(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記目標吐出温度の修正は所定周期で行われ、前記修正における前記目標吐出温度の変化量は、外気温度、前記液冷媒熱交換器に入る前記被加熱液体の温度、および前記圧縮機の回転速度を用いて決定されることを特徴とする請求項1に記載のヒートポンプ給湯機。
前記目標吐出温度が予め設定された目標吐出温度の下限値よりも低い場合、前記制御部は、前記目標吐出温度の下方修正を行わないことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のヒートポンプ給湯機。
前記目標吐出温度が予め設定された目標吐出温度の上限値よりも高い場合、前記制御部は、前記目標吐出温度の上方修正を行わないことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のヒートポンプ給湯機。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明の実施形態について適宜図面を参照しながら詳細に説明する。本実施形態においては、被加熱液体として水を用いたヒートポンプ給湯機を例として説明する。本実施形態に係るヒートポンプ給湯機は、制御部が圧縮機の高圧側へ吐出される冷媒の温度(圧縮機の吐出温度)をその目標値(目標吐出温度)となるように制御する際、圧縮機の高圧側へ吐出される冷媒の圧力(圧縮機の吐出圧力)がその目標値(目標吐出圧力)となるように、適時、圧縮機の吐出温度の目標値(目標吐出温度)を修正するように構成されている。以下では、本実施形態に係るヒートポンプ給湯機の全体構成、制御部の基本動作を説明した後に、本発明に関わる制御部の動作についてさらに具体的に説明する。
【0010】
図1は、本発明の一実施形態に係るヒートポンプ給湯機Sの構成説明図である。
図1に示すように、ヒートポンプ給湯機Sは、ヒートポンプ部1とタンク部2とを備えている。ヒートポンプ部1とタンク部2とは別体としてもよいし、1つの筐体内に一体的に配置されてもよい。
【0011】
ヒートポンプ部1は、圧縮機3、液冷媒熱交換器4、減圧弁5、蒸発器6、制御部50によって主に構成されている。圧縮機3、液冷媒熱交換器4、減圧弁5、および蒸発器6は、この順番で冷媒が循環するように配管で環状に連結されている。本実施形態においては、冷媒として、自然環境にやさしい冷媒である二酸化炭素を使用している。そして、ヒートポンプ部1では、圧縮機3による冷媒(二酸化炭素)の吐出圧力が、当該冷媒の臨界圧力以上となる超臨界蒸気圧縮式の冷凍サイクルを用いており、冷媒を高温高圧にできるため例えば90℃のような高温の湯を得ることができる。
【0012】
圧縮機3は、環状の回路から戻ってきた冷媒を圧縮するとともに、圧縮した高温のガス冷媒(以下、ホットガスということがある)を再び環状の回路に送り出している。より詳細には、圧縮機3は、蒸発器6から戻ってきた冷媒を吸入・圧縮して、液冷媒熱交換器4に向かって吐出している。
【0013】
圧縮機3は、容量制御が可能であり、高温貯湯(例えば90℃)を行う場合には、通常よりも速い回転速度(例えば3000〜4000回転/分)で運転する。また、通常の貯湯温度(例えば65℃)で運転する場合は、比較的遅い回転速度(例えば1000〜2000回転/分)で運転する。また、圧縮機3は、PWM制御、電圧制御(例えばPAM制御)およびこれらの組み合わせ制御により、低速(例えば1000回転/分)から高速(例えば6000回転/分)まで回転速度の制御が行えるようになっている。
【0014】
圧縮機3と、次に説明する液冷媒熱交換器4とを接続する配管には、圧縮機3寄りに、高圧側冷媒温度、すなわち圧縮機3から吐出される冷媒の温度(圧縮機3の吐出温度)を検出する温度センサ(温度検出手段)9が設けられるとともに、高圧側冷媒圧力、すなわち圧縮機3から吐出される冷媒の圧力(圧縮機3の吐出圧力)を検出する圧力センサ(圧力検出手段)8が設けられている。
【0015】
液冷媒熱交換器4は、凝縮器として機能するものであり、圧縮機3から吐出されたホットガス(冷媒)を流通させる冷媒伝熱管2aと、被加熱液体である水を流通させる液伝熱管2bとを備えている。これらの冷媒伝熱管2aおよび液伝熱管2bは、冷媒と被加熱液体とが相互に熱交換するよう密着して設けられている。また、各伝熱管2a,2bの流れは対向するように構成されている。液冷媒熱交換器4では、圧縮機3から吐出される冷媒と被加熱液体との熱交換が行われる。
【0016】
減圧弁5は、液冷媒熱交換器4と蒸発器6との間に配置される配管の途中に設けられており、ここでは電動膨張弁が使用されている。この減圧弁5は、液冷媒熱交換器4から流出する中温高圧冷媒を減圧し、蒸発し易い低圧冷媒として蒸発器6に送り出している。そして、減圧弁5は、絞り開度(開閉度合い)が調節可能となっており、制御部50がこの絞り開度を変えてヒートポンプ部1での冷媒循環量を調節する。そして、制御部50は、後記するように、減圧弁5の絞り開度を変えることで、圧縮機3の吐出温度を調節することとなる。なお、制御部50は、蒸発器6に着霜した場合に、蒸発器6に付いた霜を融かすために減圧弁5を開放(絞り開度を全開)してデフロスト運転を行う。
【0017】
蒸発器6は、送風機7の回転によって外気を取り入れて、蒸発器6内を流通する冷媒と外気(送風)との間で熱交換を行わせることによって、外気から熱を汲み上げるものである。すなわち、蒸発器6は、減圧弁5から流出する冷媒と空気との熱交換を行う。蒸発器6を通過した冷媒は、再び圧縮機3に戻される。送風機7は、所定の回転数(回転速度)指令値で回転するように制御されている。
【0018】
温度センサ10は、蒸発器6の下流側で冷媒の温度を検出する。制御部50は、この温度センサ10の検出する温度に基づいて蒸発器6でのデフロストを行うか否かを判定し、デフロストを行う場合には減圧弁5を全開にする。符号14は、外気温度を検出する温度センサである。本実施形態では、温度センサ14は送風機7の近傍に設けられている。
【0019】
符号36は、送出配管であり、送出配管36の一端は、液冷媒熱交換器4の液伝熱管2bの出口に接続されている。この送出配管36は、冷媒で加熱された被加熱液体を液冷媒熱交換器4からタンク部2へと送り出すようになっている。より詳細には、送出配管36は、後記するタンク部2のタンク16側に向かって延出しており、タンク16の頂部に接続されている。送出配管36の液冷媒熱交換器4寄りには、液冷媒熱交換器4から出る被加熱液体の温度(本実施形態においては出湯温度)を検出する温度センサ12が設けられている。
【0020】
符号35は、供給配管であり、供給配管35は、前記冷媒で加熱される被加熱液体を液冷媒熱交換器4に供給するものである。供給配管35の一端は、液冷媒熱交換器4の液伝熱管2bの入口に接続されている。この供給配管35は、後記するタンク16側に向かって延出しており、タンク16の底部に接続されている。供給配管35の液冷媒熱交換器4寄りには、液冷媒熱交換器4に入る被加熱液体の温度(本実施形態においては入水温度)を検出する温度センサ11が設けられている。
【0021】
また、供給配管35には、ポンプ13が、液冷媒熱交換器4の上流側に配置されている。ポンプ13は、後記するタンク16から液伝熱管2bの入口側に被加熱液体を送り込むように駆動する。ポンプ13は、循環水の流量(質量流量)、流速、および圧力が自由に選択できるように構成されている。
【0022】
タンク部2は、被加熱液体(本実施形態においては水)を貯蔵するタンク16を備えている。タンク16は、ヒートポンプ部1側から延出する送出配管36および供給配管35の一端と接続されている。また、タンク16は、給湯配管38bおよび給水配管38aの一端とも接続されている。給湯配管38bの他端には、図示しない給湯口が設けられる。また、給水配管38aの他端には、図示しない給水口が設けられる。
【0023】
給水配管38aには、タンク16の上流側の給水配管38aから分岐して、給湯配管38bにその先端が合流する分岐配管38cが接続されている。この分岐配管38cは、湯水混合弁17を介して給湯配管38bに接続されている。湯水混合弁17は、その開口度合いに応じて、給水配管38aおよび分岐配管38cを介して給湯配管38bに流れ込む水の量を調節することで、給湯配管38bの他端に設けられる給湯口(図示省略)から出る湯の温度を調節する。
【0024】
本実施形態においては、被加熱液体を一旦タンク16に取り入れた後、供給配管35を介してヒートポンプ部1に供給する構成としたが、これに限らず、例えば給水口(給水管)から直接ヒートポンプ部1に被加熱液体を供給するようにしてもよい。また、本実施形態においては、ヒートポンプ部1で加熱された被加熱液体を一旦タンク16に取り入れた後、給湯配管38bを介して給湯口から供給するようにしたが、これに限らず、例えば、ヒートポンプ部1で加熱された被加熱液体を直接給湯口から供給するようにしてもよい。さらには、タンク16内の湯を給湯するのではなく、タンク16内の湯の熱を利用して水道水を加熱する熱交換器を備えた水道直圧給湯方式であってもよい。
【0025】
制御部50は、CPU、ROM、RAM、各種インタフェース、電子回路等を含んで構成されており、その内部に記憶されたプログラムに従って、本実施形態に係るヒートポンプ給湯機Sを総合的に制御する。例えば、制御部50は、前記したように、温度センサ10の検出する温度(蒸発器6の出口冷媒温度)に基づいて蒸発器6のデフロストを行う。また、制御部50は、温度センサ9,11,12,14で検出した温度、および圧力センサ8で検出した圧力などに基づいて、後記する手順により圧縮機3の目標吐出圧力、および圧縮機3の目標吐出温度を算出する。
【0026】
次に、ヒートポンプ給湯機Sの動作について説明する。ヒートポンプ給湯機Sにおいて、深夜電力で沸き上げ運転を行うときには、タンク16内の湯はほぼ使い切られており、この場合、タンク16内は冷水(常温水)で満たされている。あるいは、タンク16内の頂部に湯が残存する場合もある。
【0027】
通常タンク16内は常時満水であり、この状態で、ヒートポンプ給湯機Sは貯湯運転工程を実施する。ヒートポンプ給湯機Sは、起動した圧縮機3が吐出するホットガスを液冷媒熱交換器4の冷媒伝熱管2aに送り込む。冷媒伝熱管2aに送り込まれたホットガスは、液伝熱管2b内の水に熱を放出することで凝縮する。そして、液伝熱管2b内の水はホットガスで加熱される。次いで、液冷媒熱交換器4の冷媒伝熱管2aから送り出された冷媒は、減圧弁5(膨張弁)で減圧された後に、蒸発器6に流れ込む。蒸発器6に流れ込んだ冷媒は、送風機7から送り込まれた風によって蒸発する際に、外気から熱を汲み上げる。その後、冷媒は、圧縮機3に戻って再び圧縮される。
【0028】
一方で、タンク16に満たされた水は、ポンプ13が起動することで、供給配管35を介してタンク16の底部から液冷媒熱交換器4の液伝熱管2b内に送り込まれる。液伝熱管2b内に送り込まれた水は、前記したように、冷媒との熱交換で加熱されて湯となって、送出配管36に流れ込む。送出配管36に流れ込んだ湯は、タンク16の頂部に戻って貯蔵される。タンク16の頂部に戻された湯は密度が小さいので、タンク16底部の冷水と混ざることはなく、頂部から順々に溜まっていく。このようにタンク16と液冷媒熱交換器4との間で水が循環する間に、ヒートポンプ給湯機Sは、タンク16内に所定の温度で所定の湯量を確保する。
【0029】
ヒートポンプ給湯機Sの制御部50は、圧縮機3、ポンプ13、および減圧弁5を次のよう制御する。制御部50は、圧縮機3の回転速度を、温度センサ12で検出される液冷媒熱交換器4の出口における出湯温度に基づいて制御する。具体的には、制御部50は、温度センサ12で検出される温度が、予め設定された出湯温度の目標値となるように、圧縮機3の回転速度を制御する。つまり、目標値に対して温度センサ12の検出値が低い場合には圧縮機3の回転速度を速め、これとは逆に検出値が高い場合には圧縮機3の回転速度を遅くする。
【0030】
また、制御部50は、加熱能力を制御するために、ポンプ13が液冷媒熱交換器4の液伝熱管2bに送り込む水の量を、予め求めた圧縮機3の目標回転速度に基づいて制御する。具体的には、圧縮機3の目標回転速度に対して実回転速度が遅い場合には、液伝熱管2bに送り込まれる水の量が増えるようにポンプ13を制御し、これとは逆に圧縮機3の実回転速度が速い場合には、液伝熱管2bに送り込まれる水の量が減るようにポンプ13を制御する。これにより、加熱能力を目標値(例えば4.5kW)に調整することが可能となっている。
【0031】
なお、前記した圧縮機3の目標回転速度は、前記した液冷媒熱交換器4の出湯温度の目標値のほか、ヒートポンプ部1の目標加熱能力(出力)、温度センサ14の検出値(外気温度)、および温度センサ11の検出値(入水温度)に基づいて設定することもできる。圧縮機3の目標回転速度は、具体的には、例えば、前記したように、高温貯湯(例えば、90℃)を行う場合には、3000〜4000回転/分の範囲で設定され、通常の貯湯温度(例えば、65℃)で運転する場合は、1000〜2000回転/分の範囲で設定されるが、これに限定されるものではない。
【0032】
また、制御部50は、圧縮機3の目標吐出温度を算出し、温度センサ9により検出される圧縮機3の吐出温度と目標吐出温度との差に基づいて減圧弁5の開度制御を行う。すなわち、制御部50は、圧縮機3の吐出温度が制御部50によって予め算出された目標値(目標吐出温度)となるように、減圧弁5を開度制御する。具体的には、温度センサ9の検出温度が目標吐出温度よりも高いときには減圧弁5を開き、低いときには減圧弁5を閉じる方へ調整する。この目標吐出温度は、制御部50が、前記した液冷媒熱交換器4の出湯温度の目標値のほか、ヒートポンプ部1の目標加熱能力(出力)、温度センサ14の検出値(外気温度)、および温度センサ11の検出値(入水温度)に基づいて算出し、設定することもできる。目標吐出温度は、ヒートポンプ部1が最大の成績係数(COP)となるように設定するが、この限りではない。
【0033】
次に、本発明に関わる制御部50の動作を説明する。
図2は、制御部50による目標吐出温度の修正処理の手順を示すフローチャートである。制御部50は、圧力センサ8の検出値(圧縮機3の吐出圧力)が目標値(目標吐出圧力)となるように、
図2に示すように、目標吐出温度を修正する。
【0034】
図2のフローチャートにおいて、まず、ヒートポンプ部1が起動すると、制御部50は、RAM等のメモリの所定領域に記憶される補正値を「0」(初期値)にセットする(ステップS1)。
【0035】
次に、制御部50は、前記した通常の方法で、目標吐出温度と目標吐出圧力とを算出する。そして、制御部50は、算出された目標吐出温度に補正値を加算して、これを新たな目標吐出温度とする(ステップS2)。ここで、ヒートポンプ部1起動時においては、初期の補正値は「0」である(ステップS1参照)。
【0036】
続いて、制御部50は、温度センサ9の検出値(圧縮機3の吐出温度)が、ステップS2で算出した目標吐出温度となるように、減圧弁5を開度制御(開度調整)する(ステップS3)。すなわち、温度センサ9により検出される吐出温度と目標吐出温度との差に基づいて、減圧弁5の開度制御が行われる。
【0037】
続いて、制御部50は、所定時間が経過したか否かを監視する(ステップS4)。本実施形態においては、所定時間は例えば60秒であるが、これに限定されるものではなく、適宜変更可能である。この所定時間は、目標吐出温度の修正を行う周期を示している。制御部50は、所定時間が経過していないと判断した場合(ステップS4:No)、処理をステップS3に戻し、所定時間が経過したと判断した場合(ステップS4:Yes)、処理をステップS5に進める。
【0038】
ステップS5では、制御部50は、圧力センサ8の検出値(圧縮機3の吐出圧力)と目標吐出圧力の差を監視し、目標吐出圧力から圧力センサ8の検出値を差し引いた値が、予め決められた設定偏差よりも大きいか否かを判断する。制御部50は、目標吐出圧力から圧力センサ8の検出値を差し引いた値が設定偏差よりも大きいと判断した場合(ステップS5:Yes)、処理をステップS6に進め、目標吐出圧力から圧力センサ8の検出値を差し引いた値が設定偏差以下であると判断した場合(ステップS5:No)、処理をステップS8に進める。
【0039】
ステップS6では、制御部50は、目標吐出温度が予め設定された目標吐出温度の上限値よりも高いか否かを判断する。制御部50は、目標吐出温度が予め設定された目標吐出温度の上限値よりも高いと判断した場合(ステップS6:Yes)、処理をステップS2に戻し、目標吐出温度が予め設定された目標吐出温度の上限値以下であると判断した場合(ステップS6:No)、処理をステップS7に進める。
【0040】
ステップS7では、制御部50は、前記メモリの所定領域に記憶される補正値に、変化量αを加算して新たな補正値とし、処理をステップS2に戻す。
【0041】
ステップS8では、制御部50は、圧力センサ8の検出値(圧縮機3の吐出圧力)と目標吐出圧力の差を監視し、圧力センサ8の検出値から目標吐出圧力を差し引いた値が、予め決められた設定偏差よりも大きいか否かを判断する。制御部50は、圧力センサ8の検出値から目標吐出圧力を差し引いた値が設定偏差よりも大きいと判断した場合(ステップS8:Yes)、処理をステップS9に進め、圧力センサ8の検出値から目標吐出圧力を差し引いた値が設定偏差以下であると判断した場合(ステップS8:No)、処理をステップS2に戻す。
【0042】
ステップS9では、制御部50は、目標吐出温度が予め設定された目標吐出温度の下限値よりも低いか否かを判断する。制御部50は、目標吐出温度が予め設定された目標吐出温度の下限値よりも低いと判断した場合(ステップS9:Yes)、処理をステップS2に戻し、目標吐出温度が予め設定された目標吐出温度の下限値以上であると判断した場合(ステップS9:No)、処理をステップS10に進める。
【0043】
ステップS10では、制御部50は、前記メモリの所定領域に記憶される補正値から、変化量αを減算して新たな補正値とし、処理をステップS2に戻す。
【0044】
このように、制御部50は、圧縮機3の目標吐出圧力を算出し、圧力センサ8により検出される圧縮機3の吐出圧力と目標吐出圧力との差に基づいて目標吐出温度の修正を行う。すなわち、制御部50は、圧縮機3の吐出圧力が制御部50によって予め算出された目標値(目標吐出圧力)となるように、目標吐出温度の修正を行う。具体的には、目標吐出圧力から圧力センサ8の検出値を差し引いた値が設定偏差よりも大きいときには、目標吐出温度が上方修正され(ステップS7、S2)、圧力センサ8の検出値から目標吐出圧力を差し引いた値が設定偏差よりも大きいときには、目標吐出温度が下方修正される(ステップS10、S2)。
【0045】
ここで、圧力センサ8の検出値と目標吐出圧力との差が設定偏差以内であれば(ステップS5:No、およびS8:No)、補正値を変化させる処理(ステップS7、S10)は行われない。この設定偏差は、圧力センサ8の分解能に応じて決定され、例えば0.03MPaのような一定値でもよいが、例えば、外気温度、入水温度、加熱能力などを用いて設定偏差を決定(変更)することもできる。
【0046】
さらに本実施形態では、目標吐出温度が予め設定された上限値よりも高いか下限値よりも低い場合には(ステップS6:Yes、またはS9:Yes)、補正値を変化させる処理(ステップS7、S10)は行われない。この変化量αは正の値であり、ここでは、例えば0.5℃のような一定値である。但し、変化量αは、温度センサの分解能に応じて、例えば0.1℃〜1℃の間で設定することができるが、これに限定されるものではない。また、変化量αは、例えば0.5℃のような一定値でもよいが、例えば、外気温度、液冷媒熱交換器4に入る被加熱液体の温度(入水温度)、および圧縮機3の回転速度を用いて決定(変更)されるようにしてもよい。
【0047】
そして、ステップS8でNoの場合、ステップS7の後、あるいはステップS10の後には、ステップS2に戻り、制御部50は、目標吐出温度を決定し、ステップS3に進んで、圧縮機3の吐出温度が、ステップS2において決定された目標吐出温度となるように減圧弁5を開度制御する。
【0048】
本実施形態に係るヒートポンプ給湯機Sにおいては、
図2に示すような動作を繰り返すことにより、出湯温度を損なうことなく、成績係数(COP)の安定化、最大化を図る運転を行うことが可能となる。
【0049】
図3は、本実施形態に係るヒートポンプ給湯機Sにおいて、目標吐出温度を修正するタイミングを説明するためのタイムチャートの一例である。
図3には、圧縮機3の初期の目標吐出温度、圧縮機3の修正後の目標吐出温度、圧縮機3の吐出温度(温度センサ9の検出値)、圧縮機3の目標吐出圧力、圧縮機3の吐出圧力(圧力センサ8の検出値)がそれぞれ示されている。なお、
図3中、横軸は紙面左側から右側に向かってヒートポンプ給湯機Sの始動からの経過時間を表し、左縦軸は、圧縮機3から吐出される冷媒の圧力(吐出圧力)を示し、右縦軸は、圧縮機3から吐出される冷媒の温度(吐出温度)を示している。
【0050】
図3に示すように、ヒートポンプ給湯機Sが始動すると、圧縮機3が駆動することで、圧縮機3の吐出圧力が時間経過と共に上昇し、圧縮機3の吐出温度も時間経過と共に上昇する。このとき、制御部50は、圧縮機3の吐出温度(温度センサ9の検出値)が目標値(目標吐出温度)に近づくように、減圧弁5を開度制御する。
【0051】
ヒートポンプ給湯機Sの起動時においては、圧縮機3の吐出圧力が、制御部50により算出された目標吐出圧力に対して、設定偏差分よりも低いため(
図2のステップS5:Yes)、制御部50は、目標吐出温度を上方修正する(
図2のステップS7、
図3の時刻t0〜t1)。
【0052】
次に、圧縮機3の吐出圧力が上昇して、目標吐出圧力に対して、設定偏差分よりも高くなったとき(
図2のステップS8:Yes)、制御部50は、目標吐出温度を下方修正する(
図2のステップS10、
図3の時刻t1〜t2)。
【0053】
そして、圧縮機3の吐出圧力は、制御部50による目標吐出温度の修正によって、目標吐出圧力となるように維持される(
図3の時刻t2以降)。なお、
図3は、目標吐出温度が、予め設定された上限値と下限値との間にある場合を示している。
【0054】
以上説明したように、本実施形態に係るヒートポンプ給湯機Sでは、制御部50は、圧縮機3の目標吐出温度を算出し、温度センサ9により検出される圧縮機3の吐出温度と目標吐出温度との差に基づいて減圧弁5の開度制御を行うとともに、圧縮機3の目標吐出圧力を算出し、圧力センサ8により検出される圧縮機3の吐出圧力と目標吐出圧力との差に基づいて目標吐出温度の修正を行う。
このように本実施形態では、圧縮機3の吐出温度が目標吐出温度となるように減圧弁5の開度制御が行われると同時に、圧縮機3の吐出圧力が目標吐出圧力となるように目標吐出温度が修正される。
したがって本実施形態によれば、出湯温度を損なうことなく成績係数を安定化させることができるヒートポンプ給湯機Sを提供できる。
【0055】
また、本実施形態では、目標吐出温度の修正は所定周期で行われ、前記修正における目標吐出温度の変化量αは一定値としたので、簡易な制御により、出湯温度を損なうことなく成績係数を安定化させることができる。
【0056】
なお、ヒートポンプ給湯機Sにおいて、前記修正における目標吐出温度の変化量αは、外気温度、液冷媒熱交換器4に入る被加熱液体の温度(入水温度)、および圧縮機3の回転速度を用いて決定されるように構成されてもよい。このように構成すれば、出湯温度を損なうことなく成績係数を安定化させる、より効率的な運転を行うことができる。
【0057】
また、本実施形態では、目標吐出温度が予め設定された目標吐出温度の下限値よりも低い場合、制御部50は、目標吐出温度の下方修正を行わない。このように構成すれば、目標吐出温度が過度に低くなることがなくなり、出湯温度をより確保することができる。
【0058】
また、本実施形態では、目標吐出温度が予め設定された目標吐出温度の上限値よりも高い場合、制御部50は、目標吐出温度の上方修正を行わない。このように構成すれば、目標吐出温度が過度に高くなることがなくなり、圧縮機3等の冷凍サイクル部品を高温から保護することができ、耐久性の向上を図ることができる。
【0059】
以上、本発明について実施形態に基づいて説明したが、本発明は前記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、前記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0060】
本発明の「被加熱液体」として、給水源から給水配管を介して供給される水道水を例示して説明したが、本発明はこの例に限定されない。本発明の「被加熱液体」としては、例えば、井戸水を採用してもよい。また、水以外にも、潜熱蓄熱材入りの液体、ブライン、不凍液などを、本発明の「被加熱液体」として採用してもよい。すなわち、ヒートポンプ給湯機の用語は、本発明では、被加熱液体として水以外の液体を用いる場合を含む概念として使用している。