【実施例】
【0015】
以下、図面を参照しながら実施例を説明する。
図1は本発明に係る同軸ケーブルの断面図である。
【0016】
図1において、本発明に係る同軸ケーブル1は、特に限定するものでないが、車載用のケーブルとして好適であって、端末に同軸コネクタ(図示省略)が設けられている。同軸ケーブル1は、内部導体2(導体)と、内部絶縁体3(絶縁体)と、金属箔付きフィルム4と、外部導体5と、シース6とを備えて構成されている。また、同軸ケーブル1は、内部絶縁体3と金属箔付きフィルム4との間に融着部7を有している。
【0017】
内部導体2は、同軸ケーブル1の中心の導体であって、複数の素線を撚り合わせてなる軟銅撚り線が用いられている。内部導体2は、導電性を有しており、断面円形状に形成されている。内部導体2は、同軸ケーブル1の端末において、図示しない同軸コネクタのインナー端子が接続されるようになっている。内部導体2は、本実施例において、導体径が0.32mm、7本撚りのものが用いられている。
【0018】
内部絶縁体3は、絶縁性を有しており、均一な厚みで内部導体2を覆うように設けられている。内部絶縁体3は、本実施例において、架橋ポリエチレンにより形成されている。架橋ポリエチレンの軟化点は、約115℃であるものとする。内部絶縁体3は、本実施例において、この厚みが約0.86mmとなるように形成されている。
【0019】
金属箔付きフィルム4は、内部絶縁体3を覆うように設けられている。金属箔付きフィルム4は、金属箔部8と樹脂フィルム部9(フィルム部)とを有するフィルム状の部材に形成されている。金属箔付きフィルム4は、内部絶縁体3に対し縦添えにて設けられている(縦添えは一例であるものとする)。金属箔部8は、金属箔にて形成されている。金属箔としては、銅箔が挙げられるものとする(アルミ箔や鉄箔など用途に合わせて選定することが可能であるものとする)。樹脂フィルム部9は、樹脂フィルムにて形成されている。樹脂フィルムとしては、PETフィルムが挙げられるものとする。
【0020】
金属箔部8は、樹脂フィルム部9の一方の面に対し蒸着や接着等の公知の方法にて一体化されている。金属箔付きフィルム4は、樹脂フィルム部9の他方の面が内部絶縁体3側となるように配設されている。金属箔付きフィルム4は、本実施例において、この厚みが約0.02mmとなるように形成されている。
【0021】
金属箔付きフィルム4は、融着部7により内部絶縁体3から浮き上がらないようになっている。具体的には、融着部7により略密着状態になっている。融着部7に関しては後述する。
【0022】
外部導体5は、金属箔付きフィルム4を覆うように設けられている。外部導体5は、極細の素線を編んでなる編組(軟銅線編組)により筒状に形成されている。外部導体5は、導電性を有しており、金属箔付きフィルム4の金属箔部8に接するように配設されている。外部導体5と金属箔部8は、シールド部材としての機能を有している。外部導体5と金属箔部8は、同軸ケーブル1の端末において、図示しない同軸コネクタのシールド端子が接続されるようになっている。シールド端子の接続に関しては、外部導体5と金属箔部8との間にシールド端子の金属円筒状となるスリーブ(図示省略)を挿入し、この後、外部導体5の外側からリング部材(図示省略)を用いて加締めを施すことにより接続が完了するようになっている。
【0023】
シース6は、絶縁性を有しており、均一な厚みで外部導体5を覆うように設けられている。シース6は、本実施例において、ポリエチレンの押出により成形されている。シース6は、公知の押出成形機により内部絶縁体3の軟化点(上記の約115℃)よりも高い温度で押し出されるようになっている。シース6は、押出温度が210〜230℃となるように制御された上で成形されている。押出温度210〜230℃は、後述する密着力を確保する有効な温度となっている。シース6は、本実施例において、この厚みが約0.35mmとなるように形成されている。
【0024】
同軸ケーブル1は、シース6の押出成形に係る熱10が内部絶縁体3に伝わると、内部絶縁体3と金属箔付きフィルム4の樹脂フィルム部9との間に融着部7が形成されるようになっている。尚、熱10は成形後の余熱も含んでいる。
【0025】
融着部7は、内部絶縁体3と金属箔付きフィルム4の樹脂フィルム部9との間に形成されて、これらを略密着状態にする部分となっている。融着部7は、シース6の押出成形に係る熱10が内部絶縁体3に伝わり、そして、内部絶縁体3に軟化・膨張が生じて内部絶縁体3と樹脂フィルム部9とが融着することにより形成される部分となっている。
【0026】
融着部7は、内部絶縁体3と樹脂フィルム部9とを略密着状態に形成することができるようになっている。金属箔付きフィルム4は、融着部7により内部絶縁体3から浮き上がらないようになっている。金属箔付きフィルム4の浮き上がりがなければ、上記図示しないスリーブの挿入が容易且つスムーズになるのは勿論である。
【0027】
融着部7は、内部絶縁体3と樹脂フィルム部9との密着力が35〜60[N/50mm]となるように形成されている。この密着力を得るには、シース6の押出温度が210〜230℃となるように制御されることが有効である。融着部7は、この密着力が35〜60[N/50mm]に制御されることにより、上記の浮き上がりが防止できる他に、冷熱衝撃により生じる内部絶縁体3の収縮に対し金属箔付きフィルム4の追従を阻止することもできるようになる。
【0028】
以下、表1及び
図1を参照しながら融着部7に関する評価について説明をする。
【0029】
融着部7に関し、シース6の押出温度を180℃、210℃、220℃、230℃、250℃に制御して、各押出温度での密着力を測定するとともに、貼り付き状態、減衰量、スリーブ挿入性を「○」「×」にて評価をする。
【0030】
上記密着力は、金属箔付きフィルム4と内部絶縁体3との間の密着力を、長さ50mmの試料で測定し、これを数値で表したものである。単位は[N/50mm]である。上記貼り付き状態は、金属箔付きフィルム4と内部絶縁体3との貼り付き状態を評価したものであり、貼り付き状態が良好であれば、すなわち浮き上がりが生じてなければ「○」の評価をする。一方、貼り付き状態が悪ければ、すなわち浮き上がりが生じていれば「×」の評価をする。
【0031】
上記減衰量は、冷熱衝撃試験後の減衰量を評価したものであり、減衰量の低下がない良好な結果であれば「○」の評価をする。一方、規定以上の減衰量の低下がある悪い結果であれば「×」の評価をする。冷熱衝撃試験は、105℃の恒温槽に試料を30分入れるとともに、取り出し直後に−40℃の恒温槽に30分入れることを1サイクルとし、これを1000サイクル行う試験であるものとする。
【0032】
上記スリーブ挿入性は、金属箔付きフィルム4と内部絶縁体3との間に挿入するスリーブの挿入性を評価したものであり、スリーブの挿入が容易且つスムーズであれば「○」の評価をする。一方、引っ掛かりがあるようであれば「×」の評価をする。
【0033】
【表1】
【0034】
シース6の押出温度を210℃に制御した場合、密着力は35[N/50mm]である。この時の貼り付き状態は良好で「○」の評価である。また、減衰量はこの低下のない良好な「○」の評価である。また、スリーブの挿入性は容易且つスムーズで良好な「○」の評価である。
【0035】
シース6の押出温度を220℃に制御した場合、密着力は40[N/50mm]である。この時の貼り付き状態は良好で「○」の評価である。また、減衰量はこの低下のない良好な「○」の評価である。また、スリーブの挿入性は容易且つスムーズで良好な「○」の評価である。
【0036】
シース6の押出温度を230℃に制御した場合、密着力は60[N/50mm]である。この時の貼り付き状態は良好で「○」の評価である。また、減衰量はこの低下のない良好な「○」の評価である。また、スリーブの挿入性は容易且つスムーズで良好な「○」の評価である。
【0037】
しかしながら、シース6の押出温度を180℃に制御した場合、密着力は15[N/50mm]である。この時の貼り付き状態は悪く「×」の評価である。また、スリーブの挿入性は引っ掛かりがあって悪く「×」の評価である。尚、減衰量に関してはこの低下のない良好な「○」の評価である。
【0038】
シース6の押出温度を250℃に制御した場合、密着力は120[N/50mm]である。この時の減衰量は低下が生じて悪く「×」の評価である。尚、貼り付き状態は良好で「○」の評価である。また、スリーブの挿入性は容易且つスムーズで良好な「○」の評価である。
【0039】
以上の評価から、シース6の押出温度を210〜230℃となるように制御するとともに、密着力を35〜60[N/50mm]に制御することが有効であると言える。
【0040】
本発明に係る同軸ケーブル1によれば、融着部7を形成して絶縁体3と金属箔付きフィルム4とを略密着状態にすることから、絶縁体3からの金属箔付きフィルム4の浮き上がりを防止することができる。従って、スリーブの挿入性向上を図ることができるという効果を奏する。
【0041】
また、本発明に係る同軸ケーブル1によれば、絶縁体3の軟化点よりも高い温度でシース6を押出成形し、そして、この成形に係る熱10を絶縁体3に伝えて融着により融着部7を形成することから、絶縁体3と金属箔付きフィルム4とを強すぎず、また、弱すぎずに密着させることができる。従って、冷熱衝撃により生じる絶縁体3の収縮に金属箔付きフィルム4が追従することはなく、結果、破断や変形をなくして減衰量低下の防止を図ることができるという効果を奏する。
【0042】
本発明は本発明の主旨を変えない範囲で種々変更実施可能なことは勿論である。