(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5855745
(24)【登録日】2015年12月18日
(45)【発行日】2016年2月9日
(54)【発明の名称】隣接セル位置の平均化
(51)【国際特許分類】
G01S 5/02 20100101AFI20160120BHJP
H04W 64/00 20090101ALI20160120BHJP
【FI】
G01S5/02 Z
H04W64/00 160
【請求項の数】16
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-513541(P2014-513541)
(86)(22)【出願日】2012年5月16日
(65)【公表番号】特表2014-524011(P2014-524011A)
(43)【公表日】2014年9月18日
(86)【国際出願番号】US2012038089
(87)【国際公開番号】WO2012166363
(87)【国際公開日】20121206
【審査請求日】2013年11月19日
(31)【優先権主張番号】13/153,113
(32)【優先日】2011年6月3日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503260918
【氏名又は名称】アップル インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【弁理士】
【氏名又は名称】下山 治
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【弁理士】
【氏名又は名称】永川 行光
(72)【発明者】
【氏名】マクゴーギャン, グレン ドナルド
(72)【発明者】
【氏名】マルティ, ルーカス エム.
(72)【発明者】
【氏名】メイヤー, ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ホアン, ロナルド ケイ.
(72)【発明者】
【氏名】デレ, ジェイソン
(72)【発明者】
【氏名】グロスマン, イェフィム
【審査官】
中村 説志
(56)【参考文献】
【文献】
特表2003−535345(JP,A)
【文献】
特表2007−538265(JP,A)
【文献】
特開2002−243827(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0039575(US,A1)
【文献】
特表2012−533258(JP,A)
【文献】
特表2002−532979(JP,A)
【文献】
特表2012−517187(JP,A)
【文献】
特表2012−515324(JP,A)
【文献】
特表2005−536110(JP,A)
【文献】
特表2011−522220(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 5/00− 5/14
G01S19/00−19/55
H04B 7/24− 7/26
H04W 4/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の送信器から送信された無線信号をモバイル機器で受信するステップと、
前記複数の送信器に対応する前記無線信号から、在圏送信器の識別子を含む識別情報と、非固有な信号特性とを抽出するステップと、
前記在圏送信器の位置を、送信器キャッシュ内で前記識別情報を探索することによって求めるステップと、
前記在圏送信器とは異なる隣接送信器を、前記無線信号に基づいて求めるステップと、
前記隣接送信器および前記在圏送信器の前記位置の平均を算出するステップと、
前記算出された平均に基づいて前記モバイル機器の位置を求めるステップと、
を有し、
前記隣接送信器を、前記無線信号に基づいて求める前記ステップが、
合致する送信器を特定するために、前記送信器キャッシュ内で前記非固有な信号特性を探索するステップと、
前記合致する送信器について前記送信器キャッシュに格納されている信号送信器レコードを用いて、前記合致する送信器の位置を求めるステップと、
前記合致する送信器のうち、前記在圏送信器の前記位置と地理的に最も近い位置を有する1つ以上を、前記隣接送信器として判定するステップと、
を有し、
前記非固有な信号特性は、それ単独で送信器を一意に特定するには不十分な信号特性であり、
前記合致する送信器は、前記抽出された前記非固有な信号特性と合致する信号特性を有する送信器を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記モバイル機器と離間して配置された送信器データベースから無線送信器位置情報を受信するステップと、
前記無線送信器位置情報を前記モバイル機器の前記送信器キャッシュに保存するステップと、をさらに有することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記位置の平均を算出するステップが、
前記モバイル機器にサービスを提供していない隣接送信器の各々の重みを決定するステップと、
前記送信器の位置の各々にそれぞれの重みを適用して前記平均を算出するステップと、
を有し、
前記重みを決定するステップが、
前記在圏送信器の重みを決定するステップと、
前記隣接送信器の各々の前記重みの決定において前記在圏送信器の前記重みを負の重みとして適用するステップとを含み、
前記在圏送信器の前記重みを決定するステップが、前記隣接送信器の数に基づいて前記重みを決定し、
前記数が予め指定された限界値に達するまで、前記数が大きいほど低い重みに対応することを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記位置の平均を算出するステップが、
前記位置の各々に対する係数を決定するステップと、
前記位置の各々に対する前記係数に少なくとも部分的に基づいて、前記平均を算出するステップと、
を有することを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記無線信号の各々についての誤り測定結果を調べるステップと、
前記無線信号の特定の1つが閾値を超える誤り測定結果を有すると判定するステップと、
前記特定の無線信号に対応する送信器の位置を、前記位置の平均の算出から除外するステップと、
をさらに有することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記非固有な信号特性が疑似雑音(PN)オフセット値を含むことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記非固有な信号特性が絶対周波数チャネル番号(ARFCN)を含むことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記非固有な信号特性がUMTS絶対周波数チャネル番号(UARFCN)と主スクランブル符号(PSC)の組み合わせを含むことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載された方法を実行するように構成された1つ以上のプロセッサを有するモバイル機器。
【請求項10】
コンピュータに請求項1から8のいずれか1項に記載された方法を実行させるためのプログラムを格納したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項11】
装置であって、
複数の送信器から送信された無線信号を受信する手段と、
前記複数の送信器に対応する前記無線信号から、在圏送信器の識別子を含む識別情報と、非固有な信号特性とを抽出する手段と、
前記在圏送信器の位置を、送信器キャッシュ内で前記識別情報を探索することによって求める手段と、
前記在圏送信器とは異なる隣接送信器を、前記無線信号に基づいて求める手段と、
前記隣接送信器および前記在圏送信器の前記位置の平均を算出する手段と、
前記算出された平均に基づいて前記装置の位置を求める手段と、を有し、
前記隣接送信器を、前記無線信号に基づいて求める前記手段が、
合致する送信器を特定するために、前記送信器キャッシュ内で前記非固有な信号特性を探索する手段と、
前記合致する送信器について前記送信器キャッシュに格納されている信号送信器レコードを用いて、前記合致する送信器の位置を求める手段と、
前記合致する送信器のうち、前記在圏送信器の前記位置と地理的に最も近い位置を有する1つ以上を、前記隣接送信器として判定する手段と、を有し、
前記非固有な信号特性は、それ単独で送信器を一意に特定するには不十分な信号特性であり、
前記合致する送信器は、前記抽出された前記非固有な信号特性と合致する信号特性を有する送信器を含むことを特徴とする装置。
【請求項12】
前記装置と離間して配置された送信器データベースから無線送信器位置情報を受信する手段と、
前記無線送信器位置情報を前記装置の前記送信器キャッシュに保存する手段と、をさらに有することを特徴とする請求項11記載の装置。
【請求項13】
前記位置の平均を算出する手段が、
前記装置にサービスを提供していない隣接送信器の各々の重みを決定する手段と、
前記送信器の位置の各々にそれぞれの重みを適用して前記平均を算出する手段と、
を有し、
前記重みを決定する手段が、
前記在圏送信器の重みを決定する手段と、
前記隣接送信器の各々の前記重みの決定において前記在圏送信器の前記重みを負の重みとして適用する手段とを含み、
前記在圏送信器の前記重みを決定する手段が、前記隣接送信器の数に基づいて前記重みを決定し、
前記数が予め指定された限界値に達するまで、前記数が大きいほど低い重みに対応することを特徴とする請求項11または12に記載の装置。
【請求項14】
前記位置の平均を算出する前記手段が、
前記位置の各々に対する係数を決定する手段と、
前記位置の各々に対する前記係数に少なくとも部分的に基づいて、前記平均を算出する手段と、
を有することを特徴とする請求項11または12に記載の装置。
【請求項15】
前記無線信号の各々についての誤り測定結果を調べる手段と、
前記無線信号の特定の1つが閾値を超える誤り測定結果を有すると判定する手段と、
前記特定の無線信号に対応する送信器の位置を、前記位置の平均の算出から除外する手段と、
をさらに有することを特徴とする請求項11から14のいずれか1項に記載の装置。
【請求項16】
前記非固有な信号特性が疑似雑音(PN)オフセット値、絶対周波数チャネル番号(ARFCN)、またはUMTS絶対周波数チャネル番号(UARFCN)と主スクランブル符号(PSC)の組み合わせを含むことを特徴とする請求項11から15のいずれか1項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は概して位置推定に関する。
【背景技術】
【0002】
最新のモバイル機器(例えばスマートフォン、ノート型パソコンなど)は、モバイル機器の現在位置をモバイル機器のユーザに提供可能である。モバイル機器の現在位置は位置を利用する様々なサービスを提供するのに有用であろう。例えば、地図サービス(例えば道案内)をユーザに提供するのに現在位置を利用することができる。モバイル機器の現在位置を測定するために、全地球的航法衛星システム(GNSS)データ(例えばGPSデータ)が用いられる。GNSSデータに依存せずに機器の現在位置を測定できれば便利であろう。
【発明の概要】
【0003】
ある実施形態では、モバイル機器の位置は、そのモバイル機器が受信する信号を送信した無線信号送信器の位置の平均を算出することで求めることができる。ある実施形態では、送信器の位置が係数で重み付けされ、平均が重み付け平均である。
【0004】
ある実施形態では、無線信号送信器の位置が、モバイル機器の受信する無線信号に符号化された識別情報に基づいて求められる。無線信号送信器の位置は、識別情報をモバイル機器に保存されている無線信号送信器情報と比較することで求めることができる。識別情報は無線信号送信器の識別子を含んでもよい。識別情報は、無線信号送信器を識別するために利用可能な、受信無線信号の特性や性質を含んでもよい。ある実施形態では、無線送信器の位置を一意に識別するため、1つの信号からの識別情報が他の信号からの位置情報と組み合わされてもよい。
【0005】
特定の実施形態によれば、位置推定をモバイル機器で実行することが可能であること、モバイル機器の位置推定を隣接送信器の位置に基づいて算出可能であること、および、GNSSデータに頼らすにモバイル機器の位置を求めることが可能なこと、という利点のうち1つ以上が実現される。
【0006】
1つ以上の実施形態の詳細を、添付図面及び以下に説明する。他の特徴、検知、および潜在的な利点は、以下の説明および図面、さらには特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】隣接セル位置平均化を実行するモバイル機器の例を示す図である。
【
図3】無線信号送信器の位置を求める処理の例を示すフローチャートである。
【
図4】隣接セル位置平均化処理の一例を示すフローチャートである。
【
図5】
図1〜
図4の機能及び処理を実施する例示的なシステムアーキテクチャのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図面を通じて、同様の参照符号は同様の要素を示す。
【0009】
機器の例示
図1は、隣接セル位置平均化を実行するモバイル機器100の例を示す。例えば、モバイル機器100は送信器キャッシュ102を有することができる。送信器キャッシュ102は無線信号送信器の識別や測位のための情報を含むことができる。無線信号送信器はセルラ送信器であってよい。例えば、無線信号送信器は、符号分割多元接続(CDMA)信号、GSM (global system for mobile communication)信号、またはUMTS (universal mobile telecommunications system)信号を送信するセルラ送信器を含んでもよい。無線送信器は無線アクセスポイントであってもよい。
【0010】
ある実施形態では、モバイル機器100は無線送信器情報をネットワーククラウド120に設けられた送信器データベース122から受信し、無線送信器情報をモバイル機器100の送信器キャッシュ102に保存することができる。送信器キャッシュ102は、送信器データベース122からに保存されている無線送信器情報の一部を保存するように構成されてもよい。例えば、送信器キャッシュ102は、モバイル機器100がその時点で存在する特定の地理的範囲についての無線送信器情報を保存するように構成されてよい。送信器キャッシュ102は、周期的(例えば1年ごと)に、送信器データベース122からの新しい送信器情報で更新されてもよい。
【0011】
ある実施形態で送信器キャッシュ102は、無線送信器キャッシュ102内の各無線送信器について、送信器の固有識別子、位置情報、および非固有な信号特性を保存することができる。例えば、セルラ送信器についての固有識別子はセルラ送信器識別子(例えば在圏セル識別子)であってよい。アクセスポイントについての固有識別子はサービスセット識別子(SSID)やメディアアクセス制御(MAC)アドレスであってよい。位置情報は無線信号送信器の緯度および経度の座標を含むことができる。非固有な信号特性は、CDMA信号についての疑似雑音(PN)オフセット、GSM信号についての絶対無線周波数チャネル番号(ARFCN)、またはUMTS信号についてのUMTS絶対周波数チャネル番号(UARFCN)および主スクランブル符号(PSC)の組み合わせを含むことができる。
【0012】
ある実施形態では、信号受信ロジック104が無線信号送信器によって送信された信号を検出および受信するように構成されてよい。例えば、信号受信ロジック104は、セルラ信号(例えばGSM、CDMA、UMTS)を検出ならびに受信するように構成されてよい。信号受信ロジック104は無線アクセスポイント信号を検出および受信するように構成されてもよい。
【0013】
ある実施形態では、信号処理ロジック106が、信号受信ロジック104によって受信された信号を処理するように構成されてよい。信号処理ロジック106は、信号タイプ(例えばセルラ、アクセスポイント、GSM、CDMA、UMTS)を調べるために、また受信信号から様々な情報を抽出するために、無線信号送信器から送信された信号を処理することができる。例えば、信号処理ロジック106は、信号受信ロジック104によって受信された信号を送信した無線信号送信器を特定するために使用可能な識別情報を抽出することができる。例えば、信号処理ロジック106は、無線信号送信器についての固有識別子を抽出したり、無線信号送信器の身元(identity)を得るために使用可能な非固有な信号特性を求めたりすることができる。固有識別子はセルラ送信器についての固有識別子や、無線アクセスポイントについてのSSIDまたはMACアドレスであってよい。セルラ送信器についての固有識別子は、例えばモバイル機器100にサービスを提供しているセルラ送信器から信号を受信した際に調べることができる。非固有な信号特性はCDAM信号についてのPNオフセット、GSM信号についてのARFCN、またはUMTS信号についてのUARFCNとPSCの組み合わせであってよい。非固有な信号特性は、隣接送信器(例えば現在モバイル機器100にサービスを提供していない送信器)の身元を得るために用いることができる。
【0014】
ある実施形態では、信号処理ロジック106はモバイル機器100によって受信された信号の品質を求めるために使用可能な誤り情報を抽出することができる。例えば、CDMA信号は、2乗平均平方根(RMS)誤り値および位相測定結果を含むことができる。位相測定結果が高すぎる場合や、RMS誤りが大きすぎる場合、以下に説明するように、受信信号(およびこの信号から得られる位置データ)を隣接セル平均化演算から除外してもよい。
【0015】
送信器探索ロジック108は、抽出された識別情報を、送信器キャッシュ102内の無線信号送信器レコードを特定し、特定された無線信号送信器についての位置を求めるために用いることができる。例えば、固有識別子は、送信器キャッシュ102内の送信器位置情報を探索するために用いられてよい。以下に説明するように、非固有な信号特性は、送信器の身元を取得して送信器位置情報を見つけるために、他の信号データとともに用いられてよい。
【0016】
ある実施形態では、機器位置決定ロジック110が、隣接セル位置平均化を実行することができる。例えば、機器位置決定ロジック110は、無線信号送信器の位置の平均を算出することによって、モバイル機器の位置を推定することができる。
【0017】
図2は、隣接セル位置平均化の例を示している。ある実施形態では、モバイル機器100は無線送信器情報(例えば送信器キャッシュ102)を用いて構成されてよい。
【0018】
ある実施形態では、モバイル機器100は無線信号を複数の無線送信器210、220、および222からの信号を受信してよい。例えば、モバイル機器100は無線送信器210に接続もしくは参加していてよく、また無線送信器210はモバイル機器100にサービスを提供していてよい。例えば、在圏送信器210はモバイル機器100に電話サービスおよびネットワーク(例えばインターネット)アクセスの少なくとも一方を提供することができる。在圏送信器210は、在圏送信器210の固有識別子を含むことのできる信号をモバイル機器100に送信してよい。
【0019】
モバイル機器100は在圏送信器210に接続されている間も、隣接無線送信器220および222から無線信号を受信することができる。例えば、隣接送信器220および222は無線信号をブロードキャストすることができ、モバイル機器100はブロードキャスト信号を検出ならびに受信することができる。モバイル機器100は信号を解析するとともに、隣接送信器220および222を特定するために使用可能な情報を得ることができる。例えば、隣接送信器220および222から受信した信号は、非固有な信号特性や、隣接送信器220および222の身元を得るために使用可能なデータを含むことができる。例えば、非固有な信号特性はCDAM信号についてのPNオフセット、GSM(登録商標)信号についてのARFCN、またはUMTS信号についてのUARFCNとPSCの組み合わせであってよい。信号特性は全ての無線信号送信器の間では固有でないが、ある特定の地理的領域内では固有となりうる。
【0020】
ある実施形態では、隣接送信器を特定するために信号特性の領域的な固有性が用いられてよい。ある実施形態では、在圏送信器210の位置を求めるために在圏送信器210の個有識別子が用いられてよい。例えば、モバイル機器100は、送信器キャッシュ102内で在圏送信器210に関連付けられている位置を探索するために在圏送信器210の固有識別子を用いることができる。在圏送信器210の位置は、モバイル機器100の現在位置に関連づけられた地理的領域を特定するために用いられてよい。例えば、モバイル機器100の現在位置は求められた在圏送信器210の位置であると予測されてもよい。
【0021】
ある実施形態において、隣接送信器220および222の位置は、隣接送信器220および222から受信した信号の信号特性と、在圏送信器210の位置と、送信器キャッシュ102内の情報とに基づいて求められてもよい。例えば、無線信号送信器によって送信される信号の信号特性は特定の地理的領域内で固有であるため、無線信号送信器は既知の位置に関連して特定されてもよい。例えば、在圏送信器210の位置が分かると、送信器220および222から送信された信号の信号特性に基づいて、隣接送信器(例えば220および222)の身元を調べることができる。
【0022】
ある実施形態では、送信器キャッシュ102内の送信器情報に基づいて、モバイル機器100は在圏送信器210に地理的に最も近く、かつ割り出された信号特性を有する信号を送信する無線信号送信器を割り出すことができる。例えば、モバイル機器100は、特定の信号特性に合致する全ての送信器を送信器キャッシュ102から探索したのち、合致した送信器のうち在圏送信器210に地理的に最も近いものを割り出すことができる。信号特性に合致し、最も近い送信器を、隣接送信器と特定することができる。隣接送信器の身元が分かれば、送信器キャッシュ102内の送信器情報に基づいて隣接送信器の位置を求めることができる。
【0023】
ある実施形態では、モバイル機器100は、在圏送信器210と、隣接送信器220および222について求められた位置の平均を算出することができる。例えば、モバイル機器100は、様々な重み付け平均または重心算出関数を含む、周知の地理的位置平均化または中点算出方法を用いて、各送信器に関連付けられた緯度及び経度座標の平均を算出することができる。
【0024】
ある実施形態では、重み付け平均が算出されてよい。例えば、位置平均化のために各送信器の位置に係数を割り当てることができる。係数は送信器の重要度に対応させることができる。モバイル機器100は在圏送信器210に接続または参加しているので、例えば、在圏送信器210には隣接送信器220および222よりも高い係数を割り当てることができる。在圏送信器210はモバイル機器100にサービスを提供しているので、在圏送信器210の位置は、最も信頼できる(最重要)位置と見なすことができる。しかし、モバイル機器100が在圏送信器210と同じ場所に存在する可能性は小さい。そのため、在圏送信器210よりも小さな重みではあるが、隣接送信器220および222の位置を位置平均化演算に含めている。ある実施形態において、隣接送信器は同一の係数を有してもよい。ある実施形態では、ある隣接送信器が別の隣接送信器と異なる係数を有してもよい。ある実施形態では、在圏送信器の係数が隣接送信器の係数と異なっていてもよい。
【0025】
ある実施形態では、モバイル機器100は各送信器に関連付けられた緯度(lat)および経度(long)座標の重み付け平均を算出してよい。例えば、在圏送信器210に割り当てられた重み(すなわち係数)(S)がwSであれば、隣接送信器220および222に適用される重みwNを(1.0-wS)(例えばwN=1.0-wS)と表すことができる。各送信器に割り当てられる重みは、wNを平均化演算に含まれる隣接送信器(N)の数(n)で分割したもので表記することができる(例えばwN/n)。例えば、重み付け平均(AVG)は以下の式に従って算出されてよい。
【数1】
ここで、複数の隣接送信器(N)についての緯度(lati)および経度(longi)値には重みwNを乗じることができ、緯度値が合計され、経度値が合計される。在圏送信器(S)についての緯度及び経度値には重みwSを乗じることができる。ある実施形態では、在圏送信器に用いられる重み(wS)が、平均化演算に用いられる隣接送信器(N)の数(n)に応じて調整される。例えば、n > 3ならw = 0.6、n = 3ならw = 0.7、n = 2ならw = 0.8、n = 1ならw= 0.9、n = 0ならw = 1.0である。
【0026】
ある実施形態において、ある隣接送信器の位置は位置平均化演算から除外されてもよい。例えば、ある隣接送信器から受信した信号が、大きすぎるRMS誤りや、高すぎる位相測定結果を有する場合、その隣接送信器は位置平均化演算から除外されてもよい。RMS誤りはそれが大きすぎるかどうか判別するためにRMS値の閾値と比較されてもよい。同様に、位相測定結果についても、それが高すぎるかどうか判別するために位相測定結果の閾値と比較されてよい。
処理の例
【0027】
図3は、無線信号送信器の位置を求めるための例示的な処理300を示すフローチャートである。ステップ302で、在圏送信器信号が受信される。例えば、モバイル機器100は在圏送信器210からの信号を受信することができる。信号は在圏送信器210の識別子を含むことができる。ステップ304で、在圏送信器についての識別子を確認する。例えば、モバイル機器100は、在圏送信器210についての識別子を、ステップ302で受信した信号に基づいて確認することができる。
【0028】
ステップ306で、隣接送信器から信号が受信される。例えば、モバイル機器100は隣接送信器220からの信号を受信することができる。ステップ308で、隣接送信器信号の特性が求められる。例えば、隣接送信器220から受信した信号は、モバイル機器100で受信される他の信号と区別される特性を有してよい。この特性は、全ての送信器によって送信される全ての信号では非固有な特性であってよいが、モバイル機器100に近接した信号および送信器の中(例えばモバイル機器100と同じ地理的領域内)では固有であってよい。例えば、信号特性はCDAM信号についてのPNオフセット、GSM信号についてのARFCN、またはUMTS信号についてのUARFCNとPSCの組み合わせを含みうる。
【0029】
ステップ310で、在圏送信器の識別子と、隣接送信器によって送信された信号の特性とに基づいて、隣接送信器の位置が求められてよい。例えば、隣接送信器から受信した信号について測定された特性に合致する信号特性を有する送信器がどれかを割り出すため、送信器キャッシュ102を探索することができる。合致する送信器が見つかると、合致する送信器のうち、在圏送信器の位置に地理的に最も近いものを割り出すため、合致する送信器のそれぞれについて送信器キャッシュ102に保存されている位置情報を解析することができる。在圏送信器の位置に最も近い、合致する送信器は、モバイル機器に信号を送信した隣接送信器であると決定することができる。あるいは、モバイル機器は、在圏送信器からある特定の距離又は範囲内に存在する隣接送信器を割り出し、その中で、測定された信号特性に合致する送信器がどれかを割り出してもよい。
【0030】
図4は、隣接セル位置平均化処理の一例400を示すフローチャートである。ステップ402で、送信器からの信号がモバイル機器で受信される。例えば、セルラ信号送信器から、セルラ信号(例えばGSM、CDMA、UMTS)が受信されてよい。無線アクセスポイント信号が無線アクセスポイントから受信されてもよい。
【0031】
ある実施形態において、モバイル機器は、ある受信した無線信号と、この信号に関連する無線信号送信器を、隣接セル位置平均化処理から除外することができる。例えば、モバイル機器で受信した信号がCDMAセルラ信号であった場合、モバイル機器はRMS誤りおよび位相測定結果をその信号から抽出することができる。RMS誤りが高すぎる場合や、位相測定結果が大きすぎる場合、モバイル機器はその信号と、関連する送信器とを、位置平均化演算から除外することができる。
【0032】
ステップ404で、送信器識別情報が受信信号から抽出される。例えば、送信器識別情報は送信無線信号送信器についての(例えば固有セルラ送信器識別子、固有無線アクセスポイント識別子(SSID, MACアドレス))を含んでもよい。送信器識別情報は、
図3に関して上述したように、無線信号送信器を識別し、送信送信器の身元を得るために用いることのできる信号特性を含んでよい。
【0033】
ステップ406で、送信器の位置が求められてよい。例えば、送信器位置は
図3に関して上述したようにして求めることができる。
【0034】
ステップ408で、送信器位置の平均が算出される。例えば、各送信器位置は緯度及び経度座標で表されてよく、各送信器位置を含んだ座標の平均が算出されてよい。位置の平均を算出する様々な方法が周知である(例えば地理的な中点算出、平均緯度/経度算出)。任意の位置平均化方法を利用可能である。ある実施形態では、信号送信器位置の重み付け平均が算出されてよい。例えば、上述したように、各送信器位置についての係数を含むように位置平均化演算が変更されてよい。
【0035】
ステップ410で、算出された無線信号送信器位置の平均に基づいて、モバイル機器の位置を求めることができる。例えば、モバイル機器100の位置を、算出された無線信号送信器の平均位置または重み付け平均位置としてもよい。
【0036】
モバイル機器アーキテクチャの例
図5は、
図1〜
図4のモバイル機器100の実施例のブロック
図500である。モバイル機器100は、メモリインタフェース502と、1つ以上のデータプロセッサ、画像プロセッサ、および/または中央処理装置504と、周辺インタフェース506を含むことができる。メモリインタフェース502、1つ以上のプロセッサ504および/または周辺インタフェース506は別個の部品であってもよいし、1つ以上の集積回路に統合されてもよい。モバイル機器100の様々な部品は1つ以上の通信バスまたは信号線によって接続されてよい。
【0037】
様々な機能を支援するため、センサ、デバイスおよびサブシステムが周辺インタフェース506に接続されてよい。例えば、方向、照明、および近接機能を支援するため、モーションセンサ510、ライトセンサ512、および近接センサ514が周辺インタフェース506に接続されてよい。測位センサ(例えばGPS受信器)、温度センサ、バイオメトリックセンサや他の感知デバイスのような他のセンサ516もまた、関連する機能を支援するために周辺インタフェース506に接続されてよい。
【0038】
写真やビデオクリップの記録といったカメラ機能を支援するために、カメラサブシステム520および、例えば電荷結合素子(CCD)や相補型金属酸化膜半導体(CMOS)光学センサである光学センサ522を用いることができる。カメラサブシステム520および光学センサ522は、例えば顔認識解析を実行することによるユーザ認証の間に用いるためのユーザ画像を収集するために用いられてよい。
【0039】
無線周波数受信器および送信器、および/または光学(例えば赤外線)受信器および送信器を含んでよい、1つ以上の無線通信サブシステム524を通じて通信機能が支援されてもよい。通信サブシステム524の具体的な設計及び実装はモバイル機器100が動作することが意図された1つ以上の通信ネットワークに依存しうる。例えば、モバイル機器100はGSMネットワーク、GPRSネットワーク、EDGEネットワーク、Wi-FiまたはWiMaxネットワーク、およびブルートゥース(登録商標)ネットワークを通じて動作するように設計された通信サブシステム524を含むことができる。特に、無線通信サブシステム524はモバイル機器100が他の無線機器のための基地局として構成されうるようにホスティングプロトコルを含むことができる。
【0040】
話者認識、音声応答、デジタルレコーディング、および電話機能といった音声を利用可能な機能を支援するため、オーディオサブシステム526がスピーカ528およびマイク530に接続されてよい。
【0041】
I/Oサブシステム540は、タッチスクリーンコントローラ542および/または他の1つ以上の入力コントローラ544を含んでよい。タッチスクリーンコントローラ542はタッチスクリーン546に接続されてよい。タッチスクリーン546およびタッチスクリーンコントローラ542は例えば、容量式、抵抗式、赤外線式、および表面弾性波技術を非限定的な例示として含む任意の接触感知技術および、タッチスクリーン546と接している1つ以上の位置を測定するための他の近接センサアレイや他の素子を用いて、接触および移動またはそれらの中断を検出することができる。
【0042】
他の1つ以上の入力コントローラ544は、1つ以上のボタン、ロッカースイッチ、サムホイール、赤外線ポート、USBポート、および/またはスタイラスのようなポインティングデバイスといった他の入力/制御デバイス548に接続されてよい。1つ以上のボタン(不図示)は、スピーカ528および/またはマイク530のボリューム制御のためのアップ/ダウンボタンを含んでよい。
【0043】
一実施形態において、ボタンの第1の期間の押下はタッチスクリーン546のロックを解除してよく、ボタンの第1の期間より長い第2の期間の押下はモバイル機器100の電源をオンまたはオフしてよい。ボタンの第3の期間の押下は、話されたコマンドを機器に実行させるために、ユーザがマイク530にコマンドを話すことを可能にする、音声制御または音声コマンドモジュールを起動させてもよい。ユーザは1つ以上のボタンの機能をカスタマイズできる。タッチスクリーン546は例えば、仮想またはソフトボタンおよび/またはキーボードを実現するために用いられてもよい。
【0044】
ある実施形態においてモバイル機器100は、MP3, AACおよびMPEGファイルのような、記録されたオーディオおよび/またはビデオファイルを提示することができる。ある実施形態においてモバイル機器100は、iPod(商標)のようなMP3プレーヤの機能を含んでよい。従って、モバイル機器100は、iPodと互換性のある36ピンコネクタを含んでよい。他の入力/出力ならびに制御デバイスが用いられてもよい。
【0045】
メモリインタフェース520はメモリ550に接続されてよい。メモリ550は、1つ以上の磁気ディスクストレージ装置、1つ以上の光学ストレージ装置、および/またはフラッシュメモリ(登録商標)(例えばNAND型、NOR型)のような高速ランダムアクセスメモリおよび/または不揮発性メモリを含むことができる。メモリ550は、Darwin、RTXC、LINUX(登録商標)、UNIX(登録商標)、OS X(登録商標)、WINDOWS(登録商標)、またはVxWorksのような埋め込み型オペレーティングシステムのようなオペレーティングシステム522を保存することができる。
【0046】
オペレーティングシステム522は基本システムサービスを処理するための命令およびハードウェアに依存するタスクを実行するための命令を含んでよい。ある実施形態において、オペレーティングシステム522はカーネル(例えばUNIXカーネル)であってよい。ある実施形態において、オペレーティングシステム522は音声認証を実行するための命令を含んでもよい。
【0047】
メモリ550はまた、1つ以上の他の機器、1つ以上のコンピュータおよび/または1つ以上のサーバとの通信を支援するための通信命令群554を保存してもよい。メモリ550は、グラフィカルユーザインタフェース処理を支援するためのグラフィカルユーザインタフェース命令群556と、センサ関連処理および機能を支援するためのセンサ処理命令群558と、電話関連処理および機能を支援するための電話命令群560と、電子メッセージング関連処理および機能を支援するための電子メッセージング命令群562と、ウェブブラウジング関連処理および機能を支援するためのウェブブラウジング命令群564と、メディア処理関連処理および機能を支援するためのメディア処理命令群566と、GPSおよびナビゲーション関連処理および命令を支援するためのGPS/ナビゲーション命令群568、およびカメラ関連処理および機能を支援するためのカメラ命令群570の1つ以上を含むことができる。
【0048】
メモリ550は
図1〜
図4に関して説明した処理および機能を支援するための位置算出命令群572および送信器キャッシュ574を保存することができる。
【0049】
メモリ550はまた、ウェブビデオ関連処理および機能を支援するためのウェブビデオ命令群およびウェブショッピング関連処理および機能を支援するためのウェブショッピング命令群のような、他のソフトウェア命令群(不図示)を保存することができる。ある実施形態において、メディア処理命令群566は、音声処理関連処理および機能ならびに映像処理関連処理および機能を支援するため、音声処理命令群と映像処理命令群とに分割される。
【0050】
上述した命令群およびアプリケーションの各々は上述した1つ以上の機能を実行するための命令セットに対応してもよい。これらの命令群は個別のソフトウェアプログラム、プロシージャまたはモジュールとして実装されなくてもよい。メモリ550はさらなる命令群を含んでもよいし、上述したよりも少ない命令群を含んでもよい。さらに、モバイル機器の様々な機能は、1つ以上の信号処理および/または特定用途向け集積回路を含む、ハードウェアおよび/またはソフトウェアで実施されてよい。