特許第5855891号(P5855891)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5855891
(24)【登録日】2015年12月18日
(45)【発行日】2016年2月9日
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20160120BHJP
【FI】
   H02M7/48 S
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-222983(P2011-222983)
(22)【出願日】2011年10月7日
(65)【公開番号】特開2013-85358(P2013-85358A)
(43)【公開日】2013年5月9日
【審査請求日】2014年8月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】玉井 伸三
【審査官】 宮地 将斗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−188584(JP,A)
【文献】 特表2003−511005(JP,A)
【文献】 特開2006−271042(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0159749(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/42−7/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列に接続した第1から第4のスイッチ素子と、
第1の前記スイッチ素子と第2の前記スイッチ素子との第1接続点と、第3の前記スイッチ素子と第4の前記スイッチ素子との第2接続点との間に、直列に接続した2個のダイオードと、
前記ダイオード同士を接続する第3接続点と、第1の前記スイッチ素子との間に接続した第1電荷蓄積要素と、
前記第3接続点と、第4の前記スイッチ素子との間に接続した第2電荷蓄積要素とを備え、第1から第4の前記スイッチ素子のオン状態とオフ状態とを組合わせ、3個の電圧レベルを出力することが可能な3レベルインバータを、nを1以上の整数とした場合に、2個直列に接続してある直列3レベルインバータ群と、
前記直列3レベルインバータ群のうちの2個の前記3レベルインバータの出力を選択する少なくとも1個のスイッチ回路と
を備える電力変換装置であって、
前記直列3レベルインバータ群は、隣合う一方の前記3レベルインバータの第4の前記スイッチ素子と前記第2電荷蓄積要素との第4接続点と、隣合う他方の前記3レベルインバータの第1の前記スイッチ素子と前記第1電荷蓄積要素との第5接続点との接続を繰返して2個の前記3レベルインバータを直列に接続し、
前記スイッチ回路は、前記直列3レベルインバータ群の隣合う2個の前記3レベルインバータの出力のうち、いずれか一方を選択することが可能なように2n−1個接続し、
前記スイッチ回路が2個以上の場合、前段に接続された2個の前記スイッチ回路の出力のうち、いずれか一方を選択することが可能なように次段の前記スイッチ回路を順に接続して1つの出力を得る、電力変換装置。
【請求項2】
前記スイッチ素子と前記第1電荷蓄積要素または第2電荷蓄積要素との間、前記ダイオードと前記第1電荷蓄積要素または第2電荷蓄積要素との間に、電流の急変を抑制するスナバ回路をさらに備える、請求項1に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置に関し、特に、異なる複数の電圧レベルを出力することが可能な電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の直流電源から直流電圧の積重ねを1周期の間で変化させ、直流電力を交流電力に変換する電力変換装置が提案されている。この電力変換装置は、1つの直流電源を持つインバータのように一定のパルス状の電圧を生成するのではなく、電位の異なる複数の直流電圧を積重ねて、直流電力を交流電力に変換する。そのため、この電力変換装置は、電位の異なる複数の直流電圧をきめ細かく無駄なく積重ねることで、1つの直流電源を持つ電力変換装置に比べて、直流電力を高調波の少ない交流電力に変換することができる。
【0003】
具体的に、特許文献1に、前述の電力変換装置であるマルチレベルインバータが開示してある。
【0004】
特許文献1に開示してあるマルチレベルインバータは、直列に接続されマルチレベル端子電圧を構成するレドックスフロー型2次電池と、マルチレベル端子の電位の積重ねを制御して交流電力を構成するインバータ部とを備えている。インバータ部は、合計8個のスィッチング素子と、6個のダイオードとを備え、制御部の指示によってスィッチング素子の開閉を制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−341964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図5は、特許文献1に開示してある従来の電力変換装置の回路構成を示す回路図である。図5に示す電力変換装置100は、異なる5個の電圧レベルを出力することが可能な5レベルインバータである。電力変換装置100は、4個の直流電源V、8個のスイッチ素子S101〜S108、6個のダイオードD101〜D106を備えている。
【0007】
電力変換装置100は、4個の直流電源Vの中間点を中点Vとし、中点Vの電圧レベルを“0V”とする。そのため、電力変換装置100は、中点Vより1個の直流電源V分だけプラス電位の電圧レベルが“+1V”となり、中点Vより2個の直流電源V分だけプラス電位の電圧レベルが“+2V”となる。逆に、電力変換装置100は、中点Vより1個の直流電源V分だけマイナス電位の電圧レベルが“−1V”となり、中点Vより2個の直流電源V分だけマイナス電位の電圧レベルが“−2V”となる。
【0008】
電力変換装置100は、スイッチ素子S101,S102,S103,S104をオン状態にすることで出力端子に“+2V”の電圧レベルの電位を出力し、スイッチ素子S102,S103,S104,S105をオン状態にすることで出力端子に“+1V”の電圧レベルの電位を出力することができる。また、電力変換装置100は、スイッチ素子S103,S104,S105,S106をオン状態にすることで出力端子に“0V”の電圧レベルの電位を出力することができる。さらに、電力変換装置100は、スイッチ素子S104,S105,S106,S107をオン状態にすることで出力端子に“−1V”の電圧レベルの電位を出力し、スイッチ素子S105,S106,S107,S108をオン状態にすることで出力端子に“−2V”の電圧レベルの電位を出力することができる。したがって、電力変換装置100は、出力端子から異なる5個の電圧レベル(“−2V”,“−1V”,“0V”,“+1V”,“+2V”)を出力することができる。
【0009】
しかし、電力変換装置100では、出力端子から“−2V”の電圧レベルの電位を出力するために、スイッチ素子S105,S106,S107,S108をオン状態にすると、ダイオードD102,D104,D106のアノード端子の電圧レベルが“−2V”となり、ダイオードD102は、カソード端子が“+1V”の電圧レベルに接続されているので、3個の直流電源V分の電圧が印加されることになる。同様に、ダイオードD104には、2個の直流電源V分の電圧が印加され、ダイオードD106には、1個の直流電源V分の電圧が印加されることになる。
【0010】
また、電力変換装置100では、出力端子から“+2V”の電圧レベルの電位を出力するために、スイッチ素子S101,S102,S103,S104をオン状態にすると、ダイオードD101,D103,D105のアノード端子の電圧レベルが“+2V”となり、ダイオードD105は、カソード端子が“−1V”の電圧レベルに接続されているので、3個の直流電源V分の電圧が印加されることになる。同様に、ダイオードD103には、2個の直流電源V分の電圧が印加され、ダイオードD101には、1個の直流電源V分の電圧が印加されることになる。
【0011】
このように、特許文献1に開示してあるマルチレベルインバータは、直流電源とスイッチ素子との間を接続するダイオードD102,D105にダイオードD101,D106に比べて3倍の耐圧、ダイオードD103,D104にダイオードD101,D106に比べて2倍の耐圧がそれぞれ必要である。そのため、特許文献1に開示してあるマルチレベルインバータでは、耐圧の異なるダイオードを使用するか、ダイオードを2個または3個直列に接続して耐圧を高める必要があり、装置が複雑になるので製造が困難であった。
【0012】
また、特許文献1に開示してあるマルチレベルインバータは、出力する電圧レベルの数がより多くなると、ダイオードにさらに高い耐圧が必要となり、直流電源とスイッチ素子との間に接続するダイオードの構成が複雑となり、さらに製造が困難になる。
【0013】
それゆえに、本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、製造が容易な構成の電力変換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明は、直列に接続した第1から第4のスイッチ素子と、第1のスイッチ素子と第2のスイッチ素子との第1接続点と、第3のスイッチ素子と第4のスイッチ素子との第2接続点との間に、直列に接続した2個のダイオードと、ダイオード同士を接続する第3接続点と、第1のスイッチ素子との間に接続した第1電荷蓄積要素と、第3接続点と、第4のスイッチ素子との間に接続した第2電荷蓄積要素とを備え、第1から第4のスイッチ素子のオン状態とオフ状態とを組合わせ、3個の電圧レベルを出力することが可能な3レベルインバータを、nを1以上の整数とした場合に、2個直列に接続してある直列3レベルインバータ群と、直列3レベルインバータ群のうちの2個の3レベルインバータの出力を選択する少なくとも1個のスイッチ回路とを備える電力変換装置であって、直列3レベルインバータ群は、隣合う一方の3レベルインバータの第4のスイッチ素子と第2電荷蓄積要素との第4接続点と、隣合う他方の3レベルインバータの第1のスイッチ素子と第1電荷蓄積要素との第5接続点との接続を繰返して2個の3レベルインバータを直列に接続し、スイッチ回路は、直列3レベルインバータ群の隣合う2個の3レベルインバータの出力のうち、いずれか一方を選択することが可能なように2n−1個接続し、スイッチ回路が2個以上の場合、前段に接続された2個のスイッチ回路の出力のうち、いずれか一方を選択することが可能なように次段のスイッチ回路を順に接続して1つの出力を得る。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る電力変換装置によれば、複数の3レベルインバータを直列に接続した直列3レベルインバータ群と、複数の3レベルインバータの出力を選択する少なくとも1個のスイッチ回路とを備える構成にすることで、出力する電圧レベルの数によらず、耐圧の必要な素子をスイッチ回路に集中させることができるため、製造が容易な構成とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施の形態1に係る電力変換装置の回路構成を示す回路図である。
図2図1に示す電力変換装置が出力する電圧レベルの波形を示す波形図である。
図3】本発明の実施の形態1に係る電力変換装置の別の回路構成を示す回路図である。
図4図3に示す電力変換装置が出力する電圧レベルの波形を示す波形図である。
図5】特許文献1に開示してある従来の電力変換装置の回路構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る実施の形態について図面を参照して説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る電力変換装置の回路構成を示す回路図である。図1に示す電力変換装置10は、異なる5個の電圧レベルを出力することが可能な5レベルインバータである。電力変換装置10は、4個の直流電源V、10個のスイッチ素子S1〜S10、4個のダイオードD1〜D4、出力端子を備えている。
【0018】
電力変換装置10は、異なる3個の電圧レベルを出力することが可能な2個の3レベルインバータ10a,10bと、2個の3レベルインバータ10a,10bの出力を選択する1個のスイッチ回路11とを備える。3レベルインバータ10aは、直列接続された4個のスイッチ素子S1〜S4、直列接続されたダイオードD1,D2、直列接続された直流電源VであるコンデンサC1,C2を含んでいる。3レベルインバータ10aは、スイッチ素子S1とスイッチ素子S2との接続点P1と、スイッチ素子S3とスイッチ素子S4との接続点P2との間にダイオードD1,D2を直列に接続する。さらに、3レベルインバータ10aは、ダイオードD1,D2同士を接続する接続点P3とスイッチ素子S1との間にコンデンサC1を接続し、接続点P3とスイッチ素子S4との間にコンデンサC2を接続する。なお、3レベルインバータ10bも、3レベルインバータ10aと同じ回路構成であるため、詳細な説明を繰返さない。
【0019】
スイッチ回路11は、スイッチ素子S9およびスイッチ素子S10で構成され、スイッチ素子S9またはスイッチ素子S10がオン状態となることで、3レベルインバータ10aまたは3レベルインバータ10bの出力を選択する。
【0020】
3レベルインバータ10aは、スイッチ素子S1,S2をオン状態にすることで、直列接続されたコンデンサC1,C2におけるコンデンサC1のプラス側電位“+2V”を出力することができ、スイッチ素子S2,S3をオン状態にすることで、直列接続されたコンデンサC1,C2同士の接続点P4の電位“+1V”を出力することができる。さらに、3レベルインバータ10aは、スイッチ素子S3,S4をオン状態にすることで、直列接続されたコンデンサC1,C2におけるコンデンサC2のマイナス側電位“0V”を出力することができる。したがって、3レベルインバータ10aは、“0V”,“+1V”,“+2V”の3つの電圧レベルを出力することができる。
【0021】
3レベルインバータ10bは、3レベルインバータ10aと同じ動作が可能であるため、“0V”,“−1V”,“−2V”の3つの電圧レベルを出力することができる。
【0022】
よって、電力変換装置10は、スイッチ回路11のスイッチ素子S9とスイッチ素子S10とのオン状態を切替えることで、直列接続された3レベルインバータ10a,10bのいずれか一方の出力を選択することで、出力端子から異なる5個の電圧レベル(“−2V”,“−1V”,“0V”,“+1V”,“+2V”)を出力することができる。なお、コンデンサC2のマイナス側電位と、コンデンサC3のプラス側電位とは、同電位“0V”である。
【0023】
次に、電力変換装置10の動作について説明する。図2は、図1に示す電力変換装置10が出力する電圧レベルの波形を示す波形図である。
【0024】
まず、電力変換装置10は、スイッチ素子S3,S4をオン状態、スイッチ回路11のスイッチ素子S9をオン状態(スイッチ素子S10はオフ状態)にして、出力端子から電圧レベル“0V”を出力する。その後、電力変換装置10は、時間tに、スイッチ素子S2,S3をオン状態、スイッチ回路11のスイッチ素子S9をオン状態にして、出力端子から電圧レベル“+1V”を出力する。
【0025】
そして、電力変換装置10は、時間tに、スイッチ素子S1,S2をオン状態、スイッチ回路11のスイッチ素子S9をオン状態にして、出力端子から電圧レベル“+2V”を出力する。その後、電力変換装置10は、出力端子から電圧レベルを“+1”、“0”と順に下げる。
【0026】
なお、電力変換装置10は、スイッチ素子S5,S6をオン状態、スイッチ回路11のスイッチ素子S10をオン状態にして、出力端子から電圧レベル“0V”を出力してもよい。
【0027】
電力変換装置10は、時間tに、スイッチ素子S6,S7をオン状態、スイッチ回路11のスイッチ素子S10をオン状態にして、出力端子から電圧レベル“−1V”を出力する。
【0028】
そして、電力変換装置10は、時間tに、スイッチ素子S7,S8をオン状態、スイッチ回路11のスイッチ素子S10をオン状態にして、出力端子から電圧レベル“−2V”を出力する。その後、電力変換装置10は、出力端子から電圧レベルを“−1”、“0”と順に上げる。
【0029】
電力変換装置10は、前述のように異なる5個の電圧レベル(“−2V”,“−1V”,“0V”,“+1V”,“+2V”)を切替え出力する動作を行なうことで、図2に示す破線のような交流電圧を出力することができ、直流電力を交流電力に変換することができる。
【0030】
3レベルインバータ10a,10bは、構成するスイッチ素子S1〜S8、ダイオードD1〜D4において、スイッチ素子がオフ状態のときにそれぞれの素子の両端に1個分のコンデンサの電圧が印加されるのみである。スイッチ回路11は、構成するスイッチ素子S9,S10において、出力端子から“+2V”を出力する場合、スイッチ素子S9をオン状態、スイッチ素子S10をオフ状態となるので、スイッチ素子S10の両端に2個分のコンデンサの電圧が印加される。また、スイッチ回路11は、構成するスイッチ素子S9,S10において、出力端子から“−2V”を出力する場合、スイッチ素子S10をオン状態、スイッチ素子S9をオフ状態となるので、スイッチ素子S9の両端に2個分のコンデンサの電圧が印加される。
【0031】
以上のように、本発明の実施の形態1に係る電力変換装置10は、3レベルインバータ10a,10bが2つ直列に接続された特別に耐圧の大きな素子が不要な直列3レベルインバータ群と、スイッチ回路11とを備える構成とすることで、高い電圧が印加される素子をスイッチ回路11を構成する素子に限定することができる。すなわち、電力変換装置10は、既存の耐圧の素子を用いた3レベルインバータを2個直列に接続し、3レベルインバータの出力を選択するスイッチ回路を設けるだけで製造できるため、製造が容易な構成とすることができる。
【0032】
なお、本発明の実施の形態1に係る電力変換装置は、異なる5個の電圧レベルを出力することが可能な電力変換装置に限定されるものではなく、直列に接続された3レベルインバータおよびスイッチ回路を増やすことで、出力する電圧レベルの数を容易に増やすことができる。
【0033】
具体的に、図3は、本発明の実施の形態1に係る電力変換装置の別の回路構成を示す回路図である。図3に示す電力変換装置20は、異なる9個の電圧レベルを出力することが可能な9レベルインバータである。電力変換装置20は、8個の直流電源V、22個のスイッチ素子S1〜S22、8個のダイオードD1〜D8を備えている。なお、スイッチ素子S1〜S22には、フリーホイールダイオードをそれぞれ接続してある。
【0034】
電力変換装置20は、4個の3レベルインバータ20a,20b,20c,20dが直列接続された直列3レベルインバータ群と、2個の3レベルインバータ20a,20bの出力を選択する1個のスイッチ回路21と、2個の3レベルインバータ20c,20dの出力を選択する1個のスイッチ回路22と、前段に接続された2個のスイッチ回路21,22の出力のうち、いずれか一方を選択することが可能なように次段のスイッチ回路23とを備える。
【0035】
8個の直流電源Vの中間点を中点Vとし、中点Vの電圧レベルを“0V”とする。そのため、中点Vより上側の4個の直流電源Vの接続点の電圧レベルは、中点Vの側から順に“+1V”,“+2V”,“+3V”となり、中点Vより下側の4個の直流電源Vの接続点の電圧レベルは、中点Vの側から順に“−1V”,“−2V”,“−3V”となる。また、直流電源Vとスイッチ素子S1との接続点の電圧レベルは“+4V”となり、直流電源Vとスイッチ素子S18との接続点の電圧レベルは“−4V”となる。
【0036】
次に、電力変換装置20の動作について説明する。図4は、図3に示す電力変換装置20が出力する電圧レベルの波形を示す波形図である。
【0037】
まず、電力変換装置20は、スイッチ素子S7,S8をオン状態、スイッチ回路21のスイッチ素子S10をオン状態、スイッチ回路23のスイッチ素子S21をオン状態にして、出力端子から電圧レベル“0V”を出力する。その後、電力変換装置20は、時間tに、スイッチ素子S6,S7をオン状態、スイッチ回路21のスイッチ素子S10をオン状態、スイッチ回路23のスイッチ素子S21をオン状態にして、出力端子から電圧レベル“+1V”を出力する。
【0038】
そして、電力変換装置20は、時間tに、スイッチ素子S5,S6をオン状態、スイッチ回路21のスイッチ素子S10をオン状態、スイッチ回路23のスイッチ素子S21をオン状態にして、出力端子から電圧レベル“+2V”を出力する。
【0039】
なお、電力変換装置20は、スイッチ素子S3,S4をオン状態、スイッチ回路21のスイッチ素子S9をオン状態、スイッチ回路23のスイッチ素子S21をオン状態にして、出力端子から電圧レベル“+2V”を出力してもよい。
【0040】
その後、電力変換装置20は、時間tに、スイッチ素子S2,S3をオン状態、スイッチ回路21のスイッチ素子S9をオン状態、スイッチ回路23のスイッチ素子S21をオン状態にして、出力端子から電圧レベル“+3V”を出力する。
【0041】
そして、電力変換装置20は、時間tに、スイッチ素子S1,S2をオン状態、スイッチ回路21のスイッチ素子S9をオン状態、スイッチ回路23のスイッチ素子S21をオン状態にして、出力端子から電圧レベル“+4V”を出力する。その後、電力変換装置20は、出力端子から電圧レベルを“+3V”、“+2V”、“+1V”、“0V”と順に下げる。
【0042】
なお、電力変換装置20は、スイッチ素子S11,S12をオン状態、スイッチ回路22のスイッチ素子S19をオン状態、スイッチ回路23のスイッチ素子S22をオン状態にして、出力端子から電圧レベル“0V”を出力してもよい。
【0043】
電力変換装置20は、時間tに、スイッチ素子S12,S13をオン状態、スイッチ回路22のスイッチ素子S19をオン状態、スイッチ回路23のスイッチ素子S22をオン状態にして、出力端子から電圧レベル“−1V”を出力する。
【0044】
そして、電力変換装置20は、時間tに、スイッチ素子S13,S14をオン状態、スイッチ回路22のスイッチ素子S19をオン状態、スイッチ回路23のスイッチ素子S22をオン状態にして、出力端子から電圧レベル“−2V”を出力する。
【0045】
なお、電力変換装置20は、スイッチ素子S15,S16をオン状態、スイッチ回路22のスイッチ素子S20をオン状態、スイッチ回路23のスイッチ素子S22をオン状態にして、出力端子から電圧レベル“−2V”を出力してもよい。
【0046】
その後、電力変換装置20は、時間tに、スイッチ素子S16,S17をオン状態、スイッチ回路22のスイッチ素子S20をオン状態、スイッチ回路23のスイッチ素子S22をオン状態にして、出力端子から電圧レベル“−3V”を出力する。
【0047】
そして、電力変換装置20は、時間tに、スイッチ素子S17,S18をオン状態、スイッチ回路22のスイッチ素子S20をオン状態、スイッチ回路23のスイッチ素子S22をオン状態にして、出力端子から電圧レベル“−4V”を出力する。その後、電力変換装置20は、出力端子から電圧レベルを“−3V”、“−2V”、“−1V”、“0V”と順に上げる。
【0048】
電力変換装置20は、前述のように異なる9個の電圧レベル(“−4V”,“−3V”,“−2V”,“−1V”,“0V”,“+1V”,“+2V”,“+3V”,“+4V”)を切替え出力する動作を行なうことで、図4に示す破線のような交流電圧を出力することができ、直流電力を交流電力に変換することができる。
【0049】
前述したように、本発明の実施の形態1に係る電力変換装置は、直列に接続されるレベルインバータおよびスイッチ回路を増やすことで、出力する電圧レベルの数を増やすことについて、以下のように一般化して表わすことができる。
【0050】
つまり、本発明の実施の形態1に係る電力変換装置は、2個直列に接続してある直列3レベルインバータ群と、直列3レベルインバータ群のうちの2個の3レベルインバータの出力を選択する少なくとも1個のスイッチ回路とを備える。そして、スイッチ回路は、直列3レベルインバータ群の隣合う2個の3レベルインバータの出力のうち、いずれか一方を選択することが可能なように2n−1個接続し、スイッチ回路が2個以上の場合、前段に接続された2個のスイッチ回路の出力のうち、いずれか一方を選択することが可能なように次段のスイッチ回路を順に接続して、電力変換装置が1つの出力を得る。
【0051】
なお、本発明の実施の形態に係る電力変換装置では、スイッチ動作の説明を簡単にするため、交流1周期に電圧レベルを選択する回数を限定して説明したが、交流1周期に複数回スイッチングして電圧レベルを複数回選択することで、よりきめ細かい交流電圧を出力することができ、高周波のより少ない電力変換装置とすることができる。
【0052】
また、本発明の実施の形態に係る電力変換装置では、電荷蓄積要素としてコンデンサを用いたが、これに限定されるものではなく、たとえば直流電源を接続してもよい。
【0053】
さらに、本発明の実施の形態に係る電力変換装置では、電荷蓄積要素とスイッチ素子またはダイオードとの間を直結しているが、これに限定されるものではなく、たとえばスイッチ素子がオン−オフの過渡状態の電流の急変を抑制するスナバ回路などを設ける構成であってもよい。
【0054】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0055】
10,20 電力変換装置、10a,10b,20a〜20d レベルインバータ、11,21〜23 スイッチ回路、C1,C2,C3,C4 コンデンサ、D1〜D8 ダイオード。
図1
図2
図3
図4
図5