(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記各回転体は、主軸の延びる方向と直交する方向に広がる略円板形状を有し、且つ前記軟磁性粉末によって形成される回転体本体と、前記主軸を周方向に囲む前記回転体本体の外周面を前記主軸の径方向外側から囲うように帯状部材が単層又は多層に巻き重ねられた補強部、又は前記外周面を外側から囲い且つ所定の厚さを有する筒状部材と、を備える、請求項4に記載のフライホイール式電力貯蔵装置。
前記各励磁コイルは、帯状の電導線材をその厚さ方向が当該励磁コイルの径方向を向くように巻き重ねることによって形成される、請求項1〜5のいずれか1項に記載のフライホイール式電力貯蔵装置。
前記各回転体は、磁気軸受け又はエアベアリングを介して前記主軸に回転可能に取り付けられている、請求項1〜7のいずれか1項に記載のフライホイール式電力貯蔵装置。
【背景技術】
【0002】
従来から、電気自動車等の移動体に搭載されるフライホイール式電力貯蔵装置(以下、単に「電力貯蔵装置」とも称する。)として、特許文献1に開示されたものが知られている。この電力貯蔵装置は、発電機として機能させることが可能なモータと、このモータの主軸(回転駆動軸)に取り付けられる回転体(フライホイール)とを備える。このモータは、永久磁石形同期電動機である。また、回転体は、主軸と直交する方向に広がる、慣性モーメントの大きな円板状の部材である。
【0003】
この電力貯蔵装置では、電力(電気エネルギー)が供給されたときには、モータが回転体の回転数を上げることによって供給された電力を回転体の回転運動エネルギーに変換した状態で貯蔵する。一方、貯蔵した電力を出力するときには、モータを発電機として機能させ、回転体の回転運動エネルギーを電気エネルギーに変換して出力する。このとき出力された電気エネルギーの量に応じて回転体の回転運動エネルギーが減少するため、その回転数が低下する。
【0004】
このような電力貯蔵装置では、慣性モーメントの大きな回転体を高速で回転させているため、例えば、当該電力貯蔵装置を搭載した移動体(例えば、電気自動車等)が急に移動方向を変えると、回転体の慣性モーメントによって生じる非常に大きな慣性力(歳差運動)が移動体に作用して移動体の挙動が不安定になる。
【0005】
そこで、特許文献2に記載の電力貯蔵装置が開発された。この電力貯蔵装置は、
図8及び
図9に示されるように、発電機として機能させることが可能なモータ102、及びモータ102の主軸104に取り付けられた回転体106を有するフライホイール部108と、フライホイール部108を水平面上において互いに直交する二つの軸(
図8におけるX軸及びY軸)周りに回転自在に支持するジンバル構造の支持部材110と、を備える。
【0006】
この電力貯蔵装置100では、ジンバル構造の支持部材110がフライホイール部108を支持することでフライホイール部108が移動体に対する姿勢を自由に変更できる。このため、当該電力貯蔵装置100を搭載した移動体がその移動方向を急に変更したときに、フライホイール部108(高速で回転する回転体106)が移動体に対する姿勢を変更し、これにより、フライホイール部108(高速で回転する回転体106)の慣性モーメントに基づく慣性力(歳差運動)が移動体に作用することを防ぐことができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記のようなジンバル構造の支持部材110を備えた電力貯蔵装置100では、複雑な支持構造の支持部材110が必要であり、また、この複雑な構造の支持部材110を設けることで電力貯蔵装置100が大型化する。
【0009】
そこで、本発明は、上記問題に鑑み、回転体を備えたフライホイール式電力貯蔵装置であって、簡素な構造でありながら当該電力貯蔵装置を搭載した移動体に作用する回転体の回転に基づく慣性力を抑制することが可能なフライホイール式電力貯蔵装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解消すべく、本発明は、供給された電力を回転運動エネルギーとして貯蔵するフライホイール式電力貯蔵装置であって、特定の方向に延びる主軸と、前記主軸に取り付けられ且つ当該主軸周りに互いに逆方向に回転している一対の回転体と、各回転体において前記主軸周りの回転周期を同期させる駆動部と、
その両端部から外側に向かってそれぞれ延びるように前記主軸が取り付けられ、且つ磁性材料によって形成される固定子とを備
え、前記各回転体は、磁性材料によって形成されると共に前記主軸を中心に当該主軸と直交する方向に広がる略円板形状を有し、前記固定子を挟んでその両側に配置され、前記駆動部は、前記固定子の両端部において芯部に前記主軸が挿通するように配置された一対の励磁コイルを有し、当該フライホイール式電力貯蔵装置への前記電力の入出力によって励磁したときに、前記一対の励磁コイルのみによって、前記固定子と前記回転体との間の磁気抵抗に基づく回転力を前記回転体に生じさせる。
【0011】
かかる構成によれば、一対の回転体を回転周期が同期するように互いに逆回転させるといった簡素な構成によって、当該フライホイール式電力貯蔵装置を搭載した移動体が移動方向を変えたときの当該電力貯蔵装置から移動体に作用する慣性力(回転体の回転に基づく慣性力)を効果的に抑えることができる。即ち、一対の回転体が互いに逆方向に回転しつつ回転周期が同期することで、互いの慣性モーメントが相殺されて角運動量の合計が抑えられ、これにより、当該フライホイール式電力貯蔵装置を搭載した移動体が移動方向を変えたときの当該電力貯蔵装置から移動体に作用する慣性力(回転体の回転に基づく慣性力)が効果的に抑えられる。
また、このように、主軸と、この主軸に取り付けられる一対の略円板状の回転体及び励磁コイルの配置された固定子、といった簡素な構成とすることで、貯蔵した電力(回転運動エネルギー)の経時的な減少を抑えると共に回転体の回転に起因する振動を抑えることを可能とした。即ち、回転する部位(回転体)が永久磁石や励磁コイルの設けられていない単なる略円板状の磁性部材であるため、当該フリーホイール式電力貯蔵装置に対する電力の入出力が停止されて回転体が駆動部によって駆動されていない自由回転(フリーホイール)状態になったときに、永久磁石によって形成される磁界に起因するヒステリシス損及び渦電流損が固定子や励磁コイル等において生じず、且つ、回転体に励磁電流を供給するためのブラシを設けなくてもよいためこのブラシによる摩擦が回転体に生じない。このため、フリーホイール状態における前記ヒステリシス損及び渦電流損の発生、並びに前記ブラシによる摩擦の発生に起因する回転体の回転数の経時的な低下(即ち、回転体に蓄えられた回転運動エネルギーの減少)が抑えられる。さらに、永久磁石を用いていないため、フリーホイール状態のときにコギングトルクが生じず、これにより、コギングトルクに基づく振動を防ぐと共に、コギングトルクの発生による回転体の回転数の低下も防ぐことができる。
【0012】
このとき、前記各回転体の形状及び重さが同一若しくは略同一であれば、これら一対の回転体の角運動量の合計が0若しくはこれに近い値となるため、当該フライホイール式電力貯蔵装置を搭載した移動体が移動方向を変えたときの当該電力貯蔵装置から移動体に作用する慣性力(回転体の回転に基づく慣性力)がより抑えられる。
【0015】
前記フライホイール式電力貯蔵装置では、励磁コイルが励磁したときの固定子と回転体との間の磁気抵抗の変化に起因する磁気吸引力によって回転体を回転駆動している。即ち、いわゆるスイッチトリラクタンス(SR)方式が用いられている。この磁気抵抗の変化を生じさせる具体的な構成としては、例えば、前記固定子は、前記主軸の延びる方向に貫通し且つ前記主軸を中心とする所定の半径の円周上においてその周方向に間隔をあけて並ぶ複数の貫通穴を有し、前記各回転体は、前記固定子と対向する対向面と、この対向面における前記所定の半径の円周上において前記複数の貫通穴と対応する各位置から前記固定子側に向かって突出する複数の突部と、を有してもよい。
【0016】
この構成では、固定子に対する回転体の回転位置によって励磁コイルが励磁したときの固定子と回転体との間の磁気抵抗が変化し、この磁気抵抗の変化に起因する磁気吸引力が回転体に作用して回転体が回転駆動される。詳しくは、以下の通りである。
【0017】
固定子と対向する対向面から突部を固定子側に突出させる(固定子により近づける)ことにより、励磁コイルが励磁したときの磁束線が各突部に集中する。この状態では、回転体の突部が固定子の貫通穴の正面のときに磁気抵抗が最大となる一方、回転体の突部が固定子の非開口部(隣り合う貫通穴と貫通穴との間)の正面のときに磁気抵抗が最小となる。ここで、吸引力は磁気抵抗が小さくなる方向に働く。このため、回転体の各突部が固定子の貫通穴と対向しているときに励磁コイルが励磁することで、回転体には突部が固定子の前記非開口部に向かう方向の磁気吸引力が作用して回転体が回転する。
【0018】
前記固定子及び前記一対の回転体は、それぞれ電気絶縁膜で被覆された軟磁性粉末
から形成されていることが好ましい。
【0019】
かかる構成によれば、固定子及び各回転体の内部を通過する磁束線が変動しても、これら固定子及び各回転体を構成する各軟磁性粉末が電気絶縁膜で被覆され隣接する軟磁性粉末同士が電気絶縁されているため、渦電流が流れ難く、これにより、当該固定子及び各回転体における渦電流損失を防ぐことができる。
【0020】
前記各回転体は、主軸の延びる方向と直交する方向に広がる略円板形状を有し、且つ前記軟磁性粉末によって形成される回転体本体と、前記主軸を周方向に囲む前記回転体本体の外周面を前記主軸の径方向外側から囲うように帯状部材が単層又は多層に巻き重ねられた補強部、又は前記外周面を外側から囲い且つ所定の厚さを有する筒状部材と、を備えることが好ましい。
【0021】
かかる構成によれば、補強部又は筒状部材が軟磁性粉末で構成される回転体本体を径方向外側から囲っているため、各回転体本体に加わる径方向外側に向かう力に対する強度が向上し、回転体本体が主軸周りに高速回転することによる遠心力破壊を確実に防ぐことができる。
【0022】
また、各回転体本体が所定の厚さの筒状部材を備える場合、回転体の外周部の重量が増加して回転体の慣性モーメントが増大し、これにより、フリーホイール状態での回転体の経時的な回転数の減少をより抑えることができる。
【0023】
前記フライホイール式電力貯蔵装置において、前記各励磁コイルは、帯状の電導線材をその厚さ方向が当該励磁コイルの径方向を向くように巻き重ねることによって形成されることが好ましい。
【0024】
このように、帯状の導電線材をいわゆるフラットワイズに巻回して励磁コイルを形成することにより、当該励磁コイルが励磁したときの磁場における磁束線が当該励磁コイルを構成する導電線材内を当該導電線材の幅方向に沿って通過するため渦電流の発生が抑制され、これにより、この渦電流の発生に起因する回転体の回転数(回転運動エネルギー)の減少を抑えることができる。しかも、電導線材を帯状にすることによって断面積を確保し、これにより、電導線材に電流が流れたときの発熱を抑えることができる。
【0025】
この場合、前記電導線材の厚さを、前記励磁コイルに入出力される電流の周波数に対応する表皮厚さより小さくすることにより、励磁コイルが形成した磁場の磁力線が電導線材を貫通したときの当該電導線材における渦電流の発生をより抑制することができる。即ち、帯状形状の電導線材が巻回されたコイルに所定の周波数以上の交流電流が流れた場合、磁束線が侵入できる領域が電導線材の表面から表皮深さ(スキンデプス:skin depth)までの領域であるため、電導線材の厚さ寸法を表皮深さ以下にすることによって磁束線が電導線材に侵入したときの渦電流の発生を抑制することができる。
【0026】
前記各回転体は、磁気軸受け又はエアベアリングを介して前記主軸に回転可能に取り付けられてもよい。
【0027】
かかる構成によれば、主軸に対して回転体が非接触となるため、回転体が回転するときの主軸との間の回転摩擦が効果的に抑えられる。また、主軸と回転体とが接触しないため、摩耗等による部品交換等のメンテナンス回数を減らすことができる。
【0028】
前記駆動部は、前記励磁コイルに入出力される前記電力を制御する制御部と、前記各回転体の回転数を検知する検知部と、を備え、前記制御部は、前記検知部が検知した回転数に基づいて、前記各回転体の回転周期が同期するように、前記各励磁コイルに入出力する電流を制御することが好ましい。
【0029】
かかる構成によれば、各回転体の回転周期を同期させた状態が維持されるため、一対の回転体における角運動量の合計が最小になった状態が維持される。
【発明の効果】
【0030】
以上より、本発明によれば、回転体を備えたフライホイール式電力貯蔵装置であって、簡素な構造でありながら当該電力貯蔵装置を搭載した移動体に作用する回転体の回転に基づく慣性力を抑制することが可能なフライホイール式電力貯蔵装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の一実施形態について、
図1〜
図7を参照しつつ説明する。
図1は、本実施形態に係るフライホイール式電力貯蔵装置の断面図である。
図2は、主軸が取り付けられた状態の固定子の側面図である。
図3は、回転体の対向面側の側面図であり、
図4は、
図3のIV−IV断面図である。
図5は、主軸と励磁コイルとが取り付けら得た状態の固定子の側面図であり、
図6は、
図5のVI−VI断面図である。
図7(A)〜
図7(C)は、前記フライホイール式電力貯蔵装置における回転体の加速または減速を説明するための図である。
【0033】
本実施形態に係るフライホイール式電力貯蔵装置(以下、単に「電力貯蔵装置」とも称する。)は、例えば、車両等の移動体に搭載され、当該移動体において生じた回生エネルギー(電力)を入出力可能に貯蔵する。具体的に、本実施形態の電力貯蔵装置は、電磁ブレーキ(回生ブレーキ)を備えた移動体に搭載され、移動体の停止や減速時等のブレーキ動作時において電磁ブレーキで発生した電力(回生エネルギー)を回転体の回転運動エネルギーに変換した状態で一時的に貯蔵する。そして、電力貯蔵装置は、移動体が必要なときに、貯蔵した回転体の回転運動エネルギーを電力に変換して出力する。
【0034】
尚、電力貯蔵装置に貯蔵される電力は、上記のような移動体に設けられた電磁ブレーキにおいて発生する電力(回生エネルギー)に限定されない。例えば、電力貯蔵装置は、クレーン車やショベルカー等の建設機械(建機、重機)に搭載され、これらの建設機械における荷の揚げ降ろしやアームの上げ下げの際に取り出すことが可能な電力(回生エネルギー)を貯蔵してもよい。また、電力貯蔵装置が貯蔵する電力は、回生エネルギーに限定されない。
【0035】
電力貯蔵装置は、
図1に示されるように、主軸12と、固定子20と、一対の回転体30、30と、駆動部40と、減圧容器部14と、を備える。
【0036】
主軸12は、特定の方向(
図1における左右方向)に延びる部材である。本実施形態の主軸12は、中心軸C方向の各位置における直径が一定の円柱形状を有する。
【0037】
固定子20は、磁性材料によって構成され、
図2にも示されるように、略円板形状を有する。この固定子20には、当該固定子20の厚さ方向(
図1の左右方向)の両端面21、21から外側に向かってそれぞれ延びるように主軸12が取り付けられている。即ち、主軸12が略円板状の固定子20の中心をその厚さ方向に貫通し、固定子20の両端面21、21からそれぞれ法線方向に延びるように取り付けられている。
【0038】
具体的に、固定子20は、主軸12の延びる方向(中心軸C方向)から見て円形の輪郭を有し、中心軸C(主軸12)と直交する方向に広がる略円板形状を有する。この固定子20は、中心軸C方向に貫通する複数の貫通穴22、22、…を有する。各貫通穴22は、固定子20の周縁部にその周方向に沿って間隔をおいて並んでいる。即ち、複数の貫通穴22、22、…は、中心軸C(主軸12)を中心とする所定の半径の円周上においてその周方向に間隔を空けて並んでいる。本実施形態の複数の貫通穴22、22、…は前記周方向において等間隔に並び、各貫通穴22の前記周方向の幅が非開口部(前記円周方向において隣り合う貫通穴22、22間の部位)23の幅より広い。各貫通穴22、22、…は、中心軸C方向視において同じ形状である。
【0039】
一対の回転体30、30は、それぞれ磁性材料によって構成され、中心軸C方向において固定子20を挟んでその両側に配置されている。各回転体30は、主軸12周りに回転可能に主軸12に取り付けられている。本実施形態では、各回転体30の形状及び重さが同一である。また、各回転体30は、磁気軸受け31を介して主軸12に取り付けられている。尚、回転体30は、主軸12に回転可能に取り付けられていればよく、磁気軸受け31を介して主軸12に取り付けられる構成に限定されない。回転体30は、例えば、エアベアリング等の他の方式のベアリング(軸受け)を介して主軸12に取り付けられてもよい。
【0040】
また、一対の回転体30、30は、当該電力貯蔵装置において放充電を行う使用中では互いに逆回転しているが、その静止状態から前記逆回転への起動時には、SRモータに使用される公知の技術を用いることができる。
【0041】
この回転体30は、中心軸Cを中心に当該中心軸Cと直交する方向に広がる略円板形状を有している。具体的に各回転体30は、
図3及び
図4にも示されるように、回転体本体32と補強部33とを有する。回転体本体32は、基部34と、基部34から固定子20側に向かって突出する中心側突部37及び複数の周縁側突部38、38、…を有する。
【0042】
基部34は、中心軸Cを中心に当該中心軸Cと直交する方向に広がる厚さが一定の略円板状の部位であり、対向面35及び外側面36を有する。この対向面35は、基部34における固定子20と対向する側の面であり、外側面36は、基部34における対向面35と反対側の面である。
【0043】
中心側突部37は、基部34の中心部(中心軸C側の部位)において主軸12を囲むように対向面35から固定子20側に向かって突出する筒状の部位である。
【0044】
各周縁側突部38は、基部34の対向面35における前記所定の半径の円周上において固定子20の複数の貫通穴22、22、…と対応(対向)する各位置から固定子20側に向かってそれぞれ突出している。即ち、周縁側突部38の数と、固定子20の貫通穴22の数とが同じである。この周縁側突部38は、中心軸C方向視において、固定子20の貫通穴22と同一若しくは略同一形状を有し、中心軸C方向における対向面35からの突出長さが中心側突部37における対向面35からの突出長さと同じである。尚、本実施形態では、中心軸C方向視において、周縁側突部38よりも貫通穴22の方が大きい。
【0045】
これら複数の周縁側突部38、38、…と、中心側突部37と、対向面35とによって囲まれた中心軸C方向視がドーナツ状の領域には、固定子20に取り付けられた励磁コイル41が、これら周縁側突部38、中心側突部37、及び対向面35と所定の間隔を空けた状態で嵌り込む(
図1参照)。
【0046】
補強部33は、回転体本体32の外周面(主軸12を周方向に囲む外周面)39を前記径方向の外側から囲む。具体的に、補強部33は、回転体本体32の外周面39を径方向外側から囲うように帯状の高張力部材を単層又は多層に締め巻くことによって形成されている。本実施形態では、前記帯状の高張力部材として、例えば、ガラス繊維強化プラスチック(GFRP)や炭素繊維強化プラスチック(CFRP)等が用いられるが、これらに限定されない。
【0047】
この補強部33は、高速で回転する回転体30に加わる径方向外側に向かう力(遠心力)に対する回転体本体32の強度を向上させる。即ち、補強部33が回転体本体32を径方向外側から囲っているため、回転体30に加わる遠心力に対する強度が向上し、回転体30が主軸12周りに高速回転することによる回転体30の遠心力破壊を確実に防ぐことができる。
【0048】
尚、帯状の高張力部材を締め巻いた補強部33の代わりに、回転体本体32の外周面39を外側から囲い且つ所定の厚さを有する筒状部材が用いられてもよい。この筒状部材は、構造用鋼材や、ステンレス鋼等の重量強度材によって形成される。この筒状部材が回転体本体32の外周面39に取り付けられることによって、回転体30の周縁部(外周部)の重量が増加して回転体30の慣性モーメントを増大させることができる。
【0049】
以上のような固定子20及び各回転体30(詳しくは回転体本体32)は、上記のように、それぞれ磁性材料によって形成され、所定の磁気特性(透磁率)を有している。具体的に、固定子20及び各回転体本体32は、電気絶縁膜で被覆された軟磁性粉末を圧縮して固めることにより形成されている。本実施形態の固定子20及び各回転体本体32は、表面にリン酸系化成皮膜等の電気絶縁皮膜が形成された鉄粉によって形成されている。ここで、前記軟磁性体粉末とは、強磁性の金属粉末であり、より詳しくは、例えば、純鉄粉、鉄基合金粉末(Fe−Al合金、Fe―Si合金、センダスト、パーマロイ等)及びアモルファス粉末等が挙げられる。これら軟磁性体粉末は、公知の手段、例えば、アトマイズ法等によって微粒子化する方法や、酸化鉄等を微粉砕した後にこれを還元する方法等によって製造することができる。また、一般に、透磁率が同一である場合に飽和磁束密度が大きいので、軟磁性粉末は、例えば、上記純鉄粉、鉄基合金粉末及びアモルファス粉末等の金属系材料であることが特に好ましい。
【0050】
このような軟磁性体粉末によって形成された固定子20及び各回転体本体32は、例えば、圧粉形成等の公知の常套手段によって形成される。
【0051】
また、固定子20及び各回転体本体32は、軟磁性体粉末と非磁性体粉末との混合物を圧縮して固めたものであってもよい。この場合、軟磁性体粉末と非磁性体粉末との混合比率を比較的容易に調整することができ、前記混合比率を適宜に調整することによって、固定子20及び各回転体本体32において所望の磁気特性を容易に実現することができる。また、固定子20及び各回転体本体32は、例えば電気絶縁膜で被覆された軟磁性粉末を結合媒体と共に金型成型することによって形成されてもよい。
【0052】
駆動部40は、一対の励磁コイル41、41と、各回転体30の回転数を検知する検知部43と、励磁コイル41に入出力される電流の制御を行う電流制御部(制御部)44と、を有し、各回転体30を互いに逆方向に回転させつつ各回転体30の主軸12周りの回転周期を同期させる。
【0053】
各励磁コイル41は、中心軸C方向における固定子20の両端面21、21において主軸12を取り囲むように配置される。この励磁コイル41は、当該電力貯蔵装置10への電力の入出力によって励磁したときに固定子20と回転体30との間の磁気抵抗に基づく回転力を回転体30に生じさせる。
【0054】
励磁コイル41は、
図5及び
図6にも示されるように、帯状の電導線材42をその厚さ方向(主面の法線方向)が当該コイル41の径方向を向くように(即ち、フラットワイズに)巻き重ねられた、いわゆるパンケーキコイルである。この励磁コイル41の内径は回転体30の中心側突部37の外径よりも大きい。また、励磁コイル41の外径は、回転体30の各周縁側突部38の中心軸C側端部を結んだ円周の直径よりも小さく、且つ、固定子20の各貫通穴22の中心軸C側端部を結んだ円周と略同一である。
【0055】
このように構成される励磁コイル41は、コイル41の中心軸方向における一方の端部を固定子20の回転体30と対向する面21に接触させるようにして固定子20に取り付けられる(
図1及び
図6参照)。
【0056】
帯状の電導線材42は、導電性材料によって形成され、長尺方向における各位置の幅が一定の部材であり、その厚さは、励磁コイル41に入出力される電流の周波数に対する表皮厚さ(スキンデプス:skin depth)δより小さい。この表皮厚さδは、以下の式(1)によって求めることができる。
【0058】
ここで、ρは導電率[S/m]であり、μは透磁率[H/m]であり、fは交流電流の周波数[Hz]である。
【0059】
検知部43は、接触又は非接触で各回転体30の回転数をそれぞれ検知する装置であり、例えば、ホール素子やロータリーエンコーダ等である。この検知部43は、電流制御部44に接続され、検知した各回転体30の回転数に応じた回転数信号を電流制御部44に出力する。
【0060】
電流制御部44は、各回転体30を互いに逆方向に回転させつつ主軸12周りの回転周期を同期させるように、各励磁コイル41に所定の周波数の電流をそれぞれ供給する。具体的に、電流制御部44は、検知部43からの回転数信号に基づいて、各回転体30の回転周期がずれると、前記回転周期が同期するように各励磁コイル41に電流を供給する。詳しくは、以下の通りである。
【0061】
各励磁コイル41が電力を供給されて励磁すると、当該励磁コイル41を挟むように配置され且つ磁性材料によって構成される固定子20と各回転体30との内部に励磁コイル41を囲むような磁束線(
図1のα参照)を有する磁場が形成される。この磁束線は、磁気抵抗が小さくなるような経路を通るため、回転体30において固定子20に近い周縁側突部38(又は中心側突部37)の先端から固定子20内に入り、固定子20内を通って中心軸C側の部位(又は周縁側の部位)から中心側突部37(又は周縁側突部38)の先端に向かい、回転体30内に入る。このとき、固定子20に対する回転体30の回転位置によっても、回転体30の周縁側突部38と固定子20との間の磁気抵抗が変化する。具体的には、回転体30の周縁側突部38が固定子20の貫通穴22の正面位置のときに磁気抵抗が最大であり、周縁側突部38が固定子20の非開口部23の正面位置に近くなるにつれて磁気抵抗が小さくなって周縁側突部38が非開口部23の正面位置のときに(
図7(B)参照)磁気抵抗が最小となる。そして、磁束線は磁気抵抗のより小さな経路を通ろうとし、これにより、磁気吸引力が回転体30に作用する。
【0062】
このため、電流制御部44は、回転体30を加速する(回転数を上げる)ときには、先ず、
図7に示すように、各周縁側突部38が貫通穴22の正面位置から回転方向β側にずれたときに、励磁コイル41に電流を供給して励磁させる。これにより、回転体30(各周縁側突部38)に回転方向β向側を向いた磁気吸引力(
図7(A)の矢印γ参照)が働く。そして、電流制御部44は、
図7(B)に示すように、各周縁側突部38が対応する非開口部23の正面位置になるまで回転体30が回転したときに、励磁コイル41に供給していた電流を停止する。このように、回転体30には、電流が供給されてから停止するまでのあいだβ方向の力(磁気吸引力γ)が働くことにより、回転体30の回転数が上昇して回転体30の回転運動エネルギーが増加する。その後、回転体30には回転方向に力が働かない状態となるが、回転体30は
図7(C)に示すように慣性力によって回転を続ける。そして、電流制御部44は、
図7(A)に示すように、各周縁側突部38が、再度、対応する貫通穴22の正面位置から回転方向β側にずれた位置になったときに、励磁コイル41に再度電流を供給して励磁させる。これを繰り返すことにより、回転体30の回転数が上がる。
【0063】
一方、回転体30を減速(回転数を下げる)ときには、電流制御部44は、
図7(C)に示すように、各周縁側突部38が非開口部23の正面位置から回転方向β側にずれたときに、励磁コイル41に電流を供給して励磁させる。これにより、回転体30(各周縁側突部38)には、回転方向βと反対方向の磁気吸引力εが働く。そして、電流制御部44は、回転体30の各周縁側突部38が対応する貫通穴22の正面位置になったときに、励磁コイル41への電流の供給を停止する。これを繰り返すことにより、回転体30の回転数が低下する。
【0064】
このようにして、電流制御部44は、一方(又は両方)の回転体30を加速又は減速してその回転数を調整することにより、一対の回転体30、30の回転周期を同期させる。
【0065】
このように、本実施形態の電力貯蔵装置10では、一対の回転体30、30が互いに逆方向に回転しつつ回転周期が同期するため、互いの慣性モーメントが相殺されて角運動量の合計が抑えられる。これにより、当該電力貯蔵装置10を搭載した移動体が移動方向を変えたときの当該電力貯蔵装置10から移動体に作用する慣性力(回転体の回転に基づく慣性力)を効果的に抑えることができる。しかも、本実施形態の電力貯蔵装置10では、各回転体30の形状及び重さが同一であるため、これら一対の回転体30、30の角運動量の合計が0若しくはこれに極めて近い値となり、これにより、当該電力貯蔵装置10を搭載した移動体が移動方向を変えたときの当該電力貯蔵装置10から移動体に作用する慣性力(回転体30の回転に基づく慣性力)を効果的に抑えることができる。
【0066】
また、電流制御部44は、移動体から供給される電力(回生エネルギー)を励磁コイル41に供給すると共に、電力貯蔵装置10に貯蔵された前記電力を外部に出力する。
【0067】
具体的に、電流制御部44は、充電時(即ち、移動体から電力(回生エネルギー)が供給されたとき)には、この電力が回転体30の回転運動エネルギーに変換されるように励磁コイル41に前記電力(電流)を供給する。具体的には、電流制御部44は、移動体から電力が供給されると、上記と同様にして、各回転体30の回転数を上昇させるように各励磁コイル41に対して電流を供給する。これにより、各回転体30の回転数が上昇して、移動体から供給された電力が回転体30の回転運動エネルギーに変換された状態で電力貯蔵装置に貯蔵される。
【0068】
一方、電流制御部44は、放電時(即ち、電力貯蔵装置10で貯蔵した電力を外部に出力するとき)に、以下のような最も単純で解りやすい電力出力を取り出す方法を一例として挙げることができる。
【0069】
電流制御部44が各励磁コイル41に直流電流を供給すると、固定子20に対して回転体30が回転することにより固定子20と回転体30(各周縁側突部38)との間の磁気抵抗が変化し、これにより、各励磁コイル41のインダクタンスが周期的に変化する。このとき、励磁コイル41の両極(励磁コイルを構成する電導線材42の両端)の電位に着目すると周期的に変化しているため、これを交流電流として取り出して出力する。この原理を電磁気学の教科書的に述べるならば、鉄芯に巻いたコイルに直流電流を流した状態で、鉄芯を引き抜くときには復元力を感じる。このとき鉄芯を無理やり引き抜こうとするならば、コイルに逆起電力が生じて逆電流が直流電源に流れ込むことになる、即ち、直流電源へエネルギーが逆流したことになる。全体を見れば、鉄芯を引き抜く運動エネルギー(外部仕事)が、電気エネルギー(=逆電流×電源電圧)に変換されたことになる。このとき、整流子を使えば、逆電流を外部に取り出すことも可能である。これにより、回転体30の回転運動エネルギーとして貯蔵されていた電力が電力貯蔵装置10から出力される。
【0070】
以上のように、電力貯蔵装置10では、移動体から電力が供給されたときには、回転体30、励磁コイル41、固定子20及び主軸12がスイッチトリラクタンスモータ(SRモータ)として働くことにより、回転している回転体30の回転数を上昇させて前記電力を回転体30の回転運動エネルギーに変換して貯蔵する。一方、電力を出力するときには、回転体30、励磁コイル41、固定子20及び主軸12が発電機として働くことにより、回転体30の回転数を低下させ、この低下した回転数に相当する回転体30の回転運動エネルギーを電力に変換して出力する。
【0071】
減圧容器部14は、内部空間内に固定子20と一対の回転体30、30とを収容するように、これら固定子20及び一対の回転体30、30を囲む。減圧容器部14内は、真空又はこれに近い減圧状態に保たれる。これにより、高速回転する回転体30における空気の抵抗を抑えることができる。
【0072】
以上の電力貯蔵装置10によれば、一対の回転体30、30を回転周期が同期するように互いに逆回転させるといった簡素な構成によって、当該電力貯蔵装置10を搭載した移動体が移動方向を変えたときの当該電力貯蔵装置10から移動体に作用する慣性力(回転体30の回転に基づく慣性力)を効果的に抑えることができる。即ち、本実施形態の電力貯蔵装置10では、一対の回転体30、30を互いに逆方向に回転させつつ回転周期を同期させているため、互いの慣性モーメントが相殺されて角運動量の合計が抑えられる。これにより、当該電力貯蔵装置10を搭載した移動体が移動方向を変えたときの当該電力貯蔵装置10から移動体に作用する慣性力(回転体の回転に基づく慣性力)が効果的に抑えられる。
【0073】
また、本実施形態の電力貯蔵装置10では、主軸12とこの主軸12に取り付けられる一対の略円板状の回転体30、30、及び励磁コイル41、41が配置された固定子20といった簡素な構成とすることで、貯蔵した電力(回転運動エネルギー)の経時的な減少を抑えると共に回転体30の回転に起因する振動を抑えることを可能とした。即ち、主軸12、固定子20、励磁コイル41、及び回転体30とを、アキシャルギャップ型のSRモータとして作動可能な構成とすることで、貯蔵した電力(回転運動エネルギー)の経時的な減少を抑えると共に回転体30の回転に起因する振動を抑えることを可能とした。具体的には、回転する部位(回転体30)が永久磁石や励磁コイルの設けられていない単なる略円板状の磁性部材であるため、当該電力貯蔵装置10に対する電力の入出力が停止されて回転体30が駆動部によって駆動されていない自由回転(フリーホイール)状態になったときに、永久磁石によって形成される回転磁界に起因するヒステリシス損及び渦電流損が固定子20や励磁コイル41等において生じず、且つ、回転体30に励磁電流を供給するためのブラシを設けなくてもよいためこのブラシによる摩擦が回転体30に生じない。このため、フリーホイール状態における前記ヒステリシス損及び渦電流損の発生、並びに前記ブラシによる摩擦の発生に起因する回転体30の回転数の経時的な低下(即ち、回転体30に蓄えられた回転運動エネルギーの減少)が抑えられる。さらに、永久磁石を用いていないため、フリーホイール状態のときにコギングトルクが生じず、これにより、コギングトルクに基づく振動を防ぐと共にコギングトルクの発生による回転体30の回転数の低下も防ぐことができる。その結果、当該電力貯蔵装置10では、貯蔵された回生エネルギー(電力)を効率よく保持することができる。
【0074】
本実施形態の電力貯蔵装置10では、固定子20及び一対の回転体30、30(回転体本体32、32)が電気絶縁膜で被覆された軟磁性粉末によって形成されている。このため、固定子20及び各回転体30の内部を通過する磁束線が変動しても、これら固定子20及び各回転体30を構成する各軟磁性粉末が電気絶縁膜で被覆され隣接する軟磁性粉末同士が電気絶縁されているため、渦電流が流れ難く、これにより、当該電力貯蔵装置10では、固定子20及び各回転体30における渦電流損失を効果的に防ぐことができる。
【0075】
また、本実施形態の電力貯蔵装置10では、励磁コイル41が励磁したときの磁場における磁力線が当該励磁コイル41を構成する電導線材42を貫通しても、この電導線材42の厚さが表皮厚さ(スキンデプス)以下であるため、当該電導線材42における渦電流の発生が抑制され、これにより、この渦電流の発生に起因する回転体30の回転数(回転運動エネルギー)の減少を抑えることができる。しかも、厚さ表皮厚さ以下にしても電導線材42を帯状にすることで断面積を確保して電導線材42に電流が流れたときの発熱を抑えることができる。
【0076】
また、電導線材42をその厚さ方向が当該励磁コイルの径方向を向くように巻き重ねたコイル(いわゆるパンケーキコイル)41の中心軸C方向の一方側端部を固定子20に接触させることで、励磁コイル41(電導線材42)で生じた熱を接触部位から固定子20に効果的に放熱する(熱伝導させる)ことができる。
【0077】
また、本実施形態の電力貯蔵装置10では、各回転体30が磁気軸受け31介して主軸12に回転可能に取り付けられているため、回転体30が回転するときの主軸12との間の回転摩擦が効果的に抑えられる。また、主軸12と回転体30とが接触しないため、摩耗等による部品交換等のメンテナンス回数を減らすことができる。
【0078】
尚、本発明のフライホイール式電力貯蔵装置は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0079】
上記実施形態の電力貯蔵装置10では、各回転体30の形状及び重さが同一であるが、この構成に限定されない。即ち、電力貯蔵装置が一対の回転体を備え、この一対の回転体が互いに逆方向に回転しつつ主軸周りの回転周期が同期していればよい。
【0080】
かかる構成によれば、互いの慣性モーメントが相殺されて角運動量の合計が抑えられるため、当該電力貯蔵装置を搭載した移動体が移動方向を変えたときの当該電力貯蔵装置から移動体に作用する慣性力(回転体の回転に基づく慣性力)が効果的に抑えられる。
【0081】
但し、一対の回転体の角運動量の合計を0若しくはこれに近い値として、電力貯蔵装置を搭載した移動体が移動方向を変えたときの当該電力貯蔵装置から移動体に作用する慣性力をほぼ0にするためには、各回転体の形状及び重さを同一若しくは略同一にすることが好ましい。
【0082】
本発明を表現するために、上述において図面を参照しながら実施形態を通して本発明を適切且つ十分に説明したが、当業者であれば上述の実施形態を変更および/または改良することは容易に為し得ることであると認識すべきである。したがって、当業者が実施する変更形態または改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態または当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。