特許第5856475号(P5856475)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5856475
(24)【登録日】2015年12月18日
(45)【発行日】2016年2月9日
(54)【発明の名称】マイクロニードルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 37/00 20060101AFI20160120BHJP
   B29C 45/10 20060101ALI20160120BHJP
   B29C 45/26 20060101ALI20160120BHJP
【FI】
   A61M37/00 505
   A61M37/00 514
   B29C45/10
   B29C45/26
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2011-287376(P2011-287376)
(22)【出願日】2011年12月28日
(65)【公開番号】特開2013-135722(P2013-135722A)
(43)【公開日】2013年7月11日
【審査請求日】2014年12月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】391008537
【氏名又は名称】ASTI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092842
【弁理士】
【氏名又は名称】島野 美伊智
(74)【代理人】
【識別番号】100166578
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥居 芳光
(72)【発明者】
【氏名】田丸 卓也
(72)【発明者】
【氏名】野中 勇
【審査官】 藤田 和英
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−511382(JP,A)
【文献】 特表2010−502267(JP,A)
【文献】 特開2011−072695(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0021996(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 37/00
B29C 45/10
B29C 45/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1分割要素を成形する第1成形工程と、
上記第1成形工程により成形された上記第1分割要素を第2分割要素を成形する型内に配置し上記第2分割要素を成形する第2成形工程と、
上記第1分割要素と第2分割要素を相対的に移動させることにより上記第1分割要素と上記第2分割要素との間に隙間を生じさせそれを流路とするスライド工程と、
を具備したことを特徴とするマイクロニードルの製造方法。
【請求項2】
請求項1記載のマイクロニードルの製造方法において、
上記第1分割要素と第2分割要素を上記型の接合面と平行な方向に相対的に移動させるようにしたことを特徴とするマイクロニードルの製造方法。
【請求項3】
請求項2記載のマイクロニードル製造方法において、
上記第1成形工程において上記第1分割要素を第1流路用傾斜面を備えた状態で成形し、
上記第2形成工程において上記第2分割要素を上記第1流路用傾斜面に対向する第2流路用傾斜面を備えた状態で成形し、
上記第1分割要素と第2分割要素を上記型の接合面と平行な方向に相対的に移動させることにより上記第1流路用傾斜面と第2流路用傾斜面との間に隙間を生じさせそれを流路とすることを特徴とするマイクロニードルの製造方法。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れかに記載のマイクロニードルの製造方法において、
上記第1分割要素と第2分割要素を移動用治具を用いて相対的に移動させるようにしたことを特徴とするマイクロニードルの製造方法。
【請求項5】
請求項1〜請求項3の何れかに記載のマイクロニードルの製造方法において、
上記第1分割要素と第2分割要素を成形に用いた型ごと相対的に移動させるようにしたことを特徴とするマイクロニードルの製造方法。
【請求項6】
請求項1〜請求項5の何れかに記載のマイクロニードルの製造方法において、
上記第1分割要素に離型材を塗布するようにしたことを特徴とするマイクロニードルの製造方法。
【請求項7】
請求項1〜請求項5記載のマイクロニードルの製造方法において、
上記第1分割要素は上記第2分割要素よりも融点の高い材料が成形されたものであることを特徴とするマイクロニードルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、皮膚上に突き刺して注射を行うマイクロニードルを製造するマイクロニードルの製造方法に係り、特に、金型の製造に困難を要することなく所望の流路を備えたマイクロニードルを容易に製造することができるように工夫したものに関する。
【0002】
従来、流路を有するマイクロニードルとしては、特許文献1に記載された超小型針のようなものが存在していた。この特許文献1に記載された超小型針は、基板上に略円錐形状のマイクロニードルが形成されており、このマイクロニードルの側面に開口され上記マイクロニードルの中心軸を通る内周面を有する貫通孔が流路として形成されている。
【0003】
また、前述した特許文献1記載の超小型針の他にも、流路を有するマイクロニードルが備えられたマイクロニードルアレイとして、次のようなものが提案されている(特願2011−017319号、本件特許出願人による特許願、未公開)。これは、マイクロニードルアレイが二つ割り構造になっており、2つの分割要素を係合させて組み合わせることによりマイクロニードルアレイが構成されるものである。そして、その2つの分割要素が係合されたとき形成される隙間が流路となっているものである。
このようにして2つの分割要素を係合させて組み合わせることにより、内部に流路を有する複数のマイクロニードルを備えたマイクロニードルアレイを容易に製造することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−88514号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の構成によると次のような問題点があった。
まず、前述したように2つの分割要素を係合させてマイクロニードルを構成する場合、上記2つの分割要素を係合させる部位の精度が高くなければ隙間が生じてしまい、その隙間によって流路内部から意図しない液体の漏れ出しが生じてしまうこととなる。そのため、上記2つの分割要素を製造するための金型の作成が非常に困難であった。
また、このような液体の漏れ出しへの対応や係合させた針の強度を確保するために、組立後にシリコンゴムの塗布等を行う必要があった。
また、上記2つの分割要素を係合させる際には、治具を用いて正確な位置合わせを行う必要があり、この点においても、上記マイクロニードルの製造が非常に困難であった。
また、上記2つの分割要素を係合させて上記マイクロニードルを組み立てるとき、上記2つの分割要素に大きな力が加わることになり、針が組立時に破損してしまうことが懸念される。そのため、上記針を細いものとすることができなかった。
【0006】
本願発明は、このような点に基づいてなされたもので、その目的とするところは、金型の製造に困難を要することなく所望の流路を備えたマイクロニードルを容易に製造することを可能にするマイクロニードルの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するべく請求項1に記載されたマイクロニードルの製造方法は、第1分割要素を成形する第1成形工程と、上記第1成形工程により成形された上記第1分割要素を第2分割要素を成形する型内に配置し上記第2分割要素を成形する第2成形工程と、上記第1分割要素と第2分割要素を相対的に移動させることにより上記第1分割要素と上記第2分割要素との間に隙間を生じさせそれを流路とするスライド工程と、を具備したことを特徴とするものである。
又、請求項2記載のマイクロニードルの製造方法は、請求項1記載のマイクロニードルの製造方法において、上記第1分割要素と第2分割要素を上記型の接合面と平行な方向に相対的に移動させるようにしたことを特徴とするものである。
又、請求項3記載のマイクロニードルの製造方法は、請求項2記載のマイクロニードル製造方法において、上記第1成形工程において上記第1分割要素を第1流路用傾斜面を備えた状態で成形し、上記第2形成工程において上記第2分割要素を上記第1流路用傾斜面に対向する第2流路用傾斜面を備えた状態で成形し、上記第1分割要素と第2分割要素を上記型の接合面と平行な方向に相対的に移動させることにより上記第1流路用傾斜面と第2流路用傾斜面との間に隙間を生じさせそれを流路とすることを特徴とするものである。
又、請求項4記載のマイクロニードルの製造方法は、請求項1〜請求項3の何れかに記載のマイクロニードルの製造方法において、上記第1分割要素と第2分割要素を移動用治具を用いて相対的に移動させるようにしたことを特徴とするものである。
又、請求項5記載のマイクロニードルの製造方法は、請求項1〜請求項3の何れかに記載のマイクロニードルの製造方法において、上記第1分割要素と第2分割要素を成形に用いた型ごと相対的に移動させるようにしたことを特徴とするものである。
又、請求項6記載のマイクロニードルの製造方法は、請求項1〜請求項5の何れかに記載のマイクロニードルの製造方法において、上記第1分割要素に離型材を塗布するようにしたことを特徴とするものである。
又、請求項7記載のマイクロニードルの製造方法は、請求項1〜請求項5記載のマイクロニードルの製造方法において、上記第1分割要素は上記第2分割要素よりも融点の高い材料が成形されたものであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
以上述べたように、請求項1記載のマイクロニードルの製造方法は、第1分割要素を成形する第1成形工程と、上記第1成形工程により成形された上記第1分割要素を第2分割要素を成形する型内に配置し上記第2分割要素を成形する第2成形工程と、上記第1分割要素と第2分割要素を相対的に移動させることにより上記第1分割要素と上記第2分割要素との間に隙間を生じさせそれを流路とするスライド工程と、を具備したことを特徴とするものであるため、まず、上記第1分割要素に対して密着した状態で上記第2分割要素を成形することができ、その後、上記第1分割要素と上記第2分割要素を相対的に移動させて上記流路を形成するため、上記流路内の液体の意図しない漏れ出しを防止することのできるマイクロニードルを容易に製造することができる。また、上記製造方法によると、上記第1分割要素と上記第2分割要素を別々に成形してから係合させる必要がないため、上記第1分割要素及び第2分割要素に大きな力を加えることなく上記マイクロニードルを構成することができ、製造時における上記マイクロニードルの破損を防止することができるとともに、より細いマイクロニードルを製造することができる。
また、請求項2記載のマイクロニードルの製造方法は、請求項1記載のマイクロニードルの製造方法において、上記第1分割要素と第2分割要素を上記型の接合面と平行な方向に相対的に移動させるようにしたことを特徴とするものであるため、上記スライド工程において上記マイクロニードルの破損を防止することができる。
また、請求項3記載のマイクロニードルの製造方法は、請求項2記載のマイクロニードル製造方法において、上記第1成形工程において上記第1分割要素を第1流路用傾斜面を備えた状態で成形し、上記第2形成工程において上記第2分割要素を上記第1流路用傾斜面に対向する第2流路用傾斜面を備えた状態で成形し、上記第1分割要素と第2分割要素を上記型の接合面と平行な方向に相対的に移動させることにより上記第1流路用傾斜面と第2流路用傾斜面との間に隙間を生じさせそれを流路とすることを特徴とするものであるため、上記スライド工程において上記第1分割要素と第2分割要素を上記型の接合面と平行な方向に相対的に移動させることで、容易に上記マイクロニードルを製造することができる。
また、請求項4記載のマイクロニードルの製造方法は、請求項1〜請求項3の何れかに記載のマイクロニードルの製造方法において、上記第1分割要素と第2分割要素を移動用治具を用いて相対的に移動させるようにしたことを特徴とするものであるため、上記スライド工程における上記流路の形成を容易に行うことができる。
また、請求項5記載のマイクロニードルの製造方法は、請求項1〜請求項3の何れかに記載のマイクロニードルの製造方法において、上記第1分割要素と第2分割要素を成形に用いた型ごと相対的に移動させるようにしたことを特徴とするものであるため、上記流路の形成を容易に行うことができる。
また、請求項6記載のマイクロニードルの製造方法は、請求項1〜請求項5の何れかに記載のマイクロニードルの製造方法において、上記第1分割要素に離型材を塗布するようにしたことを特徴とするものであるため、上記第1分割要素と上記第2分割要素との融着を防止することができる。
また、請求項7記載のマイクロニードルの製造方法は、請求項1〜請求項5記載のマイクロニードルの製造方法において、上記第1分割要素は上記第2分割要素よりも融点の高い材料が成形されたものであることを特徴とするものであるため、同様の効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本願発明の第1の実施の形態を示す図であり、本実施の形態によるマイクロニードルを使用したマイクロニードルアレイを示す斜視図である。
図2】本願発明の第1の実施の形態を示す図であり、本実施の形態によるマイクロニードルを使用したマイクロニードルアレイの主針分割要素複合体を示す斜視図である。
図3】本願発明の第1の実施の形態を示す図であり、図3(a)は本実施の形態によるマイクロニードルの副針分割要素を表面側から見た斜視図、図3(b)は本実施の形態によるマイクロニードルの副針分割要素を裏面側から見た斜視図である。
図4】本願発明の第1の実施の形態を示す図であって製造工程を順番に示す図であり、図4(a)は本実施の形態によるマイクロニードルを使用したマイクロニードルアレイの主針分割要素を第1成形工程において成形した状態を示す部分拡大図、図4(b)は本実施の形態によるマイクロニードルを使用したマイクロニードルアレイの主針分割要素と一体化させた状態で副針分割要素を第2成形工程において成形した状態を示す部分拡大図、図4(c)は本実施の形態によるマイクロニードルを使用したマイクロニードルアレイの主針分割要素に対して副針分割要素をスライド工程において後方側へ移動させた状態を示す部分拡大図、図4(d)は本実施の形態によるマイクロニードルを使用したマイクロニードルアレイ内部の流路を副針分割要素を除去して示す部分拡大図である。
図5】本願発明の第1の実施の形態を示す図であって製造方法を工程順に示す図であり、図5(a)は主針分割要素を成形する際に用いる2つの型を示す断面図、図5(b)は上記2つの型を組み合わせてその内部に樹脂を射出する様子を示す断面図、図5(c)は上記2つの型の一方とともに成形された主針分割要素を取り外す様子を示す断面図である。
図6】本願発明の第1の実施の形態を示す図であって製造方法を工程順に示す図であり、図6(a)は主針分割要素を副針分割要素を成形する際に用いる2つの型のうちの一方の内部に配置しようとする様子を示す断面図、図6(b)は上記主針分割要素を副針分割要素を成形する際に用いる2つの型のうちの一方の内部に配置した状態を示す断面図、図6(c)は上記2つの型を組み合わせて、その内部に樹脂を射出する様子を示す断面図である。
図7】本願発明の第1の実施の形態を示す図であって製造方法を工程順に示す図であり、図7(a)は上記副針分割要素を成形した後、上記副針分割要素を成形する際に用いた2つの型のうちの一方を成形されたマイクロニードルアレイとともに取り外した様子を示す断面図、図7(b)は上記副針分割要素に移動用治具を係合させた状態を示す断面図、図7(c)は上記副針分割要素を上記主針分割要素に対して移動させた様子を示す断面図である。
図8】本願発明の第2の実施の形態を示す図であって製造方法を工程順に示す図であり、図8(a)は主針分割要素を副針分割要素の成形に用いる型の内部に収納した様子を示す断面図、図8(b)は射出成形により上記副針分割要素を成形した状態を示す断面図、図8(c)は上記副針分割要素側の型を移動させることによって上記副針分割要素を上記主針分割要素に対して相対的に移動させた様子を示す断面図、図8(d)は上記副針分割要素側の型を除去した様子を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図1乃至図7を参照して、本願発明の第1の実施の形態について説明する。
まず、図1乃至図3を参照して、本実施の形態によるマイクロニードル1と、このマイクロニードル1を備えたマイクロニードルアレイ3の構成について説明する。
複数(本実施の形態の場合は4つ)の本実施の形態による上記マイクロニードル1を備えた上記マイクロニードルアレイ3は、図1に示すような構成を成している。すなわち、上記マイクロニードルアレイ3は、複数(本実施の形態の場合は4つ)の本実施の形態によるマイクロニードル1が連なって一体となったものである。
また、上記マイクロニードルアレイ3は、図1に示すように、複数(本実施の形態の場合は4つ)の第1分割要素としての主針分割要素5が一体となった主針分割要素複合体7と、上記主針分割要素5のそれぞれに一体として設けられた第2分割要素としての副針分割要素9とから構成されている。
【0011】
また、上記マイクロニードル1は、上記主針分割要素5と副針分割要素9とが一体となったものであり、その基端側(図1中下側)には、流路ボス10が突出・形成されている。
【0012】
図2に示すように、上記主針分割要素5には、まず、主針基部11があり、この主針基部11の先端側(図2中上側)には主針12が突出・形成されている。この主針12の先端部12a(図2中上端側の部分)は略四角錘形状の鋭く尖った形状を成している。上記マイクロニードル1の主針12はこの先端部12aを介して対象に突き刺されることになる。また、上記主針分割要素5の上記先端部12aよりも後方側は、上記先端部12aの中心軸を通る平面形状を成しており、この面に上記副針分割要素9の後述する副針23や副針基部22が密着されることになる。
また、上記主針基部11の基端側(図2中下側)には主針側流路ボス分割要素13が突出・形成されている。
【0013】
また、上記主針分割要素5には、上記主針12の先端部12aの後方側(図2中下側)から上記主針側流路ボス分割要素13の基端(図2中下側端)まで溝15が形成されている。この溝15の底面(図2中下側の面)は第1流路用傾斜面17となっている。この第1流路用傾斜面17は、上記溝15の先端側(図2中上側)から基端側(図2中下側)に向けて連続した一つの傾斜面となっている。
【0014】
また、上記主針分割要素複合体7の幅方向(図2中左右方向)両端には、係合部19、21が形成されている。この係合部19、21は、例えば、他の部材の対応する係合部に係合させて、上記マイクロニードルアレイ3を上記他の部材に取り付ける場合に用いられる。
【0015】
図3(a)に示すように、上記副針分割要素9には、まず、副針基部22があり、この副針基部22の先端側(図3(a)中上側)には副針23が突出・形成されている。また、上記副針基部22の基端側(図3(a)中下側)には副針側流路ボス分割要素25が突出・形成されている。
また、図3(b)に示すように、上記副針分割要素9の主針分割要素5側(図3(b)中上側)の面は第2流路用傾斜面29となっている。この第2流路用傾斜面29は、上記副針分割要素9の先端側(図3(a)中上側)から基端側(図3(a)中下側)に向けて連続した一つの傾斜面となっている。
また、図3(a)に示すように、上記副針分割要素9の反主針分割要素5側(図3(a)中上側)には移動用治具係合部31が形成されている。
また、上記副針分割要素9の主針分割要素5側(図3(a)中下側)は、上記主針分割要素5の溝15に対応した形状となっており、上記第2流路用傾斜面29はこの主針分割要素5側(図3(b)中上側)の面に形成されていることになる。
【0016】
そして、前述したように、上記主針分割要素5と上記副針分割要素9とによってマイクロニードル1が構成されているが、上記マイクロニードル1内部の上記第1流路用傾斜面17と第2流路用傾斜面29との間に、流路33が形成されている。この流路33の先端側には、上記マイクロニードル1における上記副針23の先端(図1中上側端)の前方(図1中上側)に開口されたマイクロニードル先端側開口部35が形成されており、また、流路33の基端側には、上記流路ボス10の後端面(図1中下側端面)に開口されたマイクロニードル基端側開口部37が形成されている。
上記流路33は、上記主針分割要素5に対して上記副針分割要素9が密着した状態で成形された後、上記主針分割要素5に対して上記副針分割要素9を移動させることによって上記第1流路用傾斜面17と第2流路用傾斜面29との間に形成されるものである。
【0017】
また、上記主針側流路ボス分割要素13と上記副針側流路ボス分割要素25とが一体となって上記流路ボス10が構成されている。
以上が上記マイクロニードル1を備えたマイクロニードルアレイ3の構成についての説明である。
【0018】
次に、本実施の形態によるマイクロニードル1及び上記マイクロニードル1を備えたマイクロニードルアレイ3の作用について説明する。
まず、上記マイクロニードルアレイ3のマイクロニードル1は、その先端側(図1中上側)が針状の鋭い形状となっており、この部分を対象物(例えば、人間や動物)に突き刺して使用する。また、既に説明したように、上記マイクロニードルアレイ3のマイクロニードル1の内部には流路33が設けられており、その先端側(図1中上側)にマイクロニードル先端側開口部35が設けられていると共に、流路ボス10の基端側(図1中下側)にはマイクロニードル基端側開口部37が設けられている。そして、上記マイクロニードル基端側開口部37を介して、図示しない薬液供給部から薬液が供給される。供給された薬液は上記流路33を通って対象物の体内に供給される。
【0019】
次に、図4乃至図7を参照して、本実施の形態によるマイクロニードル1を備えたマイクロニードルアレイ3の製造方法について説明する。
ます、図4を参照して、上記マイクロニードルアレイ3の製造方法の概要について説明する。
まず、図4(a)に示すように、マイクロニードルアレイ3の主針分割要素複合体7(主針分割要素5)のみを形成する。これが第1成形工程である。次に、図4(b)に示すように、この主針分割要素複合体7(主針分割要素5)に対して、一体化させた状態で副針分割要素9を形成する。これが第2成形工程である。そして、図4(c)に示すように、上記副針分割要素9を上記主針分割要素複合体7(主針分割要素5)に対して移動させる。これがスライド工程である。このとき、上記副針分割要素9を移動させる方向は、上記副針分割要素9の成形に用いた型の接合面に平行な後方側(図4中下方向)である。それによって、第1流路用傾斜面17と第2流路用傾斜面29とが離間し、図4(d)に示すように、上記第1流路用傾斜面17と上記第2流路用傾斜面29との間、すなわち、上記第1流路用傾斜面17の上側(図4中紙面垂直方向表側)に流路33が形成される。
以上が、上記マイクロニードルアレイ3の製造方法の概要である。
【0020】
次に、図5乃至図7を参照して、上記マイクロニードルアレイ3(マイクロニードル1)の製造方法について詳細に説明する。
まず、図5(a)に示すように、主針分割要素複合体用固定型39と、この主針分割要素複合体用固定型39に対応する主針分割要素複合体用可動型41を準備する。そして、図5(b)に示すように、上記主針分割要素複合体用固定型39と上記主針分割要素複合体用可動型41とを組み合わせて型締めを行い、上記主針分割要素複合体用固定型39のゲート43から樹脂を流し込み、射出成形を行い主針分割要素複合体7(複数の主針分割要素5からなる)を成形する。
その後、上記主針分割要素複合体7が冷却されて固まるまで待機し、図5(c)に示すように、型開きを行って、上記主針分割要素複合体用可動型41と上記主針分割要素複合体7を上記主針分割要素複合体用固定型39から取外す。
以上が第1成形工程である。
【0021】
次に、図6(a)に示すように、副針分割要素用固定型45と副針分割要素用可動型47を準備し、図6(b)に示すように、上記主針分割要素複合体7を上記副針分割要素用可動型47内に配置する。その際、上記主針分割要素複合体7には離型材を塗布しておく。その後、図6(c)に示すように、上記副針分割要素用固定型45と上記副針分割要素用可動型47とを組み合わせて型締めを行い、上記副針分割要素用固定型45のゲート49から樹脂を流し込んで射出成形を行い、副針分割要素9を成形する。
なお、図6においては、上記副針分割要素9は一つのみが表されているが、実際は、複数の(本実施の形態の場合は4つの)上記副針分割要素9が成形されている。
【0022】
次に、上記副針分割要素9が冷却されて固まるまで待機し、図7(a)に示すように、型開きを行なって、上記副針分割要素用可動型47と上記主針分割要素複合体7と上記副針分割要素9を上記副針分割要素用固定型45から取外す。
以上が第2成形工程である。
【0023】
次に、図7(b)に示すように、上記副針分割要素9の移動用治具係合部31に移動用治具51を、図7(a)中矢印aで示す方向から係合させる。
そして、図7(c)に示すように、上記移動用治具51を用いて、上記副針分割要素9を上記主針分割要素複合体7に対して移動させる。このとき、上記副針分割要素9を移動させる方向は、上記副針分割要素9の成形に用いた上記副針分割要素用固定型45と上記副針分割要素用可動型47の接合面に平行な後方側(図7中下方向、矢印bで示す方向)である。
上記副針分割要素9を上記主針分割要素複合体7に対して移動させると、第1流路用傾斜面17と第2流路用傾斜面29とが離間し、図7(c)に示すように、上記第1流路用傾斜面17と上記第2流路用傾斜面29との間に流路33が形成される。また、上記流路33のマイクロニードル先端側開口部35とマイクロニードル基端側開口部37も開口される。
このようにして、内部に上記流路33が形成されたマイクロニードルアレイ3(マイクロニードル1)が形成される。
以上がスライド工程である。
【0024】
次に、マイクロニードル1の製造方法の効果について説明する。
まず、本実施の形態による上記マイクロニードル1の製造方法では、主針分割要素複合体7(主針分割要素5)を副針分割要素用可動型47内に配置し、その後、副針分割要素用固定型45と上記副針分割要素用可動型47とを組み合わせて型締めを行い、上記副針分割要素用固定型45のゲート49から樹脂を流し込んで射出成形を行い、上記主針分割要素複合体7(主針分割要素5)と一体になった状態で副針分割要素9を成形し、上記主針分割要素複合体7(主針分割要素5)と上記副針分割要素9のうち、上記副針分割要素9を上記主針分割要素複合体7(主針分割要素5)に対して移動させることによって上記流路33を形成するようにしているので、従来のように、成形された二つの要素を係合させることにより流路を形成する場合のように、成形型に高い寸法精度が要求されるようなことはなく、所望の流路33を備えたマイクロニードル1を容易に製造することができる。
また、上記流路33を不必要な隙間を発生させることなく構成することができるので、流路33以外の意図しない隙間からの液体の漏れ出しを確実に防止することができる。
【0025】
また、上記副針分割要素9を上記主針分割要素複合体7に対して移動させる際、移動用治具51を用いるので、上記流路33の形成を容易に行うことができる。
また、上記副針分割要素9を成形する前に上記主針分割要素複合体7(主針分割要素5)に離型材を塗布するようにしているので、上記副針分割要素9を容易に移動させることができる。
【0026】
また、本実施の形態による上記マイクロニードル1の製造方法では、上記主針分割要素複合体7(主針分割要素5)と上記副針分割要素9を別々に成形し、互いに係合させることでこれらを一体化させる必要がないため、製造時における上記マイクロニードル1及び上記マイクロニードルアレイ3の不用意な破損を防止することができる。
また、上記主針分割要素複合体7(主針分割要素5)と上記副針分割要素9とを互いに係合させる場合のように、上記主針分割要素複合体7(主針分割要素5)と上記副針分割要素9に大きな力が加わることはないので、主針12や副針23をより細くすることができる。
また、上記副針分割要素9を上記主針分割要素複合体7に対して移動させる方向は、上記副針分割要素9の成形に用いた副針分割要素用固定型45と副針分割要素用可動型47の接合面に平行な後方側(図7中下方向)であるため、製造時において上記主針12や副針23の垂直方向に力が加わることがなく、上記主針12や副針23の不用意な破損を防止することができる。
以上が、本実施の形態による上記マイクロニードル1及び上記マイクロニードルアレイ3の製造方法の効果である。
【0027】
次に、図8を参照して、本願発明の第2の実施の形態について説明する。本実施の形態の場合も、前述した本願発明の第1の実施の形態の場合と同様のマイクロニードル1及びマイクロニードルアレイ3を製造するが、流路33を形成させる際の副針分割要素9の移動方法が異なっているものである。
なお、前記第1の実施の形態の場合と同一部分には同一符号を付して示しその説明は省略する。
【0028】
まず、前述した第1の実施の形態の場合と同様に、主針分割要素複合体7を成形する(第1成形工程)。
次に、図8(a)に示すように、上記主針分割要素複合体7を第1副針分割要素用型53内に配置する。次に、上記第1副針分割要素用型53を第2副針分割要素用型55に組み合わせて、上記第2副針分割要素用型55のゲート57から樹脂を射出し、図8(b)に示すように、副針分割要素9を射出成形する(第2成形工程)。
【0029】
そして、その後、図8(c)に示すように、上記第2副針分割要素型55を、上記第1副針分割要素用型53との接合面に平行な後方側(図8(c)中下方向、図中矢印cで示す方向)へ移動させる。このとき、上記第2副針分割要素用型55とともにその内部の副針分割要素9も同方向に移動される。これによって、第1流路用傾斜面17と第2流路用傾斜面29とが離間し、図8(c)に示すように、上記第1流路用傾斜面17と上記第2流路用傾斜面29との間に流路33が形成される(スライド工程)。
このようにして、上記流路33を備えたマイクロニードルアレイ3(マイクロニードル1)が形成される。
【0030】
なお、上記第2副針分割要素用型55と上記副針分割要素9の移動は、射出成形された上記副針分割要素9が完全に冷却される前に行っている。
また、図8(a)〜図8(d)に示すように、上記第1副針分割要素型53と上記第2副針分割要素型55のパーティングラインは、上記第2副針分割要素型55を上記第1副針分割要素用型53との接合面に平行な後方側(図8中下方向、図中矢印cで示す方向)へ移動させる際に、上記第1副針分割要素型53と上記第2副針分割要素型55とが干渉しないように形成されている。
また、上記第2副針分割要素型55の先端側(図8中上側)には、上記第2副針分割要素型55を上記第1副針分割要素用型53との接合面に平行な後方側(図8中下方向、図中矢印cで示す方向)へ移動させる際にマイクロニードル1の先端部12aと干渉しないように逃げ部59が形成されている。
【0031】
最後に、図8(d)に示すように、上記第2副針分割要素用型55から、上記第1副針分割要素用型53と上記マイクロニードルアレイ3を取り外す。
このようにして、上記流路33を備えたマイクロニードル1及びマイクロニードル3が製造される。
以上が本実施の形態によるマイクロニードル1及びマイクロニードル3の製造方法である。
【0032】
本実施の形態においても、前述した第1の実施の形態の場合と同様の効果が得られる。
また、副針分割要素9を移動させる際、第1副針分割要素用型53や第2副針分割要素用型55を取り外す必要がないため、前述した第1の実施の形態の場合に比べて少ない工程数でマイクロニードル1及びマイクロニードルアレイ3を製造することができる。また、上記副針分割要素9に、前述した第1の実施の形態の場合のような治具を係合させるための凹部を形成させる必要がないため、上記第2副針分割要素用型55の形状を簡略化させることができ、これによって、上記マイクロニードル1及び上記マイクロニードルアレイ3の製造を容易なものとすることができる。
また、上記第2副針分割要素用型55と上記副針分割要素9の移動は、射出成形された上記副針分割要素9が完全に冷却される前に行っているため、主針分割要素複合体7に対する上記副針分割要素9の移動を円滑に行うことができ、上記副針分割要素9の移動中の上記マイクロニードル1の破損を防止することができる。
また、それとともに、上記主針分割要素複合体7と上記副針分割要素9とをより密着させたものとすることができ、上記流路33を不必要な隙間を発生させることなく構成することができるので、流路33以外の意図しない隙間からの液体の漏れ出しをより確実に防止することができる。
以上が本実施の形態によるマイクロニードル1、マイクロニードルアレイ3、及び、これらの製造方法の効果についての説明である。
【0033】
なお、本願発明は、前述した第1の実施の形態や第2の実施の形態に限定されない。
例えば、前述した第1の実施の形態においては、副針分割要素9を主針分割要素複合体用固定型39と副針分割要素用固定型41との接合面に平行な後方側(図7中下方向)へ移動させていたが、この移動方向を上記主針分割要素複合体用固定型39と上記副針分割要素用固定型41との接合面に垂直な方向とする場合も考えられる。このように、上記副針分割要素9を移動させることによっても、内部に流路33を備えたマイクロニードル1及びマイクロニードルアレイを製造することができる。
【0034】
また、前述した第1の実施の形態や第2の実施の形態では、主針分割要素複合体7(主針分割要素5)に対して上記副針分割要素9を移動させていたが、上記副針分割要素9に対して上記主針分割要素複合体7(主針分割要素5)を移動させることも考えられる。また、主針分割要素複合体7(主針分割要素5)と上記副針分割要素9の両方を移動させることも考えられる。
【0035】
また、上記主針分割要素複合体7(上記主針分割要素5)の材料を上記副針分割要素9の材料よりも融点が高いものとすることや、上記主針分割要素複合体7(上記主針分割要素5)及び上記副針分割要素9の材料を融点が高く且つ軟化する温度範囲が狭い樹脂とすることも考えられる。このような材料を用いることによって、上記主針分割要素複合体7(上記主針分割要素5)に対する上記副針分割要素9の融着を防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、例えば、皮膚上に突き刺して注射を行うマイクロニードルを製造するマイクロニードルの製造方法に係り、特に、金型の製造に困難を要することなく所望の流路を備えたマイクロニードルを容易に製造することができるように工夫したものに関し、例えば、インシュリンの経皮投与などに用いられるマイクロニードルに好適である。
【符号の説明】
【0037】
1 マイクロニードル
3 マイクロニードルアレイ
5 主針分割要素(第1分割要素)
7 主針分割要素複合体(第1分割要素)
9 副針分割要素(第2分割要素)
17 第1流路用傾斜面
29 第2流路用傾斜面
31 移動用治具係合部
33 流路
39 主針分割要素複合体用固定型
41 主針分割要素複合体用可動型
45 副針分割要素用固定型
47 副針分割要素用可動型
51 移動用治具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8