(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ブーム軸を中心に車両本体に対して回転可能なブームと、前記ブーム軸と平行なアーム軸を中心に前記ブームに対して回転可能なアームと、前記アーム軸と平行なバケット軸及び前記バケット軸と直交するチルト軸のそれぞれを中心に前記アームに対して回転可能なバケットとを含む作業機を備える建設機械の制御システムであって、
前記バケットに設けられ、水平面に対する傾斜角度を検出可能であり、少なくとも前記チルト軸を中心とする前記バケットの回転角度を含むチルト角度データを検出するチルト角度センサと、
前記チルト角度センサから前記チルト角度データが出力されるデータ取得部と、
固定指令に基づいて、前記データ取得部に出力される前記チルト角度データを固定データにするデータ固定部と、
前記固定指令が解除されるまで、前記固定データに基づいて、前記作業機を制御する作業機制御部と、
を備える建設機械の制御システム。
ブーム軸を中心に車両本体に対して回転可能なブームと、前記ブーム軸と平行なアーム軸を中心に前記ブームに対して回転可能なアームと、前記アーム軸と平行なバケット軸及び前記バケット軸と直交するチルト軸のそれぞれを中心に前記アームに対して回転可能なバケットとを含む作業機を備える建設機械の制御システムであって、
前記バケットに設けられ、水平面に対する傾斜角度を検出可能であり、少なくとも前記チルト軸を中心とする前記バケットの回転角度を含むチルト角度データを検出するチルト角度センサと、
前記チルト角度センサから前記チルト角度データが出力されるデータ取得部と、
固定指令に基づいて、前記データ取得部に出力される前記チルト角度データを固定データにするデータ固定部と、
前記固定指令に基づいて、前記バケットの駆動を禁止する駆動禁止部と、
を備える建設機械の制御システム。
前記固定指令は、前記制限掘削制御の開始において前記データ固定部に出力され、前記制限掘削制御の終了において解除される請求項3に記載の建設機械の制御システム。
前記演算部は、前記2次元バケットデータ、前記車両本体の現在位置を示す車両本体位置データ、及び前記車両本体の姿勢を示す車両本体姿勢データに基づいて、前記目標掘削地形と前記バケットとの相対位置を求める請求項5に記載の建設機械の制御システム。
ブーム軸を中心に車両本体に対して回転可能なブームと、前記ブーム軸と平行なアーム軸を中心に前記ブームに対して回転可能なアームと、前記アーム軸と平行なバケット軸及び前記バケット軸と直交するチルト軸のそれぞれを中心に前記アームに対して回転可能なバケットとを含む作業機を備える建設機械の制御方法であって、
前記バケットに配置され、水平面に対する傾斜角度を検出可能なチルト角度センサで、前記チルト軸を中心とする前記バケットの回転角度を示すチルト角度データを検出することと、
前記チルト角度センサから出力された前記チルト角度データを取得することと、
固定指令に基づいて、前記チルト角度データを固定化して固定データを生成することと、
前記固定指令が解除されるまで、前記固定データに基づいて、前記作業機を制御することと、
を含む建設機械の制御方法。
ブーム軸を中心に車両本体に対して回転可能なブームと、前記ブーム軸と平行なアーム軸を中心に前記ブームに対して回転可能なアームと、前記アーム軸と平行なバケット軸及び前記バケット軸と直交するチルト軸のそれぞれを中心に前記アームに対して回転可能なバケットとを含む作業機を備える建設機械の制御方法であって、
前記バケットに配置され、水平面に対する傾斜角度を検出可能なチルト角度センサで、前記チルト軸を中心とする前記バケットの回転角度を示すチルト角度データを検出することと、
前記チルト角度センサから出力された前記チルト角度データを取得することと、
固定指令に基づいて、前記チルト角度データを固定化して固定データを生成することと、
前記固定指令に基づいて、前記バケットの駆動を禁止することと、
を含む建設機械の制御方法。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されない。以下で説明する各実施形態の構成要素は、適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
【0018】
以下の説明においては、グローバル座標系及びローカル座標系のそれぞれを設定し、それら座標系を参照しつつ各部の位置関係について説明する。グローバル座標系は、地球に固定された原点Pr(
図4参照)を基準とした座標系である。ローカル座標系は、建設機械CMの車両本体1に固定された原点P0(
図4参照)を基準とした座標系である。ローカル座標系を、車両本体座標系、と称してもよい。
【0019】
以下の説明においては、グローバル座標系を、XgYgZg直交座標系で示す。後述するように、グローバル座標系の基準位置(原点)Pgは、作業エリアに位置する。水平面内の一方向をXg軸方向、水平面内においてXg軸方向と直交する方向をYg軸方向、Xg軸方向及びYg軸方向のそれぞれと直交する方向をZg軸方向とする。また、Xg軸、Yg軸、及びZg軸まわりの回転(傾斜)方向をそれぞれ、θXg、θYg、及びθZg方向とする。Xg軸は、YgZg平面と直交する。Yg軸は、XgZg平面と直交する。Zg軸は、XgYg平面と直交する。XgYg平面は、水平面と平行である。Zg軸方向は、鉛直方向である。
【0020】
以下の説明においては、ローカル座標系を、XYZ直交座標系で示す。後述するように、ローカル座標系の基準位置(原点)P0は、旋回体3の旋回中心AXに位置する。ある平面内の一方向をX軸方向、その平面内においてX軸方向と直交する方向をY軸方向、X軸方向及びY軸方向のそれぞれと直交する方向をZ軸方向とする。また、X軸、Y軸、及びZ軸まわりの回転(傾斜)方向をそれぞれ、θX、θY、及びθZ方向とする。X軸は、YZ平面と直交する。Y軸は、XZ平面と直交する。Z軸は、XY平面と直交する。
【0021】
[油圧ショベルの全体構成]
図1は、本実施形態に係る建設機械CMの一例を示す斜視図である。本実施形態においては、建設機械CMが、油圧により作動する作業機2を備える油圧ショベルCMである例について説明する。
【0022】
図1に示すように、油圧ショベルCMは、車両本体1と、作業機2とを備える。後述するように、油圧ショベルCMには掘削制御を実行する制御システム200が搭載されている。
【0023】
車両本体1は、旋回体3と、運転室4と、走行装置5とを有する。旋回体3は、走行装置5の上に配置される。走行装置5は、旋回体3を支持する。旋回体3を上部旋回体3と称してもよい。走行装置5を下部走行体5と称してもよい。旋回体3は、旋回軸AXを中心に旋回可能である。運転室4に、オペレータが着座する運転席4Sが設けられる。オペレータは、運転室4において油圧ショベルCMを操作する。走行装置5は、一対の履帯5Crを有する。履帯5Crの回転により、油圧ショベルCMが走行する。なお、走行装置5が車輪(タイヤ)を含んでもよい。
【0024】
本実施形態においては、運転席4Sを基準として各部の位置関係について説明する。前後方向とは、運転席4Sを基準とした前後方向をいう。左右方向とは、運転席4Sを基準とした左右方向をいう。左右方向は、車幅方向に一致する。運転席4Sが正面に正対する方向を前方向とし、前方向に対向する方向を後方向とする。運転席4Sが正面に正対したとき側方向の右側、左側をそれぞれ右方向、左方向とする。本実施形態において、前後方向は、X軸方向であり、左右方向は、Y軸方向である。運転席4Sが正面に正対する方向は、前方向(+X方向)であり、前方向の反対方向は、後方向(−X方向)である。運転席4Sが正面に正対したときの車幅方向の一側の方向は、右方向(+Y方向)であり、車幅方向の他側の方向は、左方向(−Y方向)である。
【0025】
旋回体3は、エンジンが収容されるエンジンルーム9と、旋回体3の後部に設けられるカウンタウェイトとを有する。旋回体3において、エンジンルーム9の前方に手すり19が設けられる。エンジンルーム9に、エンジン及び油圧ポンプなどが配置される。
【0026】
作業機2は、旋回体3に接続される。作業機2は、ブームピン13を介して旋回体3に接続されるブーム6と、アームピン14を介してブーム6に接続されるアーム7と、バケットピン15及びチルトピン80を介してアーム7に接続されるバケット8と、ブーム6を駆動するブームシリンダ10と、アーム7を駆動するアームシリンダ11と、バケット8を駆動するバケットシリンダ12及びチルトシリンダ30とを有する。ブーム6の基端部(ブームフート)と旋回体3とが接続される。ブーム6の先端部(ブームトップ)とアーム7の基端部(アームフート)とが接続される。アーム7の先端部(アームトップ)とバケット8の基端部とが接続される。ブームシリンダ10、アームシリンダ11、バケットシリンダ12、及びチルトシリンダ30のそれぞれは、作動油によって駆動される油圧シリンダである。
【0027】
作業機2は、ブームシリンダ10に配置され、ブームシリンダ10のストローク長さ(ブームシリンダ長)を検出する第1ストロークセンサ16と、アームシリンダ11に配置され、アームシリンダ11のストローク長さ(アームシリンダ長)を検出する第2ストロークセンサ17と、バケットシリンダ12に配置され、バケットシリンダ12のストローク長さ(バケットシリンダ長)を検出する第3ストロークセンサ18とを有する。
【0028】
ブーム6は、回転軸であるブーム軸J1を中心に旋回体3に対して回転可能である。アーム7は、ブーム軸J1と平行な回転軸であるアーム軸J2を中心にブーム6に対して回転可能である。バケット8は、ブーム軸J1及びアーム軸J2と平行な回転軸であるバケット軸J3を中心にアーム7に対して回転可能である。バケット8は、バケット軸J3と直交する回転軸であるチルト軸J4を中心にアーム7に対して回転可能である。ブームピン13は、ブーム軸J1を含む。アームピン14は、アーム軸J2を含む。バケットピン15は、バケット軸J3を含む。チルトピン80は、チルト軸J4を含む。
【0029】
本実施形態において、ブーム軸J1、アーム軸J2、及びバケット軸J3のそれぞれは、Y軸と平行である。ブーム6、アーム7、及びバケット8のそれぞれは、θY方向に回転可能である。本実施形態において、XZ平面は、所謂、ブーム6及びアーム7の垂直回動面を含む。
【0030】
以下の説明においては、ブームシリンダ10のストローク長さを適宜、ブームシリンダ長又はブームストローク、と称し、アームシリンダ11のストローク長さを適宜、アームシリンダ長又はアームストローク、と称し、バケットシリンダ12のストローク長さを適宜、バケットシリンダ長又はバケットストローク、と称し、チルトシリンダ30のストローク長さを適宜、チルトシリンダ長、と称する。また、以下の説明において、ブームシリンダ長、アームシリンダ長、バケットシリンダ長、及びチルトシリンダ長を適宜、シリンダ長データL、と総称する。
【0031】
[バケット]
次に、本実施形態に係るバケット8について説明する。
図2は、本実施形態に係るバケット8の一例を示す側断面図である。
図3は、本実施形態に係るバケット8の一例を示す正面図である。本実施形態において、バケット8は、チルト式バケットである。
【0032】
図2及び
図3に示すように、作業機2は、バケット軸J3及びバケット軸J3と直交するチルト軸J4のそれぞれを中心にアーム7に対して回転可能なバケット8とを有する。バケット8は、バケットピン15(バケット軸J3)を中心にアーム7に回転可能に支持されている。バケット8は、チルトピン80(チルト軸J4)を中心にアーム7に回転可能に支持される。バケット軸J3とチルト軸J4とは直交する。バケット8は、バケット軸J3及びそのバケット軸J3と直交するチルト軸J4のそれぞれを中心にアーム7に回転可能に支持される。
【0033】
バケット8は、接続部材(台枠)90を介して、アーム7の先端部に接続される。バケットピン15は、アーム7と接続部材90とを連結する。チルトピン80は、接続部材90とバケット8とを連結する。バケット8は、接続部材90を介して、アーム7に回転可能に接続される。
【0034】
バケット8は、底板81と、背板82と、上板83と、側板84と、側板85とを含む。底板81と上板83と側板84と側板85とによって、バケット8の開口部86が規定される。
【0035】
バケット8は、上板83の上部に設けられたブラケット87を有する。ブラケット87は、上板83の前後位置に設置される。ブラケット87は、接続部材90及びチルトピン80と連結される。
【0036】
接続部材90は、プレート部材91と、プレート部材91の上面に設けられたブラケット92と、プレート部材91の下面に設けられたブラケット93とを有する。ブラケット92は、アーム7及び後述する第2リンクピン95と連結される。ブラケット93はブラケット87の上部に設置され、チルトピン80及びブラケット87と連結される。
【0037】
バケットピン15は、接続部材90のブラケット92とアーム7の先端部とを連結する。チルトピン80は、接続部材90のブラケット93とバケット8のブラケット87とを連結する。これにより、アーム7に対して接続部材90及びバケット8がバケット軸J3を中心に回転可能となり、接続部材90に対してバケット8がチルト軸J4を中心に回転可能となる。
【0038】
作業機2は、第1リンクピン94Pを介してアーム7に回転可能に接続される第1リンク部材94と、第2リンクピン95Pを介してブラケット92に回転可能に接続される第2リンク部材95とを有する。第1リンク部材94の基端部が第1リンクピン94Pを介してアーム7に接続される。第2リンク部材95の基端部が第2リンクピン95Pを介してブラケット92に接続される。第1リンク部材94の先端部と第2リンク部材95の先端部とが、バケットシリンダトップピン96を介して連結される。
【0039】
バケットシリンダ12の先端部は、バケットシリンダトップピン96を介して、第1リンク部材94の先端部及び第2リンク部材95の先端部と回転可能に接続される。バケットシリンダ12が伸縮するように作動すると、接続部材90がバケット8と一緒にバケット軸J3を中心に回転する。
【0040】
チルトシリンダ30は、接続部材90に設けられたブラケット97、及びバケット8に設けられたブラケット88のそれぞれに接続される。チルトシリンダ30のロッドがピンを介してブラケット97に接続される。チルトシリンダ30の本体部がピンを介してブラケット88に接続される。バケットシリンダ30が伸縮するように作動すると、バケット8はチルト軸J4を中心に回転する。
【0041】
このように、バケット8は、バケットシリンダ12の作動により、バケット軸J3を中心に回転する。バケット8は、チルトシリンダ30の作動により、チルト軸J4を中心に回転する。本実施形態においては、バケット軸J3を中心とするバケット8の回転により、チルトピン80(チルト軸J4)が、バケット8と一緒に回転(傾斜)する。
【0042】
本実施形態において、作業機2は、チルト軸J4を中心とするバケット8の回転角度δを示すチルト角度データを検出するチルト角度センサ70を有する。チルト角度センサ70は、グローバル座標系における水平面に対するバケット8のチルト角度(回転角度)を検出する。チルト角度センサ70は、所謂、2軸の角度センサであり、後述するθXg方向、及びθYg方向に関する2つの方向に関する傾斜角度を検出する。チルト角度センサ70は、バケット8の少なくとも一部に設けられる。グローバル座標系におけるチルト角度は、傾斜センサ24の検出結果に基づいて、ローカル座標系におけるチルト角度δに変換される。
【0043】
なお、バケット8は、本実施形態に限定されない。バケット8の傾斜角度(チルト角度)を任意に設定する方法でもよい。傾斜角度の軸は、もう1軸増えてもよい。
【0044】
[油圧ショベルの構造]
図4は、本実施形態に係る油圧ショベルCMを模式的に示す側面図である。
図5は、本実施形態に係る油圧ショベルCMを模式的に示す背面図である。
図6は、本実施形態に係る油圧ショベルCMを模式的に示す平面図である。
【0045】
本実施形態においては、ブーム軸J1とアーム軸J2との距離L1を、ブーム長さL1とする。アーム軸J2とバケット軸J3との距離L2を、アーム長さL2とする。バケット軸J3とバケット8の先端部8aとの距離L3を、バケット長さL3とする。
【0046】
バケット8の先端部は、バケット8が有する刃の先端部を含む。本実施形態において、バケット8の刃の先端部は、ストレート状である。なお、バケット8は、複数の尖った刃を有してもよい。以下の説明において、バケット8の先端部8aを適宜、刃先8a、と称する。
【0047】
油圧ショベルCMは、作業機2の角度を検出する角度検出装置22を有する。角度検出装置22は、ブーム軸J1を中心とするブーム6の回転角度αを示すブーム角度データ、アーム軸J2を中心とするアーム7の回転角度βを示すアーム角度データ、及びバケット軸J3を中心とするバケット8の回転角度γを示すバケット角度データを含む作業機角度データを検出する。本実施形態において、ブーム角度(回転角度)αは、ローカル座標系のZ軸と平行な軸に対するブーム6の傾斜角度を含む。アーム角度(回転角度)βは、ブーム6に対するアーム7の傾斜角度を含む。バケット角度(回転角度)γは、アーム7に対するバケット8の傾斜角度を含む。
【0048】
本実施形態において、角度検出装置22は、ブームシリンダ10に配置された第1ストロークセンサ16と、アームシリンダ11に配置された第2ストロークセンサ17と、バケットシリンダ12に配置された第3ストロークセンサ18とを含む。第1ストロークセンサ16の検出結果に基づいて、ブームシリンダ長が求められる。第2ストロークセンサ17の検出結果に基づいて、アームシリンダ長が求められる。第3ストロークセンサ18の検出結果に基づいて、バケットシリンダ長が求められる。本実施形態においては、第1ストロークセンサ16でブームシリンダ長が検出されることにより、ブーム角度αが導出又は算出される。第2ストロークセンサ17でアームシリンダ長が検出されることにより、アーム角度βが導出又は算出される。第3ストロークセンサ18でバケットシリンダ長が検出されることにより、バケット角度γが導出又は算出される。
【0049】
油圧ショベルCMは、車両本体1の現在位置を示す車両本体位置データP、及び車両本体1の姿勢を示す車両本体姿勢データQを検出可能な位置検出装置20を備えている。車両本体1の現在位置は、グローバル座標系における車両本体1の現在位置(Xg位置、Yg位置、及びZg位置)を含む。車両本体1の姿勢は、θXg方向、θYg方向、及びθZg方向に関する旋回体3の位置を含む。車両本体1の姿勢は、水平面(XgYg平面)に対する旋回体3の左右方向の傾斜角度(ロール角)θ1と、水平面に対する旋回体3の前後方向の傾斜角度(ピッチ角)θ2と、グローバル座標の基準方位(例えば北)と旋回体3(作業機2)が向いている方位とがなす角度(ヨー角)θ3とを含む。
【0050】
位置検出装置20は、アンテナ21と、位置センサ23と、傾斜センサ24とを有する。アンテナ21は、車両本体1の現在位置を検出するためのアンテナである。アンテナ21は、GNSS(Global Navigation Satellite Systems:全地球航法衛星システム)用のアンテナである。アンテナ21は、RTK−GNSS(Real Time Kinematic-Global Navigation Satellite Systems)用アンテナである。アンテナ21は、旋回体3に設けられる。本実施形態において、アンテナ21は、旋回体3の手すり19に設けられる。なお、アンテナ21は、エンジンルーム9の後方向に設けられてよい。例えば、旋回体3のカウンタウェイトにアンテナ21が設けられてもよい。アンテナ21は、受信した電波(GNSS電波)に応じた信号を位置センサ23に出力する。
【0051】
位置センサ23は、3次元位置センサ及びグローバル座標演算部を含み、グローバル座標系におけるアンテナ21の設置位置Prを検出する。グローバル座標系は、作業エリアに設置した基準位置Pgを元にした3次元座標系である。
図4に示すように、本実施形態において、基準位置Pgは、作業エリアに設定された基準杭の先端の位置である。
【0052】
本実施形態において、アンテナ21は、ローカル座標系のY軸方向(旋回体3の車幅方向)に関して離れるように旋回体3に設けられた第1アンテナ21A及び第2アンテナ21Bを含む。位置センサ23は、第1アンテナ21Aの設置位置Pra及び第2アンテナ21Bの設置位置Prbを検出する。
【0053】
位置検出装置20は、位置センサ23を使って、グローバル座標における車両本体位置データP及び車両本体姿勢データQを取得する。車両本体位置データPは、旋回体3の旋回軸(旋回中心)AXに位置する基準位置P0を示すデータである。なお、基準位置データPは、設置位置Prを示すデータでもよい。位置検出装置20は、基準位置P0を含む車両本体位置データPを取得する。また、位置検出装置20は、2つの設置位置Pra及び設置位置Prbに基づいて、車両本体姿勢データQを取得する。車両本体姿勢データQは、設置位置Praと設置位置Prbとで決定される直線がグローバル座標の基準方位(例えば北)に対してなす角に基づいて決定される。車両本体姿勢データQは、旋回体3(作業機2)が向いている方位を示す。
【0054】
傾斜センサ24は、旋回体3に設けられる。傾斜センサ24は、IMU(Inertial Measurement Unit)を含む。傾斜センサ24は、運転室4の下部に配置される。旋回体3において、運転室4の下部に高剛性のフレームが配置される。なお、傾斜センサ24は、旋回体3の旋回軸AX(基準位置P2)の側方(右側又は左側)に配置されてもよい。傾斜センサ24は、そのフレームに配置される。位置検出装置20は、傾斜センサ24を使って、ロール角θ1及びピッチ角θ2を含む車両本体姿勢データQを取得する。
【0055】
図7は、本実施形態に係るバケット8を模式的に示す側面図である。
図8は、本実施形態に係るバケット8を模式的に示す正面図である。
【0056】
本実施形態においては、バケット軸J3とチルト軸J4との距離L4を、チルト長さL4とする。側板84と側板85との距離L5を、バケット8の幅の寸法L5とする。チルト角度δは、XY平面に対するバケット8の傾斜角度である。チルト角度δを示すチルト角度データは、チルト角度センサ70の検出結果から導出される。チルト軸角度εは、XY平面に対するチルト軸J4(チルトピン80)の傾斜角度である。チルト軸角度εを示すチルト角度データは、角度検出装置22の検出結果から導出される。
【0057】
なお、本実施形態においては、チルト角度データが角度検出装置22の検出結果から取得されることとするが、バケット8のチルト角度は、例えば、チルトシリンダ30のストローク長さ(チルトシリンダ長)を検出した検出結果から算出し、取得することも可能である。
【0058】
[制御システムの構成]
次に、本実施形態に係る制御システム200の概要について説明する。
図9は、本実施形態に係る制御システム200の機能構成を示すブロック図である。
【0059】
制御システム200は、作業機2を用いる掘削処理を制御する。掘削処理の制御は、制限掘削制御を含む。
図9に示すように、制御システム200は、位置検出装置20と、角度検出装置22と、チルト角度センサ70と、操作装置25と、作業機コントローラ26と、圧力センサ66と、制御弁27と、方向制御弁64と、表示コントローラ28と、表示部29と、入力部36と、センサコントローラ32と、ポンプコントローラ34と、IMU24とを備えている。
【0060】
表示部29は、表示コントローラ28の制御に基づいて、掘削を行うべき目標掘削地形等の所定の情報を表示する。入力部36は、表示部で入力を行うタッチパネル等とされ、オペレータに入力操作される。オペレータに操作されることにより、入力部36は、その操作に基づく操作信号を生成して、表示コントローラ28に出力する。
【0061】
操作装置25は、運転室4に配置される。オペレータにより操作装置25が操作される。操作装置25は、作業機2を駆動するオペレータ操作を受け付ける。本実施形態において、操作装置25は、パイロット油圧方式の操作装置である。
【0062】
以下の説明においては、油圧シリンダ(ブームシリンダ10、アームシリンダ11、バケットシリンダ12、及びチルトシリンダ30)を作動するためにその油圧シリンダに供給される油を適宜、作動油、と称する。本実施形態においては、方向制御弁64により、油圧シリンダに対する作動油の供給量が調整される。方向制御弁64は、供給される油によって作動する。以下の説明においては、方向制御弁64を作動するためにその方向制御弁64に供給される油を適宜、パイロット油、と称する。また、パイロット油の圧力を適宜、パイロット油圧、と称する。
【0063】
作動油及びパイロット油は、同一の油圧ポンプから送出されてもよい。例えば、油圧ポンプから送出された作動油の一部が減圧弁で減圧され、その減圧された作動油がパイロット油として使用されてもよい。また、作動油を送出する油圧ポンプ(メイン油圧ポンプ)と、パイロット油を送出する油圧ポンプ(パイロット油圧ポンプ)とが別の油圧ポンプでもよい。
【0064】
操作装置25は、第1操作レバー25Rと、第2操作レバー25Lと、第3操作レバー25Pとを有する。第1操作レバー25Rは、例えば運転席4Sの右側に配置される。第2操作レバー25Lは、例えば運転席4Sの左側に配置される。第3操作レバー25Pは、例えば第2操作レバー25Lに配置される。なお、第3操作レバー25Pは、第1操作レバー25Rに配置されてもよい。第1操作レバー25R及び第2操作レバー25Lでは、前後左右の動作が2軸の動作に対応している。
【0065】
第1操作レバー25Rにより、ブーム6及びバケット8が操作される。第1操作レバー25Rの前後方向の操作は、ブーム6の操作に対応し、前後方向の操作に応じてブーム6の下げ動作及び上げ動作が実行される。第1操作レバー25Rの左右方向の操作は、バケット8の操作に対応し、左右方向の操作に応じてバケット8の掘削動作及び開放動作が実行される。
【0066】
第2操作レバー25Lにより、アーム7及び旋回体3が操作される。第2操作レバー25Lの前後方向の操作は、アーム7の操作に対応し、前後方向の操作に応じてアーム7の上げ動作及び下げ動作が実行される。第2操作レバー25Lの左右方向の操作は、旋回体3の旋回に対応し、左右方向の操作に応じて旋回体3の右旋回動作及び左旋回動作が実行される。
【0067】
第3操作レバー25Pにより、バケット8が操作される。本実施形態においては、第1操作レバー25Rにより、バケット軸J3を中心とするバケット8の回転が操作される。第3操作レバー25Pにより、チルト軸J4を中心とするバケット8の回転(チルト)が操作される。
【0068】
本実施形態において、ブーム6の上げ動作は、ダンプ動作に相当する。ブーム6の下げ動作は、掘削動作に相当する。アーム7の下げ動作は、掘削動作に相当する。アーム7の上げ動作は、ダンプ動作に相当する。バケット8の下げ動作は、掘削動作に相当する。なお、アーム7の下げ動作を曲げ動作と称してもよい。アーム7の上げ動作を伸長動作と称してもよい。
【0069】
パイロット油圧ポンプから送出され、制御弁によってパイロット油圧に減圧されたパイロット油が操作装置25に供給される。操作装置25の操作量に基づいてパイロット油圧が調整され、そのパイロット油圧に応じて、油圧シリンダ(ブームシリンダ10、アームシリンダ11、バケットシリンダ12、及びチルトシリンダ40)に供給される作動油が流れる方向制御弁64が駆動される。パイロット油圧ライン450には、圧力センサ66が配置されている。圧力センサ66は、パイロット油圧を検出する。圧力センサ66の検出結果は、作業機コントローラ26に出力される。
【0070】
第1操作レバー25Rは、ブーム6の駆動のために前後方向に操作される。前後方向に関する第1操作レバー25Rの操作量(ブーム操作量)に応じて、ブーム6を駆動するためのブームシリンダ10に供給される作動油が流れる方向制御弁64が駆動される。
【0071】
第1操作レバー25Rは、バケット8の駆動のために左右方向に操作される。左右方向に関する第1操作レバー25Rの操作量(バケット操作量)に応じて、バケット8を駆動するためのバケットシリンダ12に供給される作動油が流れる方向制御弁64が駆動される。
【0072】
第2操作レバー25Lは、アーム7の駆動のために前後方向に操作される。前後方向に関する第2操作レバー25Lの操作量(アーム操作量)に応じて、アーム7を駆動するためのアームシリンダ11に供給される作動油が流れる方向制御弁64が駆動される。
【0073】
第2操作レバー25Lは、旋回体3の駆動のために左右方向に操作される。左右方向に関する第2操作レバー25Lの操作量に応じて、旋回体3を駆動するための油圧アクチュエータに供給される作動油が流れる方向制御弁64が駆動される。
【0074】
第3操作レバー25Pは、バケット8の駆動(チルト軸J4を中心とする回転)のために操作される。第3操作レバー25Pの操作量に応じて、バケット8をチルトさせるためのチルトシリンダ30に供給される作動油が流れる方向制御弁64が駆動される。
【0075】
なお、第1操作レバー25Rの左右方向の操作がブーム6の操作に対応し、前後方向の操作がバケット8の操作に対応してもよい。なお、第2操作レバー25Lの左右方向がアーム7の操作に対応し、前後方向の操作が旋回体3の操作に対応してもよい。
【0076】
制御弁27は、油圧シリンダ(ブームシリンダ10、アームシリンダ11、バケットシリンダ12、及びチルトシリンダ30)に対する作動油の供給量を調整するために作動する。制御弁27は、作業機コントローラ26からの制御信号に基づいて作動する。
【0077】
角度検出装置22は、ブーム軸J1を中心とするブーム6の回転角度αを示すブーム角度データ、アーム軸J2を中心とするアーム7の回転角度βを示すアーム角度データ、及びバケット軸J3を中心とするバケット8の回転角度γを示すバケット角度データを含む作業機角度データを検出する。
【0078】
本実施形態において、角度検出装置22は、第1ストロークセンサ16、第2ストロークセンサ17、及び第3ストロークセンサ18を含む。第1ストロークセンサ16の検出結果、第2ストロークセンサ17の検出結果、及び第3ストロークセンサ18の検出結果がセンサコントローラ32に出力される。センサコントローラ32は、第1ストロークセンサ16の検出結果に基づいて、ブームシリンダ長を算出する。第1ストロークセンサ16は、周回動作に伴う位相変位のパルスをセンサコントローラ32に出力する。センサコントローラ32は、第1ストロークセンサ16から出力された位相変位のパルスに基づいて、ブームシリンダ長を算出する。同様に、センサコントローラ32は、第2ストロークセンサ17の検出結果に基づいて、アームシリンダ長を算出する。センサコントローラ32は、第3ストロークセンサ18の検出結果に基づいて、バケットシリンダ長を算出する。
【0079】
センサコントローラ32は、第1ストロークセンサ16の検出結果に基づいて取得されたブームシリンダ長から、車両本体1の垂直方向に対するブーム6の回転角度αを算出する。センサコントローラ32は、第2ストロークセンサ17の検出結果に基づいて取得されたアームシリンダ長から、ブーム6に対するアーム7の回転角度βを算出する。センサコントローラ32は、第3ストロークセンサ18の検出結果に基づいて取得されたバケットシリンダ長から、アーム7に対するバケット8の刃先8aの回転角度γを算出する。
【0080】
なお、ブーム6の回転角度α、アーム7の回転角度β、及びバケット8の回転角度γは、ストロークセンサで検出されなくてもよい。ロータリーエンコーダのような角度検出器でブーム6の回転角度αが検出されてもよい。角度検出器は、旋回体3に対するブーム6の屈曲角度を検出して、回転角度αを検出する。同様に、アーム7の回転角度βがアーム7に取り付けられた角度検出器で検出されてもよい。バケット8の回転角度γがバケット8に取り付けられた角度検出器で検出されてもよい。
【0081】
センサコントローラ32は、第1、第2、第3ストロークセンサ16、17、18からシリンダ長データL及び作業機角度データを取得する。センサコントローラ32は、作業機回転角度データα〜γを表示コントローラ28及び作業機コントローラ26のそれぞれに出力する。
【0082】
表示コントローラ28は、位置検出装置20から車両本体位置データP及び車両本体姿勢データQを取得する。また、表示コントローラ28は、チルト角度センサ70からチルト角度δを示すチルト角度データを取得する。
【0083】
表示コントローラ28は、位置検出装置20から車両本体位置データP及び車両本体姿勢データQを取得する。また、表示コントローラ28は、チルト角度センサ70からチルト角度δを示すチルト角度データを取得する。
【0084】
表示コントローラ28は、演算処理を行う演算部280Aと、データが記憶される記憶部280Bと、データを取得する取得部(データ取得部)280Cと、を有する。
【0085】
表示コントローラ28は、記憶する目標施工情報、各作業機の寸法、車両本体位置データP、車両本体姿勢データQ、及び各作業機の回転角度データα〜γに基づいて、目標掘削地形データUを算出し、作業機コントローラ26へ出力する。
【0086】
作業機コントローラ26は、作業機制御部26Aと、駆動禁止部26Bと、記憶部26Cとを有する。作業機コントローラ26は、表示コントローラ28から目標掘削地形データUを受け取り、センサコントローラ32から各作業機の回転角度データα〜γを取得する。作業機コントローラ26は、目標掘削地形データU、及び作業機の回転角度データα〜γ基づいて、制御弁27への制御指令を生成する。また作業機コントローラ26はポンプコントローラ34へチルトバケットを使用する時の操作指令を行う。
【0087】
ポンプコントローラ34は、作業機2へ作動油を供給する油圧ポンプ41への駆動指令を行う。また、ポンプコントローラ34は、バケット8のチルト角度を操作する為に後述する制御弁27D、27Eへ指令を行う。
【0088】
[ストロークセンサ]
次に、
図10及び
図11を参照して、ストロークセンサ16について説明する。以下の説明においては、ブームシリンダ10に取り付けられたストロークセンサ16について説明する。アームシリンダ11に取付けられたストロークセンサ17なども同様である。
【0089】
ブームシリンダ10には、ストロークセンサ16が取り付けられている。ストロークセンサ16は、ピストンのストロークを計測する。
図10に示すように、ブームシリンダ10は、シリンダチューブ10Xと、シリンダチューブ10X内においてシリンダチューブ10Xに対して相対的に移動可能なシリンダロッド10Yとを有する。シリンダチューブ10Xには、ピストン10Vが摺動自在に設けられている。ピストン10Vには、シリンダロッド10Yが取り付けられている。シリンダロッド10Yは、シリンダヘッド10Wに摺動自在に設けられている。シリンダヘッド10Wとピストン10Vとシリンダ内壁とによって画成された室は、ロッド側油室40Bである。ピストン10Vを介してロッド側油室40Bとは反対側の油室がキャップ側油室40Aである。なお、シリンダヘッド10Wには、シリンダロッド10Yとの隙間を密封し、塵埃等がロッド側油室40Bに入り込まないようにするシール部材が設けられている。
【0090】
シリンダロッド10Yは、ロッド側油室40Bに作動油が供給され、キャップ側油室40Aから作動油が排出されることによって縮退する。また、シリンダロッド10Yは、ロッド側油室40Bから作動油が排出され、キャップ側油室40Aに作動油が供給されることによって伸張する。すなわち、シリンダロッド10Yは、図中左右方向に直動する。
【0091】
ロッド側油室40Bの外部にあって、シリンダヘッド10Wに密接した場所には、ストロークセンサ16を覆い、ストロークセンサ16を内部に収容するケース164が設けられている。ケース164は、シリンダヘッド10Wにボルト等によって締結等されて、シリンダヘッド10Wに固定されている。
【0092】
ストロークセンサ16は、回転ローラ161と、回転中心軸162と、回転センサ部163とを有している。回転ローラ161は、その表面がシリンダロッド10Yの表面に接触し、シリンダロッド10Yの直動に応じて回転自在に設けられている。すなわち、回転ローラ161によってシリンダロッド10Yの直線運動が回転運動に変換される。回転中心軸162は、シリンダロッド10Yの直動方向に対して、直交するように配置されている。
【0093】
回転センサ部163は、回転ローラ161の回転量(回転角度)を電気信号として検出可能に構成されている。回転センサ部163で検出された回転ローラ161の回転量(回転角度)を示す信号は、電気信号線を介して、センサコントローラ32に送られ、この作業機コントローラ26でブームシリンダ10のシリンダロッド10Yの位置(ストローク位置)に変換される。
【0094】
図11に示すように、回転センサ部163は、磁石163aと、ホールIC163bとを有している。検出媒体である磁石163aは、回転ローラ161と一体に回転するように回転ローラ161に取り付けられている。磁石163aは回転中心軸162を中心とした回転ローラ161の回転に応じて回転する。磁石163aは、回転ローラ161の回転角度に応じて、N極、S極が交互に入れ替わるように構成されている。磁石163aは、回転ローラ161の一回転を一周期として、ホールIC163bで検出される磁力(磁束密度)が周期的に変動するように構成されている。
【0095】
ホールIC163bは、磁石163aによって生成される磁力(磁束密度)を電気信号として検出する磁力センサである。ホールIC163bは、回転中心軸162の軸方向に沿って、磁石163aから所定距離、離間された位置に設けられている。
【0096】
ホールIC163bで検出された電気信号は、作業機コントローラ26に送られ、この作業機コントローラ26で、ホールIC163bの電気信号が、回転ローラ161の回転量、つまりブームシリンダ10のシリンダロッド10Yの変位量(ストローク長)に変換される。
【0097】
ここで、
図11を参照して、回転ローラ161の回転角度と、ホールIC163bで検出される電気信号(電圧)との関係を説明する。回転ローラ161が回転し、その回転に応じて磁石163aが回転すると、回転角度に応じて、ホールIC163bを透過する磁力(磁束密度)が周期的に変化し、センサ出力である電気信号(電圧)が周期的に変化する。このホールIC163bから出力される電圧の大きさから回転ローラ161の回転角度を計測することができる。
【0098】
また、ホールIC163bから出力される電気信号(電圧)の1周期が繰り返される数をカウントすることで、回転ローラ161の回転数を計測することができる。そして、回転ローラ161の回転角度と、回転ローラ161の回転数とに基づいて、ブームシリンダ10のシリンダロッド10Yの変位量(ストローク長)が検出される。
【0099】
また、ストロークセンサ16は、回転ローラ161の回転角度と、回転ローラ161の回転数とに基づいて、シリンダロッド10Yの移動速度(シリンダ速度)を検出することができる。
【0100】
[油圧システム]
次に、本実施形態に係る油圧システム300の一例について説明する。制御システム200は、油圧システム300と、作業機コントローラ26とを含む。ブームシリンダ10、アームシリンダ11、バケットシリンダ12、及びチルトシリンダ30のそれぞれは、油圧シリンダである。それら油圧シリンダは、油圧システム300により作動する。
【0101】
図13は、アームシリンダ11を含む油圧システム300の一例を模式的に示す図である。なお、バケットシリンダ12も同様である。油圧システム300は、方向制御弁64を介してアームシリンダ11に作動油を供給する可変容量型のメイン油圧ポンプ41と、パイロット油を供給するパイロット油圧ポンプ42と、方向制御弁64に対するパイロット油のパイロット油圧を調整する操作装置25と、パイロット油が流れる油路43(43A、43B)と、油路43に配置された制御弁27(27A、27B)と、油路43に配置された圧力センサ66(66A、66B)と、制御弁27を制御する作業機コントローラ26とを備えている。油路43は、
図9におけるパイロット油圧ライン450と同じである。
【0102】
方向制御弁64は、作動油が流れる方向を制御する。メイン油圧ポンプ41から供給された作動油は、方向制御弁64を介して、アームシリンダ11に供給される。方向制御弁64は、ロッド状のスプールを動かして作動油が流れる方向を切り替えるスプール方式である。スプールが軸方向に移動することにより、アームシリンダ11のキャップ側油室40A(油路47)に対する作動油の供給と、ロッド側油室40B(油路48)に対する作動油の供給とが切り替わる。また、スプールが軸方向に移動することにより、アームシリンダ11に対する作動油の供給量(単位時間当たりの供給量)が調整される。アームシリンダ11に対する作動油の供給量が調整されることにより、シリンダ速度が調整される。
【0103】
方向制御弁64の駆動は、操作装置25によって調整される。本実施形態において、操作装置25は、パイロット油圧方式の操作装置である。パイロット油圧ポンプ42から送出されたパイロット油が操作装置25に供給される。なお、メイン油圧ポンプ41から送出され、減圧弁によって減圧されたパイロット油が操作装置25に供給されてもよい。操作装置25は、パイロット油圧調整弁を含む。操作装置25の操作量に基づいて、パイロット油圧が調整される。そのパイロット油圧によって、方向制御弁64が駆動される。操作装置25によりパイロット油圧が調整されることによって、軸方向に関するスプールの移動量及び移動速度が調整される。
【0104】
パイロット油が流れる油路43は、1つの方向制御弁64に対して2つ設けられる。2つの油路43A及び油路43Bのうち、一方の油路43Aには、方向制御弁64のスプールの一方の空間(第1受圧室)に供給されるパイロット油が流れる。他方の油路43Bには、方向制御弁64のスプールの他方の空間(第2受圧室)に供給されるパイロット油が流れる。
【0105】
油路43に圧力センサ66が配置される。圧力センサ66は、パイロット油圧を検出する。圧力センサ66は、油路43Aのパイロット油圧を検出する圧力センサ66Aと、油路43Bのパイロット油圧を検出する圧力センサ66Bとを含む。圧力センサ66の検出結果は、作業機コントローラ26に出力される。
【0106】
制御弁27は、電磁比例制御弁であり、作業機コントローラ26からの制御信号に基づいて、パイロット油圧を調整可能である。制御弁27は、油路43Aのパイロット油圧を調整可能な制御弁27Aと、油路43Bのパイロット油圧を調整可能な制御弁27Bとを含む。
【0107】
操作装置25の操作によってパイロット油圧を調整する場合、制御弁27は全開にされる。操作装置25の操作レバーが中立位置より一側に動かされると、その操作レバーの操作量に応じたパイロット油圧が方向制御弁64のスプールの第1受圧室に作用する。操作装置25の操作レバーが中立位置より他側に動かされると、その操作レバーの操作量に応じたパイロット油圧が方向制御弁64のスプールの第2受圧室に作用する。
【0108】
方向制御弁64のスプールは、操作装置25によって調整されたパイロット油圧に応じた距離だけ動く。例えば、第1受圧室にパイロット油圧が作用することにより、アームシリンダ11のキャップ側油室40Aにメイン油圧ポンプ41からの作動油が供給され、アームシリンダ11が伸びる。第2受圧室にパイロット油圧が作用することにより、アームシリンダ11のロッド側油室40Bに、メイン油圧ポンプ41からの作動油が供給され、アームシリンダ11が縮む。方向制御弁64のスプールの移動量に基づいて、メイン油圧ポンプ41から方向制御弁64を介してアームシリンダ11に供給される単位時間当たりの作動油の供給量が調整される。単位時間当たりの作動油の供給量が調整されることによって、シリンダ速度が調整される。
【0109】
作業機コントローラ26は、制御弁27を制御して、パイロット油圧を調整可能である。例えば、制限掘削制御(介入制御)において、作業機コントローラ26は、制御弁27を駆動する。例えば、作業機コントローラ26によって制御弁27Aが駆動されることにより、方向制御弁64のスプールが、制御弁27Aによって調整されたパイロット油圧に応じた距離だけ動く。これにより、アームシリンダ11のキャップ側油室40Aにメイン油圧ポンプ41からの作動油が供給され、アームシリンダ11が伸びる。作業機コントローラ26によって制御弁27Bが駆動されることにより、方向制御弁64のスプールが、制御弁27Bによって調整されたパイロット油圧に応じた距離だけ動く。これにより、アームシリンダ11のロッド側油室40Bに、メイン油圧ポンプ41からの作動油が供給され、アームシリンダ11が縮む。方向制御弁64のスプールの移動量に基づいて、メイン油圧ポンプ41から方向制御弁64を介してアームシリンダ11に供給される単位時間当たりの作動油の供給量が調整される。単位時間当たりの作動油の供給量が調整されることによって、シリンダ速度が調整される。
【0110】
図14は、ブームシリンダ10を含む油圧システム300の一例を模式的に示す図である。操作装置25の操作により、ブーム6は、下げ動作及び上げ動作の2種類の動作を実行する。
図13を参照して説明したように、操作装置25が操作されることにより、操作装置25の操作量に応じたパイロット油圧が方向制御弁64に作用する。方向制御弁64のスプールは、パイロット油圧に応じて移動する。スプールの移動量に基づいて、メイン油圧ポンプ41から方向制御弁64を介してブームシリンダ10に供給される単位時間当たりの作動油の供給量が調整される。
【0111】
また、作業機コントローラ26は、制御弁27Aを駆動して、第2受圧室に作用するパイロット油圧を調整可能である。作業機コントローラ26は、制御弁27Bを駆動して、第1受圧室に作用するパイロット油圧を調整可能である。
図14に示す例では、制御弁27Aを介して方向制御弁64にパイロット油が供給されることによって、ブーム6の下げ動作が実行される。制御弁27Bを介して方向制御弁64にパイロット油が供給されることによって、ブーム6の上げ動作が実行される。
【0112】
本実施形態においては、介入制御のために、作業機コントローラ26から出力された、介入制御に関する制御信号に基づいて作動する制御弁27Cが油路43Cに設けられる。油路43Cに、パイロット油圧ポンプ42から送出されたパイロット油が流れる。油路43Cは、油路43Bとシャトル弁51を介して接続されている。シャトル弁51では接続される各油路に対して、供給圧力の大きい油路からの入力を選択して出力する。
【0113】
油路43Cに、制御弁27Cと、油路43Cのパイロット油圧を検出する圧力センサ66Cとが設けられている。制御弁27Cは、介入制御を実行するために作業機コントローラ26から出力された制御信号に基づいて制御される。
【0114】
介入制御を実行しないとき、操作装置25の操作によって調整されたパイロット油圧に基づいて方向制御弁64が駆動されるように、作業機コントローラ26は、制御弁27Cに対して制御信号を出力しない。例えば、作業機コントローラ26は、操作装置25の操作によって調整されたパイロット油圧に基づいて方向制御弁64が駆動されるように、制御弁27Bを全開にするとともに、制御弁27Cで油路43Cを閉じる。
【0115】
介入制御を実行するとき、作業機コントローラ26は、制御弁27Cによって調整されたパイロット油の圧力に基づいて方向制御弁64が駆動されるように、各制御弁27を制御する。例えば、ブーム6の移動を制限する介入制御を実行する場合、作業機コントローラ26は、制御弁27Cによって調整されたパイロット油圧が、操作装置25によって調整されるパイロット油圧よりも高くなるように、制御弁27Cを制御する。油路43Cより供給されるパイロット圧力が油路43Bより供給されるパイロット圧より大きくなる。これにより、制御弁27Cからのパイロット油がシャトル弁51を介して方向制御弁64に供給される。
【0116】
油路43B及び油路43Cの少なくとも一方を介して方向制御弁64にパイロット油が供給されることにより、作動油が油路47を介してキャップ側油室40Aに供給される。これにより、ブーム6が上げ動作する。
【0117】
バケット8が目標掘削地形に侵入しないように操作装置25によりブーム6が高速で上げ動作される場合、介入制御は実行されない。ブーム6が高速で上げ動作されるように操作装置25が操作され、その操作量に基づいてパイロット油圧が調整されることにより、操作装置25の操作によって調整されるパイロット油圧は、制御弁27Cによって調整されるパイロット油圧よりも高くなる。これにより、操作装置25の操作によって調整されたパイロット油圧のパイロット油がシャトル弁51を介して方向制御弁64に供給される。
【0118】
図15は、チルトシリンダ30を含む油圧システム300の一例を模式的に示す図である。油圧システム300は、チルトシリンダ30に対する作動油の供給量を調整する方向制御弁64と、方向制御弁64に供給されるパイロット油の圧力を調整する制御弁27D及び制御弁27
Eと、操作ペダル25Fと、ポンプコントローラ34とを備えている。ポンプコントローラ34は、メイン油圧ポンプ41の斜板に対して指令信号を出力し、油圧シリンダに対する作動油の供給量を制御する。制御弁27は、操作装置25(第3操作レバー25P)の操作信号に基づいてポンプコントローラ34によって生成された制御信号に基づいて制御される。
【0119】
本実施形態において、第3操作レバー25Pの操作により生成された操作信号は、ポンプコントローラ34に出力される。なお、第3操作レバー25Pの操作により生成された操作信号が作業機コントローラ26に出力されてもよい。制御弁27は、ポンプコントローラ34によって制御されてもよいし、作業機コントローラ26によって制御されてもよい。
【0120】
本実施形態において、操作装置25は、方向制御弁64に対するパイロット圧を調整するための操作ペダル25Fを含む。操作ペダル25Fは、運転室4に配置されており、オペレータによって操作される。操作ペダル25Fは、パイロット油圧ポンプ42に接続される。また、操作ペダル25Fは、制御弁27Dから送出されるパイロット油が流れる油路にシャトル弁51Aを介して接続される。また、操作ペダル25Fは、制御弁27Eから送出されるパイロット油が流れる油路にシャトル弁51Bを介して接続される。
【0121】
操作ペダル25Fが操作されることにより、操作ペダル25Fとシャトル弁51Aとの間の油路の圧力、及び操作ペダル25Fとシャトル弁51Bとの間の油路の圧力が調整される。
【0122】
第3操作レバー25Pが操作されることにより、その第3操作レバー25Pの操作に基づく操作信号(指令信号)がポンプコントローラ34(又は作業機コントローラ26)に出力される。ポンプコントローラ34は、第3操作レバー25Pから出力された操作信号に基づいて、制御弁27D及び制御弁27Eの少なくとも一方に制御信号を出力する。制御信号を取得した制御弁27Dは駆動され、油路を開閉する。制御信号を取得した制御弁27Bは駆動され、油路を開閉する。
【0123】
操作ペダル25F及び第3操作レバー25Pの少なくとも一方の操作により、制御弁27Dによって調整されたパイロット油圧が、操作ペダル25Fによって調整されるパイロット油圧よりも高い場合、シャトル弁51Aで選択され、制御弁27Dによって調整されたパイロット油圧のパイロット油が方向制御弁64に供給される。操作ペダル25Fによって調整されるパイロット油圧が、制御弁27Dによって調整されたパイロット油圧よりも高い場合、操作ペダル25Fによって調整されたパイロット油圧のパイロット油が方向制御弁64に供給される。
【0124】
操作ペダル25F及び第3操作レバー25Pの少なくとも一方の操作により、制御弁27Eによって調整されたパイロット油圧が、操作ペダル25Fによって調整されるパイロット油圧よりも高い場合、シャトル弁51Bで選択され、制御弁27Eによって調整されたパイロット油圧のパイロット油が方向制御弁64に供給される。操作ペダル25Fによって調整されるパイロット油圧が、制御弁27Eによって調整されたパイロット油圧よりも高い場合、操作ペダル25Fによって調整されたパイロット油圧のパイロット油が方向制御弁64に供給される。
【0125】
[制限掘削制御]
図12は、制限掘削制御が行われるときの作業機2の動作の一例を模式的に示す図である。本実施形態においては、バケット軸J3と直交する作業機動作平面MPにおける掘削対象の2次元の目標形状を示す目標掘削地形にバケット8が侵入しないように、制限掘削制御が行われる。
【0126】
バケット8による掘削において、アーム7、バケット8の掘削操作に対してブーム6が上がるように、油圧システム300が作動する。掘削において、バケット8が目標掘削地形に侵入しないように、ブーム6の上げ動作を含む介入制御が実行される。
【0127】
[制御方法]
次に、本実施形態に係る油圧ショベルCMの制御方法の一例について、
図16のフローチャートを参照して説明する。表示コントローラ28は、掘削制御に用いる各種のパラメータを取得する(ステップSP1)。パラメータは、表示コントローラ28の取得部28Cに取得される。
【0128】
図17Aは、本実施形態に係る表示コントローラ28、作業機コントローラ26、及びセンサコントローラ32の一例を示す機能ブロック図である。センサコントローラ32は、演算部28Aと記憶部28Bと取得部28Cとを含む。演算部28Aは、作業機角度演算部281Aと、チルト角度データ演算部282Aと、2次元バケットデータ演算部283Aとを含む。取得部28Cは、作業機データ取得部281Cと、バケット外形データ取得部282Cと、作業機角度取得部284Cと、チルト角度取得部285Cとを含む。
【0129】
図17Bは、本実施形態に係る作業機コントローラ26の作業機制御部26Aの一例を示す機能ブロック図である。
図17Bに示すように、作業機コントローラ26の作業機制御部26Aは、相対位置算出部260Aと、距離算出部260Bと、目標速度算出部260Cと、介入速度算出部260Dと、介入指令算出部260Eを有する。作業機制御部26Aは、掘削対象の目標形状である目標掘削地形を示す目標掘削地形データUとバケット8(刃先8a)の位置を示すバケット位置データとに基づいて、目標掘削地形とバケット8(刃先8a)との距離dに応じてバケット8が目標掘削地形に近づく相対速度が小さくなるように、ブーム6の速度を制限する。作業機コントローラ26内ではローカル座標系において演算が行われる。
【0130】
図17Aに示すように、表示コントローラ283Cは、目標掘削地形取得部283Cと、目標掘削地形演算部284Aとを含む。
【0131】
取得部28Cは、作業機データ取得部(第1取得部)281Cと、バケット外形データ取得部(第4取得部)282Cと、作業機角度データを取得する作業機角度取得部(第3取得部)284Cと、チルト角度データを取得するチルト角度取得部(第5取得部)285Cとを含む。目標掘削地形取得部(第3取得部)283Cは、表示コントローラ28に含まれる。
【0132】
演算部28Aは、作業機角度を算出する作業機角度演算部281Aと、2次元バケットデータを算出する2次元バケットデータ演算部283Aとを含む。目標掘削地形とバケット8との相対位置を算出する相対位置算出部260Aは、作業機コントローラ26(作業機制御部26A)に含まれる。目標掘削地形演算部284Aは、表示コントローラ28に含まれる。
【0133】
作業機コントローラ26は、作業機2を制御するための制御信号を出力する。作業機コントローラ26は、制御信号を出力する作業機制御部26Aを有する。
図9に示したように、本実施形態において、作業機コントローラ26は、バケット8の駆動を禁止する駆動禁止部26Bを有する。駆動禁止部26Bは、チルト軸J4を中心とするバケット8の回転(チルト駆動)を禁止する。なお、駆動禁止部26Bは、バケット軸J3を中心とするバケット8の回転(上下駆動)を禁止してもよい。本実施形態において、駆動禁止部26Bは、バケット8をチルトさせるチルトシリンダ30を操作するために操作装置25から出力された操作信号を無効化することによって、バケット8の駆動(チルト駆動)を停止する。
【0134】
作業機角度演算部281Aは、第1ストロークセンサ16からブームシリンダ長を取得して、ブーム角度αを算出する。作業機角度演算部281Aは、第2ストロークセンサ17からアームシリンダ長を取得して、アーム角度βを算出する。作業機角度演算部281Aは、第3ストロークセンサ18からバケットシリンダ長を取得して、バケット角度γを算出する。作業機角度取得部284Cは、ブーム角度データ、アーム角度データ、及びバケット角度データを含む作業機角度データを取得する(ステップSP1.2)。
【0135】
なお、ブーム角度α、アーム角度β、及びバケット角度γは、ストロークセンサで検出されなくてもよい。ブーム6に取り付けられた傾斜角センサでブーム角度αが検出されてもよい。アーム7に取り付けられた傾斜角センサでアーム角度βが検出されてもよい。バケット8に取り付けられた傾斜角センサでバケット角度γが検出されてもよい。角度検出装置22が傾斜角センサを含む場合、角度検出装置22によって取得された作業機角度データは、センサコントローラ32に出力される。
【0136】
センサコントローラ32の取得部28C(作業機角度取得部284C)は、角度検出装置22の検出結果に基づいて、ブーム角度αを示すブーム角度データ、アーム角度βを示すアーム角度データ、及びバケット角度γを示すアバケット角度データを含む作業機角度データを取得する。また、取得部28C(チルト角度取得部285C)は、チルト角度センサ70の検出結果に基づいて、後述するチルト軸を中心とするバケットの回転角度を示すチルト角度δ’を含むチルト角度データを取得する。また、取得部28C(チルト角度取得部285C)は、角度検出装置22の検出結果に基づいて、チルト軸を中心とするバケットの回転角度を示すチルト軸角度ε’を含むチルト軸角度データを取得する。作業機2の駆動において、角度検出装置22及びチルト角度センサ70は、ブーム角度α、アーム角度β、バケット角度γ、チルト角度δ、及びチルト軸角度εをモニタする。取得部28Cは、作業機2の駆動において、それら角度データをリアルタイムで取得する。
【0137】
チルト角度センサ70は、チルト軸J4を中心とするバケット8のチルト角度δを示すチルト角度データを検出する。チルト角度センサ70によって取得されたチルト角度データは、表示コントローラ28を経由してセンサコントローラ32に出力される。チルト角度取得部285Cは、チルト軸を中心とするバケットの回転角度を示すチルト角度データを取得する(ステップSP1.4)。
【0138】
本実施形態においては、取得部28C(チルト角度取得部285C)にチルト角度センサ70からチルト角度データが出力される。固定部28Dは、固定指令に基づいて、チルト角度センサ70から取得部28Cに出力されたチルト角度データ(モニタデータ)を固定化して、固定データを生成する。
【0139】
バケット8がバケット軸J3を中心に回転することによって、チルトピン80(チルト軸J4)も一緒に、θY方向に回転(傾斜)する。チルト角度取得部285Cは、角度検出装置22の検出結果に基づいて、XY平面に対するチルト軸J4の傾斜角度εを示すチルト軸角度データを取得する。
【0140】
センサコントローラ32の記憶部28Bは、作業機データを記憶する。作業機データは、作業機2の寸法データ及びバケット8の外形データを含む。
【0141】
作業機2の寸法データは、ブーム6の寸法データ、アーム7の寸法データ、及びバケット8の寸法データを含む。作業機2の寸法データは、ブーム長さL1、アーム長さL2、バケット長さL3、及びチルト長さL4を含む。ブーム長さL1、アーム長さL2、バケット長さL3、及びチルト長さL4は、XZ平面内(垂直回動面内)における寸法である。
【0142】
作業機データ取得部281Cは、記憶部28Bから、ブーム6の寸法データ、アーム7の寸法データ、及びバケット8の寸法データを含む作業機2の寸法データを取得する。
【0143】
バケット8の外形データは、バケット8の外面の輪郭データを含む。バケット8の外形データは、バケット8の寸法及び形状を特定するためのデータである。バケット8の外形データは、バケット8の先端部8aの位置を示す先端部位置データを含む。バケット8の外形データは、例えば先端部8aを基準とした、バケット8の外面の複数の位置それぞれの座標データを含む。
【0144】
バケット8の外形データは、バケット8の幅方向に関するバケット8の寸法L5を含む。バケット8がチルトしていない場合、バケット8の幅の寸法L5は、ローカル座標系におけるY軸方向に関するバケット8の寸法である。バケット8がチルトした場合、バケット8の幅の寸法L5とローカル座標系におけるY軸方向に関するバケット8の寸法とは異なる。
【0145】
バケット外形データ取得部282Cは、記憶部28Bから、バケット8の外形データを取得する。
【0146】
なお、本実施形態においては、記憶部28Bにブーム長さL1、アーム長さL2、バケット長さL3、チルト長さL4、及びバケットの幅L5を含む作業機寸法データ、及びバケット8の外形データを含むバケット外形データの両方が記憶されている。
【0147】
作業機角度演算部281Aは、ブーム6、アーム7、バケット8の各シリンダストロークより各作業機の回転角度となる作業機角度データを算出する。
【0148】
チルト角度演算部282Aは、チルト角度δ、チルト軸角度ε、及び傾斜角度θ1、θ2よりチルト軸を中心とするバケットの回転角度を示すチルト角度データであるδ’及びチルト軸角度ε’を取得する。
【0149】
固定部28Dによって固定化されるデータは、チルト角度データ演算部282Aによって算出されたチルト角度データである。
【0150】
2次元バケットデータ演算部283Aは、作業機角度データ、作業機寸法データ、バケット外形データ、後述する動作平面MPのY座標で示される断面のY座標及びチルト軸を中心とするバケットの回転角度を示すチルト角度データに基づいて、作業機動作平面MPにおけるバケット8の外形を示す2次元バケットデータSとバケット8の刃先8aの刃先位置Paを生成する。
【0151】
目標掘削地形取得部283Cは、掘削対象の3次元の目標形状である立体設計地形を示す目標施工情報Tおよび位置検出装置20から車両本体位置データP及び車両本体姿勢データQを取得する。目標掘削地形演算部284Aは、目標掘削地形取得部283Cで取得したデータと、2次元バケットデータ演算部283Aより取得した傾斜角度θ1、θ2と、バケット8の外形を示す2次元バケットデータS及びバケット8の刃先8aよりバケット軸J3と直交する作業機動作平面MPにおける掘削対象の2次元の目標形状である目標掘削地形を示す目標掘削地形データUを生成する。
【0152】
相対位置算出部260Aはセンサコントローラ32より入力される各作業機の回転角度データα〜γと、2次元バケットデータSと、表示コントローラ28より入力される目標掘削地形データUに基づき、後述するバケット8の輪郭点Ni上で目標掘削地形に対して最短の距離となる様なバケット8上の相対位置を算出し、距離算出部260Bへ出力する。距離算出部260Bは、目標掘削地形とバケット8の相対位置とに基づいて、目標掘削地形とバケット8との最短距離dを算出する。
【0153】
目標速度算出部260Cは、後述する各作業機レバーのレバー操作に基づくパイロット圧力センサ66A、66Bの圧力を入力する。目標速度算出部260Cは、圧力センサ66A、66Bより記憶部27Cに記憶する圧力に対する各作業機の目標速度の関係を規定するテーブルを用い各作業機の目標速度Vc_bm、Vc_am、Vc_bkを導出し、介入速度算出部260Dへ出力する。
【0154】
介入速度算出部260Dは、各作業機の目標速度と、目標掘削地形データU及びバケット8の距離dとに基づき目標掘削地形とバケット8の相対位置との距離dに応じた制限速度を算出する。制限速度はブーム作業機に介入する速度として、介入指令算出部260Eへ出力する。
【0155】
介入指令算出部260Eは、制限速度に対応するブームシリンダ10へ伸長する為の介入指令として決定する。介入指令算出部260Eは、介入指令により制御弁27Cへパイロット油圧が発生する様に制御弁27Cを開く様出力する。作業機コントローラ28からの指令により作業機2が目標掘削地形に接近する方向の速度が制限速度になるように、ブーム6が駆動される。これにより、刃先8aに対する掘削制限制御が実行され、目標掘削地形に対するバケット8の速度が調整される。
【0156】
また、表示コントローラ28は、目標掘削地形データUに基づいて表示部29に目標掘削地形を表示させる。また、表示コントローラ28は、目標掘削地形データU及び2次元バケットデータSを表示部29に表示させる。表示部29は、例えばモニタであり、油圧ショベルCMの各種の情報を表示する。本実施形態において、表示部29は、情報化施工用のガイダンスモニタとしてのHMI(Human Machine Interface)モニタを含む。
【0157】
表示コントローラ28は、位置検出装置20による検出結果に基づいて、グローバル座標系で見たときのローカル座標の位置を算出可能である。ローカル座標系とは、油圧ショベル100を基準とする3次元座標系である。本実施形態において、ローカル座標系の基準位置P0は、例えば、旋回体3の旋回中心AXに位置する基準位置P0である。例えば作業機コントローラ26に出力される目標掘削地形データはローカル座標に変換されるが、それ以外の表示コントローラ28中の演算はグローバル座標系で行われる。センサコントローラ32からの入力も表示コントローラ28内でグローバル座標系に変換される。
【0158】
作業機2の駆動において、角度検出装置22により、ブーム角度α、アーム角度β、及びバケット角度γが検出される。チルト角度センサ70により、チルト角度δが検出される。また、角度検出装置22により、チルト軸角度εが検出される。
【0159】
また、取得部28Cは、記憶部28Bに記憶されている作業機データから、ブーム長さL1、アーム長さL2、バケット長さL3、チルト長さL4、及びバケット8の幅の寸法L5を含む作業機2の寸法データを取得する。なお、作業機2の寸法データを含む作業機データが、入力部36を介して取得部28C(作業機データ取得部281C)に供給されてもよい。
【0160】
また、取得部28C(バケット外形データ取得部282C)は、バケット8の外形データを取得する。バケット8の外形データは、記憶部28Bに記憶されていてもよいし、入力部36を介して取得部28C(バケット外形データ取得部282C)に取得されてもよい。
【0161】
また、取得部28Cは、位置検出装置20の位置検出結果に基づいて、車両本体位置データP及び車両本体姿勢データQを取得する。取得部28Cは、油圧ショベルCMの駆動において、それらデータをリアルタイムで取得する。
【0162】
また、取得部28C(目標掘削地形取得部283C)は、作業エリアの掘削対象の3次元の目標形状である立体の設計地形を示す目標施工情報(3次元設計地形データ)Tを取得する。目標施工情報Tは、掘削対象の2次元の目標形状である目標掘削地形を示す目標掘削地形データ(2次元設計地形データ)Uを含む。本実施形態においては、表示コントローラ28の記憶部28Bに目標施工情報Tが格納されている。目標施工情報Tは、目標掘削地形データUを生成するために必要とされる座標データ及び角度データを含む。目標施工情報Tは、例えば無線通信装置を介して表示コントローラ28に供給されても外部メモリ等により表示コントローラ28に供給されてもよい。
【0163】
なお、上述のように、本実施形態において、チルト角度センサ70は、グローバル座標系におけるチルト角度を検出する。表示コントローラ28において、車両本体姿勢データQに基づいて、グローバル座標系におけるチルト角度がローカル座標系におけるチルト角度δに変換される。なお、チルト角度δは、IMUの姿勢情報とチルトシリンダ30の収縮情報を各作業機と同様の手法で求め傾斜角度を算出する方法で求めてもよい。
【0164】
次に、本実施形態においては、バケット軸J3と直交する作業機動作平面MPにおける掘削対象の2次元の目標形状である目標掘削地形を示す目標掘削地形データUが指定される(ステップSP2)。目標掘削地形データUの指定は、XZ平面と平行な目標施工情報Tの断面を指定することを含む。目標掘削地形データUの指定は、Y軸方向に関してどの位置(Y座標)の断面で目標施工情報Tを切断するかを指定することを含む。そのY座標を有するXZ平面と平行な断面における目標施工情報Tが、指定された目標掘削地形データUとなる。
【0165】
図18に示すように、目標施工情報Tは、複数の三角形ポリゴンによって表される。目標施工情報Tにおいて、バケット軸J3と直交する作業機動作平面MPが指定される。作業機動作平面MPは、旋回体3の前後方向で規定される作業機2の動作平面(垂直回動面)である。本実施形態において、作業機動作平面MPは、アーム6の動作平面である。作業機動作平面MPは、XZ平面と平行である。
【0166】
バケット8の刃先8aの位置(作業機動作平面MPのY座標)は、オペレータによって指定されてもよい。例えば、オペレータが入力部36に指定したY座標に関するデータを入力してもよい。その指定されたY座標が取得部28Cに取得される。取得部28Cは、そのY座標を有する作業機動作平面MPにおける目標施工情報Tの断面を求める。これにより、目標掘削地形演算部283Cは、指定されたY座標の目標掘削地形データUを取得する。
【0167】
なお、目標施工情報の表面のうち、バケット8との距離が最も近い点のY座標が、作業機動作平面MPのY座標として指定されてもよい。
【0168】
例えば、表示コントローラ28は、目標施工情報Tと、指定された作業機動作平面MPとに基づいて、
図18に示すように、作業機動作平面MPと目標施工情報との交線Eを目標掘削地形の候補線として取得する。
【0169】
表示コントローラ28は、目標掘削地形の候補線において刃先8aの直下点を目標掘削地形の基準点APとする。表示コントローラ28は、目標掘削地形の基準点APの前後の単数又は複数の変曲点とその前後の線を掘削対象となる目標掘削地形として決定する。表示コントローラ28は、作業機動作平面MPにおける目標掘削地形データUを生成する。
【0170】
次に、センサコントローラ32の演算部28A(2次元バケットデータ演算部283A)は、ステップSP1で取得した各パラメータ(データ)に基づいて、作業機動作平面MPにおけるバケット8の外形を示す2次元バケットデータSを求める(ステップSP3)。
【0171】
図19は、チルトした状態のバケット8の一例を模式的に示す後方視図である。
図20は、
図19のA−A線断面で切り出した側方視図である。
図21は、
図19のB−B線断面で切り出した側方視図である。
図22は、
図19のC−C線断面で切り出した側方視図である。
【0172】
本実施形態において、バケット8はチルトするため、そのチルト角度δに応じて、XZ平面内におけるバケット8の外形(輪郭)は変化する。また、
図20、
図21、及び
図22に示すように、XZ平面と平行な断面のY座標が異なる場合、各断面におけるバケット8の外形(輪郭)は異なる。また、バケット8がチルトすることによって、目標掘削地形とバケット8との距離が変化する。
【0173】
チルト機構を有しないバケット(所謂、標準バケット)においては、XZ平面と平行な断面において、その断面のY座標が変化しても、各断面におけるバケット8の外形(輪郭)は実質的に等しい。しかし、チルト式バケットの場合、バケット8のチルト(チルト角度δ)に応じて、XZ平面と平行な断面におけるバケット8の外形は、Y座標に応じて変化する。そのため、バケット8のチルトにより、目標掘削地形とバケット8との距離及びバケット8の外形が変化し、バケット8の少なくとも一部が目標掘削地形に侵入してしまう可能性がある。したがって、制限掘削制御をするためのバケット8の形状(XZ平面内における断面形状)を特定しないと、制限掘削制御を精度良く行うことができなくなる可能性がある。
【0174】
本実施形態において、センサコントローラ32(2次元バケット演算部283A)は、制御対象となる作業機動作平面MPに沿ったバケット8の断面の外形を示す2次元バケットデータSを求める。作業機コントローラ26の作業機制御部26Aは、その2次元バケットデータSと、作業機動作平面MPに沿った2次元設計地形データUとに基づいて、目標掘削地形とバケット8との距離dを導出し(ステップSP4)、作業機2の制限掘削制御を行う(ステップSP5)。また、後述するように、センサコントローラ32は、表示部29に目標掘削地形などを表示させる(ステップSP6)。これにより、作業機動作平面MPを基準として制御対象が特定され、制限掘削制御が精度良く行われる。
【0175】
以下、2次元バケットデータSの導出方法の一例について説明する。
図23は、本実施形態に係る作業機2を模式的に示す図である。ローカル座標系の原点は、旋回体3の旋回中心に位置する基準位置P0である。ローカル座標系におけるバケット8の先端部8aの位置はPaである。
【0176】
作業機2は、ブーム軸J1を回転中心とする第1関節、アーム軸J2を回転中心とする第2関節、バケット軸J3を回転中心とする第3関節、及びチルト軸J4を回転中心とする第4関節を有する。また、上述のように、バケット軸J3を中心とするバケット8の回転によりチルト軸J4がθY方向に傾斜する。各関節の動作は、以下の(1)式から(6)式で表すことができる。(1)式は、原点(基準位置)P0とブームフートとの座標変換を行うための式である。(2)式は、ブームフートとブームトップとの座標変換を行うための式である。(3)式は、ブームトップとアームトップとの座標変換を行うための式である。(4)式は、アームトップとチルト軸J4の一端部との座標変換を行うための式である。(5)式は、チルト軸J4の一端部と他端部との座標変換を行うための式である。(6)式は、チルト軸J4の他端部とバケット8との座標変換を行うための式である。
【0183】
(1)式から(6)式において、xboom-foot、yboom-foot、zboom-footはローカル座標系におけるブームフートの座標である。Lboomはブーム長さL1に相当する。Larmはアーム長さL2に相当する。Lbucket_correctedは
図2に示す補正バケット長さである。Ltiltはチルト長さL4に相当する。θboomはブーム角度αに相当する。θarmはアーム角度βに相当する。θbucketはバケット角度γに相当する。θtilt_xはチルト角度δに相当する。θtilt_yは
図2に示す角度である。
【0184】
したがって、ローカル座標系における原点に対するアームトップの座標(xarm-top、yarm-top、zarm-top)は、以下の(7)式から導出される。
【0186】
バケット8の外形データは、バケット8の刃先8a、及びバケット8の外面の複数の位置(点)の座標データを含む。本実施形態においては、
図24に示すように、バケット8の外形データは、バケット8の幅方向に関して一端部におけるバケット8の外面の第1輪郭データと、他端部におけるバケット8の外面の第2輪郭データとを含む。第1輪郭データは、バケット8の一端部における6つの輪郭点Jの座標を含む。第2輪郭データは、バケット8の他端部における6つの輪郭点Kの座標を含む。輪郭点Jの座標及び輪郭点Kの座標は、先端部8aの座標(位置Pa)と基準とした座標データである。バケット8の外形データにより、先端部8aの座標と輪郭点Jの座標と輪郭点Kの座標との位置関係は既知である。したがって、ローカル座標系における原点と先端部8aの座標との位置関係を求めることによって、ローカル座標系の原点に対する各輪郭点J及び各輪郭点Kの座標を求めることができる。
【0187】
バケット8の外形データ(輪郭の座標)を(xbucket-outline、ybucket-outline、zbucket-outline)としたとき、原点に対するバケット8の輪郭点の座標は、以下の(8)式から導出される。
【0189】
本実施形態においては、輪郭点J及び輪郭点Kは全部で12である。バケット8の外形データにおける各輪郭点J及び各輪郭点Kの座標を(x1、y1、z1)、(x2、y2、z2)、…、(x12、y12、z12)としたとき、原点に対するバケット8の各輪郭点J及び各輪郭点Kの座標(x1’、y1’、z1’)、(x2’、y2’、z2’)、…、(x12’、y12’、z12’)は、以下の(9)式から導出される。
【0191】
作業機角度データ、作業機寸法データ、バケット8の外形データ、及びチルト角度データに基づいて、複数の輪郭点J及び輪郭点Kの座標を求めた後、演算部28Aは、作業機動作平面MPにおけるバケット8の外形を示す2次元バケットデータSを求める。
【0192】
図25は、輪郭点J及び輪郭点Kと作業機動作平面MPとの関係を模式的に示す図である。上述のように、ローカル座標系における複数の輪郭点Ji(i=1、2、3、4、5、6)及び複数の輪郭点Ki(i=1、2、3、4、5、6)それぞれの座標が求められることにより、輪郭点Liと輪郭点Kiとを結ぶ線分Hi(i=1、2、3,4、5、6)が求められる。また、バケット軸J3と平行な方向に関する作業機動作平面MPの位置(Y座標)はステップSP2において指定されている。したがって、演算部28A(2次元バケットデータ演算部283A)は、作業機動作平面MPと線分Hiとの交点Ni(i=1、2、3、4、5、6)に基づいて、作業機動作平面MPにおけるバケット8の外形を示す2次元バケットデータSを求めることができる。このように、本実施形態において、演算部28Aは、ローカル座標系における複数の輪郭点Jiの座標データを含む第1輪郭点データと、ローカル座標系における複数の輪郭点Kiの座標データを含む第2輪郭点データと、バケット軸J3と平行なY軸方向に関する作業機動作平面MPの位置とに基づいて、複数の輪郭点(交点)Niを含む2次元バケットデータSを求めることができる。
【0193】
なお、上述したローカル座標系における輪郭点Ji及び輪郭点Kiの座標を導出する方法は一例である。ブーム角度α、アーム角度β、及びバケット角度γを含む作業機角度データと、ブーム長さL1、アーム長さL2、バケット長さL3、及びチルト長さL4を含む作業機寸法データと、バケット8の幅の寸法L5、輪郭点Ji、及び輪郭点Kiの座標データを含むバケット8の外形データと、チルト角度δを示すチルト角度データとに基づいて、作業機2が駆動されたときの、ローカル座標系における輪郭点Ji及び輪郭点Kiの座標を求め、2次元バケットデータSを求めることができる。チルト軸角度εの変化に伴う輪郭点J、Kの座標の変化は、バケット角度γ及びチルト長さL4に基づいて一義的に求めることができる。
【0194】
例えば、チルト機構が無いバケット8のローカル座標系における刃先8aの座標は、作業機2の寸法(ブーム6の寸法、アーム7の寸法、及びバケット8の寸法)と作業機角度(回転角度α、回転角度β、及び回転角度γ)とから導出することができる。バケット8の刃先8の座標又はアームトップの座標が求められた後、その座標を基準として、チルト長さL4、幅の寸法L5、チルト角度δ、及びバケット8の外形データに基づいて、輪郭点Ji、輪郭点Ki、及び2次元バケットデータSが求められてもよい。
【0195】
2次元バケットデータSは、ローカル座標系におけるバケット8の現在位置を示す。すなわち、2次元バケットデータSは、作業機動作平面MPにおけるバケット8の現在位置を示すバケット位置データを含む。2次元バケットデータSは、表示コントローラ28から作業機コントローラ26に出力される。作業機コントローラ26の作業機制御部26Aは、2次元バケットデータSに基づいて、作業機2を制御する(ステップSP5)。
【0196】
作業機コントローラ26は、表示コントローラ28から2次元バケットデータS及び目標掘削地形データUを取得する。作業機コントローラ26の作業機制御部26Aは、目標掘削地形データUと、バケット位置データを含む2次元バケットデータSとに基づいて、作業機動作平面MPにおける目標掘削地形とバケット8との距離dに応じて、バケット8が目標掘削地形に近づく速度が小さくなるように、ブーム6の速度を制限する。作業機制御部26Aは、目標掘削地形データUとバケット位置データを含む2次元バケットデータとに基づいて、目標掘削地形とバケット8との距離に応じて制限速度を決定し、作業機2が目標掘削地形に接近する方向の速度が制限速度以下になるように作業機2の速度を制御する。
【0197】
以下、
図26のフローチャート、及び
図27から
図34の模式図を参照して、本実施形態に係る制限掘削制御の一例について説明する。
図26は、本実施形態に係る制限掘削制御の一例を示すフローチャートである。
【0198】
上述のように、目標掘削地形が設定される(ステップSA1)。目標掘削地形が設定された後、作業機コントローラ26は、作業機2の目標速度Vcを決定する(ステップSA2)。作業機2の目標速度Vcは、ブーム目標速度Vc_bm、アーム目標速度Vc_am、及びバケット目標速度Vc_bktを含む。ブーム目標速度Vc_bmは、ブームシリンダ10のみが駆動されるときの刃先8aの速度である。アーム目標速度Vc_amは、アームシリンダ11のみが駆動されるときの刃先8aの速度である。バケット目標速度Vc_bktは、バケットシリンダ12のみが駆動されるときの刃先8aの速度である。ブーム目標速度Vc_bmは、ブーム操作量に基づいて算出される。アーム目標速度Vc_amは、アーム操作量に基づいて算出される。バケット目標速度Vc_bktは、バケット操作量に基づいて算出される。
【0199】
作業機コントローラ26の記憶部に、ブーム操作量に対応する圧力センサ66A又は66Bから取得されるパイロット油圧とブーム目標速度Vc_bmとの関係を規定する目標速度情報が記憶されている。作業機コントローラ26は、目標速度情報に基づいて、ブーム操作量に対応するブーム目標速度Vc_bmを決定する。目標速度情報は、例えば、ブーム操作量に対するブーム目標速度Vc_bmの大きさが記述されたグラフである。目標速度情報は、テーブル又は数式等の形態でもよい。目標速度情報は、アーム操作量に対応する圧力センサ66A又は66Bから取得されるパイロット油圧とアーム目標速度Vc_amとの関係を規定する情報を含む。目標速度情報は、バケット操作量に対応する圧力センサ66A又は66Bから取得されるパイロット油圧とバケット目標速度Vc_bktとの関係を規定する情報を含む。作業機コントローラ26は、目標速度情報に基づいて、アーム操作量に対応するアーム目標速度Vc_amを決定する。作業機コントローラ26は、目標速度情報に基づいて、バケット操作量に対応するバケット目標速度Vc_bktを決定する。
【0200】
図27に示すように、作業機コントローラ26は、ブーム目標速度Vc_bmを、目標掘削地形の表面に垂直な方向の速度成分(垂直速度成分)Vcy_bmと、目標掘削地形の表面に平行な方向の速度成分(水平速度成分と)Vcx_bmとに変換する(ステップSA3)。
【0201】
作業機コントローラ26は、基準位置データP及び目標掘削地形などから、グローバル座標系の垂直軸に対するローカル座標系の垂直軸(旋回体3の旋回軸AX)の傾きと、グローバル座標系の垂直軸に対する目標掘削地形の表面の垂直方向における傾きとを求める。作業機コントローラ26は、これらの傾きからローカル座標系の垂直軸と目標掘削地形の表面の垂直方向との傾きを表す角度β1を求める。
【0202】
図28に示すように、作業機コントローラ26は、ローカル座標系の垂直軸とブーム目標速度Vc_bmの方向とのなす角度β2とから、三角関数により、ブーム目標速度Vc_bmを、ローカル座標系の垂直軸方向の速度成分VL1_bmと、水平軸方向の速度成分VL2_bmとに変換する。
【0203】
図29に示すように、作業機コントローラ26は、ローカル座標系の垂直軸と目標掘削地形の表面の垂直方向との傾きβ1から、三角関数により、ローカル座標系の垂直軸方向における速度成分VL1_bmと、水平軸方向における速度成分VL2_bmとを、目標掘削地形に対する垂直速度成分Vcy_bm及び水平速度成分Vcx_bmに変換する。同様に、作業機コントローラ26は、アーム目標速度Vc_amを、ローカル座標系の垂直軸方向における垂直速度成分Vcy_am及び水平速度成分Vcx_amに変換する。作業機コントローラ26は、バケット目標速度Vc_bktを、ローカル座標系の垂直軸方向における垂直速度成分Vcy_bkt及び水平速度成分Vcx_bktに変換する。
【0204】
図30に示すように、作業機コントローラ26は、バケット8の刃先8aと目標掘削地形との間の距離dを取得する(ステップSA4)。作業機コントローラ26は、刃先8aの位置情報及び目標掘削地形などから、バケット8の刃先8aと目標掘削地形の表面との間の最短となる距離dを算出する。本実施形態においては、バケット8の刃先8aと目標掘削地形の表面との間の最短となる距離dに基づいて、制限掘削制御が実行される。
【0205】
作業機コントローラ26は、バケット8の刃先8aと目標掘削地形の表面との間の距離dに基づいて、作業機2全体の制限速度Vcy_lmtを算出する(ステップSA5)。作業機2全体の制限速度Vcy_lmtは、バケット8の刃先8aが目標掘削地形に接近する方向において許容できる刃先8aの移動速度である。作業機コントローラ26のメモリには、距離dと制限速度Vcy_lmtとの関係を規定する制限速度情報が記憶されている。
【0206】
図31は、本実施形態に係る制限速度情報の一例を示す。本実施形態において、刃先8aが目標掘削地形の表面の外方、すなわち油圧ショベル100の作業機2側に位置しているときの距離dは正の値であり、刃先8aが目標掘削地形の表面の内方、すなわち目標掘削地形よりも掘削対象の内部側に位置しているときの距離dは負の値である。
図30に示したように、刃先8aが目標掘削地形の表面の上方に位置しているときの距離dは正の値である。刃先8aが目標掘削地形の表面の下方に位置しているときの距離dは負の値である。また、刃先8aが目標掘削地形に対して侵食しない位置にあるときの距離dは正の値である。刃先8aが目標掘削地形に対して侵食する位置にあるときの距離dは負の値である。刃先8aが目標掘削地形上に位置しているとき、すなわち刃先8aが目標掘削地形と接しているときの距離dは0である。
【0207】
本実施形態において、刃先8aが目標掘削地形の内方から外方に向かうときの速度を正の値とし、刃先8aが目標掘削地形の外方から内方に向かうときの速度を負の値とする。すなわち、刃先8aが目標掘削地形の上方に向かうときの速度を正の値とし、刃先8aが目標掘削地形の下方に向かうときの速度を負の値とする。
【0208】
制限速度情報において、距離dがd1とd2との間であるときの制限速度Vcy_lmtの傾きは、距離dがd1以上又はd2以下のときの傾きより小さい。d1は0より大きい。d2は0より小さい。目標掘削地形の表面付近の操作においては制限速度をより詳細に設定するために、距離dがd1とd2との間であるときの傾きを、距離dがd1以上又はd2以下であるときの傾きよりも小さくする。距離dがd1以上のとき、制限速度Vcy_lmtは負の値であり、距離dが大きくなるほど制限速度Vcy_lmtは小さくなる。つまり、距離dがd1以上のとき、目標掘削地形より上方において刃先8aが目標掘削地形の表面から遠いほど、目標掘削地形の下方へ向かう速度が大きくなり、制限速度Vcy_lmtの絶対値は大きくなる。距離dが0以下のとき、制限速度Vcy_lmtは正の値であり、距離dが小さくなるほど制限速度Vcy_lmtは大きくなる。つまり、バケット8の刃先8aが目標掘削地形より遠ざかる距離dが0以下のとき、目標掘削地形より下方において刃先8aが目標掘削地形から遠いほど、目標掘削地形の上方へ向かう速度が大きくなり、制限速度Vcy_lmtの絶対値は大きくなる。
【0209】
距離dが所定値dth1以上では、制限速度Vcy_lmtは、Vminとなる。所定値dth1は正の値であり、d1より大きい。Vminは、目標速度の最小値よりも小さい。つまり、距離dが所定値dth1以上では、作業機2の動作の制限が行われない。したがって、刃先8aが目標掘削地形の上方において目標掘削地形から大きく離れているときには、作業機2の動作の制限、すなわち制限掘削制御が行われない。距離dが所定値dth1より小さいときに、作業機2の動作の制限が行われる。距離dが所定値dth1より小さいときに、ブーム6の動作の制限が行われる。
【0210】
作業機コントローラ26は、作業機2全体の制限速度Vcy_lmtとアーム目標速度Vc_amとバケット目標速度Vc_bktとからブーム6の制限速度の垂直速度成分(制限垂直速度成分)Vcy_bm_lmtを算出する(ステップSA6)。
【0211】
図32に示すように、作業機コントローラ26は、作業機2全体の制限速度Vcy_lmtから、アーム目標速度の垂直速度成分Vcy_amと、バケット目標速度の垂直速度成分Vcy_bktとを減算することにより、ブーム6の制限垂直速度成分Vcy_bm_lmtを算出する。
【0212】
図33に示すように、作業機コントローラ26は、ブーム6の制限垂直速度成分Vcy_bm_lmtを、ブーム6の制限速度(ブーム制限速度)Vc_bm_lmtに変換する(ステップSA7)。作業機コントローラ26は、ブーム6の回転角度α、アーム7の回転角度β、バケット8の回転角度、車両本体位置データP、及び目標掘削地形などから、目標掘削地形の表面に垂直な方向とブーム制限速度Vc_bm_lmtの方向との間の関係を求め、ブーム6の制限垂直速度成分Vcy_bm_lmtを、ブーム制限速度Vc_bm_lmtに変換する。この場合の演算は、前述したブーム目標速度Vc_bmから目標掘削地形の表面に垂直な方向の垂直速度成分Vcy_bmを求めた演算と逆の手順により行われる。その後、ブーム介入量に対応するシリンダ速度が決定され、シリンダ速度に対応した開放指令が制御弁27Cに出力される。
【0213】
レバー操作に基づくパイロット圧が油路43Bに充填され、ブーム介入に基づくパイロット圧が油路43Cに充填される。その圧力の大きい方をシャトル弁51が選択する(ステップSA8)。
【0214】
例えば、ブーム6を下降させる場合、ブーム6の下方へのブーム制限速度Vc_bm_lmtの大きさが、下方へのブーム目標速度Vc_bmの大きさよりも小さいときには、制限条件が満たされている。また、ブーム6を上昇させる場合、ブーム6の上方へのブーム制限速度Vc_bm_lmtの大きさが、上方へのブーム目標速度Vc_bmの大きさよりも大きいときには、制限条件が満たされている。
【0215】
作業機コントローラ26は、作業機2を制御する。ブーム6を制御する場合、作業機コントローラ26は、ブーム指令信号を制御弁27Cに送信することによって、ブームシリンダ10を制御する。ブーム指令信号は、ブーム指令速度に応じた電流値を有する。必要に応じて、作業機コントローラ26は、アーム7及びバケット8を制御する。作業機コントローラ26は、アーム指令信号を制御弁27に送信することによって、アームシリンダ11を制御する。アーム指令信号は、アーム指令速度に応じた電流値を有する。作業機コントローラ26は、バケット指令信号を制御弁27に送信することによって、バケットシリンダ12を制御する。バケット指令信号は、バケット指令速度に応じた電流値を有する。
【0216】
制限条件が満たされていない場合、シャトル弁51では油路43Bからの作動油の供給が選択され、通常運転が行われる(ステップSA9)。作業機コントローラ26は、ブーム操作量とアーム操作量とバケット操作量とに応じて、ブームシリンダ10とアームシリンダ11とバケットシリンダ12とを作動させる。ブームシリンダ10は、ブーム目標速度Vc_bmで作動する。アームシリンダ11は、アーム目標速度Vc_amで作動する。バケットシリンダ12はバケット目標速度Vc_bktで作動する。
【0217】
制限条件が満たされている場合、シャトル弁51では油路43Cからの作動油の供給が選択され、制限掘削制御が実行される(ステップSA10)。
【0218】
作業機2全体の制限速度Vcy_lmtから、アーム目標速度の垂直速度成分Vcy_amとバケット目標速度の垂直速度成分Vcy_bktとを減算することにより、ブーム6の制限垂直速度成分Vcy_bm_lmtが算出される。したがって、作業機2全体の制限速度Vcy_lmtが、アーム目標速度の垂直速度成分Vcy_amとバケット目標速度の垂直速度成分Vcy_bktとの和よりも小さいときには、ブーム6の制限垂直速度成分Vcy_bm_lmtは、ブームが上昇する負の値となる。
【0219】
したがって、ブーム制限速度Vc_bm_lmtは、負の値となる。この場合、作業機コントローラ27は、ブーム6を下降させるが、ブーム目標速度Vc_bmよりも減速させる。このため、オペレータの違和感を小さく抑えながらバケット8が目標掘削地形を侵食すること防止することができる。
【0220】
作業機2全体の制限速度Vcy_lmtが、アーム目標速度の垂直速度成分Vcy_amとバケット目標速度の垂直速度成分Vcy_bktとの和よりも大きいときには、ブーム6の制限垂直速度成分Vcy_bm_lmtは、正の値となる。したがって、ブーム制限速度Vc_bm_lmtは、正の値となる。この場合、操作装置25がブーム6を下降させる方向に操作されていても、作業機コントローラ26は、ブーム6を上昇させる。このため、目標掘削地形の侵食の拡大を迅速に抑えることができる。
【0221】
刃先8aが目標掘削地形より上方に位置しているときには、刃先8aが目標掘削地形に近づくほど、ブーム6の制限垂直速度成分Vcy_bm_lmtの絶対値が小さくなるとともに、目標掘削地形の表面に平行な方向へのブーム6の制限速度の速度成分(制限水平速度成分)Vcx_bm_lmtの絶対値も小さくなる。したがって、刃先8aが目標掘削地形より上方に位置しているときには、刃先8aが目標掘削地形に近づくほど、ブーム6の目標掘削地形の表面に垂直な方向への速度と、ブーム6の目標掘削地形の表面に平行な方向への速度とがともに減速される。油圧ショベル100のオペレータによって左操作レバー25L及び右操作レバー25Rが同時に操作されることにより、ブーム6とアーム7とバケット8とが同時に動作する。このとき、ブーム6とアーム7とバケット8との各目標速度Vc_bm、Vc_am、Vc_bktが入力されたとして、前述した制御を説明すると次の通りである。
【0222】
図34は、目標掘削地形とバケット8の刃先8aとの間の距離dが所定値dth1より小さく、バケット8の刃先8aが位置Pn1から位置Pn2に移動する場合のブーム6の制限速度の変化の一例を示している。位置Pn2での刃先8aと目標掘削地形との間の距離は、位置Pn1での刃先8aと目標掘削地形との間の距離よりも小さい。このため、位置Pn2でのブーム6の制限垂直速度成分Vcy_bm_lmt2は、位置Pn1でのブーム6の制限垂直速度成分Vcy_bm_lmt1よりも小さい。したがって、位置Pn2でのブーム制限速度Vc_bm_lmt2は、位置Pn1でのブーム制限速度Vc_bm_lmt1よりも小さくなる。また、位置Pn2でのブーム6の制限水平速度成分Vcx_bm_lmt2は、位置Pn1でのブーム6の制限水平速度成分Vcx_bm_lmt1よりも小さくなる。ただし、このとき、アーム目標速度Vc_am及びバケット目標速度Vc_bktに対しては、制限は行われない。このため、アーム目標速度の垂直速度成分Vcy_am及び水平速度成分Vcx_amと、バケット目標速度の垂直速度成分Vcy_bkt及び水平速度成分Vcx_bktに対しては、制限は行われない。
【0223】
前述したように、アーム7に対して制限を行わないことにより、オペレータの掘削意思に対応するアーム操作量の変化は、バケット8の刃先8aの速度変化として反映される。このため、本実施形態は、目標掘削地形の侵食の拡大を抑制しながらオペレータの掘削時の操作における違和感を抑えることができる。
【0224】
このように、本実施形態においては、作業機コントローラ26は、掘削対象の目標形状である設計地形を示す目標掘削地形とバケット8の刃先8aの位置を示す刃先位置データSとに基づいて、目標掘削地形とバケット8の刃先8aとの距離dに応じてバケット8が目標掘削地形に近づく相対速度が小さくなるように、ブーム6の速度を制限する。作業機コントローラ26は、掘削対象の目標形状である設計地形を示す目標掘削地形とバケット8の刃先8aの位置を示す刃先位置データSとに基づいて、目標掘削地形とバケット8の刃先8aとの距離dに応じて制限速度を決定し、作業機2が目標掘削地形に接近する方向の速度が制限速度以下になるように、作業機2を制御する。これにより、刃先8aに対する掘削制限制御が実行され、目標掘削地形に対する刃先8aの位置が自動調整される。
【0225】
制限掘削制御(介入制御)においては、目標掘削地形に対する刃先8aの侵入が抑制されるように、ブームシリンダ10に接続された制御弁27に制御信号が出力され、ブーム6の位置が制御される。介入制御は、相対速度Waが制限速度Vよりも大きいときに実行される。介入制御は、相対速度Waが制限速度Vよりも小さいときに実行されない。相対速度Waが制限速度Vよりも小さいことは、バケット8と目標掘削地形とが離れるように目標掘削地形に対してバケット8が移動することを含む。
【0226】
なお、本実施形態において、2次元バケットデータSが目標掘削地形とバケット8との相対位置を導出するために用いられ、ローカル座標系から極座標系に座標変換された2次元バケットデータSが作業機2の制御に使用されてもよい。例えば、
図35に示すように、アームトップ(バケット軸J3)が極座標系の原点となり、作業機動作平面MPにおけるバケット8の複数の輪郭点A、B、C、D、Eが、原点からの距離と、基準線に対する角度θA、θB、θC、θD、θEで表されてもよい。なお、基準線は、バケット軸J3とバケット8の先端部8aとを結ぶ線でもよい。極座標系を用いることにより、バケット8がチルトしたときの目標掘削地形とバケット8の先端部8aと作業機動作平面MPにおけるバケット8の断面の輪郭とが正しく演算され、目標掘削地形とバケット8の先端部8aとの距離を正確に算出することが可能となり、掘削制御の精度を確保できる。
【0227】
上述したように、本実施形態において、チルト角度センサ70は、グローバル座標系における水平面に対するバケット8のチルト角度を検出する。チルト角度センサ70は、バケット8に配置されており、バケット8が水平面に対して傾斜することによって、その傾斜角度に応じたチルト角度データを取得部28Cに出力する。
【0228】
図36は、本実施形態に係るチルト角度センサ70の原理を説明するための模式図である。
図36に示すように、チルト角度センサ70は、グローバル座標系における水平面(XgYg平面)に対するチルト角度(回転角度、傾斜角度)を検出する。すなわち、チルト角度センサ37は、θXg方向、及びθYg方向に関する2つの方向に関する傾斜角度を検出する2軸の角度センサである。チルト角度センサ70は、基準面70Rを有し、水平面に対する基準面70Rの傾斜角度を検出する。
【0229】
バケット8は、チルトピン近傍にチルト角度センサ70が設置される設置面を有する。バケット8の設置面と水平面とが平行である場合、バケット8は初期姿勢(水平姿勢)となる。バケット8が初期姿勢の状態において、基準面70Rと水平面(設置面)とが平行となるように、チルト角度センサ70がバケット8の設置面に設置される。
【0230】
基準面70Rと水平面とが平行な状態において、傾斜角度を検出するチルト角度センサ70の検出精度は最も高い。基準面70Rと水平面とが直交する状態において、傾斜角度を検出するチルト角度センサ70の検出精度は最も低い。すなわち、基準面70Rが水平になると、チルト角度センサ70の検出精度が向上し、基準面70Rが鉛直になると、チルト角度センサ70の検出精度が低下する。
【0231】
したがって、チルト角度センサ70が設置されているバケット8の姿勢が変化すると、チルト角度センサ70の検出精度が変化する。例えば、初期姿勢のバケット8がチルト軸J4を中心に回転すると、そのバケット8に設置されているチルト角度センサ70の検出精度が低下する可能性がある。また、ブーム6及びバケット7の少なくも一方の上げ動作又は下げ動作によってバケット8の姿勢が変化した場合においても、そのバケット8に設置されているチルト角度センサ70の検出精度が低下する可能性がある。例えば、作業機2が伸長されて基準面70Rが鉛直に近づくと、チルト角度センサ70の検出精度が低下する。
【0232】
また、バケット8は、チルトシリンダ30の駆動によりチルト軸J4を中心に回転する。バケット8は、チルトシリンダ30駆動のみならず、ブーム6及びアーム7の少なくとも一方の上げ動作又は下げ動作によっても水平面に対して傾斜する。そのため、チルトシリンダ30が駆動されなくても、チルト角度センサ70は、ブーム6及びアーム7の少なくとも一方の上げ動作又は下げ動作に基づくチルト角度データを取得部28Cに出力する。
【0233】
このように、チルト角度センサ70から出力されるチルト角度データは、チルトシリンダ30のストローク長さに応じたチルト角度成分のみならず、ブーム6及びアーム7の少なくとも一方の上げ動作又は下げ動作に基づくチルト角度成分を含む。そのため、チルト角度センサ70を用いて、チルトシリンダ30の駆動に基づくチルト角度データを正確に取得することが困難となる可能性がある。
【0234】
また、上述したように、チルト角度センサ70は、水平面に対する2軸(θXg方向及びθYg方向)の角度センサであり、チルト角度センサ70の基準面70Rの角度がグローバル座標系の鉛直方向に近づく等、バケット8の姿勢によっては、チルト角度を正確に検出できない可能性がある。すなわち、作業機2の駆動によるチルト角度センサ70の動的な検出精度の確保、及びバケット8の姿勢によるチルト角度センサ70の静的な検出精度の確保が困難となり、正確な検出結果を出力できなくなる可能性がある。
【0235】
その結果、チルト角度センサ70からリアルタイムで取得されるチルト角度データ(モニタデータ)に基づいて制限切削制御を実行すると、検出精度が低下したチルト角度センサ70から出力されたチルト角度データで制限掘削制御が行われ、掘削精度が低下する可能性がある。
【0236】
本実施形態においては、固定指令によりチルト角度センサ70の検出値を固定する事を可能とする。これによりオペレータの操作により、チルト角度センサ70の検出精度が高い時点(基準面70Rが水平に近い時点)で、チルト角度センサ70から取得部28Cに出力されるチルト角度データが固定化されて固定データが定められる。その時点以降、固定データに基づいて作業機2の制御が行われる。これにより、その時点以降、作業機2が駆動したり、バケット8の姿勢が変化したりしても、検出精度が低下したチルト角度センサ70から出力されたチルト角度データで制限掘削制御が行われてしまうことが防止される。
【0237】
本実施形態においては、チルト角度データを固定するための固定指令が作業機コントローラ26及びセンサコントローラ32の少なくとも一方に出力される。固定指令が出力された時点で、チルト角度データが固定化されて固定データが生成される。
【0238】
固定データに基づく作業機2の制御は、固定指令が解除されるまで行われる。作業機制御部26Aは、固定指令が解除されるまで、固定データに基づいて、作業機2を制御する。固定解除指令が出力されることにより、固定指令が解除される。固定指令が解除されることにより、作業機コントローラ26及びセンサコントローラ32にリアルタイムでチルト角度センサ70からのチルト角度データが出力される。固定指令が解除された後、チルト角度センサ70から出力されたチルト角度データに基づいて、作業機2が制御される。
【0239】
固定指令は、制限掘削制御が行われる期間の少なくとも一部において固定データに基づいて作業機2が制御されるように、固定部28Dに出力される。本実施形態において、固定指令は、制限掘削制御の開始において固定部28Dに出力され、制限掘削制御の終了において解除される。
【0240】
本実施形態において、制限掘削制御の期間は、制限掘削制御モードが設定された期間、及び制限掘削制御状態の期間の少なくとも一方を含む。
【0241】
制限掘削制御モードは、入力部36の操作により設定される。本実施形態において、入力部36は、制限掘削制御を行うか否かを指令するボタン(掘削制御モード切替ボタン)を含む。オペレータにより掘削制御モード切替ボタンが操作されると、制限掘削制御モードの開始及び終了の少なくとも一方の指令信号が作業機コントローラ26に出力される。すなわち、入力部36の操作により、制限掘削制御モードの開始指令及び終了指令の少なくとも一方が作業機コントローラ26に出力される。制限掘削制御モードの開始時点は、制限掘削制御モードが開始されるように掘削制御モード切替ボタンが操作された時点である。制限掘削制御モードの終了時点は、制限掘削制御モードが終了するように掘削制御モード切替ボタンが操作された時点である。
【0242】
本実施形態においては、制限掘削制御開始のための掘削制御モード切替ボタンの操作により、固定指令が出力される。また、制限掘削制御終了のための掘削制御モード切替ボタンの操作により、固定解除指令が出力される。すなわち、本実施形態においては、制限掘削制御モードの開始指令が固定指令を含む。制限掘削制御モードの終了指令が固定解除指令を含む。固定指令が出力されることにより、その固定指令が固定部28Dに送られ、固定指令が送られた時点におけるチルト角度データが維持(固定)される。
【0243】
なお、入力部36は、チルト角度データを固定するための固定指令及び固定解除指令を含む指令信号を生成可能な専用のボタン(チルト角度固定ボタン)を含んでもよい。チルト角固定ボタンが操作されることにより生成された指令信号が、チルト角度センサ70を制御するためのセンサコントローラに出力されてもよい。例えば、チルト角度固定ボタンが操作されて固定指令が出力された後、チルト角度センサ70から取得部28Cに固定データが出力されてもよい。
【0244】
制限掘削制御モードが開始される前(制限掘削制御モード開始のための掘削制御モード切替ボタンの操作前)にチルト角度固定ボタンが操作されて固定指令が出力されてもよい。制限掘削制御モードの開始時(制限掘削制御モード開始のための掘削制御モード切替ボタンの操作時)にチルト角度固定ボタンが操作されて固定指令が出力されてもよい。制限掘削制御モードの終了時(制限掘削制御モード終了のための掘削制御モード切替ボタンの操作時)にチルト角度固定ボタンが操作されて固定指令が出力されてもよい。制限掘削制御モードが終了した後(制限掘削制御モード終了のための掘削制御モード切替ボタンの操作後)にチルト角度固定ボタンが操作されて固定指令が出力されてもよい。
【0245】
制限掘削制御状態は、刃先8aの相対速度Waが制限速度Vを超えた状態を含む。制限掘削制御状態の開始時点は、刃先8aの相対速度Waが制限速度Vを超えた時点である。掘削制御状態の終了時点は、刃先8aの相対速度Waが制限速度V以下になった時点である。
【0246】
制限掘削制御状態の開始時点において、固定指令が作業機コントローラ26から固定部28Dに出力されてもよい。制限掘削制御状態の終了時点において、固定解除指令が作業機コントローラ26から固定部28Dに出力されてもよい。
【0247】
掘削作業において、オペレータにより入力部36が操作され、固定指令が出力されると、固定部28Dは、その固定指令に基づいて、チルト角度センサ70のモニタデータであるチルト角度データを固定化して固定データにする。
【0248】
演算部28Aは、その固定データと、作業機角度データと、作業機寸法データとに基づいて、バケット8の現在位置を示すバケット位置データを求める。作業機制御部26Aは、固定データを使って求められたバケット位置データと、目標掘削地形とに基づいて、目標掘削地形とバケット8との距離に応じてバケット8が目標掘削地形に近づく速度が小さくなるようにブーム6の速度を制限する制限掘削制御を実行する。
【0249】
すなわち、上述の例に従って、演算部28Aは、作業機角度データ、作業機寸法データ、バケット8の外形データ、及び固定データに基づいて、バケット位置データを含み作業機動作平面MPにおけるバケット8の外形を示す2次元バケットデータSを求め、作業機制御部28は、その2次元バケットデータSに基づいて、作業機2を制御する。
【0250】
本実施形態においては、制限掘削制御状態の期間において、バケット8の駆動が禁止される。すなわち、制限掘削制御において、チルト軸J4を中心とするバケット8の回転が停止される。なお、制限掘削制御において、バケット軸J3を中心とするバケット8の回転は禁止されない。
【0251】
上述のように、作業機2は、バケット8を駆動可能なチルトシリンダ30を有し、チルトシリンダ30の作動により、バケット8がチルト軸J4を中心に回転する。本実施形態においては、制限掘削制御において、チルトシリンダ30が作動しないように、作業機コントローラ26の駆動禁止部26Bが駆動禁止処理を行う。
【0252】
上述のように、チルトシリンダ30は、第3操作レバー25Pを含む操作装置25によって操作される。その操作装置25から出力された操作信号によってチルトシリンダ30が作動する。本実施形態においては、操作装置25からチルトシリンダ30を操作するための操作信号が出力された場合、駆動禁止部26Bは、その操作装置25から出力された操作信号を無効化する。
【0253】
本実施形態において、操作信号の無効化は、パイロット油圧ライン450のパイロット油圧を維持しつつ、チルトシリンダ30の動作を固定することを含む。
図37は、本実施形態に係る油圧システム300の一例を示す図である。
【0254】
図37に示すように、油圧システム300は、チルトシリンダ30に対する作動油の供給量を調整する方向制御弁64と、方向制御弁64に供給されるパイロット油の圧力を調整する制御弁27D及び制御弁27Eと、操作ペダル25Fと、ポンプコントローラ34と、作業機コントローラ26とを備えている。
【0255】
制御弁27D及び制御弁27Eは、作業機コントローラ26の駆動禁止部26Bから出力された制御信号(駆動禁止信号)に基づいて作動する。制御弁27Dは、シャトル弁51Aと方向制御弁64との間の油路に配置される。制御弁27Eは、シャトル弁51Bと方向制御弁64との間の油路に配置される。
【0256】
固定指令に基づいて、作業機コントローラ26の駆動禁止部26Bは、駆動禁止処理を行う場合、駆動禁止信号を出力する。駆動禁止部26Bから出力された駆動禁止信号に基づいて、油路43(43A、43B)が閉じるように、制御弁27D及び制御弁27Eに制御信号を出力する。これにより、油路43(パイロット油圧ライン)のパイロット油圧が一定値に維持される。そのため、方向制御弁64のスプールは移動しない。したがって、チルトシリンダ30は作動せず、バケット8の駆動が禁止される。すなわち、チルト軸J4を中心とするバケット8の回転が停止(固定)される。
【0257】
作業機2は、制限掘削制御状態の開始時点におけるチルト軸J4を中心とする回転方向に関するバケット8の姿勢を維持した状態で、掘削作業を行う。制限掘削制御状態が終了(解除)された時点で、バケット8の駆動の禁止が解除される。
【0258】
本実施形態においては、制限掘削制御において、チルト角度データが固定化されて固定データが生成される。その固定データに基づいて、制限掘削制御状態の期間においてバケット8がチルト軸J4を中心に回転すると、バケット8が目標掘削地形に侵入する可能性が高くなる。本実施形態においては、制限掘削制御状態において、チルト角度データのみならず、チルト軸J4を中心とする回転方向に関するバケット8の位置も固定される。これにより、固定データの値とバケット8の実際のチルト角度との乖離が抑制され、目標掘削地形に沿った掘削が可能となる。
【0259】
なお、制限掘削制御状態の期間のみならず、制限掘削制御モードの期間において、バケット8の駆動が禁止されてもよい。
【0260】
なお、制限掘削制御において、固定データは生成されるものの、バケット8の駆動は禁止されなくてもよい。
【0261】
掘削制限制御モードの終了のために、オペレータにより入力部36が操作されることにより、固定解除指令が出力される。以上により、掘削作業が終了する。固定解除手段は掘削制御モード終了は入力部36の入力以外に個別の固定解除手段としてもよい。
【0262】
[表示部]
図38は、表示部29の一例を示す図である。本実施形態において、表示部29は、2次元設計地形データU及びバケット位置データを含む2次元バケットデータSを表示する。表示部29は、作業機動作平面MPにおける目標掘削地形とバケット8との距離を示す距離データ、及び作業機動作平面MPにおけるバケット8の外形を示す外形データの少なくとも一方を表示する。
【0263】
表示部29の画面は、目標掘削地形とバケット8とを示す正面
図282と、目標掘削地形とバケット8とを示す側面
図281とを含む。正面
図282は、バケット8を示すアイコン101と、目標施工情報の断面を示す線102とを含む。また、正面
図282は、目標掘削地形とバケット8との距離(Z軸方向における距離)を示す距離データ291Aと、目標掘削地形と刃先8aとがなす角度を示す角度データ292Aとを含む。
【0264】
側面
図281は、バケット8を示すアイコン103と、作業機動作平面MPにおける目標掘削地形の表面を示す線104とを含む。アイコン103は、作業機動作平面MPにおけるバケット8の外形を示す。また、側面
図281は、目標掘削地形とバケット8との距離(目標掘削地形とバケット8との最短距離)を示す距離データ292Aと、目標掘削地形とバケット8の底面とがなす角度を示す角度データ292Bとを含む。
【0265】
[効果]
以上説明したように、本実施形態によれば、チルト式バケットにおいて、そのバケット8に設けられたチルト角度センサ70が、バケット8の姿勢などに起因して正確なチルト角度データを出力できない状況が発生しても、チルト角度センサ70から正確なチルト角度データが出力されているタイミングで固定指令が出力することが可能な固定指令手段を設けることを特徴とする。オペレータの操作で、その固定指令に基づいてチルト角度データが固定化されることにより、その固定データを用いて精度良い掘削作業を行うことができる。
【0266】
また、本実施形態によれば、チルト式バケットにおいて、制限掘削制御の制御対象となる作業機動作平面MPに沿ったバケット8の外形と目標掘削地形とを特定できるようにしたので、バケット8のチルトにより、目標掘削地形とバケット8との距離が変化しても、バケット8が目標掘削地形に侵入しないように、精度良く制限掘削制御を行うことができる。
【0267】
本実施形態においては、作業機2の寸法データと、バケット8の外形データと、作業機角度データと、チルト角度データとに基づいて、作業機動作平面MPにおけるバケット8の外形を示す2次元バケットデータを求めるようにしたので、バケット8のチルト角度が変動しても、作業機動作平面MPにおけるバケット8の刃先8aの位置を把握することができる。そのため、目標掘削地形と刃先8aとの相対位置を正確に把握して、掘削精度の低下を抑制しつつ、所期の施工を実行することができる。
【0268】
本実施形態においては、作業機2の寸法データと、目標掘削地形データと、作業機角度データとが取得され、作業機制御部26Aは、目標掘削地形データUとバケット位置データとに基づいて、目標掘削地形とバケット8との距離に応じて制限速度を決定し、作業機2が目標掘削地形に接近する方向の速度が前記制限速度以下になるように作業機2を制御する。これにより、目標掘削地形にバケット8が侵入することが抑制され、掘削精度の低下が抑制される。
【0269】
本実施形態においては、固定指令は、制限掘削制御が行われる期間の少なくとも一部において固定データに基づいて作業機2が制御されるように、データ固定部28Dに出力されるため、その固定指令に基づいてチルト角度データが固定化されることにより、制限掘削制御を精度良く行うことができる。
【0270】
本実施形態においては、固定指令は、制限掘削制御の開始においてデータ固定部28Dに出力され、制限掘削制御の終了において解除されるため、制限掘削制御においては精度良い制限掘削制御が行われる。また、通常の掘削作業においては、チルト角度データの固定化がされずに掘削作業を行うことができる。
【0271】
また、本実施形態においては、掘削制限制御において、駆動禁止部26Bによりバケット8の駆動を禁止して、チルト角度データのみならず、チルト軸J4を中心とする回転方向に関するバケット8の位置も固定するようにしたので、目標掘削地形に沿ってバケット8を動かしながら掘削することができる。
【0272】
また、本実施形態においては、駆動禁止部26Bは、操作装置25から出力された操作信号を無効化するので、バケット8の駆動を円滑に禁止することができる。
【0273】
また、本実施形態においては、2次元バケットデータに基づいて、作業機制御部26Aにより作業機2が制御される。これにより、作業機制御部26Aは、2次元バケットデータSと、作業機動作平面MPに沿った目標掘削地形とに基づいて、目標掘削地形とバケット8との距離dを導出して、作業機2の制限掘削制御を行うことができる。
【0274】
本実施形態においては、2次元バケットデータ、車両本体1の現在位置を示す車両本体位置データP、及び車両本体1の姿勢を示す車両本体姿勢データQに基づいて、目標掘削地形とバケット8との相対位置を求める。これにより、目標掘削地形とバケット8との相対位置を正確に求めることができる。
【0275】
本実施形態においては、目標掘削地形データ及びバケット位置データが表示部26に表示される。これにより、作業機動作平面MPを基準として制御対象が特定され、制限掘削制御が精度良く行われる。
【0276】
なお、本実施形態においては、グローバル座標系における油圧ショベルCMの車両本体位置データP及び車両本体姿勢データQを取得し、ローカル座標系で求めたバケット8の位置(2次元バケットデータS)と、車両本体位置データP及び車両本体姿勢データQを用いて、グローバル座標系における目標掘削地形とバケット8との相対位置を取得することとした。目標掘削地形データをローカル座標系で規定して、ローカル座標系における目標掘削地形とバケット8との相対位置を取得してもよい。以下の実施形態においても同様である。
【0277】
なお、本実施形態においては、2次元バケットデータSを用いて制限掘削制御(介入制御)を行うこととした。制限掘削制御は行われなくてもよい。例えば、オペレータが表示部29を目視し、作業機動作平面MPにおける目標掘削地形に沿ってバケット8が移動するように、操作装置25の操作が行われてもよい。以下の実施形態においても同様である。
【0278】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0279】
上記の実施形態では、建設機械の一例として油圧ショベルを挙げているが油圧ショベルに限らず、他の種類の建設機械に本発明が適用されてもよい。
【0280】
グローバル座標系における油圧ショベルCMの位置の取得は、GNSSに限らず、他の測位手段によって行われてもよい。従って、刃先8aと目標掘削地形との距離dの取得は、GNSSに限らず、他の測位手段によって行われてもよい。
【0281】
ブーム操作量とアーム操作量とバケット操作量とは、操作レバー(25R、25L)の位置を示す電気的な信号に基づいて取得されてもよい。
制御システムは、複数のチルト機構を有するバケットを含む作業機を備える建設機械を制御する。制御システムは、バケットに配置され、水平面に対する傾斜角度を検出可能であり、チルト軸を中心とするバケットの回転角度を示すチルト角度データを検出するチルト角度センサと、チルト角度センサからチルト角度データが出力されるデータ取得部と、固定指令に基づいて、データ取得部に出力されるチルト角度データを固定データにするデータ固定部と、固定指令が解除されるまで、固定データに基づいて、作業機を制御する作業機制御部と、を備える。