(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
微細加工技術であるナノインプリントにおいては、微細パターンが施されたモールドを被転写基板上に塗布された熱可塑性樹脂又は光硬化性樹脂にプレスし、離型することで微細パターンを被転写基板上の熱可塑性樹脂又は光硬化性樹脂に転写する。ナノインプリントは、従来の微細加工技術であるビーム加工に比べプロセスが単純であるため、製造コストを抑えることができ、且つ高い解像度が得られる。
【0003】
モールドをプレスして転写するナノインプリントでは、モールドの作製が極めて重要である。現在実用化されているモールドは、ウエハー上に微細パターンが形成されたものであり、大量生産による低コスト化には不向きである。そのため、大量生産による低コスト化のため、ナノインプリントの大面積化が必要とされている。
【0004】
ナノインプリントでは、スリーブ(ロール)状のモールドを用いたRoll to Roll方式を用いることにより、シームレスで大面積の製品の生産が可能となる。スリーブ状のモールドを作製する上では、微細パターンを形成する工程において極めて高い加工精度が要求される。スリーブのパターン加工で高い加工精度を得るためには、スリーブ自身の各寸法精度や回転特性を向上させる必要があると共に、高精度に仕上げられたスリーブを精度良く装置に取付けて加工する必要がある。
【0005】
特に、スリーブの回転振れはチャッキングに依存するところが大きく、スリーブの中心軸を精度良くチャッキングし、チャッキングした中心軸を回転軸として回転させることで回転振れを極めて小さく抑えることができる。スリーブを用いた加工装置としては、スリーブの外周面に設けられた感光膜をレーザー露光によって加工する露光装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。かかる露光装置においては、スリーブの両端面の中心部にセンター穴を設け、このセンター穴にチャック軸を挿入して押圧することにより、スリーブをチャッキングする。そして、スリーブの中心を回転軸として回転させることにより、スリーブの回転振れを抑制する。さらに、特許文献1記載の露光装置においては、光学的手法により、繰り返し取付け時のスリーブの軸方向の位置決め精度の誤差を5μm〜10μmに抑えている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された露光装置においては、スリーブの両端面の中心部に形成したセンター穴にチャック軸を挿入してチャックするため、必ずしも十分に回転振れを抑制できない問題がある。特に、近年微細パターンの更なる微細化が必要とされており、サブミクロンオーダー(〜100nm)のパターンを形成するためには、スリーブの回転時に生じる回転振れを極めて小さな範囲に抑えると共に、装置からの回転を滑ることなくスリーブに伝える必要がある。さらに、生産効率を向上するためには、パターニング速度の向上が必要であり、高速回転でのパターニングにおいても回転振れが生じないチャッキングが望まれている。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、ロール状部材の回転時に生じる回転振れを抑制でき、高速回転でのパターニングを実現できる露光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題解決のために鋭意検討した結果、チャック部の中心及び回転駆動部の回転軸を略同一直線上に配置すると共に、ロール状部材の被保持部に対して垂直方向からチャッキングすることにより、上記解題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
本発明の露光装置は、軸方向の一端部に被保持部が設けられたロール状部材と、前記ロール状部材の中心を回転軸として、前記ロール状部材を周方向に回転させる回転駆動部と、前記被保持部の外周面の外側に配置され、チャック部の中心に向けて駆動され前記被保持部をチャックする少なくとも2つの保持爪を有するチャック部と、前記ロール状部材に露光する露光部と、
前記ロール状部材回転時の前記ロール状部材表面と前記露光部との距離を測定して前記ロール状部材の偏心量を測定する偏心表示器及びフィールドバランサーからなる前記チャック部のチャッキングを制御するための制御部とを具備し、前記チャック部の中心及び前記回転駆動部の回転軸が略同一直線上に配置され、前記偏心表示器によって測定した偏心量並びに前記フィールドバランサーによって測定した回転時の前記ロール状部材及び前記回転駆動部の動バランスに基づいて、前記チャック部による前記ロール状部材の把持力を制御することを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、チャック部の中心及び回転駆動部の回転軸を略同一直線上に配置したことから、チャック後のロール状部材の回転軸と回転駆動部の回転軸とが略一致するので、ロール状部材の回転時に生じる回転振れを抑制できる。また、チャック部の少なくとも2つの保持爪が、チャック部の中心に向けて駆動されて被保持部をチャックするので、チャック時におけるチャック部と被保持部との間で摩擦力が効率良く働き、パターニング速度を向上させた高速回転でのパターニングを実現でき、生産効率を向上できる。
【0012】
本発明の露光装置においては、前記チャック部は、互いに直交する直線上に、それぞれ対向配置された4つの保持爪を有することが好ましい。この構成により、少なくとも2つ保持爪によって被保持部をチャックした状態で、他の保持爪を独立して駆動することができる。これにより、ロール状部材の偏心及び動バランスを微調整することが可能となり、回転振れなどを低減できる。
【0013】
本発明の露光装置は、軸方向の一端部に略円筒形状の被保持部が設けられたロール状部材と、前記ロール状部材の中心を回転軸として、前記ロール状部材を周方向に回転させる回転駆動部と、前記回転軸の垂直断面内において、前記被保持部の内周面の互いに異なる位置に対向して配置され、チャック部の中心から放射状に駆動され前記被保持部の内周面を付勢する少なくとも2つの保持片を有するチャック部と、前記ロール状部材に露光する露光部と、
前記ロール状部材回転時の前記ロール状部材表面と前記露光部との距離を測定して前記ロール状部材の偏心量を測定する偏心表示器及びフィールドバランサーからなる前記チャック部のチャッキングを制御するための制御部とを具備し、前記チャック部の中心及び前記回転駆動部の回転軸が略同一直線上に配置され、前記偏心表示器によって測定した偏心量並びに前記フィールドバランサーによって測定した回転時の前記ロール状部材及び前記回転駆動部の動バランスに基づいて、前記チャック部による前記ロール状部材の把持力を制御することを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、チャック部の中心軸及び回転駆動部の回転軸を略同一上に配置したことから、チャック後のロール状部材の回転軸と回転駆動部の回転軸とが略一致するので、ロール状部材の回転時に生じる回転振れを抑制できる。また、少なくとも2つの保持片が、チャック部の中心から放射状に駆動され、被保持部の内周面の互いに異なる位置を付勢するので、チャック時におけるチャック部と被保持部との間で摩擦力が効率良く働き、パターニング速度を向上させた高速回転でのパターニングを実現でき、生産効率を向上できる。
【0015】
本発明の露光装置は、軸方向の一端部に被保持部が設けられたロール状部材と、前記ロール状部材の中心を回転軸として、前記ロール状部材を周方向に回転させる回転駆動部と、前記被保持部の端面に対する垂直方向から当該端面を電磁チャックするチャック部と、前記ロール状部材に露光する露光部と、
前記ロール状部材回転時の前記ロール状部材表面と前記露光部との距離を測定して前記ロール状部材の偏心量を測定する偏心表示器及びフィールドバランサーからなる前記チャック部のチャッキングを制御するための制御部とを具備し、前記チャック部の中心及び前記回転駆動部の回転軸が略同一直線上に配置され、前記偏心表示器によって測定した偏心量並びに前記フィールドバランサーによって測定した回転時の前記ロール状部材及び前記回転駆動部の動バランスに基づいて、前記チャック部による前記ロール状部材の把持力を制御することを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、チャック部の中心軸及び回転駆動部の回転軸を略同一上に配置したことから、チャック後のロール状部材の回転軸と回転駆動部の回転軸とが略一致するので、ロール状部材の回転時に生じる回転振れを抑制できる。また、被保持部の端面に対する垂直方向から当該端面を電磁チャックするので、チャック時におけるチャック部と被保持部の端面との間で摩擦力が効率良く働き、パターニング速度を向上させた高速回転でのパターニングを実現でき、生産効率を向上できる。
【0017】
本発明の露光装置においては、前記被保持部は、前記ロール状部材の両端に設けられたことが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ロール状部材の回転時に生じる回転振れを抑制でき、高速回転でのパターニングを実現できる露光装置を実現できる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1Aは、本実施の形態に係る露光装置の平面模式図であり、
図1Bは、
図1Aの断面模式図である。
図1及び
図2に示すように、本実施の形態に係る露光装置1は、平面度が確保された大型の定盤11上に配置される。この露光装置1は、定盤11上にそれぞれ厚みの異なる小型の定盤12を介して配置される回転駆動部13、チャック部14及び回転支持部15を備える。
【0021】
この露光装置1においては、高い平面度の大型の定盤11上に回転駆動部13、チャック部14及び回転支持部15を配置することから、小型の定盤12の厚さを調整することにより、回転駆動部13の回転軸、チャック部14の中心及び回転支持部15の中心の定盤11の上面に直交する高さ方向D1の位置を高精度に調整することが可能となる。そして、高さ方向D1の位置が高精度に調整された状態で大型の定盤11上面の面内方向D2における位置を調整することにより、高さ方向の位置と、大型の定盤11の面内方向D2における位置とを同時に高精度に一致させることが可能となり、回転駆動部13の回転軸、チャック部14の中心及び回転支持部15の中心を略同一直線上に配置することができる。なお、定盤11としては、JIS B 7513に準拠した方法により測定した0級程度を満たすものであれば、特に限定されず、各種精密定盤を用いることが可能である。
【0022】
回転駆動部13と回転支持部15との間には、ロール状部材としてのスリーブ16が回転可能に支持される。スリーブ16は、軸方向の中央部に設けられた本体部16aと、軸方向の両端部に設けられた略円筒形状の被保持部16bとを有する。スリーブ16の軸方向の一端部の被保持部16bは、チャック部14によってチャックされ、他端部の被保持部16bは、回転支持部15によって回転可能に支持される。
【0023】
回転駆動部13は、チャック部14によってチャックされたスリーブ16の中心を回転軸として、スリーブ16を周方向に回転させる。回転駆動部13としては、回転軸Xを中心としてスリーブ16を周方向に回転させる機能を有する装置であればよく、例えば、スピンドルモーターなどを用いることができる。なお、被保持部16bの形状としては、本体部16aの一端から延在する略多角柱形状としてもよい。
【0024】
本実施の形態に係る露光装置1においては、回転駆動部13の回転軸及びチャック部14の中心が略同一直線上に配置されているので、チャック部14によるチャック後のスリーブ16の回転軸Xと回転駆動部13の回転軸とが略一致する。これにより、回転駆動部13によるスリーブ16の回転時に生じる回転振れを抑制できる。また、回転支持部15の中心が、回転駆動部13の回転軸及びチャック部14の中心と略同一直線上に配置されているので、チャック後のスリーブ16の回転軸X、回転支持部15の中心、及び回転駆動部13の回転軸とが略一致する。したがって、スリーブ16の回転速度を高めた場合においても、回転振れを低減することができる。
【0025】
スリーブ16の他端部の被保持部16b内には、回転支持部15の中心に配置されたチャック軸15aの先端が挿入される。チャック軸15aは、回転駆動部13の回転軸及びチャック部14の中心と略同一直線状に配置される。このため、チャック後のスリーブ16の回転軸X、回転駆動部13及びチャック部14の中心と略同一直線上に配置される。これにより、スリーブ16の回転に伴う回転振れを低減できる。
【0026】
また、定盤11上には、スリーブ16の軸方向に沿って移動用レール17が配置され、この移動用レール17に露光部18がスリーブ16の軸方向の前後に移動可能に配置される。露光部18は、スリーブ16との間で所定の間隔をとって軸方向に前後に移動し、露光面となるスリーブ16の本体部16aの外周面に対して順次露光する。
【0027】
また、露光装置1は、チャック部14のチャッキングを制御する制御部19を備える。制御部19は、スリーブ16の回転に伴う振動及びスリーブ16表面からの反射光を受光して偏心量を測定するレーザー変位計19a(偏心表示器)と、スリーブ16回転時の動バランスを測定するフィールドバランサー19bとを備える。レーザー変位計19aは、露光部18からスリーブ16に照射した光のスリーブ16表面からの反射光を受光し、受光した反射光からスリーブ16表面と露光部18との間の距離を測定して偏心量を測定する。フィールドバランサー19bは、スリーブ16を連結して回転駆動部13を回転させた状態で、回転時のスリーブ16及び回転駆動部13の動バランスを測定する。また、制御部19は、図示しないエアーコンプレッサー及び電源供給手段を有しており、チャック部14に供給するエアー圧及び電力を制御することにより、チャック部14によるスリーブ16の把持力を調整する。制御部19は、測定したスリーブ16の偏心量及び動バランスに基いて、チャック部14のチャッキングを制御してスリーブ16の回転振れを抑制する。
【0028】
スリーブ16の偏心量としては、スリーブ16の露光面を露光部18のフォーカス内に収める観点から、スリーブ16の回転数に関わらず10μm以下に抑えることが好ましい。また、動バランスとしては、スリーブ16の低速回転時(1500r.p.m以下)の振動による露光装置1への負荷を軽減する観点から、1.4μm以下に抑えること好ましい。また、動バランスとしては、スリーブの中速回転時(2000r.p.m以下)においても振動による露光装置1への負荷を軽減する観点から、0.9μm以下の範囲に抑えることがより好ましい。また、動バランスとしては、スリーブ16の高速回転時(2500r.p.m以下)においても振動による露光装置1への負荷を軽減する観点から、0.4μm以下に抑えることがさらに好ましい。
【0029】
図2A,
図2Bは、露光装置1のチャック部(求心型チャック部)の説明図であり、
図1BのII−II線における断面を模式的に示している。
図2A,
図2Bに示すように、スリーブ16の被保持部16bは、回転軸Xと外周面との間の距離が略等距離となるように形成される。チャック部14は、スリーブ16の被保持部16bの外周面の外側に配置された3つの保持爪14aを備える。各保持爪14aは、スリーブ16の回転軸X(
図1A,
図1B参照)の垂直断面において、被保持部16bの外周面に対向して配置され、スリーブ16の周方向において、略等間隔(等角度)に配置される。各保持爪14aは、スリーブ16の回転軸Xと被保持部14bの外周面に対向する表面14bとの間が略等距離となるように配置される。また、各保持爪14aは、チャック部14の中心に向けて駆動され、スリーブ16の被保持部16bの外周面に当接してチャックする。チャック部14は、保持爪14aがスリーブ16の外周面をチャックした際に、チャック部14の中心とスリーブ16の回転軸Xとが略一致するように配置される。ここで、本明細書において、チャック部14の中心とは、各保持爪14aの作動線(
図2A,
図2Bの一点鎖線)が交わる交点Pのことをいう。
【0030】
チャック部14の各保持爪14aは、制御部19から供給されるエアー圧によってチャック部14の中心(交点P参照)に向けて駆動され、スリーブ16の被保持部16bをチャックする(
図2B参照)。本実施の形態に係る露光装置1においては、チャック部14は、3つの保持爪14aがスリーブ16の外周面をチャックした際に、チャック部14の中心とスリーブ16の回転軸Xとが略一致するように配置される。そして、各保持爪14aは、スリーブ16の回転軸Xを中心とした径方向から、スリーブ16を挟み込むように作動して、スリーブ16の径方向に作用する力の総和が0となるように駆動される。この構成により、摩擦力が効率良く働き、回転駆動部13からの回転を滑ることなくスリーブ16に伝えることができるので、スリーブ16を高速回転させても回転振れ、回転速度ムラを抑制できる。
【0031】
なお、保持爪14aの形状としては、スリーブ16の被保持部16bをチャックできる形状であれば、どのような形状であってもよい。例えば、略円柱形状、略直方体形状など本発明の効果が得られる範囲で適宜変更可能である。また、
図2A,
図2Bにおいては、3つの保持爪14aを配置したチャック部14の構成について説明したが、保持爪14aは、少なくとも2つ配置すればよい。また、チャック部14としては、4つの保持爪14cを配置した単動型チャック部としてもよい。
図3A,
図3Bは、単動型チャック部の説明図であり、
図2A,
図2Bと同様に露光装置1の断面を模式的に示している。
【0032】
図3A,
図3Bに示すように、このチャック部14は、互いに直交する2直線上にそれぞれ対向配置され、独立して駆動可能な4つの保持爪14cを有する。このチャック部14においては、4つの保持爪14cを独立してそれぞれ駆動することができる。これにより、例えば、少なくとも2つの保持爪14cによって、スリーブ16をチャックした状態で、他の保持爪14cを独立して駆動させることが可能となる。このため、制御部19によって測定されたスリーブ16の偏心及び動バランスに基づいて、チャック部14の各保持爪14cに供給されるエアー圧を調整して、4つの保持爪14cをスリーブ16の径方向に微動させることにより、スリーブ16のチャッキング位置の微調整が可能となる。これにより、露光中においても容易に偏心、動バランスの微調整が可能となり、より高精度なチャッキングが可能となる。さらに、この場合においては、回転駆動部13が1周回転するごとに発信されるパルス信号と、スリーブ16表面からの反射光を電圧に変換した信号とを比較することにより、チャック部14の保持爪14cの調整量を明確にすることも可能となる。
【0033】
次に、本実施の形態に係る露光装置1の露光動作の一例について説明する。
まず、大型の定盤11上の小型の定盤12の厚みを調整して、回転駆動部13の回転軸、回転支持部15の中心、及びチャック部14の中心が略同一直線上となるように配置する。次に、一端部の被保持部16bがチャック部14内に配置されるようにスリーブ16を設置する。次に、チャック部14の各保持爪14aが、制御部19から供給されたエアー圧により駆動され、スリーブ16の被保持部16bの外周面に当接してチャックする。ここで、回転駆動部13の回転軸、回転支持部15の中心、及びチャック部14の中心が略同一直線上に配置されているので、スリーブ16の中心(回転軸X)と回転駆動部13の回転軸とが略一致する。次に、スリーブ16の他端部の被保持部16bに回転支持部15のチャック軸15aを挿入してスリーブ16を回転可能に支持する。
【0034】
次に、回転駆動部13がスリーブ16を周方向に回転させた後、制御部19がスリーブ16の回転に伴う振動及びスリーブ16表面からの反射光に基いて偏心量を測定すると共に、回転時のスリーブ16及び回転駆動部13の動バランスを測定する。そして、制御部19は、チャック部14を駆動して偏心量及び動バランスが所定範囲となるように制御した後、露光条件に応じた回転速度で露光が開始される。
【0035】
次に、チャック部14の他の構成例について説明する。
図4は、拡張型チャック部を備えた露光装置の断面模式図である。
図5A,
図5Bは、拡張型チャック部の説明図であり、
図4のIV−IV線における断面模式を示している。なお、以下の説明においては、
図1Bと同一の構成要件には、同一の符号を付し、説明の重複を避ける。
【0036】
図5A,
図5Bに示すように、チャック部21は、スリーブ16の被保持部16bの内周面に沿った円弧形状をなす3つの保持片21aを有しており、この3つの保持片21aがスリーブ16の被保持部16b内に挿入される。各保持片21aは、スリーブ16の回転軸Xの垂直断面内において、被保持部16bの内周面の互いに異なる位置に、被保持部16bの内周面に対向して配置される。各保持片21aは、スリーブ16の周方向において、略等間隔(略等角度)となるように配置され、外周面21bとスリーブ16の内周面16dとの間が略等距離となるように配置される。また、各保持片21aは、チャック部21の中心から放射状に駆動され(
図5A,
図5Bの一点鎖線参照)、被保持部16bの内周面に当接して付勢する。なお、本明細書において、チャック部21の中心とは、各保持片21aの作動線(
図5A,
図5Bの一点鎖線)が交わる交点Pのことをいう。
【0037】
各保持片21aは、制御部19から供給されるエアー圧によってスリーブ16の被保持部16bの内周面を付勢することにより、スリーブ16をチャックする。各保持片21aは、チャック部の中心(交点P参照)から放射状に均等に駆動され、スリーブ16の内周面を拡張するようにチャックする。また、各保持片21aは、スリーブ16の径方向に作用する力の総和が0となるようにスリーブ16をチャックする(
図5B参照)。この構成により、摩擦力が効率良く働き、回転駆動部13からの回転を滑ることなくスリーブ16に伝えることができるので、高速回転でも回転振れ、回転速度ムラを低減できる。
【0038】
なお、
図5A,
図5Bにおいては、3つの保持片21aを配置した例について説明したが、保持片21aは、少なくとも2つ配置すればよい。
【0039】
図6は、電磁型チャック部を備えた露光装置の断面模式図である。
図7A,
図7Bは、電磁型チャック部の説明図であり、
図6のチャック部の拡大図である。
【0040】
図6に示すように、チャック部22は、スリーブ16の回転軸に対して垂直に配置された平面度の高い保持面22bを有する保持部22a備える。
図7A,
図7Bに示すように、チャック部22は、電磁石などによって、被保持部の端面16eに対する垂直方向から、端面16eを保持面22bに電磁チャックする。スリーブ16の端面16eは、高精度に平面加工されており、回転軸Xに対して垂直に設けられる。チャック部22は、平面度の高いスリーブ16の端面16eに対して垂直方向から電磁チャックするので、摩擦力が効率良く働き、回転駆動部13からの回転を滑ることなくスリーブ16に伝えることができる。これにより、回転速度ムラを抑えることができ、均一な微細パターンを形成することできる。なお、本明細書において、チャック部22の中心とは、保持部22aの保持面22bの中心点P(
図6参照)のことをいう。なお、スリーブ16の把持力は、チャック部22に供給する電力を調節することにより適宜調節できる。なお、保持面22bの平面度としては、JIS B 7513に準拠した方法により測定した0級程度を満たすものであれば、本発明の効果を奏する範囲で各種平板を用いることができる。
【0041】
なお、露光装置1の構成は、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。例えば、
図8に示すように、スリーブ16の一端部及び他端部にチャック部14を設け、このチャック部14によってスリーブ16の両端部の被保持部16bをチャックする構成としてもよい。この場合には、各小型の定盤12の厚みを調整して、スリーブ16の両端部に配置されたチャック部14の中心と回転駆動部13の回転軸とが略同一直線上となるように配置し、スリーブ16の両端部に設けられた被保持部16bを各チャック部14の保持爪14aによってそれぞれチャックする。これにより、チャック後のスリーブ16両端部が、回転駆動部13の回転軸と略同一直線上に配置された各チャック部14の中心の近傍に支持されるので、チャック後のスリーブ16の回転軸Xと回転駆動部13の回転軸とが精度よく一致し、回転振れをより低減することが可能となる。また、スリーブ16の両端部をそれぞれチャックすることから、各チャック部14とスリーブ16との間の摩擦が効果的に作用するので、スリーブ16を高速回転させた場合においても、回転振れ、回転速度ムラをより抑制できる。
【0042】
また、
図9に示すように、スリーブ16の一端部にチャック部14を設け、他端部に自動調心軸受23を配置する構成としてもよい。この場合には、各小型の定盤12の厚みを調整して、チャック部14の中心、回転駆動部13の自動調心軸受23の中心を略同一直線上に配置し、スリーブ16の一端部に設けられた被保持部16bをチャック部14の保持爪14aでチャックしてから、スリーブ16の他端部を自動調心軸受23によって回転可能に支持する。これにより、スリーブ16の回転に伴う回転振れの低減でき、スリーブ16の回転を高速化することも可能となる。さらに、自動調心軸受23は、軸受自身に調心能力があるので、軸受自身に無理な力が加わらず、装置への負荷を軽減することができるため、長期間使用することが可能となる。
【0043】
さらに、上述したチャック部14と回転支持部15などを組み合わせて用いてもよい。例えば、
図10に示す例では、スリーブ16の一端部にチャック部14及び回転支持部15を組み合わせて配置し、他端部にチャック部14を配置した例を示している。この場合には、各小型の定盤12の厚みを調整して、スリーブ16の一端部のチャック部14の中心、回転支持部15の中心、スリーブ16の他端部及び回転駆動部13の回転軸を略同一直線上に配置する。次に、スリーブ16の一端部に回転支持部15のチャック軸15aを挿入してから、スリーブ16の他端部に設けられた被保持部16bをチャック部14の保持爪14aによってチャックする。この結果、スリーブ16の一端部が回転支持部によって回転可能に支持され、スリーブの16の他端部がチャック部14によってチャックされるので、スリーブ16の回転軸Xと回転駆動部13の回転軸とが略一致する。さらに、スリーブ16の回転軸Xと回転駆動部13の回転軸とを略一致させた状態で、スリーブ16の一端部に設けられた被保持部16bをチャック部14の保持爪14aでチャックしてから、スリーブ16の一端部からチャック軸15aを抜き出す。この結果、スリーブ16の回転軸Xと回転駆動部13の回転軸とを精度よく一致させることが可能となる。
【0044】
また、スリーブ16の被保持部16bの一端部及び/又は他端部に複数のチャック部14を組み合せて設けてもよい。例えば、
図11に示す例では、スリーブ16の一端部に求心型チャック部と単動型チャック部とを組み合わせたチャック部24を配置し、スリーブ16の他端部にチャック部14を配置する。この場合には、スリーブ16に対して外側に配置された求心型チャック部の保持爪14aによって、スリーブ16の一端部の被保持部16bを仮チャッキングしてから、他端部の被保持部16bをチャック部14によってチャックするので、スリーブ16の回転軸Xと回転駆動部13の回転軸とが略一致する。そして、スリーブ16の回転軸Xと回転駆動部13の回転軸とが略一致させた状態で、単動型チャック部の保持爪14cによってスリーブ16の一端部の被保持部16bを本チャッキングしてから、求心型チャック部の保持爪14aによる仮チャッキングを解除する。このように、2段階でチャッキングすることにより、スリーブ16の回転軸Xと回転駆動部13の回転軸とを特に高精度に一致させることが可能となる。
【0045】
図11に示すチャック部を用いる場合、求心型チャック部の保持爪14aでスリーブ16を仮チャッキングすることにより、スリーブ16の回転軸Xが回転駆動部13の回転軸と略一致させた状態で、単動型チャック部の保持爪14cによりスリーブ16を本チャッキングする。次に、求心型チャック部の保持爪14aによるチャックを解除し、スリーブ16を回転させてレーザー変位計19aにより偏心を測定し、フィールドバランサー19bにより動バランスを測定する。そして、偏心、動バランスの測定結果に基いて、単動型チャック部の各保持爪14cに供給するエアー圧をそれぞれ調節して、各保持爪14cを独立して駆動することにより、偏心、動バランスを小さくすることができる。
【0046】
以上説明したように、上記実施の形態に係る露光装置1によれば、チャック部14の中心及び回転駆動部13の回転軸を略同一直線上に配置したことから、チャック後のスリーブ16の回転軸Xと回転駆動部13の回転軸とが略一致するので、スリーブ16の回転時に生じる回転振れを抑制できる。また、チャック部14の保持爪14aが、スリーブ16の被保持部16bの径方向からチャック部14の中心に向けて駆動され被保持部16bの外周面に当接してチャックするので、チャック時におけるチャック部14と被保持部16bとの間で摩擦力が効率良く働き、回転駆動部13からの回転を滑ることなくスリーブ16に伝達できる。これにより、パターニング速度を向上させた高速回転でのパターニングを実現でき、生産効率を向上できる。また、外周面にレジストを設けたスリーブ基材への均一な微細パターン形成、微細パターン付スリーブの生産の高効率化及び安定化を達成することが可能となる。
【0047】
特に、上記実施の形態に係る露光装置においては、スリーブ16が回転してもスリーブ16の外周面(露光面)と露光部18との間の距離の変化を低減できると共に、チャッキング時の保持爪14aとスリーブ16との間の滑りを抑制できるので、回転ムラが生じることなく高速回転することができる。この結果、サブミクロンオーダー(〜100nm)の微細パターンを生産性良く形成させることが可能となり、加工精度が高く、品質の安定した微細パターンを有するスリーブを生産効率よく製造することが達成できる。
【0048】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさ、形状、チャック部の配置などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。