(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
地表面に露出する杭頭部に構築物が配置固定される基礎杭には、構築物が受ける横風等の外力が作用するため、この基礎杭には、地盤からの引き抜きに対する大きな強度が要求され、この強度は地盤内にねじ込まれる螺旋羽根によって生ずるため、基礎杭の螺旋羽根には、地盤からの引き抜きに対する強度が大きくなっていることが求められ、また、製造コストを低減するために、この螺旋羽根を容易に製造できることも求められる。
【0005】
本発明の目的は、螺旋羽根が地盤からの引き抜きに対する大きな強度を有し、また、この螺旋羽根を容易に製造できるようになる基礎杭及びその製造方法を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る基礎杭は、地盤上に設置される構築物のための基礎杭であって、前記地盤内に侵入する部分の外周面に、前記地盤内にねじ込まれる螺旋羽根が設けられ、地表面に露出する杭頭部に前記構築物が配置固定される基礎杭において、前記螺旋羽根が前記部分の外周面に1回を超える回数で巻回されているとともに、この螺旋羽根は、板金製の複数個のピース部材を螺旋方向に並べることにより形成されており、杭軸線と直交する断面において杭軸線方向へ見たときのそれぞれの前記ピース部材についての杭円周方向の周長が、前記部分の一回り分又は略一回り分と同じ長さ又は一回り分よりも短い長さになっていることを特徴とするものである。
【0007】
本発明に係る基礎杭では、螺旋羽根が前記部分の外周面に1回を超える回数で巻回されているため、螺旋羽根は、地盤からの引き抜きに対する大きな強度を有することになり、また、この螺旋羽根は、板金製の複数個のピース部材を螺旋方向に並べることにより形成されているため、螺旋羽根を、前記部分の外周面に棒材を螺旋状に巻き付けることで形成した場合よりも、複数個のピース部材で形成される螺旋羽根についての杭半径方向の幅寸法を大きくでき、これにより、螺旋羽根を、地盤からの引き抜きに対する一層大きな強度を有するものにできる。
【0008】
また、螺旋羽根を形成するそれぞれのピース部材についての杭円周方向の周長は、前記部分の一回り分又は略一回り分と同じ長さ又は一回り分よりも短い長さになっているため、それぞれのピース部材を板金の打ち抜き加工によって容易に製造できることになり、これにより、螺旋羽根の製造の容易化を達成できる。
【0009】
本発明において、それぞれのピース部材の前記周長は、前記部分の一回り分又は略一回り分と同じ長さであってもよく、このようにそれぞれのピース部材の前記周長を前記部分の一回り分又は略一回り分と同じ長さとする場合には、それぞれのピース部材を隙間なく螺旋方向に並べられていることにより、螺旋羽根を形成してもよい。
【0010】
また、前記部分の外周面に1回を超える回数で巻回されている螺旋羽根の個数は、1個としてもよく、杭軸方向の間隔を開けて設けられた複数個としてもよい。
【0011】
後者のように前記部分の外周面に1回を超える回数で巻回されている螺旋羽根の個数を、杭軸方向の間隔を開けて設けられた複数個とした場合には、地盤からの引き抜きに対する大きな強度を一層大きくすることができる。
【0012】
また、本発明において、それぞれのピース部材の前記周長は、前記部分の一回り分よりも短い長さであってもよい。このようにそれぞれのピース部材の前記周長を、前記部分の一回り分よりも短い長さとする場合には、この周長は、それぞれのピース部材について異ならせてもよく、同じとしてもよい。
【0013】
それぞれのピース部材の前記周長を同じとした場合には、板金の打ち抜き加工により製造するそれぞれのピース部材の寸法を同じにできるため、それぞれのピース部材を製造する作業、言い換えると、螺旋羽根を製造する作業を一層容易に行えることになる。
【0014】
また、以上のようにそれぞれのピース部材の前記周長を、前記部分の一回り分よりも短い長さとする場合には、それぞれのピース部材を隙間を開けずに螺旋方向に並べることにより、前記螺旋羽根を形成してもよく、あるいは、それぞれのピース部材を隙間を開けて螺旋方向に並べることにより、前記螺旋羽根を形成してもよい。
【0015】
後者によると、それぞれのピース部材の間には螺旋方向の隙間が存在するため、それぞれのピース部材を螺旋方向に並べて螺旋羽根を形成する際に、それぞれのピース部材が正確な形状、寸法に製造されていなくても、それぞれのピース部材を螺旋方向に並べる作業を容易に行え、言い換えると、それぞれのピース部材に形状誤差や寸法誤差があっても、これらの誤差に影響されずに、それぞれのピース部材を螺旋方向に並べる作業を容易に行え、これにより、螺旋羽根を容易に形成できるようになる。
【0016】
また、それぞれのピース部材を隙間を開けて螺旋方向に並べることによって螺旋羽根を形成する場合には、前記部分の外周面に1回を超える回数で巻回されている螺旋羽根は、杭軸方向に並んでいる複数個の螺旋羽根部分により形成されていることになる。このような複数個の螺旋羽根部分のうち、杭軸方向に互いに隣接している2個の螺旋羽根部分同士における隙間の位置は、杭円周方向における同じ位置としてもよいが、これらの隙間の位置を、杭円周方向にずらせることが好ましい。
【0017】
後者によると、杭軸方向に互いに隣接している2個の螺旋羽根部分における隙間の位置は、杭円周方向にずれた位置となるため、螺旋羽根が、隙間が存在するものとなって杭の前記部分の外周面に形成されていても、地盤からの引き抜きに対する大きな強度を確保できることになる。
【0018】
また、前述したように前記部分の外周面に1回を超える回数で巻回されている螺旋羽根を、前記周長が前記部分の一回り分よりも短い長さとなっているピース部材を螺旋方向に並べることで形成する場合には、この螺旋羽根の個数を1個としてもよく、杭軸方向の間隔を開けて設けられた複数個としてもよい。
【0019】
後者のように螺旋羽根の個数を、杭軸方向の間隔を開けて設けられた複数個とした場合には、地盤からの引き抜きに対する大きな強度を一層大きくすることができる。
【0020】
また、螺旋羽根の個数を、杭軸方向の間隔を開けて設けられた複数個とする場合には、これらの螺旋羽根におけるピース部材の杭半径方向の幅寸法を同じにしてもよく、あるいは、これらの螺旋羽根におけるピース部材の杭半径方向の幅寸法を、杭先端部に近い螺旋羽根のピース部材については小さく、杭頭部の近い螺旋羽根のピース部材については大きくしてもよい。
【0021】
後者によると、先に地盤内にねじ込まれる杭先端部に近い螺旋羽根のピース部材については、前記幅寸法が小さく、杭頭部に近い螺旋羽根のピース部材については、この幅寸法が大きくなるため、基礎杭を小さな回転力で地盤内にねじ込むことができるとともに、地盤からの引き抜きに対する大きな強度を確保できるようになる。
【0022】
本発明に係る基礎杭の製造方法は、地盤上に設置される構築物のための基礎杭を製造する方法であって、前記地盤内に侵入する部分の外周面に、前記地盤内にねじ込まれる螺旋羽根が設けられ、地表面に露出する杭頭部に前記構築物が配置固定される基礎杭の製造方法において、前記部分の外周面に1回を超える回数で巻回される前記螺旋羽根を複数個で形成するためのピース部材の素材を製造するために、板金を、内径が前記部分の外径よりも少し大きいリング状に打ち抜き加工するとともに、このリングの円周方向の一箇所を切断するための打ち抜き切断工程と、この打ち抜き切断工程によって製造されたそれぞれの前記素材の前記切断で生じた円周方向の両端部を、前記螺旋羽根の1回の巻回分に相当する螺旋ピッチ分だけ杭軸方向にずらせるための捻り加工により、杭軸線と直交する断面において杭軸線方向へ見たときの杭円周方向の周長が前記部分の一回り分又は略一回り分と同じ長さになっている前記ピース部材を製造する捻り工程と、それぞれの前記羽根ピースを隙間なく螺旋方向に並べるとともに、これらのピース部材の内周面を前記部分の外周面に結合することにより、前記螺旋羽根を形成するための螺旋羽根形成工程と、を含んでいることを特徴とするものである。
【0023】
また、本発明に係る基礎杭の製造方法は、地盤上に設置される構築物のための基礎杭を製造する方法であって、前記地盤内に侵入する部分の外周面に、前記地盤内にねじ込まれる螺旋羽根が設けられ、地表面に露出する杭頭部に前記構築物が配置固定される基礎杭の製造方法において、前記部分の外周面に1回を超える回数で巻回される前記螺旋羽根を複数個で形成するためのピース部材の素材を製造するために、板金を、内径が前記部分の外径よりも少し大きい扇形状に打ち抜くための打ち抜き工程と、この打ち抜き工程によって製造されたそれぞれの扇形状の前記素材の円周方向の両端部を、前記螺旋羽根の1回よりも少ない巻回分に相当するピッチ分だけ杭軸方向にずらせるための捻り加工により、杭軸線と直交する断面において杭軸線方向へ見たときの杭円周方向の周長が前記部分の一回り分よりも短い長さになっている前記ピース部材を製造する捻り工程と、それぞれの前記羽根ピースを隙間を開けて螺旋方向に並べるとともに、これらのピース部材の内周面を前記部分の外周面に結合することにより、前記螺旋羽根を形成するための螺旋羽根形成工程と、を含んでいることを特徴とするものである。
【0024】
これらの製造方法によると、螺旋羽根を複数個で形成するためのピース部材のそれぞれを、板金の打ち抜き加工により製造することができるため、螺旋羽根の製造を容易に製造できることになる。
【0025】
なお、本発明において、前述した「略一回り分と同じ長さ」とは、「一回り分と同じ長さ」と比較したときに、加工誤差等が含まれていてもよいとの意味である。
【0026】
また、上述した「扇形状」には、扇角度が180度を超えて360度未満の角度になっているものが含まれる。
【0027】
以上説明した本発明は、任意の構築物を地盤上に設置するための基礎杭に適用することができ、この構築物は、例えば、太陽光発電のためのソーラーパネル設置架台でもよく、建築現場や解体現場等で構築される仮設足場でもよく、さらには仮設住宅等でもよい。
【0028】
また、構築物を地盤上に設置するために用いられる本発明に係る基礎杭の本数は、1本でもよく、複数本でもよい。すなわち、本発明に係る基礎杭は、1本だけで構築物を地盤上に設置するものでよく、複数本により構築物を地盤上に設置するものでよい。
【発明の効果】
【0029】
本発明によると、螺旋羽根が地盤からの引き抜きに対する大きな強度を有するものとなり、また、この螺旋羽根を容易に製造できるようになるという効果を得られる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
図1には、本発明の一実施形態に係る基礎杭30が用いられた杭基礎構造10で地盤5上に設置された構築物の側面図が示されており、この構築物は、太陽光発電のためのソーラーパネル設置架台1である。多数のソーラーパネル2が設置されるこの架台1のベース部材3は、後側(
図1では右側)に開口したチャンネル材であり、架台1の桁材となって2本設けられているベース部材3のそれぞれが、杭基礎構造10により地盤5上に固定設置されている。
【0032】
本発明の一実施形態に係る基礎杭30の具体的構造を説明する前に、杭基礎構造10について説明する。
【0033】
図2には、1本のベース部材3について複数個設けられている杭基礎構造10の正面図が拡大して示されており、また、
図3には、杭基礎構造10の全体正面図が示され、
図4には、杭基礎構造10の分解正面図が示されている。
図4から分かるように、杭基礎構造10は、基礎杭30と、この基礎杭30の頭部に立設固定される雄ねじ棒11と、この雄ねじ棒11を介して基礎杭30の頭部に取り付けられる筒状の昇降部材12と、この昇降部材12の上面に載置される水平方向調整部材13とを含んで構成され、この水平方向調整部材13の上面に上述のベース部材3が載置固定される。なお、地表面5A(
図1〜
図3を参照)に露出する基礎杭30の頭部には、キャップ部材14は被冠固定されており、このため、基礎杭30の頭部は、キャップ部材14となっている。
【0034】
雄ねじ棒11は、キャップ部材14に結合されている固定ナット15に上方から螺入され、雄ねじ棒11は、この雄ねじ棒11に螺合しておいたロックナット16を固定ナット15に締め付けることにより、キャップ部材14に、すなわち、基礎杭30の頭部に立設固定される。雄ねじ棒11の上部には、筒状の昇降部材12の上部下面に取り付けられている昇降ナット17が上方から螺入され、昇降部材12を正逆回転させることにより、基礎杭30に対する昇降部材12の高さを調整した後に、この昇降部材12の上面に水平方向調整部材13が載置される。
【0035】
水平方向調整部材13は、高位部材13Aと、この高位部材13Aよりも下側の低位部材13Bとからなり、
図3に示されているように、低位部材13Bを下から貫通させた雄ねじ棒11の上部11Aに角座金18とばね座金19を挿入して固定ナット20を螺合し、この固定ナット20を締め付けることにより、昇降部材12に水平方向調整部材13が結合される。この水平方向調整部材13の上面に上述のベース部材3が載置され、このベース部材3は、
図2で示されているように、水平方向調整部材13の高位部材13Aに下から挿入されたボルト21と、チャンネル材からなるベース部材3の下フランジ部3Aを下から貫通したボルト21の軸部に平座金22とばね座金23を介して螺合された固定ナット24とにより、水平方向調整部材13に結合される。
【0036】
そして、ベース部材3が桁材となっているソーラーパネル設置架台1についての地表面5Aからの高さレベルは、上述のように正逆回転させることで昇降する昇降部材12の高さ調整機能により、所定の高さレベルとすることができる。また、雄ねじ棒11の上部11Aが挿入されている水平方向調整部材13の低位部材13Bの孔と、ボルト21の軸部が挿入されている水平方向調整部材13の高位部材13Aの孔は、互いに直交する水平二方向に長い長孔になっているため、これらの長孔の調整機能により、ソーラーパネル設置架台1の設置位置を、杭基礎構造10に対して互いに直交する水平二方向(南北方向と東西方向)に調整することができる。
【0037】
次に、本実施形態に係る基礎杭30について説明する。
図3〜
図5に示されているように、頭部にキャップ部材14が被冠固定されている基礎杭30の本体30Aは、鋼管で形成されており、また、本体30Aの下端部には、三角錐状の先端部30Bが設けられ、この先端部30Bの外周面には切削刃31が取り付けられている。
【0038】
基礎杭30の本体30Aにおける
図1〜
図3で示されている地盤5内に侵入する箇所には、螺旋羽根32が設けられ、この螺旋羽根32は、本体30Aの長さ方向、言い換えると、杭軸方向の間隔を開けて3個設けられており、それぞれの螺旋羽根32は、本体30Aの外周面に1回を超える回数、具体的には、3回又は略3回の回数で巻回されている。そして、それぞれの螺旋羽根32が、
図3に示されているように、地盤5内にねじ込まれることにより、基礎杭30は地盤5に侵入固定されることになり、このときの基礎杭30の頭部は、前述したように地表面5Aに露出している。
【0039】
また、それぞれの螺旋羽根32は、
図5から分かるように、複数個のピース部材33を螺旋方向に並べることにより形成されている。これらのピース部材33についての杭円周方向の周長は、本体30Aの一回り分又は略一回り分と同じ長さになっている。このため、螺旋羽根32は、3個のピース部材33を隙間なく螺旋方向に並べることにより形成されている。このような構成となっている螺旋羽根32を備えている基礎杭30の正面図、背面図、底面図は、
図6(A)(B)(C)に示されている。それぞれの螺旋羽根32における1回の巻回によるそれぞれの杭軸方向のピッチの大きさ、すなわち、螺旋ピッチはPであり、また、これらの螺旋羽根32についての杭軸方向の間隔は、螺旋ピッチPの整数倍となっているため、それぞれの螺旋羽根32の螺旋延長線上にそれぞれの螺旋羽根32が存在していることになる。
【0040】
図7及び
図8は、螺旋羽根32の構成部材となっているピース部材33の製造方法を示している。ピース部材33の製造するためには、初めに、
図7(A)に示すように、板金の打ち抜き加工により、板金製のリング状の素材33’を製造するとともに、この素材33’の円周方向の一箇所を切断し、これにより、切断箇所33’A付きの素材33’を得る。なお、リング状の素材33’の内径D2は、
図6(A)で示す基礎杭30の本体30Aの外径D1よりも少し大きい寸法(例えば、螺旋ピッチPが40mmで、D1が48.6mmであるときに、D2は50mm〜51mm程度。)とする。そして、上述の切断加工は、板金の打ち抜き加工と同時に行ってもよく、板金の打ち抜き加工の後作業として行ってもよい。
【0041】
次いで、
図8に示すように、リング状の素材33’の円周方向の両端部を、すなわち、切断箇所33’Aの両端部を、上述の螺旋ピッチP分だけ杭軸方向にずらせるための捻り加工を行い、これにより、素材33’からピース部材33を製造する。なお、上述の捻り加工は、プレス機械等の装置で行ってもよく、作業者の手作業で行ってもよい。
【0042】
このようにして製造されたピース部材33は、内径D2が基礎杭30の本体30Aの外径D1よりも大きい寸法となっているため、このピース部材33を、螺旋羽根32を設けるべき部分となっている本体30Aの箇所にセットしたときであって、基礎杭30の杭軸線と直交する断面において杭軸線方向へピース部材33を見たときに、ピース部材33の杭円周方向の周長が本体30Aの一回り分又は略一回り分と同じ長さになっている。
【0043】
これを言い換えると、基礎杭30の杭軸線と直交する断面において杭軸線方向へピース部材33を見たときに、ピース部材33の杭円周方向の周長が本体30Aの一回り分又は略一回り分と同じ長さになるように、ピース部材33の素材33’の内径D2を本体30Aの外径D1よりも少し大きい寸法とする。なお、ここでいう「略一回り分と同じ長さ」とは、「一回り分と同じ長さ」と比較したときに、加工誤差等が含まれていてもよいとの意味である。
【0044】
このようなピース部材33を多数製造した後に、3個のピース部材33を基礎杭30の本体30Aの所定箇所に隙間なく螺旋方向に連続させて並べるとともに、これらのピース部材33の内周面を本体30Aの外周面に溶接で結合し、また、隙間なく螺旋方向に並べたピース部材33同士を溶接で接合する。
【0045】
これにより、1個の螺旋羽根32が基礎杭30の本体30Aに形成されることになり、上述の作業を、本体30Aの三箇所について行うことにより、この本体30Aに3個の螺旋羽根32が形成されることになる。
【0046】
なお、それぞれのピース部材33を本体30Aの正確な所定箇所に配置できるようにするために、例えば、回転装置で回転させた本体30Aの外周面に、送りねじ式送り装置によって送られるケガキ針や筆記具等のマーキング部材により、螺旋ラインを表示し、この螺旋ラインに沿ってそれぞれのピース部材33を並べて配置するようにしてもよい。
【0047】
この実施形態によると、基礎杭30の本体30Aに設けられていて地盤5内にねじ込まれる螺旋羽根32が、1回を超える回数で巻回されているため、螺旋羽根32は、地盤5からの引き抜きに対する大きな強度を有することになる。また、螺旋羽根32は、板金製の複数個のピース部材33を螺旋方向に並べることにより形成されているため、螺旋羽根を、本体30Aの外周面に棒材を螺旋状に巻き付けることで形成した場合よりも、螺旋羽根32についての杭半径方向の幅寸法を大きくでき、これにより、螺旋羽根32を、地盤5からの引き抜きに対する一層大きな強度を有するものにできる。
【0048】
また、螺旋羽根32は、杭軸方向に間隔を開けて3個設けられているため、地盤5からの引き抜きに対する螺旋羽根32の強度をさらに一層大きくすることができる。
【0049】
さらに、螺旋羽根32の構成部材となっているそれぞれのピース部材33についての杭円周方向の周長は、杭軸線と直交する断面において杭軸線方向へピース部材33を見たときに、本体30Aの一回り分又は略一回り分と同じ長さになっているため、それぞれのピース部材33を板金の打ち抜き加工によって容易に製造できることになり、これにより、螺旋羽根52の製造の容易化を達成できる。
【0050】
また、ピース部材33の素材33’を板金の打ち抜き加工により製造する際に、素材33’の内径D2を本体30Aの外径D1よりも少し大きい寸法としているため、ピース部材33の両端部に螺旋ピッチPを設けても、ピース部材33についての杭円周方向の周長を、杭軸線と直交する断面において杭軸線方向へピース部材33を見たときに、本体30Aの一回り分又は略一回り分と同じ長さにすることができる。
【0051】
図9は、別実施形態に係る基礎杭50を示し、
図10(A)(B)(C)は、この基礎杭50の正面図、背面図、底面図である。
【0052】
この実施形態でも、頭部にキャップ部材14が被冠固定されている基礎杭50の本体50Aは、鋼管で形成されており、また、本体50Aの下端部には、三角錐状の先端部50Bが設けられていて、この先端部50Bの外周面には切削刃51が取り付けられている。
【0053】
そして、基礎杭50の本体50Aにおける地盤5内に侵入する箇所には、螺旋羽根52が設けられ、この螺旋羽根52は、本体50Aの長さ方向である杭軸方向の間隔を開けて3個設けられており、それぞれの螺旋羽根52は、本体50Aの外周面に3回又は略3回の回数で巻回されている。そして、それぞれの螺旋羽根52が地盤5内にねじ込まれることにより、基礎杭50は地盤5に侵入固定されることになり、このときの基礎杭50の頭部は、地表面5Aに露出する。
【0054】
また、それぞれの螺旋羽根52は、
図9から分かるように、複数個のピース部材53を螺旋方向に並べることにより形成されている。これらのピース部材53についての杭円周方向の周長は、本体30Aの一回り分よりも短い長さになっており、それぞれの螺旋羽根52は、9個のピース部材53を隙間Sを開けて螺旋方向に並べることにより形成されている。また、
図10に示されているように、それぞれの螺旋羽根52における1回の巻回による螺旋ピッチはPであり、そして、これらの螺旋羽根52についての杭軸方向の間隔は、螺旋ピッチPの整数倍となっているため、この実施形態でも、それぞれの螺旋羽根52の螺旋延長線上にそれぞれの螺旋羽根52が存在していることになる。
【0055】
さらに、
図9から分かるように、この実施形態のそれぞれの螺旋羽根52におけるピース部材53は、螺旋羽根52ごとに、杭半径方向の幅寸法が異なっている。すなわち、螺旋羽根52のうち、杭先端部に最も近い螺旋羽根52のピース部材53Aの幅寸法は最も小さく、杭先端部に2番目に近い螺旋羽根52のピース部材53Bの幅寸法は2番目に小さく、杭頭部に近い螺旋羽根52のピース部材53Cの幅寸法は最も大きい。すなわち、杭軸方向の間隔を開けて3個設けられている螺旋羽根52におけるピース部材53A,53B,53Cの杭半径方向の幅寸法は、杭先端部から杭頭部へとの次第に大きくなっている。
【0056】
図11及び
図12は、ピース部材53A,53B,53Cの製造方法を示している。ピース部材53A,53B,53Cを製造するためには、初めに、
図11(A)(B)(C)に示すように、板金の打ち抜き及び切断加工により、扇形状の素材53’A,53’B,53’Cを製造する。図示例では、1回の打ち抜き及び切断加工により、扇角度がα(例えば、80度)となっているそれぞれ4個の素材53’A,53’B,53’Cが同時に製造されている。なお、素材53’A,53’B,53’Cの内径D2は、前述した実施形態と同様に、
図10(A)で示されている基礎杭50の本体50Aの外径D1よりも少し大きい寸法とする。そして、上述の切断加工は、板金の打ち抜き加工と同時に行ってもよく、板金の打ち抜き加工の後作業として行ってもよい。
【0057】
また、素材53’Aの幅寸法W1は最も小さく,素材53’Bの幅寸法は2番目に小さく、素材53’Cの幅寸法W3は最も大きい。
【0058】
次いで、
図12(A)(B)(C)に示すように、扇形状の素材53’A,53’B,53’Cの円周方向の両端部を、前述した螺旋ピッチPよりも小さいピッチP’分だけ杭軸方向にずらせるための捻り加工を行い、これにより、素材53’A,53’B,53’Cからピース部材53A,53B,53Cを製造する。なお、ピッチP’は、螺旋ピッチPよりも小さいため、このピッチP’は、螺旋羽根52の1回よりも少ない巻回分に相当する大きさのものであって、360度に対する上述の角度αによって決定される大きさのものである。また、上述の捻り加工は、プレス機械等の装置で行ってもよく、作業者の手作業で行ってもよい。
【0059】
このようなピース部材53A,53B,53Cを多数製造した後に、螺旋羽根52のうち、杭先端部に最も近い螺旋羽根52を形成するためには、複数個(例えば、9個)のピース部材53Aを隙間Sを開けて螺旋方向に並べ、杭先端部に2番目に近い螺旋羽根52を形成するためには、ピース部材53Aと同数のピース部材53Bを隙間Sを開けて螺旋羽根方向に並べ、杭頭部に近い螺旋羽根52を形成するためには、ピース部材53Aと同数のピース部材53Cを隙間Sを開けて螺旋方向に並べ、そして、それぞれのピース部材53A,53B,53Cの内周面を基礎杭50の本体50Aの外周面に溶接で結合する。これにより、本体50Aの外周面に、それぞれ3回又は略3回の回数で巻回された螺旋羽根52が3個形成されることになる。
【0060】
図10(A)のS13−S13線断面図である
図13には、上述のようにピース部材53A,53B,53Cの内周面を基礎杭50の本体50Aの外周面に溶接で結合したときの状態が示されている。この
図13において、それぞれの隙間Sは、杭中心部を中心とする角度β(例えば、30度)の大きさのものとなっている。また、杭軸線と直交する断面において杭軸線方向へピース部材53A,53B,53Cを見たときに、それぞれのピース部材53A,53B,53Cについての杭円周方向の周長は、本体50Aの一回り分よりも短い長さになっている。
【0061】
以上のようにそれぞれの螺旋羽根52を形成するために、それぞれ複数個のピース部材53A,53B,53Cを隙間Sを開けて基礎杭50の本体50Aに螺旋方向に配置し、そして、ピース部材53A,53B,53Cを本体50Aに結合したときには、それぞれの螺旋羽根52は、
図9に示されているように、杭軸方向に並んでいる3個の螺旋羽根部分52A,52B,52Cにより形成されている。そして、これらの螺旋羽根部分52A,52B,52Cにおける隙間Sの位置は、
図9から分かるように、杭円周方向にずれている。
【0062】
これを言い換えると、この実施形態では、
図11の角度α及び
図13の角度βを、螺旋羽根部分52A,52B,52Cにおける隙間Sの位置が杭円周方向にずれるように設定するのであり、例えば、角度αを80度、角度βを30度としたときであっても、すなわち、α+βの3回の合計値が360度となっていても、ピース部材53A,53B,53Cの両端部を、
図12で説明したように、ピッチP’分だけ杭軸方向にずらせることにより、このピッチP’により、螺旋羽根部分52A,52B,52Cにおける隙間Sの位置を杭円周方向にずらせることができる。
【0063】
この実施形態でも、基礎杭50の本体50Aに設けられる螺旋羽根52が、1回を超える回数で巻回されていること、及び螺旋羽根52は、板金製の複数個のピース部材53を螺旋方向に並べることによって形成されていることにより、螺旋羽根52を、地盤5からの引き抜きに対する大きな強度を有するものにでき、また、螺旋羽根52は、杭軸方向に間隔を開けて3個設けられているため、地盤5からの引き抜きに対する螺旋羽根52の強度を一層大きくすることができる。
【0064】
さらに、螺旋羽根52を形成しているそれぞれのピース部材53についての杭円周方向の周長は、杭軸線と直交する断面において杭軸線方向へピース部材53を見たときに、本体50Aの一回り分よりも短い長さになっているため、それぞれのピース部材53を板金の打ち抜き加工によって容易に製造できることになり、これにより、螺旋羽根52の製造の容易化を達成できる。
【0065】
また、杭先端部に最も近い螺旋羽根52を形成しているそれぞれのピース部材53A同士、杭先端部に2番目に近い螺旋羽根52を形成しているそれぞれのピース部材53B同士、杭部に近い螺旋羽根52を形成しているそれぞれのピース部材53C同士は、前述の周長及び幅寸法が同じなっているため、これらのピース部材53A,53B,53Cの多数を板金の打ち抜き加工により容易に製造することができ、これにより、それぞれの螺旋羽根52の製造の容易化を達成できる。
【0066】
また、この実施形態によると、それぞれのピース部材53を隙間Sを開けて螺旋方向に並べることで螺旋羽根52を形成しているため、それぞれのピース部材53が正確な形状、寸法に製造されていなくても、具体的には、ピッチP’がそれ程正確な寸法になっていなくても、複数個のピース部材を隙間なく螺旋方向に連続させて並べる場合よりも、それぞれのピース部材53を螺旋方向に並べる作業を容易に行えることになり、このため、これらのピース部材53で螺旋羽根52を形成する作業の容易化を実現できる。
【0067】
また、それぞれのピース部材53を隙間Sを開けて螺旋方向に並べることによって螺旋羽根52を形成しても、互いに杭軸方向に隣接している2個の螺旋羽根部分同士の隙間Sの位置、すなわち、螺旋羽根部分52Aと52Bの隙間Sの位置、螺旋羽根部分52Bと52Cの隙間Sの位置は、杭円周方向にずれているため、地盤からの引き抜きに対する大きな強度を確保できることになる。
【0068】
また、杭軸方向の間隔を開けて3個設けられている螺旋羽根52を形成するためのピース部材53A,53B,53Cは、
図11で示した杭半径方向の幅寸法W1,W2,W3を有するものとなっており、これらの幅寸法W1,W2,W3は、杭先端部に近い螺旋羽根のピース部材については小さく、杭頭部の近い螺旋羽根のピース部材については大きくなっているため、基礎杭を小さな回転力で地盤内にねじ込むことができるとともに、このねじ込み後は、地盤からの引き抜きに対する大きな強度を確保できるようになる。