特許第5856481号(P5856481)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5856481多発性硬化症の二次性自己免疫疾患の診断および治療についての方法ならびに組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5856481
(24)【登録日】2015年12月18日
(45)【発行日】2016年2月9日
(54)【発明の名称】多発性硬化症の二次性自己免疫疾患の診断および治療についての方法ならびに組成物
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20160120BHJP
   C12Q 1/68 20060101ALI20160120BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20160120BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20160120BHJP
   A61K 39/395 20060101ALN20160120BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20160120BHJP
【FI】
   C12N15/00 AZNA
   C12Q1/68 A
   G01N33/50 P
   G01N33/53 P
   !A61K39/395 N
   !C07K16/28
【請求項の数】31
【全頁数】36
(21)【出願番号】特願2011-530591(P2011-530591)
(86)(22)【出願日】2009年10月8日
(65)【公表番号】特表2012-504954(P2012-504954A)
(43)【公表日】2012年3月1日
(86)【国際出願番号】IB2009007327
(87)【国際公開番号】WO2010041149
(87)【国際公開日】20100415
【審査請求日】2012年3月30日
(31)【優先権主張番号】61/197,187
(32)【優先日】2008年10月24日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/195,658
(32)【優先日】2008年10月8日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/198,631
(32)【優先日】2008年11月7日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508311226
【氏名又は名称】ケンブリッジ・エンタープライズ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100080137
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 昭男
(74)【代理人】
【識別番号】100096013
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100135415
【弁理士】
【氏名又は名称】中濱 明子
(72)【発明者】
【氏名】コールズ,アラズデア・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ジョーンズ,ジョアン・エル
(72)【発明者】
【氏名】コンプストン,アラステア
【審査官】 柴原 直司
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/111714(WO,A1)
【文献】 Ther. Adv. Neurol. Disord., (2008.07), 1, [1], p.33-42
【文献】 J. Clin. Immunol., (2008.09), 28, [6], p.660-670
【文献】 Nature, (2007), 448, [7152], p.480-483
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00−15/90
C12Q 1/68
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リンパ球除去の後に、二次性自己免疫疾患を発症するリスクが高い多発性硬化症(MS)患者を特定する方法であって、前記方法は、
前記MS患者からの血液試料中のインターロイキン−21(IL−21)を測定するステップであって、自己免疫疾患を持たない被検者と比較して上昇したIL−21は、前記患者が、上昇したIL−21を持たないMS患者と比較して、二次性自己免疫疾患を発症するリスクが高いことを示す、ステップ、を含む、方法。
【請求項2】
リンパ球除去の後に、二次性自己免疫疾患を発症するリスクが高い多発性硬化症患者を特定する方法であって、前記方法は、
前記患者において、SNP rs13151961におけるA/A、SNP rs6822844におけるG/G、およびSNP rs6840978におけるC/Cからなる群から選択される、前記患者における一塩基多型(SNP)の1つ以上の遺伝子型の存在または非存在を検出するために、前記患者の遺伝子型を決定するステップであって、前記1つ以上の前記遺伝子型の存在は、前記1つ以上の遺伝子型を持たないMS患者と比較して、二次性自己免疫疾患を発症するリスクの上昇に関連するステップ、を含む、方法。
【請求項3】
前記リンパ球除去が、CD52を標的とする治療によって誘発される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
CD52を標的とする治療が、抗CD52抗体またはその抗原結合部分での治療を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記抗CD52抗体が、アレムツズマブまたはCD52への結合をめぐりアレムツズマブと競合する抗体である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記リンパ球除去が、CD52を標的とする治療によって誘発される、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
CD52を標的とする前記治療が、抗CD52抗体またはその抗原結合部分での治療を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記抗CD52抗体が、アレムツズマブまたはCD52への結合をめぐりアレムツズマブと競合する抗体である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
リンパ球除去療法の後の、二次性自己免疫疾患の発症について、強化されたモニタリングを必要とする多発性硬化症(MS)患者を選択する方法であって、前記方法は、
前記MS患者からの血液試料中のIL−21を測定するステップを含み、前記患者における、自己免疫疾患を持たない被検者と比較して上昇したIL−21は、前記患者が、上昇したIL−21を持たないMS患者と比較して、二次性自己免疫疾患の発症について、強化されたモニタリングを必要とすることを示す、方法。
【請求項10】
リンパ球除去療法の後の、二次性自己免疫疾患の発症について、強化されたモニタリングを必要とする多発性硬化症患者を選択する方法であって、前記方法は、
SNP rs13151961におけるA/A、SNP rs6822844におけるG/G、およびSNP rs6840978におけるC/Cからなる群から選択される、一塩基多型(SNP)の1つ以上の遺伝子型の存在または非存在を検出するために、前記患者の遺伝子型を決定するステップを含み、前記SNPのうちの1つ以上の存在は、前記患者が、二次性自己免疫疾患の発症について、前記1つ以上の遺伝子型を持たないMS患者と比較して、強化されたモニタリングを必要とすることを示す、方法。
【請求項11】
前記測定が、前記試料内のIL−21もしくはIL−21をコードする核酸の量または濃度を決定することを含む、請求項1および9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記測定が、前記試料内のIL−21産生細胞内のIL−21をコードするmRNAの測定である、請求項1および9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記IL−21産生細胞がTh17細胞である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記測定が、細胞内IL−21の測定である、請求項1および9のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記測定が、サイトカイン染色およびフローサイトメトリーを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記測定が、血清IL−21の測定である、請求項1および9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記測定が、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)の使用を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記二次性自己免疫疾患が、免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)、グレーブス病、グッドパスチャー病、自己免疫性甲状腺疾患、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性好中球減少、および自己免疫性リンパ球減少からなる群から選択される、請求項1、2、9および10のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記リンパ球除去療法が、CD52含有細胞を標的とする、請求項9または10に記載の方法。
【請求項20】
CD52含有細胞を標的とする前記リンパ球除去療法が、CD52に結合する抗体、または前記抗体の抗原結合部分を投与することを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記抗体が、CD52への結合をめぐり、アレムツズマブと競合する、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記抗体が、CD52への結合をめぐり、アレムツズマブと競合する、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記抗体が、アレムツズマブである、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記血液試料が、多発性硬化症に対する療法前、療法中、または療法後の患者から獲得される、請求項1または9に記載の方法。
【請求項26】
前記血液試料が、リンパ球除去療法前の患者から獲得される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記多発性硬化症が、再発−寛解型多発性硬化症である、請求項1〜10のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記多発性硬化症が、一次性進行型多発性硬化症である、請求項1〜10のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記多発性硬化症が、二次性進行型多発性硬化症である、請求項1〜10のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
リンパ球除去の後に、二次性自己免疫疾患を発症するリスクが高い、多発性硬化症(MS)患者を特定するためのキットであって、
抗インターロイキン−21(IL−21)抗体および前記IL−21抗体の前記MS患者からの血液試料中のIL−21への結合を検出するための1つ以上の試薬を含む、キット。
【請求項31】
リンパ球除去の後に、二次性自己免疫疾患を発症するリスクが高い、多発性硬化症患者を特定するためのキットであって、
個人から獲得される試料中で、SNP rs13151961、SNP rs6822844、およびSNP rs6840978からなる群から選択される、1つ以上の一塩基多型(SNP)の遺伝子型を特定するのに好適な1つ以上の試薬を含む、キット。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本出願の開示は、2009年10月8日に作成され、8,856バイトの容量を有する、同時に申請された「sequence.txt」ファイルを含む。
多発性硬化症(「MS」)は、中枢神経系の炎症性自己免疫障害である(Compston and Coles, Lancet 372,1502−17(2008))。MSは、約1000人に1人の罹患率で、若年成人における神経障害の最も一般的な原因である(Polman and Uitdehaag,BMJ321,490−4(2000))。MSは、免疫系の関与、軸索および神経膠の急性炎症性損傷、機能の回復および構造修復、炎症後神経膠症、ならびに神経変性を伴う(例えば、Compston and Coles,2008を参照のこと)。これらの連続的プロセスは、回復を伴う発現、持続性の欠損、および二次性進行を残す発現によって特徴付けられる、臨床経過の根拠をなす(同上)。
【0002】
MS治療の目標は、再発頻度および重症度を低減すること、疾患進行から生じる身体障害を予防すること、および組織修復を促進することである(Compston and Coles,2008)。MS治療に対する第1のアプローチは、免疫系の調節または抑制である。現在入手可能なMS薬には、インターフェロンベータ−1a(例えば、AVONEXおよびREBIF)、インターフェロンベータ−1b(例えば、ベータSERON)、グラチラマー酢酸塩(例えば、COPAXONE)、ミトキサントロン(例えば、NOVANTRONE)、およびナタリズマブ(例えば、TYSABRI)が含まれる。MSに対する別の有望な新薬は、アレムツズマブ(CAMPATH−1H)である。
【0003】
アレムツズマブは、リンパ球および単球の表面上に広範に分配されるが、未知の機能を有するタンパク質であるCD52に対して向けられる、ヒト化モノクローナル抗体である。アレムツズマブは、B細胞慢性リンパ球性白血病を治療するために使用されている。単一パルスの治療は、急激な、重度の、および持続的なリンパ球減少をもたらす。細胞数は回復するが、その速度は様々であり、CD4+T細胞は、特に回復が遅く、少なくとも5年間は減少状態のままである(Coles et al.,Journal of Neurology 253,98−108(2006))。第2相試験(CAMMS−223 study group;Coles et al.,N.Engl.J.Med.359,1786−1801(2008))は、アレムツズマブが、早期の再発−寛解型多発性硬化症を治療するのに非常に有効であることを示している。この薬物は、早期の再発−寛解型多発性硬化症を持つ患者において、インターフェロン−ベータと比較して、疾患活性および身体障害の蓄積のリスクを、70%を超える割合で低減させる。主な有害作用は、投薬後数ヶ月〜数年でT細胞リンパ球減少の状況において生じる、自己免疫である。患者の約20%〜30%は、甲状腺自己免疫、主にグレーブス病(Coles et al.,Lancet354,1691−1695 (1999))を発症し、3%は、免疫性血小板減少(ITP)(Coles et al.,2008)を有する。グッドパスチャー病、自己免疫性好中球減少(Coles et al.,Journal of Neurology253,98−108(2006))、および自己免疫性溶血性貧血(未発表)の単一のケースもまた、観察されている。加えて、患者のさらに5.5%は、臨床疾患(Coles et al.,2006)のない、持続性非甲状腺自己抗体を発症する。アレムツズマブ後の自己免疫の時期および範囲は、他の臨床背景における「再構成自己免疫」の他の例で見られるそれらに類似し、例えば、自己免疫性甲状腺疾患および自己免疫血球減少もまた、造血幹細胞移植またはHIVの抗レトロウイルス治療の数ヶ月〜数年後に主に現れる(Chen et al.,Medicine(Baltimore)84,98−106(2005)、Daikeler and Tyndall,Best.Pract.Res.Clin.Haematol.20,349−360(2007)、Jubault et al.,J.Clin.Endocrinol.Metab.85,4254−4257(2000)、Ting,Ziegler,and Vowels,Bone Marrow Transplant.21,841−843(1998)、Zandman−Goddard and Shoenfeld,Autoimmun.Rev.1,329−337(2002))。
【0004】
リンパ球減少という状況において生じる自己免疫が、動物モデルにおいて周知である一方で、それはまれな遭遇であり、故に、ヒトにおいて検討することは困難である。ほとんどのリンパ球減少被検者は、自己免疫を発症せず、さらなる要因を伴うことを示唆する(Krupica et al.,Clin Immunol120,121−128(2006))。それらのさらなる要因が何であるかは、依然として不明確である。マウス大腸炎および胃炎モデルで見られる通り、制御性T細胞の減少が1つの要因として考えられている(Alderuccio et al.,J Exp.Med178,419−426(1993)、McHugh et al.,J Immunol168,5979−5983(2002)、Powrie et al.,Int.Immunol5,1461−1471(1993)、Sakaguchi et al.,J Immunol155,1151−1164(1995))。しかしながら、ヒト患者において、制御性T細胞が、アレムツズマブ後に増加し、それ以降正常レベルに回帰することが観察されている(Cox et al.,Eur J Immunol35、3332−3342(2005))。以来、この観察は再現されており(Bloom et al.,Am J Transplant.8,793−802(2008))、他の実験的リンパ球減少モデルと一致している(de Kleer,I.et al.,Blood 107,1696−1702(2006);Zhang,H.et al,Nat Med 11,1238−1243(2005))。
【発明の概要】
【0005】
我々は、MS治療におけるリスク管理を改善するための、新たなかつ有用な方法および組成物を発明した。方法および組成物は、二次性自己免疫等の、MS治療の副作用を低減し、MS治療および治療後のモニタリング計画を選択する際に、医療提供者および患者を援助する。本発明の方法および組成物は、多発性硬化症(MS)患者において、アレムツズマブ治療等のリンパ球除去療法の前であっても検出可能な、上昇したIL−21が、治療後に二次性自己免疫を発症するリスクの上昇と相関するという、我々の発見に基づく。我々はさらに、個人のIL−21レベルが、遺伝的に決定され得るということを発見しており、SNP rs13151961におけるA/A、SNP rs6822844におけるG/G、およびSNP rs6840978におけるC/Cの一塩基多型(SNP)遺伝子型は、上昇したIL−21に関連する。
【0006】
したがって、本発明は、自己免疫疾患を持たない被検者におけるIL−21と比較して、上昇したインターロイキン−21(IL−21)を有するMS患者を特定する方法を提供する。幾つかの実施形態では、方法は、MS患者からの血液試料中のIL−21を測定するステップを含み、それによって被検者と比較して、上昇したIL−21を有するMS患者を特定する。代替的に、方法は、患者において、SNP rs13151961におけるA/A、SNP rs6822844におけるG/G、およびSNP rs6840978におけるC/Cからなる群から選択される遺伝子型等、上昇したIL−21に関連する一塩基多型(SNP)の1つ以上の遺伝子型の存在または非存在を検出するために、患者の遺伝子型を決定するのステップを含み、ここで1つ以上の遺伝子型の存在は、上昇したIL−21に関連する。
【0007】
本発明はさらに、リンパ球除去の後に、二次性自己免疫疾患を発症するリスクが高いMS患者を特定する方法を提供する。幾つかの実施形態では、方法は、MS患者からの血液試料中の、インターロイキン−21(IL−21)のレベルを確認する(例えば、測定によって)ステップを含み、ここで自己免疫疾患を持たない被検者と比較して上昇したIL−21は、患者が、上昇したIL−21を持たないMS患者と比較して、二次性自己免疫疾患を発症するリスクが高いことを示す。代替的に、方法は、患者において、SNP rs13151961におけるA/A、SNP rs6822844におけるG/G、およびSNP rs6840978におけるC/Cからなる群から選択される遺伝子型等、上昇したIL−21に関連する一塩基多型(SNP)の1つ以上の遺伝子型の存在または非存在を確認する(例えば、遺伝子型決定によって)ステップを含み、ここで1つ以上(例えば、2つまたは3つ)の前記遺伝子型の存在は、1つ以上の遺伝子型を持たないMS患者と比較して、二次性自己免疫疾患を発症するリスクの上昇に関連する。これらの方法は任意に、患者および/またはおよび/または患者の医療提供者に、リスクの上昇を通知するステップ、ならびに/またはリスクの上昇を記録するステップを含む。
【0008】
本発明はさらに、リンパ球除去療法の後の、二次性自己免疫疾患の発症について、強化されたモニタリングを必要とするMS患者を選択または特定する方法を提供する。これらの方法は、MS患者からの血液試料中のIL−21を測定するステップを含んでもよく、ここで患者における、自己免疫疾患を持たない被検者と比較して上昇したIL−21は、患者が、上昇したIL−21を持たないMS患者と比較して、二次性自己免疫疾患の発症について、強化されたモニタリングを必要とすることを示す。代替的に、方法は、患者において、SNP rs13151961におけるA/A、SNP rs6822844におけるG/G、およびSNP rs6840978におけるC/Cからなる群から選択される遺伝子型等、上昇したIL−21に関連する一塩基多型(SNP)の1つ以上の遺伝子型の存在または非存在を検出するために、患者の遺伝子型を決定するのステップを含んでもよく、ここで1つ以上のSNPの存在は、患者が、二次性自己免疫疾患の発症について、前記1つ以上の遺伝子型を持たないMS患者と比較して、強化されたモニタリングを必要とすることを示す。これらの方法は任意に、患者および/または患者の医療提供者に、強化されたモニタリングの必要性を通知するステップ、ならびに/または必要性を記録するステップを含む。
【0009】
本発明はまた、MS患者に対する治療を通知する方法を提供し、その方法は、患者からの血液試料中のIL−21測定すること、または前述の3つのSNP表現型の存在または非存在について、患者の遺伝子型を決定すること、およびIL−21測定値もしくは遺伝子型に適切な治療計画を選択することを含む。
【0010】
本発明は、治療を必要とすることが知られている患者におけるMSを治療する方法を提供し、その方法は、(a)(i)患者からの血液試料中のIL−21(例えば、試料内のIL−21を測定することによって)、または(ii)SNP rs13151961におけるA/A、SNP rs6822844におけるG/G、およびSNP rs6840978におけるC/Cからなる群から選択される遺伝子型等、上昇したIL−21に関連する一塩基多型(SNP)の1つ以上の遺伝子型の存在または非存在(例えば、患者の遺伝子型を決定することによって)、についての情報を獲得または確認するステップ、(b)患者に、多発性硬化症に対する治療剤を投与するステップ、および(c)任意に、二次性自己免疫疾患の発症について、患者をモニタリングするステップを含む。幾つかの実施形態では、治療の方法は、正常なIL−21レベルを有することが見出され、および/または前述の3つのIL−21SNP遺伝子型を1つも有さない患者に対して使用される。これらの治療方法に使用される抗CD52抗体(例えば、アレムツズマブまたは生物学的に類似した薬剤)、またはその抗原結合部分、およびこれらの治療方法に使用するための薬剤の製造における、これらの抗体または抗原結合部分の使用もまた、本発明によって包含される。これらの治療方法を使用する治療計画が、本発明によってさらに包含される。
【0011】
本発明は、リンパ球除去療法で治療されているか、または治療されようとしている多発性硬化症患者における二次性自己免疫疾患の発生または重症度を低減するための方法を提供し、ここで二次性自己免疫疾患は、リンパ球除去療法での治療後に発生し、IL−21拮抗薬を、例えば、リンパ球除去療法での治療前、治療中、または治療後に投与するステップを含む。これらの方法に使用するためのIL−21拮抗薬(例えば、抗IL−21もしくは抗IL−21受容体抗体、またはその抗原結合部分、あるいは可溶性IL−21受容体)、および方法に使用するための薬剤の製造における、これらのIL−21拮抗薬の使用もまた、本発明によって包含される。
【0012】
本発明は、多発性硬化症患者における、リンパ球除去療法での治療に対する、T細胞の応答性を評価する方法を提供し、その方法は、療法後の患者から獲得されるT細胞内のカスパーゼ−3を測定することを含み、ここで療法を受けていないMS患者からのT細胞と比較した、T細胞内のカスパーゼ−3の増加は、療法に対するT細胞の応答性を示す。測定は、カスパーゼ−3またはカスパーゼ−3をコードする核酸の量または濃度を決定することを伴い得る。
【0013】
本発明は、MS患者に、リンパ球除去の後に、二次性自己免疫疾患を発症するリスクの上昇を通知する方法を提供し、その方法は、MS患者からの血液試料中の、インターロイキン−21(IL−21)についての情報を獲得または確認するステップであって、自己免疫疾患を持たない被検者と比較して上昇したIL−21は、患者が、上昇したIL−21を持たないMS患者と比較して、二次性自己免疫疾患を発症するリスクが高いことを示すステップ、および患者にリスクの上昇またはそれを欠くことを通知するステップを含む。代替的に、方法は、血中IL−21レベルについての情報の代わりに、1つ以上の前述のIL−21遺伝子型の存在または非存在についての情報を獲得または確認することを含む。したがって、本発明はまた、MS患者に、患者のIL−21レベルまたは上述のIL−21遺伝子型の存在または非存在に基づいて、リンパ球除去療法の後の、二次性自己免疫疾患の発症についての、強化されたモニタリングの必要性または必要性の欠如を通知する方法をも提供する。
【0014】
本発明は、リンパ球除去療法の後に、MS患者をモニタリングする計画について、通知する方法を提供し、その方法は、(i)患者からの血液試料中のIL−21、または(ii)SNP rs13151961におけるA/A、SNP rs6822844におけるG/G、およびSNP rs6840978におけるC/Cからなる群から選択される遺伝子型等、上昇したIL−21に関連する一塩基多型(SNP)の1つ以上の遺伝子型の存在または非存在、についての情報を獲得または確認するステップ、および情報に基づき、患者に適切な治療計画を選択するステップを含む。適切なモニタリング計画は、例えば、患者における自己抗体を測定することを含み得る。
【0015】
本発明は、MS治療の際のリスク管理における利点を提供する。例えば、本発明は、多発性硬化症を治療するためのリンパ球除去薬を患者に分配する方法を提供し、その方法は、患者に、薬物での治療後の、二次性自己免疫疾患を発症するリスクの上昇について助言するステップであって、ここでのリスクの上昇は、(i)上昇したIL−21、または(ii)SNP rs13151961におけるA/A、SNP rs6822844におけるG/G、およびSNP rs6840978におけるC/Cからなる群から選択される遺伝子型等、上昇したIL−21に関連する一塩基多型(SNP)の1つ以上の遺伝子型の存在に関連するステップ、および助言の後、または任意に、患者から告知に基づく同意を獲得した後、患者に薬物を提供するステップを含む。
【0016】
本発明はさらに、いかなる既知の炎症性疾患をも持たない被検者と比較して、上昇したインターロイキン−21(IL−21)を有する可能性が高い個人を特定する方法を提供し、その方法は、SNP rs13151961におけるA/A、SNP rs6822844におけるG/G、およびSNP rs6840978におけるC/Cからなる群から選択される遺伝子型等、上昇したIL−21に関連する一塩基多型(SNP)の1つ以上の遺伝子型の存在または非存在を検出するために、患者の遺伝子型を決定するステップを含み、ここで1つ以上の遺伝子型の存在は、上昇したIL−21に関連する。
【0017】
本発明の文脈において、リンパ球除去は、例えば、抗CD52抗体(例えば、モノクローナル抗体)またはその抗原結合部分での治療等、CD52を標的とする治療によって誘発され得る。この抗CD52抗体は、アレムツズマブ、またはCD52への結合をめぐり、アレムツズマブと競合する抗体等の、生物学的に類似した薬剤であり得る。
【0018】
本発明の方法において、IL−21測定は、試料内のIL−21もしくはIL−21をコードする核酸の量または濃度(例えば、検出すること/定量化すること)、または試料内のIL−21産生細胞(例えば、ThI7細胞)中の、IL−21をコードするmRNAの量または濃度を測定することを伴い得る。幾つかの実施形態では、測定は、細胞内IL−21の測定であり、例えば、サイトカイン染色およびフローサイトメトリーを使用する。幾つかの実施形態では、測定は、血清IL−21の測定であり、例えば、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)を使用する。ヒト被検者におけるIL−21レベルを検出するためのELISAキットもまた、本発明によって包含され、それは、抗IL−21抗体もしくはその抗原結合部分、または可溶性IL−21受容体を含む。キットはさらに、ヒト被検者から血液試料を採ることを指示する使用説明書を含み得る。
【0019】
本発明の方法において、IL−21情報(測定または遺伝子型決定を含む)は、MS治療前、治療中、または治療後に獲得され得る。本発明の方法は、あらゆるMS型の背景において使用され得、再発−寛解型多発性硬化症、一次性進行型多発性硬化症、および二次性進行型多発性硬化症を含むが、それらに限定されない。
【0020】
本発明はまた、多発性硬化症を治療するキットをも提供し、リンパ球除去療法剤(例えば、アレムツズマブ等の抗CD52抗体)、および患者または医療提供者に、薬剤での治療後の、二次性自己免疫疾患を発症するリスクの上昇についての潜在性を通知するための使用説明書を含み、このリスクの上昇は、(i)上昇したIL−21、または(ii)SNP rs13151961におけるA/A、SNP rs6822844におけるG/G、およびSNP rs6840978におけるC/Cからなる群から選択される遺伝子型等、上昇したIL−21に関連する一塩基多型(SNP)の1つ以上の遺伝子型の存在によって示されるか、またはそれらに関連する。
【0021】
本発明はさらに、リンパ球除去の後に、二次性自己免疫疾患を発症するリスクが高いMS患者を特定するためのキット提供し、それは抗インターロイキン−21(IL−21)抗体、および抗体の、MS患者からの血液試料中のIL−21への結合を検出するための1つ以上の試薬を含む。本発明はまた、リンパ球除去の後に、二次性自己免疫疾患を発症するリスクが高いMS患者を特定するためのキット提供し、それは個人から獲得される試料中で、SNP rs13151961、SNP rs6822844、およびSNP rs6840978からなる群から選択される、1つ以上の一塩基多型(SNP)の遺伝子型を特定するのに好適な1つ以上の試薬を含む。
【0022】
本発明の他の特徴および利点は、以下の図面および詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1A】健康な対照(HC)、治療されていない患者(Pre)、およびアレムツズマブ後から3ヶ月間隔についての、刺激されていない(Unstim)、またはミエリン塩基性タンパク質(MBP)もしくは甲状腺刺激ホルモン受容体(TSHr)で培養された後のT細胞の前駆体頻度(PF)を示すグラフである。(*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001)
図1B】健康な対照(HC)、治療されていない患者(Pre)、およびアレムツズマブ後から3ヶ月間隔についての、刺激されていない(Unstim)、またはミエリン塩基性タンパク質(MBP)もしくは甲状腺刺激ホルモン受容体(TSHr)で培養された後のT細胞の増殖指数(PI)を示すグラフである。(*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001)
図1C】健康な対照(HC)、治療されていない患者(Pre)、およびアレムツズマブ後から3ヶ月間隔についての、刺激されていない(Unstim)、またはミエリン塩基性タンパク質(MBP)もしくは甲状腺刺激ホルモン受容体(TSHr)で培養された後の、培養液中で10日間後の生存T細胞の合計数を示すグラフである。(*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001)
図1D】健康な対照(HC)、治療されていない患者(Pre)、およびアレムツズマブ後から3ヶ月間隔についての、無刺激に応答して、または培養液中のMBPもしくはTSHrでの培養後に、アポトーシスを起こしたT細胞の割合を示すグラフである。(*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001)
図1E】アレムツズマブ前後の、3ヶ月間隔での、健康な対照および患者についての、受動T細胞アポトーシスを示すプロットおよびグラフである。(*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001)
図1F】アレムツズマブ前後の、3ヶ月間隔での、健康な対照および患者についての、Fas媒介T細胞アポトーシスを示すプロットおよびグラフである。(*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001)
図1G】健康な対照、治療前患者、およびアレムツズマブ後9ヶ月についての、受動CD4+およびCD8+T細胞アポトーシスを示すグラフである。(*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001)
図1H】健康な対照、治療前患者、およびアレムツズマブ後9ヶ月についての、Fas媒介CD4+およびCD8+T細胞アポトーシスを示すグラフである。(*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001)
図2図2A〜2C:エクスビボ直後での、またはMBPもしくはポリクローナル刺激(抗CD3/28抗体)での刺激後のいずれかでの、それぞれ(A)CD3+T細胞、(B)CD14+単球、および(C)CD19+B細胞中の、ベータ−アクチンmRNA発現に相対的な、カスパーゼ3mRNA発現を示すグラフである。(*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001)
図3】アレムツズマブ後の自己免疫が、過剰T細胞アポトーシスに関連することをを示すプロットおよびグラフである。自己免疫のない場合(Ge et al.,Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America101,3041−3046(2004))、または二次性自己免疫のある場合(Ge et al.,2004)の受動的(Un)、Fas媒介、またはMBPもしくはTSHr刺激に応答したT細胞アポトーシスの割合は、別個のプロットで示される。(*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001)
図4図4Aおよび4B:rhIL−21が、インビトロでのT細胞アポトーシスを誘発することを示すプロットおよびグラフである。それらは、それぞれ刺激されていないか、またはポリクローナル刺激を受けた(抗CD3/CD28)(A)CD4+T細胞および(B)CD8+T細胞が、用量依存的様式でrhIL−21に応答してアポトーシスを起こすことを示す。(*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001)
図5図5A〜5D:rhIL−21が、インビトロでのT細胞増殖を誘発することを示すグラフである。図5Aは、rhIL−21に応答した、刺激されていないCD4+およびCD8+T細胞の増殖指数を示すグラフである。図5Bは、rhIL−21に応答した、ポリクローナル刺激を受けた(抗CD3/CD28)CD4+およびCD8+T細胞の増殖指数を示すグラフである。図5Cは、rhIL−21に応答した、刺激されていないCD4+およびCD8+T細胞の前駆体頻度を示すグラフである。図5Dは、rhIL−21に応答した、ポリクローナル刺激を受けたCD4+およびCD8+T細胞の前駆体頻度を示すグラフである(*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001)。
【0024】
図5E:rhIL−21の非存在下での、またはrhIL−21に応答した、異なるチャネルにおける、刺激されていないか、またはポリクローナル刺激を受けた(抗CD3/CD28)CD4+もしくはCD8+細胞の数を示すプロットである。
図6図6A:二次性自己免疫を持つ15人の患者、および二次性自己免疫を持たない15人の患者における、アレムツズマブ治療前ならびに治療後の血清IL−21を示すグラフである。(*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001) 図6B:非自己免疫患者(アレムツズマブ後の自己免疫を有さなかった)および自己免疫患者(アレムツズマブ後の自己免疫を有した)における、治療前の血清IL−21レベル(pg/mL)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、リンパ球除去療法の後の(例えば、アレムツズマブを用いた治療後)、MS患者における、二次性自己免疫の発生が、患者における上昇したIL−21に関連するという我々の発見に基づく。我々は、治療後の二次性自己免疫を後に発症するMS患者において、IL−21が、治療前であっても、標準と比較して(以下の説明を参照のこと)上昇していることを発見している。我々はまた、リンパ球除去療法の後に、IL−21が、それらの同一の患者において、そのIL−21がより小幅に上昇している、二次性自己免疫の兆候を持たないMS患者と比較して、より著しく上昇していることを発見している。したがって、IL−21レベルは、MS患者における、リンパ球除去療法の後の、二次性自己免疫の発生を予測する。我々はまた、SNP rs13151961におけるA/A、SNP rs6822844におけるG/G、およびSNP rs6840978におけるC/Cの一塩基多型(SNP)遺伝子型が、個人における上昇したIL−21に関連することを発見しており、したがってこれらの特定のSNP遺伝子型の存在または非存在についての、MS患者の遺伝子型決定はまた、リンパ球除去の後の、患者における二次性自己免疫を発症するリスクを予測することを助ける。
【0026】
1999年に、我々は、アレムツズマブ(CAMPATH−IH)治療に合併した自己免疫を最初に記載し(Coles et al.,1999)、早期の再発−寛解型多発性硬化症に対して非常に有効な治療として次第に認識されつつある治療薬の、この合併症を観察し続けている(Coles et al.,J Neurology 253,98−108(2006)、Coles et al.,1999および2008)。下述のように我々の研究は、入手可能な患者の一連のコホートを含み、アレムツズマブによって治療されたMS患者のサブセットにおいて発生する、この前例のないヒト自己免疫の「モデル」を理解することを目的としていた。
【0027】
免疫状態は、アレムツズマブへの曝露の後に、根本的に変化する。アレムツズマブによって生じるリンパ球減少環境へと再生するT細胞は、非常に増殖性であり、自己反応性に偏る。しかしながら、これらの細胞は、非常に不安定で、短命である。それらの結果がこれまで直接に対処されてこなかった一方で(King et al.,Cell 117,265−277(2004))、我々は、これらの細胞が、アポトーシスによって迅速に死滅しつつあることを示す。高レベルおよび持続性レベルのT細胞アポトーシスは、循環アレムツズマブの半減期が6日間に過ぎず、血液学的前駆体が減少しないにもかかわらず、単回用量のアレムツズマブが、数年間持続するT細胞リンパ球減少を誘発する理由を説明し得る(Gilleece et al.,Blood 82,807−812(1993))。
【0028】
その背景に照らして、我々は、二次性自己免疫疾患を持つ患者が、自己免疫を持たない患者と比較して、より高い比率のT細胞アポトーシスを有するが、より大規模なT細胞リンパ球減少は有さず、それはこの群における細胞周期の増加を示唆することを示す。これらのT細胞周期の摂動は、有意に高い血清IL−21の発現に関連し、我々はそれが、少なくとも幾つかの場合においては、遺伝的に決定されることを見出している。さらに、リンパ球減少関連型自己免疫に対する感受性は、リンパ球除去前から明白であり、治療前のIL−21レベルは、アレムツズマブへの曝露の数ヶ月〜数年後の自己免疫の発症を、正確に(70%を超える、例えば、83%の陽性適中率、および62%を超える、例えば、72%の陰性適中率)予測する。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、我々は、T細胞増殖および死滅の周期を過剰なまでに駆り立てることによって、IL−21が、T細胞が自己抗原に遭遇し、耐性を破壊する確率的機会を増加させ、故に自己免疫を促進すると考える。
【0029】
要約すると、我々の発見は、ヒトにおける、リンパ球減少誘発型自己免疫の最初の探求を提供し、またアレムツズマブを用いた多発性硬化症の治療という限られた文脈を超えて、リンパ球減少関連型自己免疫を理解するための概念的枠組みを提供する。概念は、第1に治療的リンパ球除去、および第2に、IL−21の遺伝的に制限された過剰産生によって、過剰なT細胞周期および生存率低下の状態がもたらされ、それがヒトにおける自己免疫を促進するということである。これらの発見は、本発明のための基盤を提供する。
【0030】
本発明は、アレムツズマブ治療等のリンパ球除去療法を検討する場合に、MS患者に対応する方法を提供する。例えば、本発明は、標準(すなわち、下述のように対照の被検者におけるIL−21のレベル)と比較して上昇したIL−21を有するMS患者を特定する方法、およびリンパ球除去の後に、二次性自己免疫を発症するリスクが高いMS患者を特定する方法を提供する。これらの方法は、患者からの血液試料中のIL−21(例えば、細胞内または細胞外のタンパク質レベル、RNA転写物レベル、またはIL−21活性レベル;以下の説明を参照のこと)を測定するステップ、およびIL−21値を正常なIL−21値と比較するステップを含む。代替的に、血液試験の代わりにまたは血液試験に加えて、SNP rs13151961におけるA/A、SNP rs6822844におけるG/G、およびSNP rs6840978におけるC/CのSNP遺伝子型の1つ以上の存在または非存在について、患者の遺伝子型を決定することが可能であり、ここでこれらの遺伝子型の1つ、2つ、または3つ全ての存在は、上昇したIL−21に関連する。上述のように、上昇したIL−21は、上昇したIL−21を有さないMS患者と比較して、リンパ球除去の後の、MS患者における二次性自己免疫を発症するリスクの増加に関連する。
【0031】
本発明の方法による患者の特定には、本発明によって企図される幾つかのさらなるステップが続いてもよい。例えば、患者は、患者のIL−21レベルまたは遺伝子型に基づいて、リンパ球除去療法の後の、二次性自己免疫を発症するリスクの上昇、またはかかるリスクの欠如について通知され得る。したがって、本発明は、治療に専念する前の、治療リスクについての個別の助言を可能にするであろう。医療提供者は、二次性自己免疫のリスクを考慮して治療的選択肢を検討し、提案提供することができ、例えば、リンパ球除去療法の前、間、または後にIL−21拮抗薬投与すること、またはリンパ球除去を伴わない治療計画を選択することを含む。
【0032】
医療提供者はまた、リンパ球除去療法を経ることを選択する患者のために、リスク管理計画を検討することができる。例えば、医療提供者は、患者の、二次性自己免疫を発症するリスクの上昇を考慮して、患者に、リンパ球除去療法の後の、二次性自己免疫疾患の発症についての強化されたモニタリングの必要性を通知することができる。医療提供者はまた、リンパ球除去療法の後の、適切なモニタリング計画を提案することもできる。リスクのある患者のための、適切なモニタリング計画は、制限なしに、例えば、1週間、2週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、または1年等の間隔で、リンパ球除去療法の後の、二次性自己免疫についてのより頻繁なモニタリングを含み得る。一部の患者は、リンパ球除去療法の1年よりもはるかに後まで、二次性自己免疫を示さない可能性があるため、モニタリングは、例えば、1年を超えて、2年、3年、4年、5年を超えて、またはそれ以上にわたり、長期間継続される必要があり得る。強化されたモニタリングはまた、例えば、二次性自己免疫の兆候について、専門医によるより徹底的な健康診断(例えば、さらなる血液試験)を伴い得る。さらに、MSを治療するためのリンパ球除去薬を患者に分配する薬剤師または臨床スタッフは、患者が、上昇した血清IL−21に関連する、本明細書で説明される上昇したレベルのIL−21および/または特定のIL−21遺伝子型を有する場合には、患者に、薬物使用の後に二次性自己免疫を発症するリスクの上昇について助言することを求められ得る。薬剤師または臨床スタッフはまた、患者に薬物を分配する前に、患者から告知に基づく同意獲得することをも求められ得る。
多発性硬化症患者
本発明の方法および組成物は、例えば、再発−寛解型MS、一次性進行型MS、および二次性進行型MS等、あらゆる形態のMSの背景において、使用され得る。本発明の文脈におけるMS患者とは、例えば、症状の経歴、ならびに試験等磁気共鳴画像装置(MRI)、脊椎穿刺、誘発電位試験、および血液試料の研究所分析の活用による神経学的検査によって、MSの形態を有すると診断されている患者である。
【0033】
散在性硬化症としても知られる、多発性硬化症(「MS」)はまた、免疫系が中枢神経系を攻撃し、脱髄をもたらすような自己免疫状態でもある(Compston and Coles,2008)。MSは、神経線維を包み込み電気的に絶縁する、ミエリン鞘と呼ばれる脂肪層を破壊する。ほとんど全ての神経症状が疾患と共に現れ得、しばしば身体および認知障害にまで進行する(Compston and Coles,2008)。MSは複数の形態をとり得る。新たな症状は、離散した発作(再発型)として発生し得るか、または時間と共に徐々に蓄積され得る(進行型)(Lublin et al.,Neurology 46(4),907−11(1996))。各発作の間に、症状は完全に消失し得るが(寛解)、永続的な神経学的問題が、特に疾患が進行すると共にしばしば発生する(Lublin et al.,1996)。進行の幾つかのサブタイプまたはパターンが説明されており、それらは、予後ならびに治療的決定のために重要である。1996年に、United States National Multiple Sclerosis Societyは、4つのサブタイプの定義を標準化した:再発−寛解型、二次性進行型、一次性進行型、および再発進行型(Lublin et al.,1996)。
【0034】
再発−寛解型サブタイプは、悪化または再発と呼ばれる予測不可能な急性発作、続いて疾患活動性の新たな兆候がない数ヶ月〜数年の比較的平穏な(寛解)期間によって特徴付けられる。これは、MSを有するほとんどの個人の初期の経過を説明する(Lublin et al.,1996)。
【0035】
二次性進行型MSは、再発−寛解型経過と共に始まるが、後に各急性発作の間に、まれな再発および小規模の寛解が現れ得るとしても、いかなる寛解の一定期間をも有さずに、進行型神経減少へと発展する(Lublin et al.,1996)。
【0036】
一次性進行型サブタイプは、それらの最初のMS症状が現れた後の明白な寛解を有さない、身体障害の段階的であるが着実な進行によって特徴付けられる(Miller et al.,Lancet Neurol6(10)、903−12(2007))。それは、発現以降、寛解および改善を有さないか、わずかな小規模の寛解ならびに改善を有する、身体障害の進行によって特徴付けられる(Lublin et al.,1996)。一次性進行型サブタイプについての発現の年齢は、通常他のサブタイプに比べて高めである(Miller et al.,2007))。
【0037】
再発進行型MSは、いくらかの回復が後に続く可能性があるか、またはその可能性がない急性発作を有する着実な神経減少によって特徴付けられる。これは、本明細書で上述される全てのサブタイプのうち最もまれである(Lublin et al.,1996)。
【0038】
時にMSの境界型と呼ばれる、非標準的な行動を有するケースもまた記載されている(Fontaine,Rev.Neurol.(Paris)157(8−9 Pt 2):929−34(2001))。これらの形態には、デビック病、バロー同心円性硬化症、シルダー汎発性硬化症、およびMarburg型多発性硬化症が含まれる(Capello et al.,Neurol.Sci.25Suppl4:S361−3(2004);Hainfellner et al.,J.Neurol.Neurosurg.Psychiatr.55(12):1194−6(1992))。
多発性硬化症患者におけるリンパ球除去
本明細書で使用されるとき、「リンパ球除去」とは、循環リンパ球、例えば、T細胞および/またはB細胞を減少させることによる、免疫抑制の一種であり、リンパ球減少をもたらす。持続的リンパ球除去は、多発性硬化症を治療するために、例えば、自己骨髄移植(BMT)または全身リンパ節照射が使用されるときに見られる。例えば、Cox et al.,Eur.J.Immunol.35、3332−3342(2005)を参照のこと。例えば、リンパ球除去は、サイモグロブリン、シクロホスファミド、および全身照射を組み合わせた使用によって達成され得る。MS患者におけるリンパ球除去はまた、幾つかの薬物治療によっても達成され得る。例えば、ヒト化抗CD52モノクローナル抗体である、CAMPATH−1H(アレムツズマブ)は、MS患者を治療するためのリンパ球除去療法に使用されている。CAMPATH−lH−誘発型リンパ球減少は、臨床的かつ放射線学的に、中枢神経系炎症を効果的に低減させることが示されている(Coles et al.,Ann.Neurol.46,296−304(1999)、Coles et al.,2008)。
【0039】
他の薬剤もまた、MS患者を治療するためのリンパ球除去療法に使用され得る。これらの薬剤は、リンパ球細胞死を引き起こすか、またはリンパ球機能を阻害する薬剤であり得る。これらには、制限なしに、(1)アレムツズマブに生物学的に類似する薬剤等の、CD52含有細胞を標的とする薬剤、すなわち、アレムツズマブと同一のまたは異なるエピトープに結合するか、CD52への結合をめぐり、アレムツズマブと競合する他の抗CD52抗体(例えば、キメラ、ヒト化、またはヒト抗体)、およびCD52のリガンドへの結合をめぐり、細胞表面CD52と競合する可溶性CD52ポリペプチド、(2)リンパ球上の細胞表面分子を標的とする、抗CD4抗体、抗CD20抗体(例えば、リツキシマブ)、抗TCR抗体、および抗インテグリン抗体(例えば、ナタリズマブ)等の、ペプチド、タンパク質、ならびに抗体等の生体分子(例えば、キメラ、ヒト化、またはヒト抗体)、(3)リンパ球へ特異的にまたは非特異的に送達される、細胞毒(例えば、アポトーシス含有薬剤、シクロホスファミド、アルキル化剤、およびDNA挿入剤)、および(4)前述の抗体の抗原結合部分が含まれる。抗体には、制限なしに、モノクローナル抗体、二機能性抗体、オリゴクローナル抗体、およびポリクローナル抗体が含まれ得る。
【0040】
本明細書で使用されるとき、「抗原結合部分」という用語は、その部分の由来となる完全な抗体として、特異的に同一の抗原に結合する能力を保持する抗体の1つ以上の断片に言及する。「抗原結合部分」の例としては、制限なしに、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、Fdフラグメント、Fvフラグメント、dAbフラグメント、分離した相補性決定領域(CDR)、scFv、および二重特異性抗が挙げられる。本発明に有用な抗体およびその抗原結合部分は、当業者に周知のあらゆる方法によって作製され得る。
【0041】
以上のリンパ球除去療法のどれもがリンパ球減少を引き起こし得、一部の患者においては、リンパ球減少が二次性自己免疫をもたらす。
MS患者における二次性自己免疫
本明細書で自己免疫は、それが第1の(「一次性」)疾患、例えば、「一次性」自己免疫疾患の発現の後に生じるとき、「二次性自己免疫」と呼ばれる。二次性自己免疫は時に、例えば、リンパ球除去療法に続く、リンパ球減少を有するか、有したことのあるMS患者において生じる。一部の個人においては、二次性自己免疫は、リンパ球除去療法の後間もなく生じる(例えば、アレムツズマブを用いた治療)。他の個人においては、二次性自己免疫は、リンパ球除去療法の数ヶ月または数年後まで生じない可能性があり、それらの個人の一部においては、彼らが二次性免疫を発症する頃には、かなりのリンパ球回復(合計リンパ球数)が生じ得、彼らはもはやリンパ球減少症ではなくなる可能性がある。
【0042】
リンパ球減少MS患者において生じる二次性自己免疫は、MS以外のあらゆるタイプの自己免疫状態であり得、それは、甲状腺自己免疫(例えば、グレーブス病)、免疫性血小板減少(ITP)、グッドパスチャー病、自己免疫性好中球減少、自己免疫性溶血性貧血、および自己免疫性リンパ球減少を含むが、それらに限定されない。これらの自己免疫疾患を診断およびモニタリングする技術は、当業者に周知であり、それは症状の評価および血液分析等の健康診断を含む。本発明は、あらゆる既知の方法の使用を企図する。例えば、患者の体液(例えば、血液)における自己抗体レベルは、自己免疫の兆候を検出する手段として、決定され得る。特に、抗核抗体、抗平滑筋抗体、および抗ミトコンドリア抗体が測定され得る。抗核抗体が検出される場合、抗二本鎖DNA抗体、抗リボ核タンパク質抗体、および抗La抗体を測定するために、追加的検定が行われ得る。自己免疫性甲状腺疾患を検出するために、抗甲状腺ペルオキシダーゼ(TPO)および抗甲状腺刺激ホルモン(TSH)受容体抗体が測定され得、抗TPOまたは抗TSH受容体抗体が検出される場合、遊離T3、遊離T4およびTSHレベルを測定することによって、甲状腺機能が影響を受けているかどうかを測定することができる。自己免疫血小板減少検出するために、抗血小板抗体が測定され得、血液血小板レベルの測定は、抗血小板抗体の存在が、血小板数の減少を引き起こしているかどうかを決定する機能を果たし得る。
IL−21の測定
本発明の方法において、IL−21は、幾つかの技術によって測定され得る。IL−21は、ガンマc関連サイトカインファミリーの一員であり、TおよびB細胞増殖、ならびにナチュラルキラー(NK)細胞の細胞毒性を促進するのに強力な活性を有する。IL−21は、主に活性CD4+T細胞(例えば、ThI7細胞)によって発現され、TヘルパータイプI(ThI)免疫応答に重要である(Weiss et al.,Expert Opin Biol.Ther.7,1705−1721(2007)、Sivakumar et al.,Immunology112,177−182(2004))。ヒトIL−21遺伝子は、162アミノ酸残基のポリペプチド前駆体および133アミノ酸残基(約15kD)の十分に進行した成熟タンパク質をコードし、遺伝子は、ヒト染色体4q26−27に配置される(Sivakumar et al.,2004)。IL−21(IL−2IR)に対する受容体は、休止抹消B細胞上、活性抹消血液単核細胞上、およびヒトリンパ節の胚中心内で見出さている(Marleau et al.,J.Leukocyte Biol.78、575−584(2005))。
【0043】
IL−21を測定する方法は、当業者に周知である。本発明の幾つかの実施形態にしたがって、体液試料(例えば、血液、血清、血漿、尿、唾液、または脳脊髄液)が、患者から獲得され、試料内のIL−21レベルが、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)等の免疫検定を含むが、それに限定されない、あらゆる検定に好適なタンパク質検出によって測定される。ヒトIL−21を測定するための商用のELISAキットは、例えば、KOMABIOTECH(Seoul,Korea)、Bender MedSystems(Burlingame,CA)、およびeBioscience(San Diego,CA)から入手可能である。
【0044】
代替的に、患者から獲得されるIL−21産生細胞(例えば、Th17細胞)内のIL−21転写物レベルが、ノーザンブロット解析および定量ポリメラーゼ連鎖反応(Q−PCR)によって測定され得る。Th17細胞を単離する方法は、当分野で周知であり、単離は、市販のキット、例えば、Miltenyi Biotec(Auburn,CA)、eBioscience(San Diego,CA)からのキットを使用することによって行われ得る。幾つかの実施形態では、IL−21レベルは、サイトカイン染色およびフローサイトメトリーによって測定され、フローサイトメトリーにおいて、検出可能部分に結合された抗IL−21抗体は、患者からのIL−21産生細胞内のIL−21の細胞内レベルを検出するために使用される。IL−21はまた、例えば、CFSE(カルボキシフルオセインサクシニミジルエステル)を使用して、例えば、IL−21およびIL−15の組み合わせに対するT細胞の増殖性応答測定することによって、生物検定における活性の観点から測定され得る(Zeng et al.,Curr.Protoc.Immunol.78:6.30.1−6.30.8(2007))。IL−21を測定する別の方法は、フローサイトメトリーに基づく分析を使用する、脾臓CD8(+)T細胞内の、Stat3のIL−21誘発型チロシンリン酸化に基づく(Zeng et al.,2007)。当業者であれば、IL−21を測定するための他の好適な手段を容易に理解するであろう。
【0045】
本発明の方法において、患者が上昇した(異常に高い)IL−21を有するかどうかを決定するための参照(または指数)値は、同一のもしくは異なる時間に行われる同一の検定を使用して獲得される、対照被検者のIL−21の値または対照被検者群のIL−21の平均値である。対照被検者は、正常なまたは健康な被検者であり、この文脈において、それは自己免疫疾患を持たない(自己免疫疾患のいかなる検出可能症状をも持たない)個人を含む、いかなる進行中の既知の炎症性疾患をも持たない個人である。幾つかの実施形態では、対照被検者は、リンパ球減少でない。約10%、20%、30%、40%、50%、100%、2倍、3倍4倍、5倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、100倍、またはそれ以上のIL−21レベルの上昇が、有意な上昇であると考えられ得る。ある種の統計分析は、試験試料中のIL−21レベルが、対照レベルから有意に異なるかどうかを決定するために適用され得る。かかる統計分析は、当業者に周知であり、制限なしに、パラメトリック(例えば、両側スチューデントのt検定)またはノンパラメトリック(例えば、ウィルコクソン−マン−ホイットニーのU検定)検定を含んでもよい。
IL−21SNP遺伝子型の検出
本発明の幾つかの方法において、患者が、リンパ球減少を有する一方で、上昇したIL−21を有する傾向があり(すなわち、有するリスクがある、または有する可能性がある)、故に二次性自己免疫疾患を発症するリスクがあるかどうかを予測するために、遺伝子型決定が使用される。「遺伝子型決定」は、生物検定の使用により個人の遺伝子を決定するプロセスに言及する。遺伝子型決定の方法は、当業者に周知であり、制限なしに、PCR、DNA塩基配列決定、アレル特異的オリゴ(ASO)プローブ、およびDNAマイクロアレイまたはビーズに対するハイブリダイゼーションを含む。遺伝子型決定は部分的であり得、すなわち、個人の遺伝子型の小さな断片のみが決定される。本発明の文脈においては、ある種のSNPのみが、検出される必要がある。SNPは、ゲノムの対応部分における単一のヌクレオチド−A、T、C、またはGが、種の員の間または個人における対合染色体の間で異なる場合に発生するDNA配列変異である。既知のヒトSNPは、National Center for Biotechnology Information(NCBI)でホストされる、パブリックドメインアーカイブSingle Nucleotide Polymorphism Database(dbSNP)内における、指定リファレンスSNP(refSNP or rs)識別番号である。
【0046】
本発明者らは、rs13151961A/A、rs6822844G/G、およびrs6840978C/Cの小規模のSNP遺伝子型が、これらの遺伝子型を有さない個人と比較して、高レベルの血清IL−21のに有意に関連することを発見している。したがって、これらのSNP表現型のうちの1つ以上を有するMS患者は、これらの遺伝子型を有さないMS患者と比較して、リンパ球除去後に、二次性自己免疫を発症する感受性増大を有する。
IL−21情報を獲得する時期
MS患者のIL−21(IL−21レベルまたはIL−21関連SNP遺伝子型)についての情報を獲得することは、患者のための治療および治療後モニタリング計画を選択するのに有用である。MS治療の前に情報が獲得される場合、患者は、リンパ球除去療法の後に二次性自己免疫疾患を発症する相対リスクについて、通知され得、それに応じて治療決定が下され得る。患者はまた、彼が「リスクがある」と分類される場合、強化された治療後モニタリング、例えば、専門医による、より頻繁でより徹底的な検査の必要性について通知され得る。したがって、IL−21情報は、MS治療におけるリスク管理(医師、薬剤師、および患者による)を改善する。
【0047】
MS治療の間または後にIL−21情報を獲得することはまた、二次性自己免疫疾患の発症および治療をモニタリングするのに有用である。以上で言及され、以下でさらに記載されるように、我々は、リンパ球除去療法の後に二次性自己免疫を発症することになるMS患者が、二次性自己免疫を発症しないMS患者と比較して、彼らの血清IL−21のはるかに大幅な上昇を有することを発見している。MS患者の後者の群は、リンパ球除去の後に、僅かに高いのみのIL−21を産生する。したがって、リンパ球除去療法の後に、IL−21を測定することによって、治療の数ヶ月〜数年後まで発生しない可能性のある二次性自己免疫のリスクを予測することができる。
二次性自己免疫の治療
MS患者において生じる二次性自己免疫疾患は、疾患のタイプに基づいて治療され得る。本発明の幾つかの実施形態では、二次性自己免疫は、有効用量のIL−21拮抗薬を使用することによって治療され得る。IL−21拮抗薬は、IL−21活性を阻害する治療剤、例えば、IL−21とIL−21Rとの間の相互作用を阻害する薬剤であり得る。「有効用量」は、二次性自己免疫疾患の症状が緩和または予防されるような、患者におけるIL−21活性を阻害するのに十分な阻害剤の量に言及する。IL−21拮抗薬は、例えば、ヒトIL−21もしくはIL−2IRに対するキメラ、ヒト化、またはヒトモノクローナル抗体、あるいは可溶性IL−2IRタンパク質であり得る。また例えば、米国特許第7,410,780号および米国特許出願公開第20080241098号を参照されたく、それらの教示全体は、参照により本明細書に組み込まれる。IL−21拮抗薬を含有する薬学的組成物は、当業者に既知の方法に従って作製され得る。IL−21拮抗薬を含有する薬学的組成物は、当分野で既知の好適な方法、例えば、静脈注射、筋肉注射、または皮下注射を使用して患者に投与され得る。
MS患者を治療および試験するためのキット
本発明は、多発性硬化症を治療するためのキットを提供する。本発明のキットは、特に、リンパ球除去薬(例えば、アレムツズマブ)と、患者または医療提供者に、この薬物の禁忌、例えば、この薬物での治療後に二次性自己免疫疾患を発症するリスクの上昇についての潜在性を通知するための使用説明書と、を含み得る。リスクの上昇は、(i)上昇したIL−21、または(ii)SNP rs13151961におけるA/A、SNP rs6822844におけるG/G、およびSNP rs6840978におけるC/Cからなる群から選択される一塩基多型(SNP)の1つ以上の遺伝子型の存在に関連し得るか、またはそれによって示され得る。
【0048】
他の実施形態では、本発明は、MS患者の血清IL−21を検出するため、および/またはリンパ球除去の後に二次性自己免疫疾患を発症するリスクが高いMS患者を特定するためのキットを提供する。かかるキットは、抗IL−21抗体、またはその抗原結合部分、または可溶性IL−21受容体と、任意に、患者から血液試料を採取することを使用者に指示する使用説明書と、任意に、MS患者からの血液試料中で、本抗体、部分、または可溶性IL−21受容体のIL−21への結合を検出するための1つ以上の試薬と、を含み得る。かかるキットは、MS患者等の患者に医学的診断を行うために、適切な規制当局によって認証または承認されているだろう。
【0049】
さらに他の実施形態では、本発明は、リンパ球除去の後に、二次性自己免疫疾患を発症するリスクが高いMS患者を特定するためのキットを提供する。キットは、MS患者から獲得された試料中で、SNP rs13151961、SNP rs6822844、およびSNP rs6840978からなる群から選択される1つ以上のSNP遺伝子型の存在または非存在を特定するために好適な1つ以上の試薬と、MS患者から試料を採取することを使用者に指示する使用説明書と、を含み得る。
MS治療に対するT細胞の応答性の評価
本発明は、MS患者において、リンパ球除去療法での治療に対するT細胞の応答性を評価するための方法を提供する。方法は、治療後に患者から獲得されたT細胞内のカスパーゼ−3の測定を伴う。治療を受けていないMS患者からのT細胞と比較して、上記T細胞中のカスパーゼ−3の増加(例えば、カスパーゼ−3タンパク質、RNAの転写、および/または活性レベル)は、治療された患者のT細胞がその治療に応答したことを示す。これらの方法は、治療されていないMSを持つ個人からのT細胞がアポトーシス抵抗性であり、この抵抗性が、カスパーゼ−3の低発現に関連するという我々の発見に基づく。しかし、リンパ球除去療法の後、カスパーゼ−3の発現は、T細胞内で有意に増加し、健康な個人において見られるレベルに達する。
【0050】
T細胞内のカスパーゼ−3を測定する技術は、当該技術分野において既知である。例えば、当該技術分野において既知である技術を使用して、T細胞からの細胞抽出物を獲得することができ、例えば、ELISAによって、カスパーゼ−3タンパク質レベルを測定することができる。ヒトカスパーゼ−3を測定するための商業的なELISAキットは、例えば、Bender MedSystems(Burlingame,CA)、EMDChemicals,Inc.(San Diego,CA)、およびR&DSystems,Inc.(Minneapolis,MN)から入手可能である。代替的に、カスパーゼ−3転写レベルは、T細胞内で、例えば、ノーザンブロット分析または定量PCRによって測定することができる。また、カスパーゼ−3は、例えば、そのプロテアーゼ活性を測定することによって、生物学的検定で活性の観点から測定することもできる。カスパーゼ−3の活性を測定するための商業的キットは、例えば、Roche Applied Science(Indianapolis,IN)、およびInvitrogen(Carlsbad,CA)から入手可能である。
【0051】
別途定義されない限り、本明細書において使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野に精通するものによって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。例示的な方法および材料を以下に記載するが、本明細書に記載されるものと類似または同等の方法および材料も、本発明の実践または試験において使用することができる。本明細書で言及される全ての刊行物および他の参照文献は、参照することによりその全体が組み込まれる。矛盾する場合は、定義を含み、本明細書が優先される。本明細書に多くの文献が引用されるが、この引用は、これらの文献のうちのいずれかが、当該技術分野における一般常識の一部を形成するという承認を構成するものではない。本明細書および実施形態を通じて、「含む(comprise)」という単語、または「含む(comprises)」もしくは「含む(comprising)」等の変形は、記載される整数または整数の群の包含を意味するが、いずれの他の整数または整数の群の除外も意味するものではないことが理解されるであろう。材料、方法、および実施例は、例示であるに過ぎず、限定的であることは意図されていない。
【0052】
以下の実施例は、本発明の方法および材料を例示することが意図される。当業者には明白である、当該技術分野において通常遭遇する記載された条件およびパラメータの好適な修正および適合は、本発明の精神および範囲内である。
実施例
以下の実施例では、全ての患者が再発寛解型多発性硬化症を有し、アレムツズマブが5日間、12〜24mg/日の静脈内注入によって与えられ、その後12ヶ月で再治療された、CAMMS−223およびCAMMS−224(REC 02/315および03/078)の2つの臨床治験のうちの1つの参加者であった。患者および対照は、リサーチ目的(LREC 02/263)の静脈切開に同意し、全て、血液採取の時点で少なくとも1ヶ月間、ステロイド類を含む他の疾患修飾薬に曝露されていなかった。
【0053】
リンパ球増殖およびアポトーシスのデータは、65人の患者および21人の健康な対照(男性7人、平均年齢34歳)からの新鮮なエクスビボ細胞の横断的研究によって生成された。これは、二次性自己免疫の病理発生におけるT細胞周期についての仮説を生み、T細胞アポトーシスを確実に分析し得る最も早い時点として選択された、アレムツズマブ治療の9ヶ月後に入手可能な試料について試験した。この時点で入手可能な29個の試料のうち、自己免疫なしの10個(男性3人、平均年齢38歳)と比較して、10個が自己免疫の我々の研究定義に合った(男性1人、平均年齢36歳)。自己免疫とは、臨床疾患を伴わない、新規自己免疫疾患の発症(自己抗体の有無にかかわらず)、または自己抗体の持続適な有意な力価(少なくとも3ヶ月離れた少なくとも2回の機会に存在した)として定義された。「自己免疫なし」とは、本研究において、アレムツズマブ後少なくとも18ヶ月間の、自己免疫疾患および自己抗体の非存在として定義された。自己免疫を有する10人の患者のうち、3人が自己抗体のみ(抗核抗体)を有した。次に、血清IL−21を、自己免疫を持つ15人の無作為に選択された患者(そのうち5人が上記の通り研究された)(男性3人、平均年齢34歳;12人が甲状腺自己免疫を持ち、1人がグッドパスチャー病を持ち、1人がITPを持ち、1人が抗核抗体のみを持った)、ならびに自己免疫を持たない15人の無作為に選択された患者(そのうち6人が上記の通り研究された)、(男性5人、平均年齢31歳)、ならびに19人の健康な対照(男性7人、平均年齢33歳)において順次測定した。
【0054】
73人の被験者を、遺伝子分析について研究した。これらのうち、23人が「自己免疫なし」の定義にあい、27人が、アレムツズマブ後に二次性自己免疫を有した(6人が自己抗体のみを持ち(4人が抗核抗体を持ち、2人が抗平滑筋抗体を持つ);18人が甲状腺自己免疫を持ち、2人がITPを持ち、1人がグッドパスチャー病を持った)。23人の残りの被験者は、一過性の自己抗体産生、および/またはアレムツズマブでの治療からの時間が不十分であることに基づき、分類することができなかった。
【0055】
以下の実施例に記載される全ての統計分析について、データは、WindowsのSPSS 12.0.1を使用して分析した。正常性の評価後、パラメトリック(スチューデントのt検定)またはノンパラメトリック(ウィルコクソン−マン−ホイットニー)検定を行った。本文を通じてP値が記載されるが、p<0.05の値が統計的に有意であると見なされ、示されている場合、ボンフェローニ補正で修正した。
【0056】
実施例1:アレムツズマブはT細胞のリンパ球減少を誘発する
アレムツズマブ単回投与により、CD4+およびCD8+Tリンパ球が、1ヶ月目にベースライン値のそれぞれ5.6%および6.8%に、そして12ヶ月目にそれぞれ30.3%および40.8%(データ示さず)に減少された。
【0057】
実施例2:治療されていない多発性硬化症を持つ患者からのT細胞は細胞死に抵抗性である
本実施例で行われる種々の検定には、入手可能性に従って、異なる長期横断的試料を使用した。測定するアレムツズマブ後のリンパ球細胞周期を測定する前置きとして、多発性硬化症を持つ治療されていない患者と正常な対照(図1Aおよび1B)との間で、刺激されていないか、またはミエリン塩基性タンパク質(MBP)もしくは甲状腺刺激ホルモン受容体(TSHr)で培養中の、T細胞の増殖応答について調査した。
A.末梢単核細胞培養物
末梢血単核細胞(PBMC)を、Ficoll−Paque密度勾配(Amersham Pharmacia Biotech)での遠心分離によって、ヘパリン添加血液から単離した。全PBMCを、直ちに1%ペニシリン、1%ストレプトマイシン、および10%ウシ胎仔血清(Sigma S5394)を含有する培養培地(RPMI)中に懸濁させ、10/mLの生存細胞の濃度に調製した(トリパンブルー排除によって測定)。受動的細胞死を誘発するために、PBMCを、増殖因子を付加することなく、培地のみの中で、72時間インキュベートした。PBMCを、抗CD3 mAbプレコートプレート(1μg/mL−BDPharmingen)中、可溶性抗CD28(1μg/mL:ご好意によりM.Frewin(University of Oxford)により供与)とともに48時間培養し、その後、活性化抗ヒトFas(クローンCHl 1、1μg/mL−Upstate Biotechnology、Lake Placid,NY)とともに18時間インキュベーションして、Fas媒介アポトーシスが誘発された。
B.アポトーシスの検出
アポトーシスT細胞は、CD3(Serotec MCA463APC)、CD4(Serotec MCA1267APC)、およびCD8(Serotec MCA1226APC)に対してアロフィコシアニン共役マウス抗ヒトモノクローナル抗体、FITC共役アネキシン−V、およびPropidium Iodide(BDPharmingen)で細胞を染色することによって検出した。蛍光性は、フローサイトメトリー(FACSCALIBUR:Becton Dickinson、Mountain View,CA)によって検出した。前方および側方散乱に基づき、生存およびアポトーシスリンパ球(減少したFScおよび増加したSScを有する)を含むように広いリンパ球ゲートが引き出された。そのゲート内で少なくとも15,000の事象を収集し、WinMDI 2.8ソフトウェアを使用して分析した。早期アポトーシス細胞は、アネキシンVPIとして、および後期アポトーシス細胞もしくは壊死細胞は、アネキシンVPIとして定義した(Aubry et al.,Cytometry 37、197−204(1999))。アポトーシス細胞死は、Q−VD−OPh(RnDSystems OPH001)での汎カスパーゼ阻害によって遮断される総細胞死(アネキシンVPI+アネキシンVPI)として定義した。
C.増殖検定
PBMCに細胞分裂追跡用色素、CFSE
(カルボキシフルオセイン二酢酸サクシニミジルエステル)(Lyons et al.Methods Cell Biol.63,375−398(2001))を負荷し、50μg/mLのミエリン塩基性タンパク質(MBP:RDI−TRK8M79/LYO)、またはマトリックス結合タンパク質に結合させた1μg/mLの甲状腺刺激ホルモン受容体細胞外ドメイン(TSHr:ご好意によりM.Ludgate(Cardiff University)により供与)とともに培養した。細胞中での10日間のCFSE染色後、特異的表面マーカー(CD4、CD8)で特定し、フローサイトメトリーによって分析した。前駆体頻度(親集団を離れ、少なくとも2回の細胞分裂を受けたリンパ球の割合として定義される)、および増殖指数(算定された親細胞の数で割った全ての生成における細胞の合計として定義される)を、Modfit LT 3.0(Verity Software)を使用して計算した。生存細胞の絶対数は、培養物中に含まれた個定数の不活性ビーズ(BDCALIBRITE、BDBiosciences)との比較によって測定した。
D.結果
多発性硬化症を持つ治療されていない患者と正常な対照(図1Aおよび1B)との間で、刺激されていないか、またはミエリン塩基性タンパク質(MBP)もしくは甲状腺刺激ホルモン受容体(TSHr)での培養物中のT細胞の増殖応答には、差異がなかった。逆に、多発性硬化症を持つ治療されていない患者からのT細胞の生存は、対照のものよりも≧4倍高く(p<0.005、図1C)、T細胞死の減少が、治療されていない多発性硬化症の特徴であることを示唆している。これは、治療されていない患者からのT細胞が、健康な対照と比較して、受動的およびFas媒介性の両方のアポトーシスに抵抗性であることを実証することによって、確認された(受動的:0.3%対6.7%、p=0.0016、およびFas媒介:2.9%対15.5%、p=0.0018、図1Eおよび1F)。
【0058】
実施例3:アレムツズマブ後に再生するT細胞は高度に増殖性であり、自己反応性に偏り、アポトーシスを受けやすい
実施例2に記載した検定を使用して、アレムツズマブ後、自己抗原に応答するT細胞の割合(前駆体頻度)および増殖の程度(増殖指数)が、治療されていない患者および健康な対照と比較して有意に増加したことが見出された。例えば、3ヶ月時点には、刺激されていないT細胞の増殖は、治療されていない患者のものの>6.5倍であり、MBPおよびTSHr刺激に応答した増殖は、それぞれ900%および700%増加した(全てp<0.01:図1Aおよび1B)。T細胞のアポトーシスも、アレムツズマブ後有意に増加した。抗原刺激に応答して、6ヶ月時点でアポトーシスを受けたT細胞の割合は、ベースラインより10倍大きく(図1D、全ての抗原についてp<0.001)、培養の最後により少ない生存T細胞をもたらした(図1C)。受動的およびFas媒介アポトーシスもまた、アレムツズマブ後、健康な対照群で観察されたものの少なくとも2倍の比率で増加した(受動的:対照の6.7%と比較して、6、9、および12ヶ月時点で、それぞれ24.5%、22.2%、および17.9%、全てp<0.001;Fas媒介:対照の15.5%と比較して、6、9、および12ヶ月時点で、それぞれ37.8%、35.8%、および29.9%、全てp<0.01;図1Eおよび1F)。アレムツズマブ後のリンパ球アポトーシスの増加は、CD4+およびCD8+亜集団の両方で見られ(図IGおよびIH)、アレムツズマブ治療後少なくとも18ヶ月持続した(データ示さず)。
【0059】
実施例4:多発性硬化症を持つ治療されていない患者からのT細胞および低発現カスパーゼ3
A.mRNA分析
PBMCを、エクスビボ直後、またはMBPもしくはポリクローナル刺激での培養後、MACS(登録商標)LS Columnに装填された1x10個の細胞につき、20μLの磁気ビーズ(Miltenyi Biotec;CD19 Microbead、CD3 Microbead、CD14 Microbead)を使用して、陽に分離した。時期的に保持された細胞を溶出し、洗浄し、RNAlater (商標)中−70℃で保管した(細胞純度は一貫して95〜98%、データ示さず).
Fas、FasL、Bcl−2、Bcl−Xl、Bad、Bax、Bid、Bim、サバイビン、c−FLIP、およびカスパーゼ3、8、および9の発現は、半定量的RT−PCRによって決定した。RNEASY Mini Kit(QIAgen)を使用してRNAlater(商標)中に保管された細胞からmRNAを抽出し、PRO−STAR First Strand RT−PCR Kit(Stratagene)を使用してcDNAに逆転写した。PCRプライマーおよびプローブは、PRIMER EXPRESS(PE Biosystems、Foster City,CA,USA)を使用して設計し、Oswel DNAサービスから購入した。mRNA配列情報は、GenBankから獲得された。定量的リアルタイムPCRは、ROXを含有するPCR Mastermix(Eurogentec RT−QP2X−03)を使用して、ABI Prism 7900HT Sequence Detection System(Perkin Elmer)上で行った。プライマーおよびプローブ配列は:Bcl−2順方向:5’−CCT GTG GAT GAC TGA GTA CCT GAA−3’(配列番号1)、逆方向5’−CAC CTA CCC AGC CTC CGT TA−3’(配列番号2)、JOE標識プローブ5’−CGG CAC CTG CAC ACC TGG ATC−3’(配列番号3);BcI−Xl順方向5’−TTC AGT CGG AAA TGA CCA GAC A−3’(配列番号4)、逆方向5’−GAG GAT GTG GTG GAG CAG AGA−3’(配列番号5)、FAM標識プローブ5’−TGA CCA TCC ACT CTA CCC TCC CAC CC−3’(配列番号6);Fas順方向5’−AAA AGC ATT TTG AGC AGG AGA GTA TT−3’(配列番号7)、逆方向5’−GGC CAT TAA GAT GAG CAC CAA−3’(配列番号8)、JOE標識プローブ5’−CTA GAG CTC TGC CAC CTC TCC ATT−3’(配列番号9);FasL順方向5’−AAG AAA GTG GCC CAT TTA ACA G−3’(配列番号10)、逆方向5’−AGA AAG CAG GAC AAT TCC ATA GGT−3’(配列番号11)、FAM標識プローブ5’−CAA CTC AAG GTC CAT GCC TCT GG−3’(配列番号12);サバイビン順方向5’−CTG CCT GGC AGC CCT TT−3’(配列番号13)、逆方向5’−CTC CAA GAA GGG CCA GTT CTT−3’(配列番号14)、FAM標識プローブ5’−TCA AGG ACC ACC GCA TCT CTA CAT T−3’(配列番号15);c−FLIP順方向5’−GTG GAG ACC CAC CTG CTC−3’(配列番号16)、逆方向5’−GGA CAC ATC AGA TTT ATC CAA ATC C−3’(配列番号17)、FAM標識プローブ5’−CTG CCA TCA GCA CTC TAT AGT CCG AAA CAA−3’(配列番号18);カスパーゼ8順方向5’−AGG AGG AGA TGG AAA GGG AAC TT−3’(配列番号19)、逆方向5’−ACC TCA ATT CTG ATC TGC TCA CTT CT−3’(配列番号20)、JOE標識プローブ5’−CTC CCT ACA GGG TCA TGC TCT ATC AGA TTT CAG−3’(配列番号21);カスパーゼ3順方向5’−AAG ATC ATA CAT GGA AGC GAA TCA−3’(配列番号22)、逆方向5’−CGA GAT GTC ATT CCA GTG CTT TTA−3’(配列番号23)、FAM標識プローブ5’−CTG GAA TAT CCC TGG ACA ACA GTT ATA AA−3’(配列番号24);カスパーゼ9順方向5’−TGC GAA CTA ACA GGC AAG CA−3’(配列番号25)、逆方向5’−GAA CCT CTG GTT TGC GAA TCT C−3’(配列番号26)、FAM標識プローブ5’−CAA AGT TGT CGA AGC CAA CCC TAG AAA ACC TTA−3’(配列番号27);Bad順方向5’ CAG TGA CCT TCG CTC CAC ATC 3’(配列番号28)、逆方向5’−ACG GAT CCT CTT TTT GCA TAG−3’(配列番号29)、JOE標識プローブ5’−ACT CCA CCC GTT CCC ACT GCC C−3’(配列番号30);Bax順方向5’−TTT CTG ACG GCA ACT TCA ACT−3’(配列番号31)、逆方向5’−GGT GCA CAG GGC CTT GAG−3’(配列番号32)、JOE標識プローブ5’−TGT CGC CCT TTT CTA CTT TGC CAG CA−3’(配列番号33);Bid順方向5’−GCT GTA TAG CTG CTT CCA GTG TAG−3’(配列番号34)、逆方向5’−GCT ATC TTC CAG CCT GTC TTC TCT−3’(配列番号35)、JOE標識プローブ5’−AGC CCT GGC ATG TCA ACA GCG TTC−3’(配列番号36)、およびBim順方向5’−ACC ACA AGG ATT TCT CAT GAT ACC−3’(配列番号37)、逆方向5’−CCA TAT GAC AAA ATG CTC AAG GAA−3’(配列番号38)、FAM標識プローブ5’−TAG CCA CAG CCA CCT CTC TCC CT−3’(配列番号39)であった。
B.結果
治療されていない多発性硬化症患者からの、両方のアポトーシス経路に共通する実行型カスパーゼである、カスパーゼ3のT細胞のmRNA発現が、対照と比較して減少し、これは、刺激されていないPBMCおよびMBP刺激PBMCでは有意であったが(多重比較の補正後、それぞれ78%および87%、ともにp<0.05)、ポリクローナル刺激培養物については有意ではなかった(図2A)。CD14+細胞において同様の傾向が見られたが(しかしCD19+細胞では見られなかった)、この差異は多重比較の補正後は存続しなかった(図2B)。アレムツズマブ後、カスパーゼ3の発現は、増加するT細胞および単球内で有意に増加し、健康な対照に見られるレベルに達した(p<0.05、図2Aおよび2B)。試験した他の全ての遺伝子の発現(方法に列挙)は、アレムツズマブ後変化しなかった。
【0060】
したがって、本研究は、治療されていない多発性硬化症を持つ個人からのT細胞が、アポトーシスに抵抗性であり、この抵抗が、カスパーゼ3の低発現に関連することを示している。外因性および内因性のアポトーシス経路の収束点でのこの実行型カスパーゼの位置と一致して、我々の患者における、Fas媒介および受動的の両方のアポトーシスに対するT細胞の抵抗性が実証された。カスパーゼ3の低発現は、I型糖尿病(Vendrame et al.,Eur J Endocrinol 152、119−125(2005))、橋本甲状腺炎、および多腺性自己免疫症候群2型(Vendrame et al.,J Clin Endocrinol Metabjc(2006))を含む、幾つかの自己免疫疾患において記載されている。しかしながら、これは、多発性硬化症においては新たな知見である。
実施例5:アレムツズマブ後の二次性自己免疫は過剰なT細胞アポトーシスに関連する
リンパ球増殖およびアポトーシスの増加を治療に対する一般的応答として実証後、アレムツズマブ後、少なくとも3ヶ月を超えて持続する、新規自己免疫疾患の発症および/または正常な範囲を超える持続性の自己抗体として定義される、アレムツズマブ後のT細胞アポトーシスと自己免疫の発症との間の関係を試験した。この定義を用いて、自己免疫を持つ患者(n=10)に由来するT細胞は、同じ時点に研究された非自己免疫患者(n=10)からのT細胞と比較すると、治療後9ヶ月で、全ての培養条件で、有意により高いレベルのアポトーシス細胞死を示した(刺激されていない4.7%対14.4%、Fas媒介18.2%対32.1%、MBP 7.6%対17.6%、およびTSHr 9.5%対25.5%、全ての比較についてp<0.01;図3)。非病原性の抗体産生を除外した自己免疫疾患の発症という、自己免疫のより厳しい定義を適用した場合、自己免疫群の数を7に低減したにもかかわらず、差異が残った(刺激されていない、4.7%対15.4%;Fas媒介、18.2%対31.7%;MBP、7.6%対20.2%;TSHr、9.5%対13.4%;全ての比較についてP<0.02)。
【0061】
2つの群間で、T細胞再構成の比率における差異はなく(例えば、自己免疫を持つものおよび持たないものにおいて、それぞれ、6ヶ月で、CD4数が0.15×10/L対0.19×10/L、またCD8数が0.11×10/L対0.11×10/L)、自己免疫群のT細胞周期の増加を示唆している(データ示さず)。
【0062】
実施例6:IL−21はT細胞増殖およびアポトーシスを誘発する
A.IL−21検定およびスパイク
血清IL−21を、EBIOSCIENCEキット(88−7216−86)を使用して使用説明書の通り測定した。プレートを、マイクロプレートリーダー(モデル680、BioRad)を使用して、450nmで読み取った。刺激されていないPBMCおよびポリクローナル刺激PBMC(1μg/mLのプレート結合抗CD3および1μg/mLの可溶性抗CD28)を、5pg/mLおよび20pg/mLのrhIL−21(EBIOSCIENCE 14−8219)でスパイクした。CD4+およびCD8+のアポトーシスおよび増殖を、上述の通り評価した。
B.結果
ヒトT細胞のアポトーシスおよび増殖に対する外因性IL−21の影響をインビトロで試験した。健康な対照からのPBMCをrhIL−21でスパイクすることにより、刺激されていないおよびポリクローナル刺激のCD4+(図4A)およびCD8+(図4B)T細胞のアポトーシス死における、用量依存的な増加がもたらされた(全ての条件についてp<0.05)。刺激されていない細胞をrhIL−21でスパイクすることにより、CD4+およびCD8+の両方のT細胞において、小さいが有意な増殖がもたらされ、増殖指数(CD4+およびCD8+:それぞれ1.07対1.25、p=0.017;および1.09対1.32、p=0.017、図5A)、および前駆体頻度(CD4+ 0.007対0.014、p=0.016;CD8+ 0.007対0.015、p=0.026、図5C)の両方が増加した。IL−21は、ポリクローナル刺激に応答して増殖するCD4+もしくはCD8+T細胞の割合に影響を及ぼさず(図5D)、それらがすでに最大限に刺激されていたことを示唆している。しかしながら、IL−21は、CD8+の細胞増殖の程度において有意な増加をもたらした(増殖指数11.59対19.39、p=0.012、図5B)。
【0063】
実施例7:IL−21はアレムツズマブ後の二次性自己免疫の発症を予測する
実施例6の全ての時点において、血清IL−21の濃度は、非自己免疫群と比較して二次性自己免疫を発症した患者において有意に高かった(全ての比較についてp<0.05、図6A)。その後にアレムツズマブ摂取に進んだ84人の患者からの、全ての治療前血清試料について調査した。これらの患者との少なくとも2年の経過観察後、彼らを「自己免疫」群(n=35:32人の患者が甲状腺疾患、1人がITP、1人がグッドパスチャー病、そして1人が脱毛症を持つ)、または「非自己免疫」群(n=49:一過性(6ヶ月を超えて持続しない)のみの自己抗体を持つか、または自己抗体を持たない患者)として分類した。これらの治療前血清は、対照よりも有意に高いIL−21の平均濃度を有したが、これは、完全に、二次性自己免疫の発症に進んだ患者の高IL−21レベルによって説明された。自己免疫の発症に進んだもの(464pg/mL)と進まなかったもの(229pg/mL、p=0.0002)との間には、高度に有意な差異があった(図6B)。
【0064】
誘発されたリンパ球減少と自己免疫との間の関連が、動物モデルにおいて観察されている。リンパ球減少条件下では、残りのT細胞は、免疫系を再構成するために、広範な代償性増殖を経る。このプロセスは、恒常性増殖と称され、TCR自己ペプチドMHC複合体を介した刺激に依存し(Ge et al.,P.N.A.S. 101,3041−3046(2004)、Ge et al.,P.N.A.S. 98,1728−1733(2001)、Kassiotis et al.,J Exp.Med. 197,1007−1016(2003))、本研究において見られるような自己抗原の認識の増加に偏る集団をもたらす。加えて、迅速に増殖するT細胞は、同時刺激への依存の減少、未処置細胞よりも低用量の抗原に応答する能力、および再刺激時の炎症性サイトカインの迅速な分泌を含む、メモリー細胞の表現型および機能的特徴を獲得し、したがって、自己寛容の破綻をさらに促進する(Cho et al.,J Exp.Med.192,549−556(2000)、Goldrath et al.J Exp.Med.192,557−564(2000)、Murali−Krishna et al.,J Immunol 165,1733−1737(2000)、Wu et al.,Nat Med.10,87−92(2004))。しかしながら、これらの変化にもかかわらず、自己免疫は、リンパ球減少の必然的な結果ではない。実際、我々の患者の場合のように、ほとんどのリンパ球減少被験者は自己免疫を発症せず、さらなる「補助因子」が必要であることを示唆している。
【0065】
我々は、本研究において始めてヒトにおいて、IL−21の過剰産生が、アレムツズマブ等のリンパ球除去薬剤を用いた、そうでなければ成功であった多発性硬化症の治療後の、二次性自己免疫の発症に必要とされる「第2の打撃」であることを実証した。本研究は、自己免疫が、リンパ球除去患者に生じ、治療の前でさえも検出可能である遺伝的に影響されるより高いレベルのIL−21によって駆り立てられる、より多くのT細胞のアポトーシスおよび細胞周期を伴うことを示している。治療前でも、二次性自己免疫の発症に進んだ患者は、非自己免疫群より2倍を超えて高いレベルの血清IL−21を有し、血清IL−21が、アレムツズマブ治療の数ヶ月〜数年後に自己免疫を発症するリスクに対する生物マーカーとしての役割を果たし得ることを示唆している。いずれの理論にも拘束されることを望むものではないが、我々は、T細胞の増殖および細胞死の周期を過度に駆り立てることにより、IL−21が、自己反応性T細胞を生成する確立、および故に、自己免疫を増加すると考える。したがって、サイトカインによって誘発される異常なT細胞周期は、リンパ球減少に関連する自己免疫の一般原則である。
【0066】
実施例8:IL−21遺伝子型はIL−21発現に影響を及ぼし、自己免疫に関係する
A.IL−21の遺伝子型の決定
染色体4q27上の4つの遺伝子、KIAA1109−ADAD1−IL2−IL21を含有する強い連鎖不均衡の領域にある、合計で、4つのSNP、rs13151961、rs6822844、rs4833837、およびrs6840978を試験した。4つの全てのSNPは、Applied Biosystems Assay−On−Demand(AoD)産物として入手可能であった。SNPの遺伝子型の決定は、Applied Biosystems TaqMan手順を使用して、製造業者の推奨する条件に従って行った。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は、Applied Biosystemsの384ウェル9700 Viper PCR機で行い、その後遺伝子型を、SDS Software Version 2.1を使用して、7900 High Throughput Sequence Detection System(SDS)上で求めた。各個人の遺伝子型を二重に決定した。多発性硬化症に関連する遺伝因子:HLA−DRBl *1501、rs2104286(IL2RA)、およびrs6897932(IL7R)について、全ての個人の遺伝子型をさらに決定した。
B.結果
遺伝的変異とIL−21産生との間に関連があるかどうかを決定するために、IL−21遺伝子をコードする染色体4q27上の連鎖不均衡(LD)のブロック内にある4つの一塩基多型(SNP)について、73人の被験者の遺伝子型を決定し、彼らのアレムツズマブ前血清IL−21濃度を測定した。4つの全てのSNPについての軽微な対立遺伝子頻度は、公開されているデータと一致していた:rs13151961G(14.5%)、rs6822844T(14.6%)、rs4833837G(38.0%)、およびrs6840978T(18.1%)(Glas et al,Am.J.Gastroenterol.104,1737−1744(2009))。4つのSNPのうちの3つ(rs13151961 A/A、rs6822844 G/G、およびrs6840978 C/C)における遺伝子型が、有意に高いレベルの血清IL−21(p値:それぞれ0.0076、0.0098、および0.0067)に関連することが見出された。rs4833837における遺伝子型は、IL−21産生に影響を及ぼさなかった。rs4833837と他の3つのSNPとの間のLDは低く(r<0.15)、したがって、ハプロタイプrs13151961(A)−rs6822844(G)−rs6840978(C)上のSNPが、IL−21産生の増加に関連している可能性が最も高い。HLA−DRBl *1501、rs2104286(IL2RA)、およびrs6897932(IL7R)についての遺伝子型頻度は、他の多発性硬化症を持つ任意抽出患者について公開されているデータと相違しなかった(International Multiple Sclerosis Genetics Consortium(IMSGC),Lancet Neurol.7,567−569(2008)、Yeo et al.,Ann Neurol 61,228−236(2007))。
【0067】
最後に、遺伝子型が、アレムツズマブ後の自己免疫に対する易罹患性に影響を及ぼすかどうかを扱うために、できるだけ多くの患者を、アレムツズマブ後に自己免疫を発症したもの(27人の被験者)と、疑いなく発症しなかったもの(23人の被験者)に分類した。23人の患者は、一過性の自己抗体産生および/またはアレムツズマブに曝露後の時間が不十分であることから、分類できなかった。また、より高い血清IL−21濃度に関連することが示された遺伝子型(rs13151961 A/A、rs6822844 G/G、rs6840978 C/C)が、アレムツズマブ後の自己免疫に関連することも見出された。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図1G
図1H
図2
図3
図4
図5
図6
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]