【実施例】
【0053】
以下,本発明を実施例により更に説明する。ただし,本発明がこれらの実施例に限定されるものではない。なお,実施例中で本発明の化合物が水溶液中でミセル等の粒子を形成する場合,該粒子の大きさ(粒径)は動的光散乱法によるガウス分布分析又は静的光散乱法によるRMS半径で示し,前者はZetaPotential/Particlesizer NICOMP
TM 380ZLS(Particle Sizing Systems社製)により,後者はDAWN EOS
TM(Wyatt Technology社製)により測定し算出した。
【0054】
合成例1 N−(tert−ブトキシカルボニル)アスパラギン酸−1−フェニルブチルアミド−4−ベンジルエステル(化合物1)の合成
4.27gのN−(tert−ブトキシカルボニル)アスパラギン酸−4−ベンジルエステル((株)ペプチド研究所製)と2.1mLの1−フェニルブチルアミンを40mLのDMFに溶解後,2.70gのWSC塩酸塩と1.93gのHOBtを加え,室温にて6時間攪拌した。反応液に水を加え,酢酸エチルにて抽出し,有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し,硫酸マグネシウムで乾燥後,減圧下で酢酸エチルを留去し,次いで真空乾燥して化合物1を3.94g得た。
MS:m/z 477(M+Na)
+:C
26H
34N
2O
5(M+Na)
+としての計算値 477
【0055】
合成例2 N−(tert−ブトキシカルボニル)アスパラギン酸−1−フェニルブチルアミド(化合物2)の合成
合成例1で得られた3.50gの化合物1を酢酸エチル15mLに溶解し,5%パラジウム炭素(水分含量50%)0.656gを加えた後,系内を水素置換し,室温にて一夜攪拌し水素化分解した。5%パラジウム炭素を濾過し,酢酸エチル80mLで洗浄後,有機層を併せ,減圧下で酢酸エチルを留去し,次いで真空乾燥して化合物2を2.58g得た。
MS:m/z 387(M+Na)
+:C
19H
28N
2O
5(M+Na)
+としての計算値 387
【0056】
合成例3 N−(tert−ブトキシカルボニル)アスパラギン酸−1−フェニルブチルアミド−4−(3’−エチニルシチジン)アミド(化合物3)の合成
合成例2で得られた754mgの化合物2,500mgの3’−エチニルシチジン及び275mgのHOBtを4mLのDMFに溶解後,系内をアルゴン置換し,353mgのWSC塩酸塩を加えて20℃にて10時間攪拌した。次いで,377mgの化合物2と177mgのWSC塩酸塩を加えて20℃にて3時間,続いて177mgのWSC塩酸塩を加えて20℃にて2時間,更に,189mgの化合物2と177mgのWSC塩酸塩を加えて20℃にて2時間攪拌した。反応液に水を加え酢酸エチルにて抽出し,有機層を飽和塩化アンモニウム水溶液,飽和炭酸水素ナトリウム水溶液,飽和塩化ナトリウム水溶液で順次洗浄した。硫酸マグネシウムで乾燥後,減圧下で酢酸エチルを留去し,得られた油状物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(CHCl
3/MeOH)にて精製し,化合物3を716mg得た。
1H−NMR(400MHz,DMSO−d
6,ppm):1.35(s,9H),1.3−1.6(m,4H),2.55(m,2H),2.6−2.7(m,2H),3.06(m,2H),3.16(s,1H),3.54(s,1H),3.6−3.7(m,2H),3.96(m,1H),4.14(d,1H),4.3(br,1H),5.0(br,1H),5.87(d,1H),5.93(br,1H),7.01(d,1H),7.1−7.2(m,5H),7.80(br,1H),8.31(d,1H),10.87(s,1H)
MS:m/z 614(M+H)
+:C
29H
37N
5O
9(M+H)
+としての計算値 614
【0057】
合成例4 アスパラギン酸−1−フェニルブチルアミド−4−(3’−エチニルシチジン)アミド(化合物4)の合成
合成例3で得られた860mgの化合物3を酢酸エチル3.5mLに溶解後,3.5mLの4N−HCl/AcOEtを加えて室温にて1時間攪拌した。反応終了後,減圧下で酢酸エチルを留去して化合物4を710mg得た。
MS:m/z 514(M+H)
+:C
25H
31N
5O
7(M+H)
+としての計算値 514
【0058】
実施例1 分子量12000のメトキシポリエチレングリコール構造部分と重合数が21のポリグルタミン酸部分からなるブロック共重合体と,アスパラギン酸−1−フェニルブチルアミド−4−(3’−エチニルシチジン)アミドとのアミド結合体:一般式(III)のR
1=メチル基,R
3=トリメチレン基,R
4=アセチル基,R
7及びR
8=水素原子,R
6=1−フェニルブチル基,p=q=1,i+n=21,b=273(化合物5)の合成
国際公開2006/120914号パンフレットに記載された方法によって調製した503mgのメトキシポリエチレングリコール−ポリグルタミン酸ブロック共重合体を9mLのDMFに溶解した。合成例4で得られた600mgの化合物4,197μLのトリエチルアミン,227μLのDIPCI及び96mgのHOBtを加えて,20℃にて24時間攪拌した。更に,55μLのトリエチルアミンと114μLのDIPCIを加えて3時間攪拌後,反応液をエタノール9mL及びジイソプロピルエーテル72mLの混合溶液にゆっくり滴下した。室温にて1時間攪拌し,沈析物を濾取してエタノール/ジイソプロピルエーテル(1/8(v/v),20mL)で洗浄した。沈析物をアセトニトリル12mLに溶かし,エタノール15mL及びジイソプロピルエーテル90mLの混合溶液にゆっくり滴下し室温にて1時間攪拌し,沈析物を濾取してエタノール/ジイソプロピルエーテル(1/8(v/v),20mL)で洗浄した。沈析物をアセトニトリル10mL及び水10mLに溶解し,イオン交換樹脂(ダウケミカル製ダウエックス50(H
+),2mL)を加え攪拌し,樹脂を濾取してアセトニトリル/水(1/1(v/v),30mL)にて洗浄した。得られた溶液からアセトニトリルを減圧下留去し,次いで凍結乾燥して化合物5を580mg得た。
【0059】
化合物5に結合した3’−エチニルシチジンの含量は,化合物5に1N−水酸化ナトリウム水溶液を加えて37℃で1時間攪拌後,遊離した3’−エチニルシチジンをHPLC(高速液体クロマトグラフィー)で分析し,予め3’−エチニルシチジンにより得られた検量線を用いて計算し求めた。その結果,結合した3’−エチニルシチジンの含量は19.4%(w/w)だった。
【0060】
化合物5の水溶液(1mg/mL)を用いてガウス分布分析及び静的光散乱法によるRMS半径の算出を行ったところ,それぞれ18nm(volume weighting),11nmだった。このことから化合物5は水中でミセルを形成していると考えられる。
【0061】
合成例5 N−(tert−ブトキシカルボニル)アスパラギン酸−1−ブチルアミド−4−ベンジルエステル(化合物6)の合成
4.27gのN−(tert−ブトキシカルボニル)アスパラギン酸−4−ベンジルエステルと1.31mLのn−ブチルアミンを25mLのDMFに溶解後,2.93gのWSC塩酸塩と1.93gのHOBtを加え,室温にて一夜攪拌した。反応液に水を加え,酢酸エチルにて抽出し,有機層を飽和塩化アンモニウム水溶液,飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し,硫酸マグネシウムで乾燥後,減圧下で酢酸エチルを留去し,次いで真空乾燥して化合物6を5.12g得た。
【0062】
合成例6 N−(tert−ブトキシカルボニル)アスパラギン酸−1−ブチルアミド(化合物7)の合成
合成例5で得られた5.09gの化合物6を酢酸エチル15mLに溶解し,5%パラジウム炭素(水分含量50%)0.656gを加えた後,系内を水素置換し,室温にて一夜攪拌し水素化分解した。5%パラジウム炭素を濾過し,酢酸エチルで洗浄後,有機層を併せ,減圧下で酢酸エチルを留去し,次いで真空乾燥して化合物7を4.05g得た。
【0063】
合成例7 N−(tert−ブトキシカルボニル)アスパラギン酸−1−ブチルアミド−4−(3’−エチニルシチジン)アミド(化合物8)の合成
合成例6で得られた596mgの化合物7,500mgの3’−エチニルシチジン及び275mgのHOBtを4mLのDMFに溶解後,系内をアルゴン置換し,353mgのWSC塩酸塩を加えて20℃にて9時間攪拌した。次いで,298mgの化合物7と177mgのWSC塩酸塩を加えて20℃にて3時間,更に,298mgの化合物7と177mgのWSC塩酸塩を加えて20℃にて3時間攪拌した。反応液に水を加え酢酸エチルにて抽出し,有機層を飽和塩化アンモニウム水溶液,飽和炭酸水素ナトリウム水溶液,飽和塩化ナトリウム水溶液で順次洗浄し,硫酸マグネシウムで乾燥後,減圧下で酢酸エチルを留去し,得られた油状物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(CHCl
3/MeOH)にて精製し,化合物8を590mg得た。
1H−NMR(400MHz,DMSO−d
6,ppm):0.85(t,3H),1.2−1.3(m,4H),1.36(s,9H),2.5−2.7(m,2H),3.03(m,2H),3.53(s,1H),3.6−3.7(m,2H),3.96(m,1H),4.14(m,1H),4.28(m,1H),5.08(m,1H),5.87(d,1H),5.92(m,2H),7.00(d,1H),7.20(d,1H),7.75(m,1H),8.32(d,1H),10.86(s,1H)
MS:m/z 538(M+H)
+:C
23H
33N
5O
9(M+H)
+としての計算値 538
【0064】
合成例8 アスパラギン酸−1−ブチルアミド−4−(3’−エチニルシチジン)アミド(化合物9)の合成
合成例7で得られた590mgの化合物8を酢酸エチル3mLに溶解後,2.7mLの4N−HCl/AcOEtを加え室温にて1時間攪拌した。反応終了後,減圧下で酢酸エチルを留去して化合物9を500mg得た。
MS:m/z 438(M+H)
+:C
19H
27N
5O
7(M+H)
+としての計算値 438
【0065】
実施例2 分子量12000のメトキシポリエチレングリコール構造部分と重合数が21のポリグルタミン酸部分からなるブロック共重合体と,アスパラギン酸−1−ブチルアミド−4−(3’−エチニルシチジン)アミドとのアミド結合体:一般式(III)のR
1=メチル基,R
3=トリメチレン基,R
4=アセチル基,R
7及びR
8=水素原子,R
6=1−ブチル基,p=q=1,i+n=21,b=273(化合物10)の合成
国際公開2006/120914号パンフレットに記載された方法によって調製した438mgのメトキシポリエチレングリコール−ポリグルタミン酸ブロック共重合体を8mLのDMFに溶解し,35℃にて15分攪拌後,20℃にて1時間攪拌した。合成例8で得られた450mgの化合物9,172μLのトリエチルアミン,198μLのDIPCI及び84mgのHOBtを加えて,20℃にて24時間攪拌した。更に,48μLのトリエチルアミンと99μLのDIPCIを加えて3時間攪拌後,反応液をエタノール8mL及びジイソプロピルエーテル64mLの混合溶液にゆっくり滴下した。室温にて1時間攪拌し,沈析物を濾取してエタノール/ジイソプロピルエーテル(1/8(v/v),18mL)で洗浄した。沈析物を1mlのDMF及び7mLのアセトニトリルの混合溶媒に溶解し,エタノール8mL及びジイソプロピルエーテル64mLの混合溶液にゆっくり滴下し,室温にて1時間攪拌し,沈析物を濾取してエタノール/ジイソプロピルエーテル(1/8(v/v),18mL)で洗浄した。沈析物をアセトニトリル13.5mL及び水4.5mLに溶解後,イオン交換樹脂(ダウケミカル製ダウエックス50(H
+),5mL)を加え攪拌し,樹脂を濾取してアセトニトリル/水(1/1(v/v),25mL)にて洗浄した。得られた溶液からアセトニトリルを減圧下留去し,次いで凍結乾燥して化合物10を560mg得た。
【0066】
化合物10に結合した3’−エチニルシチジンの含量は,実施例1と同様に加水分解後にHPLC(高速液体クロマトグラフィー)を用いて分析した。結合した3’−エチニルシチジンの含量は20.9%(w/w)だった。
【0067】
化合物10の水溶液(1mg/mL)を用いてガウス分布分析を行ったところ,散乱強度が弱く,この濃度で化合物10は水中でミセルを形成していないと考えられた。
【0068】
合成例9 N−(tert−ブトキシカルボニル)アスパラギン酸−1−アダマンタンメチルアミド−4−ベンジルエステル(化合物11)の合成
10.3gのN−(tert−ブトキシカルボニル)アスパラギン酸−4−ベンジルエステルと5.17gの1−アダマンタンメチルアミンを100mLのDMFに溶解後,7.15gmのWSC塩酸塩と4.72gのHOBtを加え,室温にて一夜攪拌した。反応液に水を加え,酢酸エチルにて抽出し,有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し,硫酸マグネシウムで乾燥後,減圧下で酢酸エチルを留去し,次いで真空乾燥して化合物11を15.0g得た。
1H−NMR(400MHz,CDCl
3,ppm):1.42(s,6H),1.46(s,9H),1.61(d,3H),1.70(d,3H),1.97(s,3H),2.71−2.76(m,1H),2.91−2.96(m,2H),3.03(dd,1H),4.50(br,1H),5.11(d,1H),5.16(d,1H),5.74(br,1H),6.56(br,1H),7.38−7.31(m,5H)
MS:m/z 493(M+Na)
+:C
27H
38N
2O
5(M+Na)
+としての計算値 493
【0069】
合成例10 N−(tert−ブトキシカルボニル)アスパラギン酸−1−アダマンタンメチルアミド(化合物12)の合成
合成例9で得られた15.0gの化合物11を酢酸エチル75mLに溶解し,10%パラジウム炭素(水分含量50%)1.5gを加えた後,系内を水素置換し,室温にて2日間攪拌し水素化分解した。10%パラジウム炭素を濾過し,酢酸エチル20mLで洗浄後,有機層を併せ,減圧下で酢酸エチルを留去し,次いで真空乾燥して化合物12を9.22g得た。
1H−NMR(400MHz,CDCl
3,ppm):1.46(s,15H),1.61(d,3H),1.70(d,3H),1.96(s,3H),2.71−2.77(m,1H),2.89−3.06(m,3H)4.49(br,1H),5.76(br,1H),6.77(br,1H)
MS:m/z 403(M+Na)
+:C
20H
32N
2O
5(M+Na)
+としての計算値 403
【0070】
合成例11 N−(tert−ブトキシカルボニル)アスパラギン酸−1−アダマンタンメチルアミド−4−(3’−エチニルシチジン)アミド(化合物13)の合成
合成例10で得られた1.88gの化合物12,1.10gの3’−エチニルシチジン及び658mgのHOBtを20mLのDMFに溶解後,凍結脱気を行った。914mgのWSC塩酸塩を加えて20℃にて9時間攪拌した。次いで,313mgの化合物12と141mgのWSC塩酸塩を加えて20℃にて2時間攪拌した。反応液に水を加え,酢酸エチルにて抽出し,有機層を飽和塩化アンモニウム水溶液,飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し,硫酸マグネシウムで乾燥後,減圧下で酢酸エチルを留去し,得られた油状物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(CHCl
3/n−Hexane)にて精製し,化合物13を1.47g得た。
1H−NMR(400MHz,CDCl
3,ppm):1.41(s,9H),1.45(s,6H),1.58(d,3H),1.67(d,3H),1.93(s,3H),2.64(br,2H),2.92−3.22(m,5H),4.00(br,1H),4.30(br,1H),4.49(br,1H),4.68(br,1H),5.18(br,1H),5.85(br,1H),5.26(br,1H),7.01(br,1H),7.45(br,1H),7.71(br,1H),8.22(br,1H),10.5(br,1H)
MS:m/z 630(M+H)
+:C
31H
43N
5O
9(M+H)
+としての計算値 630
【0071】
合成例12 アスパラギン酸−1−アダマンタンメチルアミド−4−(3’−エチニルシチジン)アミド(化合物14)の合成
合成例11で得られた1.47gの化合物13を酢酸エチル6mLに溶解後,6mLの4N−HCl/AcOEtを加えて室温にて1時間攪拌した。反応終了後,減圧下で酢酸エチルを留去し,次いで真空乾燥して化合物14を1.20g得た。
1H−NMR(400MHz,CD
3OD,ppm):1.57(s,6H),1.70(br,3H),1.79(br,3H),2.00(s,3H),2.82(br,2H),3.15−3.20(m,5H),4.05(br,1H),4.22(br,1H),4.36(br,1H),6.04(br,1H),7.37(br,1H),8.60(br,1H)
MS:m/z 530(M+H)
+:C
26H
35N
5O
7(M+H)
+としての計算値 530
【0072】
実施例3 分子量12000のメトキシポリエチレングリコール構造部分と重合数が21のポリグルタミン酸部分からなるブロック共重合体と,アスパラギン酸−1−アダマンタンメチルアミド−4−(3’−エチニルシチジン)アミドとのアミド結合体:一般式(III)のR
1=メチル基,R
3=トリメチレン基,R
4=アセチル基,R
7及びR
8=水素原子,R
6=1−アダマンチルメチル基,p=q=1,i+n=21,b=273(化合物15)の合成
国際公開2006/120914号パンフレットに記載された方法によって調製した489mgのメトキシポリエチレングリコール−ポリグルタミン酸ブロック共重合体を10mLのDMFに溶解した。合成例12で得られた600mgの化合物14,192μLのトリエチルアミン,221μLのDIPCI及び94.0mgのHOBtを加えて,20℃にて19時間攪拌した。更に,53μLのトリエチルアミンと55μLのDIPCIを加えて4時間攪拌後,反応液をエタノール10mL及びジイソプロピルエーテル90mLの混合溶液にゆっくり滴下した。室温にて1時間攪拌し,沈析物を濾取してエタノール/ジイソプロピルエーテル(1/9(v/v),10mL)で洗浄した。沈析物を8mLのDMFに溶かし,エタノール10mL及びジイソプロピルエーテル90mLの混合溶液にゆっくり滴下し,室温にて1時間攪拌し,沈析物を濾取してエタノール/ジイソプロピルエーテル(1/9(v/v),4mL)で洗浄した。沈析物をアセトニトリル10mL及び水10mLに溶解後,イオン交換樹脂(ダウケミカル製ダウエックス50(H
+),1mL)を加え攪拌し,樹脂を濾取してアセトニトリル/水(1/1(v/v),10mL)にて洗浄した。得られた溶液からアセトニトリルを減圧下留去し,次いで凍結乾燥することにより化合物15を775mg得た。
【0073】
化合物15に結合した3’−エチニルシチジンの含量は,実施例1と同様に加水分解後にHPLC(高速液体クロマトグラフィー)を用いて分析し計算した。結合した3’−エチニルシチジンの含量は19.5%(w/w)だった。
【0074】
化合物15の水溶液(1mg/mL)を用いてガウス分布分析及び静的光散乱法によるRMS半径の算出を行ったところ,それぞれ20nm(volume weighting),13nmだった。よって,化合物15は水中でミセルを形成しているものと考えられた。
【0075】
合成例13 フェニルアラニンフェニルブチルエステル(化合物16)の合成
5.03gのフェニルアラニンと22.8gの4−フェニル−1−ブタノールを1,4−ジオキサン17mL中に加え,17mLの4N−HCl/1,4−dioxaneを加えて室温にて4日間攪拌した。濾過をして濾液にジエチルエーテル450mLを加えて室温にて1.5時間攪拌した。沈析物を濾取し,ジエチルエーテル50mLで洗浄後,真空乾燥して化合物16を5.90g得た。
1H−NMR(400MHz,CDCl
3,ppm):1.44−1.55(m,4H),2.53(t,2H),3.31(dd,2H),3.44(dd,2H),4.05(t,2H),4.44(dd,1H),7.11−7.29(m,10H),8.74(br,2H)
MS:m/z 298(M+H)
+:C
19H
23NO
2(M+H)
+としての計算値 298
【0076】
合成例14 N−(tert−ブトキシカルボニル)アスパラギン酸−1−フェニルアラニン−(4−フェニルブチルエステル)アミド−4−ベンジルエステル(化合物17)の合成
2.08gのN−(tert−ブトキシカルボニル)アスパラギン酸−4−ベンジルエステルと合成例13で得られた2.18gの化合物16を20mLのDMFに溶解後,1.43gのWSC塩酸塩と0.943gのHOBtを加えて,室温にて一夜攪拌した。反応液に水を加え,酢酸エチルにて抽出し,有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し,硫酸マグネシウムで乾燥後,減圧下で酢酸エチルを留去し、次いで真空乾燥して化合物17を1.18g得た。
1H−NMR(400MHz,CDCl
3,ppm):1.42(s,6H),1.57−1.61(m,4H),2.60(t,2H),2.69(dd,1H),3.02−3.08(m,3H),4.04−4.13(m,2H),4.52(br,1H),4.78(dd,1H),5.11(d,1H),5.14(d,1H),5.62(br,1H),6.95(br,1H),7.12−7.38(m,15H)
MS:m/z 625(M+Na)
+:C
35H
42N
2O
7(M+Na)
+としての計算値 625
【0077】
合成例15 N−(tert−ブトキシカルボニル)アスパラギン酸−1−フェニルアラニン−(4−フェニルブチルエステル)アミド(化合物18)の合成
合成例14で得られた1.18gの化合物17を酢酸エチル5mLに溶解し,10%パラジウム炭素(水分含量50%)0.118gを加えた後,系内を水素置換し,室温にて一夜攪拌した。10%パラジウム炭素を濾過し,酢酸エチル20mLで洗浄後,有機層を併せ,減圧下で酢酸エチルを留去し,次いで真空乾燥して化合物18を1.18g得た。
1H−NMR(400MHz,CDCl
3,ppm):1.42(s,19H),1.58(m,4H),2.60(t,2H),2.70(dd,1H),2.98−3.09(m,3H),4.03−4.12(m,2H),4.52(br,1H),4.79(dd,1H),5.61(d,1H),7.06−7.38(m,11H)
MS:m/z 535(M+Na)
+:C
28H
36N
2O
7(M+Na)
+としての計算値 535
【0078】
合成例16 N−(tert−ブトキシカルボニル)アスパラギン酸−1−フェニルアラニン−(4−フェニルブチルエステル)−4−(3’−エチニルシチジン)アミド(化合物19)の合成
合成例15で得られた200mgの化合物18,87.0mgの3’−エチニルシチジン及び55.0mgのHOBtを2mLのDMFに溶解後,凍結脱気を行った。次いで,70.6mgのWSC塩酸塩を加えて20℃にて6時間攪拌した。続いて,35.3mgのWSC塩酸塩を加え,20℃にて2時間攪拌した。反応液に水を加え,酢酸エチルにて抽出し,有機層を飽和塩化アンモニウム水溶液,飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し,硫酸マグネシウムで乾燥後,減圧下で酢酸エチルを留去し,得られた油状物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(CHCl
3/n−Hexane)にて精製し,化合物19を155mg得た。
MS:m/z 784(M+Na)
+:C
39H
47N
5O
11(M+Na)
+としての計算値 784
【0079】
合成例17 アスパラギン酸−1−フェニルアラニン−(4−フェニルブチルエステル)−4−(3’−エチニルシチジン)アミド(化合物20)の合成
合成例16で得られた155mgの化合物19を酢酸エチル1mLに溶解後,510μLの4N−HCl/AcOEtを加えて室温にて1時間攪拌した。反応終了後,減圧下で酢酸エチルを留去し,次いで真空乾燥して化合物20を105mg得た。
1H−NMR(400MHz,DMSO−d
6,ppm):1.51(s,4H),2.22−2.24(m,3H),2.78−3.07(m,4H),3.31−4.18(m,6H),4.50(s,1H),5.83(d,1H),5.89(d,1H),6.28(br,1H),7.19−7.26(m,11H),8.34(br,2H),8.94(s,1H),9.09(br,2H),10.1(br,1H),11.3(br,1H)
MS:m/z 684(M+Na)
+:C
34H
39N
5O
9(M+Na)
+としての計算値 684
【0080】
実施例4 分子量12000のメトキシポリエチレングリコール構造部分と重合数が21のポリグルタミン酸部分からなるブロック共重合体と,アスパラギン酸−1−フェニルアラニン−(4−フェニルブチルエステル)−4−(3’−エチニルシチジン)アミドとのアミド結合体:一般式(III)のR
1=メチル基,R
3=トリメチレン基,R
4=アセチル基,R
7及びR
8=水素原子,R
6=1−フェニルアラニン−4−フェニルブチルエステル基,p=q=1,i+n=21,b=273(化合物21)の合成
国際公開2006/120914号パンフレットに記載された方法によって調製した66mgのメトキシポリエチレングリコール−ポリグルタミン酸ブロック共重合体を2mLのDMFに溶解した。合成例17で得られた100mgの化合物20,23μLのトリエチルアミン,39μLのDIPCI及び13mgのHOBtを加えて20℃にて4時間攪拌した。更に,19μLのトリエチルアミンと20μLのDIPCIを加えて16時間攪拌後,反応液をエタノール4mL及びジイソプロピルエーテル36mLの混合溶液にゆっくり滴下した。室温にて0.5時間攪拌し,沈析物を濾取してエタノール/ジイソプロピルエーテル(1/9(v/v),4mL)で洗浄した。沈析物を少量のDMFに溶かし,酢酸エチル4mL及びジイソプロピルエーテル24mLの混合溶液にゆっくり滴下し室温にて3時間攪拌し,沈析物を濾取して酢酸エチル/ジイソプロピルエーテル(1/6(v/v),4mL)で洗浄した。沈析物をアセトニトリル2.5mL及び水2.5mLに溶解後,イオン交換樹脂(ダウケミカル製ダウエックス50(H
+),0.5mL)を加え攪拌し,樹脂を濾取してアセトニトリル/水(1/1(v/v),3mL)にて洗浄した。得られた溶液からアセトニトリルを減圧下留去し,次いで凍結乾燥して化合物21を36.5mg得た。
【0081】
化合物21に結合した3’−エチニルシチジンの含量は,実施例1と同様に加水分解後にHPLC(高速液体クロマトグラフィー)を用いて分析し計算した。結合した3’−エチニルシチジンの含量は22.5%(w/w)だった。
【0082】
化合物21の水溶液(1mg/mL)を用いてガウス分布分析及び静的光散乱法によるRMS半径の算出を行ったところ,それぞれ41nm(volume weighting),40nmだった。よって,化合物21は水中でミセルを形成しているものと考えられた。
【0083】
実施例5 分子量5000の二本のメトキシポリエチレングリコール部分と重合数が21のポリグルタミン酸部分からなるブロック共重合体と,アスパラギン酸−1−アダマンタンメチルアミド−4−(3’−エチニルシチジン)アミドとのアミド結合体:一般式(III)のR
1=メチル基,R
3=式(V)の結合基,r=3,R
4=アセチル基,R
7及びR
8=水素原子,R
6=1−アダマンチルメチル基,i+n=21,b=114(化合物22)の合成
国際公開2006/120914号パンフレットに記載された方法を応用して(メトキシポリエチレングリコール)
2アミン(SUNBRIGHT GL2−100PA;日油(株)製)から調製した413mgの(メトキシポリエチレングリコール)
2−ポリグルタミン酸ブロック共重合体を8.3mLのDMFに溶解した。次いで,合成例12で得られた570mgの化合物14,183μLのトリエチルアミン,210μLのDIPCI及び89mgのHOBtを加えて,20℃にて17時間攪拌した。更に,51μLのトリエチルアミンと105μLのDIPCIを加えて3時間攪拌後,反応液をエタノール10mL及びジイソプロピルエーテル90mLの混合溶液にゆっくり滴下した。室温にて0.5時間攪拌し,沈析物を濾取してエタノール/ジイソプロピルエーテル(1/9(v/v),10mL)で洗浄した。沈析物を8mLのDMFに溶かし,エタノール10mL及びジイソプロピルエーテル90mLの混合溶液にゆっくり滴下し,室温にて0.5時間攪拌し,沈析物を濾取してエタノール/ジイソプロピルエーテル(1/9(v/v),4mL)で洗浄した。沈析物をアセトニトリル35mL及び水17.5mLに溶解し,イオン交換樹脂(ダウケミカル製ダウエックス50(H
+),5mL)を加え攪拌し,樹脂を濾取してアセトニトリル/水(1/1(v/v),10mL×2)にて洗浄した。得られた溶液からアセトニトリルを減圧下留去し,次いで凍結乾燥することにより化合物22を685mg得た。
【0084】
化合物22に結合した3’−エチニルシチジンの含量は,実施例1と同様に加水分解後,HPLC(高速液体クロマトグラフィー)を用いて分析し計算した。結合した3’−エチニルシチジンの含量は20.2%(w/w)だった。
【0085】
化合物22の水溶液(1mg/mL)を用いてガウス分布分析及び静的光散乱法によるRMS半径の算出を行ったところ,それぞれ14nm(volume weighting),8nmだった。よって,化合物22は水中でミセルを形成しているものと考えられた。
【0086】
試験例1 3’−エチニルシチジン高分子誘導体の酵素非存在下での薬剤放出
化合物5,化合物10,化合物15,化合物21及び化合物22と,比較化合物として国際公開第2006/120914号パンフレット記載の方法で作成したポリエチレングリコール−ポリグルタミン酸ブロック共重合体に3’−エチニルシチジン誘導体が結合しているPEG−Glu−ECyd,ポリエチレングリコール−ポリグルタミン酸ブロック共重合体に3’−エチニルシチジンとフェニルアラニンベンジルエステルが結合しているPEG−Glu−(ECyd,PheOBzl)をそれぞれPBS溶液(リン酸緩衝生理食塩水;pH7.4)に1mg/mLの濃度で溶解し,37℃にてインキュベートした。各高分子誘導体から放出された3’−エチニルシチジンを,HPLCを用いて定量した。定量値と高分子誘導体の薬剤含有量から求めた高分子誘導体中の全薬剤量との比を
図1〜
図3に示した。
【0087】
図1,
図2及び
図3から明らかなように,本発明の高分子誘導体(化合物5,化合物10,化合物15,化合物21及び化合物22)は加水分解酵素が存在しなくても3’−エチニルシチジンを放出し,アスパラギン酸に結合しているR
6の置換基によって放出速度を大きく変化させることが出来,比較化合物に比べて放出速度は同等以上であった。特に化合物5及び化合物10は,PEG−Glu−ECydよりも十分速く3’−エチニルシチジンを放出することが出来た。一方,比較化合物は,ブロック共重合体にコハク酸モノアミド構造部分を持たないことから放出速度を速くすることが出来ない。これらの結果は,本発明の高分子結合体が薬剤放出速度の調整能に優れていることを示している。
【0088】
試験例2 3’−エチニルシチジン誘導体の抗腫瘍活性試験
ラット皮下で継代しているヒト肺癌LC−11−JCKを約2mm角のブロックにし,套管針を用いてF344ヌードラットの背側部皮下に移植した。腫瘍移植後13日目から本発明の高分子誘導体(化合物5,化合物10)を表1に示す投与量で静脈内に単回投与した。又,対照薬(3’−エチニルシチジン;ECyd)は,Alzet pumpを用い24時間かけて皮下にinfusion投与した。なお,各化合物は5%ブドウ糖溶液で溶解して使用した。投与量は,体重変動が最大減少率10%程度までを最大投与量として,その投与量より投与を行った。
【0089】
投与開始日及び投与開始後23日目の腫瘍体積を,腫瘍の長径(Lmm)及び短径(Wmm)をノギスで計測し,腫瘍体積を(LxW
2)/2により計算して無処置群(コントロール)の腫瘍体積に対する相対腫瘍体積比として表1に示した。
【0090】
【表1】
【0091】
この結果,本発明の高分子誘導体である化合物5,化合物10は,対照薬である3’−エチニルシチジンと比較して,体重変動が最大減少率10%程度以下の最大投与量において強い抗腫瘍効果を示し,且つその半量で対照薬の最大投与量と同等の効果を有することを示した。