(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第二工程が前記工程2Aであって、前記正孔輸送層形成用溶液に含まれる有機溶剤が、その構成成分として、前記陽極バッファ層用組成物に含まれる有機溶剤の構成成分の少なくとも1つを含んでいることを特徴とする請求項7に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
前記第二工程が前記工程2Bであって、記発光層形成用溶液に含まれる有機溶剤が、その構成成分として、前記陽極バッファ層用組成物に含まれる有機溶剤の構成成分の少なくとも1つを含んでいることを特徴とする請求項7に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0034】
[陽極バッファ層用組成物]
本発明の陽極バッファ層用組成物は、ホスト材料である特定の高分子化合物(以下「ホスト用高分子化合物」ともいう。)、およびドーパントである電子受容性化合物を含む。
【0035】
<ホスト用高分子化合物>
(特定構成単位)
前記ホスト用高分子化合物は、下記式(1)または下記式(2)で表される構成単位(以下「特定構成単位」ともいう。)を有する。
【0037】
〔式(1)、(2)のそれぞれにおいて、
複数個あるR
aは、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜10のアルキル基を表し、少なくとも1つのR
aは炭素数1〜10のアルキル基を表し、
複数個あるR
bは、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜10のアルキル基を表し、
複数個あるR
cは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、アミノ基、炭素数1〜10のアルキル基または炭素数1〜10のアルコキシ基を表し、同一のフェニル基の中の隣接する炭素原子にそれぞれ結合しているR
cは、互いに結合して縮合環を形成してもよく、
Xは、単結合、−O−、−S−、−SO−、−SO
2−、−NR
1−(ただし、R
1は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基またはフェニル基を表す。)、−CO−、−COO−または炭素数1〜20の2価の有機基(ただし、該有機基は、−O−、−S−、−SO−、−SO
2−、−NR
2−(ただし、R
2は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基またはフェニル基を表す。)、−CO−および−COO−からなる群より選択される原子または基を含んでいてもよい。)を表し、
Y−X−は、
【0039】
(R
3は、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表す。)
で表される基を表し、
pは、0、1または2を表し、好ましくは0または1を表す。〕
前記式(1)〜(2)のそれぞれにおける少なくとも1つのR
aが炭素数1〜10のアルキル基であることにより、後述する有機EL素子の製造において、陽極バッファ層形成用溶液の溶媒として有機溶剤を使用でき、有機溶剤を溶媒とする発光層形成材料溶液の塗布によっても溶解しない陽極バッファ層を形成でき(以下、有機溶剤を溶媒とする発光層形成材料溶液の塗布によっても陽極バッファ層が溶解しないことを「陽極バッファ層の不溶化」ともいう。)、しかも電力効率が高く寿命が長い有機EL素子を製造することができる。
【0040】
前記式(1)および(2)におけるR
aを有するベンゼン環においては、N(窒素原子)に対してオルト位にある少なくとも1つのR
aがアルキル基であることが好ましい。
【0041】
R
bを有する各ベンゼン環においても、N(窒素原子)に対してオルト位にある少なくとも1つのR
bがアルキル基であることが好ましい。
【0042】
このように、N(窒素原子)に対してオルト位にアルキル基が存在すると、前記特定構成単位中のトリフェニルアミン骨格のねじれが大きくなり、陽極バッファ層の不溶化がより促進される、と推測される。
【0043】
したがって、前記式(1)で表される特定構成単位における
【0045】
で表される部分構造の好ましい例としては、以下の構造が挙げられ、
【0047】
〔ただし、Rは炭素数1〜10のアルキル基を表す。以下も同様である。〕
特に好ましい例としては、以下の構造が挙げられる。
【0049】
同様に、前記式(2)で表される特定構成単位における
【0051】
で表される部分構造の好ましい例としては、以下の構造が挙げられ、
【0053】
特に好ましい例としては、以下の構造が挙げられる。
【0055】
前記R
aにおけるアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ターシャリーブチル基、アミル基、ヘキシル基等が挙げられ、特定構成単位を誘導する単量体の合成容易性の観点からは、メチル基、エチル基、イソプロピル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0056】
前記R
bにおけるアルキル基としては、上述したR
aにおけるアルキル基の具体例が挙げられ、特定構成単位を誘導する単量体の合成容易性の観点からは、メチル基、エチル基、イソプロピル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0057】
前記ホスト用高分子化合物の、有機溶剤への溶解性および溶液の均質化の観点からは、1つのベンセン環当り少なくとも1つ(例:1つ)のR
cがアルキル基またはアルコキシ基であることが好ましい。
【0058】
前記R
cにおけるアルキル基としては、上述したR
aにおけるアルキル基の具体例が挙げられ、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ターシャリーブチル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0059】
前記R
cにおけるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
【0060】
前記R
cにおけるアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、およびターシャルブトキシ基等が挙げられメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基が好ましく、メトキシ基が特に好ましい。前記縮合環としては、ナフチレン基等が挙げられる。
【0061】
Xは、単結合、−O−、−S−、−SO−、−SO
2−、−NR
1−(ただし、R
1は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基またはフェニル基を表す。)、−CO−、−COO−または炭素数1〜20の2価の有機基(ただし、該有機基は、−O−、−S−、−SO−、−SO
2−、−NR
2−(ただし、R
2は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基またはフェニル基を表す。)、−CO−および−COO−からなる群より選択される原子または基を含んでいてもよい。)を表す。これらの中でも、単結合、−CO−、−COO−および炭素数1〜20の2価の有機基(ただし、該有機基は、−O−、−CO−および−COO−からなる群より選択される原子または基を含んでいてもよい。)が好ましい。
【0062】
前記Y−X−で表される構造としては、Y−(Xは単結合である。)、Y−O−、Y−COO−および下記式(S1)〜(S3)のいずれかで表される基(下記式(S1)、(S3)中、nは、0〜5の整数を示す。)が好ましい。
【0064】
Yを誘導する重合性官能基yは、ビニル基、イソプロペニル基などのCH
2=CR
3−で表される基(R
3は、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表す。)である。これらのうちで、ビニル基が好ましい。
【0065】
Y−X−で表される構造を誘導する重合性官能基を含む部分構造としては、具体的には、下記式(A1)〜(A13)で表される部分構造が好ましい。これらのうちで、下記式(A1)、(A5)、(A8)、(A12)で表される部分構造は、特定構成単位を誘導する単量体に容易に導入できるためさらに好ましい。
【0067】
(特定構成単位の具体例)
前記特定構成単位の具体例としては、以下の式(B−1)〜(B−21)のいずれかで表される構成単位が挙げられる。
【0070】
これらの中では、式(B-11)〜(B−21)のいずれかで表される構成単位が好ましい。
【0071】
前記特定構成単位のより好ましい具体例としては、以下の式(B−22)〜(B−32)のいずれかで表される構成単位が挙げられる。
【0073】
これらの中では、式(B−22)、(B−26)、(B−27)、(B−30)のいずれかで表される構成単位が特に好ましい。
【0074】
前記ホスト用高分子化合物には、1種の前記特定構成単位が含まれていてもよく、2種以上の前記特定構成単位が含まれていてもよい。
【0075】
(前記特定構成単位を誘導する単量体の製造方法)
前記特定構成単位を誘導する単量体は、従来公知の方法、たとえば以下の方法により製造することができる。
【0076】
<式(1)で表される構成単位を誘導する単量体の製法の例>
下図のように、ビフェニルジアミン誘導体(m−1)と、ハロゲン化アリール誘導体(m−3)とを、溶媒(たとえば、トルエン、キシレン)中で、通常のパラジウム触媒を用いてカップリング反応させることにより、(m−4)および(m−4′)を誘導する。
【0078】
次に、下図のように、(m−4)および(m−4′)と、重合性置換基を有したハロゲン化アリール(m−6)とを、通常のパラジウム触媒を用いてカップリング反応させることにより、式(1)で表される構成単位を誘導する単量体の1つである(m−7)が(m−7′)と共に製造される。
【0080】
また下図のように、フェニルジアミン誘導体(m−2)と、ハロゲン化アリール誘導体(m−3)とを、溶媒(たとえば、トルエン、キシレン)中で、通常のパラジウム触媒を用いてカップリング反応させることにより、(m−5)を誘導し、(m−5)と重合性置換基を有するハロゲン化アリール(m−6)とを、通常のパラジウム触媒を用いてカップリング反応させることにより、式(1)で表される構成単位を誘導する単量体の1つである(m−8)が製造される。
【0082】
<式(2)で表される構成単位を誘導する単量体の製法の例>
下図のように、(m−9)とジアリールアミン(m−10)とを、溶媒(たとえば、トルエン、キシレン)中で、通常のパラジウム触媒を用いてカップリング反応させることにより、式(2)で表される構成単位を誘導する単量体の1つである(m−11)が製造される。
【0084】
また、(m−9)と(m−10)との1:1カップリング体である(m−12)と、ハロゲンとのカップリング性を有した反応基Q(−B(OH)
2、ハロゲン原子等)を有するトリフェニルアミン化合物(m−13)とを反応させることにより、式(2)で表される構成単位を誘導する単量体の1つである(m−14)が製造される。
【0086】
なお、式(m−1)〜(m−14)中のR
a、R
b、R
cおよびXは、それぞれ式(1)、(2)中のR
a、R
b、R
cおよびXと同義であり、yは式(1)、(2)の中のYを誘導する重合性置換基である。
【0087】
(他の構成単位)
前記ホスト用高分子化合物は、前記特定構成単位のみからなる単独重合体であってもよく前記特定構成単位以外の構成単位(以下「他の構成単位」ともいう。)を含む共重合体であってもよい。
【0088】
前記他の構成単位の具体例としては、下記式(3)で表される構成単位および下記式(4)で表される構成単位が挙げられる。
【0090】
〔式(3)、(4)のそれぞれにおいて、
複数個あるR
cは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、アミノ基、炭素数1〜10のアルキル基または炭素数1〜10のアルコキシ基を表し、同一のフェニル基の中の隣接する炭素原子にそれぞれ結合しているR
cは、互いに結合して縮合環を形成してもよく、
Xは、単結合、−O−、−S−、−SO−、−SO
2−、−NR
1−(ただし、R
1は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基またはフェニル基を表す。)、−CO−、−COO−または炭素数1〜20の2価の有機基(ただし、該有機基は、−O−、−S−、−SO−、−SO
2−、−NR
2−(ただし、R
2は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基またはフェニル基を表す。)、−CO−および−COO−からなる群より選択される原子または基を含んでいてもよい。)を表し、
Y−X−は、
【0092】
(R
3は、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表す。)
で表される基を表し、
pは、0、1または2を表し、好ましくは0または1を表す。〕
式(3)におけるR
cの具体例および好ましい態様としては、前記式(1)および(2)におけるR
cの具体例および好ましい態様が挙げられる。
【0093】
式(3)におけるXの具体例および好ましい態様としては、それぞれ、前記式(1)および(2)におけるXの具体例および好ましい態様が挙げられる。
【0094】
式(3)におけるY−X−の具体例および好ましい態様としては、それぞれ、前記式(1)および(2)におけるY−X−の具体例および好ましい態様が挙げられ、Yを誘導する重合性官能基yとしてはビニル基が好ましい。
【0095】
同様に、式(4)におけるR
cの具体例および好ましい態様としては、前記式(1)および(2)におけるR
cの具体例および好ましい態様が挙げられる。
【0096】
式(4)におけるXの具体例および好ましい態様としては、それぞれ、前記式(1)および(2)におけるXの具体例および好ましい態様が挙げられる。
【0097】
式(4)におけるY−X−の具体例および好ましい態様としては、それぞれ、前記式(1)および(2)におけるY−X−の具体例および好ましい態様が挙げられ、Yを誘導する重合性官能基yとしてはビニル基が好ましい。
【0098】
前記
他の構成単位の具体例としては、以下の構成単位が挙げられる。
【0100】
前記
他の構成単位の好ましい具体例としては、以下の構成単位が挙げられる。
【0102】
(ホスト用高分子化合物)
前記ホスト用高分子化合物は、前記特定構成単位のみからなる単独重合体であってもよく、前記他の構成単位をさらに含む共重合体であってもよい。この共重合体は、ランダム共重合体であってもよくブロック共重合体であってもよい。
【0103】
前記ホスト用高分子化合物は、陽極バッファ層の不溶化の観点から、前記特定構成単位を好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上含む。
【0104】
前記ホスト用高分子化合物の、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)による重量平均分子量は、陽極バッファ層の不溶化の観点から、通常20,000以上、より好ましくは50,000以上、さらに好ましくは100,000以上である。その上限値は、ホスト用高分子化合物自体の溶解性の観点から、1,000,000程度である。この重量平均分子量の値は、後述する実施例における測定方法によって測定された場合の値である。
【0105】
前記ホスト用高分子化合物は、その原料として、前記特定構成単位を誘導する単量体および、必要に応じて、前記他の構成単位を誘導する単量体を用いる点を除けば、重合体製造における常法により製造することができる。その重合方法は、ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合、付加重合のいずれでもよいが、ラジカル重合が好ましい。
【0106】
<ホスト用低分子化合物>
本発明の陽極バッファ層用組成物は、ホスト用低分子化合物を含んでいても良い。このホスト用低分子化合物の具体例としては、下記式(5)で表される化合物および下記式(6)で表される化合物が挙げられる。
【0108】
〔式(5)、(6)のそれぞれにおいて、
複数個あるR
cは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、アミノ基、炭素数1〜10のアルキル基または炭素数1〜10のアルコキシ基を表し、同一のフェニル基の隣接する炭素原子にそれぞれ結合しているR
cは、互いに結合して縮合環を形成してもよく、
pは、0、1または2を表し、好ましくは0または1を表す。〕
式(5)におけるR
cの具体例および好ましい態様としては、前記式(3)におけるR
cの具体例および好ましい態様が挙げられる。
【0109】
同様に、式(6)におけるR
cの具体例および好ましい態様としては、前記式(4)におけるR
cの具体例および好ましい態様が挙げられる。
【0110】
前記ホスト用低分子化合物としては、たとえば以下の化合物が挙げられる。
【0112】
<電子受容性化合物>
前記電子受容性化合物(ドーパント)としては、公知の化合物、たとえば、N,N'−ジシアノ−2,3,5,6−テトラフルオロ−1,4−キノンジイミン(F4DCNQI)、N,N'−ジシアノ−2,5−ジクロロ−1,4−キノンジイミン(C12DCNQI)、N,N'−ジシアノ−2,5−ジクロロ−3,6−ジフルオロ−1,4−キノンジイミン(C12F2DCNQI)、N,N'−ジシアノ−2,3,5,6,7,8−ヘキサフルオロ−1,4−ナフトキノンジイミン(F6DCNNOI)、1,4,5,8−テトラヒドロ−1,4,5,8−テトラチア−2,3,6,7−テトラシアノアントラキノン(CN4TTAQ)、7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)、
2,3,5,6−テトラフルオロ−7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(F4TCNQ)、2,5−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)−7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン、2,5−ジフルオロ−7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン、ビス(テトラブチルアンモニウム)テトラシアノジフェノキノジメタニド、2,5−ジメチル−7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン、2−フルオロ−7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン、11,11,12,12−テトラシアノナフト−2,6−キノジメタンなどが挙げられる。
【0113】
これらの中でも、有機溶剤(たとえば、トルエン)への溶解性が高く、均一性の高い陽極バッファ層を形成できる点で、TCNQおよびF4TCNQが好ましい。
【0114】
<陽極バッファ層用組成物>
本発明の陽極バッファ層用組成物は、前記ホスト用高分子化合物および電子受容性化合物を含んでいる。
【0115】
前記電子受容性化合物は、前記ホスト用高分子化合物および任意成分である前記ホスト用低分子化合物の合計100質量部に対して、通常0.1〜20質量部、好ましくは0.5〜10質量部、さらに好ましくは1〜5質量部含まれる。含有量が上記範囲にあると、陽極バッファ層は十分な電荷注入能を発揮する。一方、含有量が上記範囲よりも過大であると、電子受容性化合物の結晶化などにより有機EL素子の劣化を引き起こす場合がある。
【0116】
前記ホスト用高分子化合物100質量部に対する前記ホスト用低分子化合物の割合は、好ましくは3〜20質量部、さらに好ましくは5〜10質量部である。
【0117】
前記組成物は、有機溶剤をさらに含んでいても良い。
【0118】
有機溶剤を含む前記組成物は、陽極バッファ層形成用塗布液として使用することができる。
【0119】
前記有機溶剤としては、種々の有機溶媒を用いることができ、たとえばトルエン、キシレン、アニソール等の芳香族系溶媒やクロロホルムやジクロロエタン等のハロゲン化アルキル溶媒などが挙げられる。前記有機溶剤は、2種以上の成分(たとえば、トルエンおよびキシレン)から構成されていてもよい。
【0120】
前記組成物中の前記有機溶剤の含量は、形成しようとする陽極バッファ層の膜厚や製膜の条件等を考慮して適宜設定することができるが、目安としては、前記組成物中の固形分含量(有機溶剤を除く成分の合計量)が好ましくは0.1〜4質量%、さらに好ましくは0.4〜2質量%となるように調製される。
【0121】
[陽極バッファ層用高分子化合物]
本発明の陽極バッファ層用高分子化合物は、上述した特定構成単位、および重合性官能基を有する電子受容性化合物から誘導される構成単位(以下「電子受容性構成単位」ともいう。)を有する。
【0122】
前記陽極バッファ層用高分子化合物を用いて陽極バッファ層を形成すると、有機EL素子の発光寿命がより一層延びる。
【0123】
(特定構成単位)
前記特定構成単位の詳細(構造、好ましい態様、製造方法等)は、上述のとおりである。
【0124】
(電子受容性構成単位)
前記電子受容性構成単位は、重合性官能基を有する電子受容性化合物から誘導される。
【0125】
この重合性官能基を有する電子受容性化合物としては、上述のように列挙した電子受容性化合物が有する水素原子の1つ(もしくはフッ素原子、またはシアノ基)を重合性官能基で置換してなる化合物が挙げられる。
【0126】
この重合性置換基としては、上述の式(A1)〜(A13)で表される重合性置換基が挙げられる。
【0127】
(他の構成単位)
前記陽極バッファ層用高分子化合物は、上述の「他の構成単位」を含んでいてもよい。
【0128】
(陽極バッファ層用高分子化合物)
前記陽極バッファ層用高分子化合物は、前記電子受容性構成単位を0.1〜20モル%、好ましくは0.5〜10モル%、さらに好ましくは1〜5モル%含む(ただし、前記陽極バッファ層用高分子化合物の全量が100モル%である)。含有量が上記範囲にあると、陽極バッファ層は十分な電荷注入能を発揮する。
【0129】
また、陽極バッファ層の不溶化の観点から、残部のうち、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上は前記特定構成単位である(ただし、残部の量(すなわち、前記陽極バッファ層用高分子化合物中の前記電子受容性構成単位以外の構成単位の全量)が100モル%である)。
【0130】
前記陽極バッファ層用高分子化合物の、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)による重量平均分子量は、陽極バッファ層の不溶化の観点から、通常20,000以上、より好ましくは50,000以上、さらに好ましくは100,000以上である。その上限値は、ホスト用高分子化合物自体の溶解性の観点から、1,000,000程度である。この重量平均分子量の値は、後述する実施例における測定方法によって測定された場合の値である。
【0131】
前記陽極バッファ層用高分子化合物は、その原料として、前記特定構成単位を誘導する単量体および前記の重合性官能基を有する電子受容性化合物、ならびに必要に応じて、前記他の構成単位を誘導する単量体を用いる点を除けば、重合体製造における常法により製造することができる。その重合方法は、ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合、付加重合のいずれでもよいが、ラジカル重合が好ましい。
【0132】
(陽極バッファ層用高分子化合物を含む組成物)
本発明の陽極バッファ層用高分子化合物は、他の成分との組成物の形態であってもよい。
【0133】
この他の成分の例としては、上述したホスト用低分子化合物および溶媒が挙げられる。
【0134】
前記陽極バッファ層用高分子化合物100質量部に対する前記ホスト用低分子化合物の割合は、好ましくは3〜20質量部、さらに好ましくは5〜10質量部である。
【0135】
また前記組成物中の前記有機溶剤の含量は、形成しようとする陽極バッファ層の膜厚や製膜の条件等を考慮して適宜設定することができるが、目安としては、前記組成物中の固形分含量(有機溶剤を除く成分の合計量)が好ましくは0.1〜4質量%、さらに好ましくは0.4〜2質量%となるように調製される。
【0136】
[有機EL素子およびその製造方法]
本発明の有機EL素子は、陽極、陽極バッファ層、発光層および陰極がこの順序で積層されてなり、該陽極バッファ層は、該陽極上に本発明の陽極バッファ層用組成物または本発明の陽極バッファ層用高分子化合物を塗布し、次いで加熱して形成される。
【0137】
以下、本発明の有機EL素子の構成を説明する。
【0138】
<1.素子構成>
図1は、本発明の有機EL素子構成の一例を示す断面図であり、透明基板1上に設けた陽極2と陰極5の間に陽極バッファ層3、発光層4を順次設けたものである。
【0139】
本発明の有機EL素子の構成は
図1の例に限定されず、陽極と陰極の間に順次、1)陽極バッファ層/正孔輸送層/発光層、2)陽極バッファ層/発光層/電子輸送層、3)陽極バッファ層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層、4)陽極バッファ層/正孔輸送性化合物、発光性化合物および電子輸送性化合物を含む層、5)陽極バッファ層/正孔輸送性化合物および発光性化合物を含む層、6)陽極バッファ層/発光性化合物および電子輸送性化合物を含む層、7)陽極バッファ層/正孔電子輸送性化合物および発光性化合物を含む層、8)陽極バッファ層/発光層/正孔ブロック層/電子輸送層を設けた素子構成などを挙げることができる。また、
図1に示した発光層は1層であるが、発光層を2層以上有していてもよい。
【0140】
なお、本明細書中においては、電子輸送性化合物、正孔輸送性化合物、発光性化合物の全てあるいは一種類以上からなる化合物および層を、それぞれ「有機EL化合物」、「有機EL化合物層」ともいう。
【0141】
<2.陽極>
前記陽極としては、−5〜80℃の温度範囲で面抵抗が好ましくは1000オーム□以下、より好ましくは100オーム□以下である物質を用いることができる。
【0142】
有機EL素子の陽極側から光を取り出す場合(ボトムエミッション)には、陽極は可視光に対して透明(380〜680nmの光に対する平均透過率が50%以上)であることが必要であるから、陽極の材料としては、酸化インジウム錫(ITO)、インジウム−亜鉛酸化物(IZO)などが挙げられ、有機EL素子の陽極として入手が容易であることを考慮すると、これらの中でもITOが好ましい。
【0143】
また、有機EL素子の陰極側から光を取り出す場合(トップエミッション)には、陽極の光透過度は制限されず、陽極の材料としては、ITO、IZO、ステンレス、あるいは銅、銀、金、白金、タングステン、チタン、タンタルもしくはニオブの単体、またはこれらの合金を使用できる。
【0144】
陽極の厚さは、ボトムエミッションの場合には、高い光透過率を実現するために、好ましくは2〜300nmであり、トップエミッションの場合には、好ましくは2nm〜2mmである。
【0145】
<3.陽極バッファ層>
前記陽極バッファ層は、陽極上に本発明の陽極バッファ層用組成物または陽極バッファ層用高分子化合物を塗布し、さらに加熱することによって形成される。
【0146】
この塗布操作においては、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェットプリント法等の公知の塗布法を適用することがきできる。
【0147】
また、前記塗布操作に続く加熱操作において、加熱温度は、後述する有機EL化合物層形成の際に陽極バッファ層が溶解するのを防ぐ観点、および陽極バッファ層が熱分解するのを防ぐ観点から、目安としては、たとえば70℃以上、好ましくは100〜350℃、さらに好ましくは150〜250℃である。
【0148】
また加熱時間は、後述する有機EL化合物層形成の際に陽極バッファ層が溶解するのを防ぐ観点から、好ましくは10〜180分、さらに好ましくは30〜120分である。
【0149】
本発明の陽極バッファ層用組成物または陽極バッファ層用高分子化合物を塗布し、さらに加熱することによって形成された陽極バッファ層は、有機溶剤に対する耐性が高いため、この陽極バッファ層上に有機溶剤を溶媒とする発光層等形成材料の溶液を塗布しても、溶解し難い。したがって、陽極バッファ層上に陽極バッファ層に接する発光層等(たとえば、発光層、正孔輸送層)を形成するための発光層等形成材料の溶液が、陽極バッファ層組成物に含まれる有機溶剤と同じ溶剤を含んでいても、陽極バッファ層はほとんど溶解せず、陽極バッファ層上に、陽極バッファ層に接する発光層等を塗布により積層することができる。
【0150】
陽極バッファ層の不溶化の程度を、たとえば陽極バッファ層に下記の処理を施した際の陽極バッファ層の厚さの減少率((1−処理後の厚さ/処理前の厚さ)×100[%])として評価すると、この減少率はたとえば30%以下、好ましくは10%以下、さらに好ましくは5%以下である。
【0151】
〔処理〕:厚さ20nmの陽極バッファ層を表面に備えた基板(25mm角、板厚1.1mm、青板ガラス)を、スピンコーターにセットし、陽極バッファ層上に0.10mlのトルエンを滴下した後、3000rpmで30秒間の条件で回転させる。この回転はトルエンの滴下後5秒以内に開始する。その後、陽極バッファ層を窒素雰囲気下に140℃で1時間放置する。
【0152】
陽極バッファ層の厚さは、バッファ層としての効果を十分に発揮させ、また有機EL素子の駆動電圧の上昇を防ぐ観点から、好ましくは5〜50nm、さらに好ましくは10〜30nmである。
【0153】
<4.有機EL化合物層>
本発明の有機EL素子における有機EL化合物層、すなわち発光層、正孔輸送層、及び電子輸送層に使用する化合物としては、低分子化合物及び高分子化合物のいずれをも使用することができる。
【0154】
本発明の有機EL素子の発光層を形成するための有機EL化合物としては、大森裕:応用物理、第70巻、第12号、1419−1425頁(2001年)に記載されている発光性低分子化合物及び発光性高分子化合物などを例示することができる。この中でも、素子作製プロセスが簡素化されるという点で発光性高分子化合物が好ましく、発光効率が高い点で燐光発光性化合物が好ましい。従って、特に燐光発光性高分子化合物が好ましい。
【0155】
また、発光性高分子化合物は、共役発光性高分子化合物と非共役発光性高分子化合物とに分類することもできるが、中でも非共役発光性高分子化合物が好ましい。
【0156】
上記の理由から、本発明で用いられる発光材料としては、燐光発光性非共役高分子化合物(前記燐光発光性高分子であり、かつ前記非共役発光性高分子化合物でもある発光材料)が特に好ましい。
【0157】
本発明の有機EL素子における発光層は、好ましくは、燐光を発光する燐光発光性単位とキャリアを輸送するキャリア輸送性単位とを一つの分子内に備えた、燐光発光性高分子を少なくとも含む。前記燐光発光性高分子は、重合性置換基を有する燐光発光性化合物と、重合性置換基を有するキャリア輸送性化合物とを共重合することによって得られる。燐光発光性化合物はイリジウム、白金および金の中から一つ選ばれる金属元素を含む金属錯体であり、中でもイリジウム錯体が好ましい。
【0158】
燐光発光性高分子のさらに具体的な例と合成法は、例えば特開2003−342325号公報、特開2003−119179号公報、特開2003−113246号公報、特開2003−206320号公報、特開2003−147021号公報、特開2003−171391号公報、特開2004−346312号公報、特開2005−97589号公報に開示されている。
【0159】
本発明の方法により製造される有機EL素子における発光層は、好ましくは前記燐光発光性化合物を含む層であるが、発光層のキャリア輸送性を補う目的で正孔輸送性化合物や電子輸送性化合物が含まれていてもよい。これらの目的で用いられる正孔輸送性化合物としては、例えば、TPD(N,N'−ジメチル−N,N'−(3−メチルフェニル)−1,1'−ビフェニル−4,4'ジアミン)、α−NPD(4,4'−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル)、m−MTDATA(4、4',4''−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン)などの低分子トリフェニルアミン誘導体や、ポリビニルカルバゾール、前記トリフェニルアミン誘導体に重合性官能基を導入して高分子化したもの、例えば特開平8−157575号公報に開示されているトリフェニルアミン骨格の高分子化合物、ポリパラフェニレンビニレン、ポリジアルキルフルオレンなどが挙げられ、また、電子輸送性化合物としては、例えば、Alq3(トリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム(III))などのキノリノール誘導体金属錯体、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、トリアジン誘導体、トリアリールボラン誘導体などの低分子材料や、上記の低分子電子輸送性化合物に重合性官能基を導入して高分子化したもの、例えば特開平10−1665号公報に開示されているポリPBDなどの既知の電子輸送性化合物が使用できる。
【0160】
(有機EL化合物層の形成方法)
上記の有機EL化合物層は、有機EL化合物が発光性高分子化合物である場合には、主にスピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェットプリント法等の塗布法により形成することができる。
【0161】
上述したように、本発明の陽極バッファ層用組成物または本発明の陽極バッファ層用高分子化合物から形成された陽極バッファ層は、有機溶剤に対する耐性が高いため、その表面に有機溶剤を溶媒とする有機EL化合物溶液を塗布しても、有機溶剤に溶解し難い。
【0162】
一方、有機EL化合物が発光性低分子化合物の場合には、主として抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法により有機EL化合物層を形成することができる。
【0163】
<5.正孔ブロック層>
正孔が発光層を通過することを抑え、発光層内で電子と効率よく再結合させる目的で、発光層の陰極側に隣接して正孔ブロック層を設けてもよい。この正孔ブロック層には発光性化合物より最高占有分子軌道(Highest Occupied Molecular Orbital;HOMO)準位の深い化合物を用いることができ、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、フェナントロリン誘導体、アルミニウム錯体などを例示することができる。
【0164】
さらに、励起子(エキシトン)が陰極金属で失活することを防ぐ目的で、発光層の陰極側に隣接してエキシトンブロック層を設けてもよい。このエキシトンブロック層には発光性化合物より励起三重項エネルギーの大きな化合物を用いることができ、トリアゾール誘導体、フェナントロリン誘導体、アルミニウム錯体などを例示することができる。
【0165】
<6.陰極>
本発明の有機EL光素子の陰極材料としては、仕事関数が低く、かつ化学的に安定なものが使用され、Al、MgAg合金、AlLiやAlCaなどのAlとアルカリ金属の合金などの既知の陰極材料を例示することができるが、化学的安定性を考慮すると仕事関数は−2.9eV以下であることが好ましい。これらの陰極材料の成膜方法としては、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などを用いることができる。陰極の厚さは10nm〜1μmが好ましく、50〜500nmがより好ましい。
【0166】
また、陰極から有機層への電子注入障壁を下げて電子の注入効率を上げる目的で、陰極バッファ層として、陰極より仕事関数の低い金属層を陰極と陰極に隣接する有機層の間に挿入してもよい。このような目的に使用できる低仕事関数の金属としては、アルカリ金属(Na、K、Rb、Cs)、アルカリ土類金属(Sr、Ba、Ca、Mg)、希土類金属(Pr、Sm、Eu、Yb)等を挙げることができる。また、陰極より仕事関数の低いものであれば、合金または金属化合物も使用することができる。これらの陰極バッファ層の成膜方法としては、蒸着法やスパッタ法などを用いることができる。陰極バッファ層の厚さは0.05〜50nmが好ましく、0.1〜20nmがより好ましく、0.5〜10nmがより一層好ましい。
【0167】
さらに、陰極バッファ層は、上記の低仕事関数の物質と電子輸送性化合物の混合物として形成することもできる。なお、ここで用いられる電子輸送性化合物としては前述の電子輸送層に用いられる有機化合物を用いることができる。この場合の成膜方法としては共蒸着法を用いることができる。また、溶液による塗布成膜が可能な場合は、スピンコーティング法、ディップコーティング法、インクジェット法、印刷法、スプレー法、ディスペンサー法などの既述の成膜方法を用いることができる。この場合の陰極バッファ層の厚さは0.1〜100nmが好ましく、0.5〜50nmがより好ましく、1〜20nmがより一層好ましい。陰極と有機物層との間に、導電性高分子からなる層、あるいは金属酸化物や金属フッ化物、有機絶縁材料等からなる平均膜厚2nm以下の層を設けてもよい。
【0168】
<7.封止>
陰極作製後、該有機EL素子を保護する保護層を装着していてもよい。該有機EL素子を長期安定的に用いるためには、素子を外部から保護するために、保護層および/または保護カバーを装着することが好ましい。該保護層としては、高分子化合物、金属酸化物、金属フッ化物、金属ホウ化物などを用いることができる。また、保護カバーとしては、ガラス板、表面に低透水率処理を施したプラスチック板、金属などを用いることができ、該カバーを熱硬化性樹脂や光硬化性樹脂で素子基板と貼り合わせて密閉する方法が好適に用いられる。スペーサーを用いて空間を維持すれば、素子がキズつくのを防ぐことが容易である。該空間に窒素やアルゴンのような不活性なガスを封入すれば、陰極の酸化を防止することができ、さらに酸化バリウム等の乾燥剤を該空間内に設置することにより製造工程で吸着した水分が素子にタメージを与えるのを抑制することが容易となる。これらのうち、いずれか1つ以上の方策をとることが好ましい。
【0169】
<8.基板>
本発明に係る有機EL素子の基板には、有機EL素子に要求される機械的強度を満たす材料が用いられる。
【0170】
ボトムエミッション型の有機EL素子には、可視光に対して透明な基板が用いられ、具体的には、ソーダガラス、無アルカリガラスなどのガラス;アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ナイロン樹脂などの透明プラスチック;シリコンなどからなる基板を使用できる。
【0171】
トップエミッション型の有機EL素子においては、ボトムエミッション型の有機EL素子に用いられる基板に加えて、銅、銀、金、白金、タングステン、チタン、タンタルもしくはニオブの単体、またはこれらの合金、あるいはステンレスなどからなる基板を使用できる。
【0172】
基板の厚さは、要求される機械的強度にもよるが、好ましくは0.1〜10mm、より好ましくは0.25〜2mmである。
【0173】
[用途]
本発明の有機EL素子は、マトリックス方式またはセグメント方式による画素として画像表示装置に好適に用いられる。また、上記有機EL素子は、画素を形成せずに、面発光光源としても好適に用いられる。
【0174】
本発明の有機EL素子は、具体的には、コンピュータ、テレビ、携帯端末、携帯電話、カーナビゲーション、標識、看板、ビデオカメラのビューファインダー等における表示装置、バックライト、電子写真、照明、レジスト露光、読み取り装置、インテリア照明、光通信システム等における光照射装置に好適に用いられる。
【実施例】
【0175】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0176】
[測定方法]
<ホスト用高分子化合物の分子量等>
ホスト用高分子化合物の重量平均分子量(スチレン換算)および分子量分布指数(Mw/Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、下記条件で測定した。
【0177】
装置:昭和電工(株)製 Shodex GPC−101
カラム:Shodex KF−G+KF804L+KF802+KF801
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1ml/min
カラム温度:40℃
<陽極バッファ層の厚さの減少率>
(陽極バッファ層付き基板の作製)
基板(後述する各実施例および比較例で用いられたITO膜付ガラス基板を構成するガラス基板と同じもの)上に、後述する各実施例および比較例で用いた陽極バッファ層用組成物をスピンコート法(条件:3000rpm−30秒)によって塗布し、得られた塗膜を窒素雰囲気下に210℃(ただし、実施例3のみは80℃)で1時間放置し、陽極バッファ層付き基板aを作製した。さらに、同様の方法で陽極バッファ層付き基板bを作製した。
【0178】
(陽極バッファ層の厚さの測定)
陽極バッファ層付き基板aの陽極バッファ層の一部を針で切削して基板を露出させ(以下、こうして露出された基板表面を「基板露出部」ともいう。)、AFM(原子間力顕微鏡)を用いて、陽極バッファ層付き基板aの陽極バッファ層側表面を、
図2に示すように基板露出部を横断するように観測することにより、陽極バッファ層(以下「溶解試験処理前の陽極バッファ層」ともいう。)の厚さを測定した。
【0179】
(減少率の算出)
陽極バッファ層付き基板bの陽極バッファ層に下記の溶解試験処理を施した。
【0180】
〔溶解試験処理〕:前記試料を、陽極バッファ層上に0.10mlの有機溶剤を滴下した後、3000rpmで30秒間の条件で回転させた。この回転は有機溶剤の滴下後5秒以内に開始した。次いで、試料を窒素雰囲気下に140℃で1時間放置した。なお、この有機溶剤として、実施例1−(a)〜(c)、2、3および4−(a)〜(c)、ならびに比較例1〜3ではトルエンを使用し、実施例5−(a)〜(d)および6、ならびに比較例4−(a)〜(c)および5ではキシレンを使用した。
【0181】
その後、陽極バッファ層付き基板bの陽極バッファ層(以下「溶解試験処理後の陽極バッファ層」ともいう。)の厚さを、陽極バッファ層付き基板aの場合と同様の方法で測定し、下式で定義される、陽極バッファ層の厚さの「減少率(%)」を算出した。
【0182】
【数1】
【0183】
[合成例1]
<pHMTPDの合成>
特開2005−200638号公報([0112])に記載の方法に従い、下式で表される化合物(以下「viHMTPD」という。)を合成した。
【0184】
【化29】
【0185】
密閉容器に、viHMTPD(500mg)を入れ、脱水トルエン(9.9mL)を加えた後、重合開始剤(商品名:V−601、和光純薬(株)製)のトルエン溶液(0.1M、198μL)を加えた。これらを、凍結脱気操作を5回繰り返した後に真空のまま密閉し、60℃で60時間攪拌し反応させた。反応液をアセトン500mL中に滴下し、沈殿物を得た。さらにトルエン−アセトンでの再沈殿精製を2回繰り返した後、沈殿物を50℃で一晩真空乾燥して、ホスト用高分子化合物(pHMTPD)を得た。ホスト用高分子化合物(pHMTPD)の重量平均分子量は68000、分子量分布指数(Mw/Mn)は1.96であった。
【0186】
[合成例2]
<pHMTPD−2の合成>
重合開始剤(商品名:V−601)のトルエン溶液の濃度を0.2Mした他は、合成例1と同様にしてホスト用高分子化合物(pHMTPD−2)を得た。ホスト用高分子化合物(pHMTPD−2)の重量平均分子量は22000、分子量分布指数(Mw/Mn)は1.86であった。
【0187】
[合成例3]
<pTmTDMPDの合成>
N,N,N'-トリ-m-トリル-2,5-ジメチル-1,4-フェニレンジアミンの合成【0188】
【化30】
【0189】
冷却管を備えた100ml三口フラスコに2,5-ジメチル-1,4-フェニレンジアミン(1.362g(10mmol))を入れ、窒素置換した。ここに脱水キシレン(60mL)および3-ヨードトルエン(5.233g(24mmol))を加え撹拌した後、酢酸パラジウム(337mg(1.5mmol))、カリウム-t-ブトキシド(4.040g(36mmol))、トリ-t-ブチルホスフィン/キシレン1:1溶液(1.8ml(4.5mmol))を加え、2時間還流した。ここに3-ヨードトルエン(1.308g(6mmol))を加え2時間還流し、さらに3-ヨードトルエン(1.308g(6mmol))を加えて3時間還流を行った。
【0190】
反応後、室温まで冷却した後、ジクロロメタン溶媒でセライトろ過を行い、ろ液を減圧下で溶媒を留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:トルエン=1:1)で精製し、N,N,N'-トリ-m-トリル-2,5-ジメチル-1,4-フェニレンジアミンを1.88g(収率46%)得た。
【0191】
vTmTDMPDの合成【0192】
【化31】
【0193】
冷却管を備えた50ml三口フラスコにN,N,N'-トリ-m-トリル-2,5-ジメチル-1,4-フェニレンジアミン(610mg(1.5mmol))と2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール(DBC)(20mg)を入れ、窒素置換した。ここに3-ブロモスチレン(366mg(2mmol))、脱水キシレン(20ml)、酢酸パラジウム(23mg(0.1mmol))、カリウム-t-ブトキシド(191mg(1.7mmol))、トリ-t-ブチルホスフィン/キシレン1:1溶液(0.12ml(0.3mmol))を加え、撹拌しながら6時間還流した。
【0194】
反応後、室温まで冷却した後、ジクロロメタン溶媒でセライトろ過を行い、ろ液を減圧下で溶媒を留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:クロロホルム=100:0→48:52)で精製し、得られた精製物をジクロロメタン‐メタノールで再結晶することで、目的物であるvTmTDMPDを640mg(収率84%)で得られた。
【0195】
pTmTDMPDの合成
密閉容器に、vTmTDMPD(500mg)を入れ、脱水トルエン(5.0mL)を加えた後、重合開始剤(商品名:V−601、和光純薬(株)製)のトルエン溶液(0.1M、50μL)を加えた。この後の操作は合成例1と同様にしてホスト用高分子化合物(pTmTDMPD)を得た。ホスト用高分子化合物(pTmTDMPD)の重量平均分子量は110000、分子量分布指数(Mw/Mn)は2.23であった。
【0196】
【化32】
【0197】
[合成例4]
pHMTPD−TPDの合成
密閉容器に、viHMTPD(475mg)および後述する合成例5で得られたviTPD(25mg)を入れ、脱水トルエン(5.0mL)を加えた後、重合開始剤(商品名:V−601、和光純薬(株)製)のトルエン溶液(0.1M、50μL)を加えた。この後の操作は合成例1と同様にしてホスト用高分子化合物(pHMTPD−TPD)を得た。ホスト用高分子化合物(pHMTPD−TPD)の重量平均分子量は100000、分子量分布指数(Mw/Mn)は2.30、viHMTPD由来の構成単位:viTPD由来の構成単位=94:6(モル比)であった。
【0198】
[合成例5]
<pTPDの合成>
特開2005−97589号公報(実施例1)に記載の方法に従い、モノマー(viTPD、下式で表される化合物の混合物)を合成した。
【0199】
【化33】
【0200】
viHMTPD(500mg)をviTPD(450mg)に変更した以外は合成例1と同様の方法により、重合および精製を行い、ホスト用高分子化合物(pTPD)を得た。ホスト用高分子化合物(pTPD)の重量平均分子量は64000、分子量分布指数(Mw/Mn)は1.87であった。
【0201】
[合成例6]
<pHMTPD−3の合成>
重合開始剤(商品名:V−601)のトルエン溶液の濃度を0.5Mとした他は、合成例1と同様にしてホスト用高分子化合物(pHMTPD−3)を得た。ホスト用高分子化合物(pHMTPD−3)の重量平均分子量は10000、分子量分布指数(Mw/Mn)は1.80であった。
【0202】
[合成例7]
<pHMTPD−pPhTCNQの合成>
vipPhTCNQの合成
電子受容性化合物であるTCNQに以下の方法で重合性置換基を導入し、重合性置換基を有する電子受容性化合物であるvipPhTCNQを得た。
【0203】
【化34】
【0204】
出発物質である2−ブロモ−7,7,8,8−テトラシアノキノジメタンは文献記載(Chemistry Letters, pp689-690, 1985)の方法で合成した。
【0205】
温度計及びリフラックスコンデンサーを取り付けた100mlの三つ口フラスコに、2−ブロモ−7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン2.83g(10.0mmol)、p-ビニルフェニルホウ酸1.63g(11.00mmol)、炭酸カリウム4.15g(30.0mmol)、トルエン20ml、ジエトキシエタン20mlおよび水20mlを加え、窒素気流下110℃で1時間撹拌した。この反応混合物にテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)580mg(0.50mmol)を加え、窒素気流下110℃で4時間撹拌した。反応後、不溶物をろ過し、ろ液を分液操作し、有機層を抽出、濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;ヘキサン/ジクロロメタン=10/90)により精製しvipPhTCNQを2.45g得た。
【0206】
pHMTPD−pPhTCNQの合成
原料として合成例1で合成したviHMTPD(100質量部)、および上記vipPhTCNQ(5質量部)を用いた以外は[合成例4]と同様の重合操作を行い、陽極バッファ層用化合物(pHMTPD−pPhTCNQ、以下「陽極バッファ層用高分子化合物1」ともいう。)を合成した。陽極バッファ層用高分子化合物1の重量平均分子量は69000、分子量分布指数(Mw/Mn)は2.45、viHMTPD由来の構成単位:vipPhTCNQ由来の構成単位=96:4(モル比)であった。
【0207】
[合成例8]
<pHMTPD−pPhF3TCNQの合成>
vipPhF3TCNQの合成【0208】
【化35】
【0209】
出発物質として2−ブロモ−7,7,8,8−テトラシアノキノジメタンに換えて1.77gの化合物1を用いた以外は合成例7におけるvipPhTCNQの合成と同様の操作を行い、vipPhF3TCNQを1.51g合成した。
【0210】
pHMTPD−pPhF3TCNQの合成
原料として合成例1で合成したviHMTPD(100質量部)、および上記vipPhF3TCNQ(5質量部)を原料として用いた以外は[合成例4]と同様の重合操作を行い、陽極バッファ層用化合物(pHMTPD−pPhF3TCNQ、以下「陽極バッファ層用高分子化合物2」ともいう。)を合成した。陽極バッファ層用高分子化合物2の重量平均分子量は67000、分子量分布指数(Mw/Mn)は2.47、viHMTPD由来の構成単位:vipPhF3TCNQ由来の構成単位=95:5(モル比)であった。
【0211】
[合成例9]
<pHMTPD−pPhDCNQIの合成>
vipPhDCNQIの合成【0212】
【化36】
【0213】
出発物質として2−ブロモ−7,7,8,8−テトラシアノキノジメタンに換えて1.77gの化合物2を用いた以外は合成例7におけるvipPhTCNQの合成と同様の操作を行い、vipPhDCNQIを479mg(1.76mmol)合成した。
【0214】
pHMTPD-pPhDCNQIの合成
原料として合成例1で合成したviHMTPD(100質量部)、および上記vipPhDCNQI(5質量部)を原料として用いた以外は[合成例4]と同様の重合操作を行い、陽極バッファ層用化合物(pHMTPD−pPhDCNQI、以下「陽極バッファ層用高分子化合物3」ともいう。)を合成した。陽極バッファ層用高分子化合物3の重量平均分子量は66000、分子量分布指数(Mw/Mn)は2.38、viHMTPD由来の構成単位:vipPhDCNQ由来の構成単位=95:5モル比)であった。
【0215】
[合成例10]
<pMPDAの合成>
化合物3の合成【0216】
【化37】
【0217】
冷却管を備えた100ml三口フラスコに、2.0gのo−トルイジン(19mmol)を入れ、窒素置換した。ここに脱水キシレン(60ml)および2−ブロモ−p−キシレン(3.5g(19mmol))を加えて撹拌した後、酢酸パラジウム(0.35g(1.6mmol))、カリウム−t−ブトキシド(4.0g(36mmol))、トリ−t−ブチルホスフィン/キシレン1:1溶液(1.8ml(4.5mmol))を加え、2時間加熱還流した。得られた反応混合物を室温にまで冷却した後、ジクロロメタン溶媒でセライトろ過を行い、ろ液から減圧下で溶媒を留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:トルエン=1:1)で精製し、化合物3を3.1g(15mmol)得た(収率80%)。
【0218】
vMPDAの合成【0219】
【化38】
【0220】
冷却管を備えた100ml三口フラスコに、3,5−ジブロモ−4−メチルスチレン(1.0g(3.6mmol))を入れ、窒素置換した。ここに脱水キシレン(60ml)および化合物3(3.1g(15mmol))を加えて撹拌した後、酢酸パラジウム(0.35g(1.6mmol))、カリウム−t−ブトキシド(4.0g(36mmol))、トリ−t−ブチルホスフィン/キシレン1:1溶液(1.8ml(4.5mmol))を加え、4時間加熱還流した。得られた反応混合物を室温にまで冷却した後、ジクロロメタン溶媒でセライトろ過を行った。ろ液から減圧下で溶媒を留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:トルエン=4:1)で精製し、ジクロロメタン−メタノールで再結晶することで、vMPDAを1.8g(3.4mmol)得た(収率95%)。
【0221】
vMPDAの同定データは以下の通りである。
【0222】
元素分析:計算値(C
39H
40N
2)C,87.27;H,7.51;N,5.22.:測定値 C,87.77;H,7.60;N,4.99.
質量分析(FAB+):536 (M
+).
pMPDAの合成
密閉容器にvMPDA(500mg)を入れ、脱水トルエン(5.0ml)を加えた後、重合開始剤(商品名:V−601、和光純薬(株)製)のトルエン溶液(0.1M、50μl)を加えた。この後の操作は合成例1と同様にしてホスト用高分子化合物(pMPDA)を得た。ホスト用高分子化合物(pMPDA)の重量平均分子量は95000、分子量分布指数(Mw/Mn)は2.30であった。
【0223】
[合成例11]
<pMPDAAの合成>
化合物4の合成【0224】
【化39】
【0225】
冷却管を備えた100ml三口フラスコに、合成例3で得られたN,N,N’−トリ−m−トリル−2,5−ジメチル−1,4−フェニレンジアミン(2.0g(4.9mmol))を入れ、窒素置換した。ここに脱水キシレン(60ml)および4−ブロモ−2−メチルフェノール(1.5g(8.0mmol))を加えて撹拌した後、酢酸パラジウム(0.35g(1.6mmol))、カリウム−t−ブトキシド(4.0g(36mmol))、トリ−t−ブチルホスフィン/キシレン1:1溶液(1.8ml(4.5mmol))を加え、6時間加熱還流した。得られた反応混合物を室温にまで冷却した後、ジクロロメタン溶媒でセライトろ過を行った。ろ液から減圧下で溶媒を留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン:ジクロロメタン=1:1)で精製し、化合物4を1.0g(2.0mmol)得た(収率40%)。
【0226】
MPDAAの合成【0227】
【化40】
【0228】
窒素置換した100mlの三口フラスコに、化合物4(1.0g(2.0mmol))、ジクロロメタン(20ml)およびトリエチルアミン(0.50g(4.9mmol))を入れ、氷浴で冷却した。この溶液に塩化アクリロイル(0.30g(3.3mmol))を少しずつ加えた後、室温で1時間撹拌した。得られた反応混合物から減圧下で溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:トルエン=1:1)で精製して、MPDAAを1.0g(1.8mmol)得た(収率90%)。
【0229】
MPDAAの同定データは以下の通りである。
【0230】
元素分析:計算値(C
39H
38N
2O
2)C,82.65;H,6.76;N,4.94.:測定値 C,82.53;H,6.81;N,5.08.
質量分析(FAB+):566 (M
+).
pMPDAAの合成
密閉容器にMPDAA(500mg)を入れ、脱水トルエン(5.0ml)を加えた後、重合開始剤(商品名:V−601、和光純薬(株)製)のトルエン溶液(0.1M、50μl)を加えた。この後の操作は合成例1と同様にしてホスト用高分子化合物(pMPDAA)を得た。ホスト用高分子化合物(pMPDAA)の重量平均分子量は67000、分子量分布指数(Mw/Mn)は2.25であった。
【0231】
[合成例12]
<pMPDABの合成>
MPDABの合成【0232】
【化41】
【0233】
冷却管を備えた100ml三口フラスコに、合成例11で得られた化合物4(1.0g(2.0mmol))を入れ、窒素置換した。ここに脱水アセトン(25ml)および塩化−4−ビニルベンジル(0.50g(3.3mmol))を加えて撹拌した後、炭酸カリウム(2.0g(14mmol))を加え、8時間加熱還流した。得られた反応混合物を室温にまで冷却した後、セライトろ過を行った。ろ液から減圧下で溶媒を留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:トルエン=2:1)で精製し、ジクロロメタン−メタノールで再結晶することで、MPDABを1.0g(1.6mmol)得た(収率80%)。
【0234】
MPDABの同定データは以下の通りである。
【0235】
元素分析:計算値(C
45H
44N
2O)C,85.95;H,7.05;N,4.45.:測定値 C,86.37;H,7.40;N,4.16.
質量分析(FAB+):628 (M
+).
pMPDABの合成
密閉容器にMPDAB(500mg)を入れ、脱水トルエン(5.0ml)を加えた後、重合開始剤(商品名:V−601、和光純薬(株)製)のトルエン溶液(0.1M、50μl)を加えた。この後の操作は合成例1と同様にしてホスト用高分子化合物(pMPDAB)を得た。ホスト用高分子化合物(pMPDAB)の重量平均分子量は95000、分子量分布指数(Mw/Mn)は2.41であった。
(合成例13)
<pDBDMPDの合成>
化合物5の合成【0236】
【化42】
【0237】
冷却管を備えた100ml三口フラスコに、2,5−ジメチル−1,4−フェニレンジアミン(2.0g(15mmol))を入れ、窒素置換した。ここに脱水キシレン(60ml)および3−ブロモ−(2−メチルプロピル)ベンゼン(6.0g(28mmol))を加えて撹拌した後、酢酸パラジウム(0.35g(1.6mmol))、カリウム−t−ブトキシド(4.0g(36mmol))、トリ−t−ブチルホスフィン/キシレン1:1溶液(1.8ml(4.5mmol))を加え、2時間加熱還流した。ここに4−ブロモトルエン(2.5g(15mmol))をさらに加えて2時間加熱還流した。得られた反応混合物を室温にまで冷却した後、ジクロロメタン溶媒でセライトろ過を行った。ろ液から減圧下で溶媒を留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:トルエン=1:1)で精製し、化合物5を3.5g(7.1mmol)得た(収率50%)。
vDBDMPDの合成【0238】
【化43】
【0239】
冷却管を備えた100ml三口フラスコに、化合物5(3.5g(7.1mmol))を入れ、窒素置換した。ここに3−ブロモスチレン(2.0g(11mmol))、脱水キシレン(60ml)、酢酸パラジウム(0.35g(1.6mmol))、カリウム−t−ブトキシド(4.0g(36mmol))およびトリ−t−ブチルホスフィン/キシレン1:1溶液(1.8ml(4.5mmol))を加え、2時間加熱還流した。得られた反応混合物を室温にまで冷却した後、セライトろ過を行った。ろ液から減圧下で溶媒を留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:トルエン=5:1)で精製し、ジクロロメタン−メタノールで再結晶することで、vDBDMPDを3.0g(5.1mmol)得た(収率70%)。
【0240】
vDBDMPDの同定データは以下の通りである。
【0241】
元素分析:計算値(C
43H
48N
2)C,87.11;H,8.16;N,4.73.
:測定値 C,86.79;H,8.26;N,4.91.
質量分析(FAB+):592 (M
+).
pDBDMPDの合成
密閉容器にvDBDMPD(500mg)を入れ、脱水トルエン(5.0ml)を加えた後、重合開始剤(商品名:V−601、和光純薬(株)製)のトルエン溶液(0.1M、50μl)を加えた。この後の操作は合成例1と同様にしてホスト用高分子化合物(
pDBDMPD)を得た。ホスト用高分子化合物(pDBDMPD)の重量平均分子量は170000、分子量分布指数(Mw/Mn)は2.06であった。
【0242】
[実施例1-(a)]
<陽極バッファ層用組成物の調製>
合成例1で製造した電荷輸送ポリマーであるpHMTPD(100質量部)、電子受容性化合物であるF4TCNQ(5質量部)、およびトルエンを混合して、陽極バッファ層用組成物(固形分濃度が0.8質量%のトルエン溶液、以下「陽極バッファ層用組成物1」ともいう。)を調製した。
【0243】
<有機EL素子の製造>
ITO膜付ガラス基板上に、陽極バッファ層用組成物1を、スピンコート法(条件:3000rpm−30秒)によって塗布し、得られた塗膜を窒素雰囲気下に210℃で1時間放置し、陽極バッファ層を形成した。
【0244】
室温で十分に放冷した陽極バッファ層付き基板の陽極バッファ層側表面に、発光層用材料(キャリア輸送性化合物である、下記式(E−1)で表される化合物と下記式(E−2)で表される化合物とのコポリマー(モル比5:5)95質量%と、りん光発光性化合物である下記式(E−3)で表される化合物5質量%との混合粉末)のトルエン溶液(「発光層塗布溶液1」ともいう。)をスピンコート法によって塗布し、窒素雰囲気下に140℃で1時間放置して、発光層を形成した。真空蒸着装置により、発光層の表面に陰極バッファ層として厚さ0.5nmのLiF層を形成し、続いて陰極として厚さ150nmのAl層を形成し、有機EL素子(以下「有機EL素子1」ともいう。)を作製した。
【0245】
【化44】
【0246】
有機EL素子1
に電源(Keithley製、SM2400)を用いて段階的に電圧を印加し、有機EL素子1の輝度を輝度計(トプコン製、BM-9)で定量した。電流密度に対する輝度の比から発光効率を決定した。発光効率、駆動電圧および電力効率を表1に示す。
【0247】
また、有機EL素子1に、同装置を用いて定電流を印加し続け、一定時間おきに輝度を測定することで、発光寿命測定を行った。表1に初期輝度が半減するまでの時間を示す。
【0248】
[実施例1-(b)]
pHMTPDを合成例2で製造されたpHMTPD−2に変更した以外は実施例1-(a)と同様の方法により、陽極バッファ層用組成物2を調製し、有機EL素子(以下「有機EL素子2」ともいう。)を作製した。有機EL素子2の陽極バッファ層および発光層の合計膜厚およびその発光効率等を表1に示す。
【0249】
[実施例1-(c)]
pHMTPDを合成例3で製造されたpTmTDMPDに変更した以外は実施例1-(a)と同様の方法により、陽極バッファ層用組成物3を調製し、有機EL素子(以下「有機EL素子3」ともいう。)を作製した。有機EL素子3の陽極バッファ層および発光層の合計膜厚およびその発光効率等を表1に示す。
【0250】
[実施例2]
pHMTPDを合成例4で製造されたpHMTPD−TPDに変更した以外は実施例1-(a)と同様の方法により、陽極バッファ層用組成物4を調製し、有機EL素子(以下「有機EL素子4」ともいう。)を作製した。有機EL素子4の陽極バッファ層および発光層の合計膜厚およびその発光効率等を表1に示す。
【0251】
[実施例3]
ITO膜付ガラス基板上に、前記陽極バッファ層用組成物1を、スピンコート法によって塗布し(3000rpm−30秒)、得られた塗膜を窒素雰囲気下に80℃で1時間放置して陽極バッファ層を形成した以外は実施例1と同様の方法により、有機EL素子(以下「有機EL素子5」ともいう。)を作製した。有機EL素子5の陽極バッファ層および発光層の合計膜厚およびその発光効率等を表1に示す。
【0252】
[比較例1]
pHMTPDを合成例5で製造されたpTPDに変更した以外は実施例1-(a)と同様の方法により、陽極バッファ層用組成物5を調製し、有機EL素子(以下「有機EL素子6」ともいう。)を作製した。有機EL素子6の陽極バッファ層および発光層の合計膜厚および発光効率等を表1に示す。
【0253】
有機EL素子6においては、実施例の何れの有機EL素子よりも、陽極バッファ層および発光層の合計膜厚が薄かった。この要因は、発光層を形成する際に、陽極バッファ層の一部が、発光層用材料のトルエン溶液に溶解したことにあると考えられ、減少率の値からもそれが裏付けられている。
【0254】
[比較例2]
pHMTPDを合成例6で製造されたpHMTPD−3に変更した以外は実施例1-(a)と同様の方法により、陽極バッファ層用組成物6を調製し、有機EL素子(以下「有機EL素子7」ともいう。)を作製した。有機EL素子7の陽極バッファ層および発光層の合計膜厚および発光効率等を表1に示す。
【0255】
有機EL素子7においては、実施例の何れの有機EL素子よりも、陽極バッファ層および発光層の合計膜厚が薄かった。この要因は、発光層を形成する際に、陽極バッファ層の一部が、発光層用材料のトルエン溶液に溶解したことにあると考えられ、減少率の値からもそれが裏付けられている。
【0256】
[比較例3]
ITO膜付ガラス基板上に、陽極バッファ層用組成物1を、スピンコート法(条件:3000rpm−30秒)によって塗布し、得られた塗膜を窒素雰囲気下に室温で1時間放置し、陽極バッファ層を形成した以外は実施例1−(a)と同様の方法により、有機EL素子(以下「有機EL素子8」ともいう。)を作製した。有機EL素子8の陽極バッファ層および発光層の合計膜厚およびその発光効率等を表1に示す。
【0257】
有機EL素子8においては、pHMTPDが用いられた有機EL素子1および有機EL素子5よりも、陽極バッファ層の厚さの減少率が大きかった。これらの有機EL素子を比較すると、陽極バッファ層の不溶化には、特定の材料の使用だけでなく、陽極バッファ層形成の際の加熱も重要であることがわかる。
【0258】
[実施例4-(a)]
合成例7で製造した陽極バッファ層用高分子化合物1およびトルエンを混合して、陽極バッファ層用組成物(固形分濃度が0.8質量%のトルエン溶液、以下「陽極バッファ層用組成物7」ともいう。)を調製した。
【0259】
陽極バッファ層用組成物1に換えて陽極バッファ層用組成物7を用いた以外は実施例1-(a)と同様の方法により、有機EL素子(以下「有機EL素子9」ともいう。)を作製した。有機EL素子9の陽極バッファ層および発光層の合計膜厚およびその発光効率等を表1に示す。
【0260】
[実施例4-(b)]
陽極バッファ層用高分子化合物1に換えて陽極バッファ層用高分子化合物2を用いた以外は実施例4-(a)と同様の方法により、陽極バッファ層用組成物8を調製し、有機EL素子(以下「有機EL素子10」ともいう。)を作製した。有機EL素子10の陽極バッファ層および発光層の合計膜厚およびその発光効率等を表1に示す。
【0261】
[実施例4-(c)]
陽極バッファ層用高分子化合物1に換えて陽極バッファ層用高分子化合物3を用いた以外は実施例4-(a)と同様の方法により、陽極バッファ層用組成物9を調製し、有機EL素子(以下「有機EL素子11」ともいう。)を作製した。有機EL素子11の陽極バッファ層および発光層の合計膜厚およびその発光効率等を表1に示す。
【0262】
[実施例5−(a)]
<発光層塗布成膜用の溶液調製>
国際公開WO2010/16512号公報に記載された方法に従って下記の燐光発光性高分子化合物(E−4)を合成した。高分子化合物(E−4)の重量平均分子量は52000、各繰り返し単位のモル比はk:m:n=6:42:52であった。
【0263】
【化45】
【0264】
この燐光発光性高分子化合物(E−4)3重量部を97重量部のキシレンに溶解させ、発光層塗布成膜用の溶液(以下「発光層塗布溶液2」ともいう。)を調製した。
【0265】
<有機EL素子の製造>
合成例10で製造したホスト用高分子化合物であるpMPDA(100質量部)、電子受容性化合物であるTCNQ(5質量部)、およびキシレンを混合して陽極バッファ層用組成物(固形分濃度が1.0質量%のキシレン溶液)を調製した。これをITO膜付きガラス基板上に、スピンコート法(条件:3000rpm−30秒)によって塗布し、得られた塗膜を窒素雰囲気下に170℃で1時間放置し、陽極バッファ層を形成した。
【0266】
室温で十分に法令した陽極バッファ層つき基板の陽極バッファ層側表面に、上記の発光層塗布溶液2を、スピンコート法(条件:3000rpm−30秒)によって塗布し、得られた塗膜を窒素雰囲気下に140℃で1時間放置し、発光層を形成した。真空蒸着装置により、発光層の表面に陰極バッファ層として厚さ0.5nmのLiF層を形成し、続いて陰極として厚さ150nmのAl層を形成し、有機EL素子(以下「有機EL素子12」ともいう。)を作製した。
【0267】
実施例1−(a)と同様にして測定した発光効率、駆動電圧、電力効率および発光寿命を表2に示した。
【0268】
[実施例5−(b)〜(d)]
pMPDAを合成例11〜13で製造されたpMPDAA、pMPDABおよびpDBDMPDにそれぞれ変更した以外は実施例5−(a)と同様の方法により、有機EL素子(以下それぞれ「有機EL素子13」、「有機EL素子14」および「有機EL素子15」ともいう。)を作製した。
【0269】
実施例1−(a)と同様にして測定した発光効率、駆動電圧、電力効率および発光寿命を表2に示した。
【0270】
[比較例4−(a)〜(c)]
特許文献1〜3に記載の方法に従い、下式で表される化合物R1、R2およびR3をそれぞれ合成し、これらの化合物をpMPDAの代わりに用いた以外は実施例5−(a)と同様の方法により、有機EL素子(以下それぞれ「有機EL素子16」、「有機EL素子17」および「有機EL素子18」ともいう。)を作製した。
【0271】
実施例1−(a)と同様にして測定した発光効率、駆動電圧、電力効率および発光寿命を表2に示した。
【0272】
【化46】
【0273】
[実施例6]
実施例1−(c)と同様にしてITO膜付きガラス基板上に陽極バッファ層を形成した後、真空蒸着装置により下記化合物(E−5)および(E−6)を、質量比が9:1となるように共蒸着して、30nmの厚さの発光層を形成し、続いて電子注入層として厚さ20nmの化合物(E−7)の層を形成した。さらに実施例1−(c)と同様にしてLiF層およびAl層を形成し、有機EL素子(以下「有機EL素子19」ともいう。)を作製した。
【0274】
実施例1−(a)と同様にして測定した発光効率、駆動電圧、電力効率および発光寿命を表2に示した。
【0275】
【化47】
【0276】
[比較例5]
pTmTDMPDを上記の化合物R1に変更した以外は実施例6と同様の方法により有機EL素子(以下「有機EL素子20」ともいう。)を作製した。
【0277】
実施例1−(a)と同様にして測定した発光効率、駆動電圧、電力効率および発光寿命を表2に示した。
【0278】
【表1】
【0279】
【表2】