドピンのうち、装着されたモールドから露出した範囲の全体に、シリコーンが塗布されている点のみである。これらのモールドピンが装着されたモールドが用いられて、前述の試験が実施された。試験による評価結果は表1に示されるとおりである。
【0073】
[比較例1]
比較例1として、表1に示された仕様に基づき、
図8(a)に示された基本構造を有するモールドピンが所定数製造された。これらのモールドピンは、そのピン穴形成部の先端に膨出部を有していない。従って、後述する比較例4と同様に、比較例1のモールドピンを用いて製造されたタイヤのスパイクピン用穴には、拡径部が形成されない。その結果、実施例はもとより、比較例2及び3と比較しても、スパイクピンに対する耐ピン抜け性能が遙かに劣った。また、これらのモールドピンは、そのピン穴形成部が装着部に対して固定されており、進退、回転及び揺動ともにしない。これらのモールドピンが装着されたモールドが用いられて、前述の試験が実施された。試験による評価結果は表1に示されるとおりである。これらのモールドピンのその他の構成及び試験要領は実施例1と同じである。
【0074】
[比較例2、3]
比較例2及び3として、表1に示された仕様に基づき、
図8(b)に示された基本構造を有するモールドピンが所定数製造された。これらのモールドピンは、そのピン穴形成部が装着部に対して固定されており、進退、回転及び揺動ともにしない。これらのモールドピンが装着されたモールドが用いられて、前述の試験が実施された。試験による評価結果は表1に示されるとおりである。これらのモールドピンのその他の構成及び試験要領は実施例1と同じである。
【0075】
[実施例5−10]
実施例5から10として、
図4に示されたモールドピン34からわずかに構造変更されたモールドピンが所定数製造された。これらのモールドピンは、
図4のモールドピン34の装着部36の内壁面に中心軸方向の案内溝が形成されたものであり、ピン穴形成部38の被係止部42の外周面に、上記案内溝に係合する被案内凸部が形成されたものである。かかる構成により、本モールドピンは、ピン穴形成部が装着部に対して、進退はするが回転及び揺動はし得ないようにされている。実施例5から10のモールドピンの仕様は、表2に示された以外は実施例1と同一である。これらのモールドピンが装着されたモールドが用いられて、前述の試験が実施された。試験による評価結果は表2に示されるとおりである。
【0076】
[比較例4]
比較例4として、表2に示された仕様に基づき、
図4に示されたモールドピン34からわずかに構造変更されたモールドピンが所定数製造された。
図4のモールドピン34の装着部36の内壁面に中心軸方向の案内溝が形成されたものであり、ピン穴形成部38の被係止部42の外周面に、上記案内溝に係合する被案内凸部が形成されたものである。かかる構成により、本モールドピンは、ピン穴形成部が装着部に対して、進退はするが回転及び揺動はし得ないようにされている。さらに、ピン穴形成部38の先端から膨出部40が除去されている。比較例4のモールドピンの仕様は、表2に示された以外は実施例1と同一である。これらのモールドピンが装着されたモールドが用いられて、前述の試験が実施された。試験による評価結果は表2に示されるとおりである。
【0077】
[実施例11−13]
次に、実施例11から13のモールドピンが用意された。これらのモールドピン間には、ピン穴形成部の許容動作に相違がある。実施例11のモールドピンは、そのピン穴形成部が装着部に対して進退及び揺動は可能であるが、回転は不可能である。実施例12のモールドピンは、そのピン穴形成部が装着部に対して進退及び回転は可能であるが、揺動は不可能である。実施例13のモールドピンは、そのピン穴形成部が装着部に対して進退、回転及び揺動ともに可能である。これら実施例11から13の各モールドピンと、ピン穴形成部が装着部に対して進退可能ではあるが回転及び揺動が不可能な実施例1のモールドピンとが、タイヤ傷及び及びモールド取られの各性能について比較された。
【0078】
[実施例11]
実施例11として、表3に示された仕様に基づき、
図6に示された基本構造を有するモールドピンが所定数製造された。これらのモールドピンは、そのピン穴形成部が装着部に対して、進退及び揺動はするが中心軸回りの回転はし得ないようにされている。実施例11のモールドピンの仕様は、表3に示された以外は実施例1と同一である。これらのモールドピンが装着されたモールドが用いられて、前述の試験が実施された。試験による評価結果は表3に示されるとおりである。
【0079】
[実施例12]
実施例12として、表3に示された仕様に基づき、
図4に示された基本構造を有するモールドピンが所定数製造された。これらのモールドピンは、そのピン穴形成部が装着部に対して、進退及び中心軸回りの回転はするが揺動はし得ないようにされている。実施例12のモールドピンの仕様は、表3に示された以外は実施例1と同一である。これらのモールドピンが装着されたモールドが用いられて、前述の試験が実施された。試験による評価結果は表3に示されるとおりである。
【0080】
[実施例13]
実施例13として、表3に示された仕様に基づき、
図5に示された基本構造を有するモールドピンが所定数製造された。これらのモールドピンは、そのピン穴形成部が装着部に対して、進退、揺動及び中心軸回りの回転が可能にされている。実施例13のモールドピンの仕様は、表3に示された以外は実施例1と同一である。これらのモールドピンが装着されたモールドが用いられて、前述の試験が実施された。試験による評価結果は表3に示されるとおりである。
【0081】
[評価結果]
表1及び2に、実施例1から10、及び、比較例1から4のモールドピンの性能の評価結果が示されている。実施例は、比較例3及び4と比較して良好な評価結果が得られている。一方、比較例1及び4も高評価である。しかし、この比較例1及び4のモールドピンは、スパイクピンの耐ピン抜け性能の向上のために必要な膨出部を有していない。その結果、比較例1及び4のモールドピンを用いて製造されたタイヤは、実施例並びに比較例2及び3と比較して、本発明の目的の一つであるスパイクピンの耐ピン抜け性能が大きく低下するものであった。以上の評価結果から、本発明の優位性は明らかである。また、実施例1、11、12及び13を比較すると、装着部に対するピン穴形成部の可能動作(進退、回転、揺動)が多いほど、好ましいことが明らかである。
【0082】
【表1】
【0083】
【表2】
【0084】
【表3】