(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記路面状態検出手段は、車両左右方向の加速度を検知する加速度センサの出力に基づく加速度情報から前記路面状態を検出することを特徴とする請求項2に記載の運転支援装置。
前記路面状態検出手段は、車両の車輪速を検知する車輪速センサの出力により得られる左右の車輪速差に基づき前記路面状態を検出することを特徴とする請求項2に記載の運転支援装置。
前記逸脱判定手段による判定結果、および、前記介入指示手段による介入制御の内容の少なくとも一方を、前記車両の乗員に提示する提示手段が更に設けられていることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の運転支援装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の特許文献1の装置では、車両の車輪が走行路の車線を踏んだ場合に、車両が走行路から逸脱すると判定するため、下記の問題が発生するおそれがあった。
つまり、車両の車線に対する進入角度が大きい場合には、車両の車輪が走行路の車線を踏んだ後に逸脱を回避する制御を実施しても、車両が走行路を逸脱する可能性があるという問題があった。
【0006】
また、走行路の逸脱を回避するためには、車両の進行方向を急激に変更する必要があるため、車両の乗員に大きな横Gがかかり、快適な走行を維持することが難しい場合があるという問題があった。さらに、進行方向を急激に変更することから、車両の挙動が不安定になりやすくなり安全な走行を維持することが難しい場合があるという問題があった。
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、走行路の逸脱回避を的確に支援するとともに、快適な走行および安全な走行を両立することができる運転支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の手段を提供する。
本発明の運転支援装置は、車両が走行可能な走行可能路を検出する走行路検出手段と、前記車両の状態量である車速および操舵角を検出する状態量検出手段と、前記車両の操舵を制御する操舵制御手段と、前記状態量検出手段により検出された前記車速および前記操舵角と、予め定められた前記車両の許容挙動範囲と、に基づいて、前記車両が前記許容挙動範囲内で進路変更可能な領域である走行許容領域を演算により求める許容領域演算手段と、前記走行可能路および前記走行許容領域の重なり領域における最も狭い部分が、前記車両が前記走行可能路を逸脱すると判断する所定の閾値よりも狭いか否かの判定を行う逸脱判定手段と、該逸脱判定手段によって前記最も狭い部分が前記所定の閾値よりも狭いと判定された場合に、前記車両の操舵に対して介入制御を指示する信号を出力する介入指示手段と、が設けられていることを特徴とする。
【0009】
本発明の運転支援装置によれば、車両が走行可能路の境界を示す車線を踏む前に、車両が走行可能路を逸脱するか否かの判定を行うことができる。
つまり、車両の進路変更が可能な領域である走行許容領域と走行可能路との重なり領域における最も狭い部分が、車両が走行可能路を逸脱すると判断する所定の閾値よりも狭いか否かの判定を行うことにより、車両が車線を踏むよりも早い時期に、車両が走行可能路を逸脱するか否かの判定を行うことが可能となる。また、車両が車線を踏むよりも早い時期に判定を行うため、車両が走行可能路を逸脱すると判定された後であっても、走行許容領域を飛び出さない範囲内の進路変更で、車両は走行可能路を維持することが可能となる。
【0010】
上記発明においては、前記走行可能路における路面状態を検出する路面状態検出手段が更に設けられ、前記許容領域演算手段は、前記路面状態検出手段により検出された前記路面状態に応じて、求められる前記走行許容領域を変更することが好ましい。
【0011】
このように路面状態に応じて走行許容領域を変更することにより、走行可能路の逸脱回避をより的確に支援することができる。ここで、路面状態には走行可能路における路面のコンディション状態や、路面に存在する障害物の有無状態も含まれている。
【0012】
上記発明において前記路面状態検出手段は、車両左右方向の加速度を検知する加速度センサの出力に基づく加速度情報から前記路面状態を検出することが好ましい。
このように加速度センサによって検知された車両の左右方向の加速度に基づいて路面状態検出手段が路面状態を検出することにより、走行可能路における路面のコンディション状態である路面状態を検出することができる。例えば、直進走行してる車両に左右方向の加速度が発生した場合には、車両がスリップした可能性があり走行可能路における路面の摩擦係数が低下していると推定できる。このような場合に、上述の車両の左右方向の加速度を考慮した走行許容領域に変更することで、走行可能路を維持しやすくなる。
【0013】
上記発明において前記路面状態検出手段は、車両の車輪速を検知する車輪速センサの出力により得られる左右の車輪速差に基づき前記路面状態を検出することが好ましい。
このように車輪速センサによって得られた左右の車輪速の差に基づいて、路面状態検出手段が路面状態を検出することにより、走行可能路における路面のコンディション状態である路面状態を検出することができる。例えば、車両が直進している状態で左右の車輪速に差が生じている場合には、左右の車輪の一方で発生したスリップを検知したと考えられ、走行可能路における路面の摩擦係数が低下していると推定できる。このような場合に、上述の左右の車輪速の差を考慮した走行許容領域に変更することで、走行可能路を維持しやすくなる。
【0014】
上記発明において前記路面状態検出手段は、前記路面の摩擦係数を検出することが好ましい。
このように路面の摩擦係数μに応じて走行許容領域を変更することにより、走行可能路の逸脱回避をより的確に支援することができる。例えば、路面が凍結した等の理由により摩擦係数μが低下した場合には、操舵によって車両がスリップする可能性が高くなる。このようなスリップを防止するために、摩擦係数μが低下した場合には、車両に働く横方向の加速度(以下、「横G」と表記する。)の上限を抑えるように走行許容領域を変更する。言い換えると、許容される旋回半径を大きくする変更を行う。そのため、摩擦係数μが低下した場合であっても、走行可能路の逸脱回避をより早いタイミングで実施することができ、車両にスリップを発生させることなく、走行可能路の逸脱を回避させることが可能となる。
【0015】
上記発明において前記路面状態検出手段は、車両の外部から得られる周辺情報から前記路面状態を検出することが好ましい。
このように車両の外部から得られる周辺情報に基づいて路面状態を検出することにより、車両に設けられたセンサ等が測定した情報から路面状態を検出する場合と比較して、広範囲の走行可能路の路面状態を検出することができる。その他に、車両に設けられたセンサ等の測定情報では検出が難しい路面状態を検出することができ、また、高い精度での検出が難しい路面状態を高い精度で検出することができる。ここで、周辺情報を車両に提供する外部としては、道路情報網や、他の車両や、GPSなどの人工衛星位置測定システムなどを例示することができる。
【0016】
上記発明においては、前記路面状態検出手段は、前記車両の周囲に存在する障害物を検出し、前記障害物と前記車両との相対位置を求め、前記逸脱判定手段は、前記相対位置に基づき前記障害物の周りに予め定められた範囲内に前記車両が存在すると判定した場合には、前記走行可能路における前記障害物側の境界を、前記車両側に移動させて設定することが好ましい。
【0017】
このように、走行可能路における障害物側の境界を車両側に移動させることにより、乗員が車両と障害物とが接触するとの危険を感じることを抑制できる。例えば、自車両が障害物の周りに予め定められた範囲内に存在する場合に、走行可能路における障害物側の境界を移動させないと、走行可能路の逸脱回避を行った際に車両と障害物とが接近しすぎて、乗員に危険を感じさせるおそれがある。そこで、この場合には、走行可能路における障害物側の境界を車両側に移動させ、走行可能路の逸脱回避を早めに行い、車両と障害物との間の距離を確保して乗員が危険を感じることを抑制できる。
【0018】
上記発明においては、前記許容領域演算手段における前記走行許容領域の演算に用いられるパラメータが入力される入力手段が更に設けられ、前記許容領域演算手段は、前記入力手段に入力された前記パラメータに基づいて前記走行許容領域を演算により求めることが望ましい。
【0019】
このように、車両の乗員が入力したパラメータを用いて求められた走行許容領域を使用することにより、乗員の感覚にあった走行可能路の逸脱回避の支援が可能となる。例えば、乗員が早い時期に逸脱回避の支援を望む場合には、走行許容領域の範囲を狭くするパラメータを入力する。すると、上述の走行可能路および走行許容領域の重なり領域における最も狭い部分が、車両が走行可能と判断される所定の閾値よりも狭いと判定される時期が早くなり、逸脱回避の支援が早い時期に開始される。なお、パラメータとしては、走行許容領域における左右の境界線の形状を定めるパラメータや、左右の境界線の間隔を定めるパラメータ等を例示することができる。
【0020】
上記発明において前記入力手段には、前記走行可能路における境界位置の変更指示が入力され、前記逸脱判定手段は、前記入力手段から入力された前記変更指示に基づいて前記境界位置を変更した前記走行可能路に基づいて、前記最も狭い部分が前記所定の閾値よりも狭いか否かの判定を行うことが好ましい。
【0021】
このように、車両の乗員が入力した境界位置を用いて求められた走行可能路を使用することにより、乗員の感覚にあった走行可能路の逸脱回避の支援が可能となる。例えば、乗員が早い時期に逸脱回避の支援を望む場合には、走行可能路における境界位置を車両側に移動させる変更指示を入力する。すると、上述の走行可能路および走行許容領域の重なり領域における最も狭い部分が、車両が走行可能と判断される所定の閾値よりも狭いと判定される時期が早くなり、逸脱回避の支援が早い時期に開始される。
【0022】
上記発明においては、前記逸脱判定手段による判定結果、および、前記介入指示手段による介入制御の内容の少なくとも一方を、前記車両の乗員に提示する提示手段が更に設けられていることが好ましい。
【0023】
このように、逸脱判定手段による判定結果、および、介入指示手段による介入制御の内容の少なくとも一方を車両の乗員に提示して伝達することにより、乗員が感じる不安を抑制できる。つまり、介入制御によって、車両が乗員の意図しない挙動をする場合、乗員が介入制御の内容を事前に知ることにより、当該挙動による不安を感じることを抑制できる。または、逸脱判定手段の判定結果を知ることにより、乗員が介入制御による車両の挙動の変化を予測することができるため、当該挙動による不安を感じることを抑制できる。
【0024】
上記発明において前記提示手段は、前記逸脱判定手段による判定結果、および、前記介入指示手段による介入制御の内容を、前記車両の乗員に提示し、前記乗員が前記提示手段から提示された前記介入制御の内容を実行するか否かの指示を、少なくとも入力する指示手段が更に設けられ、前記介入指示手段は、前記指示手段に入力された選択情報に基づいて、前記車両の操舵に対して介入制御を実施することが好ましい。
【0025】
このように、車両の乗員が介入制御の内容を実行するか否かを選択することにより、乗員の意思を反映させた逸脱回避の支援を行うことができる。つまり、乗員が走行可能路に沿った走行を希望する場合には、介入制御の内容を実行するとの選択を行う。その一方で、走行可能路を逸脱して他の走行可能路への移動を希望する場合には、介入制御の内容を実施しないとの選択を行う。これにより、乗員の意図と介入制御の内容とが食い違う状況の発生を抑制し、車両の快適な走行や安全な走行を実現することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の運転支援装置によれば、車両の進路変更が可能な領域である走行許容領域と走行可能路との重なり領域における最も狭い部分が、車両が走行可能路を逸脱すると判断する所定の閾値よりも狭いか否かの判定を行うことで、車両が走行可能路を逸脱するか否かの判定を行うことにより、走行路の逸脱回避を的確に支援するとともに、快適な走行および安全な走行を両立することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0028】
〔第1の実施形態〕
以下、本発明の第1の実施形態に係る運転支援装置1ついて
図1から
図5を参照しながら説明する。本実施形態の運転支援装置1は、自車の車速および自車と先行車との車間距離を調整するアダプティブ・クルーズ・コントロール(以下、「ACC」と表記する。)などの先行車の追従運転に用いられる追従制御システムの一部を構成するものであって、走行路に沿った自車両2の走行を支援するものである。
【0029】
運転支援装置1には、
図1に示すように、走行可能路41の検出に用いられるカメラ(走行可能路検出手段)11と、自車両2の状態量である操舵角の検出に用いられる操舵角エンコーダ(車両状態量検出手段)12と、自車両2の走行速度の検出に用いられる車速エンコーダ(車両状態量検出手段)13と、走行可能路41からの逸脱の有無の判定を行う演算部20と、自車両2の操舵角の制御を行う操舵制御部(操舵制御手段)31と、が主に設けられている。
【0030】
カメラ11は、
図2に示す自車両2の前方に広がる検出範囲11Aの画像を取得するものであり、取得した画像の情報は演算部20に出力されて自車両2の走行可能路41の検出に用いられる(
図3参照)。走行可能路41を判別する代表的な指標としては、車線幅や自車の横位置などをパラメータとする車線42を例示することができる。車線以外の指標としては、ガードレールや、縁石や、路面に設けられた突起物や、路肩に存在する壁などを挙げることができる。演算部20において行われる画像情報に基づく走行可能路の検出処理としては、公知の画像処理の技術を用いることができ、特に限定するものではない。
【0031】
ここで、走行可能路41としては、自車両2の走行用の路面領域であって、車線42などによって区切られた走行レーンや、追い越し走行レーンなどを挙げることができる。さらに、走行レーンや、追い越し走行レーンのうち、自車両2の走行を阻害する障害物を除いた走行可能な領域のみも例示することができる。
【0032】
なお、カメラ11により撮像された画像を用いて走行可能路41を検出してもよいし、カメラ11の代わりに、検出範囲11Aに存在する障害物の相対位置を検出するレーザレーダを用いて走行可能路を検出してもよい。
【0033】
操舵角エンコーダ12は、
図1に示すように、自車両2の操舵角を検出するセンサであり、操舵角に応じた信号を演算部20に出力するものである。車速エンコーダ13は、自車両2の走行速度を検出するセンサであり、走行速度に応じた信号を演算部20に出力するものである。操舵角エンコーダ12や、車速エンコーダ13としては公知のセンサを用いることができ、特に限定するものではない。
【0034】
なお、車速エンコーダ13から出力された信号を用いて自車両2の走行速度を検出してもよいし、車速エンコーダ13の代わりに、自車両2の位置を測位するGPS装置などの衛星測位装置を用いて自車両2の走行速度を求めてもよい。
【0035】
演算部20には、許容領域演算手段21と、逸脱判定手段22と、介入指示手段23と、が主に設けられている。
演算部20は、CPU(中央演算処理ユニット)、ROM、RAM、入出力インタフェース等を有するマイクロコンピュータである。ROM等の記憶装置に記憶されている制御プログラムは、CPUを上述の許容領域演算手段21や、逸脱判定手段22や、介入指示手段23として機能させるものである。
【0036】
許容領域演算手段21は、自車両2が進路変更可能な領域である走行許容領域51を演算処理によって求めるものである(
図3参照)。走行許容領域51は、予め定められた許容挙動範囲内の挙動で自車両2が進路変更可能な範囲である。許容挙動範囲としては、自車両2に働く横方向の加速度である横Gの許容範囲を挙げることができる。許容領域演算手段21による走行許容領域51を求める演算処理については後述する。
【0037】
逸脱判定手段22は、自車両2が走行可能路41から逸脱するか否か、言い換えると、安全に、乗員に不快感を与えることなく走行可能路41からの逸脱回避をできるか否かの判定処理を行うものである。逸脱判定手段22における判定処理は、走行可能路41および走行許容領域51の重なり領域を求め、重なり領域における最も狭い部分の幅と、自車両2が走行可能路41を逸脱すると判断できる所定の閾値dとを比較することにより行われる(
図3参照)。なお、上述の所定の閾値dは、少なくとも自車両2の横幅よりも広いものであり、好ましくは、走行可能路41と隣接する障害物と自車両2との接触を防ぐ空間の幅を、自車両2の横幅に加えたものよりも広いものである。
【0038】
介入指示手段23は、自車両2が走行可能路41から逸脱すると判定された場合には、言い換えると、上述の重なり領域における最も狭い部分が、所定の閾値dよりも狭いと判定された場合には、自車両2が走行可能路41から逸脱することを回避する介入制御を実施する制御信号を生成するものである。
【0039】
操舵制御部31には、介入指示手段23により生成された制御信号に基づいて、自車両2の操舵制御を実施するものである。なお、操舵制御部31としては自車両2の操舵系を駆動制御する公知の構成を用いることができ、特にその構成などを限定するものではない。
【0040】
次に、上記の構成からなる運転支援装置1による走行可能路41の逸脱回避について、
図4のフローチャートを参照しながら説明する。
自車両2が先行車を追従する前車追従制御が開始されると、演算部20は、カメラ11によって取得された検出範囲11Aの画像を解析処理することにより、自車両2が走行している走行可能路41を検出する処理を実行する(S10)。
【0041】
次いで演算部20は、自車両2の状態量である操舵角や自車両2の走行速度を検出する処理を実行する(S11)。具体的には、操舵角エンコーダ12から出力される信号、および、車速エンコーダ13から出力される信号を取得する処理を実行する。
【0042】
その後、演算部20の許容領域演算手段21は、走行許容領域51を算出する演算処理を実行する(S12)。具体的には、許容領域演算手段21は、操舵角エンコーダ12の信号に基づいて自車両2の操舵角を算出し、車速エンコーダ13の信号に基づいて自車両2の走行速度を算出する処理を行う。そして、算出された操舵角、自車両2の走行速度、および、両者から求められるヨーレートを用いて、自車両2の走行軌跡を推定する演算処理を行う。許容領域演算手段21は、走行軌跡を推定すると、走行軌跡の周囲に広がる走行許容領域51を、予め定められた許容挙動範囲を用いて演算処理によって求める。本実施形態では、自車両2に働く横方向の加速度である横Gの許容範囲を予め定められた許容挙動範囲として用いる例に適用して説明する。
【0043】
走行許容領域51が求められると、演算部20の逸脱判定手段22は、自車両2が走行可能路41である車線を逸脱する可能性を求める演算処理を行う(S13)。逸脱する可能性は、走行可能路41および走行許容領域51の重なり領域を求め、重なり領域における最も狭い部分の幅と、自車両2が走行可能路41を逸脱すると判断できる所定の閾値dとを比較することにより求められる。つまり、上述の最も狭い部分の幅が狭くなり、所定の閾値dに近づくに伴い、自車両2が走行可能路41を逸脱する可能性が高くなる。
【0044】
逸脱判定手段22は、S13の演算結果に基づいて、自車両2が走行可能路41を逸脱する可能性が有るか無いかの判定処理を行う(S14)。例えば、上述の最も狭い部分の幅が所定の閾値dよりも狭い場合には、自車両2が走行可能路41を逸脱する可能性があると判定される。逸脱判定手段22において、自車両2が走行可能路41を逸脱する可能性が無いと判定された場合(NOの場合)には、演算部20は、S10に戻って上述の処理を繰り返し行う。
【0045】
S14の判定処理において、自車両2が走行可能路41を逸脱する可能性が有ると判定された場合(YESの場合)には、逸脱判定手段22から判定結果を示す信号が介入指示手段23へ出力され、介入指示手段23から操舵制御部31へ、操舵制御を行う制御信号が出力される(S15)。
【0046】
操舵制御部31は、入力された制御信号に基づいて、
図3に示すように走行可能路41の逸脱を回避する操舵制御を行う。操舵制御部31への制御信号の出力処理が行われた後、演算部20は、S10に戻って上述の処理を繰り返し行う。
【0047】
上記の構成の運転支援装置1によれば、自車両2が走行可能路41の境界を示す車線42を踏む前に(
図5参照)、自車両2が走行可能路41を逸脱するか否かの判定を行うことができるため、走行路の逸脱回避を的確に支援することができる。
【0048】
つまり、自車両2の進路変更が可能な領域である走行許容領域51と走行可能路41との重なり領域における最も狭い部分が、自車両2が走行可能路41を逸脱すると判断する所定の閾値dよりも狭いか否かの判定を行うことにより、自車両2が車線42を踏むよりも早い時期に、自車両2が走行可能路41を逸脱するか否かの判定を行うことが可能となる。また、自車両2が車線42を踏むよりも早い時期に判定を行うため、自車両2が走行可能路41を逸脱すると判定された後であっても、走行許容領域51を飛び出さない範囲内の進路変更で、走行可能路41を維持することが可能となる。
【0049】
図5のA地点で自車両2が車線42を踏んだ後に走行可能路41を維持する制御を行っても、自車両2の一部Bが走行可能路41から飛び出してしまう。また、一部Bを走行可能路41から飛び出させないように急激な制御を行うと、自車両2の乗員に過剰な横Gが加わり不快感を与えると共に、自車両2がスリップするなど、安全な運転を維持できなくなる。これに対して本実施形態の運転支援装置1は、走行可能路41を維持するために、急激な操舵を行う必要がないため、快適な走行および安全な走行を両立することができる。
【0050】
〔第2の実施形態〕
次に、本発明の第2の実施形態について
図6から
図8を参照しながら説明する。
本実施形態の運転支援装置の基本構成は、第1の実施形態と同様であるが、第1の実施形態とは、路面の摩擦係数μを考慮した制御を行う点が異なっている。よって、本実施形態においては、
図6から
図8を用いて第2の実施形態に特有の部分について説明し、第1の実施形態と共通する部分の説明を省略する。
【0051】
運転支援装置101には、
図6に示すように、走行可能路41の検出に用いられるカメラ11と、自車両2の状態量である操舵角の検出に用いられる操舵角エンコーダ12と、自車両2の走行速度の検出に用いられる車速エンコーダ13と、走行可能路41の路面摩擦係数μを取得する路車間通信部(路面状況検出手段)114と、走行可能路41からの逸脱の有無の判定を行う演算部120と、自車両2の操舵角の制御を行う操舵制御部31と、が主に設けられている。
【0052】
路車間通信部114は、走行可能路41を含む道路の管理者などから提供される情報を通信により取得するものであり、本実施形態では、特に走行可能路41の路面摩擦係数μの情報を取得するものである。路車間通信部114により取得された路面摩擦係数μの情報は、演算部120の許容領域演算手段121に出力されている。
【0053】
なお、路車間通信部114により取得される路面摩擦係数μの情報は、道路の管理者などが、所定の路面において測定した路面摩擦係数μを例示することができる。
演算部120には、許容領域演算手段121と、逸脱判定手段22と、介入指示手段23と、が主に設けられている。
【0054】
許容領域演算手段121は、第1の実施形態の許容領域演算手段21と同様に、走行許容領域51を演算処理によって求めるものであり、さらに、路面摩擦係数μにも基づいて走行許容領域51を求める点が異なっている。許容領域演算手段121による走行許容領域51を求める演算処理については後述する。
【0055】
次に、上記の構成からなる運転支援装置101による走行可能路41の逸脱回避について、
図7のフローチャートを参照しながら説明する。
なお、自車両2が先行車を追従する前車追従制御が開始されてから、自車両2の状態量である操舵角や自車両2の走行速度を検出する処理(S11)までは、第1の実施形態における処理と同様であるため、その説明を省略する。
【0056】
操舵角エンコーダ12および車速エンコーダ13からの信号を取得すると、演算部120の許容領域演算手段121は、路面状態である路面摩擦係数μを取得する処理を実行する(S112)。具体的には、外部から走行可能路41の路面摩擦係数μの情報を取得する信号を路車間通信部114に出力する。
【0057】
路面摩擦係数μの情報を取得すると、許容領域演算手段121は、走行許容領域51を算出する演算処理を実行する(S113)。許容領域演算手段121における走行許容領域51を算出する演算処理は、基本的には、第1の実施形態の許容領域演算手段21における演算処理と同様である。
【0058】
異なる点は、走行許容領域51を求める際に用いられる予め定められた許容挙動範囲が、路面摩擦係数μによって変動する点である。具体的には、路面摩擦係数μの値が大きい場合には、予め定められた許容挙動範囲である横Gの許容範囲が広くなり、路面摩擦係数μの値が小さい場合には、横Gの許容範囲が狭くなる。
【0059】
その結果、路面摩擦係数μの値が大きい場合には、走行許容領域51の境界である走行許容限界線52の曲率が
図8(a)に示すように大きくなり、走行許容領域51が広くなる。その一方で、路面摩擦係数μの値が小さい場合には、走行許容限界線52の曲率が
図8(b)に示すように小さくなり、走行許容領域51が狭くなる。
【0060】
走行許容領域51が求められた以降の演算部120における処理、つまりS14およびS15の処理は、第1の実施形態における処理と同様であるため、その説明を省略する。
上記の構成のように路面摩擦係数μに応じて走行許容領域51を変更することにより、走行可能路41の逸脱回避をより的確に支援することができる。例えば、路面が凍結した等の理由により路面摩擦係数μが低下した場合には、操舵によって自車両2がスリップする可能性が高くなる。このようなスリップを防止するために、路面摩擦係数μが低下した場合には、横Gの上限を抑えるように走行許容領域51を変更する。言い換えると、走行許容限界線52の曲率を大きくする変更を行う。
【0061】
そのため、路面摩擦係数μが低下した場合であっても、
図8(b)に示すように、走行可能路41の逸脱回避をより早いタイミングで実施することができ、自車両2にスリップを発生させることなく、走行可能路41の逸脱を回避させることが可能となる。
【0062】
また、
図8(a)に示すように路面摩擦係数μが大きな場合には、走行可能路41の逸脱回避をより遅いタイミングで実施しても、自車両2にスリップを発生させることなく、走行可能路41の逸脱を回避させることが可能となる。
【0063】
なお、上述の実施形態のように走行可能路41の路面摩擦係数μを路車間通信部114によって取得してもよいし、車車間通信部を介して他の車両から取得してもよい。さらに、自車両2における車輪速を検知する車輪速センサの出力に基づいて左右の車輪速差に基づいて、車輪のスリップ変化率を算出することにより、路面摩擦係数μを常に推定してもよいし、車両の左右方向の加速度を加速度センサにより検知し、検知された左右方向の加速度から路面摩擦係数μを常に推定してもよく、路面摩擦係数μの取得方法を特に限定するものではない。
【0064】
〔第3の実施形態〕
次に、本発明の第3の実施形態について
図9から
図11を参照しながら説明する。
本実施形態の運転支援装置の基本構成は、第1の実施形態と同様であるが、第1の実施形態とは、自車両の周囲に存在する障害物を考慮した制御を行う点が異なっている。よって、本実施形態においては、
図9から
図11を用いて第3の実施形態に特有の部分について説明し、第1の実施形態と共通する部分の説明を省略する。
【0065】
運転支援装置201には、
図9に示すように、走行可能路241の検出に用いられるカメラ11と、自車両2の状態量である操舵角の検出に用いられる操舵角エンコーダ12と、自車両2の走行速度の検出に用いられる車速エンコーダ13と、自車両2の周囲に存在する他の車両などの障害物を検出するレーザレーダ(路面状態検出手段)214と、走行可能路241からの逸脱の有無の判定を行う演算部220と、自車両2の操舵角の制御を行う操舵制御部31と、が主に設けられている。
【0066】
レーザレーダ214は、自車両2の周囲に存在する突起物や壁などの車線分離帯や、隣接車線を走行する他の車両などの障害物の位置を検出するものである。レーザレーダ214により検出された障害物の位置情報は、演算部220の相対位置算出手段224に出力されている。なお、レーザレーダ214としては、公知の構成のものを用いることができる。
【0067】
演算部220には、許容領域演算手段21と、逸脱判定手段222と、介入指示手段23と、相対位置算出手段224と、が主に設けられている。
相対位置算出手段224は、レーザレーダ214から出力された障害物の位置情報に基づいて、自車両2と障害物との間の相対的な位置関係を求める演算処理を行うものである。なお、相対位置算出手段224で行われる演算処理としては、公知の処理を用いることができる。
【0068】
逸脱判定手段222は、第1の実施形態の逸脱判定手段22と同様に、自車両2が走行可能路41から逸脱するか否かの判定処理を行うものであり、さらに、レーザレーダ214により検出された障害物との相対的な位置関係を考慮して上述の判定処理を行う点が異なっている。逸脱判定手段222による自車両2が走行可能路41から逸脱するか否かの判定処理の詳細については後述する。
【0069】
次に、上記の構成からなる運転支援装置201による走行可能路41の逸脱回避について、
図10のフローチャートを参照しながら説明する。
なお、自車両2が先行車を追従する前車追従制御が開始されてから、自車両2の状態量である操舵角や自車両2の走行速度を検出する処理(S11)までは、第1の実施形態における処理と同様であるため、その説明を省略する。
【0070】
操舵角エンコーダ12および車速エンコーダ13からの信号を取得すると、演算部220の相対位置算出手段224は、自車両2の周囲に存在する障害物を検出する処理を実行する(S212)。具体的には、障害物の位置を測定させる信号をレーザレーダ214に出力する。
【0071】
障害物の位置が測定されると、相対位置算出手段224は自車両2に対する障害物の相対的な位置関係を求める演算処理を行う(S213)。さらに相対位置算出手段224は、相対的な位置関係が求められた障害物、例えば隣接する追い越しレーンを走行する他の車両202の周囲に、
図11に示すように広がる規定範囲203内に自車両2が存在するか否かの判定処理を行う(S214)。
【0072】
S214において規定範囲203内に自車両2が存在しないと判定された場合(NOの場合)には、第1の実施形態と同様に、以降のS12からS15までの演算処理が行われる。
【0073】
S214において規定範囲203内に自車両2が存在すると判定された場合(YESの場合)には、演算部220の逸脱判定手段222は、他の車両202との相対位置に応じた走行可能路241を求める演算処理を行う(S215)。
【0074】
ここで求められる走行可能路241は、
図11に示すように、車線42のみを境界とする第1の実施形態の走行可能路41とは、車線42および境界線242を境界としている点が異なっている。境界線242は、自車両2と他の車両202との間に存在する車線42と平行に延びる線であり、当該車線42よりも自車両2に近づいた位置、言い換えると内側に設定される線である。
【0075】
その後逸脱判定手段222は、自車両2が走行可能路241を逸脱する可能性、より具体的には境界線242を逸脱する可能性を求める演算処理を行う(S216)。逸脱判定手段222において行われる演算処理の内容は、第1の実施形態の逸脱判定手段22において行われる演算処理の内容と比較して、処理に用いられる走行可能路41が走行可能路241に代わっている点を除き同じであるため、その説明を省略する。
【0076】
逸脱判定手段222は、S216の演算結果に基づいて、自車両2が走行可能路241を逸脱する可能性が有るか無いかの判定処理を行う(S217)。逸脱判定手段222において、自車両2が走行可能路241を逸脱する可能性が無いと判定された場合(NOの場合)には、演算部220は、S10に戻って上述の処理を繰り返し行う。
【0077】
S217の判定処理において、自車両2が走行可能路241を逸脱する可能性が有ると判定された場合(YESの場合)には、逸脱判定手段222から判定結果を示す信号が介入指示手段23へ出力され、介入指示手段23から操舵制御部31へ、操舵制御を行う制御信号が出力される(S15)。操舵制御部31への制御信号の出力処理が行われた後、演算部220は、S10に戻って上述の処理を繰り返し行う。
【0078】
上記の構成のように、走行可能路241における他の車両202側の境界を車両側に移動させること、つまり境界線242を設定することにより、乗員が自車両2と他の車両202とが接触するとの危険を感じることを抑制できる。
【0079】
例えば、自車両2が他の車両202の周りに設定された規定範囲203内に存在する場合に、走行可能路41における他の車両202側の境界として車線42を用い続けると、走行可能路41の逸脱回避を行った際に自車両2と他の車両202とが接近しすぎて、乗員に危険を感じさせるおそれがある。そこで、この場合には、走行可能路41における他の車両202側の境界を自車両2側に移動させ、走行可能路241の逸脱回避を早めに行い、自車両2と他の車両202との間の距離を確保して乗員が危険を感じることを抑制できる。
【0080】
〔第4の実施形態〕
次に、本発明の第4の実施形態について
図12および
図13を参照して説明する。
本実施形態の運転支援装置の基本構成は、第1の実施形態と同様であるが、第1の実施形態とは、走行許容領域の求め方が異なっている。よって、本実施形態においては、
図12および
図13を用いて第4の実施形態に特有の部分について説明し、第1の実施形態と共通する部分の説明を省略する。
【0081】
運転支援装置301には、
図12に示すように、走行可能路41の検出に用いられるカメラ11と、自車両2の状態量である操舵角の検出に用いられる操舵角エンコーダ12と、自車両2の走行速度の検出に用いられる車速エンコーダ13と、走行許容領域51の演算に用いられるパラメータのゲインが入力されるゲイン入力部(入力手段)314と、走行可能路41からの逸脱の有無の判定を行う演算部320と、自車両2の操舵角の制御を行う操舵制御部31と、が主に設けられている。
【0082】
ゲイン入力部314は、自車両2の乗員によって走行許容領域51の演算に用いられるパラメータのゲインが入力されるものである。本実施形態では、ゲイン入力部314を、走行許容領域51における走行許容限界線52の形状を定める曲率などのパラメータのゲインを入力するダイヤルゲージに適用して説明する。
【0083】
演算部320には、許容領域演算手段321と、逸脱判定手段22と、介入指示手段23と、が主に設けられている。
許容領域演算手段321は、第1の実施形態の許容領域演算手段21と同様に、走行許容領域51を演算処理によって求めるものであり、さらに、ゲイン入力部314に入力されたパラメータのゲインにも基づいて走行許容領域51を求める点が異なっている。許容領域演算手段321による走行許容領域51を求める演算処理については後述する。
【0084】
次に、上記の構成からなる運転支援装置301による走行可能路41の逸脱回避について、
図13のフローチャートを参照しながら説明する。
なお、自車両2が先行車を追従する前車追従制御が開始されてから、自車両2の状態量である操舵角や自車両2の走行速度を検出する処理(S11)までは、第1の実施形態における処理と同様であるため、その説明を省略する。
【0085】
操舵角エンコーダ12および車速エンコーダ13からの信号を取得すると、演算部320の許容領域演算手段321は、ゲイン入力部314に入力されたゲインを取得する処理を行う(S312)。そして許容領域演算手段321は、取得したゲインに応じた走行許容領域51を求める演算処理を行う(S313)。
【0086】
具体的には、取得したゲインに基づいて走行許容限界線52の形状が算出され、算出された走行許容限界線52に基づいて走行許容領域51を求める演算処理が行われる。走行許容領域51が求められてからの演算部320における処理、つまりS14およびS15の処理は、第1の実施形態における処理と同様であるため、その説明を省略する。
【0087】
上記の構成のように、自車両2の乗員が入力したパラメータを用いて求められた走行許容領域51を使用することにより、乗員の感覚にあった走行可能路41の逸脱回避の支援を行うことができる。例えば、乗員が早い時期に逸脱回避の支援を望む場合には、走行許容領域51の範囲を狭くするパラメータをゲイン入力部314に入力する。すると、上述の走行可能路41および走行許容領域51の重なり領域における最も狭い部分が、自車両2が走行可能と判断される所定の閾値dよりも狭いと判定される時期が早くなり、逸脱回避の支援が早い時期に開始することができる。
【0088】
〔第5の実施形態〕
次に、本発明の第5の実施形態について
図14および
図15を参照して説明する。
本実施形態の運転支援装置の基本構成は、第1の実施形態と同様であるが、第1の実施形態とは、走行可能路の求め方が異なっている。よって、本実施形態においては、
図14および
図15を用いて第5の実施形態に特有の部分について説明し、第1の実施形態と共通する部分の説明を省略する。
【0089】
運転支援装置401には、
図14に示すように、走行可能路41の検出に用いられるカメラ11と、自車両2の状態量である操舵角の検出に用いられる操舵角エンコーダ12と、自車両2の走行速度の検出に用いられる車速エンコーダ13と、走行可能路241の演算に用いられる境界線242の位置の変更指示が入力されるゲイン入力部(入力手段)414と、走行可能路241からの逸脱の有無の判定を行う演算部420と、自車両2の操舵角の制御を行う操舵制御部31と、が主に設けられている。
【0090】
ゲイン入力部414は、自車両2の乗員によって走行可能路241の演算に用いられる境界線242の位置の変更指示が入力されるものである(
図11参照)。本実施形態では、ゲイン入力部414が、境界線242における車線42の位置からの移動量、および、移動方向などのゲインを入力するダイヤルゲージである場合に適用して説明する。
【0091】
演算部420には、許容領域演算手段21と、逸脱判定手段422と、介入指示手段23と、が主に設けられている。
逸脱判定手段422は、第1の実施形態の逸脱判定手段22と同様に、自車両2が走行可能路41から逸脱するか否かの判定処理を行うものであり、さらに、ゲイン入力部414により入力されたゲインに基づいて走行可能路241を求める演算処理を行い、求められた走行可能路241を用いて上述の判定処理を行う点が異なっている。逸脱判定手段422による自車両2が走行可能路41から逸脱するか否かの判定処理の詳細については後述する。
【0092】
次に、上記の構成からなる運転支援装置401による走行可能路241の逸脱回避について、
図15のフローチャートを参照しながら説明する。
なお、自車両2が先行車を追従する前車追従制御が開始されてから、自車両2の状態量である操舵角や自車両2の走行速度を検出する処理(S11)までは、第1の実施形態における処理と同様であるため、その説明を省略する。
【0093】
操舵角エンコーダ12および車速エンコーダ13からの信号を取得すると、演算部420の逸脱判定手段422は、ゲイン入力部414に入力されたゲインを取得する処理を行う(S412)。そして逸脱判定手段422は、取得したゲインに応じた走行可能路241を求める演算処理を行う(S413)。
【0094】
具体的には、取得したゲインである境界線242の移動量や移動方向の情報に基づいて、境界線242の位置が算出され、算出された境界線242および車線42に基づいて走行可能路241を求める演算処理が行われる。
【0095】
逸脱判定手段422は、自車両2が走行可能路241を逸脱する可能性、より具体的には境界線242を逸脱する可能性を求める演算処理を行い、当該演算の結果に基づいて、自車両2が走行可能路241を逸脱する可能性が有るか無いかの判定処理を行う(S414)。逸脱判定手段422において行われる演算処理の内容は、第1の実施形態の逸脱判定手段22において行われる演算処理の内容と比較して、処理に用いられる走行可能路41が走行可能路241に代わっている点を除き同じであるため、その説明を省略する。
【0096】
S414の判定処理において、自車両2が走行可能路241を逸脱する可能性が無いと判定された場合(NOの場合)には、演算部420は、S10に戻って上述の処理を繰り返し行う。
【0097】
S414の判定処理において、自車両2が走行可能路241を逸脱する可能性が有ると判定された場合(YESの場合)には、逸脱判定手段422から判定結果を示す信号が介入指示手段23へ出力され、介入指示手段23から操舵制御部31へ、操舵制御を行う制御信号が出力される(S15)。操舵制御部31への制御信号の出力処理が行われた後、演算部420は、S10に戻って上述の処理を繰り返し行う。
【0098】
上記の構成のように、自車両2の乗員が入力した境界線242の位置を用いて求められた走行可能路241を使用することにより、乗員の感覚にあった走行可能路241の逸脱回避の支援が可能となる。例えば、乗員が早い時期に逸脱回避の支援を望む場合には、境界線242の位置を自車両2側に移動させる変更指示をゲイン入力部414に入力する。すると、上述の走行可能路241および走行許容領域51の重なり領域における最も狭い部分が、自車両2が走行可能と判断される所定の閾値dよりも狭いと判定される時期が早くなり、逸脱回避の支援を早い時期に開始することができる。
【0099】
〔第6の実施形態〕
次に、本発明の第6の実施形態について
図16および
図17を参照しながら説明する。
本実施形態の運転支援装置の基本構成は、第1の実施形態と同様であるが、第1の実施形態とは、状況提示部を備えている点が異なっている。よって、本実施形態においては、
図16および
図17を用いて第6の実施形態に特有の部分について説明し、第1の実施形態と共通する部分の説明を省略する。
【0100】
運転支援装置501には、
図16に示すように、走行可能路41の検出に用いられるカメラ11と、自車両2の状態量である操舵角の検出に用いられる操舵角エンコーダ12と、自車両2の走行速度の検出に用いられる車速エンコーダ13と、走行可能路41からの逸脱の有無の判定を行う演算部520と、自車両2の操舵角の制御を行う操舵制御部31と、運転支援装置501による制御状況を提示する状況提示部(提示部)532と、が主に設けられている。
【0101】
状況提示部532は、演算部520の逸脱判定手段22による判定の結果や、介入指示手段23による介入制御の内容を、自車両2の乗員に対して提示するものである。本実施形態では、乗員に対して音声により情報を提示するスピーカが状況提示部532である例に適用して説明する。なお、状況提示部532としては、スピーカに限定されるものではなく、乗員に対して情報が提示できるものであればよい。例えば、ディスプレイなどの表示部や、LED(半導体発光素子)などの発光体や、モータなどを利用して振動を発生させる振動体などを状況提示部532として用いてもよい。
【0102】
次に、上記の構成からなる運転支援装置501による走行可能路41の逸脱回避について、
図17のフローチャートを参照しながら説明する。
なお、自車両2が先行車を追従する前車追従制御が開始されてから、自車両2が走行可能路41を逸脱する可能性が有るか無いかの判定処理(S14)までは、第1の実施形態における処理と同様であるため、その説明を省略する。
【0103】
S14の判定処理において、自車両2が走行可能路41を逸脱する可能性が有ると判定された場合(YESの場合)には、逸脱判定手段22から判定結果を示す信号が状況提示部532へ出力される。状況提示部532は、状況提示部532へ逸脱判定手段22による判定の結果や、介入制御の内容を提示する制御信号を出力する(S514)。
【0104】
状況提示部532は、入力された制御信号に基づいて、逸脱判定手段22による判定の結果や、介入制御の内容を乗員に提示する音声を出力する。例えば、「ポン、車線逸脱する可能性があります。自動操舵します。」という音声を出力する制御が行われる。さらに、運転支援装置501による逸脱回避支援の制御が終了した際に、「ポンポン、完了しました。」という音声を出力する制御が行われてもよい。
【0105】
その後、状況提示部532は、操舵制御部31へ操舵制御を行う制御信号を出力する処理を行う(S15)。操舵制御部31への制御信号の出力処理が行われた後、演算部420は、S10に戻って上述の処理を繰り返し行う。
【0106】
また、S14の判定処理において、自車両2が走行可能路41を逸脱する可能性が無いと判定された場合(NOの場合)には、演算部520は、S10に戻って上述の処理を繰り返し行う。
【0107】
上記の構成のように、逸脱判定手段22による判定結果、および、状況提示部532による介入制御の内容を自車両2の乗員に提示して伝達することにより、乗員が感じる不安を抑制することができる。つまり、運転支援装置501による介入制御によって、自車両2が乗員の意図しない挙動をする場合、乗員が介入制御の内容を事前に知ることにより、当該挙動による不安を感じることを抑制できる。または、逸脱判定手段22の判定結果を知ることにより、乗員が介入制御による自車両2の挙動の変化を予測することができるため、当該挙動による不安を感じることを抑制できる。
【0108】
〔第7の実施形態〕
次に、本発明の第7の実施形態について
図18および
図19を参照しながら説明する。
本実施形態の運転支援装置の基本構成は、第6の実施形態と同様であるが、第6の実施形態とは、車両の乗員の意思を反映した制御を行う点が異なっている。よって、本実施形態においては、
図18および
図19を用いて第7の実施形態に特有の部分について説明し、第6の実施形態と共通する部分の説明を省略する。
【0109】
運転支援装置601には、
図18に示すように、走行可能路41の検出に用いられるカメラ11と、自車両2の状態量である操舵角の検出に用いられる操舵角エンコーダ12と、自車両2の走行速度の検出に用いられる車速エンコーダ13と、乗員からの指示が入力される指示部614と、走行可能路41からの逸脱の有無の判定を行う演算部620と、自車両2の操舵角の制御を行う操舵制御部31と、運転支援装置601による制御状況を提示する状況提示部532と、が主に設けられている。
【0110】
指示部614は、状況提示部532により提示された情報を見た自車両2の乗員が、介入指示手段623による介入制御の内容を実施するか否かなどの指示を入力するものである。指示部614に入力された指示の情報は、演算部620の介入指示手段623へ出力されている。なお、指示部614としてはスイッチ等の公知の入力手段を用いることができる。また、指示部614および状況提示部532が別々に設けられていてもよいし、タッチパネルのように表示装置と位置入力装置とを組み合わせた電子部品を、指示部614および状況提示部532として一体に設けてもよい。
【0111】
次に、上記の構成からなる運転支援装置601による走行可能路41の逸脱回避について、
図19のフローチャートを参照しながら説明する。
なお、自車両2が先行車を追従する前車追従制御が開始されてから、状況提示部532から、逸脱判定手段22による判定の結果や、介入制御の内容を乗員に提示する処理(S514)までは、第6の実施形態における処理と同様であるため、その説明を省略する。
【0112】
乗員は、状況提示部532によって、自車両2が車線を逸脱する可能性があるとの判定結果、および、自動操舵による車線逸脱の回避制御の内容を知らされる。この情報提供に対して、乗員は、自動操舵による車線逸脱の回避制御を実施するか否かを選択する指示や、自動操舵による自車両2の走行軌跡をオフセットさせる指示などを指示部614に入力する(S614)。
【0113】
介入指示手段623は、指示部614から入力された選択の指示に基づいて、操舵制御部31へ操舵制御を行う制御信号を出力する処理を行う(S15)。操舵制御部31への制御信号の出力処理が行われた後、演算部620は、S10に戻って上述の処理を繰り返し行う。
【0114】
上記の構成のように、自車両2の乗員が介入制御の内容を実行するか否かを選択することにより、乗員の意思を反映させた逸脱回避の支援を行うことができる。つまり、乗員が走行可能路41に沿った走行を希望する場合には、介入制御の内容を実行するとの選択を行う。その一方で、走行可能路41を逸脱して他の走行可能路への移動を希望する場合には、介入制御の内容を実施しないとの選択を行う。これにより、乗員の意図と介入制御の内容とが食い違う状況の発生を抑制し、車両の快適な走行や安全な走行を実現することができる。