【実施例】
【0039】
【表1】
【0040】
試験方法
破壊靭性手順試料が3.18cm×3.05cm×0.64cm(1.25インチ×1.20インチ×0.25インチ)の公称寸法を有する、小型引張形状を使用して、ASTM D 5045−99に従って、破壊靭性を測定した。以下のパラメーターを使用した。W=2.54cm(1.00インチ)、a=1.27cm(0.50インチ)、及びB=0.64cm(0.25インチ)。更に、0.13cm/分(0.050インチ/分)の修正された負荷速度を使用した。K
Icの値を、メートルの平方根をメガパスカルで掛けた単位、すなわち、MPa・m
1/2で報告した。
【0041】
剪断係数手順ねじり矩形試験モードを使用して、RDA−700 Rheometrics Dynamic Analyzer(Rheometrics,Inc.,Piscataway,New Jerseyから入手可能)により剪断係数を決定した。試験試料は、5.08cm×1.27cm×0.16cmに機械加工した。各測定を行う前に1分間の熱浸漬を行い、5℃/分の加熱速度で、35℃から樹脂のガラス転移温度を上回るまで5℃の間隔で、データを収集した。初期歪みは、0.45%であり、機械は、歪み調節モードであった。振動数は、10ラジアン/秒であった。
【0042】
ガラス転移温度手順TA Instruments 912 Differential Scanning Calorimeter(TA Instruments,New Castle,Delawareから入手可能)により、ガラス転移温度(Tg)を決定した。加熱速度は、40℃/分であった。
【0043】
カルサイト濃度手順エポキシ樹脂中20〜50ミリグラムのカルサイトサンプルを、TA Instruments TGA 500熱重量分析器の中に配置した。サンプル温度を50℃〜900℃まで30℃/分で空気中で上昇させ、次いで、900℃で3分間保持した。残留物重量は、カルサイトから全ての有機物及び二酸化炭素を揮発させた後に、サンプル中に残るCaOであると仮定した。重量%のCaO残留物を0.56で割ることにより、元のサンプル中のカルサイト濃度を計算した。
【0044】
粘度手順50cm平行板構成を使用して、BOHLIN C−VOPレオメーター上で粘度を測定した。0.01〜100ヘルツ(Hz)の周波数走査を使用して、測定を行った。樹脂系と比較するための代表値として、52Hzにおける値を選択した。
【0045】
樹脂引張り強度手順「I型」試料を使用して、ASTM D638「Standard Test Method for Tensile Properties of Plastics」に従って、樹脂の引張り強度を測定した。負荷速度は、1.27mm/分(0.05インチ/分)であった。
【0046】
複合材料圧縮強度手順Suppliers of Advanced Composite Materials Association試験法SACMA SRM 1R−94「Recommended Test Method for Compressive Properties of Oriented Fiber−Resin Composites」に従って、複合材料の圧縮強度を測定した。
【0047】
カルサイト粒径手順HORIBA LA−950を使用して、レーザー回折により、カルサイト粒径を測定した。計算のための光学モデルは、カルサイトに対して1.6000及び溶媒アセトンに対して1.3591の屈折率を使用した。平滑化のために第2の差動法が使用され、150回の反復に基づいた。カルサイト分散を、アセトンで約1%の個体に希釈した。次いで、透過性が85%〜95%の推奨レベルの間になるまで、サンプルをアセトンで充填された測定セルに添加した。400nm未満の百分率平均粒径の報告された値(400nm未満の%)は、体積分率平均に基づいた。
【0048】
結合エネルギー
概して、表面修飾剤は、樹脂中にナノ粒子を分散させることを補助する相溶化基と、相溶化基をナノ粒子と会合させるための結合基とを含む。密度汎関数理論計算を使用して、種々の一般的及び潜在的結合基のカルサイトに対する結合エネルギーを決定した。そのような計算に関する詳細は、Pendrew,J.P.;Burke,K.J.;Ernzerhof,M.;Phys.Rev.Lett.1996,3865,77から得られる。
【0049】
結合エネルギー計算手順周期的境界条件密度汎関数理論(PBC−DFT)によるナノカルサイトの表面への異なる官能基の結合エネルギーを計算した。この方法において、ナノ粒子の表面は、二次元周期的スラブで表された。計算は、実際には三次元で周期的であったが、スラブがz方向において相互作用することを防止するために、真空の20オングストローム層が含まれた。したがって、スラブは、二次元周期性を有した。スラブは、3〜4層を含み、ミラー平面に沿って切断された。ナノカルサイトの場合、表面を{1014}表面に沿って切断した。
【0050】
計算を実施する際に、カルシウムに富む表面を仮定した。カルシウムに富む表面の場合、表面上の配位不十分なカルシウムイオンをヒドロキシル基で終端した。11又は12オングストロームの縁の長さを有する周期箱において、孤立分子を計算した。距離は、分子が相互作用することを防止するのに十分大きかった。
【0051】
これらの計算のために、VASP(Vienna ab−initioシミュレーションパッケージ)コンピュータプログラム((a)Kresse,G.;Hafner,J.Phys.Rev.B 1993,588,47、(b)Kresse,G.;Hafner,J.Phys.Rev.B 1994,251,49、(c)Kresse,G.;Furthmueller,J.Comput.Mater.Sci.1996,15,6、及び(d)Kresse,G.;Furthmueller,J.Phys.Rev.B 1996,11 169,54)に実装されるようなPBE密度汎関数(Perdew,J.P.、Burke,K.、Ernzerhof,M.、Phys.Rev.Lett.1996,3865,77)を使用した。使用した擬ポテンシャルは、平面波増強波型のものであり、VASPコンピュータプログラムで分布された。カルシウムの場合、3p電子を擬ポテンシャルで明白に処理した。スラブ計算のために、400eVの平面波カットオフ及び2×2×1のκ点メッシュを使用した。孤立分子に対して、偽ポテンシャル及び平面波カットオフは、1×1×1のκ点メッシュを使用したことを除いて、スラブ計算のために使用したものと同一であった。
【0052】
カルシウムに富む表面を仮定して、結合エネルギー(BE)を計算した。
【0053】
カルシウムに富む表面に対して、
BE=E(スラブ)+E(分子)+E(水)−E(スラブ+分子) (1)
ここで、E(スラブ+分子)、E(スラブ)、E(分子)、及びE(水)はそれぞれ、錯体、孤立スラブ、孤立分子、及び孤立水分子の電子エネルギーである。全ての場合において、形状をそれらのそれぞれの最小値に最適化した。
【0054】
カルシウムに富む表面を仮定して、電子ボルト(e.v.)での計算された値を表2に要約する。
【0055】
【表2】
【0056】
これらのモデリング結果に基づき、表3で識別される配位子を合成し、それぞれは、結合基及び相溶化セグメントを含んだ。カルサイトナノ粒子をビスフェノールAエポキシ樹脂のジグリシジルエーテル中に分散させるために、ポリエチレンオキシド又はポリプロピレンオキシドのいずれかのポリエーテル相溶化セグメントを選択した。
【0057】
ヒドロキサム酸配位子配位子L−Iを以下のように調製した。30g(0.050モル)のポリエーテルアミン(JEFFAMINE M−600,Huntsman)に、73g(0.5モル)のシュウ酸ジエチル(Alfa Aesar)を添加した。50℃で24時間加熱した後、熱を80℃まで上昇させ、残留シュウ酸ジエチル及びエタノールを除去するために真空を引いた。次いで、50%水性ヒドロキシルアミン溶液(3.3g、0.05モル、Aldrich)を添加し、80℃で16時間撹拌した。減圧下で水を除去した。ヒドロキサム酸配位子を薄茶色油として単離し、精製なしで使用した。
【0058】
カルボン酸配位子配位子L−II、L−III、及びL−VIは、一般式、CH
3−(OCH
2CH
2)
n−O
2CCH
2CH
2CO
2Hを有し、以下のように異なる長さのポリ(エチレングリコール)を使用して調製された。500mLのテトラヒドロフラン(EMD Sciencesから購入)中の100g(0.284モル)のポリ(エチレングリコール)メチルエーテル(Alfa Aesarから購入)の撹拌溶液に、42.6g(0.426モル)の無水コハク酸(Alfa Aesarから購入)を添加した。固体を溶解させた時点で、1.46g(0.016モル)の4−(ジメチルアミノ)ピリジン(Alfa Aesarから購入)を添加した。18時間後、減圧下でテトラヒドロフランを除去した。油性残留物を200mLの水中に溶解させ、400mLの4M塩酸(100mLの濃縮塩酸を300mLの水で希釈することにより作成)で処理した。これをジクロロメタン(2×500mL)で抽出した。混合有機画分を、水及び飽和含水塩化ナトリウムで洗浄した。有機画分を硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、透明でほぼ無色の液体に減圧下で濃縮した。1H NMRは、生成物及び残留コハク酸と一致していた。粗コハク酸半エステルを更なる精製なしで使用した。
【0059】
ホスホン酸配位子配位子L−IVを以下のように調製した。50℃で、355.8g(1.017モル)のポリ(エチレングリコール)メチルエーテル(Alfa Aesarから購入、Mn=350)に、152.8g(1.284モル)の塩化チオニルを撹拌しながら滴下添加した。発生気体を、25%の水性水酸化ナトリウムを含有させたトラップを介して通気させた。添加が完了した後、反応混合物の温度を70℃まで上昇させた。4時間後、温度を90℃まで上昇させながら、窒素をゆっくりと混合物の中で泡立て、継続して窒素を泡立てながら、一晩、90℃で反応混合物を保持した。残留揮発物を減圧下、120℃で2時間加熱することにより分離し、338.7gの透明、淡琥珀色の液体を残した。材料の1H及び13C NMRスペクトルは、所望の生成物の構造と一致しており、粗塩化物を更なる精製なしで使用した。
【0060】
上記で調製した150.0g(0.430モル)の粗塩化物と214.0g(1.290モル)の亜リン酸トリエチルとの混合物を170℃で加熱した。3日後、追加の100.0g(0.600モル)の亜リン酸トリエチルを添加し、反応温度を180℃に上げた。180℃にて更に2日間経過後、3度目の100.0g(0.600モル)の亜リン酸トリエチルを添加し、180℃での加熱を継続した。更に2日間経過後、反応混合物の13C NMR分析は、43ppmで出発塩化物が無いことを示した。エチルホスホン酸ジエチル及び他の揮発物を、130℃の最終槽温度、0.05mm Hgでbp 35〜60℃に蒸留し、187.5gの透明、淡黄色の液体を残した。材料の1H及び13C NMRスペクトルは、所望の生成物の構造と一致しており、粗ホスホン酸ジエチルエステルを更なる精製なしで使用した。
【0061】
200mLのジクロロメタン中の上記で調製した90.0g(0.257モル)の粗ホスホン酸ジエチルエステルの溶液に、98.0g(0.643モル)のブロモトリメチルシランを添加した。室温で18時間後、溶液を減圧下で濃縮し、中間体シリルホスホン酸エステルを250mLのメタノール中に溶解させた。得られた溶液を室温で2時間撹拌した。溶液を減圧下で濃縮し、濃縮物を250mLのメタノール中に再び溶解させ、得られた溶液を室温で一晩撹拌した。混合物をこれまでのように濃縮し、溶媒の完全分離を確実にするために一晩真空下で濃縮物を維持した後、80.0gの透明、淡黄色の液体を得た。最終生成物の1H及び13C NMRスペクトルは、所望のホスホン酸配位子の構造と一致した。生成物、ホスホン酸の13C NMRスペクトルは、27.17ppmで、リンに対する炭素αをダブレット(JC−P=138.8Hz)として示した。
【0062】
スルホン酸配位子配位子Vを以下のように調製した。100g(0.167モル)のポリエーテルアミン(Huntsmanから得られるJEFFAMINE M−600、Mn=600)に、17.88g(0.146モル)の溶融プロパンスルトン(TCI Americaから購入)を添加した。混合物を80℃に加熱し、16時間撹拌した。1H NMRスペクトルは、プロパンスルトンの完全な消費を示す。スルホン酸配位子を赤茶色の液体として単離し、更なる精製なしで使用した。
【0063】
アミド酸配位子配位子L−VIIを以下のように調製した。1Lのテトラヒドロフラン中の150g(0.250モル)のポリエーテルアミン(JEFFAMINE M−600、Huntsman)の撹拌溶液に、24g(0.24モル)の無水コハク酸を添加した。16時間の撹拌後、1H NMRは、無水コハク酸が消費されたことを示した。減圧下でテトラヒドロフランを除去した。アミド酸配位子を赤茶色の液体として単離し、更なる精製なしで使用した。
【0064】
乾燥手順ナノカルサイト(NPCC−111)を、水中の56重量%の固体スラリーとして得た。スラリーは、3日間空気乾燥され、得られた大きい塊をブレンダーで粉砕した。
【0065】
表面修飾及び分散手順1
乾燥カルサイト及びカルサイトの重量に基づく5重量%の配位子を、アセトンに添加した。配位子L−I〜L−VI(表3で識別される)のそれぞれを使用して、サンプルを調製した。以下に記載する混合手順Dを使用して、分散を調製した。次いで、得られた分散をエポキシ樹脂(EPON 825)に添加し、100℃の最終温度及び1330Pa(10torr)の圧力で、アセトンをロータベーパーで除去した。熱重量分析により、エポキシ樹脂中のカルサイトの濃度を測定し、エポキシ樹脂中40重量%に調節した。
【0066】
表面修飾及び分散手順2
ナノカルサイト(NPCC−111)を、水中の56重量%の固体スラリーとして得た。この水性スラリー(950グラム)を、空気撹拌器で混合しながら、2000グラムの1メトキシ−2−プロパノールで希釈した。この分散に、25グラムの配位子L−VII(表3で識別される)を添加し、分散を処理するために、以下に記載する混合手順Dを使用した。得られた分散をエポキシ樹脂(EPON 825)に添加した。水及び1−メトキシ−2−プロパノールをロータベーパーで除去した。カルサイトの濃度を40重量%に調節した。
【0067】
配位子L−I〜L−VIIの構造を表3に要約する。粘度試験法を使用して、各表面修飾ナノカルサイト含有樹脂系の粘度を測定した。52Hzでの樹脂系のPa・sの粘度も表3で報告される。
【0068】
【表3】
【0069】
典型的には、硬化性樹脂と表面修飾剤の相溶化セグメントとの間の相溶性が大きいほど、一定条件における粘度はより低くなる。しかしながら、表3に示すように、驚くべきことに、結合基の性質は、粘度にも影響を及ぼした。具体的には、より高い結合エネルギーの結合基が、同一の相溶化基を使用した時でさえ、より低い粘度の組成物をもたらした。
【0070】
ナノ粒径
樹脂系における充填剤として、炭酸カルシウムを使用した。しかしながら、多くの市販の充填剤は、例えば、1〜10マイクロメートルの大きい平均粒径を有する。ナノメートルサイズの一次粒径に基づく市販の炭酸カルシウム材料でさえ、典型的には、一次粒径よりも有意に大きい有効粒径をもたらす、そのような一次粒子の凝集体を含有する。一般的な表面処理でさえ、そのような凝集した粒子は、より高い粒子負荷において高粘性の樹脂系をもたらし得る。
【0071】
広くは、「凝集した」及び「凝集体」とは、例えば、化学的残材処理、化学的共有結合、又は化学的イオン結合でしばしば結合される一次粒子の強い結合を説明している。凝集体の、より小さな存在物への更なる分解は、達成するのが非常に困難である。通常、凝集粒子は、例えば、液体中の凝集粒子の分散中に遭遇した剪断力で、より小さな存在物に分解されない。対照的に、「集塊した」及び「集塊体」とは、電荷又は極性により通常結び付けられる一次粒子の弱い会合を説明している。集塊した粒子は、通常、例えば、液体中の集塊した粒子の分散中に遭遇した剪断力で、より小さな存在物に分解され得る。
【0072】
4つの混合プロセスを、粒径及び粘度へのそれらの効果を判定するために評価した。
【0073】
混合手順A−空気混合エポキシ樹脂を分散剤と共に容器の中に配置した。620kPa(90psi)送気管に接続したACE AIR STIRRERで溶液を撹拌した。空気撹拌器に従来のステンレス鋼シャフト及び撹拌器ブレードを取り付けた。ナノカルサイト凝集体を徐々に添加しながら、非常に激しい撹拌を提供するように、最高設定で空気撹拌器を作動させた。目に見える凝集体のない滑らかで密接に混合された分散が得られるまで、混合物を撹拌した。混合物は、典型的に、ナノカルサイト凝集体の添加後、15分間撹拌した。最終組成物は、45重量%カルサイトを含有した。
【0074】
混合手順B−Cowlesブレード混合この方法は、Cowles混合ブレードが従来の撹拌ブレードの代わりに空気撹拌器に取り付けられていることを除いて、混合手順Aと同じであった。Cowlesブレードは、混合手順において非常に高い剪断を提供するように設計されている。分散は、典型的に、ナノカルサイト凝集体の添加後、15分間撹拌した。最終組成物は、45重量%カルサイトを含有した。
【0075】
混合手順C−Silverson混合液体の、エポキシ樹脂あるいは溶媒を、分散剤と共に容器の中に配置した。ナノカルサイト凝集体をゆっくりと添加しながら、SILVERSONモデルL4R高剪断ミキサーで溶液を撹拌した。温度が80℃まで上昇するように、この高剪断ミキサーの速度を調節し、次いで、10分間その温度で維持した。最終組成物は、45重量%カルサイトを含有した。
【0076】
混合手順D−Netzschミルこの手順において、混合手順Cにおいて記載するように、SILVERSON高剪断ミキサーを用いて、ナノカルサイト凝集体を、液体のエポキシ樹脂あるいは溶媒中に予め分散させた。次いで、ジルコニアチャンバ及びZミキサーを有する、NETZCH「Mini−Cer」Z構成ビーズミルを通した反復循環により、この分散を更にミル粉砕した。チャンバを、200マイクロメートルのジルコニアミル粉砕媒体で90%充填した。チャンバを循環水で冷却し、ミル粉砕中、温度を60〜80℃に維持した。10〜20回、分散をミルに循環させた。所望の分散状態に達するまで、粒径を定期的に評価した。最終組成物は、45重量%カルサイトを含有した。
【0077】
比較例1。表面処理なしのカルサイト粒子(NPC−111)を20重量%の固体でアセトンに添加し、混合手順Cを使用して十分に混合した。非常に揺変性のペーストを得た。エポキシ樹脂(EPON 825)をアセトン/カルサイト分散に添加し、エポキシ中40重量%のカルサイトの分散を提供するように、アセトンを除去した。アセトンを除去した時、固体の、非流体の塊を得た。
【0078】
比較例2。ステアリン酸で処理したカルサイト粒子表面(NPCC−201)を、混合手順Cを使用して、トルエン中で十分に混合した。この分散をエポキシ樹脂(EPON 825)に添加し、トルエンを除去する試みを行った。再び、エポキシ中40重量%のカルサイトの分散で、ペースト状の非流体の塊を得た。
【0079】
このようにして、十分に混合した時でさえ、未処理及びステアリン酸処理カルサイト粒子の両方が、高粘度組成物をもたらした。
【0080】
乾燥粉末として得たSOCAL 31カルサイトを使用して、比較例CE−3〜CE−6及び実施例1〜4を調製した。比較例CE−3及びCE−4、並びに実施例1及び2は、カルサイトの重量に基づき5重量%で配位子L−Vを使用した。同様に、比較例CE−5及びCE−6、並びに実施例3及び4は、カルサイトの重量に基づき5重量%で配位子L−VIIを使用した。表4で識別される混合手順を使用したことを除いて、エポキシ樹脂(EPON 825)中の表面修飾カルサイトの分散を調製するために、表面修飾及び分散手順1を使用した。
【0081】
100部のエポキシ樹脂(PPH)当たり38重量部の硬化剤のレベルで、エポキシ硬化剤(DETDA)を使用して、サンプルを硬化した。構成成分を、最終カルサイト濃度が35重量%になるように調節した。以下のプロトコルを使用して、強制空気炉でサンプルを硬化した。75℃で3時間、125℃で2時間、及び150℃で2時間。カルサイト粒径手順に従って、樹脂中のカルサイト粒子の粒径分布を測定した。サンプルを調製し、破壊靭性手順に従って試験した。400nm未満の粒径及び破壊靭性(K
Ic)を有する粒子の割合を表4に報告する。
【0082】
【表4】
【0083】
反応基を有する表面修飾剤
受け取った状態で乾燥粉末であるSOCAL 31ナノカルサイトを使用して、実施例6、7、及び8を調製した。乾燥手順に従って乾燥させたNPCC−111ナノカルサイトを使用して、実施例9、10、及び11を調製した。ナノカルサイト凝集体の重量に基づき、5重量%で各配位子を使用した。混合手順Dの使用を含む表面修飾及び分散手順1に従って、乾燥カルサイトの表面修飾及びエポキシ樹脂(EPON 825)中の分散を実施した。得られた分散を撹拌フラスコの中に配置し、1330Pa(10torr)の真空下で80℃に加熱することにより、脱気した。
【0084】
100部のエポキシ樹脂(PPH)当たり38重量部の硬化レベルで、エポキシ硬化剤(DETDA)を使用して、サンプルを硬化した。構成成分を、最終カルサイト濃度が35重量%になるように調節した。以下のプロトコルを使用して、強制空気炉でサンプルを硬化した。75℃で3時間、125℃で2時間、及び150℃で2時間。比較例CE−7をカルサイトなしで調製した。
【0085】
【表5】
【0086】
混合手順Dを使用して、エポキシ樹脂(EPON 825)に直接混合したSOCAL 31ナノカルサイトを使用して、実施例12、13、及び14を調製した。カルサイト凝集体の重量に基づく配位子L−Vの様々な重量%を分散の調製に使用した。構成成分を、最終カルサイト濃度が35重量%になるように調節した。サンプルを硬化し、破壊靭性手順に従って評価した。
【0087】
【表6】
【0088】
表面修飾剤の組み合わせを使用して、ナノカルサイト分散を調製した。両方の表面修飾剤が、ナノカルサイトに薬剤を付着させる結合基を含んだ。1つの表面修飾剤に対して、実施例15は、結合基、相溶化セグメント、及び反応基を含む、配位子L−Vを使用した。実施例16は、結合基及び相溶化基を有するが、反応基を含まない、配位子L−VIIを使用した。両方の実施例は、第2の表面修飾剤として、3−(シクロヘキシルアミノ)−1−プロパンスルホン酸(CAPS)を使用した。CAPSは、結合基及び反応基を含むが、相溶化基を含まない。
【0089】
混合手順Dにより、エポキシ樹脂(EPON 825)中にSOCAL 31カルサイトを分散させることにより、実施例15及び16を調製した。構成成分を、最終カルサイト濃度が35重量%になるように調節した。サンプルを硬化し、破壊靭性手順に従って評価した。
【0090】
【表7】
【0091】
ゴム強化剤
CE−8は、カルサイト又はゴム粒子を有しないエポキシ樹脂(EPON 825)である。CE−9は、表面修飾カルサイトのみを含有した。配位子L−Vを使用して、表面修飾及び分散手順1に従って、エポキシ樹脂(EPON 825)中のSOCAL 31カルサイトの分散を調製した。構成成分を、最終カルサイト濃度が25重量%になるように調節した。比較例CE−10は、ナノゴム粒子のみを含んだ。ナノサイズコアシェルゴム粒子(KANE ACE(登録商標)MX−120、Kaneka Texas Corporationからエポキシ樹脂(EPON 828)中25重量%の分散として入手)をEPON 825エポキシ樹脂で希釈し、混合手順Cを使用して混合した。DETDAエポキシ硬化剤を添加し、続いて、真空脱ガス及び硬化を行った。硬化エポキシブレンド中5重量%のゴム粒子を提供するように、濃度を調節した。
【0092】
実施例17及び18は、表面修飾カルサイト、及びエポキシ重量に基づき2.5又は5重量%のナノサイズコアシェルゴム粒子(KANE ACE(登録商標)MX−120、EPON 828エポキシ樹脂中25重量%のコアシェルゴム粒子)を含んだ。最初に、配位子L−Vを使用して、表面修飾及び分散手順1に従って、エポキシ樹脂(EPON 825)中のSOCAL 31カルサイトの分散を調製した。次に、エポキシ樹脂中の所望の量のゴム粒子を分散に添加し、続いて、激しい混合及び真空脱ガスを行った。最終硬化試料中25重量%のカルサイトをもたらすように、構成要素の比率を調節した。
【0093】
100部のエポキシ樹脂(PPH)当たり38重量部の硬化剤のレベルで、DETDAエポキシ硬化剤を用いて、サンプルの全てを硬化した。破壊靭性手順に従って、K
Icを測定した。剪断係数手順に従って、剪断係数(G’)を測定した。
【0094】
【表8】
【0095】
SOCAL 31カルサイト及びEPON 825エポキシ樹脂を使用して、表面修飾及び分散手順1に従って、実施例19、20、及び21で使用したカルサイト分散を調製した。実施例19は、表面処理ナノカルサイト材料のみを含有した。実施例20は、表面処理ナノカルサイト及びナノサイズコアシェルゴム(KANE ACE(登録商標)MX−120)を含有した。実施例21は、表面処理ナノカルサイト及びマイクロメートルサイズコアシェルゴム(Rohm & HaasからのPARALOID EXA 2600)を含有した。構成成分を、最終カルサイト濃度が25重量%になるように調節した。
【0096】
比較例C−11がエポキシ樹脂のみを含有した一方で、比較例C−12は、5重量%のナノサイズコアシェルゴム粒子を含有した。
【0097】
1対1の重量比のDicy硬化剤及びTDI/尿素促進剤を使用して、全てのサンプルを硬化した。100部のエポキシ樹脂に対して6重量部のレベルで、この組み合わせを使用した。最初に2時間にわたって90℃に、続いて、1時間にわたって150℃に加熱することにより、サンプルを硬化し、破壊靭性手順に従って評価した。剪断係数手順に従って、剪断係数(G’)を測定した。
【0098】
【表9】
【0099】
複合材料
米国特許出願第11/680784号(Danielsら、2007年3月1日出願)に記載されるような雨による損傷を模倣するために使用される試験装置を使用して、2つのパネルの耐雨食性を評価した。基本的に、圧縮窒素を使用する装置は、試験試料を狙って、109+/−10m/分(358+/−33フィート/秒)でペレットに点火した。次いで、試料の損傷レベルを視覚的に評価する。
【0100】
エポキシ樹脂(EPON 825)のみを使用して、第1の比較樹脂系を調製した。エポキシ樹脂中の表面修飾ナノカルサイトを使用して、第2の樹脂系を調製した。エポキシ樹脂(EPON 825)中に分散される配位子L−VIIで処理されるナノカルサイト表面を調製するために、表面修飾及び分散プロセス2を使用した。第2の樹脂系は、275グラムのカルサイト及び275グラムのエポキシを含有した。硬化剤(105グラムのDETDA)を両方の樹脂系に添加した。
【0101】
樹脂トランスファー成形プロセスを使用して、ガラス繊維複合材料を調製した。4層のSAERTEX二重対角ガラス(831gm/m
2)ガラス布地を0.095インチ(2.4mm)の深さ、12×12インチ(30cm×30cm)のRTM金型の中に配置した。頂部及び底部の層は、0°の配向であり、2つの中間の層は、均衡のとれた45°+/−の配向を提供するように90°の配向であった。樹脂系を、120℃に予加熱した金型に注入した。90分後、金型を150℃に加熱し、その温度で1時間保持し、その後、金型をゆっくりと冷却した。
【0102】
ナノカルサイトなしの樹脂系を使用して調製した比較パネルは、170発のペレットがパネルに衝撃を与えた後に、激しく損傷した。ナノカルサイト含有エポキシ樹脂で調製したパネルは、1585発のペレットがパネルに衝撃を与えた後に、小規模の損傷のみを示した。試験は、ナノカルサイト修飾マトリックス樹脂で調製したパネルの耐浸食性の劇的な改善を実証した。
【0103】
樹脂トランスファー成形(RTM)プロセスを使用して、炭素繊維複合材料を調製した。複合材料強化は、S80CU990−0151に指定される、Saertex USA,LLCから入手可能なTORAY T700炭素繊維(154g/m2)の単一方向布地であった。2.4mm(0.095インチ)の深さ、30cm×30cm(12インチ×12インチ)のRTM金型の中に16層の炭素布地を配置することにより、単一方向ラミネートを作製し、2.26mm(0.089インチ)の公称厚さ、及び約60%の公称炭素繊維体積分率をもたらした。混合プロセスDを使用して、エポキシ樹脂(EPON 825)中に分散される配位子L−Vで表面修飾された30重量%のカルサイトを使用して、パネルを作製した。100部のエポキシ樹脂当たり38重量部の硬化剤のDETDAで、サンプルを硬化した。樹脂系を、120℃に予加熱した金型に注入した。90分後、金型を150℃に加熱し、その温度で1時間保持し、その後、金型をゆっくりと冷却した。
【0104】
実施例22のカルサイトは、十分に分散され、樹脂で完全に含浸されたパネルを提供した。同一のエポキシ樹脂/硬化組成物を使用するがカルサイト粒子を含有しない同一プロセスにより、対照パネルを調製した(比較例CE−13)。サンプルを評価するために、樹脂引張り強度手順及び複合材料圧縮強度手順を使用した。
【0105】
【表10】
【0106】
加熱の効果
混合プロセスDの変更されたものを使用して、実施例23では、配位子L−Vで表面修飾された45重量%のSOCAL 31カルサイトをエポキシ樹脂(EPON 825)中に分散させた。ミル粉砕プロセス中、分散を可能な限り冷却したまま保持するために細心の注意を払い、サンプル熱履歴を最小限に抑えるように、ミル粉砕時間を縮小した。脱ガスプロセスを室温で行った。実施例24では、実施例23の樹脂分散の一部を80℃で4時間加熱した。硬化性樹脂中35重量%のカルサイトを提供するように、両方のサンプルの濃度を調製した。次いで、両方のサンプルをDETDAで硬化し、破壊靭性手順に従って評価した。
【0107】
【表11】
【0108】
本発明の様々な改良及び変更が、本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく、当業者には明らかとなる。