(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1減圧弁の入口に設けられ、前記第1減圧弁の入口から流入する液体の温度を検出して第1測定温度信号を生成する第1温度検出器、及び当該液体の圧力を検出して第1測定圧力信号を生成する第1圧力検出器と、
前記第1減圧弁の入口の液体の圧力が、前記第1測定温度信号における第1飽和圧力よりも高くなるように、前記第1測定温度信号及び前記第1測定圧力信号に基づいて、前記第1減圧弁の開度を制御する第1制御手段とを備えることを特徴とする請求項1記載の摩耗低減機能付き減圧システム。
前記第3制御手段は、前記冷却器の出口から排出される液体の圧力が、前記第2測定温度信号における第2飽和圧力よりも高くなるように、前記第2測定温度信号及び前記第2測定圧力信号に基づいて、前記第1減圧弁の開度を制御することを特徴とする請求項4記載の摩耗低減機能付き減圧システム。
【背景技術】
【0002】
例えば摩耗性粉粒状物を含む超臨界状態又は亜臨界状態の液体を減圧弁でフラッシュ減圧して、少なくとも気体及び摩耗性粉粒状物を含むものとして排出することができる減圧システムとして、
図5に示すものを本願発明者は考えている。この減圧システム1は、減圧弁2を備えており、この減圧弁2の入口に入口側配管3が接続され、減圧弁2の出口に出口側配管4が接続されている。そして、入口側配管3には、第1温度検出器T1及び第1圧力検出器P1が設けられ、出口側配管4には、第3温度検出器T3及び第3圧力検出器P3が設けられている。
【0003】
第1温度検出器T1は、減圧弁2の入口に流入する液体の温度を検出して第1測定温度信号t1を生成するものであり、第1圧力検出器P1は、当該液体の圧力を検出して第1測定圧力信号p1を生成するものである。
【0004】
第3温度検出器T3は、減圧弁2の出口から排出される気体の温度を検出して第3測定温度信号t3を生成するものであり、第3圧力検出器P3は、当該気体の圧力を検出して第3測定圧力信号p3を生成するものである。
【0005】
そして、この減圧システム1によると、減圧弁2の入口に流入する液体の圧力(第1測定圧力信号p1)が、その液体の温度(第1測定温度信号t1)における飽和圧力(第1飽和圧力p1s)よりも高くなるように、減圧弁2の開度(減圧弁2の入口側圧力)が調整されるようになっている。これによって、減圧弁2の入口側の液体がフラッシュ(気化)しないようにすることができる。例えば減圧弁2の設定圧力をp1tとすると、p1t>p1s+α(MPa)の関係が成立するようにこのp1tが設定されている。
【0006】
また、減圧弁2を通る液体は、減圧弁2の弁体と弁座との間の狭い隙間を通るときに、減圧、減温されてフラッシュする。このとき、減圧弁2の出口から排出される液体と気体の圧力(第3測定圧力信号p3)は、この液体と気体の温度(第3測定温度信号t3)における飽和圧力(第3飽和圧力p3s)に略等しい値となる。
【0007】
このような減圧システム1に近い従来例が、特開2008−264763号公報に開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、
図5に示す減圧システム1では、例えば摩耗性粉粒状物を含む超臨界状態又は亜臨界状態の液体を減圧弁2でフラッシュ減圧して、少なくとも気体及び摩耗性粉粒状物を含むものとして排出する用途で使用すると、この減圧弁2の弁体、弁座、及び弁本体内面の摩耗や損傷が短時間で進み、減圧弁2の交換や修理の回数が多くなり、この減圧システム1の寿命が短くなる。その結果、この減圧システム1に掛るコストが嵩むことになる。
【0010】
因みに、減圧弁2の減圧比は、例えば18.4(=4.6MPa:0.25MPa)である。
【0011】
そして、このように減圧弁2の弁体、弁座、及び弁本体内面の摩耗や損傷が短時間で進むのは、減圧弁2で液体をフラッシュ減圧したときの減圧比(=18.4)が比較的大きいために、減圧弁2から排出される気体の体積膨張率及び流速、並びに、液体に含まれていた摩耗性粉粒状物の流速が非常に大きくなるからである。
【0012】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、液体、気体及び摩耗性粉粒状物による減圧弁の弁体、弁座、及び弁本体内面の摩耗や損傷の低減を図ることによって、減圧弁の寿命を長引かせることができる摩耗低減機能付き減圧システム及びそれを備える反応装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る摩耗低減機能付き減圧システムは、入口から流入する摩耗性粉粒状物を含む超臨界状態又は亜臨界状態の液体の圧力を減圧して出口から液体として排出する第1減圧弁と、前記第1減圧弁の出口から排出される液体を冷却して液体として排出する冷却器と、前記冷却器から排出される液体の圧力をフラッシュ減圧して少なくとも気体及び摩耗性粉粒状物を含むものとして排出する第2減圧弁とを備えることを特徴とするものである。
【0014】
この発明に係る摩耗低減機能付き減圧システムによると、まず、第1減圧弁は、その入口から流入する摩耗性粉粒状物を含む超臨界状態又は亜臨界状態の液体の圧力を減圧して出口から液体として排出することができ、次に、第1減圧弁の出口から排出される液体を、冷却器で冷却して液体として排出することができる。そして、冷却器から排出される液体を、第2減圧弁でフラッシュ減圧(液体を減圧して気化させる)して少なくとも気体及び摩耗性粉粒状物を含むものとして排出することができる。
【0015】
このように、液体の圧力を減圧して気体及び摩耗性粉粒状物を含むものとして排出するときに(又は取出すときに)、まず、液体の圧力を第1減圧弁で減圧することによって、第2減圧弁での減圧比を小さくすることができるので、この第2減圧弁で液体をフラッシュ減圧したときに、第2減圧弁から排出される気体の体積膨張率及び流速、並びに、液体及び液体に含まれている摩耗性粉粒状物の流速を小さくすることができる。その結果、この気体及び摩耗性粉粒状物による第2減圧弁の例えば弁体、弁座、及び弁本体内面の摩耗や損傷の低減を図ることができる。
【0016】
そして、第1減圧弁は、その入口から流入する液体の圧力を減圧して出口から液体として排出するので、第1減圧弁から排出される液体の体積膨張率及び流速を、気体の場合と比較して低く抑えることができる。よって、気体及び摩耗性粉粒状物による第1減圧弁の例えば弁体、弁座、及び弁本体内面の摩耗や損傷を抑制することができる。
【0017】
また、第1減圧弁で減圧されて排出された液体を冷却器で冷却した後で、この冷却された液体を第2減圧弁でフラッシュ減圧しているので、この第2減圧弁から排出される液体のフラッシュ(気化)が開始される圧力を低い圧力に抑えることができる。これによって、第2減圧弁から排出される気体の体積膨張率及び流速、並びに、液体及び液体に含まれている摩耗性粉粒状物の流速を小さくすることができる。
【0018】
この発明に係る摩耗低減機能付き減圧システムにおいて、前記第1減圧弁の入口に設けられ、前記第1減圧弁の入口から流入する液体の温度を検出して第1測定温度信号を生成する第1温度検出器、及び当該液体の圧力を検出して第1測定圧力信号を生成する第1圧力検出器と、前記第1減圧弁の入口の液体の圧力が、前記第1測定温度信号における第1飽和圧力よりも高くなるように、前記第1測定温度信号及び前記第1測定圧力信号に基づいて、前記第1減圧弁の開度を制御する第1制御手段とを備えるものとするとよい。
【0019】
このようにすると、第1温度検出器は、第1減圧弁の入口から流入する液体の温度を検出して第1測定温度信号を生成することができ、そして、第1圧力検出器は、当該液体の圧力を検出して第1測定圧力信号を生成することができる。また、第1制御手段は、第1減圧弁の入口から流入する液体の圧力(第1測定圧力信号)が、第1測定温度信号における第1飽和圧力よりも高くなるように、前記第1測定温度信号及び第1測定圧力信号に基づいて、第1減圧弁の開度を制御することができる。これによって、第1減圧弁で液体の圧力を減圧するときに、第1減圧弁の入口側で液体がフラッシュ(気化)することを防止することができ、液体、気体及び摩耗性粉粒状物による第1減圧弁の例えば弁体、弁座、及び弁本体内面の摩耗や損傷を確実に抑制することができる。
【0020】
この発明に係る摩耗低減機能付き減圧システムにおいて、前記冷却器の出口から前記第2減圧弁の入口までの間に設けられ、前記冷却器の出口から流出する液体の温度を検出して第2測定温度信号を生成する第2温度検出器と、前記冷却器に使用される冷却媒体の流量を調節するための流量調節弁と、前記冷却器の出口の液体の温度が所定の設定温度となるように、前記第2測定温度信号に基づいて、前記流量調節弁の開度を制御する第2制御手段とを備えるものとするとよい。
【0021】
このようにすると、第2温度検出器は、冷却器の出口から流出する液体の温度を検出して第2測定温度信号を生成することができる。そして、流量調節弁は、冷却器に使用される冷却媒体の流量を調節することができ、これによって、冷却器の入口から流入する液体を冷却することができる冷却能力を変更することができる。また、第2制御手段は、冷却器の出口から流出する液体の温度(第2測定温度信号)が、所定の冷却設定温度となるように、流量調節弁の開度を制御することができる。これによって、第2減圧弁から排出される液体のフラッシュ(気化)が開始される圧力が所望の圧力となるように制御することができる。よって、第2減圧弁から排出される液体、気体の体積膨張率及び流速、並びに、摩耗性粉粒状物の流速を、予め定めた範囲内に収めるように制御することが可能となる。
【0022】
この発明に係る摩耗低減機能付き減圧システムにおいて、前記冷却器の出口から前記第2減圧弁の入口までの間に設けられ、前記冷却器の出口から流出する液体の圧力を検出して第2測定圧力信号を生成する第2圧力検出器と、前記冷却器の出口から排出される液体の圧力が、前記第2測定温度信号における第2飽和圧力よりも高くなるように、前記第2測定温度信号及び前記第2測定圧力信号に基づいて、前記第2減圧弁の開度を制御する第3制御手段とを備えるものとするとよい。
【0023】
このようにすると、第2圧力検出器は、冷却器の出口から流出する液体の圧力を検出して第2測定圧力信号を生成することができる。そして、第3制御手段は、冷却器の出口から流出する液体の圧力が、第2測定温度信号における第2飽和圧力よりも高くなるように、前記第2測定温度信号及び第2測定圧力信号に基づいて第2減圧弁の開度を制御することができる。これによって、第2減圧弁の入口から流入する液体をフラッシュ減圧して、その出口から液体、気体及び摩耗性粉粒状物を排出する際に、第2減圧弁の入口側の液体がフラッシュ(気化)しないように制御することができる。よって、液体、気体及び摩耗性粉粒状物による第2減圧弁の例えば弁体、弁座、及び弁本体内面の摩耗や損傷を確実に抑制することができる。
【0024】
この発明に係る摩耗低減機能付き減圧システムにおいて、前記第3制御手段は、前記冷却器の出口から排出される液体の圧力が、前記第2測定温度信号における第2飽和圧力よりも高くなるように、前記第2測定温度信号及び前記第2測定圧力信号に基づいて、前記第1減圧弁の開度を制御するものとするとよい。
【0025】
このようにすると、第3制御手段は、冷却器の出口から流出する液体の圧力が、第2測定温度信号における第2飽和圧力よりも高くなるように、第2測定温度信号及び第2測定圧力信号に基づいて、第2減圧弁に加えて第1減圧弁の開度を制御することができる。これによって、第1減圧弁で液体の圧力を減圧するときに、第2減圧弁の入口側の液体がフラッシュ(気化)しないように、第1減圧弁で制御することができる。よって、気体及び摩耗性粉粒状物による第2減圧弁の例えば弁体、弁座、及び弁本体内面の摩耗や損傷を確実に抑制することができる。
【0026】
この発明に係る反応装置は、超臨界状態又は亜臨界状態において被処理物を熱水処理するための反応槽と、前記反応槽に設けられ、前記反応槽で被処理物を熱水処理して得られた摩耗性粉粒状物を含む液体を、液体、気体及び摩耗性粉粒状物として取り出すための取出し部とを備え、前記取出し部に本発明に係る摩耗低減機能付き減圧システムが設けられていることを特徴とするものである。
【0027】
本発明に係る反応装置によると、反応槽で超臨界状態又は亜臨界状態において被処理物を熱水処理することができ、この反応槽で被処理物を熱水処理して得られた摩耗性粉粒状物を含む液体を、本発明の摩耗低減機能付き減圧システムによって、上記と同様にフラッシュ減圧して、少なくとも気体及び摩耗性粉粒状物を含むものとして取出し部から取り出すことができる。
【発明の効果】
【0028】
この発明に係る摩耗低減機能付き減圧システム、及びそれを備える反応装置によると、液体、気体及び摩耗性粉粒状物による第1及び第2減圧弁の例えば弁体、弁座、及び弁本体内面の摩耗や損傷の低減を図ることができる構成としたので、第1及び第2減圧弁の交換や修理の回数を少なくすることができ、ひいては、この摩耗低減機能付き減圧システムの寿命を長引かせることができる。その結果、摩耗低減機能付き減圧システムに掛るコストの低減を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明に係る摩耗低減機能付き減圧システム及びそれを備える反応装置の一実施形態を、
図1〜
図4を参照して説明する。この摩耗低減機能付き減圧システム11は、
図1に示すものであり、例えば摩耗性粉粒状物を含む超臨界状態又は亜臨界状態の液体を第1減圧弁12で減圧し(第1減圧工程)、次に、この減圧された液体を冷却器13で冷却して(冷却工程)、しかる後に、この冷却された液体を第2減圧弁14でフラッシュ減圧して、少なくとも気体及び摩耗性粉粒状物を含むもの(例えば液体、気体、及び固体を含むスラリー)として排出する(第2減圧工程)ことができるものである。
【0031】
この摩耗低減機能付き減圧システム11は、
図1に示すように、第1減圧弁12の入口に第1配管15が接続されている。そして、第1減圧弁12の出口と、冷却管19の入口とが第2配管16で接続されている。この冷却管19は、冷却器13が備えているものである。そして、この冷却管19には、冷却媒体管20が設けられ、この冷却媒体管20を流れる冷却媒体によって、冷却管19を流れる液体を冷却して液体として排出できるようになっている。
【0032】
また、この冷却媒体管20の出口側配管20aの途中に流量調節弁21が設けられ、この流量調節弁21は、冷却媒体管20を流れる冷却媒体の流量を調節することができるものである。更に、
図1に示すように、冷却管19の出口と、第2減圧弁14の入口とが第3配管17で接続され、第2減圧弁14の出口に第4配管18が接続されている。
【0033】
第1減圧弁12は、入口から流入する例えば摩耗性粉粒状物を含む超臨界状態又は亜臨界状態の液体の圧力を減圧して出口から液体として排出することができるものである。
【0034】
冷却器13は、第1減圧弁12の出口から排出される液体を冷却して液体として排出することができるものである。
【0035】
第2減圧弁14は、冷却器13から排出される液体の圧力をフラッシュ減圧して少なくとも気体及び摩耗性粉粒状物を含むものを排出するものである。
【0036】
更に、この第1及び第2減圧弁12、14は、それぞれの一次圧の設定圧力を調節できるものであり、この一次圧の設定圧力は、後述する制御部22から出力される第1及び第2設定圧力制御信号p1ts、p2tsによって調節されるようになっている。また、流量調節弁21は、制御部22から出力される設定流量制御信号Qtsによって設定流量が調節されるようになっている。
【0037】
そして、第1配管15の第1減圧弁12の入口付近には、第1温度検出器T1及び第1圧力検出器P1が設けられている。そして、冷却管19の入口には、第4温度検出器T4及び第4圧力検出器P4が設けられ、冷却管19の出口には、第2温度検出器T2及び第2圧力検出器P2が設けられている。また、第4配管18の第2減圧弁14の出口付近には、第3温度検出器T3及び第3圧力検出器P3が設けられている。
【0038】
第1温度検出器T1は、第1減圧弁12の入口に流入する液体の温度を検出して第1測定温度信号t1を生成するものであり、第1圧力検出器P1は、当該液体の圧力を検出して第1測定圧力信号p1を生成するものである。
【0039】
第4温度検出器T4は、冷却管19の入口に流入する液体の温度を検出して第4測定温度信号t4を生成するものであり、第4圧力検出器P4は、当該液体の圧力を検出して第4測定圧力信号p4を生成するものである。
【0040】
第2温度検出器T2は、冷却管19の出口から排出される液体の温度を検出して第2測定温度信号t2を生成するものであり、第2圧力検出器P2は、当該液体の圧力を検出して第2測定圧力信号p2を生成するものである。
【0041】
第3温度検出器T3は、第2減圧弁14の出口から排出される液体と気体の温度を検出して第3測定温度信号t3を生成するものであり、第3圧力検出器P3は、当該液体と気体の圧力を検出して第3測定圧力信号p3を生成するものである。
【0042】
図2は、
図1に示す摩耗低減機能付き減圧システム11の制御ブロック図である。第1〜第4温度検出器T1〜T4、第1〜第4圧力検出器P1〜P4、第1及び第2減圧弁12、14、並びに、流量調節弁21が制御部22に電気的に接続している。
【0043】
この制御部22は、中央演算処理装置で構成され、予め記憶部(図示せず)に記憶されている所定のプログラムに従って各種演算及び処理等を行うことができるものである。この制御部22は、第1、第2、及び第3制御手段を備えている。
【0044】
第1制御手段は、第1減圧弁12の入口の液体の圧力p1が、当該液体の第1測定温度信号t1における第1飽和圧力p1sよりも高くなるように(液体がフラッシュしないように)、第1測定温度信号t1及び第1測定圧力信号p1に基づいて、第1減圧弁12の開度K1(第1減圧弁12の入口側の液体の圧力)を制御するものである。
【0045】
第2制御手段は、冷却器13の出口の液体の温度t2が所定の設定温度tseとなるように、第2測定温度信号t2に基づいて、流量調節弁21の開度K3を制御するものである。
【0046】
第3制御手段は、冷却器13の出口から排出される液体の圧力p2が、当該液体の第2測定温度信号t2における第2飽和圧力p2sよりも高くなるように(液体がフラッシュしないように)、第2測定温度信号t2及び第2測定圧力信号p2に基づいて、第1及び第2減圧弁12、14の開度K1,K2(第2減圧弁14の入口側の液体の圧力)を制御するものである。
【0047】
次に、上記のように構成された摩耗低減機能付き減圧システム11の作用を説明する。例えばまず、第1減圧弁12は、その入口から流入する摩耗性粉粒状物を含む超臨界状態又は亜臨界状態の液体の圧力を減圧して出口から液体として排出することができ、次に、第1減圧弁12の出口から排出される液体を、冷却器13で冷却して液体として排出することができる。そして、冷却器13から排出される液体を、第2減圧弁14でフラッシュ減圧(液体を減圧して少なくともその一部を気化させる)して,少なくとも気体及び摩耗性粉粒状物を含むもの、例えば気体、液体、及び摩耗性粉粒状物を排出することができる。
【0048】
このように、液体の圧力を減圧して少なくとも気体及び摩耗性粉粒状物を含むものとして排出するときに(又は取出すときに)、まず、液体の圧力を第1減圧弁12で減圧することによって、第2減圧弁14での減圧比を小さくすることができるので、この第2減圧弁14で液体をフラッシュ減圧したときに、第2減圧弁14から排出される気体の体積膨張率及び流速、並びに、液体及び液体に含まれている摩耗性粉粒状物の流速を小さくすることができる。その結果、この気体及び摩耗性粉粒状物による第2減圧弁14の例えば弁体、弁座、及び弁本体内面の摩耗や損傷の低減を図ることができる。
【0049】
そして、第1減圧弁12は、その入口から流入する液体の圧力を減圧して出口から液体として排出するので、第1減圧弁12から排出される液体の体積膨張率及び流速を、気体の場合と比較して低く抑えることができる。よって、気体及び摩耗性粉粒状物による第1減圧弁12の例えば弁体、弁座、及び弁本体内面の摩耗や損傷を抑制することができる。
【0050】
また、第1減圧弁12で減圧されて排出された液体を冷却器13で冷却した後で、この冷却された液体を第2減圧弁14でフラッシュ減圧しているので、この第2減圧弁14から排出される液体のフラッシュ(気化)が開始される圧力を低い圧力に抑えることができる。これによって、第2減圧弁14から排出される気体の体積膨張率及び流速、並びに、液体及び液体に含まれている摩耗性粉粒状物の流速を小さくすることができる。
【0051】
従って、この摩耗低減機能付き減圧システム11によると、第1及び第2減圧弁12、14の交換や修理の回数を少なくすることができ、ひいては、この減圧システム11の寿命を長引かせることができる。その結果、摩耗低減機能付き減圧システム11に掛るコストの低減を図ることができる。
【0052】
図3は、p−h線図である。この
図3は、
図1に示す減圧システム11を使用して、上記のように、例えば摩耗性粉粒状物を含む超臨界状態又は亜臨界状態の液体を第1減圧弁12で減圧し(第1減圧工程)、次に、この減圧された液体を冷却器13で冷却して(冷却工程)、しかる後に、この冷却された液体を第2減圧弁14でフラッシュ減圧して気体及び摩耗性粉粒状物を含むものとして排出する(第2減圧工程)各工程を示している。
【0053】
図3に示す温度t及び圧力pの一例として、t1は、第1測定温度(信号)であり約230℃、p1は、第1測定圧力(信号)であり約4.6MPa、t4は、第4測定温度(信号)であり約165℃、p4は、第4測定圧力(信号)であり約0.8MPaである。
【0054】
そして、t2は、第2測定温度(信号)であり約150℃、p2は、第2測定圧力(信号)であり約0.8MPa、t3は、第3測定温度(信号)であり約127℃、p3は、第3測定圧力(信号)であり約0.25MPaである。
【0055】
また、第1減圧弁12の減圧比は、5.75(=4.6MPa:0.8MPa)であり、第2減圧弁14の減圧比は、3.2(=0.8MPa:0.25MPa)である。
【0056】
また、
図1に示す減圧システム11によると、制御部22の第1制御手段は、第1減圧弁12の入口から流入する液体の圧力(第1測定圧力信号p1)が、当該液体の第1測定温度信号t1における第1飽和圧力p1sよりも高くなるように、第1測定温度信号t1及び第1測定圧力信号p1に基づいて、第1減圧弁12の開度K1(入口側の液体の圧力)を制御することができる。これによって、第1減圧弁12で液体の圧力を減圧するときに、第1減圧弁12の入口側で液体がフラッシュ(気化)することを防止でき、液体、気体及び摩耗性粉粒状物による第1減圧弁12の例えば弁体、弁座、及び弁本体内面の摩耗や損傷を確実に抑制することができる。
【0057】
例えば第1減圧弁12の設定圧力をp1tとすると、p1t>p1s+α(α=0.1〜0.5MPa)の関係が成立するようにこのp1tが設定される。
【0058】
この第1制御手段は、第1測定圧力(信号)p1が、設定圧力p1tよりも低くなれば、第1減圧弁12の開度K1を小さくするように制御する。そして、第1制御手段は、第1測定圧力(信号)p1が、設定圧力p1tよりも高くなれば、第1減圧弁12の開度K1を大きくするように制御する。
【0059】
つまり、
図2に示すように、制御部22は、第1減圧弁12に第1設定圧力制御信号p1tsを出力することによって、第1減圧弁12の開度K1を調節して第1減圧弁12の設定圧力p1tを制御するようになっている。
【0060】
更に、
図1に示すように、第2温度検出器T2は、冷却器13の出口から流出する液体の温度を検出して第2測定温度信号t2を生成することができる。そして、流量調節弁21は、冷却器13に使用される冷却媒体の流量を調節することができ、これによって、冷却器13の入口から流入する液体を冷却することができる冷却能力を変更することができる。
【0061】
また、制御部22の第2制御手段は、冷却器13の出口から流出する液体の温度(第2測定温度信号t2)が、所定の冷却設定温度となるように、流量調節弁21の開度K3を制御することができる。
【0062】
この第2制御手段は、冷却器13の出口から流出する液体の温度(第2測定温度信号t2)が、冷却設定温度よりも低下すると、流量調節弁21の開度K3が小さくなるように制御する。そして、第2制御手段は、冷却器13の出口から流出する液体の温度(第2測定温度信号t2)が、冷却設定温度よりも上がると、流量調節弁21の開度K3が大きくなるように制御する。
【0063】
これによって、第2減圧弁14から排出される液体のフラッシュ(気化)が開始される圧力が所望の圧力となるように制御することができる。よって、第2減圧弁14から排出される液体、気体の体積膨張率及び流速、並びに、摩耗性粉粒状物の流速を、予め定めた範囲内に収めるように制御することが可能となる。
【0064】
そして、
図1に示す第2圧力検出器P2は、冷却器13の出口から流出する液体の圧力を検出して第2測定圧力信号p2を生成することができる。そして、制御部22の第3制御手段は、冷却器13の出口から流出する液体の圧力が、当該液体の第2測定温度信号t2における第2飽和圧力p2sよりも高くなるように、第2測定温度信号t2及び第2測定圧力信号p2に基づいて第2減圧弁14の開度K2を制御することができる。これによって、第2減圧弁14の入口から流入する液体をフラッシュ減圧して、その出口から液体、気体及び摩耗性粉粒状物(スラリー等)を排出する際に、第2減圧弁14の入口側の液体がフラッシュ(気化)しないように制御することができる。よって、液体、気体及び摩耗性粉粒状物による第2減圧弁14の例えば弁体、弁座、及び弁本体内面の摩耗や損傷を確実に抑制することができる。
【0065】
なお、例えば第2減圧弁14の設定圧力をp2tとすると、p2t>p2s+α(α=0.1〜0.5MPa)の関係が成立するようにこのp2tが設定される。
【0066】
また、第2減圧弁14を通る液体は、第2減圧弁14の弁体と弁座との間の狭い隙間を通るときに、減圧、減温されてフラッシュする。このとき、第2減圧弁14の出口から排出される液体と気体の圧力(第3測定圧力信号p3)は、この液体と気体の温度(第3測定温度信号t3)における第3飽和圧力p3sに略等しい値となる。
【0067】
更に、制御部22の第3制御手段は、上記の制御において、第2減圧弁14に加えて第1減圧弁12の開度K1(入口側の液体の圧力)を制御することができるようにもなっており、第2減圧弁14の入口側で液体がフラッシュ(気化)することを確実に防止できる。
【0068】
例えば、この第3制御手段は、第2測定圧力(信号)p2が低くなれば(又は高くなれば)、第2減圧弁14の開度K2を小さく(又は大きく)すると共に、第1減圧弁12の開度K1を大きく(又は小さく)するように制御する。
【0069】
つまり、
図2に示すように、制御部22は、第2減圧弁14に第2設定圧力制御信号p2tsを出力することによって、第2減圧弁14の開度K2を調節して第2減圧弁14の設定圧力p2tを制御するようになっている。
【0070】
更に、制御部22は、第1減圧弁12に第1設定圧力制御信号p1tsを出力することによって、第1減圧弁14の開度K1を調節して第1減圧弁12の設定圧力p1tを制御するようにもなっている。
【0071】
次に、
図4を参照して、
図1に示す摩耗低減機能付き減圧システム11が適用された反応装置を説明する。この
図4は、
図1に示す摩耗低減機能付き減圧システム11を備える2つの第1及び第2反応装置24、25を含むバイオエタノール製造設備26の概念図である。
【0072】
この第1及び第2の各反応装置24、25は、超臨界状態又は亜臨界状態において被処理物を熱水処理するための反応槽27、28と、反応槽27、28に設けられ、反応槽27、28で被処理物を熱水処理して得られた摩耗性粉粒状物を含む液体を、少なくとも気体及び摩耗性粉粒状物を含むものとして取り出すための取出し部29、30とを備えている。そして、この取出し部29、30に摩耗低減機能付き減圧システム11、11が設けられている。
【0073】
この
図4に示す第1及び第2反応装置24、25によると、反応槽27、28で超臨界状態又は亜臨界状態において被処理物を熱水処理することができ、この反応槽27、28で被処理物を熱水処理して得られた摩耗性粉粒状物を含む液体を、摩耗低減機能付き減圧システム11、11によって、上記と同様にフラッシュ減圧して、少なくとも気体及び摩耗性粉粒状物を含むものとして取出し部29、30から取り出すことができる。
【0074】
次に、
図4に示す第1及び第2反応装置24、25を含むエタノール製造設備26の全体を説明する。このエタノール製造設備26は、セルロース系バイオマスに対して分解処理等を行い、生成した糖を発酵してエタノールを製造することができる設備である。
【0075】
(スラリーの調製)
図4に示すように、まず、セルロース系バイオマス(例えば、バガス、甜菜かす、又はわらのような草木系バイオマス)を、前処理として数mm以下に粉砕する。粉砕後のセルロース系バイオマスは、混合槽31に供給され、水及び酸を加えて攪拌され、スラリー化される。
【0076】
(第一糖化分解工程)
次に、スラリーは、必要に応じて予熱された後、ヘミセルロース糖化反応器(反応槽)27へと供給される。ヘミセルロース糖化反応器27内で、スラリーは、圧力1MPa以上5MPa以下で熱水処理される。この熱水処理によって、セルロース系バイオマス中のヘミセルロースは、酸の触媒作用によってC5単糖に効率よく糖化分解(加水分解)される。
【0077】
一定時間の熱水処理が行われた後、スラリー(液体と摩耗性粉粒状物とが混合したもの)は、ヘミセルロース糖化反応器27から、本発明に係る摩耗低減機能付き減圧システム11でフラッシュ減圧されてフラッシュタンク32へと供給される。フラッシュ蒸発によって、スラリーは、亜臨界状態以下の温度に急冷され、ヘミセルロースの糖化分解反応(加水分解反応)が終了する。
【0078】
(第一固液分離工程)
次に、摩耗性粉粒状物を含むスラリーは、フラッシュタンク32から固液分離装置33へと供給され、C5糖化液と脱水ケーキ1とに分離される。C5糖化液は、後続するアルコール発酵工程へと供給される。一方、脱水ケーキ(脱水ケーキ1)は、加圧式反応器(反応槽)28の反応室へと供給される。
【0079】
(第二糖化分解工程)
脱水ケーキ1が供給された後、加圧式反応器28の反応室には、外部の蒸気発生装置(図示せず)から蒸気が供給される。その後、反応室は、所定の圧力範囲内となるまで加圧される。
【0080】
一定時間の加熱及び加圧処理(糖化分解処理)が行われた後、処理後のスラリーは、本発明に係る摩耗低減機能付き減圧システム11でフラッシュ減圧されてフラッシュタンク34へと供給される。このとき、スラリーには、C6糖化液が含有されている。フラッシュ蒸発によって、スラリーは、亜臨界状態以下の温度に急冷され、セルロースの加水分解反応が終了する。
【0081】
(第二固液分離工程)
次に、摩耗性粉粒状物を含むスラリーは、フラッシュタンク34から固液分離装置35へと供給され、C6糖化液と脱水ケーキ2とに分離される。C6糖化液は、後続するアルコール発酵工程へと供給される。一方、脱水ケーキ2は、適宜系外に取り出される。
【0082】
(発酵工程)
次に、C5糖化液及びC6糖化液は、発酵工程において、酵母を利用してエタノールへと変換される。発酵工程は、公知の発酵方法を採用することができる。
【0083】
(蒸留工程)
次に、発酵工程によって得られたアルコール発酵液は、蒸留され、エタノールが濃縮される。
【0084】
ただし、上記実施形態では、
図4に示すエタノール製造設備26が備える第1及び第2の各反応装置24、25に摩耗低減機能付き減圧システム11、11を適用したが、このようなエタノール製造設備26、並びに、第1及び第2反応装置24、25以外の設備や装置に、摩耗低減機能付き減圧システム11を適用してもよい。