特許第5855985号(P5855985)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5855985
(24)【登録日】2015年12月18日
(45)【発行日】2016年2月9日
(54)【発明の名称】自動電圧調整装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/18 20060101AFI20160120BHJP
【FI】
   H02J3/18 128
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-56527(P2012-56527)
(22)【出願日】2012年3月13日
(65)【公開番号】特開2013-192355(P2013-192355A)
(43)【公開日】2013年9月26日
【審査請求日】2014年10月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125933
【弁理士】
【氏名又は名称】野上 晃
(72)【発明者】
【氏名】山口 孝之
(72)【発明者】
【氏名】兵頭 潤
【審査官】 杉田 恵一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平2−226314(JP,A)
【文献】 特開平11−89090(JP,A)
【文献】 特開2001−78360(JP,A)
【文献】 特開2009−177868(JP,A)
【文献】 実開昭57−34143(JP,U)
【文献】 実開昭57−63434(JP,U)
【文献】 実開昭59−161349(JP,U)
【文献】 米国特許第6008548(US,A)
【文献】 池本欽哉,福田陽二,力率管理へのアプローチ コンデンサ容量と開閉制御の実際,電気と管理,日本,株式会社電気書院,1981年 9月,Vol.22 No.9,p.96-103
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05F 1/70
H02J 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる複数系統の配電線をそれぞれ接続端子を介して同相同士接続可能な接続線と、隣接する接続端子間において当該接続線に直列に設けられた(N+1)基(Nは3以上10以下の整数。以下同じ。)の開閉器と、前記各配電線に並列接続されるように隣り合う前記開閉器の間に各1基設けられた合計N基の無効電力調整器と、前記複数系統のそれぞれの配電線の電圧を計測する電圧計測手段と、これらの電圧計測手段の計測結果から求めた電圧変動の大きさに応じて前記開閉器のそれぞれの開閉動作を制御する制御手段とを備えてなることを特徴とする自動電圧調整装置。
【請求項2】
前記無効電力調整器は、電力用コンデンサまたは分路リアクトルを備えるものである請求項に記載の自動電圧調整装置。
【請求項3】
前記各無効電力調整器は、それぞれ同等の定格容量を有するものである請求項1又は2に記載の自動電圧調整装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記複数系統の配電線について電圧調整の優先度が設定された上で、前記開閉動作の制御を行うものである請求項1〜のいずれか1項に記載の自動電圧調整装置。
【請求項5】
前記制御手段は、双方向の通信機能を備えてなる請求項1〜のいずれか1項に記載の自動電圧調整装置。
【請求項6】
前記接続線は、前記各接続端子間にて樹枝状又はループ状に構成されてなる請求項1〜のいずれか1項に記載の自動電圧調整装置。
【請求項7】
前記各開閉器および前記各無効電力調整器は、それぞれユニットで構成されてなる請求項1〜のいずれか1項に記載の自動電圧調整装置。
【請求項8】
前記開閉器および前記無効電力調整器は、これらが1対1で接続された少なくとも1つのユニットで構成されてなる請求項1〜のいずれか1項に記載の自動電圧調整装置。
【請求項9】
前記開閉器および前記無効電力調整器は少なくとも1つの筐体に収容されてなる請求項1〜のいずれか1項に記載の自動電圧調整装置。
【請求項10】
3系統以上の各系統の配電線を接続可能な接続端子を備え、前記配電線のうちの少なくとも1系統は前記接続端子に開閉器を介して接続するようにした請求項1〜9のいずれか1項に記載の自動電圧調整装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異なる2系統の配電線の電圧調整が可能であり、スマートグリッドにも対応可能な自動電圧調整器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、需要家における電気設備の大型化によりその周期的な負荷変動(電圧低下)が需要家構内および電力会社の配電系統に影響し、また力率改善用進相コンデンサの普及により需要家構内および電力会社の配電系統においてフェランチ現象が発生し、法定の適正電圧の維持・管理に支障を来す事態が生じている。そのため、高圧配電線の電圧変動に応じて複数の電力用コンデンサや分路リアクトルを段階的に開閉するように構成されたSSC(自動電圧調整用並列コンデンサ装置)やSSR(自動電圧調整用分路リアクトル装置)が提案され(例えば特許文献1及び2参照)、配電系統に設置されており、これにより高圧配電線の電圧安定化が図られている。
【0003】
図6は、従来のSSCの一例を説明するための図であり、(a)は外形図、(b)はu線についての内部結線図を示している(なお、v線およびw線の内部結線については、u線のそれと同様であるため、ここでは省略している)。この図に示すように、SSC35は、配電柱40及び支柱41の間に架設された架台42の上に設置され、高圧配電線M1の各相の分岐点31〜33よりそれぞれ分岐されたu線,v線,w線が開閉器SW1を介してSSC35の接続端子10〜12にそれぞれ接続されている。
【0004】
SSC35の内部では、各々にスイッチ44〜46及び直列リアクトル47〜49がそれぞれ直列に接続された3基の電力用コンデンサ50〜52が接続端子10の負荷側で互いに並列に接続されている。また、接続端子10の負荷側には、制御用電源トランス54を介して制御手段55が接続されている。制御手段55は、不図示の電圧計測手段からの電圧信号の変動に応じてスイッチ44〜46を段階的に開閉動作するように構成されており、これにより各電力用コンデンサ50〜52の定格容量分だけ無効電力を調整し、結果として高圧配電線M1のSSC設置1での電圧を適正範囲に収めることができる。
【0005】
最近は、工場の操業低下や住宅、団地、マンションの電化により夜間における電力需要が増加し、昼夜間や平日・休日間の電力需要差が顕著になり、高圧配電線の電圧変動がさらに大きくなる傾向にあり、これに対応するために配電線に更に電圧調整器を増設する必要がでてきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実用新案登録第1875595号明細書
【特許文献2】実用新案登録第1803554号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、適正電圧を維持するために配電線へ設置する自動電圧調整器は、1系統の高圧配電線へのみ接続可能なものであり、他の高圧配電線にこれを用いるためには、停電による接続切換工事が必要となる。また、このような自動電圧調整器は,電圧変動を感知して必要な容量分を自動で投入する機能を装備するが、全ての容量を常時使用しているのではなく、時間帯や季節によって使用されずに余っている容量があり、利用率が低いものがある。
【0008】
本発明は、前記課題を解決すべく、異なる複数系統の配電線を同時に監視、電圧調整でき、結果としてその利用率を向上させることができる自動電圧調整装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的は、本発明によれば、異なる複数系統の配電線をそれぞれ接続端子を介して同相同士接続可能な接続線と、当該前記接続端子間の接続線に直列に設けられた(N+1)基(Nは3以上10以下の整数。以下同じ。)の開閉器と、前記各配電線に並列接続されるように隣り合う前記開閉器の間に各1基設けられた合計N基の無効電力調整器と、前記複数系統のそれぞれの配電線の電圧を計測する電圧計測手段と、これらの電圧計測手段の計測結果から求めた電圧変動の大きさに応じて前記開閉器のそれぞれの開閉動作を制御する制御手段とを備えてなることを特徴とする自動電圧調整装置によって達成される。
【0010】
本発明において、前記Nの値(接続可能な無効電力調整器の基数)は常識的な範囲内であればよく、電圧調整の対象となる異なる2系統の配電線の負荷の状況などに応じて、例えば10、6、4などに設定することができる。
【0011】
前記無効電力調整器としては、電力用コンデンサまたは分路リアクトルを備えるものを使用できる。電力用コンデンサを備える無効電力調整器は、さらに各相に直列リアクトルを備えていてもよい。いずれかの高圧配電線の電源に含まれる高調波により、電力用コンデンサに過度の電流が流れるのを防止するため、また電力コンデンサ投入時の過渡電流を抑制するためである。また、前記N基の無効電力調整器は、それぞれの定格容量を適宜設定でき、例えば、すべての無効電力調整器の定格容量を同等にしてもよく、それぞれの無効電力調整器の定格容量を変えることもできる。好ましくは、すべての無効電力調整器は、同等の定格容量を有するもので揃えるのがよい。
【0012】
前記制御手段としては、電圧調整継電器またはこれと同様の機能を備えた機器であり、異なる2系統の配電線のそれぞれの電圧変動に応じてN基の開閉器を第1基目からまたは第N基目から互いに反対方向に順次開閉するよう制御可能なものが使用される。前記制御手段はまた、前記2系統の高圧配電線のうち、いずれの系統を優先的に電圧調整すべきか(制御の優先度)を予め設定しておき、2系統のうちの一方の配電線についての開閉器制御と他方の配電線についてのそれとが互いに干渉し合わないようにすることが好ましい。
【0013】
また、前記制御手段は、双方向の通信機能を備えていることが好ましい。このように通信機能を備えることで、外部から遠隔で前記各開閉器の開閉動作を制御し、また本発明の自動電圧調整装置から外部に対して電圧変動の大きさや開閉器の開閉状況などを送信することができるようになる。
【0014】
前記開閉器および前記無効電力調整器は、それぞれまとめて、または個々の機器ごとにユニットで構成できる。また、前記開閉器および前記無効電力調整器は、これらを1対1に対応させて接続した少なくとも1つのユニットで構成することもできる。ここで、1対1というのは、各1基の開閉器及び無効電力調整器だけでなく、各2基(開閉器−無効電力調整器−開閉器−無効電力調整器)や各3基(開閉器−無効電力調整器−開閉器−無効電力調整器−開閉器−無効電力調整器)なども含む意味である。また、前記開閉器および前記無効電力調整器は、少なくとも1つの筐体に収容されていてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の自動電圧調整装置は、異なる2系統の高圧配電線に接続可能とし、2系統の配電線を常時同時に監視し、所定の大きさの電圧変動があった場合には自動で投入容量を制御して電圧調整を行うことができ、また工事や事故停電などに起因して配電系統を変更しなければならない場合にも有効に対応できる。また、配電系統全体への自動電圧調整器の設置台数を必要最小限に抑えることができるので、工事費や点検費用が低減可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の自動電圧調整装置の一実施形態の外形を模式的に示した図である。
図2】本発明の自動電圧調整装置の一実施形態の回路図である。
図3】本発明の自動電圧調整装置の別の実施形態の回路図である。
図4】本発明の自動電圧調整装置における制御装置の、一方の系統の配電線の制御例を示すフロー図である。
図5】本発明の自動電圧調整装置における制御装置の、他方の系統の配電線の制御例を示すフロー図である。
図6】本発明の自動電圧調整装置のさらに別の実施形態を示す単線結線図である。
図7】本発明の自動電圧調整装置のさらに別の実施形態を示す単線結線図である。
図8】従来のSSCの一例の外形を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明の自動電圧調整装置の一実施形態の外形図を示している。この図に示す本発明の自動電圧調整装置1は、筐体1に収容された状態で、配電柱40及び支柱41の間に架け渡された架台42の上に載せられており、電源を受け入れる接続端子10〜12;13〜15を備えている。2系統の高圧配電線(A系統及びB系統、各系統とも三相交流とする。)は、配電柱40に上下に配設された腕金にそれぞれ各系統が支持されており、下側の腕金に支持されているA系統の配電線からは、各相の分岐点31〜33を介してU線、V線及びW線が開閉器SW1を経て本発明の自動電圧調整装置1の接続端子10〜12にそれぞれ接続されている。また、上側の腕金に支持されているB系統の配電線からは、各相の分岐点34〜36を介してUu線、Vu線及びWu線が開閉器SW2を経て接続端子13〜15に接続されている。この筐体1内には、例えば後述する図2又は図3の回路図に示されるような構成の機器が収容されているものとする。
【0019】
図2は、無効電力調整器として3基の電力用コンデンサ(N=3)を備えた本発明の自動電圧調整装置の一実施形態の回路図である。なお、本実施形態では、N=3の装置を例にとり説明するが、このN値は前記のとおり常識的な範囲で設定できることはいうまでもない。本実施形態では、異なる2系統(A系統及びB系統)の配電線を同相同士接続する接続線17a〜19a;17b〜19bと、その中間に設けられた4基の開閉器GS1〜GS4と、開閉器GS1、GS2間;GS2、GS3間;GS3、GS4間のそれぞれからA系統及びB系統の各配電線に対し並列接続された電力用コンデンサ装置LC1〜LC3と、接続線17a〜19a及び17b〜19bのそれぞれの電圧を計測する電圧計測手段PT21、PT22と、開閉器GS1〜GS4のそれぞれの開閉動作を制御する制御手段24とを備えている。電力用コンデンサ装置LC1〜LC3の各々は、リアクトルL1と電力用コンデンサC1、リアクトルL2と電力用コンデンサC2、リアクトルL3と電力用コンデンサC3とがそれぞれ直接に接続された構成を備えている。
【0020】
電力用コンデンサC1〜C3の定格容量は、電圧調整の対象となる配電線における負荷の状況などにより、例えばそれぞれ200KVA(同等の容量)に設定し、又はC1からC3の順またはその逆の順に100KVA、200KVA、300KVAなどのように設定することができる。電力用コンデンサ装置LC1〜LC3の定格容量という場合、電力用コンデンサC1〜C3と直列リアクトルL1〜L3の定格容量の合算したものとなるが、後者の定格要領は前者のそれに比較して非常に小さいことから、以下の説明では、各電力用コンデンサ装置LC1〜LC3の定格容量を電力用コンデンサC1〜C3のそれと同等とみなし、さらに「電力用コンデンサ装置LC1〜LC3」を単に「電力用コンデンサLC1〜LC3」と呼ぶこととする。なお、電圧計測手段PT22は、制御用電源トランスTrの機能も果たすように構成されている。
【0021】
開閉器GS1〜GS4のそれぞれは、個別にユニット化することができる。また、電力用コンデンサLC1〜LC3のそれぞれについても各別にユニット化することができる。これら各機器の各別のユニット化は、従来公知の方法によることができる。各機器をこのように各別にユニット化する以外にも、例えば開閉器GS1と電力用コンデンサLC1とを組み合わせ、接続線17a〜19aとの接続端子及び開閉器GS2との接続端子を設けたユニットとすることもできる。GS2とLC2とを組み合わせたユニットやGS3とLC3とを組み合わせたユニットについても同様に形成できる。この場合、GS3とLC3とのユニットに開閉器GS4を接続し、さらにこの開閉器GS4に接続線17b〜19bを接続することで、本発明の自動電圧調整装置1を構築できる。さらに、開閉器GS1〜GS4をまとめて1つのユニットに、また電力用コンデンサLC1〜LC3をまとめて1つのユニットに形成することも可能である。なお、このようなユニット化は、N値を大きく設定し、接続可能な電力用コンデンサ及び開閉器の基数をそれぞれ増した場合にも同様に行うことができる。
【0022】
制御手段24は、電圧調整継電器またはこれと同様の機能を備えた機器であり、A系統及びB系統のそれぞれの電圧変動の大きさに応じて複数基の開閉器をA系統側からまたはB系統側から順次開閉するよう制御可能に構成されている。また、制御手段24は、通信機能を備え、外部から遠隔制御にて開閉器GS1〜GS4のそれぞれを開閉できるように構成できる。この遠隔制御には、配電系統を全体的に又は部分的に遠隔監視制御する電気所などにおける遠隔監視制御システムからの制御のみならず、遠隔からの手動開閉操作による制御も含まれる。このように自動及び遠隔制御を可能とすることで、スマートグリッド(次世代送電網)にも十分対応可能となる利点がある。
【0023】
本実施形態においては、開閉器GS1〜GS4と電力用コンデンサLC1〜LC3と、電圧計測手段PT21,22と、制御手段24とを1つの筐体内に収容できる。N値をさらに大きく設定し、接続可能な無効電力調整器及び開閉器を増加した場合には、これらすべての機器を1つの筐体内に収容してもよく、前記ユニットを1つまたは2つ以上のグループに分け、各グループごとに筐体内に収容してもよい。
【0024】
図3は、無効電力調整器として3基の分路リアクトルを備えた(N=3)本発明の自動電圧調整装置の一実施形態の回路図である。分路リアクトルL1〜L3の定格容量については、前記実施形態と同様に、電圧調整の対象となる配電線における負荷の状況などに応じて適宜設定できる。N値などのその他の構成については、前記実施形態と本質的に変わりはないので、重複した説明は省略する。
【0025】
次に、図2に示した無効電力調整器として3基の電力用コンデンサを備えた実施形態の自動電圧調整装置における制御方法について説明する。図4は、図2に示したA系統側の制御を説明するためのフロー図であり、図5は、図2に示したB系統側の制御を説明するためのフロー図である。
【0026】
本発明においては、予め異なる2系統の配電線における電圧調整の優先度、すなわちA系統およびB系統のいずれを優先的に電圧調整するか否か、を設定しておくことができる。この優先度は、例えば、これら2つの系統のうち日間の電圧変動が大きい方の系統に設定するのが好ましい。また、この優先度は、これら2系統の時間ごとの負荷状況などにより時間帯ごと切り換わるようにしてもよい。ここでは、A系統の優先度がB系統のそれよりも高いものとする。A系統に電圧変動が生じた場合、後述するB系統投の配電線の電圧調整のために投入中の電力用コンデンサ基数(容量)を確認し(S01)、電圧調整が必要かどうかを判定する(S02)。その結果、電圧調整が不要の場合には、開閉器GSの開閉を行なうことなく(S03)、最初に戻り投入中のコンデンサ容量の確認を行なう(S01)。また、判定が電圧調整を必要とするとの結果である場合、電力用コンデンサの必要投入容量C(電力用コンデンサLC1〜LC3のうちの投入基数)の判定を行なう(S04)。
【0027】
判定結果がC=0kvarである場合、A系統についてすべての電力用コンデンサLC1〜LC3は開放状態とされる(S06)。仮に、例えば電力用コンデンサLC1が投入されている場合には、開閉器GS1を開いて該電力用コンデンサLC1を開放する。すべての電力用コンデンサLC1〜LC3を開放状態にするのに、すべての開閉器GS1〜GS4を開いた状態(この状態を初期状態として設定してもよい。)としてもよい。
【0028】
判定の結果、Cとして電力用コンデンサLC1の定格容量分だけ投入が必要である場合には、開閉器GS2が開いていることを確認し、または閉じている場合にはこれを開き(S07)、開閉器GS1を閉じることで(S08)、電力用コンデンサLC1を投入する(S09)。また、判定の結果、Cとして電力用コンデンサLC1及びLC2の定格容量の合算分だけ投入が必要である場合には、開閉器GS3を開き(S10)、GS1を投入し(S11)電力用コンデンサLC1の定格容量分だけ投入し(S12)、続いて開閉器GS2を閉じて(S13)電力用コンデンサLC2の定格容量分だけ投入する(S14)。さらに、判定の結果、Cとして電力用コンデンサLC1〜LC3の定格容量の合算分だけ投入が必要である場合には、開閉器GS4を開き(S15)、GS1を投入し(S16)、電力用コンデンサLC1の定格容量分だけ投入し(S17)、続いて開閉器GS2を閉じて(S18)電力用コンデンサLC2の定格容量分を投入する(S19)。さらに、開閉器GS3を閉じ(S20)、電力用コンデンサLC3を追加的に投入する(S21)。判定結果が前記いずれの場合でも、その後に最初に戻り、再度、投入中の電力用コンデンサ容量の確認(S01)及び電圧調整の要否の判定を行なう(S02)。こうして、これら一連のステップは繰り返し行なわれる。
【0029】
次にB系統の配電線の場合、当該配電線に電圧変動が生じたとすると、まず電圧調整の要否を判定する(S31)。その結果、電圧調整が不要の場合には開閉器GSの開閉制御は不要となる(G32)。判定の結果、電圧調整が必要な場合には、次に投入容量の調整の可否を判定する(S33)。これは、端的にいえば、前記のA系統の電圧調整のためにすべての電力用コンデンサLC1〜LC3が投入されているか否かを確認し、すべてが投入中の場合には投入容量調整はできず、一部又はすべてが開放状態にある場合には投入容量調整が可能と判断するものである。その結果、すべての電力用コンデンサLC〜LC3が投入され投入容量の調整ができない場合には、開閉器GSを開閉制御は不要となる(S34)。ステップS32及びS34にて開閉器GSの制御が不要な場合には、最初に戻り電圧調整の要否を判定する(S31)。一方、投入容量の調整が可能な場合、電力用コンデンサの必要投入容量の判定を行なう(S35)。
【0030】
判定の結果、C=0kvarである場合、開閉器GS4を開き(S36)、B系統から見てすべての電力用コンデンサLC1〜LC3が開放状態となるようにする(S37)。判定の結果が、Cとして電力用コンデンサLC3の定格容量分だけ投入が必要である場合には、開閉器GS3が開いていることを確認し、または閉じている場合にはこれを開き(S38)、開閉器GS4を閉じることで(S39)、電力用コンデンサLC3を投入する(S40)。また、判定の結果、Cとして電力用コンデンサLC2及びLC3の定格容量の合算分だけ投入が必要である場合には、開閉器GS2を開き(S41)、GS4を投入し(S42)電力用コンデンサLC3の定格容量分だけ投入し(S43)、続いて開閉器GS3を閉じて(S44)電力用コンデンサLC2の定格容量分だけ追加的に投入する(S45)。さらに、判定の結果、Cとして電力用コンデンサLC1〜LC3の定格容量の合算分だけ投入が必要である場合には、開閉器GS1を開き(S46)、GS4を投入し(S47)、電力用コンデンサLC3の定格容量分だけ投入し(S48)、続いて開閉器GS3を閉じて(S49)電力用コンデンサLC2の定格容量分を投入する(S50)。さらに、開閉器GS2を閉じ(S51)、電力用コンデンサLC1を追加的に投入する(S52)。判定結果が前記いずれの場合でも、その後に最初に戻り、再度、電圧調整の要否の判定を行なう(S31)。こうして、これら一連のステップは繰り返し行なわれる。
【0031】
以上、異なる2系統の配電線の電圧調整を例にとり、本発明の自動電圧調整装置のいくつかの例についてその機器構成とともに、その制御方法についてそれぞれ説明してきたが、本発明の自動電圧調整装置は、異なる3系以上の配電線の電圧調整にも適用可能である。図6及び図7は、異なる3系統の配電線の電圧調整に適用可能な自動電圧調整装置の実施形態の内部機器構成例をそれぞれ示している。なお、これら各図は、簡略化のために単線結線図で示しており、無効電力調整器として電力用コンデンサを用いている。
【0032】
図6に示す自動電圧調整装置の実施形態では、筐体2に設けられた接続端子30〜32に異なる3系統の配電線がそれぞれ接続可能とされている。筐体2の内部では、接続端子30−32間及び接続端子31−32間にそれぞれ接続線37、38がいわゆる「樹枝状」の形態に接続されている。各接続線には、4個の開閉器GS1〜GS4及びGS5〜GS8が設けられ、隣り合う開閉器の間にはそれぞれ無効電力調整器として各1基の電力用コンデンサLC1〜LC3及びLC4〜LC6(各接続線に3基)が接続されている。また、接続端子30、32にはそれぞれ電圧計測手段34、35を介して制御装置40、41が接続されている。制御装置40の電源は、電圧計測手段34、35からそれぞれ供給されている。なお、制御装置はA−C系統間及びB−C系統間のそれぞれについて各開閉器の開閉制御可能なだけの性能を備えている場合には、図示のように2基設ける必要はなく、いずれか1基のみを設置することができる。
【0033】
このような構成の自動電圧調整装置により、3系統(仮にA系統〜C系統とする。)の配電線の電圧調整を行う場合の制御についてその概略を説明する。3系統の場合においても、まず日間の電圧変動や平日、休日間の電圧変動差が最も大きい系統の優先度を最も高く設定し、電圧変動の小さい系統の優先度を最も低く設定する。この優先度は、日間の時間帯ごとに切り換わるようにしてもよい。
【0034】
A系統〜C系統についてこれらの優先度の高低を場合分けして説明する。
(1)まず、3系統の配電線の優先度がA系統(高)>B系統>C系統(低)またはB系統(高)>A系統>C系統(低)であり、C系統の配電線の電圧調整が不要な場合には、開閉器GSCを切り、自動電圧調整装置2をC系統から切り離し、A系統、B系統間で図4に示したように電圧調整の制御を行う。このとき、開閉器GS4及びGS5は、同時に開閉動作するように制御することが好ましい。
(2)また、C系統の配電線の電圧調整が必要な場合には、A系統、B系統のうちでどちらが優先度が低いかにより、以下のように運用できる。
(2a)A系統がB系統よりも優先度が低い場合には、例えば、開閉器GS5を遮断し、これら両系統間において接続線37上の開閉器GS1〜GS4について図4に示したように開閉制御を行い、B系統については、接続線37上の開閉器GS1〜GS4の開閉制御により電圧調整を行うことができる。
(2b)B系統がA系統よりも優先度が低い場合には、前記とは逆に、開閉器GS4を遮断し、B系統、C系統間における接続線38上の開閉器GS5〜GS8について図4に示した開閉制御を行い、A系統については、接続線38上の開閉器GS5〜GS8の開閉制御による電圧調整を行うことができる。
【0035】
(3)3系統の配電線の優先度がA系統(高)>C系統>B系統(低)であり、開閉器GS8を遮断してB系統から自動電圧調整装置2を切り離せる場合には、接続線37上の開閉器GS1〜GS4の開閉制御によりA系統、C系統の電圧調整を行うことができる。また、優先度が高いA系統については、接続線37上の開閉器GS4を遮断し残りの開閉器GS1〜GS3の開閉制御により、C系統については接続線38上の開閉器GS5〜GS7の開閉制御により電圧調整を行ってもよい。
(4)上記(3)に示した優先度にてB系統を切り離せない場合には、接続線37上の開閉器GS4を遮断し、A系統については、開閉器GS1〜GS4の開閉制御にて電圧を調整し、B系統及びC系統については接続線38上の開閉器GS5〜GS8について上記(2b)と同様の開閉制御を行い、これら各系統の電圧調整を行うことができる。
【0036】
(5)3系統の配電線の優先度がB系統(高)>C系統>A系統(低)であり、開閉器GS1を遮断して自動電圧調整装置2をA系統から切り離せる場合、優先度が高いB系統については、接続線38上の開閉器GS5を遮断し残りの開閉器GS6〜GS8の開閉制御により、C系統については接続線37上の開閉器GS2〜GS4の開閉制御により電圧調整を行うことができる。
(6)上記(5)に示した優先度にて自動電圧調整装置2をA系統から切り離せない場合には、接続線38上の開閉器GS5を遮断し、B系統については、開閉器GS6〜GS8の開閉制御にて電圧を調整し、A系統及びC系統については接続線37上の開閉器GS1〜GS4の開閉制御を行うことができる(図4参照)。
【0037】
(7)3系統の配電線の優先度がC系統(高)>A系統>B系統(低)であり、開閉器GS8を遮断して自動電圧調整装置2をB系統から切り離せる場合には、A系統及びC系統の電圧調整は、接続線37上の開閉器GS1〜GS4の開閉制御によって行うことができる。この場合にはまた、C系統の電圧調整を接続線38上の開閉器GS5〜GS7の開閉制御によって、またA系統の電圧調整を接続線37上の開閉器GS1〜GS4の開閉制御によって行うことができる。
(8)上記(7)に示した優先度にてB系統から自動電圧調整装置2を切り離せない場合には、A系統の電圧調整を接続線37上の開閉器GS1〜GS4の開閉制御によって行うとともに、B系統及びC系統の電圧調整を接続線38上の開閉器GS5〜GS8の開閉制御を行うことができる。そして、開閉器GS5〜GS8の開閉制御によりC系統の電圧調整が不十分な場合に、A系統及びC系統間で図4に示した開閉器GS1〜GS4の開閉制御により両者の電圧調整を行うことができる。
【0038】
また、図7に示す自動電圧調整装置の実施形態では、筐体(不図示)に設けられた接続端子30−31、30−32,31−32のそれぞれの間にそれぞれ接続線37〜39が接続され、いわゆる「ループ状」の形態とされている。各接続線37〜39には、それぞれ4個の開閉器GS1〜GS4、GS5〜GS8及びGS9〜GS12が設けられ、隣り合う開閉器の間にはそれぞれ無効電力調整器として各1基の電力用コンデンサLC1〜LC3、LC4〜LC6およびLC7〜LC9(各接続線に3基)が接続されている。また、接続端子30〜32はそれぞれ電圧計測手段3436を介して制御装置42に接続されている。制御装置42の電源は、電圧計測手段34〜36のいずれかから供給されている。本実施形態の自動電圧調整装置に各系統の配電線を接続する場合には、それぞれ各相とも開閉器GSA、GSB,GSCを介して接続されている。
【0039】
図7の自動電圧調整装置の実施形態において、3系統(仮にA系統〜C系統とする。)の配電線の電圧調整を行う場合の制御を次に説明する。この場合、まず日間の電圧変動や平日、休日間の電圧変動差が最も大きい系統の優先度を最も高く設定し、電圧変動の小さい系統の優先度を最も低く設定し、この優先度は、日間の時間帯ごとに切換可能とする点は前記の通りである。
【0040】
以下では、A系統〜C系統の優先度が、A系統(高)>B系統>C系統(低)である場合について説明し、B系統やC系統が優先度が高い場合については同様の制御となるので、説明を省略する。まず、開閉器GSCを遮断して自動電圧調整装置をC系統の配電線から切り離せる場合、以下のいずれかのような電圧調整の形態を採用できる。
(1)A系統及びB系統については、図4に示したような接続線37上の開閉器GS1〜GS4の開閉制御により電圧調整を行う。
(2)優先度の高いA系統については、接続線37上の開閉器GS1〜GS4又は接続線39上の開閉器GS9〜GS12の開閉制御により電圧調整を行い、B系統については、接続線38上の開閉器GS5〜GS8又は接続線37上の開閉器GS1〜GS4の開閉制御により電圧調整を行う。
(3)A系統については、接続線39及び38上の開閉器GS5〜GS12又は接続線39及び37上の開閉器GS9〜GS12及びGS91〜GS4の開閉制御により電圧調整を行い、B系統については、接続線37上の開閉器GS1〜GS4又は接続線38上の開閉器GS5〜GS8の開閉制御により電圧調整を行う。
【0041】
本実施形態の自動電圧調整装置は、このように3系統の配電線の電圧調整に適用可能であり、しかも各系統の配電線の電圧変動の大きさや負荷の状況などにより接続線、開閉器について複数のバリエーションの中から選択できるという利点がある。なお、図6及び図7では、無効電力調整器として電力用コンデンサを用いた場合について説明したが、分路リアクトルを用いる場合も同様の制御が可能である。また、本実施形態では、複数の接続線ごとに無効電力調整器を電力用コンデンサ又は分路リアクトルに変更することも可能である。
【0042】
本発明の自動電圧調整装置は、さらに接続端子、接続線、開閉器及び無効電力調整器を増すことで、4系統以上の配電線の電圧調整にも適用可能である。
【0043】
以上説明したように、本発明の自動電圧調整装置は、異なる複数系統の高圧配電線に接続可能とし、該複数系統の配電線を常時同時に監視し、所定の大きさの電圧変動があった場合には自動で投入容量を制御して電圧調整を行うことができる。本発明の自動電圧調整装置は、工事や事故停電などに起因して配電系統を変更しなければならない場合にも有効に対応できる。また、本発明の自動電圧調整装置は、通信機能を備えているので、外部から遠隔操作にて投入容量を変更できる。このように、本発明の自動電圧調整装置は、それ自体が備える無効電力調整器を最大限活用しその利用率を向上させることができるとともに、スマートグリッド(次世代送電網)にも対応でき、配電系統全体への自動電圧調整装置の設置台数を低減でき、結果として工事費や点検費用の低減にも資するものである。
【0044】
本発明の自動電圧調整装置は、例えばそれぞれの負荷の状況などにより無効電力の不足、過剰の周期が異なっているような複数系統の配電線の電圧調整に好適に使用できる。なお、本明細書において本発明のいくつかの実施形態について説明したが、本発明は以下の実施形態に限定されず、本発明の主題を逸脱しない限り本発明の範囲に属するものとする。
【符号の説明】
【0045】
1 自動電圧調整装置
10〜15 接続端子
17a、18a、19a、17b、18b、19b 接続線
21、22 電圧計測手段
24 制御手段
GS1〜GS4 開閉器
LC1〜LC3 電力用コンデンサ装置
L1〜L3 リアクトル
C1〜C3 電力用コンデンサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8