特許第5856473号(P5856473)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

<>
  • 5856473-空気調和機 図000002
  • 5856473-空気調和機 図000003
  • 5856473-空気調和機 図000004
  • 5856473-空気調和機 図000005
  • 5856473-空気調和機 図000006
  • 5856473-空気調和機 図000007
  • 5856473-空気調和機 図000008
  • 5856473-空気調和機 図000009
  • 5856473-空気調和機 図000010
  • 5856473-空気調和機 図000011
  • 5856473-空気調和機 図000012
  • 5856473-空気調和機 図000013
  • 5856473-空気調和機 図000014
  • 5856473-空気調和機 図000015
  • 5856473-空気調和機 図000016
  • 5856473-空気調和機 図000017
  • 5856473-空気調和機 図000018
  • 5856473-空気調和機 図000019
  • 5856473-空気調和機 図000020
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5856473
(24)【登録日】2015年12月18日
(45)【発行日】2016年2月9日
(54)【発明の名称】空気調和機
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/02 20060101AFI20160120BHJP
【FI】
   F24F11/02 102H
   F24F11/02 A
   F24F11/02 S
【請求項の数】5
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2011-284705(P2011-284705)
(22)【出願日】2011年12月27日
(65)【公開番号】特開2013-134006(P2013-134006A)
(43)【公開日】2013年7月8日
【審査請求日】2014年8月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立アプライアンス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】糸井川 高穂
【審査官】 河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−016885(JP,A)
【文献】 特開2010−060208(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第01811239(EP,A2)
【文献】 特開平06−337146(JP,A)
【文献】 特開平04−186044(JP,A)
【文献】 特開2009−103427(JP,A)
【文献】 特開昭61−099044(JP,A)
【文献】 特開2005−331240(JP,A)
【文献】 特開2011−185591(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気吸込口及び空気吹出口と、
前記空気吸込口から室内空気を吸い込み、空気調和された調和空気を前記空気吹出口から吹き出す送風ファンと、
調和空気を上下方向に偏向する上下風向手段と、
調和空気を左右方向に偏向する左右風向手段と、
人の位置を検知する人検知手段と、
冷房運転時に前記上下風向手段が最大限可動する範囲よりも狭い範囲で前記上下風向手段をスイングさせ、前記上下風向手段により人が位置しない方向に調和空気を向ける第1状態と、前記上下風向手段により前記人検知手段で検知した人の位置を含む方向に調和空気を向ける第2状態とを繰り返し、室温が人が設定した設定温度よりも高い温度となるように室内空気を空気調和するスイング運転とを備え、
室内の床、壁、又は、天井からの放射温度が高いほど、冷房運転の前記スイング運転時における室温と前記設定温度との差を小さくする空気調和機。
【請求項2】
空気吸込口及び空気吹出口と、
前記空気吸込口から室内空気を吸い込み、空気調和された調和空気を前記空気吹出口から吹き出す送風ファンと、
調和空気を上下方向に偏向する上下風向手段と、
調和空気を左右方向に偏向する左右風向手段と、
人の位置を検知する人検知手段と、
冷房運転時に前記上下風向手段が最大限可動する範囲よりも狭い範囲で前記上下風向手段をスイングさせ、前記上下風向手段により人が位置しない方向に調和空気を向ける第1状態と、前記上下風向手段により前記人検知手段で検知した人の位置を含む方向に調和空気を向ける第2状態とを繰り返し、室温が人が設定した設定温度よりも高い温度となるように室内空気を空気調和するスイング運転とを備え、
前記送風ファンの回転数が大きいほど、冷房運転の前記スイング運転時における室温と前記設定温度との差を大きくする空気調和機。
【請求項3】
空気吸込口及び空気吹出口と、
前記空気吸込口から室内空気を吸い込み、空気調和された調和空気を前記空気吹出口から吹き出す送風ファンと、
調和空気を上下方向に偏向する上下風向手段と、
調和空気を左右方向に偏向する左右風向手段と、
人の位置を検知する人検知手段と、
冷房運転時に前記上下風向手段が最大限可動する範囲よりも狭い範囲で前記上下風向手段をスイングさせ、前記上下風向手段により人が位置しない方向に調和空気を向ける第1状態と、前記上下風向手段により前記人検知手段で検知した人の位置を含む方向に調和空気を向ける第2状態とを繰り返し、室温が人が設定した設定温度よりも高い温度となるように室内空気を空気調和するスイング運転とを備え、
室外の温度が高いほど、冷房運転の前記スイング運転時における室温と前記設定温度との差を小さくする空気調和機。
【請求項4】
空気吸込口及び空気吹出口と、
前記空気吸込口から室内空気を吸い込み、空気調和された調和空気を前記空気吹出口から吹き出す送風ファンと、
調和空気を上下方向に偏向する上下風向手段と、
調和空気を左右方向に偏向する左右風向手段と、
人の位置を検知する人検知手段と、
冷房運転時に前記上下風向手段が最大限可動する範囲よりも狭い範囲で前記上下風向手段をスイングさせ、前記上下風向手段により人が位置しない方向に調和空気を向ける第1状態と、前記上下風向手段により前記人検知手段で検知した人の位置を含む方向に調和空気を向ける第2状態とを繰り返し、室温が人が設定した設定温度よりも高い温度となるように室内空気を空気調和するスイング運転とを備え、
前記設定温度が高いほど、冷房運転の前記スイング運転時における室温と前記設定温度との差を小さくする空気調和機。
【請求項5】
空気吸込口及び空気吹出口と、
前記空気吸込口から室内空気を吸い込み、空気調和された調和空気を前記空気吹出口から吹き出す送風ファンと、
調和空気を上下方向に偏向する上下風向手段と、
調和空気を左右方向に偏向する左右風向手段と、
人の位置を検知する人検知手段と、
冷房運転時に前記上下風向手段が最大限可動する範囲よりも狭い範囲で前記上下風向手段をスイングさせ、前記上下風向手段により人が位置しない方向に調和空気を向ける第1状態と、前記上下風向手段により前記人検知手段で検知した人の位置を含む方向に調和空気を向ける第2状態とを繰り返し、室温が人が設定した設定温度よりも高い温度となるように室内空気を空気調和するスイング運転とを備え、
冷房運転の前記スイング運転時における室温が高いほど、冷房運転の前記スイング運転時における室温と前記設定温度との差を小さくする空気調和機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
上下方向に風向を制御する下風向板を備える空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
壁掛型の空気調和機は、天井付近に設置され、空調空気の上下方向の吹出方向を調整する風向調整板(上下風向板)を備える。上下風向板を連続的にスイングさせて空調空気の吹出方向を上下方向に連続的に変更したり、上下風向板を略水平方向に向けて室内空間の温度分布を均一にしたりするなど、上下風向板により室内の気流分布を調整する。
【0003】
冷房運転時に上下風向板が略水平方向に固定されると、天井付近から水平に吹き出された空調空気は、部屋の空間の下側略半分の生活空間(天井高さ2.7m、身長1.7mの場合床から約63%の高さまでの空間)には直接的には届かず、壁などにぶつかる。その後、壁などにぶつかった空調空気は、風速が落ち、密度の高さにより下方向へ移動して、生活空間に届く。ユーザは、空調空気の温度により涼しさを感じることができるが、風速の落ちた空調空気からは気流による涼しさを得られない。これは、以下の式で説明することができる。
Q=α(TS−TA) …(式1)
Q=放熱量[W/m2
α=対流熱伝達率[W/m2℃]
TS=皮膚温[℃]
TA=空気温度[℃]
【0004】
ただし、人体からの放熱の経路は対流、放射、蒸発、伝導の4種類あり、(式1)はこの4種類の中の対流のみについての放熱量を示している。本来は、
Q総合=Q対流+Q放射+Q蒸発+Q伝導 …(式2)
であり、Q総合が大きいほど涼しさを感じられる。ここでは簡単のため特別に記載しない限り対流による放熱量であるQ対流をQと記載する。
【0005】
放熱量Qが大きいほどより大きな涼しさを感じられる。(式1)における空調空気による涼しさは、空気温度TAが小さくなることにより、(TS−TA)が大きくなり、放熱量Qが大きくなることによる。(式1)における気流による涼しさは、対流熱伝達率αにより表される。気流速度が大きいほど対流熱伝達率αは大きくなる。その結果放熱量Qも大きくなり、より涼しさを感じることができる。
【0006】
しかしながら、従来の空気調和機では、気流速度が大きくなり、その結果、放熱量Qが大きくなり過ぎることによる寒さからの不快感を避けるため、冷房時には空調空気を水平方向に吹き出すように制御する。しかしながら、気流速度が小さいことによる放熱量の少なさにより、在室者が暑く不快に感じる場合がある。一方、従来の空気調和機では、上下風向板を上下方向にスイングさせて連続的に気流速度の大きな空調空気を生活空間に送風することで、気流による涼しさを提供する。しかしながら、連続的に放熱量が多いため、在室者が寒く不快に感じる場合がある。
【0007】
これに対して、特許文献1は、室内の空気に対して空気調和処理を行う空気調和機構と、空気調和された空気の吹出方向を調整する風向調整板と、空気調和機構の処理能力を一時的に上昇させるパワフル運転を行うことが可能である制御部と、人が居る方向に空気が吹き出すように決定されている風向調整板の向きの設定値を記憶する記憶部と、を備え、制御部は、パワフル運転の指示入力がなされると、設定値に従って風向調整板の向きを制御する第1制御に切り換える空気調和機を開示する。室内のユーザに向けて空調空気を吹き出すことにより、放熱量を増大させ涼しさを感じられる空調状態とする。
【0008】
特許文献2は、室内の空気に対して空気調和処理を行う空気調和機構と、空気調和された空気の吹出方向を調整する風向調整板と、空気調和機構の処理能力を一時的に上昇させるパワフル運転を行うことが可能である制御部と、人感知センサとを備え、制御部は、冷房運転時において、通常運転時には風向調整板を略水平方向付近でスイングさせ、パワフル運転の指示入力がなされると、人感知センサからの情報に基づいて人が居る方向を含むように風向調整板のスイング範囲を変更する空気調和機を開示する。ユーザに向けて空調空気を吹き出すことにより、放熱量を増大させ涼しさを感じられる空調状態とする。
【0009】
特許文献3は、少なくとも室内温度と設定温度との比較結果に応じて圧縮機を制御し、かつ室内へ吹き出す風の向きを風向板によって制御するとともに、風向板の角度を自動的に可変可能とする空気調和機であって、風向板の向きに応じて圧縮機の運転周波数(圧縮機の回転数)の上限値を可変とすることを開示する。
【0010】
しかしながら、スイング運転であっても、それが連続することで、連続的に放熱量Qが増大する。放熱量Qの連続的な増大は、寒さによる不快感となる。特許文献1,2では、空調空気の吹出方向にユーザを含むようにスイングの方向を調整するが、ユーザは連続して空調空気に曝されるため、Qの増大により寒さによる不快を感じる可能性がある。
【0011】
さらに、特許文献1および特許文献2では、室内ファンの回転数や圧縮機回転数が通常運転時より高いパワフル運転時でのスイング方向の制御であり、消費電力量は通常運転時より高くなる。また、特許文献3では、風向により圧縮機回転数を可変とするため、風向が通常位置の場合には消費電力量は通常運転と変わらない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特許第3815470号公報
【特許文献2】特許第4215035号公報
【特許文献3】特許第2757734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、無気流及び連続的な気流による不快感を抑制し、快適性に優れた生活空間とすることができるとともに、快適性を損なうことなく消費電力量を低減することが可能な空気調和機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の空気調和機は、空気吸込口及び空気吹出口と、空気吸込口から室内空気を吸い込み、空気調和された調和空気を空気吹出口から吹き出す送風ファンと、調和空気を上下方向に偏向する上下風向手段と、調和空気を左右方向に偏向する左右風向手段と、人の位置を検知する人検知手段と、冷房運転時に上下風向手段が最大限可動する範囲よりも狭い範囲で上下風向手段をスイングさせ、上下風向手段により人が位置しない方向に調和空気を向ける第1状態と、上下風向手段により人検知手段で検知した人の位置を含む方向に調和空気を向ける第2状態とを繰り返し、室温が人が設定した設定温度よりも高い温度となるように室内空気を空気調和するスイング運転とを備え、室内の床、壁、又は、天井からの放射温度が高いほど、冷房運転の前記スイング運転時における室温と前記設定温度との差を小さくする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、本発明は、無気流及び連続的な気流による不快感を抑制し、快適性に優れた生活空間とすることができるとともに、快適性を損なうことなく消費電力量を低減することが可能な空気調和機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】空気調和機の外観構成図。
図2】室内機の側断面図。
図3】定位置吹き出しの場合の上下風向板。
図4】スイング吹き出しの場合の上下風向板。
図5】スイングが1回の場合の断続スイングの運転概要。
図6】スイングが複数回の場合の断続スイングの運転概要。
図7】スイング吹き出しと定位置吹き出しとの関係を示す図。
図8】スイング吹き出しと定位置吹き出しとの関係を示す図。
図9】スイング吹き出しと定位置吹き出しとの関係を示す図。
図10】スイング吹き出しと定位置吹き出しとの関係を示す図。
図11】スイング吹き出しと定位置吹き出しとの関係を示す図。
図12】スイング吹き出しと定位置吹き出しとの関係を示す図。
図13】スイング吹き出しと定位置吹き出しとの関係を示す図。
図14】スイング吹き出しと定位置吹き出しとの関係を示す図。
図15】スイング吹き出しと定位置吹き出しとの関係を示す図。
図16】スイング吹き出しと定位置吹き出しとの関係を示す図。
図17】1度ピッチの制御の例。
図18】2次関数的な制御の例。
図19】ランプ変化の例。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を用い説明する。まず、空気調和機の全体構成について図1を用いて説明する。図1は気調和機の外観構成図である。
【0018】
室内を空気調和する空気調和機は、室内に設置される室内機と、室外に設置される室外機と、空気調和機の運転様態を設定する空調設定装置(リモコン)と、室内機と室外機とを繋ぐ接続配管とを備える。
【0019】
室外機は、圧縮機、室外送風機、室外熱交換器等を備える。室外機の圧縮機と室外熱交換器は、接続配管の2本の冷媒配管により、後述する室内機の熱交換器(図2参照)と接続され、冷媒を循環させることにより冷凍サイクルを構成する。
【0020】
次に、空気調和機を構成する室内機について図2を用いて説明する。図2は室内機の側断面図である。室内機は、筐体ベースの中央部に室内熱交換器と、室内熱交換器の下流側に室内熱交換器の幅と略等しい長さの横流ファン方式の送風ファンと、室内熱交換器で結露した凝縮水を受ける露受皿とを備える。
【0021】
また、室内機の筐体ベースには、フィルタ、上下風向板、左右風向板等の基本的な内部構造体が取り付けられる。これらを化粧枠で覆い、化粧枠の前面に前面パネルを取り付けることにより、筐体ベース、化粧枠、前面パネルからなる筐体に内包され室内機を構成する。
【0022】
空気吸込口は、室内機の上部に設けられた上側空気吸込部と、室内機の前面に設けられた前側空気吸込部とで構成される。ここで、前面パネルは、下端部に設けた回動軸を支点として駆動モータにより回動され、空気調和機の運転時に前側空気吸込部を開くように構成される。これにより、室内空気は、空気調和機の運転時に前側空気吸込部からも室内機内に吸引される。なお、空気調和機の運転停止時には、前面パネルを回動し、前側空気吸込部を閉じるように制御される。化粧枠の下面に形成される空気吹出口は、前面パネルと化粧枠との分割部に隣接して配置され、室内機の内部の吹出風路に連通する。
【0023】
フィルタは室内熱交換器の吸込側を覆うように配置される。フィルタにより、空気吸込口(上側空気吸込部、前側空気吸込部)から吸い込まれた室内空気中に含まれる塵埃が取り除かれる。また、露受皿は室内熱交換器の前後両側の下端部下方に配置され、冷房運転時や除湿運転時に室内熱交換器に発生する凝縮水を受ける。露受皿にて集められた凝縮水は、接続配管の内部に設けられたドレン配管を通して室外に排出される。
【0024】
送風ファンが回転すると、室内空気が空気吸込口から室内熱交換器へ流れる。そして、室内熱交換器にて温度調整、湿度調整された空調空気は、送風ファンを通って送風ファンの長さに略等しい幅の吹出風路に流れる。その後、空調空気は、吹出風路に位置する左右風向板で左右方向を偏向されるとともに、空気吹出口に位置する上下風向板で上下方向を偏向されて、室内に吹き出す。
【0025】
2枚の上下風向板は、両端部に設けた回動軸を支点にして、リモコンの指示等に応じて、駆動モータにより空気調和機の運転時に所要の角度まで回動されて空気吹出口を開き、その状態に保持される。空気調和機の運転停止時には、上下風向板を回動し、空気吹出口を閉じるように制御される。上下風向板は、閉鎖状態で、吹出風路をほぼ隠蔽して室内機の底面に連続するように構成されている。
【0026】
左右風向板は、下端部に設けた回動軸を支点にして、リモコンからの指示等に応じて、駆動モータにより所要の角度まで回動され、その状態に保持される。
【0027】
このように、空気調和機の室内機は、リモコンからの指示に応じて、上下風向板、左右風向板を所要の角度まで回動して、空調空気を空気吹出口から上下左右に偏向し所望の方向に吹き出す。
【0028】
なお、リモコンからの指示等により、空気調和機の運転中に上下風向板、左右風向板を周期的に揺動させ、室内の広範囲に周期的に空調空気を吹き出すこともできる。
【0029】
室内機は、前側空気吸込部の近くに、室内機へ吸い込まれる室内空気の温度(以下「吸込み空気温度」という。)を検出する室内機サーミスタを備える。また、室内機は、室内機へ吸い込まれる室内空気の湿度を検出する室内湿度センサを備える。
【0030】
ここで、室内機送受光部の構成について説明する。室内機の化粧枠の下部には、室内機とリモコンとの間で赤外線信号を送受信するための室内機送受光部と、空気調和機の運転状況を表示する表示装置とが配置される。室内機送受光部は、リモコンからの赤外線信号を受信するIRレシーバと、室内機が設置された室内の中央に向けて赤外線信号を送信する中央送信素子と、室内機が設置された室内の左側に向けて赤外線信号を送信する左送信素子と、室内機が設置された室内の右側に向けて赤外線信号を送信する右送信素子とを備える。
【0031】
また、室内機は、内部の電装品ボックスに制御基板を備え、この制御基板にマイコンと記憶装置が設けられる。マイコンは、室内機サーミスタ、室内湿度センサ等の各種のセンサからの信号を受け取ると共に、室内機送受光部(IRレシーバ)を介してリモコンからの赤外線信号を受け取る。マイコンは、これらの信号に基づいて、送風ファンの駆動モータ、前面パネルの駆動モータ、上下風向板の駆動モータ、左右風向板の駆動モータ等を制御すると共に、接続配管の電線を介して室外機(圧縮機、室外送風機等)との通信を司り、室内機および室外機を統括して制御する。また、マイコンは、室内機送受光部(中央送信素子、左送信素子、右送信素子)を介して、リモコンに赤外線信号を送信することができる。
【0032】
次に、本実施例の上下風向板の運転制御について図3から図6を用いて説明する。本実施例の空気調和機は、空気吸込口及び空気吹出口と、空気吸込口から室内空気を吸い込み、空気調和された室内空気を空気吹出口から吹き出す送風ファンと、空気調和された調和空気を上下方向に偏向する上下風向板と、上下風向板の上下方向位置を制御する制御装置と、を備え、上下風向板により在室者が位置しない方向に調和空気を向ける第1状態と、第1状態から上下風向板をスイングさせて在室者を含む方向に一時的に調和空気を向ける第2状態と、を繰り返すように、上下風向板を制御する。尚、図3に示すような上下風向板により在室者が位置しない方向に調和空気を向ける第1状態と、図4に示すような第1状態から上下風向板をスイングさせて在室者を含む方向に一時的に調和空気を向ける第2状態とを繰り返すことを、以下「断続スイング運転」という。尚、本実施例では、特に、冷房運転時の第1状態においては上下風向板を略水平方向の定位置に固定し、暖房運転時の第1状態においては上下風向板を在室者が存在する位置よりも手前下方の定位置に固定する。両状態を合わせて以下「定位置吹き出し」という。
【0033】
断続スイング制御の指示入力を受けた場合、定位置吹き出し(図3)とスイング吹き出し(図4)とを交互に行う(図5図6)。定位置吹き出しの状態では、例えば冷房運転では、略水平方向へ上下風向板を向け、空調空気を略水平方向に吹き出す。一方、暖房運転では、在室者が存在する位置よりも手前下方に上下風向板を向け、空調空気を空気調和機下方に吹き出す。
【0034】
ここで、例えば冷房運転時に、断続スイング制御の指示入力を受けると、上下風向板を所定の回数スイングさせるスイング吹き出しと、上下風向板を略水平方向に位置させ所定時間吹き出す定位置吹き出しを繰り返す。具体的には、例えば、断続スイング制御の指示入力を受けると、上下風向板を1回スイングさせ、その5分間は水平方向へ上下風向板を向けて固定し定位置吹き出しを行う。さらに定位置吹き出しを5分間行った後には再び上下風向板を1回スイングさせる。
【0035】
これにより、連続して上下風向板をスイングさせる場合に生じる寒さによる不快感を防ぐことができるとともに、上下風向板を略水平方向に向け続けた場合に生じる気流の無い暑さによる不快感も防ぐことができる。従って、気流による涼しさを感じつつ寒さによる不快感を抑制した快適な温熱環境を提供することができる。
【0036】
上下風向板のスイング回数を1回としたのは、複数回スイングすることにより、気流による放熱の増大で寒さを感じる危険性を考慮したからであり、室温が高い場合など放熱量を増大させたい場合には、複数回スイングすることにより、放熱量を増大させより涼しさを感じさせることができる。
【0037】
ここで本実施例においては、断続スイング運転時には、ユーザが設定した設定温度(設定室温TSS)に対して温度補正値(補正値ΔT)だけシフトさせた補正設定温度(補正後の設定室温THS)を新たな設定温度とし、この室温がこの新たな設定温度となるように室内空気を空気調和する。つまり、設定室温TSSと補正値ΔTと補正後の設定室温THSとが、「TSS+ΔT=THS」となるように制御する(図7参照。図7ではΔT=3℃)。
【0038】
具体的には、冷房運転時における断続スイング運転時には、室温が設定温度(TSS)よりも冷房温度補正値(ΔT)だけ高くした補正設定温度(THS)となるように空気調和機を制御する(図8参照)。また、暖房運転時における断続スイング運転時には、室温(TSS)が設定温度よりも暖房温度補正値(ΔT)だけ低くした補正設定温度(THS)となるように制御する。
【0039】
冷房運転中に断続スイング運転を行うと、上下風向板をスイングさせて在室者を含む方向に一時的に調和空気を向けるスイング運転により冷風が直接在室者に向けられるため、設定温度を高くするようにシフトさせても、在室者に対する快適性を維持することができる。一方、冷房運転時に設定温度を高くすることにより、消費電力を低減することができる。従って、冷房運転時における断続スイング運転時には、設定温度よりも冷房温度補正値だけ高くした補正設定温度を新たな設定温度とすることにより、無気流及び連続的な気流に不快感を抑制し、快適性に優れた生活空間とすることができるとともに、快適性を損なうことなく消費電力量を低減することができる。
【0040】
同様に、暖房運転中に断続スイング運転を行うと、上下風向板をスイングさせて在室者を含む方向に一時的に調和空気を向けるスイング運転により温風が直接在室者に向けられるため、設定温度を低くするようにシフトさせても、在室者に対する快適性を維持することができる。一方、暖房運転時に設定温度を低くすることにより、消費電力を低減することができる。従って、暖房運転時における断続スイング運転時には、設定温度よりも暖房温度補正値だけ低くした補正設定温度を新たな設定温度とすることにより、無気流及び連続的な気流に不快感を抑制し、快適性に優れた生活空間とすることができるとともに、快適性を損なうことなく消費電力量を低減することができる。
【0041】
尚、シフト値(補正値ΔT)は、SET*やPMV等の温熱環境評価指標を基にしても良いし、放熱量の合計値を基に決めても良い。
【0042】
本実施例においては、上下風向板により在室者が位置しない方向に調和空気を向ける第1状態(例えば、冷房時では略水平方向)と、第1状態から上下風向板をスイングさせて在室者を含む方向に一時的に調和空気を向ける第2状態と、を繰り返すように上下風向板を制御する。従来の空気調和機でも、上下風向板を一定位置で固定して吹き出す制御も、上下風向板をスイングさせる制御も行われていた。しかし、上下風向板を定位置で固定して吹き出す制御の場合には、上下風向板が略水平方向に向けられているため、生活空間には気流速度の低下した空調空気が生活空間の上部から沈んでくるのみで、速度の低下した空調空気から気流による体からの放熱量を増大させることはできず、気流による涼しさを感じることはできなかった。また上下風向板をスイングさせる制御の場合には、室内機から吹き出された気流速度の高い空調空気は数秒に一回生活空間に供給されるため、数秒に一回皮膚からの放熱量が増大することによる寒さを感じる危険性があった。そこで、本発明の空気調和機では、上下風向板により在室者が位置しない方向に調和空気を向ける第1状態(例えば、冷房時では略水平方向)と、第1状態から上下風向板をスイングさせて在室者を含む方向に一時的に調和空気を向ける第2状態と、を繰り返すように上下風向板を制御することで、気流による涼しさを感じつつ寒さによる不快感の無い快適な温熱環境を提供することを可能とした。
【0043】
以上説明したように、本発明の空気調和機は、空気吸込口及び空気吹出口と、空気吸込口から室内空気を吸い込み空気調和された室内空気を空気吹出口から吹き出す送風ファンと、空気調和された調和空気を上下方向に偏向する上下風向板と、上下風向板の上下方向位置を制御する制御装置とを備え、室温が設定温度となるように室内空気を空気調和する空気調和機であって、上下風向板により在室者が位置しない方向に調和空気を向ける第1状態と、第1状態から上下風向板をスイングさせて在室者を含む方向に一時的に調和空気を向ける第2状態と、を繰り返すように断続スイング運転するとともに、冷房運転時における断続スイング運転時には設定温度よりも冷房温度補正値だけ高くした補正設定温度を新たな設定温度とする(暖房運転時における断続スイング運転時には、設定温度よりも暖房温度補正値だけ低くした補正設定温度を新たな設定温度とする)ので、無気流又は連続的な気流による不快感を抑制し快適性に優れた生活空間としつつ、このような快適性を損なうことなく消費電力量を低減することができる。
【0044】
尚、本実施例及び以下の実施例においては、主に冷房運転時を例にして説明するが、本発明は、暖房運転時にも適用することができる。
【0045】
また、本実施例では、冷房運転時又は暖房運転時に係らず、断続スイング制御を行うように指示入力された場合には、上下風向板をスイングさせるスイング吹き出しと、上下風向板を固定して吹き出す定位置吹き出しとを交互に行う例を説明した。しかしながら、冷房時に断続スイングの指示入力がある場合のみ、スイング吹き出しと定位置吹き出しとを交互に行うよう上下風向板の向きを制御してもよい。これにより、冷房運転時の気流による涼しさの向上と寒さによる不快感の回避とを実感させることができる。
【0046】
また、本実施例においては、在室者が位置しない方向に調和空気を向ける第1状態として、具体的には、例えば冷房運転時では、上下風向板を略水平方向に固定させる状態としたが、例えば暖房運転時では、在室者が存在する位置よりも手前下方に上下風向板を向け、空調空気を空気調和機下方に吹き出すようにする。これにより、在室者が位置しない方向に調和空気を向ける第1状態において、冷風又は温風を確実に在室者に向けないように制御することができる。
【0047】
また、本実施例においては、在室者が位置しない方向に調和空気を向ける第1状態として、具体的には、例えば冷房運転時では上下風向板を略水平方向に固定させる状態としたが、在室者が位置しない範囲で上下風向板をスイングさせるようにしてもよい。具体的には、冷房運転時であれば、水平方向周辺で上下風向板をスイングさせてもよいし、水平方向よりも上方の範囲内での上下風向板をスイングさせてもよい。このような運転により、在室者が位置しない方向に調和空気を向ける第1状態であっても、室内に気流の変化を生じさせ、室内の温度をより早く均一化することができる。
【0048】
また、本実施例においては、上下風向板をスイングさせて在室者を含む方向に一時的に調和空気を向けるようにしたが、この場合、人検知手段等により在室者の位置情報を入手している場合は、この在室者の位置情報等を利用して、在室者を含む方向に一時的に調和空気を向けることができる。一方、人検知手段等を備えずに在室者の位置情報を入手できない場合であっても、上下風向板が最大限可働する範囲で上下風向板をスイングさせることにより、冷風又は温風を在室者に向けて確実に送風させることができる。
【0049】
次に、本発明の第2の実施例について説明する。本実施例においては、室温と設定温度との差が大きいほど、冷房温度補正値又は暖房温度補正値を小さくする(図10)。これにより、設定室温と室温との差が大きく、ユーザの求める快適性を得られていない場合、温度シフト補正値(冷房温度補正値又は暖房温度補正値)の分だけ消費電力量を低減しつつ、この補正値を小さくすることでより早くユーザの求める温熱環境を提供することができる。また、設定室温と室温との差が小さい場合には、補正値を大きくすることで、ユーザの求める温熱環境に近い温熱環境を提供しつつ消費電力量をより大きく低減することができる。
【0050】
本発明の第3の実施例について説明する。本実施例においては、運転開始からの経過時間が短いほど、冷房温度補正値又は暖房温度補正値を小さくする(図11)。例えば、運転開始からの時間が5分(例えば人が快適さに慣れるまでの時間の5分)以内の場合補正値を小さくしてユーザの求める温熱環境を提供し、それ以降は補正値をより大きくすることで、運転開始から5分までに十分大きな放熱量の増大により十分大きな快適感を得たあと、設定室温を大きく補正することで消費電力量をより大きく低減することが可能となる。尚、本実施例における「運転開始からの経過時間」とは、空気調和機の運転開始からの経過時間であっても、暖房、冷房、除湿などの各々の運転モードでの運転開始からの経過時間であっても、断続スイング運転での運転開始からの経過時間であってもよい。
【0051】
本発明の第4の実施例について説明する。本実施例においては、室内の床、壁、又は、天井からの放射温度が高いほど、冷房温度補正値を小さくし、暖房温度補正値を大きくする(図12)。例えば、冷房運転時、壁や床や天井の温度が40度で、壁や床や天井から人体へ放射により熱が供給される場合((式2)におけるQ放射、皮膚の温度はおよそ32度)、補正値を小さくし(例えば1度)、壁や床や天井の温度が27度で人体から壁や床や天井へ熱が供給される場合、補正値を大きくする(例えば3度)。これにより、放射温度が高い場合には室温を設定室温に近い状態とすることで放熱量の増大によりより大きな快適感を得ることができ、放射温度が低い場合には補正値を大きくすることで寒さによる不快感の発生を防ぐことができるとともに、より大きく消費電力量を低減することが可能となる。
【0052】
本発明の第5の実施例について説明する。本実施例においては、送風ファンの回転数が大きいほど、冷房温度補正値又は暖房温度補正値を小さくする。例えば、冷房運転の場合、気流速度が微風の設定の場合など室内ファンの回転数が少なく、気流による放熱量の少ない場合には補正値を小さくし(例えば1度)、気流速度の設定が強風の場合など室内ファンの回転数が多い場合には補正値を大きくする(例えば6度)ことで、設定風速の小さい場合には気流による放熱量の増大によりより大きな快適感を得ることができ、設定風速が大きい場合には気流による放熱の増大に伴う寒さによる不快感の発生を防ぐことが可能となり、消費電力量を低減することができる。
【0053】
本発明の第6の実施例について説明する。本実施例においては、送風ファンの回転数が大きいほど、冷房温度補正値又は暖房温度補正値を大きくする。例えば、例母運転の場合、室内ファンの回転数が多くユーザが気流による放熱をより多く求めている場合には補正値を小さくし(例えば1度)、室内ファンの回転数が少なくユーザが気流による放熱の促進を求めていない場合には補正値を大きくする(例えば6度)ことで、ユーザの要求をより進めた温熱環境を提供しつつ、消費電力量を低減することができる。
【0054】
本発明の第7の実施例について説明する。本実施例においては、室外の温度が高いほど、冷房温度補正値を小さくし、暖房温度補正値を大きくする(図14)。例えば、冷房運転の場合、外気温度が40度の場合では補正値を小さくし(例えば2度)、外気温度が30度の場合では補正値を大きくする(例えば6度)する。これにより、高い外気温の熱が壁や床や天井を貫通して放射や伝導による人体からの放熱が小さくなる((式2)におけるQ放射とQ伝導が小さくなる)場合に気流により放熱量を増大させ((式1)においてαを大きくすることによりQを大きくさせる)、涼しさによる快適感を得ることが可能となる。また、外気温度が低い場合には、放射や伝導による放熱量が大きいため、対流による放熱を低くすることで寒さによる不快を感じることを防ぐことができるとともに、消費電力量を低減することができる。
【0055】
本発明の第8の実施例について説明する。本実施例においては、設定温度が高いほど、冷房温度補正値を小さくし、暖房温度補正値を大きくする(図15)。例えば、冷房運転では、設定温度が29度の場合では補正値を小さくし(例えば2度)、設定温度が25度の場合では補正値を大きくする(例えば6度)。これにより、設定室温が高く人体からの放熱が少ない場合には気流により人体からの放熱量を増やし涼しさによる快適を感じることができ、設定室温が低く人体からの放熱が多い場合には気流による放熱の増大を小さくし寒さによる不快感を防ぐことができるとともに、設定室温を補正することで消費電力量を低減することができる。
【0056】
一方、本実施例とは逆に、例えば、冷房運転時では、設定温度が29度の場合では補正値を大きく(例えば室温29度における人の温度弁別閾値の4度、ウェーバー比:弁別閾値/刺激=一定…刺激が大きいほどその変化を認識するには大きな刺激の変化が必要)、設定温度が25度の場合では補正値を小さくする(例えば室温25度における人の温度弁別閾値の3度)することもできる。これにより、設定室温が高く温度変化を認識しにくい場合に大きく消費電力量を低減することができ、設定室温が低く温度変化を認識しやすい場合にも弁別閾値以下の温度変化とすることで、快適感を低下させることなく消費電力量を低減することができる。
【0057】
本発明の第9の実施例について説明する。本実施例においては、室温が高いほど、冷房温度補正値を小さくし、暖房温度補正値を大きくする(図16)。例えば、冷房運転時では、室温が29度の場合では補正値を小さくし(例えば2度)、室温が25度の場合では補正値を大きくする(例えば6度)する。これにより、室温が高く人体からの放熱が少ない場合には気流により人体からの放熱量を増やし涼しさによる快適を感じることができ、室温が低く人体からの放熱が多い場合には気流による放熱の増大を小さくし寒さによる不快感を防ぐことができるとともに、設定室温を補正することで消費電力量を低減することができる。
【0058】
一方、本実施例とは逆に、例えば、冷房運転時では、室温が29度の場合では補正値を大きく(例えば室温29度における人の温度弁別閾値の4度、ウェーバー比:弁別閾値/刺激=一定…刺激が大きいほどその変化を認識するには大きな刺激の変化が必要)、室温が25度の場合では補正値を小さくする(例えば室温25度における人の温度弁別閾値の3度)。これにより、室温が高く温度変化を認識しにくい場合に大きく消費電力量を低減することができ、室温が低く温度変化を認識しやすい場合にも弁別閾値以下の温度変化とすることで、快適感を低下させることなく消費電力量を低減することができる。
【0059】
上記各実施例においては、ユーザが補正値に関わらない場合について説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、初期の設定に加え、ユーザが補正値をリモコンで設定するようにしてもよい。これにより、補正値の初期の設定(例えば室温20度における人の温度弁別閾値の2度)での運転時に、ユーザが放熱の増大を求めた場合、補正値が小さくなるよう(例えば室温20度における人の温度弁別閾値の半分の1度)リモコンで設定することができ、ユーザの好みに合わせた温熱環境を提供することができる。また、補正値の初期の設定(例えば室温20度における人の温度弁別閾値の2度)での運転時にユーザが放熱の増大による寒さを感じた場合、補正値を大きく(例えば例えば室温20度における人の温度弁別閾値の2倍の4度)することで、ユーザにとってより快適な温熱環境を提供することが可能となる。
【0060】
上記各実施例では、設定室温と室温との差、運転開始からの時間、床などの物体の表面温度センサ、室内ファンの回転数、外気温度、設定温度、室温を2段階に分けて、補正値が異なる例をあげて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、設定室温と室温との差に応じて補正値を変化させる場合には、設定室温と室温との差を1度ピッチでその差に比例して補正値を増減させてもよい(図17)。
【0061】
また、例えば、設定室温と室温との差と指数関数や対数関数、n次関数のような曲線の関係で補正値を増減させてもよい(図18)。
【0062】
また、例えば、設定室温と室温との差に、ステップ変化で補正値を増減させてもよい(図17)。
【0063】
また、例えば、設定室温と室温との差にランプ変化で補正値を増減させてもよい(図18)。
【0064】
また、補正値は、上記実施形態で例として挙げた値に限定されるものではなく、SET*やPMVといった温熱環境評価指標に基づく値や、実験に基づく値、ウェーバー比、独自の基準で決めた値などであっても良い。さらに、補正値は、上記各実施例で挙げた値に限定されるものではなく、経時的に増減させても良い。
【0065】
尚、空気調和機運転時の消費電力量を低減する方法として、本発明のように設定室温を補正する方法と、圧縮機回転数を補正する方法とがある。本発明のように設定室温を補正する場合、運転開始時のように圧縮機回転数が高い時間帯では、断続スイング制御での運転時の圧縮機最高回転数は補正されず通常運転時の最高回転数と同じであるため、最高回転数での運転時間は短くなるものの、圧縮機回転数の高さの分だけ消費電力量の低減分は割り引かれる。圧縮機回転数を補正する場合、運転開始時のように圧縮機回転数が高い時間帯だけでなく室温が運転開始時に比べ設定室温付近で安定している時間帯においても圧縮機回転数を通常運転時より低くすることが可能であるため、圧縮機の運転時間は長くなるものの、圧縮機回転数の低さの分だけ消費電力量を低減することが可能となる。一方、放熱量の増大による快適性の向上については、本発明のように設定室温を補正する場合には圧縮機最高回転数は通常運転時から補正されないため、圧縮機回転数が高い状態での運転時間は短いものの吹き出し空気温度の低さから高い快適性を得ることができる。圧縮機回転数を補正する場合、圧縮機回転数が通常運転時より低くなるため、吹き出し空気温度が高くなり、高い圧縮機回転数での運転時間は長いものの快適性の向上は吹き出し空気の温度の高さの分だけ割り引かれる。
【符号の説明】
【0066】
THS 補正後の設定室温
TS 室温
ΔTS 設定室温と室温との差
TSF スイング吹き出しの時間
TSS 補正前の設定室温
TTF 定位置吹き出しの時間
TU 運転開始からの経過時間
1 室内機
2 室外機
5 室内熱交換器
7 送風ファン
10 上下風向板
11 左右風向板
14 空気吸込み口
15 吹出し風路
16 上側空気吸込み部
17 前側空気吸込み部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19