特許第5855682号(P5855682)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5855682
(24)【登録日】2015年12月18日
(45)【発行日】2016年2月9日
(54)【発明の名称】脱塩システム
(51)【国際特許分類】
   F25C 1/00 20060101AFI20160120BHJP
   F25D 3/10 20060101ALI20160120BHJP
   F25C 1/12 20060101ALI20160120BHJP
   F25C 1/16 20060101ALI20160120BHJP
   C02F 1/22 20060101ALI20160120BHJP
【FI】
   F25C1/00 B
   F25D3/10 D
   F25C1/12 Z
   F25C1/16
   C02F1/22 D
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-551001(P2013-551001)
(86)(22)【出願日】2012年1月31日
(65)【公表番号】特表2014-508268(P2014-508268A)
(43)【公表日】2014年4月3日
(86)【国際出願番号】IB2012050449
(87)【国際公開番号】WO2012104787
(87)【国際公開日】20120809
【審査請求日】2014年11月11日
(31)【優先権主張番号】61/437,827
(32)【優先日】2011年1月31日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】1112065.6
(32)【優先日】2011年7月14日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】507283023
【氏名又は名称】アイ・ディ・イー・テクノロジーズ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(72)【発明者】
【氏名】トメール エフラト
(72)【発明者】
【氏名】ハダル ゴシェン
【審査官】 河内 誠
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/053483(WO,A1)
【文献】 中国特許出願公開第101624224(CN,A)
【文献】 特開2008−221140(JP,A)
【文献】 特開平06−241628(JP,A)
【文献】 特開平06−281307(JP,A)
【文献】 特開平06−277655(JP,A)
【文献】 特開昭55−157303(JP,A)
【文献】 特表2009−532207(JP,A)
【文献】 米国特許第03859069(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/22
F25C 1/00−5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
氷スラリを生成するように構成された氷スラリ生成機が、
入口と出口とを有するチャンバと、
前記入口を介して前記チャンバの第1部分内に所定温度の液体水またはブラインを供給するように構成されたポンプと、
前記チャンバ内に所定値の低圧力を発生させ、その結果、所定の温度とともに、液体水、水蒸気および氷が熱力学的平衡状態で共存し、さらに(i)氷スラリが液体水またはブライン内で生成され、(ii)水蒸気が液体水またはブラインと氷スラリとの混合物から蒸発して前記チャンバの第2部分に流入するような動作点が実現するように構成された真空システムと、
前記チャンバの第2部分に配置された複数のプレートと、
前記第2部分内の水蒸気が前記プレート上にさらに堆積する氷の層へと析出するのに十分な析出温度まで前記プレートを冷却するように構成された冷却ユニットと、
堆積した氷の層を前記プレートから除去する手段と、
を備えることを特徴とする脱塩システム。
【請求項2】
前記堆積した氷の層を除去する手段が、加熱された前記プレートから堆積した氷の層が剥がれ落ちるのに十分な所定期間、前記プレートを加熱するように構成された熱源を備えることを特徴とする、請求項1の脱塩システム。
【請求項3】
反復する加熱サイクルにより異なる時点においていくつかの前記プレートが加熱され、その間、他のプレートは加熱されない所定の計画に基づいて、加熱が実施されることを特徴とする、請求項の脱塩システム。
【請求項4】
氷層の厚さが2mmのときに前記プレートから氷が剥がれ落ちるように前記所定期間が選択されることを特徴とする、請求項の脱塩システム。
【請求項5】
前記堆積した氷の層を除去する手段が、加熱された前記プレートから堆積した氷の層が剥がれ落ちるのに十分な所定期間行なわれる温水の噴霧を含むことを特徴とする、請求項1の脱塩システム。
【請求項6】
前記第2部分が前記第1部分の上方に配置され、加熱された前記プレートから剥がれ落ちる堆積した氷の層が氷スラリ内に落下するようになっていることを特徴とする、請求項の脱塩システム。
【請求項7】
前記第1部分が前記第2部分の近傍に配置され、除去された堆積した氷の層を氷スラリ内に搬送するように構成されたコンベヤをさらに備えることを特徴とする、請求項1の脱塩システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱塩の分野に関し、より詳細には、統合された水蒸気析出プロセスにより真空製氷機(VIM)を介して冷却源を凍結脱塩システムにエネルギー的に連結することに関する。
(関連技術)
【0002】
0℃および613Pa(4.6mmHg)である水の三重点における所定の圧力条件下でチャンバ内の水またはブラインを同時に沸騰および凍結させることにより、冷却、脱塩、その他の目的いずれかのための製氷を大規模で非常に経済的に実施できることは当該技術において周知である。
【背景技術】
【0003】
上記三重点の条件を維持するためには、その達成時に水蒸気を除去することがきわめて重要である。非常に大量の水蒸気を処理するための既知の解決法は、従来式のチラーや冷却塔からの水などの容易に利用可能な手段により水蒸気を液体水に凝縮可能な圧力および温度まで水蒸気を圧縮し、液体水をチャンバ内に再沈殿させることであった。
【0004】
例えば米国特許第3121626号に開示されるように、凍結脱塩を用いて、低圧を生じさせ水を凍結させることにより海水から生産水を取り出すとともにブラインが取り出されてきた。
【0005】
米国特許第4474031号には、フレオン蒸気により−3℃に保持された蒸発管で、三重点における水蒸気の水からの凝固により冷却を実施するヒートポンプが記述されている。このヒートポンプは、熱源回路に向けて熱を伝達するためにヒートポンプを利用するものである。
【0006】
米国特許第4420318号には、1種類以上の非揮発性溶質を含む溶液から溶媒を分離する上で有用な、改良された真空凍結プロセスにおいて、凝固した蒸気を融解させ、さらに再び蒸発させる真空凍結プロセスが開示されている。
【0007】
米国特許第4236382号には、凝固した蒸気を用いて管内部において氷融解操作に熱を供給し、結果生じた氷を洗浄除去してさらなる凝固を可能にする、改良された真空凍結高圧氷融解プロセスが開示されている。
【0008】
米国特許第3859069号には、内部が複数のチャンバに分割された、環境との熱交換を最小化するための単一式装置が開示されている。米国特許第3859069号では、水蒸気がコンプレッサによりチャンバの外に出され、その後、流動化および融解が行なわれる。
【0009】
米国特許第3714791号には、出力を実質的に連続させるための類似したシステム一対を備えるバッチ式蒸発脱塩方法および装置が開示されている。各システムは、相互に蒸気連通した3つの真空排気されたチャンバを備える。第1チャンバ内において、予冷された海水が部分的蒸発のため噴霧され、その結果、海水から潜熱が奪われるので氷晶が形成される。
【0010】
上記文書のすべては、参照により開示に含まれる。
【発明の概要】
【0011】
本発明の実施形態は、氷スラリを生成するように構成された氷スラリ生成機において、予冷された供給原料から流量を維持しながら冷却液により熱を取り出すことにより、供給原料から氷スラリを生成しながら冷却液を加熱するように構成された熱交換器を備える氷スラリ生成機と、氷スラリからブラインを除いて生産氷を産出するように構成された氷濃縮機と、生産氷を融解することにより供給水を冷却して予冷された供給原料と生産水とを産出するように構成された予冷ユニットとを備える脱塩システムを提供するものである。
【0012】
本発明のこれら、付加的および/または他の態様および/または利点は以下の詳細な説明で明らかにされ、詳細な説明から推論できる可能性があり、かつ/または本発明の実施により認知することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本発明は、附属図面に関連して行なうその実施形態の詳細な説明からより容易に理解されよう。
図1A】本発明のいくつかの実施形態による、外部の産業用冷却源を利用した脱塩システムの高度な概略ブロック図である。
図1B】本発明のいくつかの実施形態による、外部の産業用冷却源を利用した脱塩システムの高度な概略ブロック図である。
図2】本発明のいくつかの実施形態による、外部の産業用冷却源を利用した脱塩システムの高度な概略ブロック図である。
図3A】本発明のいくつかの実施形態による、スラリ生成サブシステムにおいて動作可能な真空製氷機の説明図である。
図3B】本発明のいくつかの実施形態による、スラリ生成サブシステムにおいて動作可能な真空製氷機の説明図である。
図4A】本発明のいくつかの実施形態による、スラリ生成サブシステムにおいて動作可能な真空製氷機の説明図である。
図4B】本発明のいくつかの実施形態による、スラリ生成サブシステムにおいて動作可能な真空製氷機の説明図である。
図4C】本発明のいくつかの実施形態による、スラリ生成サブシステムにおいて動作可能な真空製氷機の説明図である。
図5A】本発明のいくつかの実施形態による脱塩方法を示す高度なフローチャートである。
図5B】本発明のいくつかの実施形態による脱塩方法を示す高度なフローチャートである。
図5C】本発明のいくつかの実施形態による脱塩方法を示す高度なフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
詳細な説明を行なう前に、以後用いられる特定の用語の定義を示すことが有用であろう。
【0015】
本願で用いる用語「析出(deposition)」または「凝固(desublimation)」は、液相への変態を経ない気相から固相への物理的変態を指す。
【0016】
本願で用いる用語「凝縮(condensation)」は、気相から液相への物理的変態を指す。
【0017】
本願で用いる用語「蒸発(evaporation)」は、液相から気相への物理的変態を指す。
【0018】
用語「ハードアイス(hard ice)」は、伝熱面上で板氷、チューブ状氷、または薄片氷などの静止した氷を形成する周知の方法を指す。これらの方法における氷層の除去は、熱的に(内部的または外部から高温の媒体を導入することにより)、または機械的に(削り取ることにより)行なわれている。
【0019】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明がその適用において、以下の説明に述べるかまたは図面に示される構成要素の構成の詳細および配置に限定されないことを了解すべきである。本発明は他の実施形態に適用可能であるか、または様々な方式で実施もしくは実行される。また、本明細書で用いられる表現法および用語法は説明を目的としたものであって、限定的なものとして見なすべきでないことを了解すべきである。
【0020】
天然ガスの使用拡大につれて、ガスの貯蔵および輸送を容易にするため液化天然ガス(LNG)がより広範に使用されるようになっている。パイプラインによる給配の前に、LNGを天然の気体状態へ気化させるプロセス(再気化)により、大量の熱が吸収されるので、容易に利用可能で安価な低温の「冷熱」源が得られる。
【0021】
この利用可能な「冷熱」源を用いて、凍結を行ない、すなわちLNG再気化プロセスの結果得られる「冷熱」を利用して(冷却液を2次伝熱流体として用いて)海水を凍結し、氷スラリを形成し、さらにブラインから氷を分離し、残余のブラインを洗浄し、氷を融解させることにより、脱塩の技法、真空凍結蒸気圧縮(VFVC)プロセスに類似であるが十分な凝縮圧力を実現するため水蒸気コンプレッサを使用する必要のないプロセスが再現される。
【0022】
図1A、1Bおよび2は、本発明のいくつかの実施形態による、外部の産業用冷却源を利用した脱塩システムの高度な概略ブロック図である。脱塩システム100は、天然ガスを気化させる結合したプロセスのような外部の産業用プロセスで冷却される冷却流体を利用した真空脱塩システムを備えている。
【0023】
図1Aおよび1Bは、氷スラリ生成サブシステム200において冷却を行なうための外部の産業用冷却源125の使用を示している。以下に説明するように、産業用冷却源125を用いて、氷スラリ230への供給原料105を例えば動的氷スラリ生成機126を介して冷却する(図1A)か、氷スラリ230からの水蒸気を凝固させるために用いられる熱交換器111を冷却(図1B)してもよい。以下に説明するように、氷スラリ230から氷、脱塩した水または雪を生成してもよい。
【0024】
脱塩システム100は、予冷された供給原料102の一部分を蒸発させることにより(三重点の下で、かつヒートシンクが利用不能な場合には、供給原料の別の一部分がこの熱を蒸発のため供給して凍結しながら)予冷された供給原料102を凍結させ、蒸発した一部分の析出熱を(熱交換面などの)熱交換器111により低温の冷却液121に向けて取り出し、それにより冷却液120を加熱することにより氷スラリを生成するように構成された(真空システム260(以下を参照)に連結された)スラリ生成機110を備える氷スラリ生成サブシステム200を含んでいる。加熱された冷却液122はガス化装置125か、または再冷却のための再ガス化プラントにポンプで戻される。
【0025】
脱塩システム100はさらに、氷スラリ生成機110からパイプ114を介して受容された氷晶からブラインを除いて生産氷144を産生し、例えば油圧ピストンカウンタウォッシャ(HPCW)を利用して濃縮後の残留したブラインから生産氷144を洗浄するように構成された氷濃縮機130と、生産氷144により供給水105を冷却して予冷された供給原料102を産生し、それにより生産氷を生産水145へと融解するように構成された予冷ユニット140とを備えている。例えば、天然ガスからの付加的な熱を用いて生産氷144を融解してもよい。代替的あるいは付加的に、冷却液120をさらに用いて付加的な動的氷スラリ生成機126を介して供給原料(初期供給原料105または予冷された供給原料102)を冷却してもよい。
【0026】
例えば、脱塩システム100は、液化天然ガス(LNG)を再気化して冷却液120を冷却するように構成されたガス化装置125を備えてもよい。熱交換器111を用いて冷却液が再加熱され、現時点で大量のエネルギーを使用する、冷却液120を加熱する必要がガス化プラントから除かれる。
【0027】
冷却液120は、LNGとスラリ生成機110との間の媒介流体として作用する水グリコール溶液を含んでもよい。冷却液120はCOまたはLNGそれ自体を含んでもよく、それらはスラリ生成機110の熱交換器111からの熱によって直接気化される。
【0028】
例えば、冷却液120はCOであってもよく、これは内部の熱を吸収すると気化して、結合したプロセスに戻される。
【0029】
考慮されている、凍結による脱塩プロセスは、予冷された海水を凍結するための、LNG再気化プロセスからの低温の水グリコール溶液の使用を基としている。ブラインから氷を効率的に分離し、洗浄して必要な水質を達成するためには、氷を氷スラリの形態で生成すべきである。
【0030】
氷スラリ生成機110に導入すべき水は、図2に示すように、予冷された海水102と濃縮・水洗ユニット(氷濃縮機130)からの残留ブライン90との混合物であってもよい。氷スラリ生成機110から、油圧ピストンカウンタウォッシャ(HPCW)の原理で動作する濃縮・水洗ユニット130に向けてスラリがポンプ輸送される。HPCWに関する原理は、スラリポンプにより氷スラリに与えられた位置エネルギーを用いて、(濃縮機で生成された)板氷を水位より上に引き上げるものである。当然ながら、容器に入った氷は浮遊し始め、容器130の最上部に板氷を形成する。水と氷の密度の違いにより、氷は板氷の体積のおよそ10%の分、水位より上に上昇する。しかしながら、毛管効果により、10%の上昇では板氷からブラインを必要なだけ排水することが不可能であり、氷を洗浄しても飲料水としての水質を達成することができない。HPCWを用いることにより、板氷をその体積のおよそ50%の分、水位より上に上昇させ、板氷よりブラインを排水するのに十分なてこの力を得ることができる。
【0031】
このプロセスで生成された氷はおよそ75%の氷と25%の水とを含んでおり、これはきわめて薄い水の層に囲まれたおよそ0.5mmないし1mmの小さい氷晶を含む春雪にきわめて類似している。この氷は海水から生成されるので、水の薄膜はこのプロセスからのブラインを含んでいる。第2の工程において、濃縮・水洗ユニット内の濃縮された氷は、残留したブラインから生産水の一部分を用いて水洗される。この水洗プロセスの結果、実際にブライン膜から淡水膜への「置換」が生じる。これは、ブラインの一部分が氷スラリ生成機に戻り、同時にその残余がプロセスブラインとしてプラントから排出されるにつれて生じる。このプロセスから排出されるブラインの量は、実際にプロセスの濃縮係数または収率を決定するブライン流の塩分濃度により支配される。
【0032】
水洗プロセスの効率は100%ではないので、最終生成物には塩分が残留し、NaClを主として200ppm(TDS)に達することがある。水洗プロセスの効率は他のパラメータの中で、主にHPCWユニットの寸法と使用される洗浄水の量とに依存する。生産氷144はHPCWユニットの最上部から削り取られ、生産物タンク内に送られ、そこで融解して生産水145を生成する。
【0033】
生産物タンク140内での融解プロセスは、氷144と供給水105との熱交換により実現され、その結果、氷を融解させることにより海水が予冷される熱回収機構として作用する。
【0034】
熱力学的に、蒸発の潜熱と比較して凍結の潜熱が低いので、この凍結プロセスは冷却液からの「冷熱」を最も効率的に利用することができる。プロセスポンプとHPCWユニットの最上部にある氷スクレーパとに与えられるエネルギーは最少である。
【0035】
図3A、3Bおよび4Aから4Cは、本発明のいくつかの実施形態による、スラリ生成サブシステムで動作可能な真空製氷機の説明図である。本凍結プロセスのアプローチにおける主要な課題は、必要な能力と生産コストとが適切に釣り合うように氷スラリ生成機111を設計することである。以下の図3および4は、この課題に取り組んだ設計を提示するものである。図3Aおよび3Bは、本発明のいくつかの実施形態による、スラリ生成サブシステム200を示す高度な概略図である。図4A、4Bおよび4Cは、スラリ生成機110として使用可能な真空製氷機(VIM)の、それぞれ、斜視断面図、(プレート111Aを横切る)横断面図、(プレート111Aに沿った)縦断面図である。
【0036】
スラリ生成サブシステム200は、入口121を介して液体水またはブラインを受容する氷スラリ生成機110を備えている。入口121を介して氷スラリ生成機110のチャンバの第1部分220A内に所定温度の液体水またはブラインを供給するように、ポンプ(図示せず)が構成されている。真空ポンプ265により作動可能で1段階または2段階の圧縮を含む真空システム260は、チャンバの第1部分220A内におよそ613Pa(4.6mmHg)の圧力を発生させるように構成されており、その結果、第1部分220A内に水の三重点の条件が実現される。モータ245により駆動される攪拌機240は、液体水またはブラインと氷スラリ230との混合物を絶え間なく攪拌することが可能である。
【0037】
水蒸気は混合物230から蒸発するにつれて、氷スラリ生成機110の第2部分220Bへ流れる。チャンバの第2部分220B内には、冷却要素として構成された数枚のプレート111Aが配置されている。プレート111Aは、以下の仕組みにより低温の冷却液121を受容し、加熱された冷却液122を送出してもよい。
【0038】
各プレート111Aは、プレート111A上にさらに堆積する薄い氷の層へと第2部分220B内の水蒸気が析出するのに十分な温度までプレート111Aを冷却するように構成された(ガス化装置125などの)冷却ユニットに接続された低温冷媒入口252と低温冷媒出口258とを備えてもよい。加熱ユニット(図示せず)が各プレートに高温冷媒または被加熱二次流体入口254か高温冷媒/二次流体出口256のいずれかを介して接続され、プレート111Aまで交互のスケジュールで高温冷媒/流体を押し出しプレート111Aを加熱してプレート111A上に堆積した氷層を除去し、氷は混合物230内に落下して戻る。落下の際、氷シートが部分220A上方に配置された反らせ板280に衝突して、より小さい粒子に分解する。氷スラリ生成機110の内壁上における氷の堆積を十分に防止できるように、かつ補助加熱ユニット(図示せず)に接続された加熱水入口244と加熱水出口242とを介して、加熱スリーブ247が氷スラリ生成機110のチャンバ壁の少なくとも一部分を覆っている。氷スラリは出口114を通して混合物230から取り除かれる。
【0039】
氷シートの分解に加えて、反らせ板280は2つの付加的機能を有している。すなわち、蒸気流の調整により、蒸気は熱交換器111内のプレート111Aの長辺縁に均等に分配される。さらには、例えば攪拌機240により噴霧されるか、または水蒸気により運ばれる可能性がある水滴のプレート111Aへの到達が防止される。
【0040】
プレート111Aから氷シートを除去するための別の方法は、供給水などの温水をプレート111Aの全面に噴霧することである。
【0041】
スラリ生成サブシステム200により実施される前述のプロセスに関する熱力学的解析によれば、液体水から水蒸気への変換エンタルピーはおよそ2.5MJ/Kg(600kCal/Kg)であり、液体水から氷への変換エンタルピーはおよそ0.33MJ/Kg(80kCal/Kg)であることが示されている。したがって、第1部分220Aで生成される氷およそ7.5Kgに対して、1Kgの水蒸気が第2部分220Bに流入し、そこで(2.83MJ/Kg(680kCal/Kg)の析出エンタルピーを移転させて)冷却要素111上で氷に変化する。このように、水蒸気を(液体水および氷スラリ230に戻すのでなく)氷に変えることにより、本発明の実施形態は、当該技術において既知の方法よりおよそ15%多くの氷を供給するものである。
【0042】
代替的なチャンバ110A(図3B)は、スラリ生成サブシステム200に示されるものとは異なる幾何学的構成の第1部分510Aと第2部分510Bとを有している。その動作はシステム100に関して上述したものときわめて類似している。第1部分510A(いわゆる「冷凍機」)で氷スラリ230が生成されている間、水蒸気が第2部分510B(いわゆる「析出機」)に流入し、流入冷却冷媒入口252(およびそれぞれの出口258)による冷却要素111により冷却される。さらに、冷却要素111の1以上を流入加熱冷媒入口254(およびそれぞれの出口256)により周期的に加熱するか、またはそれらに外部から水を噴霧してもよく、その結果、冷却要素111上に堆積した氷が第2部分510Bの底へ剥がれ落ち、氷塊270となって、そこから第1部分510A内の氷スラリ230まで、またそこから上記で詳細に説明したようなさらなる処理まで、搬送手段(図示せず)により搬送してもよい。
【0043】
プレート111Aのいくつかに対する加熱または噴霧の周期性は、氷層の厚さが2〜3mmに達したときにプレート111Aから氷が取り除かれるように選択してもよい。これは、8〜12mmの硬い氷層を生成する従来技術による装置とは対照的である。より薄い氷層はプレート111Aからより良好に剥がれ落ちるだけでなく、それによりプレート111Aのいくつかから氷を除去し、その間にプレート111Aの残りを動作させることができ、したがってスラリ生成機110のチャンバ内におけるプロセスを連続させることができる。さらに、薄い層を生成することにより、氷をより迅速に取り除くことができ、プレートに対する熱伝導を小さくすることができる(氷層により、低温のプレートがより高温の蒸気から断熱される)。また、より薄い氷層であれば、プレート111Aの間隔をより狭くして例えば30〜40mmにすることができ、その結果、よりコンパクトで効率的なVIMを行なうことができる。
【0044】
さらに、従来技術によるハードアイス(硬質氷)装置では、氷を(約−7℃まで)過冷し、氷を十分に脆くして容易に削り取れるようにすることが必要である。本発明では、析出した氷層は過冷されず、その結果、プロセスの熱効率がより良好になる。
【0045】
図5Aから図5Cは、本発明のいくつかの実施形態による脱塩方法300を示す高度なフローチャートである。方法300は、上記システム100で用いられるものとは別の構造を用いて実施してよいものと了解される。
【0046】
脱塩方法300は以下の段階を含む。冷却液との熱交換により、かつ流量を維持しながら、予冷された海水を凍結し、氷スラリを産生すること(段階152)、氷スラリを板氷に濃縮すること(段階153)、例えば生産水の一部分により板氷からブラインを洗い落とし、水洗された氷を産生すること(段階154)、水洗された氷を融解して海水を予冷するとともに、生産水を産生すること(段階156)。脱塩方法300はさらに、ブラインの一部分を予冷された海水に導入すること(段階158)を含んでもよい。ブライン90を予冷された供給原料102内に導入して、システム100の処理量、特に氷スラリ生成機110に対する投入量を調整してもよい。脱塩方法300はさらに、蒸気加熱などの付加的なエネルギー消費なしに液化天然ガス(LNG)を気化させることにより冷却液を再冷却すること(段階159)を含んでもよい。この方法は、付加的なエネルギーによりガス化プラントを加熱する必要を軽減するものである。
【0047】
方法300はさらに、同時に繰り返して実行される以下の段階を含んでもよい。液体水、水蒸気および氷が熱力学的平衡状態で共存するような所定の温度および圧力条件が実現されたチャンバの第1部分内に、液体水またはブラインを供給すること(段階310)、チャンバの第2部分に配置された1以上の要素を、第1部分から到達した水蒸気が1以上の要素上にさらに堆積する氷の層へと析出するのに十分な析出温度まで冷却すること(段階320)、堆積した氷の層を1以上の要素から取り除くこと(段階330)。
【0048】
本発明のいくつかの実施形態に一貫して、方法300はさらに、チャンバの内面上における氷の堆積を回避するのに十分な程度、チャンバの壁部の少なくとも一部分を繰り返し選択的に加熱する段階340を含んでもよい。この段階により、ブライン/水と氷スラリとの混合物が完全に凍結して脱落することが効果的に防止される。
【0049】
本発明のいくつかの実施形態に一貫して、方法300はさらに、生成された氷スラリを捕集し、捕集された氷スラリを濃縮した氷に変える段階(段階350)を含んでもよい。
【0050】
方法300はさらに、加熱された要素から堆積した氷の層が剥がれ落ちるのに十分な所定期間、1以上の要素を繰り返し加熱すること(段階345)を含んでもよい。別の方法は、要素(例えばプレート)に温水を噴霧して(段階346)外部から氷シートを除去することである。
【0051】
本発明のいくつかの実施形態に一貫して、反復する加熱サイクルにより異なる時点において要素の1以上が加熱され、その間、他の要素は加熱されない所定の計画に基づいて、段階345の加熱が実施される(段階347)。このような計画または類似のものを用いても、大多数の冷却要素はなお効果的に氷の析出に寄与するが、堆積した氷を取り除いた時点で、加熱された要素はさらなる(より効率的な)析出の準備ができ、バッチプロセスよりもプロセスが連続的なものとなる。
【0052】
有利なことに、静的な製氷機(例えば板氷)と比較して、堆積した氷が剥がれ落ちるように冷却要素を加熱するのに必要な時間がはるかに短い。これは、静的な製氷機と比較してはるかに薄い氷層として水蒸気を析出させるように冷却要素が用いられるからである。さらに、氷層を薄くすることにより、その断熱効果が低下し、冷却要素の熱伝達係数が大きくなる。これにより、静的な製氷機の冷却要素よりも高い温度まで本発明に従って冷却要素を冷却することができ、そのため、システムのエネルギー効率が増大する。
【0053】
さらに、静的な製氷と比較して相対的に薄い氷層により、板の間の隙間を最小化することができ、その結果、所与の容器容積内にはるかに多くの板(すなわち伝熱面)を内包させることが可能となり、容器をより小型かつコンパクトにすることができる。
【0054】
冷却要素から剥がれ落ちた堆積した氷が氷スラリ内に直接落下しない場合、方法300はさらに、加熱された要素から剥がれ落ちる堆積した氷層をチャンバの第1部分の氷スラリ内へ搬送する段階(段階349)を含んでもよい。
【0055】
本発明は、析出プレートの精巧な構造を用いて蒸気との接触面積を増大させ、重力によりプレートから容易に分離する直立した氷シートを生成するものである。プレートの相対的位置により、落下する氷が板の間の空間に詰まることが防止される。
【0056】
本発明では、氷シートを分離するためのプレートの加熱は、運転中に加熱するプレートモジュールを次々に切り換えることにより相対的に高い頻度(15〜20分毎)で、製氷機の運転中断なしに連続して実施される。この加熱パターンの結果、薄い氷シートが分離することにより、(氷シートの伝導抵抗の結果)氷シートを介した熱伝達係数の低下効果が小さくなるとともに、容易に分解可能な氷シートが生成される。また、氷シートを分離するために必要な熱量は小さく、エネルギー消費および不要な融解が最小化される。さらに、超疎水性の物質をプレートに塗布し、薄片氷を容易に分離させ、プレート上の氷の堆積を低減させ、プレートの加熱間隔より長くするようにしてもよい。
【0057】
攪拌機240および反らせ板280を用いて、氷シートが衝突して分解するようにするとともに、攪拌機240は落下する氷シートをさらに崩壊させる。
【0058】
また攪拌機240は、(組込みのプロペラ290により)乱流を起こし、その中空のスコップを介して冷凍機の壁部に水を噴霧して伝熱面の面積を大きくすることにより、(蒸発の)熱伝達を増大させる。
【0059】
氷スラリ生成機110のチャンバは製氷のために最適化されている。加熱スリーブ247により壁部の凍結が防止され、全容積をスラリ生成および効率的な攪拌のために空けておくことができ、チャンバの向きは垂直方向なので水平方向のチャンバよりも攪拌を効率的にすることができる。
【0060】
氷スラリ生成機110からの氷は必ずしもチャンバ内に戻して析出されるものでなく、運び去られるように塊として堆積させてもよい。
【0061】
従来技術に対する本発明の新規な特徴としては、(i)プレートの精巧な構造およびそれらの間の空間的関係、(ii)氷層分離のためいくつかのプレートを加熱する間の連続的な運転および高頻度での加熱の実施、(iii)ミリング装置を用いる代わりに反らせ板および攪拌機により容易に分解可能な薄い氷層を分離することにより氷を分解すること、(iv)チャンバの形態およびチャンバ壁部の加熱がある。
【0062】
さらに、本発明では、中間のコンプレッサを用いずに蒸気が直接析出されて固体の氷として取り除かれ、この特徴により、凝固した蒸気を融解させる方法と比較して熱力学的な優位が維持される。氷は運び去られるように塊として堆積される。
【0063】
有利なことに、この凍結プロセスは蒸発‐凝縮プロセスよりも複雑であるが、蒸発と凍結との潜熱の差として利得出力比(GOR)がより高くなる。すなわち、海水の蒸発には凍結と比べて7.5倍の熱エネルギーが必要となる。
【0064】
システム100、とりわけ図3および4に示すようなそのVIM構成における提示された氷スラリ生成機110の別の利点は、従来技術によるシステムのバッチ運転に対するその連続的な運転である。内側の加熱または外側からの温水の噴霧を一度にいくつかのプレート111Aに適用し、大部分のプレート111Aをさらなる蒸気の凝固のため動作可能にしてもよい。
【0065】
本凍結プロセスによる海水の脱塩は、飲料水の水質まで可能であって、蒸留純度までは不可能であるが、蒸留純度は多くの用途において不必要であり、望ましくない場合もある。
【0066】
さらに、本システムおよび方法により、天然ガスプラントにおいて、加熱のために現在はエネルギーを必要とする発生した冷熱の問題が軽減される。
【0067】
上記説明において、ある実施形態は本発明の一例ないし一実施例である。「一実施形態」、「ある実施形態」または「いくつかの実施形態」という様々な体裁は、必ずしもすべて同じ実施形態を指すものとは限らない。
【0068】
本発明の様々な特徴は単一の実施形態の文脈で説明可能であるが、それら特徴は別個に、または適切に組み合わせて提供してもよい。逆に、本発明は明確化のためいくつかの実施形態の文脈で説明可能であるが、本発明を単一の実施形態で実施してもよい。
【0069】
さらに、本発明は様々な方式で実行または実現可能であり、かつ本発明は上記説明で概説したもの以外の実施形態により実施可能であることが了解されるべきである。
【0070】
本発明はそれらの図面または対応する説明に限定されない。例えば、フローチャートは図示した各ボックスまたは状態を通過し、または図示および説明したものとまったく同じ順序で移行する必要はない。
【0071】
本明細書で用いられる術語および科学用語の意味は、別段の規定がない限り、本発明が属する分野の当業者の一人により一般的に了解されるべきものとする。
【0072】
本発明を限られた数の実施形態に関して説明してきたが、これらは本発明の範囲を限定するものとしてではなく、好適な実施形態のいくつかの例証として解釈すべきである。他の実現可能な変更、修正、および応用も本発明の範囲内にある。したがって、本発明の範囲はこれまで説明してきたものにより限定されるべきではなく、附属の特許請求の範囲およびそれらの法的均等物により限定されるべきである。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C