特許第5856493号(P5856493)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5856493
(24)【登録日】2015年12月18日
(45)【発行日】2016年2月9日
(54)【発明の名称】液体噴射ヘッド及び液体噴射装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20160120BHJP
   B41J 2/16 20060101ALI20160120BHJP
【FI】
   B41J2/14 303
   B41J2/14 605
   B41J2/14 501
   B41J2/16 303
   B41J2/16 503
【請求項の数】10
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-12995(P2012-12995)
(22)【出願日】2012年1月25日
(65)【公開番号】特開2013-151108(P2013-151108A)
(43)【公開日】2013年8月8日
【審査請求日】2014年11月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】501167725
【氏名又は名称】エスアイアイ・プリンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154863
【弁理士】
【氏名又は名称】久原 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100142837
【弁理士】
【氏名又は名称】内野 則彰
(74)【代理人】
【識別番号】100123685
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 信行
(72)【発明者】
【氏名】小関 修
【審査官】 島▲崎▼ 純一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−207350(JP,A)
【文献】 特開2010−017901(JP,A)
【文献】 特開2010−131942(JP,A)
【文献】 特開2002−240289(JP,A)
【文献】 特開2008−207349(JP,A)
【文献】 特開2002−178509(JP,A)
【文献】 特開平10−146974(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01−2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルターと、前記フィルターの下流側に連通する第一液室と、前記第一液室に連通し液体に圧力を誘起する複数のチャンネルと、複数の前記チャンネルに駆動信号を伝達する電極端子と、前記フィルターの上流側に連通する連絡路とを有するアクチュエータ部と、
前記チャンネルに連通するノズルを有し、前記アクチュエータ部の第一端面に接合されるノズルプレートと、を有するヘッドチップを複数備え、
複数の前記ヘッドチップが各前記ノズルプレートの表面を面一にして積層されるとともに、
前記第一端面に直交し、複数の前記チャンネルが配列する方向の一方に位置する、前記アクチュエータ部の第三端面に設置され、前記アクチュエータ部の各前記フィルターの上流側及び各前記連絡路に連通する第二供給路を有する流路部材を備える液体噴射ヘッド。
【請求項2】
前記第一端面に直交し、複数の前記チャンネルが配列する方向の他方に位置する、前記アクチュエータ部の第四端面に設置され、前記アクチュエータ部の各前記フィルターの上流側及び各前記連絡路に連通する第二排出路を有する流路部材を備えることを特徴とする請求項1に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項3】
前記アクチュエータ部は、前記フィルターの上流側に連通する第二液室を備える請求項1または2に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項4】
上段の前記ヘッドチップは、下段の前記ヘッドチップの前記フィルターに対応する領域に凹部を有する請求項1〜のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項5】
前記電極端子は、前記アクチュエータ部の前記第一端面に対して反対側の第二端面の側に設置される請求項1〜4のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項6】
上段の前記ヘッドチップと下段の前記ヘッドチップとはゴムシール材により接合される請求項1〜のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項7】
前記ヘッドチップは、その上端面又は下端面に接合剤導入用の接合溝を有する請求項1〜のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項8】
前記アクチュエータ部の前記第一端面に対して反対側の端面を第二端面として、複数の前記ヘッドチップは前記第二端面を面一にして積層される請求項1〜のいずれか一項に記載される液体噴射ヘッド。
【請求項9】
前記アクチュエータ部は、圧電基板と前記圧電基板の表面に接合されるカバープレートから構成され、
前記チャンネルは、前記圧電基板の表面の一方の端部から反対側の他方の端部の近傍まで設置される溝と、前記溝の上部開口を覆う前記カバープレートから構成され、
前記第一液室は前記カバープレートに形成され、
前記フィルターは前記第一液室の上流側の前記カバープレートに設置され、
前記電極端子は前記圧電基板の表面に設置され、
前記第一端面は、前記圧電基板と前記カバープレートが面一に形成される端面から構成される請求項1〜のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項10】
請求項1に記載の液体噴射ヘッドと、
前記液体噴射ヘッドを往復移動させる移動機構と、
前記液体噴射ヘッドに液体を供給する液体供給管と、
前記液体供給管に前記液体を供給する液体タンクと、を備える液体噴射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルから液体を吐出して被記録媒体に文字や図形を記録する、あるいは機能性薄膜を形成する液体噴射ヘッド及びこれを用いた液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、記録紙等にインク滴を吐出して文字や図形を記録する、或いは素子基板の表面に液体材料を吐出して機能性薄膜を形成するインクジェット方式の液体噴射ヘッドが利用されている。この方式は、インクや液体材料を液体タンクから供給管を介して液体噴射ヘッドに供給し、チャンネルに充填したインクや液体材料をチャンネルに連通するノズルから吐出する。液体の吐出の際には、液体噴射ヘッドや被記録媒体を移動させて文字や図形を記録する、或いは所定形状の機能性薄膜を形成する。
【0003】
従来から、液体噴射ヘッドの小型化、高密度記録化のためにアクチュエータユニットを多層化して一体的に構成したインクジェットヘッド100が提案されている。図12は、特許文献1に記載されるインクジェットヘッドの模式図である(特許文献1の図1)。インクジェットヘッド100は、カバープレート121とベースプレート122とから構成されるアクチュエータユニット120〜190の8ユニットが積層され、その端面に一枚のノズルプレート111が接着されている。各ユニットは基本的に同じ構造を有している。即ち、ベースプレート122にはその表面に並列する複数のインク室124が形成され、各インク室124は2つの圧電素子により挟まれ、上面の開口がカバープレート121により覆われている。
【0004】
積層部のカバープレート131はノズルプレート111とは反対側にはみ出し部131aを備え、このはみ出し部131aに出力側電極128と入力側電極126が形成され、駆動ICチップ125が設置されている。はみ出し部131aにはフレキシブル基板(以下、FPCという。)127が接続され、入力側電極126に導通する。ノズルプレート111には各ベースプレート122の各インク室124に連通する複数のノズル112が形成されている。各アクチュエータユニットの駆動ICチップ125は、FPC127、入力側電極126を介して制御信号を入力し、出力側電極128、ベースプレート122のノズルプレート111側の端面に形成した駆動電極123を介して圧電素子に駆動信号を供給し、インク室124を駆動する。インク室124は駆動信号に応じて内部に充填されるインクに圧力を印加してノズル112からインク滴を吐出する。
【0005】
図13は、特許文献2に記載される液体噴射ヘッド220の断面模式図である。液体噴射ヘッド220は、アクチュエータ基板225とカバープレート基板226が積層されるヘッドチップ本体227が4段積層され、その他縁端221bには一枚のノズルプレート223が接合されている。4段積層されるヘッドチップ本体227の各アクチュエータ基板225は下段になるに従い一縁端221Aが上段よりも突出する。各アクチュエータ基板225の突出部上面である基板接続面228にはFPC213がそれぞれ接続される。
【0006】
各アクチュエータ基板225にはP方向のほぼ同じ位置にチャンネル229が複数並列に形成され、各チャンネル229は側壁229bにより挟まれ、各側壁229bには電極231が形成される。電極231は基板接続面228まで延設され、基板接続面228に接合されるFPC213に形成される図示しない配線に導通する。ノズルプレート223には複数のノズル223aが形成され、複数のノズル223aは各アクチュエータ基板225の複数のチャンネル229にそれぞれ連通する。カバープレート基板226には各チャンネル229に連通するインク室232と、一方の端部がインク室232に開口し、他方の端部が下段のヘッドチップ本体227のインク室232に連通するインク供給孔234が形成される。したがって、最上段のヘッドチップ本体227のインク室232に供給されるインクは最上段のヘッドチップ本体227の各チャンネル229に供給されるとともに、下段のヘッドチップ本体227のインク室232に供給され、全ヘッドチップ本体の227のチャンネル229に供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−146974号公報
【特許文献2】特開2008−207350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1のインクジェットヘッド100は、上段のアクチュエータユニット120のインク室124に供給される駆動信号は、下段のアクチュエータユニット130に設置される駆動ICチップ125から供給される。また、一枚のノズルプレート111を使用している。したがって、インクジェットヘッド100は各段のアクチュエータユニット120〜190をすべて積層して組み立てが完了した後でなければ試験駆動を行って良否を判定することができない。
【0009】
また、特許文献1のインクジェットヘッド100では、従来から用いられているFPC127を図面上側からカバープレート131に圧着して接続する工程を検討した場合、各段のアクチュエータユニット120〜190を積層した後で各段にFPC127を接続することは困難である。そのため、予めFPC127を接続したアクチュエータユニット120〜190を用意し、FPC127が接合されたアクチュエータユニット120〜190を順次積層することになる。その場合に、各アクチュエータユニット120〜190をノズルプレート111側の端面を面一に整列させて接合するのが難しい。各アクチュエータユニット120〜190のノズルプレート111側の端面には駆動電極123が設置されているので、各アクチュエータユニット120〜190を接合した後に、ノズルプレート側の端面を研削して面一に整形することができない。また、一枚のノズルプレート111に多数のノズル112を形成し、多段に積層したアクチュエータユニット120〜190の各インク室124に高精度で位置合わせを行う必要があり、高度な組立作業が要求される。
【0010】
特許文献2に記載の液体噴射ヘッド220では、各液体噴射ヘッド220を積層した後に各ヘッドチップ本体227の一縁端221AにFPC213を接続することは可能である。しかし、各ヘッドチップ本体227を積層して接合した後に一枚のノズルプレート223を接合するので、上記特許文献2に記載されるインクジェットヘッド100と同様に、多数のチャンネル229に多数のノズル223aを高精度で位置合わせをする必要があり、高度な組立作業が要求される。また、特許文献1の場合と同様に、組み立てが完了した後でなければ試験駆動を行って良否を判定することができない。
【0011】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、組み立てが容易であり、試験駆動により良否判定を行ったヘッドチップのみを組み立てることが可能な液体噴射ヘッドの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の液体噴射ヘッドは、フィルターと、前記フィルターの下流側に連通する第一液室と、前記第一液室に連通し液体に圧力を誘起するチャンネルと、前記チャンネルに駆動信号を伝達する電極端子と、を有するアクチュエータ部と、前記チャンネルに連通するノズルを有し、前記アクチュエータ部の第一端面に接合されるノズルプレートと、を有するヘッドチップを複数備え、複数の前記ヘッドチップが各前記ノズルプレートの表面を面一にして積層されることとした。
【0013】
また、前記アクチュエータ部は連絡路を有し、上段の前記アクチュエータ部の前記連絡路は、下段の前記アクチュエータ部の前記フィルターの上流側及び前記連絡路と連通することとした。
【0014】
また、最上段の前記ヘッドチップの上部に設置され、前記フィルターの上流側及び前記連絡路に連通する第一供給路を有する上端流路部材を備えることとした。
【0015】
また、最下段の前記ヘッドチップの下部に設置され、前記連絡路に連通する第一排出路を有する下端流路部材を備えることとした。
【0016】
また、前記チャンネルは複数配列してチャンネル列を構成し、前記第一液室は、前記チャンネル列を構成する複数の前記チャンネルに連通し、前記連絡路は、前記第一液室の前記チャンネルが配列する方向の端部近傍に設置されることとした。
【0017】
また、前記連絡路は、前記第一液室の前記チャンネルが配列する方向の一方の端部近傍に設置される第一連絡路と、他方の端部近傍に設置される第二連絡路とを有することとした。
【0018】
また、上端の前記ヘッドチップの前記第一連絡路は下段の前記ヘッドチップの前記第一連絡路及び前記フィルターの上流側に連通し、上段の前記ヘッドチップの前記第二連絡路は下段の前記ヘッドチップの前記第二連絡路及び前記フィルターの上流側に連通することとした。
【0019】
また、最上段の前記ヘッドチップの上部に設置され、前記フィルターの上流側及び前記第一連絡路に連通する第一供給路を有する上端流路部材を備えることとした。
【0020】
また、最下段の前記ヘッドチップの下部に設置され、前記第二連絡路に連通する第一排出路を有する下端流路部材を備えることとした。
【0021】
また、前記上端流路部材は、前記第二連絡路に連通する第一排出路を有することとした。
【0022】
また、前記連絡路は第二液室に連通することとした。
【0023】
また、前記アクチュエータ部は連絡路を有し、前記アクチュエータ部の第三端面に設置され、前記フィルターの上流側及び前記連絡路に連通する第二供給路を有する右端流路部材を備えることとした。
【0024】
また、前記連絡路は、前記第二供給路に連通する第三連絡路と、前記フィルターの上流側に連通する第四連絡路とを有し、前記アクチュエータ部の前記第三端面に対応する第四端面に設置され、前記第四連絡路に連通する第二排出路を有する左端流路部材を備えることとした。
【0025】
また、前記アクチュエータ部は、前記フィルターの上流側に連通する第二液室を備えることとした。
【0026】
また、上段の前記ヘッドチップは、下段の前記ヘッドチップの前記フィルターに対応する領域に凹部を有することとした。
【0027】
また、前記電極端子は、前記アクチュエータ部の前記第一端面に対して反対側の第二端面の側に設置されることとした。
【0028】
また、上段の前記ヘッドチップと下段の前記ヘッドチップとはゴムシール材により接合されることとした。
【0029】
また、前記ヘッドチップは、その上端面又は下端面に接合剤導入用の接合溝を有することとした。
【0030】
また、前記アクチュエータ部の前記第一端面に対して反対側の端面を第二端面として、複数の前記ヘッドチップは前記第二端面を面一にして積層されることとした。
【0031】
また、前記アクチュエータ部は、圧電基板と前記圧電基板の表面に接合されるカバープレートから構成され、前記チャンネルは、前記圧電基板の表面の一方の端部から反対側の他方の端部の近傍まで設置される溝と、前記溝の上部開口を覆う前記カバープレートから構成され、前記第一液室は前記カバープレートに形成され、前記フィルターは前記第一液室の上流側の前記カバープレートに設置され、前記電極端子は前記圧電基板の表面に設置され、前記第一端面は、前記圧電基板と前記カバープレートが面一に形成される端面から構成されることとした。
【0032】
本発明の液体噴射装置は、上記いずれかに記載の液体噴射ヘッドと、前記液体噴射ヘッドを往復移動させる移動機構と、前記液体噴射ヘッドに液体を供給する液体供給管と、前記液体供給管に前記液体を供給する液体タンクと、を備えることとした。
【発明の効果】
【0033】
本発明の液体噴射ヘッドは、アクチュエータ部とノズルプレートとを有するヘッドチップを複数備える。アクチュエータ部は、フィルターと、フィルターの下流側に連通する第一液室と、第一液室に連通し液体に圧力を誘起するチャンネルと、チャンネルに駆動信号を伝達する電極端子と、を有する。ノズルプレートは、チャンネルに連通するノズルを有し、アクチュエータ部の第一端面に接合される。複数の上記ヘッドチップは各ノズルプレートの表面を面一にして積層される。
【0034】
このように構成したことにより、各ヘッドチップを積層して組み立てる前に各ヘッドチップの検査を行うことが可能となり、事前検査により合格したヘッドチップのみを組み立てることができるので、製造歩留まりを大幅に向上させ、コストダウンを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明の液体噴射ヘッドの基本構成を表す概念図である。
図2】本発明の液体噴射ヘッドの構成を表す概念図である。
図3】本発明の第一実施形態に係るヘッドチップを説明するための図である。
図4】本発明の第一実施形態に係る液体噴射ヘッドの断面模式図である。
図5】本発明の第一実施形態に係る液体噴射ヘッドを吐出面側から見る正面模式図である。
図6】本発明の第二実施形態に係る液体噴射ヘッドを吐出面側から見る正面模式図である。
図7】本発明の第三実施形態に係る液体噴射ヘッドを吐出面側から見る正面模式図である。
図8】本発明の第四実施形態に係る液体噴射ヘッドの断面模式図である。
図9】本発明の第五実施形態に係るヘッドチップの上面模式図である。
図10】本発明の第六実施形態に係る液体噴射ヘッドの断面模式図である。
図11】本発明の第七実施形態に係る液体噴射装置の模式的な斜視図である。
図12】従来公知のインクジェットヘッドの模式図である。
図13】従来公知の液体噴射ヘッドの断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1は、本発明の液体噴射ヘッド1の基本構成を表す概念図である。液体噴射ヘッド1はヘッドチップ2aとヘッドチップ2bが積層される。ヘッドチップ2aは、アクチュエータ部3aとアクチュエータ部3aの第一端面F1aに接合されるノズルプレート4aとを備える。ヘッドチップ2bは、アクチュエータ部3bとアクチュエータ部3bの第一端面F1bに接合されるノズルプレート4bとを備える。
【0037】
アクチュエータ部3aは、フィルター7aの下流側に連通する第一液室5aと、第一液室5aに連通し、液体に圧力を誘起するチャンネル8aと、チャンネル8aに駆動信号を伝達する電極端子10aを有する。ノズルプレート4aは、チャンネル8aに連通するノズル12aを有し、第一端面F1aに接合される。アクチュエータ部3bは、フィルター7bの下流側に連通する第一液室5bと、第一液室5bに連通し、液体に圧力を誘起するチャンネル8bと、チャンネル8bに駆動信号を伝達する電極端子10bとを有する。ノズルプレート4bは、チャンネル8bに連通するノズル12bを有し、第一端面F1bに接合される。そして、ヘッドチップ2aとヘッドチップ2bとは各ノズルプレート4a、4bの表面を面一にして積層される。なお、ノズルプレート4a、4bの表面は、一枚のノズルプレート4をヘッドチップ2aの第一端面F1aとヘッドチップ2bの第一端面F1bに亘って接合する際に要求されるほど高精度に面一とする必要はない。チャンネル8a、8bは、紙面奥側又は紙面手前側に複数並列して形成され、チャンネル列9a、9bが構成される。
【0038】
ヘッドチップ2aとヘッドチップ2bが同一構造であれば、ヘッドチップ2aの第一端面F1aに対して反対側の第二端面F2aと、ヘッドチップ2bの第一端面F1bに対して反対側の第二端面F2bも面一に設置される。各電極端子10a、10bはそれぞれ第二端面F2a、F2bの近傍上面に設置され、FPC24a、24bがそれぞれ接続される。
【0039】
ヘッドチップ2aは次のよう動作する。開口部Kaから供給される液体の一部は、フィルター7aを介して第一液室5aに流入し、チャンネル8aに充填され、他は連絡路13aに流入する。連絡路13aはアクチュエータ部3aの開口部Kbに開口し、液体の一部はフィルター7bを介して第一液室5bに充填され、他は連絡路13bに流入する。チャンネル8aは、例えば圧電素子から成る側壁に挟まれるように構成され、これらの圧電素子には電極端子10aから駆動信号が与えられる。チャンネル8aは、駆動信号に応じて容積が変化し、内部に充填される液体に圧力を誘起する。この誘起された圧力によってノズル12aから液滴が吐出される。ヘッドチップ2bも同様の構造を有し、同様に動作する。
【0040】
以上の通り、上段のヘッドチップ2aと下段のヘッドチップ2bは同じ構造を有する。従って、2つのヘッドチップ2a、2bは同一の製造工程により製造することができる。各ヘッドチップ2a、2bは、それぞれフィルター7a、7bを備える。そのため、組立工程の途中でチャンネル8a、8bにゴミ等の異物が進入することを防止できる。また、各アクチュエータ部3a、3bの第一端面F1a、F1bにノズルプレート4a、4bを個別に設置するので、1枚のノズルプレートを複数のアクチュエータ部の端面に接合するよりも位置合わせが容易となり、更に、他のヘッドチップを積層して接合する前に各ヘッドチップ2a、2bの吐出検査を行うことができる。言い換えれば、実際に液体を吐出させる吐出検査により合格したヘッドチップ2a、2bのみを組み付けることができるので、組み付けた後にヘッドチップ2a、2bを検査する場合よりも製造歩留まりが向上し、コストダウンを図ることができる。
【0041】
なお、図1に示すように各ヘッドチップ2a、2bは、開口部Ka、Kbにそれぞれ連通し、液体を流すための連絡路13a、13bを有する。上段のヘッドチップ2aの連絡路13aは、下段のヘッドチップ2bのフィルター7bの上流側及び連絡路13bと連通する。そのため、上段のヘッドチップ2aの連絡路13aから流出する液体は下段のヘッドチップ2bのフィルター7b及び連絡路13bに流入する。このように上段のヘッドチップ2aから下段のヘッドチップ2bに順次液体を供給することができ、2段以上の多数段のヘッドチップ2を積層する場合でも各段の間に別に流路部材を設置する必要が無い。
【0042】
図2は、本発明の液体噴射ヘッド1の構成を表す概念図であり、4つのヘッドチップ2a〜2dが積層される。各ヘッドチップ2a〜2dは、図1に示すヘッドチップ2aと同じ構造を有し、互いに接着剤を介して、或いはゴムシール材を介在して固定される。最上段のヘッドチップ2aの上部には上端流路部材14が設置され、上端流路部材14はフィルター7aの上流側及び連絡路13aに連通する第一供給路55を備える。最下段のヘッドチップ2dの下部には下端流路部材15が設置され、下端流路部材15は連絡路13dに連通する第一排出路57を備える。更に、ヘッドチップ2aの電極端子10aと回路基板25とはFPC24aにより接続される。同様に、各ヘッドチップ2b〜2dの電極端子10b〜10dと回路基板25とはそれぞれFPC24b〜24dにより接続される。
【0043】
これにより、上端流路部材14の第一供給路55に供給される液体は、ヘッドチップ2aの開口部Kaを介して一部がフィルター7aに流入し、更にチャンネル8aに充填され、他が連絡路13aに流入し、以下、各ヘッドチップ2b〜2dの各チャンネル及び各連絡路に流入する。更に、連絡路13dから下端流路部材15の液体排出路17に流入し、外部へ排出される。
【0044】
なお、図2において最上段のヘッドチップ2aの上部に上端流路部材14を設置し、最下段のヘッドチップ2dの下部に下端流路部材15を設置したが、本発明はこの構成に限定されない。各ヘッドチップ2a〜2dに液体流入用と液体流出用の複数の連絡路13を形成し、ヘッドチップ2aの上部に設置する上端流路部材14に液体供給用の供給路と液体排出用の排出路を形成し、供給路がヘッドチップ2aの液体流入用の連絡路及びフィルター7の上流側に連通し、排出路がヘッドチップ2aの液体排出用の連絡路に連通する構成としてもよい。また、液体を供給し及び排出する流路部材を各ヘッドチップ2a〜2dの側端面に接合し、各ヘッドチップ2a〜2dの横方向から液体を流入出するように構成することができる。
【0045】
このように、ヘッドチップ2a〜2dの多数段を積層したので、各ノズルから吐出する液滴の記録密度を向上させることができる。また、4つのヘッドチップ2a〜2dは同一の製造工程により製造することができる。各ヘッドチップ2a〜2dにはそれぞれフィルターが設置されるので、製造途中で各チャンネルにゴミ等の異物が進入することを防止できる。また、各アクチュエータ部の第一端面にそれぞれノズルプレートを設置したので、各ヘッドチップ2a〜2dを積層して接合する前に事前に吐出検査を行うことができる。つまり、合格したヘッドチップ2a〜2dのみを組み付けることができるので、組み付けた後に検査するよりも製造歩留まりが向上し、コストダウンを図ることができる。
【0046】
(第一実施形態)
図3図4及び図5は、本発明の第一実施形態に係る液体噴射ヘッド1を説明するための図である。図3はヘッドチップ2を説明するための図であり、図3(a)がヘッドチップ2の平面模式図であり、図3(b)が部分YYの断面模式図であり、図3(c)が部分XXの断面模式図である。図4は液体噴射ヘッド1の断面模式図である。図5は液体噴射ヘッド1を吐出面側から見る正面模式図である。なお、各図において、同一の部分または同一の機能を有する部分には同じ符号を付した。
【0047】
図3に示すように、アクチュエータ部3は、圧電体からなる圧電基板21とこの圧電基板21の表面に接合されるカバープレート22から構成される。圧電基板21の表面には一方の端部である第一端面F1から反対側の他方の端部である第二端面F2の近傍まで延設される複数の並列する溝23が形成され、第二端面F2側の表面には複数の溝23に対応して複数の電極端子10が形成される。チャンネル8は、圧電基板21に形成される溝23と溝23の上部開口を覆うカバープレート22から構成される。
【0048】
カバープレート22にはフィルター7が設置され、フィルター7の液体流入側に第二液室6が、フィルター7の液体流出側には第一液室5がそれぞれ設置される。カバープレート22は複数の溝23を覆うように、また、複数の電極端子10が露出するように圧電基板21の表面に接合される。ノズルプレート4は、圧電基板21の第一端面F1とこの第一端面F1に面一に形成されるカバープレート22の端面に接合される。圧電基板21の第二端面F2の表面にはFPC24が接合される。FPC24の表面に形成される複数の配線27は圧電基板21の表面に形成される複数の電極端子10とそれぞれ導通する。FPC24の配線27は接合部以外は保護膜28により覆われている。
【0049】
チャンネル8は、液体を吐出する吐出チャンネル8’と液体を吐出しないダミーチャンネル8’’が交互に並列して形成される。液体を吐出する複数の吐出チャンネル8’は吐出チャンネル8’の短手方向に複数配列するチャンネル列を構成する。カバープレート22には第一液室5と連通する複数のスリット11が形成され、各スリット11はそれぞれ吐出チャンネル8’に連通し、ダミーチャンネル8’’には連通しない。従って、吐出チャンネル8’には液体が流入するがダミーチャンネル8’’には液体が流入しない。
【0050】
第一液室5は、チャンネル列を構成する複数の吐出チャンネル8’に連通する。連絡路は、第一液室5の吐出チャンネル8’が配列する方向の一方の端部近傍に設置される第一連絡路51と他方の端部近傍に設置される第二連絡路52とを有する。2つの第一及び第二連絡路51、52は、第二液室6からカバープレート22と圧電基板21とを貫通してヘッドチップ2のフィルター7が設置される側とは反対側の表面に開口する。
【0051】
各チャンネル8を構成する側壁の側面には駆動電極26が形成され、側壁の厚さ方向に電界を印加できるように構成されている。各側壁の駆動電極26は電極端子10に導通する。各チャンネル8を構成する側壁は圧電体から成り、予め側壁の立設方向に分極処理が施されている。第二液室6に供給される液体は、フィルター7を通して第一液室5に流入し、更に、スリット11を介して複数の吐出チャンネル8’に充填される。電極端子10に駆動信号が印加されと側壁は立設方向に対し「くの字」状に変形(厚み滑り変形)する。これにより、吐出チャンネル8’に充填される液体に圧力が誘起されて吐出チャンネル8’に連通するノズル12から液滴が吐出される。
【0052】
図4に示すように、4つの上記ヘッドチップ2a〜2dを、それぞれに設置されるノズルプレート4の表面が面一になるようにして接着剤により接合する。この際に、上段のアクチュエータ部3の第一及び第二連絡路51、52は下段のアクチュエータ部3の第一連絡路51と第二液室6及び第二連絡路52と第二液室6にそれぞれ連通する。更に、最上段のヘッドチップ2aの上部に上端流路部材14を設置し、最下段のヘッドチップ2dの下部に下端流路部材15を設置する。上端流路部材14は第一供給路55を有し、第一供給路55がヘッドチップ2aの第二液室6に連通するようにヘッドチップ2aの上面に接着剤により接合される。下端流路部材15は、第一排出路57を有し、第一排出路57がヘッドチップ2dの第二連絡路52に連通するようにヘッドチップ2dの下面に接着剤により接合される。
【0053】
4枚のヘッドチップ2a〜2dと上端流路部材14及び下端流路部材15の積層体は、枠体30の中央開口部Kcにノズルプレート4a〜4dの表面が露出するようにして挿入され、ベース基板29に固定される。ベース基板29には回路基板25が設置され、回路基板25と各ヘッドチップ2a〜2dのそれぞれに設置される電極端子10とはFPC24により電気的に接続される。
【0054】
図5に示すように、液体噴射ヘッド1の吐出面は、各ヘッドチップ2a〜2dに設置される各ノズルプレート4a〜4dにより構成される。各ノズルプレート4a〜4dには複数のノズル12が開口する。矢印で示すように、上端流路部材14の第一供給路55から流入する液体は各ヘッドチップ2a〜2dの第一連絡路51及び第二液室6に流入し、第二液室6を第一連絡路51側から第二連絡路52側に流れて最下段のヘッドチップ2dの第二連絡路52dに集まり、下端流路部材15の第一排出路57から排出される。従って、各ノズル12には常に新鮮な液体が供給される。なお、各ノズルプレート4a〜4dのノズル12は、複数のノズル12が配列するノズル列方向に1/4ピッチ、あるいは1/2ピッチずらして設置し、密度記録を向上させることができる。
【0055】
このように、4つのヘッドチップ2a〜2dは同じ構造を有する。従って、各ヘッドチップ2a〜2dは同一の製造工程により製造することができる。更に、各ヘッドチップ2a〜2dにはノズルプレート4a〜4dとフィルター7a〜7dが設置される。そのため、各ヘッドチップ2a〜2dにFPC24を接合する工程や、各ヘッドチップ2a〜2dを積層して接合する接合工程や、上端流路部材14や下端流路部材15を設置する工程においてチャンネル8にごみ等の異物が進入することを防止できる。また、各ヘッドチップ2a〜2dは、積層して接合する前に事前に吐出検査を行うことができるので、製造歩留まりが向上する。また、いずれかのヘッドチップ2が故障した場合は、その故障したヘッドチップ2のみを交換することができるので、メンテナンスを容易にかつ安価に行うことができる。また、図13に示される従来の液体噴射ヘッド220と比較して、ヘッドチップ本体が下段になるほど後方に大きく突出することがないので、圧電体等の材料を削減することができ、軽量でかつコンパクトに構成することができる。
【0056】
なお、上記実施形態においては吐出チャンネル8’とダミーチャンネル8’’が交互に配列する1サイクル駆動により吐出動作を行うヘッドチップ2について説明したが、本発明はこれに限定されない。全てのチャンネル8を吐出チャンネルとし3サイクル駆動により吐出動作を行うヘッドチップ2であってもよい。また、アクチュエータ部3を構成する圧電基板21として圧電体を使用したが、これに代えて、溝23の側壁のみを圧電体とし、その他を絶縁体からなる基板を使用してもよい。また、アクチュエータ部3に形成する溝23を第一端面F1から第二端面F2までストレートに形成し、第一液室5の第二端面F2側の溝23を封止材により封止し、液体が外部に漏れ出ないように構成してもよい。
【0057】
(第二実施形態)
図6は、本発明の第二実施形態に係る液体噴射ヘッド1の吐出面側から見る正面模式図である。第一実施形態と異なる点は、上端流路部材14によって液体の供給と排出を行い、下端流路部材15を省いた点である。その他の構成は第一実施形態と同様なので説明を省略する。同一の部分または同一の機能を有する部分には同一の符号を付した。
【0058】
図6に示すように、上端流路部材14は、最上段のヘッドチップ2aの上部に設置され、フィルター7aの上流側(第二液室6)及び第一連絡路51aに連通する第一供給路55と、第二連絡路52aに連通する第一排出路57とを有する。矢印で示すように、液体は、上端流路部材14の第一供給路55からヘッドチップ2aの第二液室6と第一連絡路51aに流入し、更に、第一連絡路51aから順次下段の各ヘッドチップ2b〜2dの第二液室6と第一連絡路51に流入し、各ヘッドチップ2a〜2dの第二液室6を一方の端部から他方の端部に流れて各ヘッドチップ2a〜2dの第二連絡路52に流入し、上端流路部材14の第一排出路57から排出される。
【0059】
以上の通り、下端流路部材15を省略することができるので、液体噴射ヘッド1の体積及び重量を小さく構成することができる。なお、図6において、最下段のヘッドチップ2の下部に下端流路部材15を設置し、ヘッドチップ2dの第一連絡路51から第二連絡路52に液体を流して液体の滞留個所を除去するように構成してもよい。また最下段のヘッドチップ2dから第一連絡路51及び第二連絡路52を除去し、ヘッドチップ2cの第一連絡路51から流入する全ての液体をヘッドチップ2dの第二液室6に導き、この第二液室6から流出する液体をヘッドチップ2cの第二連絡路52に導くように構成してもよい。
【0060】
(第三実施形態)
図7は、本発明の第三実施形態に係る液体噴射ヘッド1の吐出面側から見る正面模式図である。第一実施形態と異なる点は、上端流路部材14及び下端流路部材15に代えて、ヘッドチップ2a〜2dの右側面である第三端面F3に右端流路部材16を設置し、左側面である第四端面F4に左端流路部材17を設置した点である。以下、主に第一実施形態と異なる部分について説明し、同一の部分については説明を省略する。同一の部分または同一の機能を有する部分には同一の符号を付した。なお、以下の説明で「右」及び「左」は、アクチュエータ部3のチャンネル列方向における両側面の内の一方と他方の意味であり、特定角度から見たときの右及び左を指すものではない。
【0061】
図7に示すように、右端流路部材16はヘッドチップ2a〜2dの第三端面F3に設置され、各ヘッドチップ2a〜2dのフィルター7の上流側(第二液室6)及び第三連絡路53に連通する。また、左端流路部材17はヘッドチップ2a〜2dの第四端面F4に設置され、各ヘッドチップ2a〜2dのフィルター7の上流側及び第四連絡路54に連通する。
【0062】
ここで、各ヘッドチップ2a〜2dの第三連絡路53及び第四連絡路54は各アクチュエータ部3を構成するカバープレート22(図4を参照)の表面に設置される。矢印で示すように、右端流路部材16に供給される液体は、第二供給路56から各ヘッドチップ2a〜2dの第三連絡路53と第二液室6に流入し、第三連絡路53側から第四連絡路54側に流れ、第四連絡路54を介して第二排出路58に流入して排出される。
【0063】
なお、図7においては、第二供給路56から第三連絡路53を介して各ヘッドチップ2a〜2dに液体が流入し、各ヘッドチップ2a〜2dの第四連絡路54を介して第二排出路58に液体が流入する。これに代えて、各ヘッドチップ2a〜2dの第三連絡路53を第二実施形態のように上段のヘッドチップ2と下段のヘッドチップ2間で連通するように構成する。第四連絡路54も同様に上段と下段のヘッドチップ2間で連通するように構成する。そして、右端流路部材16の第二供給路56をヘッドチップ2aの第三連絡路53に連通し、左端流路部材17の第二排出路58をヘッドチップ2dの第四連絡路54に連通するように構成してもよい。これにより、液滴吐出方向と直交する方向から液体の流入出を行うことができる。
【0064】
(第四実施形態)
図8は、本発明の第四実施形態に係る液体噴射ヘッド1の断面模式図である。図8において、枠体、ベース基板、回路基板及びFPCは省略した。同一の部分または同一の機能を有する部分には同じ符号を付している。第一実施形態と異なる部分は、上段のヘッドチップ2は下段のヘッドチップ2のフィルター7に対応する領域に凹部18が形成される点であり、その他は第一実施形態と同様である。以下、第一実施形態と異なる部分について説明し、同一の部分については説明を省略する。
【0065】
図8に示すように、液体噴射ヘッド1は、4つのヘッドチップ2a〜2dが各ノズルプレート4a〜4dの表面を面一に積層される。最上段のヘッドチップ2aの上部には上端流路部材14が、最下段のヘッドチップ2dの下部には下端流路部材15がそれぞれ設置される。そして、上段のヘッドチップ2は下段のヘッドチップ2のフィルター7に対応する領域に凹部18を有し、上段のヘッドチップ2の第一連絡路51(第二連絡路52)はこの凹部18の底面に開口する。つまり、下段のフィルター7の上流側に設置される第二液室6は、上段のヘッドチップ2の凹部18が加わり領域が拡大する。第二液室6に凹部18の領域が加わることにより、第二液室6に流入する液体がフィルター7の有効面の全面に回り込みやすくなり、フィルター7による圧力損失が低減する。
【0066】
(第五実施形態)
図9は、本発明の第五実施形態に係る液体噴射ヘッド1のヘッドチップ2の上面模式図である。同一の部分または同一の機能を有する部分には同じ符号を付している。第一実施形態のヘッドチップ2と異なる点は、ヘッドチップ2の上端面TFの外周近傍に接合溝20を有することと、圧電基板21の表面に形成する溝23は両端部の溝23を除き全て液滴の吐出可能なチャンネル8を構成し、第一液室5はスリットを備えず両端部の溝23を除く全ての溝23に連通する点である。以下、第一実施形態と異なる点について説明し、同一の部分については説明を省略する。
【0067】
図9に示すように、ヘッドチップ2は、その上端面TF、即ちヘッドチップ2を構成するカバープレート22の上端面TFに接合剤導入用の接合溝20を有する。接合溝20は、カバープレート22の上端面TFに開口する第二液室6の開口部を囲むように、カバープレート22の外周に沿って設置される。接合溝20は、複数のチャンネル8が配列する配列方向の側面に開口する2つの開口部K1を備える。下段のヘッドチップ2の上に上段のヘッドチップ2を積層し、開口部K1から接着剤を導入して上段と下段のヘッドチップ2を接着することができる。
【0068】
なお、本実施形態では3サイクル駆動により吐出駆動を行うことができる。また、本実施形態では接合溝20をヘッドチップ2の上端面TFに設置したが、これに代えて、又はこれに加えて接合溝20をヘッドチップ2の下端面(圧電基板21の下面)に設置してもよい。
【0069】
(第六実施形態)
図10は、本発明の第六実施形態に係る液体噴射ヘッド1の断面模式図である。図10において、枠体、ベース基板、回路基板及びFPCは省略した。同一の部分または同一の機能を有する部分には同じ符号を付した。第一実施形態と異なる部分は、上段のヘッドチップ2と下段のヘッドチップ2とはゴムシール材19を介して積層される点であり、その他の構成は第一実施形態と同様である。以下、第一実施形態と異なる部分について説明し、同一の部分については説明を省略する。
【0070】
図10に示すように、上段のヘッドチップ2と下段のヘッドチップ2とはゴムシール材19を挟んで積層される。ゴムシール材19は、上段のヘッドチップ2の第一連絡路51(第二連絡路52)が開口する位置、及び下段のヘッドチップ2の第二液室6が開口する領域に貫通孔KTを備える。また、最上段のヘッドチップ2aの上部に上端流路部材14が、最下段のヘッドチップ2dの下部に下端流路部材15がそれぞれゴムシール材19を介して設置される。最上段のヘッドチップ2aと上端流路部材14との間に設置されるゴムシール材19は、上端流路部材14に形成される第一供給路55が開口する領域と最上段のヘッドチップ2aの第二液室6が開口する領域に対応して貫通孔KTを有する。最下段のヘッドチップ2dと下端流路部材15との間のゴムシール材19も同様に貫通孔KTを有する。このように、各ヘッドチップ2a〜2d、上端流路部材14及び下端流路部材15の間にゴムシール材19を設置することにより、メンテナンス時に液体噴射ヘッド1を容易に分解し、容易に組み立てることが可能となる。
【0071】
(第七実施形態)
図11は本発明の第七実施形態に係る液体噴射装置50の模式的な斜視図である。液体噴射装置50は、液体噴射ヘッド1、1’を往復移動させる移動機構40と、液体噴射ヘッド1、1’に液体を供給し、液体噴射ヘッド1、1’から液体を排出する流路部35、35’と、流路部35、35’に液体を供給する液体ポンプ33、33’及び液体タンク34、34’とを備えている。各液体噴射ヘッド1、1’は複数のヘッドチップを備え、各ヘッドチップは複数のチャンネルを備え、各チャンネルに連通するノズルから液滴を吐出する。液体噴射ヘッド1、1’は既に説明した第一〜第六実施形態のいずれかを使用する。
【0072】
液体噴射装置50は、紙等の被記録媒体44を主走査方向に搬送する一対の搬送手段41、42と、被記録媒体44に液体を吐出する液体噴射ヘッド1、1’と、液体噴射ヘッド1、1’を載置するキャリッジユニット43と、液体タンク34、34’に貯留した液体を流路部35、35’に押圧して供給する液体ポンプ33、33’と、液体噴射ヘッド1、1’を主走査方向と直交する副走査方向に走査する移動機構40を備えている。図示しない制御部は液体噴射ヘッド1、1’、移動機構40、搬送手段41、42を制御して駆動する。
【0073】
一対の搬送手段41、42は副走査方向に延び、ローラ面を接触しながら回転するグリッドローラとピンチローラを備えている。図示しないモータによりグリッドローラとピンチローラを軸周りに移転させてローラ間に挟み込んだ被記録媒体44を主走査方向に搬送する。移動機構40は、副走査方向に延びた一対のガイドレール36、37と、一対のガイドレール36、37に沿って摺動可能なキャリッジユニット43と、キャリッジユニット43を連結し副走査方向に移動させる無端ベルト38と、この無端ベルト38を図示しないプーリを介して周回させるモータ39を備えている。
【0074】
キャリッジユニット43は、複数の液体噴射ヘッド1、1’を載置し、例えばイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4種類の液滴を吐出する。液体タンク34、34’は対応する色の液体を貯留し、液体ポンプ33、33’、流路部35、35’を介して液体噴射ヘッド1、1’に供給する。各液体噴射ヘッド1、1’は駆動信号に応じて各色の液滴を吐出する。液体噴射ヘッド1、1’から液体を吐出させるタイミング、キャリッジユニット43を駆動するモータ39の回転及び被記録媒体44の搬送速度を制御することにより、被記録媒体44上に任意のパターンを記録することできる。
【符号の説明】
【0075】
1 液体噴射ヘッド
2、2a〜2d ヘッドチップ
3、3a、3b アクチュエータ部
4、4a〜4d ノズルプレート
5、5a、5b 第一液室
6 第二液室
7、7a〜7d フィルター
8、8a、8b チャンネル、8’ 吐出チャンネル、8’’ダミーチャンネル
10、10a〜10d 電極端子
11 スリット
12、12a、12b ノズル
13、13a、13b、13d 連絡路
14 上端流路部材
15 下端流路部材
16 右端流路部材
17 左端流路部材
18 凹部
19 ゴムシール材
20 接合溝
21 圧電基板
22 カバープレート
23 溝
24、24a〜24d FPC
51 第一連絡路、52 第二連絡路、53 第三連絡路、54 第四連絡路
55 第一供給路、56 第二供給路
57 第一排出路、58 第二排出路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13