【実施例1】
【0027】
図2は、実施例1に係る弾性波デバイス内蔵モジュールを示す断面図である。
図2のように、実施例1の弾性波デバイス内蔵モジュール10にあっては、弾性波デバイス20は、多層配線板12の内部に埋め込まれて配置され内蔵されている。弾性波デバイス20は、多層配線板12の厚さ方向のほぼ中央部に位置して収納・配置されている。多層配線板12は、絶縁層14と配線層16とが複数積層された積層基板である。積層された複数の配線層16は、絶縁層14を貫通する貫通配線(層間接続配線ともいう)18によって互いに電気的に接続されている。配線層16及び貫通配線18は、例えば銅(Cu)等の金属で形成されている。一方、絶縁層14は、例えばエポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、或いは熱可塑性の液晶ポリマーシート等により形成されている。
【0028】
ここで、弾性波デバイス内蔵モジュール10内に収容・内蔵された弾性波デバイス20について説明する。
図3(a)は、
図2に示した弾性波デバイス内蔵モジュール内に内蔵された状態での一つの弾性波デバイス20を示す外観斜視図、
図3(b)は、
図3(a)に示されるリッド26を透視した場合の弾性波デバイス20の構成を示す平面図である。ここでは、弾性波デバイス20の周囲に在る絶縁層14、配線層16の表示を省略している。
図3(a)及び
図3(b)のように、弾性波デバイス20は、例えばタンタル酸リチウム(LiTaO
3)又はニオブ酸リチウム(LiNbO
3)等の圧電材料からなる基板22(以下、圧電基板と称する)上に、IDT0及びその両側に配設された反射器R0を具備する弾性表面波デバイスである。圧電基板22の厚さは、例えば250μmである。IDT0及び反射器R0は、例えばアルミニウム(Al)等の金属で形成されている。尚、
図3(b)にあっては、一つのIDT0とその両側に配設された反射器R0を表示するのみであるが、一つの弾性波デバイスに於いては、かかるIDT0と反射器R0とを含む弾性波デバイス素子が複数個組み合わされて、フィルタ回路等、所望の回路が形成されている。
【0029】
圧電基板22上に於いては、IDT0及び反射器R0の周囲を囲繞して、平面形状が略矩形状を有する枠体24が配設されている。枠体24は、例えばCu又はニッケル(Ni)等を含む金属により形成され、その厚さは例えば30μmである。かかる枠体24上には、IDT0及び反射器R0上に空隙30が形成されるように、IDT0及び反射器R0上を覆って板状のリッド26が配設されている。リッド26は、例えばCu又はNi等を含む金属板により形成され、その厚さは例えば20μmである。これにより、IDT0及び反射器R0は、枠体24とリッド26とからなる封止部28によって形成される空隙30内に封止されている。
【0030】
そして、封止部28よりも外側の圧電基板22上面に於いては、突起電極32が4個配設されている。4個の突起電極32のうちの1つの突起電極32Aは信号入力用であり、また他の1つの突起電極32Bは信号出力用である。更に、残りの2つの突起電極32C、32Dはグランド(接地)用である。信号入力用突起電極32A及び信号出力用突起電極32Bは、配線34を介してIDT0に電気的に接続される。また、信号入力用突起電極32A及び信号出力用突起電極32Bに接続する配線34と枠体24との間には絶縁物層(不図示)が配設されて、配線34と枠体24との間は電気的に絶縁されている。一方、グランド(接地)用突起電極32C、32Dは、配線35を介して、枠体24に電気的に接続されている。即ち、弾性波デバイス20に於いて、IDT0及び反射器R0は、枠体24及びリッド26によって、外部の電磁界に対しても遮蔽される。
【0031】
図4は、
図3(b)の線A−Aに沿った断面図である。
図4のように、個々の突起電極32は、柱状の下側部分32a、柱状の上側部分32b、及び両柱状部の間に配設された例えば金(Au)−錫(Sn)半田からなる接合部材36をもって構成されている。一方、封止部28を構成する枠体24とリッド26も、金(Au)−錫(Sn)半田からなる接合部材36によって接合されている。実施例1に於ける弾性波デバイス内蔵モジュール10内に配置された弾性波デバイス20にあっては、リッド26の上面は平坦な面ではなく、枠体24から遠ざかるに連れて圧電基板22側に湾曲した変形(圧電基板22表面に近づく方向に凹んだ形状)が生じている。即ち、かかるリッド26の圧電基板22表面側への変形に伴い、IDT0及び反射器R0上に存在する空隙(空間)30は、その容積が減少している。尚、かかるリッド26の湾曲量Xは、その厚さの半分よりも小さく、リッド26とIDT0との間の最小の間隔は、10μm以上に確保されている。また、
図3(a)の斜視図では、湾曲の様子は省略して示されている。
【0032】
図2に於いて、多層配線板12に内蔵された弾性波デバイス20が有する突起電極32は、配線層16及び貫通配線18に接続されている。多層配線板12の上面に形成された配線層16Aは、少なくともその一部が端子パッドとして用いられ、かかる端子パッドには、電子部品40が半田42によって実装されている。電子部品40は、抵抗素子、インダクタ、或いはキャパシタ等のチップ部品、及びパワーアンプ、アンテナスイッチ、或いは高周波ICの能動素子等であり、端子パッドに対し必要に応じて実装されている。このような構成により、弾性波デバイス20と電子部品40との間は電気的に接続される。また、弾性波デバイス20及び電子部品40は、必要に応じて多層配線板12の下面に形成された配線層16Bに対しても電気的に接続される。多層配線板12の下面の配線層16Bは、弾性波デバイス内蔵モジュール10の外部接続用端子パッド外部として機能する。即ち、弾性波デバイス20及び電子部品40は、多層配線板12の下面に於ける配線層16Bを介して、電子機器のマザーボードに於ける端子等に電気的に接続される。
【0033】
次に、実施例1に係る弾性波デバイス内蔵モジュールの製造方法について説明する。
図5(a)及び
図5(b)並びに
図6(b)から
図10(b)は、実施例1に係る弾性波デバイス内蔵モジュールの製造方法を示す断面図である。
図6(a)は、実施例1に係る弾性波デバイス内蔵モジュールの製造方法を示す平面図である。まず、
図5(a)及び
図5(b)を用いて、実施例1に係る弾性波デバイス内蔵モジュールに内蔵される弾性波デバイスの製造方法について説明する。
図5(a)のように、圧電基板22上に、周知の手段を用いてIDT0、反射器R0、IDT0と反射器R0を囲繞する枠体24、及び枠体24の外側に位置する突起電極32の下側部分32aを形成する。IDT0及び反射器R0は、例えばアルミニウムを主体とする金属の蒸着及びリフトオフ法を用いて形成することができる。枠体24及び突起電極32の下側部分32aは、例えば電解めっき法を適用し、銅を主体とする金属を選択的に被着することにより形成することができる。
【0034】
この様な圧電基板22上への金属層の形成と並行して、例えばSUS304等のステンレスからなる支持基板44上(
図5に於いては下向き)に、リッド26と突起電極32の上側部分32bを選択的に形成する。しかる後、リッド26の上面の縁部及び突起電極32の上側部分32bの上面に、例えば金(Au)−錫(Sn)半田からなる接合部材36を形成する。これらのリッド26、突起電極32の上側部分32b、及び接合部材36は、例えば電解めっき法を用いて形成することができる。
【0035】
そして、リッド26が枠体24に対向し、突起電極32の上側部分32bが下側部分32aに対向するように、支持基板44を圧電基板22上に配置する。そして、接合部材36の融点以上の温度(例えば250℃〜300℃)に接合部材36を加熱して、支持基板44を圧電基板22側に加圧する。
【0036】
これにより、接合部材36を介してリッド26が枠体24上に接合され、
図5(b)のように、IDT0と反射器R0上に空隙30を有する封止部28が形成される。また、突起電極32の下側部分32aと上側部分32bが接合部材36によって接合され、突起電極32が形成される。その後、支持基板44を除去することにより、IDT0と反射器R0上に空隙30を有する封止部28が形成され、またかかる封止部28の周囲に複数個の突起電極32が配設された弾性波デバイス20が形成される。なお、この段階では、リッド26の表面は平坦な形状を有している。一方、高温環境下に於いて接合部材36を溶融させて枠体24とリッド26とを接合させているため、高温から常温に戻る際に空隙30内の圧力が低下して、空隙30内は外気圧よりも低い減圧状態となっている。
【0037】
なお、リッド26は、高い放熱性及び低い電気抵抗を得るために、Cuを含むことが好ましく、厚さの不均一性を低減させるために、Cu層上にNi層を設けることが好ましい。また、支持基板44は、例えばSUS304のように、Cuに対してめっきの基材として機能し、且つ、封止後にリッド26から容易に剥離できる程度の密着性を有する材料が好ましい。また、熱膨張係数の相違による位置ズレを低減するために、支持基板44として圧電基板22と同じ圧電体材料を用いてもよい。支持基板44として圧電体を用いる場合には、支持基板44表面に電解めっき用金属層(例えば、Al層又はCu層)を、更にその上にめっき層と適度な密着性を有する金属層(例えば、Ti層)を形成することが好ましい。
【0038】
前述の如き製造工程をもって形成された弾性波デバイス20は、
図6(a)及び
図6(b)のように、上面と下面を貫通する貫通配線18が形成され、更に両面に配線層16aが選択的に形成された絶縁層14aに埋め込まれる。このとき、弾性波デバイス20の上面は絶縁層14a上面に露出し、少なくともリッド26の上面は絶縁層14aの上面と同一平面をなしていることが好ましい。
【0039】
この後、
図7のように、絶縁層14aの上面側にプリプレグの絶縁層14bと配線層16bとを順に配置し、一方、絶縁層14aの下面側にプリプレグの絶縁層14cと配線層16cとを順に配置する。しかる後、絶縁層14b、14c及び配線層16b、16cを加熱して、支持体46を用いて絶縁層14b、14c及び配線層16b、16cを絶縁層14a側に加圧する。これにより、
図8(a)のように、絶縁層14b、14c及び配線層16b、16cが絶縁層14aに圧着して、弾性波デバイス20が内蔵された積層基板が得られる。このとき、絶縁層14b、14c及び配線層16b、16cに加えられる圧力は弾性波デバイス20にも印加されることから、リッド26の材質及び厚さを適切に選択することにより、リッド26が圧電基板22側に湾曲した変形(圧電基板22表面に近づく方向に凹んだ形状)を生じるようにする。リッド26が圧電基板22表面に近づく方向に凹んだ形状となることにより、空隙30の容積が小さくなり、絶縁層14aに埋め込む前のリッド26が平坦な形状であった場合に比べて、空隙30内の圧力が高まる。尚、リッド26の凹み量は、その材質及び厚さに依存することから、所望の凹み量になるように、リッド26の材質及び厚さを予め選択する。
【0040】
図8(b)のように、配線層16bの上面及び配線層16cの下面に設けたレジスト層(不図示)をマスクに用い、配線層16b、16cに対して、例えばエッチング処理を施すことで、配線層16b、16cに開口を形成する。この開口では、絶縁層14b、14cが露出している。開口で露出している絶縁層14b、14cに対して、例えばレーザを照射することで、絶縁層14b、14cを貫通する貫通孔48を形成する。貫通孔48では、配線層16aが露出している。
【0041】
図8(c)のように、貫通孔48に貫通配線18を形成する。貫通配線18は、まず無電解めっき法によりシードメタルを形成し、このシードメタルを給電線として電解めっき法により形成することができる。また、絶縁層14bの上面及び絶縁層14cの下面にもめっき層が形成されるため、絶縁層14bの上面全面及び絶縁層14cの下面全面に配線層16b、16cが再度形成される。
【0042】
図9(a)のように、配線層16bの上面及び配線層16cの下面に設けたレジスト層(不図示)をマスクに用い、配線層16b、16cに対して、例えばエッチング処理を施すことで、配線層16b、16cを所望の形状にパターニングする。
【0043】
図9(b)及び
図10(a)のように、
図7から
図9(a)で説明した処理と同様な処理を繰り返して、弾性波デバイス20が内蔵された多層配線板12を形成する。その後、
図10(b)のように、多層配線板12の上面の配線層16に半田42を供給し、リフローすることにより、弾性波デバイス20に電気的に接続される電子部品40を実装する。これにより、実施例1に係る弾性波デバイス内蔵モジュール10が形成される。
【0044】
実施例1によれば、
図2及び
図4のように、多層配線板12に内蔵された弾性波デバイス20の封止部28を構成するリッド26は、圧電基板22側に凹んだ形状となり、封止部28により形成される空隙30の容積が減少している。これにより、空隙30内の圧力が高まり、空隙30内に水分等が侵入することを抑制できる。その結果、弾性波デバイス20の特性の劣化等を抑制することができる。
【0045】
空隙30内に水分等が侵入することを抑制するという観点から、空隙30内の圧力は、リッド26が平坦であるとした場合における空隙30内の圧力よりも高いことが好ましい。例えば、リッド26の湾曲量X(凹み量X)が、リッド26が平坦であるとした場合における空隙30の高さの1%以上あれば、空隙30内の圧力を高めて、水分等の侵入を抑制することができる。また、空隙30内の圧力をより高めて、水分等の侵入をより効果的に抑制するために、リッド26の凹み量Xは、リッド26が平坦であるとした場合における空隙30の高さの5%以上であることが好ましい。10%以上であればより好ましく、20%以上であることが更に好ましい。
【0046】
実施例1では、枠体24及びリッド26が共に金属により形成されている場合を例に示したがこれに限られるものではない。枠体24及びリッド26は、ポリイミド、エポキシ樹脂等の樹脂、或いはセラミック材等の絶縁物により形成されてもよい。
図11は、枠体及びリッドが絶縁物で形成された弾性表面波デバイスを示す断面図である。
図11のように、圧電基板22上に設けられたIDT0及び反射器R0を囲んで、例えば樹脂からなる枠体24aが設けられている。枠体24a上には、IDT0及び反射器R0上に空隙30が形成されるように、例えば樹脂からなるリッド26aが設けられている。これにより、IDT0及び反射器R0は、枠体24aとリッド26aとを有する封止部28aにより封止されている。封止部28aを貫通して、IDT0に電気的に接続される貫通電極49が設けられている。なお、枠体24aとリッド26aとの間には接合部材は介在してなく、枠体24aとリッド26aとは直接接合している。
【0047】
また、枠体24とリッド26とを異なる材料から形成することもできる。例えば、枠体24が金属により形成され、リッド26がセラミック材により形成されてもよい。また、封止部28は、枠体24及びリッド26以外の部材を含んでいてもよい。さらに、封止部28は、一体形成されたキャップ形状の部材で構成されてもよい。
【0048】
尚、リッド26の強度が小であると、
図7に示した絶縁層14b、絶縁層14c等を絶縁層14aに圧着させる際に加える圧力によって、リッド26に大きな凹みが形成され、リッド26がIDT0に接触してしまう可能性がある。また、リッド26にクラックが生じてしまう可能性もある。この為、リッド26は、ある程度の大きさの強度を有することが好ましく、金属により形成されていることが好ましい。また、リッド26を金属で形成することで、弾性波デバイス20の放熱性及び耐湿性を向上させることができる。かかる放熱性及び耐湿性を向上させる観点から、枠体24も金属で形成されていることが望ましい。
【0049】
リッド26が金属により形成されている場合、
図5(a)及び
図5(b)を用いて説明したように、リッド26と枠体24とを半田からなる接合部材36を用いて接合し、封止部28を形成する。この接合処理は高温環境下で行われるため、封止処理後には空隙30内は減圧状態となってしまう。空隙30内が減圧状態であると、空隙30内に水分等が侵入し易い。したがって、リッド26が金属により形成されている場合、リッド26が圧電基板22側に凹んだ形状となり、封止部28により形成される空隙30の容積が減少することは、封止処理に於ける空隙30内の減圧化を補償して、水分等の侵入を抑制することに有効である。
【0050】
また、リッド26の強度が必要以上に大であると、
図7に示す絶縁層14b、絶縁層14c等を絶縁層14aに圧着させる際に加える圧力によっても、リッド26には殆ど凹みを生じない。したがって、リッド26の強度は、絶縁層14b、絶縁層14c等を絶縁層14aに圧着させる際に加える圧力によってリッド26に凹みが生じる程度の大きさであることが好ましい。リッド26の強度と厚さとは相関することから、リッド26が例えばCu或いはNi等の金属、それらの金属を成分に含む合金、若しくはセラミック材により形成される場合、リッド26の厚さは10μm以上乃至40μm以下とされるのが好ましく、20μm以上乃至30μm以下とされるのがより好ましい。
【0051】
尚、多層配線板12を構成する絶縁層14は、樹脂以外の絶縁物で形成することもできるが、絶縁層14を樹脂により形成する場合、前述の如く樹脂は吸湿し易い性質を持つことから、空隙30内に水分が侵入し易い。したがって、絶縁層14が樹脂により形成されている場合、空隙30内の圧力を高めて水分等の侵入を抑制するためにも、リッド26が圧電基板22側に凹んだ形状とされることが好ましい。
【0052】
また、リッド26に於ける凹み量Xは、かかるリッド26がIDT0に接触しない量とされるが、リッド26が金属で形成される場合には、リッド26とIDT0との間隔が10μm以上離れていることが好ましい。これは、リッド26とIDT0との間隔が小さくなると、リッド26とIDT0との間に生じる容量により、弾性波デバイス20の特性が劣化するためである。この為、リッド26の凹み量Xは、例えばリッド26の厚さの1/2よりも少とされることが選択される。一方、リッド26が樹脂等の絶縁物で形成されている場合には、リッド26は、IDT0の振動を妨げない位置までIDT0に近接して凹むことが許される。
【0053】
図2のように、弾性波デバイス20は、多層配線板12の厚さ方向の中央部に内蔵されることが好ましい。これにより、多層配線板12を圧着によって形成する際に加える圧力によって、弾性波デバイス20の封止部28を構成するリッド26を、圧電基板22側に凹んだ形状とさせることが容易になされる。即ち、空隙30内の圧力を高めることを容易に行うことができる。
【0054】
実施例1では、多層配線板12に内蔵された弾性波デバイス20が弾性表面波デバイスである場合を例に説明したが、弾性波デバイス20として、ラブ波デバイス又は弾性境界波デバイスを適用する場合にあっても、本発明思想を適用することができる。また、多層配線板に内蔵される弾性波デバイスは、圧電薄膜共振器デバイス或いはラム波デバイス等のバルク波デバイスの場合でもよい。さらに、多層配線板に内蔵された複数の弾性波デバイスのうちの1つが弾性表面波デバイスで、他の1つがバルク波デバイスの場合でもよい。
図12(a)は、圧電薄膜共振器デバイスを示す平面図、
図12(b)は、
図12(a)の線A−A間の断面図である。
図12(a)及び
図12(b)のように、シリコン等の基板50上に、下部電極52、窒化アルミニウム等の圧電膜54、及び上部電極56が順に積層されている。圧電膜54を挟み下部電極52と上部電極56とが重なる領域が共振領域58である。共振領域58の下方の基板50には、基板50を貫通する貫通孔60が形成されている。なお、貫通孔60の代わりに、基板50の一部が除去されて空隙が形成される構成、基板50と下部電極52との間にドーム型の空隙が形成される構成、或いは弾性波を反射する音響多層膜が形成される構成を適用することも可能である。
【0055】
また、多層配線板に内蔵された弾性波デバイスによって分波器が形成される構成としてもよい。
図13は、分波器を示すブロック図である。
図13のように、分波器68は、送信フィルタ62と受信フィルタ64と整合回路66とを備える。送信フィルタ62及び受信フィルタ64が、多層配線板に内蔵された弾性波デバイスによって形成される。例えば、
図2において、多層配線板12に内蔵された弾性波デバイス20のうちの一方を送信フィルタ62、他方を受信フィルタ64とすることができる。各フィルタの弾性波を励振する電極は、異なる圧電基板上に形成されても良く、また共通の圧電基板上に形成されても良い。共通の圧電基板上に形成された場合には、1つの封止部によって複数の弾性波を励振する電極を封止してもよい。
【0056】
送信フィルタ62は、アンテナ端子Antと送信端子Txとの間に配置・接続されている。受信フィルタ64は、アンテナ端子Antと受信端子Rxとの間に配置・接続されている。そして、整合回路66は、送信フィルタ62及び受信フィルタ64の少なくとも一方とアンテナ端子Antとの間に接続されている。
【0057】
送信フィルタ62は、送信端子Txから入力された信号のうち送信帯域の信号を送信信号としてアンテナ端子Antに通過させ、他の周波数の信号を抑圧する。受信フィルタ64は、アンテナ端子Antから入力された信号のうち受信帯域の信号を受信信号として受信端子Rxに通過させ、他の周波数の信号を抑圧する。整合回路66は、送信フィルタ62を通過した送信信号が、受信フィルタ64側に漏れず、アンテナ端子Antから出力するようにインピーダンスを整合させる回路である。
【0058】
実施例1において、
図6(a)及び
図6(b)に示される絶縁層14aの周囲側面に、絶縁層14aと同程度の厚さを有するCu等の金属層が配置されてもよい。かかる金属層を配置することにより、多層配線板12の強度及び放熱性を高めることができる。
【0059】
図14は、実施例1の変形例1に係る弾性波デバイス内蔵モジュールを示す断面図である。
図14のように、実施例1の変形例1の弾性波デバイス内蔵モジュール70にあっては、封止部28を構成するリッド26上に、例えば、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂或いはその他の絶縁物からなる調整層72が配設されている。調整層72は、絶縁層14と異なる材質の絶縁物で形成されている。その他の構成は、実施例1の
図2と同じであるため説明を省略する。
【0060】
実施例1の変形例1では、リッド26と絶縁層14との間に、絶縁物からなる調整層72が配設されている。かかる調整層72の厚さを調整することにより、
図7での絶縁層14b、14c等を絶縁層14aに圧着させる際に加える圧力によってリッド26が凹む量を調整することが可能となる。
【0061】
例えば、多層配線板12に内蔵された複数の弾性波デバイス20それぞれのリッド26の面積が異なると、各弾性波デバイス20に同じ大きさの圧力が加わっても、弾性波デバイス20毎にリッド26の凹み量が異なってしまうことが生ずる。例えば、複数の弾性波デバイス20のうちの1つは、リッド26がほとんど凹まず、他の1つは、IDT0に接触するほどリッド26が凹んでしまう場合がある。しかしながら、実施例1の変形例1のように、リッド26上に調整層72を配設し、且つかかる調整層72の厚さを弾性波デバイス20毎に選択することにより、複数の弾性波デバイス20のそれぞれに於けるリッド26のの凹み量を、同様のものとすることができる。