(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
電圧の印加により光学特性が変化する光学層、および前記光学層に電圧を印加するために前記光学層に沿って並べて且つ互いに離間して配置される複数の制御電極を有するスクリーンであって、電圧の印加により光学状態を前記スクリーンの背面物体を認識可能な透過状態と前記透過状態よりも入射光の散乱が大きい散乱状態との間で変化するスクリーンと、
前記スクリーンに映像光を照射して映像を表示させるプロジェクタと、
映像光の投影期間において前記複数の制御電極への電圧印加と停止とを制御して、各前記制御電極に対応する分割領域を、前記映像光を散乱する光学状態である前記散乱状態と、透明な光学状態である前記透過状態との間で切り替える制御部と、
を有し、
前記制御部は、
映像光が照射されるタイミングにおいて、隣接して配置された2つの制御電極に同極性の電圧を印加し、対応する2つの分割領域の間の領域の光学状態を前記散乱状態に制御する、
表示装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0013】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る表示装置1の概略構成図である。
図1の表示装置1は、映像光を投影するプロジェクタ11と、光学状態を制御可能なスクリーン21と、同期制御部31と、を有する。同期制御部31は、プロジェクタ11とスクリーン21とに接続される。
本実施形態の表示装置1は、プロジェクタ11の映像光をスクリーン21で散乱して透過する透過型プロジェクション装置である。
同期制御部31は、映像が投影されるスクリーン21を、投影された映像光を散乱して透過する状態に制御し、投影されていない場合に入射光の散乱が小さい透明な透過状態に制御する。
スクリーン21の光学状態は、散乱して透過する状態が映像状態であり、それよりも入射光の散乱が小さく且つ平行光線の透過率が高い透明な透過状態が非映像状態である。
表示装置1は、たとえば広告などを表示するサインボートなどとして利用できる。
【0014】
次に、
図1の表示装置1の基本的な動作原理を説明する。
図2は、スクリーン21の走査と駆動との同期制御の説明図である。
プロジェクタ11は、映像情報で変調された映像光で、スクリーン21を上から下へ縦に走査する。プロジェクタ11は、走査の繰り返し期間(以下、走査周期という。)毎に、スクリーン21を上から下へ縦に走査する。
図2(A)から(E)は、1回の走査周期中の各時点での走査状態を、走査順で示すものである。
図2のスクリーン21は、5つの分割領域22を有する。5つの分割領域22は、映像光の走査方向に沿って縦に配列される。
同期制御部31は、プロジェクタ11によるスクリーン21の一次元の縦方向の走査に同期させて、5つの分割領域22の光学状態を個別に制御する。各分割領域22は、映像光が投影されていない場合、非映像状態、すなわち入射光の散乱が小さい透明な透過状態に制御される。
【0015】
映像光の走査が開始されると、プロジェクタ11の走査光は、まず、
図2(A)のように、スクリーン21の最上部の分割領域22に照射される。以下、この説明において、走査光が照射される分割領域22について、走査されていない他の分割領域22から区別するために、符号221を使用する。同期制御部31は、プロジェクタからの同期信号に基づいて、走査周期中での、この最上部の分割領域221が走査される期間を特定し、最上部の分割領域221を映像状態に制御する。最上部の分割領域221を走査する映像光は、散乱状態の分割領域221により散乱され、スクリーン21を透過する。
映像光の走査は、次に、
図2(B)のように、スクリーン21の上から2番目の分割領域22に移動する。同期制御部31は、走査周期中での、この上から2番目の分割領域221が走査される期間を特定し、上から2番目の分割領域221を映像状態に制御する。上から2番目の分割領域221を走査する映像光は、散乱状態の分割領域221により散乱され、スクリーン21を透過する。また、同期制御部31は、上から2番目の分割領域221を映像状態に制御した後、最上部の分割領域22を非映像状態に制御する。
その後も、
図2(C)から(E)に示すように、同期制御部31は、走査光により走査される分割領域221を映像状態に制御し、それ以外の分割領域22を非映像状態に制御する。
【0016】
以上の同期制御により、スクリーン21についての走査光が照射される部位は、映像状態に維持される。これにより、スクリーン21を走査する映像光は、散乱状態のスクリーン21により散乱される。
また、スクリーン21についての走査光が照射されない部位は、非映像状態に制御される。各分割領域22は、走査光により走査されていない殆どの期間において、非映像状態の入射光の散乱が小さい透明な透過状態に制御される。従って、映像光の投影期間中に、映像の視認性を保ちつつ、スクリーン21のシースルー特性が得られる。
【0017】
プロジェクタ11は、スクリーン21へ、映像情報により変調された映像光を投影できるものであればよい。
なお、映像情報は、プロジェクタ11に入力される映像信号から得られる。映像信号には、たとえば、NTSC(National Television Standards Committee)方式、PAL(Phase Alternation by Line)方式のようなアナログ方式の映像信号、MPEG−TS(Moving Picture Experts Group − Transport Stream)フォーマット、HDV(High-Definition Video)フォーマットのようなデジタルフォーマットの映像信号がある。プロジェクタ11には、動画の映像信号だけでなく、たとえばJPEG(Joint Photographic Experts Group)のような静止画の映像信号が入力されてもよい。この場合、プロジェクタ11は、静止画を表示するための同じ映像光で、スクリーン21を繰り返し走査すればよい。
【0018】
図3から5は、プロジェクタ11の投影方式の説明図である。
図3は、連続的に面映像を投影するプロジェクタ11の説明図である。
図4は、時間変調により面映像を投影するプロジェクタ11の説明図である。
図5は、スクリーン21を走査するプロジェクタ11の説明図である。
【0019】
図3(A)は、プロジェクタ11が定常的に映像光を投影する方式の説明図である。この場合、スクリーン21には、
図3(B)に示すように、走査周期において映像光が常に投影されている。スクリーン21は、
図3(C)に示すように、常に散乱状態とする必要がある。この場合、平行光線透過率を高くするようにスクリーン21の光学状態を制御すると、映像の輝度が減少する。
なお、
図3(B)、(C)の横軸は、走査周期(時間)である。
図4(B)、(C)、
図5(B)、(C)も同様である。
【0020】
図4(A)は、プロジェクタ11がインターバルを空けて映像光を投影する方式の説明図である。この場合、スクリーン21には、
図4(B)に示すように、走査周期の一部において短期的に映像光が投影される。スクリーン21は、
図4(C)に示すように、該一部の期間において散乱状態とすればよい。そして、該一部以外の期間において、スクリーン21の平行光線透過率を高くするようにスクリーン21の光学状態を制御すると、走査周期おいて、映像の輝度低下を招くことなく、スクリーン21のシースルー特性が得られる。定常的に映像光を投影する場合に比べ、同一輝度を得るには、走査周期に対する散乱状態の時間程度のデューティ(図中duty:a)の概ね逆数倍の強さの投影光が必要となる。従って高いシースルー特性を得るには、強力なパルス発光の投影光出力が必要である。
【0021】
図5(A)は、プロジェクタ11がスクリーン21を走査する投影方式の説明図である。この場合、スクリーン21には、走査周期において常に映像光が投影される。しかしながら、スクリーン21の各部に注目すると、
図5(B)に示すように走査周期の一部において映像光が投影されている。このため、
図5(C)に示すように、スクリーンの各部は、各々が走査される部分走査期間TPにおいて散乱状態になればよい。また、スクリーン21の各部分は、該部分走査期間TP以外の期間において平行光線透過率を高くするように制御すれば、走査周期において、映像の輝度低下を招くことなく、スクリーン21のシースルー特性が得られる。
【0022】
映像光を投影するプロジェクタ11は、上記いずれの投影方式のものでもよい。
ただし、散乱に利用されない映像光の発生を抑制するためには、
図4または
図5の方式が望ましい。また、スクリーン21の光学状態の変化には、応答時間が必要である。このため、応答時間が確保し易い
図5の投影方式が、
図4よりも望ましい。以下の説明では、
図5の投影方式のプロジェクタ11を利用した場合ついて説明する。
【0023】
図5の駆動方式では、映像光の走査周期中に、スクリーン21の一部に相当するライン状の映像が、順次、スクリーン21の表示面に投影される。
このプロジェクタ11には、走査周期中にスクリーン21上で黒状態(投射光が出ない状態)を順次シフトさせる透過型あるいは反射型液晶ライトバルブなどを使用できるが、これ以外の素子を用いてもよい。
また、プロジェクタ11は、映像の走査周期においてラスター走査し、スクリーン21の表示面に映像光を点順次で投影するものでもよい。このプロジェクタ11では、映像変調された光ビームの照射方向を可動ミラーで反射して振るような、例えばレーザプロジェクタなどを用いることができる。このプロジェクタ11は、映像光の照射位置がスクリーン21上の一方向に順次走査されているものと同様に考えることができる。
【0024】
スクリーン21は、電圧や電流などの電気信号により光学状態を変化できるものであればよい。
例えば、液晶材料を用い、散乱状態と入射光の散乱が小さい透明な透過状態を変化させる調光スクリーンなどでよい。調光スクリーンには、たとえば、高分子分散液晶などの液晶素子を用いたもの、透明セル内の白色粉体を移動させることで散乱状態と入射光の散乱が小さい透明な透過状態を制御する素子などを用いたものがある。
本実施形態では、リバースモードで動作するスクリーン21を例に説明する。
リバースモードで動作するスクリーン21では、電圧を印加していない通常状態において、スクリーン21が透明な透過状態となる。電圧を印加すると、印加電圧に応じた平行光線の散乱率(透過率)の散乱状態となる。
【0025】
また、スクリーン21は、スクリーン21を分割する複数の分割領域22が、それぞれ独立したタイミングで、入射光の散乱が小さい透明な透過状態と、散乱状態との間で切り替えることができるものであればよい。
たとえば、スクリーン21は、プロジェクタ11の主走査方向(たとえば
図2での縦方向)に対応するように短冊状に分割された複数の分割領域を有するものであればよい。
この他にも、スクリーン21は、プロジェクタ11の主走査方向および副走査方向(たとえば映像の横方向)に対応するように、矩形に分割された領域がマトリクス状に配列されたものでもよい。
【0026】
図6は、分割領域22毎に光学状態を制御可能なスクリーン21の模式的な断面図である。
図6には、同期制御部31も図示されている。
図7は、
図6のスクリーン21での、複数の制御電極の配置を示すスクリーンの模式的な正面図である。
図6の例のスクリーン21は、一対の透明なガラス板23,24の間に液晶を含む複合材料を挟み込んだ光学層25を有する。
一方のガラス板24の光学層25側には、全面に対向電極26が形成される。
他方のガラス板23の光学層25側には、複数の制御電極27が並べて配置される。
電極26、27と光学層25との間に、絶縁体からなる中間層を形成してもよい。
対向電極26および制御電極27は、たとえばITO(酸化インジウム・スズ)により、透明電極として形成される。
光学層25は、複数の制御電極27と対向電極26との間に配置される。
【0027】
複数の制御電極27は、スクリーン21の映像光が照射される領域を、一方向(たとえば走査方向)で短冊状に分割する。
複数の制御電極27は、同期制御部31に個別に接続され、個別の電圧が印加される。
隣接する制御電極27は、互いに離間して配列される。
隣接する2つの制御電極27の間の、制御電極27が形成されていない領域に対応した光学層25内に、ギャップ領域28が形成される。
図6では、対向電極26は、接地されている。
制御電極27と対向電極26との間に電位差を生じるように電圧が印加される。なお、以下に説明する駆動波形の電圧は、制御電極27と対向電極26との電位差を示している。
制御電極27に印加された電圧は、当該制御電極27に対応する領域の光学層25に印加される。光学層25内の液晶の配向状態は、制御電極27の印加電圧により変化する。光学層25は、分割領域22毎に、入射光の散乱が小さい透明な透過状態と、入射光を散乱する散乱状態との間で調整できる。
なお、制御電極27に対応したギャップ領域28は、5から100マイクロメートル程度であり、可能な限り狭いことが望ましい。光学層25の厚さは、数から数十マイクロメートルであり、光学特性と駆動電圧を考慮して決定される。
【0028】
同期制御部31は、プロジェクタ11とスクリーン21とに接続される。
同期制御部31は、プロジェクタ11の映像光の投影に同期させて、スクリーン21の光学状態を制御する。
プロジェクタ11から同期制御部31へ入力される同期信号は、たとえばプロジェクタ11の走査周期に同期した同期信号などを用いることができる。
【0029】
図7のスクリーン21のようにスクリーン21が一方向に短冊状に分割されている場合、プロジェクタ11の投影光は、スクリーン21の分割方向に順次走査される。
同期制御部31は、プロジェクタ11からの同期信号に基づいて、プロジェクタ11の投影光が照射される部位が映像状態(本実施形態では散乱状態)に維持されるように、複数の分割領域22を、走査順で、透明な透過状態から散乱状態に制御する。
この同期制御により、スクリーン21の各分割領域22は、当該領域に投影光が照射される映像期間を含む期間Tonにおいて、映像状態としての散乱状態になる。また、投影光が照射されない非映像期間Toffにおいては、非映像状態としての透明な透過状態となる。
スクリーン21は、その背面の物体を認識しうる透明さを有しつつ、常時散乱状態とした場合と同等の明るさで映像光を散乱できる。つまり、背景物体を認識することが可能なシースルー性と、映像の高い視認性とを両立することが可能となる。
【0030】
図8は、スクリーン21の走査と駆動との模式的なタイミングチャートである。横軸は、時間である。縦軸は、スクリーンの縦方向の位置を示し、スクリーン21での複数の分割領域22に対応する。
スクリーン21の各分割領域22は、各々の領域を映像光が走査し始始めるタイミングより前に、透明な透過状態から散乱状態に制御される。また、散乱状態の分割領域22は、当該領域についての映像光の走査が終了した後に、散乱状態から透明な透過状態に制御される。
複数の分割領域22は、各々の領域に映像光が走査により照射される部分走査期間TPタイミングに同期して映像状態に制御されることにより、走査順で、時間をずらして、順次映像状態へ切り替えられる。スクリーン21を走査する映像光は、映像状態に維持された部分により効率よく散乱され、明るく高い視認性を得ることができる。
【0031】
この同期制御のための切り替えタイミングの情報は、同期信号としてプロジェクタ11から同期制御部31に送出される。
同期制御部31は、好ましくは、各分割領域22の光学状態が所定の散乱状態に安定している期間に投影光が照射されるように、各制御電極27へ印加する電圧を制御する。各分割領域22の光学状態は、制御電極27へ印加する電圧の信号波形により、切り替わる。
特に、プロジェクタ11が同期制御部31へ出力する切り替えタイミングの情報には、プロジェクタ11の各走査周期での走査を開始するタイミングの情報と、走査速度(走査の遅延/シフト)とを含めるとよい。これにより、走査周期の周波数が変化した場合にも、映像を乱すことなく、良好なシースルー表示を実現できる。
なお、プロジェクタ11および同期制御部31をマイクロ波、赤外線などの電磁波を用いたワイヤレス通信可能とし、これらの同期を得るための情報を無線信号により授受してもよい。
【0032】
以上の同期制御により、本実施形態の同期制御部31は、映像光の走査周期Tにおける複数の分割領域22の光学状態を、プロジェクタ11による映像光の走査に同期させて切り替えて、スクリーン21についての、映像光が投影される部位の光学状態を映像状態とする。
よって、スクリーン21は、映像光が照射されるタイミングを含む期間Tonにおいて、映像光が照射される部位が散乱状態に維持されるため、映像を表示できる。
しかも、スクリーン21は、映像光の投影期間中に、各部位が期間Ton以外の時間では透明な透過状態に制御されるので、スクリーン21を透視することができる。人間の目にはスクリーン21の透過光が平均(積分)化されて見えるので、十分短い走査周期の場合、フリッカを感じることのないシースルー特性が得られる。
これにより、たとえば
図1の設置環境下では、スクリーン21を通して
図9の画像を視認できる。
図9は、映像光による映像とスクリーン21の背景とが重なる表示状態の説明図である。
図9では、スクリーン21の右側に映像光による人物41の像が映り、左側に、スクリーン21の向こう側の背景としての樹木42を見ることができる。
【0033】
また、本実施形態では、同期制御部31は、映像光の走査周期において複数の分割領域22に印加する電圧を走査順で切り替えて、各分割領域22を、各々が走査される部分走査期間TPにおいて映像状態に制御し、各々が走査されていない期間、すなわち部分走査期間TP以外の期間において非映像状態に制御する。
【0034】
また、本実施形態では、同期制御部31は、制御電極27に印加する電圧を、低周波の交流電圧としている。
よって、映像光の各走査周期Tにおいて光学層25に印加される電圧の直流成分を抑えることができる。
【0035】
ところで、リバースモードのスクリーン21の一面に、個別の駆動電圧が印加される複数の制御電極27を形成した場合、
図6および
図7に示すように、隣接する2つの分割領域22の間には、制御電極27が形成されていない領域に対応する光学層25のギャップ領域28が形成される。
図10は、ギャップ領域28の光学層内の電界の分布の説明図である。
図10(A)および(B)は、隣接する制御電極27に電圧が印加された状態でのスクリーン21の模式的な断面図である。図中の矢印は、大まかな電界の分布を示している。
【0036】
図10(A)に示すように、各々の制御電極27に同一の振幅の交流電圧が印加する場合であっても、図右側の一方の制御電極27に正電圧が印加され、図左側の他方の制御電極27に負電圧が印加され、対向電極26に0Vが印加される場合、すなわち隣接する制御電極27に逆極性の電圧が印加される場合、ギャップ領域28には、制御電極27に対応した分割領域22に対応する部位とは異なる電界が形成される。
光学層25の液晶の配向は、この電界に影響される。よって、ギャップ領域28の光学状態は、電圧印加による光学状態とは異なる状態となる。
電界が異なり、液晶配向が他の部位と異なることに起因する光学特性の違いは映像光が照射されるタイミングの場合、ギャップ領域28がスジ状の輝度ムラとして視認される。
図10(A)の光学状態のスクリーン21では、光学状態は、双方の分割領域22では揃うが、ギャップ領域28では異なる。その結果、ギャップ領域28に沿って光学状態の特異部が生じ、映像状態において輝度ムラが発生する。
【0037】
そこで、本実施形態の同期制御部31は、
図10(B)に示すように、隣接する制御電極27に同極性の電圧を印加する。
図10(B)の場合、ギャップ領域28の電界の向きは、分割領域22での電界に沿った向きとなり、この電圧印加時におけるギャップ領域28の光学状態は、電圧印加により散乱状態に制御された分割領域22の光学状態とは略同じ状態になる。
その結果、
図10(B)対向電極のスクリーン21では、ギャップ領域28の光学状態が、双方の分割領域22のものと概ね揃うことにより、ギャップ領域22に映像光が照射される際のギャップ領域28における映像の輝度ムラが効果的に抑制され、表示の均一なシースルー性と表示が可能となる。
隣接する制御電極27を同電位あるいは同極性とすることで、ギャップ領域28の電界の方向が分割領域22のものに沿った方向となり、配向が他の部位と異なることに起因するスジ状のムラを抑制できる。
【0038】
図11は、本実施形態での、複数の分割領域22の光学状態と駆動電圧波形との関係を示す模式的なタイミングチャートである。
図11(A)から(D)は、連続する4つの制御電極27に印加する電圧である。以下の説明では制御電極27に電圧を印加した波形を記載しているが、対向電極26との電位差として光学層25を含む領域に印加される電圧波形と考えることができる。横軸は時間であり、縦軸は電圧である。
図11(E)から(H)は、
図11(A)から(D)に対応する、連続する4つの分割領域22の光学特性である。横軸は時間であり、縦軸は平行光線透過率である。なお、以下の説明では光学状態の変化を平行光線透過率の変化を用いて説明している。本発明スクリーンでは、平行光線透過率の減少は散乱の増大を示している。
図11(A)から(D)に示すように、連続する4個の制御電極27には、各々が走査されない非映像期間Toffでは、透明な透過状態に制御するために電圧の印加が停止される。そして、各々が走査される部分走査期間TPの前に、電圧印加が開始される。印加電圧は、交流とされている。このような電圧波形の印加により、
図11(E)から(H)に示すように、連続する4個の分割領域22は、透過状態から散乱状態に制御される。
また、
図11(A)から(D)に示すように、連続する4個の制御電極27には、各々の走査が終了した後、透過状態に制御するために電圧の印加が停止される。このような電圧波形の印加により、
図11(E)から(H)に示すように、連続する4個の分割領域22は、散乱状態から透明な透過状態に制御される。
なお、この同期制御のための基準タイミングの情報は、プロジェクタ11から同期制御部31へ送出される。散乱特性が一定に安定した期間に投影光の照射がなされるように、同期制御部31は、該基準タイミングに基づいて、複数の制御電極27に印加する電圧を順次切り替える。
【0039】
映像光の走査は、
図11(A)から(D)中のタイミングT1において、
図11(A)の分割領域22から、
図11(B)の分割領域22へ移動する。このタイミングT1において、これら2つの分割領域22の間のギャップ領域28を通過するように映像光が走査される。
そして、このタイミングT1では、
図11(A)の制御電極27と、
図11(B)の制御電極27とには、同極性かつ同電位の電圧が印加されている。
よって、ギャップ領域28の光学状態は、
図10(B)の映像状態に制御される。ギャップ領域28は、分割領域22と同様の光学状態で映像光を散乱して透過する。
同様に、
図11(A)から(D)中のタイミングT2においても、
図11(B)の制御電極27と、
図11(C)の制御電極27とには、同極性かつ同電位の電圧が印加されている。
同様に、
図11(A)から(D)中のタイミングT3においても、
図11(C)の制御電極27と、
図11(D)の制御電極27とには、同極性かつ同電位の電圧が印加されている。
この結果、映像光は、ギャップ領域28においても分割領域22と略同じ散乱状態で散乱して透過される。
【0040】
以上のように、本実施形態では、同期制御部31は、隣接して配置された2つの制御電極27に映像光がこれらの電極間のギャップ領域を走査するタイミングで同極性の電圧を印加する。
これにより、制御電極27が形成されていない、対応する2つの分割領域22の間の領域に対応する光学層のギャップ領域28の光学状態を望ましい状態に制御できる。
特に、プロジェクタ11は、映像光によりスクリーン21を走査し、スクリーン21は、電圧が印加されることで平行光線透過率が低くなるリバースモードで動作し、照射された映像光を散乱する。よって、リバースモードのスクリーン21において、対応する2つの分割領域22の間のギャップ領域28の光学状態を、映像状態に制御できる。
また、同期制御部31は、映像光が1の分割領域22から隣接する別の分割領域22へ移動する際に、対応する2つの制御電極27に同極性且つ同振幅の電圧を印加する。よって、リバースモードのスクリーン21のギャップ領域28の光学状態を、分割領域22と同等の映像状態に制御できる。
これにより、スクリーン21の散乱により形成される映像では、ギャップ領域28での輝度ムラの影響が抑制される。スクリーン21全体にわたり、映し出す映像にムラが生じ難くなる。
【0041】
[第1比較例]
第1比較例の表示装置は、第1実施形態のものと同様である。ただし、同期制御部31は、ギャップ領域28の制御を考慮していない駆動電圧を、複数の制御電極27に印加する。
図12は、第1比較例での、複数の分割領域22の光学状態と駆動電圧波形との関係を示す模式的なタイミングチャートである。
図12(A)から(H)は、
図11(A)から(H)に対応する。
そして、第1比較例では、映像光の走査がギャップ領域28となる
図11(A)から(D)中のタイミングT11からT13において、ギャップ領域28の両側の制御電極27には、逆極性かつ同振幅の電圧が印加されている。
よって、ギャップ領域28の光学状態は、
図10(A)の映像状態に制御される。ギャップ領域28は、分割領域22とは異なる光学状態で映像光を散乱する。
この結果、ギャップ領域28においての散乱が分割領域22の散乱と異なる特性となり、スクリーン21全体にわたり、映し出す映像にムラが生じる。
【0042】
[第2実施形態]
第2実施形態では、第1実施形態の表示装置1の変形例を説明する。
プロジェクタ11からスクリーン21に投影される映像光が一つの分割領域22を通過するのに要する時間は、複数の分割領域22の間で略均一である。以下、この時間を、走査遅延時間Tdという。
走査遅延時間Tdは、例えばプロジェクタ11をスクリーン21から離した場合は小さくなり(実効的な映像領域分割数が大きくなる)、逆に近づけた場合は大きくなる(実効的な映像領域分割数が小さくなる)。
この他、プロジェクタ11の走査は、プロジェクタ11毎に固有のものであるため、一定ではない。特に、走査期間の最後の分割領域22では、個体差のずれが大きくなる。
【0043】
第2実施形態の同期制御部31は、一定ではない走査遅延時間Tdに対し、ギャップ領域28が走査されるタイミングにおいてその両側の制御電極27の電圧の極性をそろえるように、駆動電圧波形を調整する。
具体的には、同期制御部31は、たとえば映像光の走査周期から得られる走査遅延時間Td、および複数の制御電極27に印加する交流電圧の周波数の双方に基づいて、制御電極27毎に、駆動電圧波形の反転の要否を判断する。
そして、同期制御部31は、ギャップ領域28が走査されるタイミングにおいてその両側の制御電極27の電圧の極性をそろえるように、駆動電圧波形を適宜ライン反転する。
図13は、第2実施形態での、複数の制御電極27に印加する駆動電圧波形のライン反転制御の説明図である。
図13(A)から(C)の3組の駆動電圧波形は、一定の周期の駆動電圧波形である。横軸は時間であり、縦軸は電圧である。
【0044】
図13(A)に示すように、走査遅延時間Tdが小さい場合、走査光がギャップ領域28を走査するタイミングT31からT33は、駆動電圧波形の半周期の間に収まる。
この場合、同期制御部31は、各駆動電圧波形の反転判断において、反転不要と判断する。
その結果、
図13(A)に示すように、4つの駆動電圧波形は、反転されることなく、同相で極性が変化する電圧として、各々の制御電極27に印加される。
なお、同期制御部31は、プロジェクタ11から通知された映像光の走査周期のうち、複数の領域に分割されたスクリーン上を実際に走査する時間を、制御電極27の本数で割った値を、走査遅延時間Tdに用いればよい。
【0045】
図13(B)に示すように、走査遅延時間Tdが少し長くなると、走査光がギャップ領域28を走査するタイミングT41からT43は、駆動電圧波形の半周期の間に収まらなくなる。
この場合、同期制御部31は、各駆動電圧波形の反転判断において、適宜反転要と判断する。
その結果、
図13(B)に示すように、上から2番目の駆動電圧波形は1番目に対して反転され、上から3番目の駆動電圧波形は更に2番目に対して反転され、上から4番目の駆動電圧波形は更に3番目に対して反転される。
【0046】
図13(C)に示すように、走査遅延時間Tdが更に長くなると、走査光がギャップ領域28を走査するタイミングT51からT53の間隔が更に広がる。
この場合、同期制御部31は、各駆動電圧波形の反転判断において、適宜反転要と判断する。
ただし、
図13(C)の場合では、反転されることなく、同相で極性が変化する電圧として、各々の制御電極27に印加されている。
【0047】
以上のように、本実施形態の同期制御部31は、複数の制御電極27に対して、共通する波形の交流電圧を印加する。
また、同期制御部31は、映像光の走査周期T、および複数の制御電極27に印加する交流電圧の周波数に基づいて、複数の制御電極27に印加する交流電圧の波形を調整する。
具体的には、同期制御部31は、映像光によりギャップ領域28が走査されるタイミングで、該ギャップ領域28の両側の分割領域22に対応する制御電極27に印加する電圧の極性が揃うように、一部の制御電極27に印加する交流電圧の波形を、他の制御電極27に印加する交流電圧の波形に対して反転させるように調整する。
すなわち、本実施形態では、プロジェクタ11の投影領域によって決まる走査遅延と、駆動電圧波形(のパルス幅)に応じて、映像光が走査されるタイミングのギャップ領域28の両側の分割領域22を同電位あるいは同極性となるように、ライン反転/非反転を制御する。駆動電圧波形が半周期を含む場合は、走査周期の単位で反転する。
よって、本実施形態では、プロジェクタ11によるスクリーン11の走査周期Tが変動したとしても、それに同期させてスクリーン11の複数のギャップ領域28を、分割領域22と同等の散乱状態(映像状態)に制御できる。
【0048】
[第3実施形態]
第3実施形態では、第2実施形態の表示装置1の変形例を説明する。
第3実施形態の同期制御部31は、駆動電圧波形のライン反転を制御する替わりに、駆動電圧波形のパルス幅およびサイクル数を制御する。
図14は、第3実施形態での、複数の制御電極27に印加する駆動電圧波形のパルス幅およびサイクル数の制御の説明図である。
図14(A)から(C)の3組の駆動電圧波形では、映像光によりギャップ領域28が走査されるタイミングで、該ギャップ領域28の両側の分割領域22に対応する制御電極27に印加する電圧の極性が揃うように、駆動電圧波形のパルス幅およびサイクル数が制御されている。
横軸は時間であり、縦軸は電圧である。
【0049】
図14(A)に示すように、走査遅延時間Tdが小さい場合、走査光がギャップ領域28を走査するタイミングT61からT63は、標準的な駆動電圧波形の半周期の間に収まる。
この場合、同期制御部31は、駆動電圧波形の調整要否判断において、調整不要と判断する。
その結果、
図14(A)に示すように、4つの駆動電圧波形は、標準的な波形のまま、同相で極性が変化する電圧として、各々の制御電極27に印加される。
【0050】
図14(B)に示すように、走査遅延時間Tdが少し長くなると、走査光がギャップ領域28を走査するタイミングT71からT73は、標準的な駆動電圧波形の半周期の間に収まらなくなる。
この場合、同期制御部31は、駆動電圧波形の調整要否判断において、調整要と判断する。
その結果、
図14(B)に示すように、駆動電圧波形のサイクル数をたとえば半分に減らす。4つの駆動電圧波形は、パルス幅が広がるように調整された波形により、同相で極性が変化する電圧として、各々の制御電極27に印加される。
【0051】
図14(C)に示すように、走査遅延時間Tdが更に長くなると、走査光がギャップ領域28を走査するタイミングT81からT83の間隔が更に広がる。
この場合、同期制御部31は、駆動電圧波形の調整要否判断において、調整不要と判断する。
その結果、
図14(C)に示すように、4つの駆動電圧波形は、標準的な波形のまま、同相で極性が変化する電圧として、各々の制御電極27に印加される。
【0052】
以上のように、本実施形態の同期制御部31は、複数の制御電極27に対して、共通する波形の交流電圧を印加する。
また、同期制御部31は、映像光の走査周期T、および複数の制御電極27に印加する交流電圧の周波数に基づいて、複数の制御電極27に印加する交流電圧の波形を調整する。
具体的には、同期制御部31は、映像光によりギャップ領域28が走査されるタイミングで、該ギャップ領域28の両側の分割領域22に対応する制御電極27に印加する電圧の極性が揃うように、駆動電圧波形のパルス幅およびサイクル数を調整する。
すなわち、本実施形態では、プロジェクタ11の投影領域によって決まる走査遅延と、駆動電圧波形(のパルス幅)に応じて、映像光が走査されるタイミングのギャップ領域28の両側の分割領域22を同電位あるいは同極性となるように、パルス幅あるいはサイクル数を制御する。なお、パルスが半周期を含む場合は、走査周期の単位で反転してよい。
よって、本実施形態では、プロジェクタ11によるスクリーン11の走査周期Tが変動したとしても、それに同期させてスクリーン11の複数のギャップ領域28を、分割領域22と同等の散乱状態(映像状態)に制御できる。
【0053】
以上の各実施形態は、本発明の好適な実施形態の例であるが、本発明は、これに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変形または変更が可能である。
【0054】
たとえば同期制御部31は、第2実施形態ではライン反転制御をし、第3実施形態ではパルス幅を制御している。この他にもたとえば、同期制御部31は、プロジェクタ11の投影領域によって決まる走査遅延Tdに応じて、各駆動電圧波形を、ライン反転とパルス幅制御を組み合わせて調整してよい。
【0055】
上記実施形態では、スクリーン21は、映像状態で散乱状態に制御され、映像光を透過しつつ散乱している。この他にもたとえば、スクリーン21は、映像状態で高い散乱状態に制御され、映像光を反射しつつ散乱してもよい。この場合、スクリーン21に関し、プロジェクタ11からの映像光を投射する側に視聴者が位置する反射型スクリーンとして機能する。
【0056】
また、上記実施形態では、リバースモードのスクリーン21を使用している。この他にもたとえば、ノーマルモードのスクリーン21を利用してもよい。
ノーマルモードのスクリーン21は、電圧が印加されることで平行光線透過率が高くなるが、映像状態である散乱状態に電圧を印加して駆動する場合に利用できる。
たとえば、ノーマルモードのスクリーン21が照射された映像光を散乱する場合、同期制御部31は、走査される映像光が1つの分割領域22から別の分割領域22へ移動する際に、該2つの分割領域22に対応する制御電極27に同極性の電圧を印加し、該2つの分割領域22の間に対応するギャップ領域28の光学特性を映像状態に制御すればよい。