特許第5856469号(P5856469)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5856469
(24)【登録日】2015年12月18日
(45)【発行日】2016年2月9日
(54)【発明の名称】リニアアクチュエータ及びスピーカ
(51)【国際特許分類】
   H02K 33/18 20060101AFI20160120BHJP
   H04R 9/00 20060101ALI20160120BHJP
   H04R 9/02 20060101ALI20160120BHJP
   H04R 7/04 20060101ALI20160120BHJP
【FI】
   H02K33/18 B
   H04R9/00 C
   H04R9/02 102A
   H04R7/04
【請求項の数】13
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2011-277298(P2011-277298)
(22)【出願日】2011年12月19日
(65)【公開番号】特開2013-128376(P2013-128376A)
(43)【公開日】2013年6月27日
【審査請求日】2014年9月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】306029981
【氏名又は名称】ケイテック株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】394021546
【氏名又は名称】アイ・アンド・ピー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078330
【弁理士】
【氏名又は名称】笹島 富二雄
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100154106
【弁理士】
【氏名又は名称】荒木 邦夫
(72)【発明者】
【氏名】西野 敬貴
(72)【発明者】
【氏名】松村 周治
【審査官】 宮崎 基樹
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭58−048195(JP,U)
【文献】 特開2001−076925(JP,A)
【文献】 実開昭58−090798(JP,U)
【文献】 特開2010−239851(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 33/00−33/18
H04R 7/00− 7/26
H04R 9/00− 9/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺に形成され、その長手方向に沿ってN極とS極とが出現する2つのボンド磁石を備え、前記2つのボンド磁石をそれぞれのN極とS極とが互いに他方のボンド磁石の異極と対向するように離間して配置された磁石構造体と、
前記磁石構造体の前記2つのボンド磁石の間に前記長手方向と平行に配置され、通電可能な配線パターンを有する配線板と、を含んで構成され、
前記配線板の配線パターンは、前記配線板の中央部を囲む螺旋状に形成された第1螺旋状部分と、前記第1螺旋状部分の外側端部と前記配線板の前記中央部とを直線的に接続する直線状部分とを含み、
前記配線パターンの第1螺旋状部分のうち、前記直線状部分と交差する点を含む一部は、前記配線板の一方の面に配線され、
前記配線パターンの残りの部分は、前記配線板の他方の面に配線され、
前記配線板の両面に配線された配線パターンはスルーホールを介して接続されており、
前記磁石構造体と前記配線板とのいずれか一方が可動子とされ、他方が固定子とされ、
前記配線板の前記配線パターンに通電することにより、前記可動子を駆動して振動させることを特徴とするリニアアクチュエータ。
【請求項2】
前記配線板の前記ボンド磁石の長手方向と略垂直な方向に沿って、複数の前記磁石構造体が間隔をおいて配置されたことを特徴とする請求項1に記載のリニアアクチュエータ。
【請求項3】
前記可動子の前記ボンド磁石の長手方向の一方の端部に、前記可動子の駆動により振動する振動板が固定されたことを特徴とする請求項1又は2のいずれか一方に記載のリニアアクチュエータ。
【請求項4】
前記配線板が可動子とされ、前記磁石構造体が固定子とされたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のリニアアクチュエータ。
【請求項5】
前記配線板は、可撓性部材を含んで構成され、
前記可撓性部材は、前記ボンド磁石の長手方向に一端が開口した断面コ字型形状に形成され、前記長手方向と平行な対向する一対の面と、前記一対の面を接続する前記長手方向と垂直な接続面とを含んで構成され、
前記可撓性部材により2枚の平行な前記配線板が一体に形成されたことを特徴とする請求項4に記載のリニアアクチュエータ。
【請求項6】
前記2枚の平行な配線板のそれぞれの配線パターンは、前記接続面を介して電気的に接続されたことを特徴とする請求項5に記載のリニアアクチュエータ。
【請求項7】
前記可撓性部材の前記接続面には金属製のパターン領域が設けられたことを特徴とする請求項5又は6に記載のリニアアクチュエータ。
【請求項8】
前記磁石構造体が可動子とされ、前記配線板が固定子とされたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のリニアアクチュエータ。
【請求項9】
前記配線板は、通電可能な基板パターンを有する基板に固定子として固定され、
前記配線板の配線パターンと前記基板の基板パターンとが電気的に接続されたことを特徴とする請求項8に記載のリニアアクチュエータ。
【請求項10】
前記配線板の他方の面の中央部には、前記配線パターンの直線状部分と接続された第1端子が設けられたことを特徴とする請求項に記載のリニアアクチュエータ。
【請求項11】
前記配線板の配線パターンは、前記第1螺旋状部分と同一方向の螺旋状に形成され、前記配線板の前記一方の面に配線された第2螺旋状部分を含んで構成され、
前記第1螺旋状部分の内側端部と前記第2螺旋状部分の内側端部とは、スルーホールを介して接続されたことを特徴とする請求項10に記載のリニアアクチュエータ。
【請求項12】
前記ボンド磁石は、前記ボンド磁石の長手方向に沿ってN極とS極とが交互に複数組出現することを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載のリニアアクチュエータ。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載のリニアアクチュエータを備えたことを特徴とするスピーカ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リニアアクチュエータ及びそのリニアアクチュエータを備えたスピーカに関し、詳しくは、2つのボンド磁石の間に磁束と垂直に配線板を配置したリニアアクチュエータ及びスピーカに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のリニアアクチュエータは、交互に異なる極性で並べられた帯状の永久磁石と、前記永久磁石の長手方向に平行な直線部を有する蛇行パターンのボイスコイルが表面上に形成された振動板と、を備えていた(例えば特許文献1参照)。
【0003】
このように構成されたリニアアクチュエータは、隣り合う永久磁石間の磁力線が前記振動板と平行な部分(ニュートラルゾーン)の磁束と、ボイスコイルを流れる電流との間に作用するローレンツ力により、ボイスコイルを前記振動板と垂直方向に駆動した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−103629号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前記従来のリニアアクチュエータにおいて、前記ニュートラルゾーンの磁束の磁束密度は、前記永久磁石の表面磁束密度より小さいため、磁束の利用効率が低いという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、上記問題点を解消して、磁束の利用効率が高いリニアアクチュエータを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によるリニアアクチュエータは、長尺に形成され、その長手方向に沿ってN極とS極とが出現する2つのボンド磁石を備え、前記2つのボンド磁石をそれぞれのN極とS極とが互いに他方のボンド磁石の異極と対向するように離間して配置された磁石構造体と、前記磁石構造体の前記2つのボンド磁石の間に前記長手方向と平行に配置され、通電可能な配線パターンを有する配線板と、を含んで構成され、前記配線板の配線パターンは、前記配線板の中央部を囲む螺旋状に形成された第1螺旋状部分と、前記第1螺旋状部分の外側端部と前記配線板の前記中央部とを直線的に接続する直線状部分とを含み、前記配線パターンの第1螺旋状部分のうち、前記直線状部分と交差する点を含む一部は、前記配線板の一方の面に配線され、前記配線パターンの残りの部分は、前記配線板の他方の面に配線され、前記配線板の両面に配線された配線パターンはスルーホールを介して接続されており、前記磁石構造体と前記配線板とのいずれか一方が可動子とされ、他方が固定子とされ、前記配線板の前記配線パターンに通電することにより、前記可動子を駆動して振動させるものである
【0008】
また、本発明によるスピーカは、前記本発明によるリニアアクチュエータを備えたものである
【発明の効果】
【0009】
本発明によるリニアアクチュエータによれば、2つのボンド磁石をそれぞれのN極とS極とが互いに他方のボンド磁石の異極と対向するように離間して配置し、前記2つのボンド磁石の間に通電可能な配線パターンを有する配線板を配置し、前記配線板の配線パターンは、前記配線板の中央部を囲む螺旋状に形成された第1螺旋状部分と、前記第1螺旋状部分の外側端部と前記配線板の前記中央部とを直線的に接続する直線状部分とを含み、前記配線パターンの第1螺旋状部分のうち、前記直線状部分と交差する点を含む一部は、前記配線板の一方の面に配線され、前記配線パターンの残りの部分は、前記配線板の他方の面に配線され、前記配線板の両面に配線された配線パターンはスルーホールを介して接続されることにより、前記配線パターンを通過する磁束の磁束密度の低下を抑制することができる。したがって、磁束の利用効率を向上させることができる。
また、本発明によるスピーカによれば、本発明によるリニアアクチュエータを備えることにより、磁束の利用効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明によるリニアアクチュエータの第1実施形態を示す一部破断した概略斜視図である。
図2】前記第1実施形態のA−A線平面断面図である。
図3】前記第1実施形態の磁石構造体と配線板とを示す概略斜視図である。
図4】前記第1実施形態のB−B線正面断面図である。
図5】前記第1実施形態の配線板の配線パターンを示す平面図である。
図6図5の配線板の表面の配線パターンのみを示す平面図である。
図7図5の配線板の裏面の配線パターンのみを透視して示す平面図である。
図8】前記配線板の他の実施形態を示す平面図である。
図9】本発明によるリニアアクチュエータの第2実施形態を示す正面断面図である。
図10】前記第2実施形態を示す平面断面図である。
図11】前記第2実施形態の断面コ字型形状の可撓性部材を示す展開図である。
図12】前記可撓性部材の他の例を示す展開図である。
図13】前記可撓性部材のさらに他の例を示す展開図である。
図14】本発明によるリニアアクチュエータの第3実施形態を示す正面断面図である。
図15】前記第3実施形態を示す平面図である。
図16】本発明によるリニアアクチュエータの第4実施形態を示す正面断面図である。
図17】前記第4実施形態を示す平面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
図1において、リニアアクチュエータは、可動子と固定子とを備え、磁束と電流との間に作用するローレンツ力によって可動子を直線状に駆動する。リニアアクチュエータは、筐体1と、磁石構造体2と、配線板3と、振動板4と、を含んで構成される。本実施形態においては、前記磁石構造体2が固定子とされ、配線板3が可動子とされている。
【0012】
図1に示すように、前記筐体1は、上方が開口した略直方体形状であり、底壁11と側壁12とを備える。前記底壁11の上面には、図2に示すように、配線板3に沿って複数の磁石構造体2が平行に間隔をおいて配置されている。この磁石構造体2は、本実施形態においてリニアアクチュエータの固定子として使用されており、図3に示すように、第1ボンド磁石21と第2ボンド磁石22とを備える。
【0013】
前記ボンド磁石21,22は、図3に示すように、長尺に形成され、いずれもその長手方向Lに沿ってN極とS極とが出現するボンド磁石であって、内部の磁力線がS極からN極に向けて円弧状に配向されている。これらのボンド磁石21,22は、それぞれのN極とS極とが互いに他方のボンド磁石22,21の異極と対向するように離間して配置され、第1ボンド磁石21のN極と第2ボンド磁石22のS極とが対向し、第1ボンド磁石21のS極と第2ボンド磁石22のN極とが対向している。これにより、第1ボンド磁石21と第2ボンド磁石22との間では、磁力線が前記長手方向Lと垂直な方向となり、この部分の磁束密度はボンド磁石21,22の表面磁束密度と略同等となる。
【0014】
各ボンド磁石21,22の形状は、用途に応じた任意の形状に形成することができるが、パーミアンス係数Pcが大きく(反磁場係数Nが小さく)なるように形成されるのが好ましく、例えば、N極とS極との間のピッチPが8mm以上、幅Wが2.5mm以上の薄い平板状に形成するのが好ましい。ボンド磁石21,22の下端部は、図4に示すように、いずれも前記筐体1の底壁11の上面に、前記長手方向Lが底壁11と垂直になるように接着剤等により固定されている。
【0015】
磁石構造体2の第1ボンド磁石21と第2ボンド磁石22との間には、配線板3が配置されている。配線板3は、本実施形態においてリニアアクチュエータの可動子として使用される略長方形の板状部材であって、上端部が筐体1の底壁11と平行に形成されている。配線板3は、ボンド磁石21,22の間に長手方向Lと平行かつそれぞれの磁石構造体2の間の磁力線と垂直に配置されており、リニアアクチュエータの左右両側に2枚平行に設けられている。
【0016】
配線板3の表面31f及び裏面31rには、図5に示すように、通電可能な配線パターン32が形成されている。本実施形態におけるリニアアクチュエータは、前記配線パターン32に通電することにより、可動子である配線板3を駆動して振動させる。配線パターン32に電流が流れると、流れた電流と磁石構造体2の磁極間の磁束との間にローレンツ力が生じ、配線板3は長手方向Lに沿って直線状に駆動される。配線板3が駆動する向きは、フレミングの左手の法則に従い、電流の向きと磁石構造体2の間の磁束の向きとに応じて決まる。配線パターン32に流れる電流の向きを交互に変化させることにより、配線板3の駆動する向きが交互に変化し、配線板3は長手方向Lに沿って振動する。
【0017】
図5に示すように、配線板3の表面31f及び裏面31rに形成された配線パターン32は、第1螺旋状部分33と、第1直線状部分34と、第2螺旋状部分35と、第2直線状部分36と、を含んで構成される。前記第1螺旋状部分33は、配線板3の外形に沿うように、配線板3の中央部を囲む螺旋状に形成されている。第1螺旋状部分33の外側端部33aは、第1直線状部分34により配線板3の中央部と直線的に接続されており、第1螺旋状部分33のうち、第1直線状部分34と交差する点を含む一部は配線板3の裏面31rに配線され、残りの部分は表面31fに配線されている。
【0018】
配線板3の表面31fには、図6に示すように、第1螺旋状部分33が裏面31rに配線された開放部分38が形成される。配線板3の表面31fには、一部(開放部分38の内側)が途切れた螺旋状に形成された第1螺旋状部分33と、第1直線状部分34と、第2直線状部分36と、が配線される。第1螺旋状部分33の表面31fに配線された部分と裏面31rに配線された部分とは、スルーホール37を介して電気的に接続されている。
【0019】
第1螺旋状部分33の内側端部33bは、図5に示すように、配線板3の裏面31rに配線された第2螺旋状部分の内側端部35bと、スルーホール37bを介して電気的に接続されている。第2螺旋状部分35は、図7に示すように、配線板3の外形に沿って、前記第1螺旋状部分33と同一方向の螺旋状に形成されている。したがって、配線パターン32に電流が流れると、第1直線状部分33と第2直線状部分35との間に同一方向のローレンツ力が生じる。
【0020】
配線板3の裏面31rには、この第2螺旋状部分35と、第1螺旋状部分33のうち前記開放部分38の内側部分とが配線されている。第2螺旋状部分35の外側端部35aは、配線板3の表面31fに配線された第2直線状部分36と、スルーホール37aを介して電気的に接続されている。前記第2直線状部分36は、配線板3の表面31fに形成された開放部分38を通じて、配線板3の表面31fの中央部と接続される。
【0021】
表面31fの中央部には、配線パターン32の端子である第1端子39a及び第2端子39bが設けられており、第1螺旋状部分33の外側端部33aと第1端子39aとは第1直線状部分34により直線的に接続され、第2螺旋状部分35の外側端部35aと第2端子39bとは第2直線状部分36により直線的に接続されている。
【0022】
図4に示すように、配線板3の上端部には振動板4が固定されている。この振動板4は、可動子である配線板3の駆動により、配線板3の駆動方向に振動する平板状部材である。振動板4は、図1,3に示すように、筐体1の上端部の内周縁と、エッジ5を介して接続されている。エッジ5は、ウレタン、ゴム、シリコン等により形成され、振動板4を所定の位置に保持している。
【0023】
本実施形態におけるリニアアクチュエータは、第1ボンド磁石21と第2ボンド磁石22との間の磁束密度はボンド磁石21,22の表面磁束密度と略同等であるため、可動子の駆動に使用される磁束の磁束密度の低下を抑制することができ、磁束の利用効率を向上させることができる。
【0024】
また、本実施形態におけるボンド磁石21,22は、例えば、ゴム、塩化ビニール又はプラスチック等の基材と、サマリウム鉄窒素磁石等の磁性体と、の混合物を射出成形することにより形成することができる。したがって、ボンド磁石21,22は、従来のリニアアクチュエータに使用されるネオジム等の焼結磁石に比べて軽量となり、リニアアクチュエータの重量を軽減することができる。
【0025】
また、本実施形態におけるリニアアクチュエータは、ボンド磁石21,22の磁力線の前記配向及び磁束の利用効率の向上により、鉄等の金属からなるヨークが不要となるため、重量を軽減することができる。
【0026】
また、本実施形態におけるリニアアクチュエータは、可動子の駆動に使用することができる磁束密度を有する範囲Rを、従来のリニアアクチュエータの前記ニュートラルゾーンに比べて長手方向Lに広くすることができるため、可動子のストロークを長くすることができる。
【0027】
また、本実施形態における配線板3は、プラスチック等の樹脂を射出成形することにより形成することができるため、軽量かつ容易に製造することができる。さらに、配線板3は、複数の磁石構造体2との間のローレンツ力により駆動される。したがって、配線板3の駆動に必要な、磁石構造体2の1個あたりの磁束密度及び配線板3の配線パターン32に流す電流を小さくすることができる。
【0028】
また、本実施形態によるリニアアクチュエータは、端子39a,39bが配線板3の中央部に配置されるため、配線板3の重心の偏りを防止することができ、配線板3を安定して駆動させることができる。
【0029】
なお、本実施形態において、開放部分38は、配線板3の左辺側に形成されているが、スルーホール37の位置を調整することによって表面31f上の任意の場所に設けることができる。開放部分38は、配線板3の駆動に寄与しない部分、すなわちローレンツ力の発生に寄与しない部分に設けるのが好ましく、配線板3の左辺側又は右辺側のどちらかに設けるのが好ましい。
【0030】
さらに、第1螺旋状部分33の内側端部33bと第2螺旋状部分35の内側端部35bとを接続するスルーホール37bは、開放部分38の外側の任意の位置に形成することができ、第2螺旋状部分35の外側端部35aと第2直線状部分36とを接続するスルーホール38aは、開放部分38の内側に形成されてもよい。
【0031】
図8は、配線板3の他の実施形態を示す平面図である。図8に示すように、本実施形態において、配線板3の下端部の左右両端には、凸部が形成されている。この凸部の一方には、第1端子39a及び第2端子39bが並んで設けられている。第1端子39aは第1螺旋状部分33の外側端部33aと接続されており、第2端子39bは第2螺旋状部分35の外側端部35aとスルーホール37aを介して接続されている。第1端子39a及び第2端子39bは、いずれも左側凸部に設けられているが、右側凸部に設けられてもよく、それぞれ左右の凸部にばらばらに設けられてもよい。
【0032】
次に、本発明によるリニアアクチュエータの第2実施形態について、図9〜13を参照して説明する。このリニアアクチュエータは、筐体1と、磁石構造体2と、配線板3a,3bと、振動板4と、を備える。本実施形態において、配線板3は可動子とされ、磁石構造体2は固定子とされている。
【0033】
配線板3a,3bは、可撓性部材6を含んで構成される。可撓性部材6は、長手方向Lの下方に開口した断面コ字型形状に形成されており、配線板3a,3bを形成する長手方向Lと平行な対向する一対の面61と、前記一対の面61を接続する長手方向Lと垂直な接続面62とを含んで構成される。すなわち、2枚の平行に配置された配線板3aと配線板3bとは、可撓性部材6により一体に形成される。
【0034】
図10に示すように、可撓性部材6により一体に形成された2つの配線板3a,3bは、2組平行に配置されており、磁石構造体2はそれぞれの配線板3ごとに間隔をおいて複数平行に配置されている。振動板4は、図9に示すように、可撓性部材6の接続面62上に固定されている。
【0035】
図11に示すように、可撓性部材6により一体に形成された2枚の配線板3a,3bは、それぞれ第1端子39a、第2端子39b及び配線パターン32を備える。配線板3a,3bにそれぞれ配線された配線パターン32は、電気的に接続されていない。
【0036】
図13に示すように、可撓性部材6の接続面62には、銅箔により平面視三角形状に形成されたパターン領域63が設けられている。これにより、接続面62の機械的強度を向上させることができる。なお、このパターン領域63は、銅箔に限られず、他の金属により形成されてもよい。また、パターン領域63の平面視形状は、三角形状に限られず、四角形、円形等の任意の形状とすることができる。
【0037】
図12は、前記可撓性部材6の他の実施形態を示す展開図である。図12に示すように、配線板3a,3bは、一方の配線板3aが第1端子39a及び配線パターン32を備え、他方の配線板3bが第2端子39b及び配線パターン32を備えている。配線板3aの配線パターン32aと配線板3bの配線パターン32bとが可撓性部材6の接続面62を介して電気的に接続されている。
【0038】
本実施形態における可撓性部材6は、このような構成により、配線板3a,3bが有する端子をそれぞれ1つずつとすることができるため、部品点数を減少させることができる。したがって、リニアアクチュエータを軽量化し、安価に製造することができる。
【0039】
図13は、前記可撓性部材6のさらに他の実施形態を示す展開図である。図13に示すように、配線板3a,3bは、一方の配線板3aが第1端子39a、第2端子39b及び配線パターン32を備え、他方の配線板3bが配線パターン32bのみを備えている。配線板3aの配線パターン32aと配線板3bの配線パターン32bとが可撓性部材6の接続面61を介して電気的に接続されている。
【0040】
本発明によるリニアアクチュエータの第3実施形態について、図14,15を参照して説明する。このリニアアクチュエータは、筐体1と、磁石構造体2a,2bと、配線板3a,3bと、を備える。図15に示すように、本実施形態において筐体1は、側壁12の一部が磁石構造体2aの第1ボンド磁石21aと磁石構造体2bの第2ボンド磁石22bとにより構成される。
【0041】
図14に示すように、磁石構造体2a,2bは、リニアアクチュエータの左右両側に設けられ、左側の磁石構造体2aの第1ボンド磁石21aと右側の磁石構造体2bの第2ボンド磁石22bとは、前記側壁12の一部を形成しており、磁石構造体2aの第2ボンド磁石22aと磁石構造体2bの第1ボンド磁石21bとより長手方向Lに長く形成されている。
【0042】
配線板3a,3bは、前記第2実施形態の配線板3a,3bと同様、断面コ字型形状の可撓性材料6を含んで構成され、可撓性材料6の接続面62が振動板4としての役割を果たす。したがって、接続面62上には別部材としての振動板4は設けられていない。前記接続面62の外周縁は、エッジ5により、筐体1の側壁12と接続されている。
【0043】
本実施形態におけるリニアアクチュエータは、別部材としての振動板4が不要なため、リニアアクチュエータの部品点数を減少させ、リニアアクチュエータを軽量化し、安価に製造することができる。
【0044】
本発明によるリニアアクチュエータの第4実施形態について、図16,17を参照して説明する。このリニアアクチュエータは、筐体1と、磁石構造体2と、配線板3と、振動板4とを備え、磁石構造体2が可動子とされ、配線板3が固定子とされている。
【0045】
図16に示すように、前記筐体1の底壁11上には、通電可能な基板パターンを有する基板7が設けられている。この基板7の上面には、図17に示すように、4枚の配線板3が平行に配置されている。配線板3と基板7との接続部には、コネクタ8が設けられており、このコネクタ8により、4枚の配線板3の配線パターンと基板7の基板パターンとが電気的に接続され、全体で1つの回路を形成している。
【0046】
図17に示すように、前記4枚の配線板3のそれぞれに対して、複数の磁石構造体2が間隔をおいて平行に設けられており、これらの磁石構造体2の上端部は、図16に示すように、振動板4の下面に固定されている。振動板4の外周縁は、筐体1の側壁12上端部の内周縁とエッジ5により接続されている。
【0047】
以上説明した本発明によるリニアアクチュエータにおいて、筐体1は、直方体形状に限られず、例えば、円筒形等の他の形状に形成することができる。また、筐体1は、プラスチック、木材及び金属等により形成することができ、筐体1の底壁11と側壁12との材質が同一であるのが好ましいが、異なる材質であってもよい。
【0048】
本発明による磁石構造体2は、配線板3に沿って複数等間隔に配置されるのが好ましい。磁石構造体2の各ボンド磁石21,22内の磁力線の配向は円弧状に限られず、ボンド磁石21,22の間の磁力線が長手方向Lと垂直な方向になるように配向されていればよい。ボンド磁石21,22は、長手方向Lに沿ってN極とS極とが一組出現するが、長手方向Lに沿ってN極とS極と交互に複数組出現してもよい。
【0049】
本発明による配線板3は、略長方形に限られず、筐体1の形状等に応じた任意の形状とすることができる。配線板3を配置する枚数も任意に設定することができる。配線板3に形成された配線パターン32の螺旋状部分33,35を配線板3の外形に沿って巻く回数は、配線板3の大きさや配線パターン32の幅に応じて決めることができ、複数回とされるのが好ましい。
【0050】
本発明による振動板4は、パルプ、プラスチック、セラミック、金属等により形成することができる。振動板4は、平板状に限られず、ドーム形状、コーン形状等とすることもできる。
【0051】
以上説明した本発明によるリニアアクチュエータは、振動板4の形状を選択することにより、例えば、ダイナミック型スピーカや平面波スピーカ等のスピーカに使用することができる。本発明によるリニアアクチュエータをスピーカに使用した場合、リニアアクチュエータは、配線板3の配線パターンに入力された電気信号に応じて可動子を駆動し、振動板4又は可撓性部材6の接続面61を振動させて音波を生じさせる。本発明によるスピーカは、可動子の振動方向の前方(音波を送る側)に固定子が存在しないため、音波の搬送を良好に行うことができる。本発明によるリニアアクチュエータを使用することにより、軽量で安価なスピーカを製造することができる。本発明によるリニアアクチュエータは、圧力センサ等のセンサに使用されてもよい。
【符号の説明】
【0052】
1…筐体
11…底壁
12…側壁
2,2a,2b…磁石構造体
21,21a,21b…第1ボンド磁石
22,22a,22b…第2ボンド磁石
3,3a,3b…配線板
31f…配線板の表面
31r…配線板の裏面
32,32a,32b…配線パターン
33…第1螺旋状部分
33a…第1螺旋状部分の外側端部
33b…第1螺旋状部分の内側端部
34…第1直線状部分
35…第2螺旋状部分
35a…第2螺旋状部分の外側端部
35b…第2螺旋状部分の内側端部
36…第2直線状部分
37,37a,37b…スルーホール
38…開放部分
39a…第1端子
39b…第2端子
4…振動板
5…エッジ
6…可撓性部材
61…一対の面
62…接続面
63…パターン領域
7…基板
8…コネクタ
P…ピッチ
W…幅
Pc…パーミアンス係数
N…反磁場係数
図1
図2
図3
図4
図5
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図10
図11
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図17