(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5856511
(24)【登録日】2015年12月18日
(45)【発行日】2016年2月9日
(54)【発明の名称】杭基礎構造
(51)【国際特許分類】
E02D 27/00 20060101AFI20160120BHJP
E02D 27/12 20060101ALI20160120BHJP
E04H 5/00 20060101ALI20160120BHJP
H01L 31/042 20140101ALI20160120BHJP
【FI】
E02D27/00 C
E02D27/12 Z
E04H5/00
H01L31/04 500
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-59805(P2012-59805)
(22)【出願日】2012年3月16日
(65)【公開番号】特開2013-194365(P2013-194365A)
(43)【公開日】2013年9月30日
【審査請求日】2014年12月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】504288535
【氏名又は名称】ホリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095212
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 武
(72)【発明者】
【氏名】高草木 正彦
【審査官】
苗村 康造
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−105778(JP,A)
【文献】
特開昭51−148924(JP,A)
【文献】
特開2011−094474(JP,A)
【文献】
実開平04−053840(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 27/00〜 27/52
E02D 5/22〜 5/80
H02S 20/00〜 20/32
H01L 31/042
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤上に設置される構築物のための杭基礎構造であって、
前記地盤内に侵入する部分の外周面に螺旋羽根が設けられ、この螺旋羽根が前記地盤内にねじ込まれるとともに、頭部が地表面に露出する杭と、この頭部と前記構築物との間に介設され、前記杭と前記構築物との位置関係を水平の直交二方向に調整可能とする水平方向調整部材とを含んで構成される杭基礎構造において、
前記杭と水平方向調整部材との間に、前記杭を中心に回転させることにより前記杭に対する高さ位置が変化するねじ式高さ調整手段が設けられ、
前記ねじ式高さ調整手段は、前記杭を中心に回転させることにより前記杭に対して昇降する昇降部材を含んで構成され、
前記昇降部材の本体は、内部に前記杭の頭部が収納される筒状となっていることを特徴とする杭基礎構造。
【請求項2】
請求項1に記載の杭基礎構造において、前記杭の前記頭部は、外周面に前記螺旋羽根が設けられている前記杭の本体の頂部に被冠固定されたキャップ部材によって形成されており、このキャップ部材の外径は、前記杭の前記本体の外径よりも大きい寸法になっているとともに、前記昇降部材の前記本体の内径は、前記キャップ部材の外径と同じ又はこの外径よりも僅かに大きい寸法になっていることを特徴とする杭基礎構造。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の杭基礎構造において、前記ねじ式高さ調整手段は、前記杭の前記頭部に立設固定される雄ねじ棒を含んで構成され、前記昇降部材に、前記雄ねじ棒が螺入される昇降ナットが結合されていることを特徴とする杭基礎構造。
【請求項4】
請求項3に記載の杭基礎構造において、前記昇降ナットから上方へ延出する前記雄ねじ棒の上部に固定ナットが螺合され、この固定ナットにより、前記昇降部材の上面に載置される前記水平方向調整部材が前記昇降部材に固定されることを特徴とする杭基礎構造。
【請求項5】
請求項4に記載の杭基礎構造において、前記固定ナットが螺合される前記雄ねじ棒の前記上部は、前記水平方向調整部材の上面から突出しておらず、前記水平方向調整部材の前記上面よりも下側の高さ位置において前記雄ねじ棒の前記上部に螺合される前記固定ナットにより、前記水平方向調整部材が前記昇降部材に固定されることを特徴とする杭基礎構造。
【請求項6】
請求項5に記載の杭基礎構造において、前記水平方向調整部材は、前記構築物が載置される高位部材と、この高位部材の下側に配置され、前記雄ねじ棒の前記上部が上下に貫通する低位部材とを含んで構成され、前記高位部材と前記低位部材との間に、前記雄ねじ棒の前記上部に螺合された前記固定ナットを操作するための工具が挿入可能となった空間部が設けられていることを特徴とする杭基礎構造。
【請求項7】
請求項4〜6のいずれかに記載の杭基礎構造において、前記水平方向調整部材には、前記雄ねじ棒の前記上部が上下に貫通する孔が形成されているとともに、この孔は、前記水平の直交二方向のうち、一つの方向に長い長孔となっており、前記水平方向調整部材には、この水平方向調整部材と前記構築物とを結合するためのボルトが挿入される孔も形成され、この孔は、前記水平の直交二方向のうち、他の方向に長い長孔となっていることを特徴とする杭基礎構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤上に設置される構築物のための杭基礎構造に係り、例えば、太陽光発電のためのソーラーパネル設置架台や、建築現場用仮設足場、さらには、仮設住宅等の各種の構築物を地盤に固定するために利用できるものである。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献1には、地盤上に設置される構築物のための杭基礎構造が示されている。この杭基礎構造は、地盤内に侵入する部分の外周面に螺旋羽根が設けられ、この螺旋羽根が地盤内にねじ込まれるとともに、頭部が地表面に露出する杭と、この頭部と構築物との間に介設され、杭と構築物との位置関係を水平の直交二方向に調整可能とする水平方向調整部材とを含んで構成されるものとなっている。水平方向調整部材は、構築物の支柱が立設される取付板であり、この取付板には、水平の直交二方向のうち、一つの方向に長い長孔が形成されており、また、取付板が載置される杭の頭部には、基板が結合されており、この基板には、杭の中心部から放射状に延びる複数の長孔が設けられている。
【0003】
この杭基礎構造では、杭を、螺旋羽根を地盤中にねじ込み侵入させて地盤に固定するとともに、杭の頭部に設けられている基板を地表面に露出させ、この後に、この基板の上に取付板を載置し、この取付板の長孔と、基板に放射状に複数形成されている長孔のうち、取付板の長孔と直交する位置関係になっている長孔とにボルトを挿入し、このボルトと、このボルトに螺合されるナットとにより、杭の頭部の基板と、構築物の支柱が立設される取付板とを結合することが行われる。
【0004】
そして、この杭基礎構造では、ボルトが挿入された基板の長孔と取付板の長孔とが、水平の直交二方向に長い長孔になっているため、これらの長孔の調整作用により、杭と構築物の支柱との位置関係を水平の直交二方向(例えば、前後方向と左右方向)に調整することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−205108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述の杭基礎構造では、杭の外周面に設けられている螺旋羽根の地盤内へのねじ込み深さにより、地表面に露出する杭の頭部の基板の高さレベルが決まるため、構築物の支柱の高さレベルは、螺旋羽根の地盤内へのねじ込み深さによって決定されることになる。このため、杭を専用機で回転させてこの杭の螺旋羽根を地盤内にねじ込み、これにより、構築物の支柱の所定の高さレベルを得られる深さまで杭を地盤内に侵入させたとき、基板に放射状に複数形成されている長孔のうち、どれかの長孔が必ず取付板の長孔と直交する位置関係になっているとは限らない。
【0007】
このため、基板に放射状に複数形成されている長孔のうち、どれかの長孔を取付板の長孔と直交する位置関係にさせるためには、杭の螺旋羽根の地盤内へのねじ込み深さを調整しなければならず、これによると、杭の地盤内への侵入深さが変わるため、構築物の支柱を正確に所定の高さレベルで地盤上に設置することは困難であり、また、構築物を複数の杭基礎構造で支持する場合には、杭の地盤内への侵入深さが変わることにより、それぞれの杭基礎構造における地表面に露出する杭の頭部の基板の高さレベルが不揃いとなり、構築物が不陸となってしまうという問題も生ずる。
【0008】
本発明の目的は、杭と構築物との位置関係を水平方向の直交二方向に調整できるとともに、構築物を容易かつ正確に所定の高さレベルで地盤上に設置することができる杭基礎構造を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る杭基礎構造は、地盤上に設置される構築物のための杭基礎構造であって、前記地盤内に侵入する部分の外周面に螺旋羽根が設けられ、この螺旋羽根が前記地盤内にねじ込まれるとともに、頭部が地表面に露出する杭と、この頭部と前記構築物との間に介設され、前記杭と前記構築物との位置関係を水平の直交二方向に調整可能とする水平方向調整部材とを含んで構成される杭基礎構造において、前記杭と水平方向調整部材との間に、前記杭を中心に回転させることにより前記杭に対する高さ位置が変化するねじ式高さ調整手段が設けられていることを特徴とするものである。
【0010】
本発明に係る杭基礎構造では、杭と水平方向調整部材との間に、杭を中心に回転させることにより杭に対する高さ位置が変化するねじ式高さ調整手段が設けられているため、このねじ式高さ調整手段を杭を中心に回転させると、杭に対するねじ式高さ調整手段の高さ位置が変化するとともに、このねじ式高さ調整手段の上に配置される水平方向調整部材の高さ位置及びこの水平方向調整部材の上に設置される構築物の高さ位置が変化し、これにより、構築物を容易に所定の高さレベルに設定することができる。
【0011】
また、この杭基礎構造の高さ調整手段は、杭を中心に回転させることにより杭に対する高さ位置が変化するねじ式のものとなっているため、杭に対する高さ調整手段の高さ位置を無段階式に調整することができ、このため、水平方向調整部材の高さ位置を正確に設定できて、構築物を所定の高さレベルに正確に設定することが可能となる。
【0012】
また、本発明に係る杭基礎構造には、ねじ式高さ調整手段と構築物との間において、杭と構築物との位置関係を水平の直交二方向に調整可能とする水平方向調整部材が介設されているため、この水平方向調整部材により、杭と構築物との位置関係を水平の直交二方向に調整できることになる。
【0013】
本発明において、ねじ式高さ調整手段は、杭を中心に回転させることにより杭に対する高さ位置が変化するねじ式のものであれば、任意の部材で構成された任意の構造のものでよい。その一例のねじ式高さ調整手段は、杭の頭部に立設固定される雄ねじ棒と、この雄ねじ棒に螺合する昇降ナットを備え、上面に水平方向調整部材が載置される昇降部材とを含んで構成されるものである。また、他の例のねじ式高さ調整手段は、上面に水平方向調整部材が載置される昇降部材と、この昇降部材の下面に結合されて下向きに延びる雄ねじ棒と、この雄ねじ棒を螺入させるために、杭の頭部に固定されるナットとを含んで構成されるものである。
【0014】
これらのねじ式高さ調整手段では、昇降部材を杭を中心に回転させることにより、雄ねじ棒のねじ昇降案内作用により、杭に対する昇降部材の高さ位置が変化することになる。
【0015】
このようなねじ式高さ調整手段においては、昇降部材の本体を、内部に杭の頭部が収納される筒状としてもよい。
【0016】
このようにねじ式高さ調整手段における昇降部材の本体を、内部に杭の頭部が収納される筒状とすると、地表面に露出する杭の頭部を昇降部材の筒状の本体によって風雨等から保護できることになるため、杭の耐久性を向上させることができる。
【0017】
また、杭の頭部を、外周面に前記螺旋羽根が設けられている杭の本体の頂部に被冠固定されたキャップ部材によって形成し、このキャップ部材の外径を、杭の本体の外径よりも大きい寸法にするとともに、昇降部材の本体の内径を、キャップ部材の外径と同じ又はこの外径よりも僅かに大きい寸法にしてもよい。
【0018】
これによると、昇降部材を回転させることによってこの昇降部材を杭に対して昇降させる際に、杭の外周面と昇降部材の本体の内周面とが接触することがあっても、この接触は、キャップ部材と、このキャップ部材の箇所と対応する昇降部材の本体の内周面の一部とにおいて生じ、上記接触が、昇降部材の本体の内周面の上下に長い領域や杭の本体の外周面の上下に長い領域に渡って生ずることはないため、昇降部材を杭に対して昇降させるために行う昇降部材の回転操作を、杭との回転摩擦力を小さくして容易に行えることになる。
【0019】
また、昇降部材の本体の内径を、キャップ部材の外径と同じ又はこの外径よりも僅かに大きい寸法にすることにより、構築物に作用する外力等により、昇降部材が杭に対して倒れる方向に変位しても、昇降部材の本体の内周面が直ちにキャップ部材の外周面に接触するため、この倒れる方向への昇降部材の変位を防止することができる。
【0020】
また、ねじ式高さ調整手段を、上述したように、杭の頭部に立設固定される雄ねじ棒と、この雄ねじ棒に螺合する昇降ナットを備え、上面に水平方向調整部材が載置される昇降部材とを含んで構成する場合には、この昇降部材に、雄ねじ棒が螺入される昇降ナットが結合されることになる。
【0021】
これによると、昇降部材を杭に対して回転させることにより、昇降部材は、雄ねじ棒に案内されて昇降することになる。
【0022】
このようにねじ式高さ調整手段を構成する場合には、昇降ナットから上方へ延出する雄ねじ棒の上部に固定ナットを螺合し、この固定ナットにより、昇降部材の上面に載置される水平方向調整部材を昇降部材に固定できるようになる。
【0023】
そして、固定ナットが螺合される雄ねじ棒の上部を、水平方向調整部材の上面から突出させず、水平方向調整部材の上面よりも下側の高さ位置において、固定ナットを雄ねじ棒の上部に螺合させるようにしてもよい。
【0024】
これによると、固定ナットが螺合される雄ねじ棒の上部は、水平方向調整部材の上面から突出していないため、水平方向調整部材の上面に、雄ねじ棒の上部に影響されることなく、構築物を安定させて載置固定することができるようになる。
【0025】
また、水平方向調整部材を、構築物が載置される高位部材と、この高位部材の下側に配置され、雄ねじ棒の上部が上下に貫通する低位部材とを含んで構成されたものとし、高位部材と低位部材との間に、雄ねじ棒の上部に螺合された固定ナットを操作するための工具が挿入可能となった空間部を設けてもよい。
【0026】
これによると、固定ナットにより、昇降部材の上面に載置される水平方向調整部材を昇降部材に固定するための作業を行う際に、高位部材と低位部材との間に設けられた上記空間部から固定ナットを操作するための工具が挿入できるため、この作業を容易に行うことができる。
【0027】
また、水平方向調整部材には、雄ねじ棒の上部が上下に貫通する孔を形成するとともに、この孔を、前述した水平の直交二方向のうち、一つの方向に長い長孔とし、水平方向調整部材には、この水平方向調整部材と構築物とを結合するためのボルトが挿入される孔も形成し、この孔を、水平の直交二方向のうち、他の方向に長い長孔としてもよい。
【0028】
これによると、水平方向調整部材には、互いに直交する水平の二方向に長い長孔が形成されることになるため、杭と構築物との位置関係を水平の直交二方向に調整することができるようになる。
【0029】
以上説明した本発明に係る杭基礎構造は、任意の構築物を地盤上に設置するために用いることができ、この構築物は、例えば、太陽光発電のためのソーラーパネル設置架台でもよく、建築現場や解体現場等で構築される仮設足場でもよく、さらには仮設住宅等でもよい。
【0030】
また、構築物を地盤上に設置するために用いられる本発明に係る杭基礎構造の個数は、1個でもよく、複数個でもよい。すなわち、本発明に係る杭基礎構造は、1個だけで構築物を地盤上に設置するものでよく、複数個により構築物を地盤上に設置するものでよい。
【発明の効果】
【0031】
本発明によると、杭と構築物との位置関係を水平方向の直交二方向に調整できるとともに、構築物を容易かつ正確に所定の高さレベルで地盤上に設置できるという効果を得られる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る杭基礎構造が適用された構築物である太陽光発電のためのソーラーパネル設置架台を示す側面図である。
【
図2】
図2は、
図1のソーラーパネル設置架台の要部を示す正面図である。
【
図4】
図4は、
図3で示されている杭基礎構造の分解図である。
【
図5】
図5は、杭基礎構造の構成部材である杭を示し、(A)は、杭の平面図、(B)は、杭の要部の正面図である。
【
図6】
図6は、杭基礎構造のねじ式高さ調整手段の構成部材である昇降部材を示し、(A)は、昇降部材の平面図、(B)は、昇降部材の一部を破断した正面図である。
【
図7】
図7は、水平方向調整部材を示し、(A)は、水平方向調整部材の平面図、(B)は、水平方向調整部材の正面図である。
【
図8】
図8は、杭の頭部の上にねじ式高さ調整手段の昇降部材をセットしたときを示す正断面図である。
【
図9】
図9は、昇降部材の上に水平方向調整部材をセットしたときを示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
図1には、本発明の一実施形態に係る杭基礎構造10により地盤5上に設置された構築物の側面図が示されており、この構築物は、太陽光発電のためのソーラーパネル設置架台1である。多数のソーラーパネル2が設置されるこの架台1のベース部材3は、後側(
図1では右側)に開口したチャンネル材であり、架台1の桁材となって2本設けられているベース部材3のそれぞれが、本実施形態に係る杭基礎構造10により地盤5上に固定配置されている。
【0034】
図2には、1本のベース部材3について複数個設けられている杭基礎構造10が拡大して示されており、また、
図3には、杭基礎構造10の全体が示され、
図4には、杭基礎構造10の分解図が示されている。
図4から分かるように、杭基礎構造10は、杭11と、この杭11の頭部に立設固定される雄ねじ棒12と、この雄ねじ棒12を介して杭11の頭部に取り付けられる昇降部材13と、この昇降部材13の上面に載置される水平方向調整部材15とを含んで構成され、この水平方向調整部材15の上面に上述のベース部材3が載置固定される。
【0035】
そして、本実施形態では、後述の説明で明らかになるように、雄ねじ棒12と昇降部材13を含む部材により、ねじ式高さ調整手段14が構成されている。
【0036】
杭11の鋼管で形成されている本体11Aの外周面には螺旋羽根20が設けられており、この螺旋羽根20は、本実施形態では、本体11Aに上下の間隔を開けて複数個(図示例では3個)設けられている。螺旋羽根は、上下の間隔を開けずに連続して形成されたものでもよく、あるいは、周長が本体11Aの一周よりも小さい複数個のピース部材を、本体11Aの一周よりも短い間隔を開けて螺旋状に配置することにより形成したものでもよい。杭10の本体11Aの下端には、三角錐状の先端部11Bが設けられ、この先端部11Bの外周面には切削刃21が取り付けられている。また、杭10の本体11Aの上端には、キャップ部材22が溶接で取り付けられている。
【0037】
このため、このキャップ部材22によって杭11の頭部で形成されており、
図5(B)に示されているように、板金のプレス成形品となっているキャップ部材22は、杭11の本体11Aの上端開口部を覆う上面部22Aと、杭11の本体11Aの上部外周面を覆うリング状のフランジ部22Bとを有する。このため、キャップ部材22の外径D1は、杭11の本体11Aの外径D2より大きくなっている。キャップ部材22の上面部22Aには、固定ナット23が溶接で結合されており、また、上面部22Aには、杭11の本体11Aの内部空間と固定ナット23のねじ孔とを連通される孔22Cが形成されている。そして、杭11の本体11Aには、キャップ部材22よりも下側において、孔11Dが形成されている。
【0038】
また、
図4で示されている雄ねじ棒12には、ロックナット24が螺合されている。
【0039】
図4で示されている昇降部材13の具体的構造は、
図6(A)(B)に示されている。この昇降部材13の本体13Aは筒状部材で形成されており、このため、この本体13Aは筒状となっているとともに、本体13Aの内径D3は、キャップ部材22の外径D1と同じ又はこの外径D1よりも僅かに大きい寸法(例えば、D1が55.4mmであるときに、D3は57.3mm。)になっている。また、昇降部材13の本体13Aの上端開口部は蓋13Bによって塞がれており、平板部材で形成されているこの蓋13Bの下面には、昇降ナット25が溶接で結合され、蓋13Bには、この昇降ナット25のねじ孔と一致する孔13Cが形成されている。そして、昇降部材13の本体13Aには、孔13Dが形成されている。
【0040】
図4で示されている水平方向調整部材15の具体的構造は、
図7(A)(B)に示されている。水平方向調整部材15は、平板部材で形成されている高位部材26と、この高位部材26よりも下側に配置され、板金の折り曲げ品となっている低位部材27とからなる。この低位部材27の中央部は、高位部材26と平行になっているベース部27Aであり、このベース部27Aの両端部から立上部27Bが上方へ立ち上がっており、それぞれの立上部27Bの上端が溶接により高位部材26の下面に結合されている。このため、高位部材26と低位部材27のベース部27Aとの間には、レンチ等の工具を挿入することができる空間部Sが形成されている。
【0041】
低位部材27のベース部27Aには、
図7(A)に示されているように、互いに直交する水平の二方向のうち、一つの方向に長い長孔28が形成されており、この長孔28は、前述した雄ねじ棒12の上部が上下に貫通可能になっている孔である。また、高位部材26には、低位部材27の立上部27Bとの結合箇所から外側へ外れた両方の箇所において、2個の長孔29が形成されている。これらの長孔29は、互いに直交する水平の二方向のうち、他の方向に長い長孔になっており、このため、長孔28と長孔29は、互いに直交する方向に長い長孔になっている。また、高位部材26には、低位部材27のベース部27Aの長孔28と一致する箇所において、開口部30が形成されており、この開口部30は、長孔28と同じ方向へ長くなっている長方形の開口部となっている。
【0042】
次に、
図1のソーラーパネル設置架台1を地盤5上に設置するために行う杭基礎構造10の施工作業について説明する。
【0043】
初めに、それぞれの杭基礎構造10の杭11を立設する地盤5の箇所に下穴を開ける作業を行い、次いで、これらの下穴にそれぞれの杭11の先端部11B及び本体11Aをねじ込む作業を行う。このねじ込み作業は、杭11の頭部に図示しないソケットを介して回転式の専用機をセットし、この専用機により杭11を回転させることによって行い、これにより、杭11の螺旋羽根20を地盤5内にねじ込み、このねじ込み作業により、杭11の頭部を地盤5の地表面5Aに露出させるとともに、この頭部に設けられている固定ナット23の上面から地表面5Aまでの寸法を所定寸法(例えば、100mm)とする。
【0044】
このようにして螺旋羽根20が設けられている杭11の本体11Aを地盤5内にねじ込み侵入させた後に、キャップ部材部材22の固定ナット23に上方から雄ねじ棒12を螺入させ、雄ねじ棒12を回転させることにより、固定ナット23の上面から雄ねじ棒12の上端までが所定寸法(例えば、75mm)になったときに、雄ねじ棒12に螺合させておいたロックナット24を工具で回転させ、これにより、ロックナット24を固定ナット23に締め付け、ロックナット24で雄ねじ棒12を杭11の頭部のキャップ部材部材22に立設固定する。このようにロックナット24を工具で回転させることで固定ナット23にロックナット24を締め付けるときに、杭11の本体11Aに設けた孔11Dに回転止め用のバーを挿入することにより、杭11が回転することを止める。
【0045】
次いで、雄ねじ棒12に上方から昇降部材13を被せ、そして、
図8に示されているように、この昇降部材13の蓋13Bに設けられている昇降ナット25に雄ねじ棒12の上部12Aを螺入させ、昇降部材13を回転させることにより、雄ねじ棒12のねじ昇降案内作用により昇降部材13を下降させるとともに、昇降部材13を正逆回転させることによって昇降部材13を昇降させ、これにより、水平方向調整部材15が載置される昇降部材13の上面の高さ位置を地表面5Aから所定の高さ位置とする。このように水平方向調整部材15が載置される昇降部材13の上面の高さ位置を地表面5Aから所定の高さ位置としたときには、
図8から分かるように、キャップ部材22で形成されている杭11の頭部は、昇降部材13の筒状の本体13Aの内部に収納されている。
【0046】
そして、本実施形態では、雄ねじ棒12と、この雄ねじ棒12を杭11の頭部に立設固定するためのロックナット24と、蓋13Bの下面に昇降ナット25が取り付けられている昇降部材13とにより、杭11を中心に回転させることで杭11に対し昇降してこの杭11に対する高さ位置が変化するねじ式高さ調整手段14が構成されていることになる。
【0047】
以上の作業により雄ねじ棒12の上部12Aは昇降部材13の上面から上方へ突出し、この後に、
図9に示されているように、昇降部材13の上面に水平方向調整部材15を載置するとともに、この水平方向調整部材15の低位部材27に形成されている長孔28に、雄ねじ棒12の上部12Aを下から挿入し、この上部12Aに、角座金40及びばね座金41を挿入して固定ナット42を螺合し、この固定ナット42を工具で回転させて締め付ける。なお、
図10から分かるように、水平方向調整部材15の高位部材26に形成されている開口部30の大きさは、角座金40、ばね座金41及び固定ナット42を上方から挿入できる大きさになっているため、雄ねじ棒12の上部12Aに角座金40、ばね座金41及び固定ナット42をセットする作業は、これらの角座金40、ばね座金41及び固定ナット42を上方から開口部30に挿入することによって行うことができる。
【0048】
また、固定ナット42を工具で回転させて締め付けるときには、昇降部材13に設けた孔13Dに回転止め用のバーを挿入することにより、昇降部材13が回転することを止めるとともに、水平方向調整部材15が回転することを作業者の手や工具等により阻止する。
【0049】
そして、杭11を地盤5内にねじ込み侵入させた地表面5Aにおける箇所が、ソーラーパネル設置架台1の正確な配置位置によって決定される本来の箇所に対し、長孔28の長さ方向(東西方向)にずれている場合には、固定ナット42を工具で締め付ける作業を行う前に、雄ねじ棒12の上部12Aが挿入されている水平方向調整部材15の長孔28の調整機能により、杭11及び昇降部材13に対する水平方向調整部材15の配置位置を、長孔28の長さ方向である
図10のA方向に修正する。
【0050】
次いで、水平方向調整部材15の高位部材26の上面に、ソーラーパネル設置架台1の前述したベース部材3を載置する。このベース部材3は、前述したようにチャンネル材で形成されており、
図9に示されているボルト50を、水平方向調整部材15の高位部材26の長孔29と、ベース部材3の下フランジ部3Aに予め形成されている孔とに下から挿入し、下フランジ部3Aから突出したボルト50のねじ軸に平座金51とばね座金52を挿入してナット53を螺合し、このナット53を工具で締め付ける。
【0051】
これにより、杭11に、ねじ式高さ調整手段14及び水平方向調整部材15を介してソーラーパネル設置架台1のベース部材3が結合されることになる。
【0052】
そして、杭11を地盤5内にねじ込み侵入させた地表面5Aにおける箇所が、ソーラーパネル設置架台1の正確な配置位置によって決定される本来の箇所に対し、長孔29の長さ方向(南北方向)にずれている場合には、ナット53を工具で締め付ける作業を行う前に、ボルト50のねじ軸が挿入されている水平方向調整部材15の長孔29の調整機能により、杭11及び昇降部材13に対するベース部材3の配置位置を、長孔29の長さ方向である
図10のB方向に修正する。
【0053】
以上説明した本実施形態に係る杭基礎構造10によると、杭11の頭部と水平方向調整部材15との間に、杭11を中心に回転させることにより杭11に対する高さ位置が変化するねじ式高さ調整手段14が設けられているため、このねじ式高さ調整手段14の昇降部材13を杭11を中心に回転させると、杭11に対する昇降部材13の高さ位置が変化するため、ねじ式高さ調整手段14の上に配置される水平方向調整部材15の高さ位置及びこの水平方向調整部材15の上に設置されるソーラーパネル設置架台1のベース部材3の高さ位置を変化させることが可能となり、これにより、ソーラーパネル設置架台1を容易に所定の高さレベルに設定することができる。
【0054】
また、この高さ調整手段14は、雄ねじ棒12を用いたものであって、杭11を中心に昇降部材13を回転させることで杭11に対する昇降部材13の高さ位置が変化するねじ式のものとなっているため、杭11に対する昇降部材13の高さ位置を無段階式に調整でき、このため、水平方向調整部材15の高さ位置を正確に設定できて、ソーラーパネル設置架台1のベース部材3を所定の高さレベルに正確に設定することが可能となる。
【0055】
このため、ソーラーパネル設置架台1が複数の杭基礎構造10で支持されるものとなっていても、これらの杭基礎構造10により、不陸をなくしてソーラーパネル設置架台1を支持できる。
【0056】
また、本発明に係る杭基礎構造10には、ねじ式高さ調整手段14とソーラーパネル設置架台1のベース部材3との間において、杭11とベース部材3との位置関係を、長孔28と29により、水平の直交二方向に調整可能とする水平方向調整部材15が介設されているため、この水平方向調整部材15の長孔28と29により、杭11とベース部材3との位置関係を水平の直交二方向に調整できることになる。
【0057】
また、ねじ式高さ調整手段14の構成部材となっている昇降部材13の本体13Aは、
図8に示されているように、内部に杭11の頭部が収納される筒状となっているため、地表面5Aに露出する杭11の頭部を昇降部材13の筒状の本体13Aによって風雨等から保護できることになり、このため、杭11の耐久性を向上させることができる。
【0058】
また、本実施形態では、杭11の頭部はキャップ部材22で形成されているとともに、このキャップ部材22のフランジ部22Bにおける外径D1は、杭11の本体11Aの外径D2よりも大きい寸法になっており、また、昇降部材13の本体13Aの内径D3は、キャップ部材22のフランジ部22Bにおける外径D1と同じ又はこの外径D1よりも僅かに大きい寸法になっているため、昇降部材13を回転させることによって昇降部材13を杭11に対して昇降させる際に、杭11の外周面と昇降部材13の内周面とが接触することがあっても、この接触は、キャップ部材22のフランジ部22Bと、このフランジ部22Bの箇所と対応する昇降部材13の内周面の一部とにおいて生じることになり、上記接触が、昇降部材13の内周面の上下に長い領域や杭11の外周面の上下に長い領域に渡って生ずることはないため、昇降部材13を杭11に対して昇降させるために行う昇降部材13の回転操作を、杭11との回転摩擦力を小さくして容易に行えることになる。
【0059】
さらに、昇降部材の本体13Aの内径D3がキャップ部材22のフランジ部22Bの外径D1と同じ又はこの外径D1よりも僅かに大きい寸法になっていることにより、ソーラーパネル設置架台1に作用する外力等により、昇降部材13が杭11に対して倒れる方向に変位しても、昇降部材13の内周面が直ちにキャップ部材22のフランジ部22Bの外周面に接触するため、この倒れる方向へ昇降部材13の変位を防止することができる。すなわち、杭11に対する昇降部材13の直立状態を確保することができる。
【0060】
また、本実施形態では、雄ねじ棒12の上部12Aは、昇降部材13の昇降ナット25及び昇降部材13の蓋13Bの孔13Cから上方へ突出し、この上部12Aに螺合させた固定ナット42により、昇降部材13の蓋13Bの上面に載置した水平方向調整部材15の低位部材27が昇降部材13に固定されているともに、固定ナット42が螺合される雄ねじ棒12の上部12Aは、水平方向調整部材15の高位部材26を上方へ貫通しておらず、この上部12Aが上方へ貫通しているものは、高位部材26よりも下側に配置されている低位部材27のベース部27Aである。
【0061】
このため、本実施形態によると、雄ねじ棒12の上部12Aが水平方向調整部材15の上面から突出していないため、水平方向調整部材15の上面に、雄ねじ棒12の上部12Aに影響されることなく、ソーラーパネル設置架台1のベース部材3を安定させて載置固定することができる。
【0062】
また、水平方向調整部材15は、ソーラーパネル設置架台1のベース部材3が載置される高位部材26と、この高位部材26の下側に配置された低位部材27とにより構成され、高位部材26と低位部材27のベース部27Aとの間に、雄ねじ棒12の上部12Aに螺合された固定ナット42を操作するための工具が挿入可能となった空間部Sが設けられているため、高位部材26の上面にソーラーパネル設置架台1のベース部材3がボルト50及びナット53等で載置固定された後に、杭11を地盤5内にねじ込み侵入させた地表面5Aにおける箇所が、ソーラーパネル設置架台1の正確な配置位置によって決定される本来の箇所に対し、長孔28の長さ方向にずれていることが判明した場合でも、空間部Sから挿入した工具で固定ナット42を操作することにより、この固定ナット42を緩めて杭11及び昇降部材13に対する水平方向調整部材15の配置位置を長孔28の長さ方向に修正することができ、また、この修正後に固定ナット42を工具で再度締め付ける作業も行えることになり、このため、高位部材26の上面にベース部材3を載置固定した後であっても、工具による固定ナット42についての作業を容易に行える。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、太陽光発電のためのソーラーパネル設置架台や、建築現場用仮設足場、さらには、仮設住宅等の各種の構築物を地盤に固定するために利用することができる。
【符号の説明】
【0064】
1 構築物であるソーラーパネル設置架台
3 ソーラーパネル設置架台のベース部材
5 地盤
5A 地表面
10 杭基礎構造
11 杭
11A 本体
12 雄ねじ棒
13 昇降部材
13A 筒状の本体
14 ねじ式高さ調整手段
15 水平方向調整部材
20 螺旋羽根
22 キャップ部材
24 ロックナット
25 昇降ナット
26 高位部材
27 低位部材
28,29 長孔
42 固定ナット
50 水平方向調整部材とソーラーパネル設置架台とを結合するためのボルト
S 空間部