(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5856781
(24)【登録日】2015年12月18日
(45)【発行日】2016年2月10日
(54)【発明の名称】バックライト
(51)【国際特許分類】
F21S 2/00 20160101AFI20160128BHJP
F21V 5/00 20150101ALI20160128BHJP
F21V 5/04 20060101ALI20160128BHJP
F21V 5/02 20060101ALI20160128BHJP
G02F 1/13357 20060101ALI20160128BHJP
G02B 27/02 20060101ALN20160128BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20160128BHJP
【FI】
F21S2/00 481
F21V5/00 530
F21V5/04 200
F21V5/02 300
G02F1/13357
!G02B27/02
F21Y101:02
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-182993(P2011-182993)
(22)【出願日】2011年8月24日
(65)【公開番号】特開2013-45649(P2013-45649A)
(43)【公開日】2013年3月4日
【審査請求日】2014年7月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100105474
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 弘徳
(74)【代理人】
【識別番号】100108589
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 利光
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 健良
(72)【発明者】
【氏名】青木 邦光
【審査官】
柿崎 拓
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−258640(JP,A)
【文献】
特開2002−006298(JP,A)
【文献】
特開平10−319318(JP,A)
【文献】
特開2009−020201(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 2/00
F21V 5/00
F21V 5/02
F21V 5/04
G02F 1/13357
F21Y 101/02
G02B 27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスプレイに光を照射するバックライトであって、
複数の光源と、
これらの光源からの光をそれぞれ入光する複数の入光面を有し、これらの入光面に入光した前記光源からの光を同一光軸へ導くプリズム部と、
該プリズム部からの光を集光させて前記ディスプレイへ向かって出射させるレンズ部とを備え、
前記プリズム部は、光源からの光が入光面に対して斜めに入射する斜め入射入光面を有し、前記斜め入射入光面から入光して該プリズム部内を進む光源の光と、他の入光面から入光して前記斜め入射入光面の内面で反射されて前記プリズム部内を進む他の光源の光とが同じ光路を通って前記レンズ部に入射する、
ことを特徴とするバックライト。
【請求項2】
複数の前記光源は、一枚の基板に搭載されていることを特徴とする請求項1に記載のバックライト。
【請求項3】
前記プリズム部と前記レンズ部とが一体成形された状態にあることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のバックライト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドアップディスプレイ装置等に用いられる液晶ディスプレイのバックライトに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、運転者が運転に際して求める情報の増加や多角化に伴って、特に、緊急度の高い情報などを車両のウインドシールド上に虚像表示させ、それを透して視認させる車両の前景と重畳視認させる、ヘッドアップディスプレイ(HUD)装置が自動車、列車等の車両に搭載されている。
【0003】
このようなヘッドアップディスプレイ装置としては、液晶ディスプレイと、液晶ディスプレイをバックライト照明する複数のLEDからなるバックライト手段とを有するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。このバックライト手段を構成するLEDは、ハウジングの小室内にそれぞれ配置され、各LEDが、液晶ディスプレイの対応する部分をバックライト照明して、輝度を向上するようになっている。各LEDは、複数色を発光自在であり、赤色LED、緑色LED及び青色LEDの3原色のLEDより構成し、任意の色をフルカラーで発光させたり、赤色、緑色及び青色の各色のLEDを適宜位置に交互に配置してフルカラー発光させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−35324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、LEDと、このLEDの光を液晶ディスプレイへ導くレンズとの位置関係は、例えば、レンズの中心軸とLEDの光軸との関係から設定されるが、複数個のチップを持つLEDでは、レンズ内でそれぞれの光軸にずれが発生してしまう。このため、各発光色(R,G,B)中、例えば、緑色等の一色を単独で発光した状態から、例えば、赤色等の他の色の単独発光に替える場合、レンズ内での光軸のずれにより、輝度低下や輝度ムラを招いてしまうという問題があった。
【0006】
また、装置の小型化・薄型化に伴い、液晶ディスプレイのバックライトも小型化・薄型化が要求されているが、例えば、白色を得るために単色LEDを合成する構造では、合成させるためのスペースが必要となり、小型化・薄型化を図ることが困難であった。
【0007】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、輝度低下や輝度ムラなどの不具合を抑えつつ小型化・薄型化を図ることが可能なバックライトを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するために、本発明に係るバックライトは、下記(1)から(3)を特徴としている。
(1) ディスプレイに光を照射するバックライトであって、
複数の光源と、
これらの光源からの光をそれぞれ入光する複数の入光面を有し、これらの入光面に入光した前記光源からの光を同一光軸へ導くプリズム部と、
該プリズム部からの光を集光させて前記ディスプレイへ向かって出射させるレンズ部とを備え、
前記プリズム部は、光源からの光が入光面に対して斜めに入射する斜め入射入光面を有し、前記斜め入射入光面から入光して該プリズム部内を進む光源の光と、他の入光面から入光して前記斜め入射入光面の内面で反射されて前記プリズム部内を進む他の光源の光とが同じ光路を通って前記レンズ部に入射する、
こと。
(2) 上記(1)の構成のバックライトにおいて、複数の前記光源は、一枚の基板に搭載されていること。
(3) 上記(1)または(2)の構成のバックライトにおいて、前記プリズム部と前記レンズ部とが一体成形
された状態にあること。
【0009】
上記(1)の構成のバックライトでは、それぞれの光源の発光色を異ならせ、複数の光源を切り替えて発光させることにより、それぞれ異なる発光色の光をレンズ部から出射させることができる。また、これらの光源を同時に発光させることにより、これらの光源からのそれぞれの光を合成させてレンズ部から出射させることができる。
しかも、それぞれの光源からの光をプリズム部が同一光軸へ導くので、光軸のずれによる輝度低下や輝度ムラをなくすことができる。
また、プリズム部によって各光源の光を合成させるので、各光源の光をそれぞれ個別にディスプレイへ出射させるものと比較し、小型化・薄型化を図ることができる。
上記(2)の構成のバックライトでは、複数の光源を一枚の基板に搭載させたことにより、さらなる小型化・薄型化を図ることができ、しかも、組み付け性の向上及びコスト低減を図ることができる。
上記(3)の構成のバックライトでは、プリズム部からレンズ部への光の伝達効率を高めることができ、光を良好に照射させることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、輝度低下や輝度ムラなどの不具合を抑えつつ小型化・薄型化を図ることが可能なバックライトを提供できる。
【0011】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、ヘッドアップディスプレイ装置の外観を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係るバックライトの構成を説明する側面図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係るバックライトを構成する集光レンズの斜視図である。
【
図4】
図4は、変形例に係るバックライトの構成を説明する側面図である。
【
図5】
図5は、参考例に係るバックライトの構成を説明する図であって、
図5(a)及び
図5(b)は、それぞれ異なる方向から視た側面図である。
【
図6】
図6は、参考例に係るバックライトを構成する集光レンズの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る実施の形態の例を、図面を参照して説明する。
【0014】
図1は、ヘッドアップディスプレイ装置の外観を示す斜視図、
図2は、実施形態に係るバックライトの構成を説明する側面図、
図3は、実施形態に係るバックライトを構成する集光レンズの斜視図である。
【0015】
図1に示すように、車両に設置されるヘッドアップディスプレイ(HUD)装置11は、下ケース12と上ケース13とを備えている。このヘッドアップディスプレイ装置11は、上ケース13に、液晶ディスプレイ(ディスプレイ)14が設けられている。
【0016】
図2に示すように、液晶ディスプレイ14の下方には、下ケース12内に収容されたバックライト15が配置されており、このバックライト15の照明光によって液晶ディスプレイ14の映像が車両のフロントガラスへ投影される。液晶ディスプレイ14のバックライト15側には、バックライト15の光を拡散させる拡散板16が設けられている。
【0017】
バックライト15は、集光レンズ21と、二つの光源22,23とを備えている。
【0018】
集光レンズ21は、例えば、ガラスまたは樹脂などの高屈折率材料で形成されたもので、レンズ部31とプリズム部32とを有している。これらのレンズ部31とプリズム部32とは一体成形されている。
【0019】
図3に示すように、レンズ部31は、半球面からなる曲面を有するレンズ面33と、このレンズ面33よりもプリズム部32側に形成されたフランジ部34とを有している。
【0020】
レンズ部31に設けられたフランジ部34には、取付孔34aが形成されており、これらの取付孔34aへ固定ボルト(図示略)を挿通し、ヘッドアップディスプレイ装置のフレーム等へ固定して支持することができるようになっている。
【0021】
プリズム部32は、二つの入光面37,38を有した側面視三角形状に形成されている。
【0022】
一方の入光面37は、レンズ部31の中心軸Xに対して傾き角αで傾斜した傾斜面とされており、他方の入光面38は、レンズ部31の中心軸Xに沿う平行面とされている。そして、これらの入光面37,38に、光源22,23から出射される光L1,L2が入射される。中心軸Xに対する入光面37の傾き角αとしては、約45°とされている。
【0023】
光源22,23は、それぞれ異なる発光色の発光ダイオード(LED)からなるもので、伝熱性に優れたアルミニウム等の基板41に実装されている。なお、この基板41には、その裏面側に伝熱シートを介してヒートシンクを取り付けても良く、このようにすると、光源22,23で発生した熱を良好に放熱することができる。
【0024】
一方の光源22は、出射した光L1がプリズム部32の入光面37に入射した後に、レンズ部31の中心軸Xに沿って進むように配置されている。
【0025】
したがって、一方の入光面37に入射した一方の光源22からの光L1は、レンズ部31の中心軸Xに沿ってプリズム部32及びレンズ部31内を通過し、レンズ部31のレンズ面33から出射される。
【0026】
また、他方の光源22は、出射した光L2がプリズム部32の入光面38に入射した後に、レンズ部31の中心軸Xに対して略垂直に進み、その後、中心軸Xに対して約45°の傾き角αの入光面37の内面で反射し、レンズ部31の中心軸Xに沿って進むように配置されている。
【0027】
したがって、他方の入光面38に入射した他方の光源23からの光L2は、プリズム部32内を、レンズ部31の中心軸Xに略垂直方向に進み、入光面37の内面で全反射し、レンズ部31の中心軸Xに沿ってプリズム部32及びレンズ部31内を通過し、レンズ部31のレンズ面33から出射される。
【0028】
上記のバックライト15では、異なる発光色で発光する光源22,23を切り替えて発光させると、それぞれ異なる発光色の光L1または光L2がレンズ部31のレンズ面33から出射される。また、これらの光源22,23を同時に発光させると、これらの光源22,23からの光L1及び光L2がプリズム部32内で合成されてレンズ部31のレンズ面33から出射される。
【0029】
このように、上記実施形態に係るバックライト15によれば、それぞれの光源22,23の発光色を異ならせ、複数の光源22,23を切り替えて発光させることにより、それぞれ異なる発光色の光L1,L2をレンズ部31から出射させることができ、また、これらの光源22,23を同時に発光させることにより、これらの光源22,23からのそれぞれの光L1.L2を合成させてレンズ部31から出射させることができる。
【0030】
しかも、それぞれの光源22,23からの光L1,L2をプリズム部32がレンズ部31の中心軸Xに沿った同一光軸へ導くので、光軸のずれによる輝度低下や輝度ムラをなくすことができる。
【0031】
また、プリズム部32によって各光源22,23の光L1,L2を合成させるので、各光源22,23の光L1,L2をそれぞれ個別に液晶ディスプレイ14へ出射させるものと比較し、小型化・薄型化を図ることができる。
【0032】
また、プリズム部32とレンズ部31とが一体成形されているので、プリズム部32からレンズ部31への光L1,L2の伝達効率を高めることができ、光を良好に照射させることができる。
【0033】
なお、集光レンズ21は、レンズ部31に別体のプリズム部32を接着剤等によって接着固定して構成しても良い。レンズ部31とプリズム部32とを別体とすると、プリズム部32からレンズ部31への光L1,L2の伝達効率が低下するおそれがあるが、光源22,23の光度を高めることで、伝達効率の低下を補うことができる。
【0034】
次に、変形例に係るバックライトについて説明する。
【0035】
図4は、変形例に係るバックライトの構成を説明する側面図である。
【0036】
図4に示すように、この変形例に係るバックライト15Aでは、一枚の基板41に複数の光源22,23が搭載されている。具体的には、光源23は、光源22が搭載された基板41の延長させた部分に搭載されている。
【0037】
また、このバックライト15Aでは、集光レンズ21を構成するプリズム部32が、二つの入光面37,38及び一つの反射面39を有する側面視略平行四辺形に形成されている。
【0038】
一方の入光面37は、レンズ部31の中心軸Xに対して傾き角αで傾斜した傾斜面とされており、他方の入光面38は、レンズ部31の中心軸Xに対して略垂直面とされている。また、反射面39は、入光面37と略平行な傾斜面とされている。
【0039】
一方の入光面37に入射した一方の光源22からの光L1は、レンズ部31の中心軸Xに沿ってプリズム部32及びレンズ部31内を通過し、レンズ部31のレンズ面33から出射される。また、他方の入光面38に入射した他方の光源23からの光L2は、レンズ部31の中心軸Xに沿ってプリズム部32を進み、反射面39で略直角に全反射され、レンズ部31の中心軸Xに略垂直方向に進み、入光面37の内面で全反射し、レンズ部31の中心軸Xに沿ってプリズム部32及びレンズ部31内を通過し、レンズ部31のレンズ面33から出射される。
【0040】
このように、上記実施形態に係るバックライト15Aの場合も、それぞれの光源22,23の発光色を異ならせ、複数の光源22,23を切り替えて発光させることにより、それぞれ異なる発光色の光L1,L2をレンズ部31から出射させることができ、また、これらの光源22,23を同時に発光させることにより、これらの光源22,23からのそれぞれの光L1.L2を合成させてレンズ部31から出射させることができる。
【0041】
しかも、それぞれの光源22,23からの光L1,L2をプリズム部32がレンズ部31の中心軸Xに沿った同一光軸へ導くので、光軸のずれによる輝度低下や輝度ムラをなくすことができる。
【0042】
また、プリズム部32によって各光源22,23の光L1,L2を合成させるので、各光源22,23の光L1,L2をそれぞれ個別に液晶ディスプレイ14へ出射させるものと比較し、小型化・薄型化を図ることができる。
【0043】
特に、複数の光源22,23を一枚の基板41に搭載させたことにより、さらなる小型化・薄型化を図ることができ、しかも、組み付け性の向上及びコスト低減を図ることができる。
【0044】
なお、このバックライト15Aでは、プリズム部32の反射面39で光源23からの光L2を全反射させても良いが、この反射面39にアルミ蒸着等を施すことにより、反射処理を行っても良い。
【0045】
ここで、本発明の更なる優位性を説明するため、
図5及び
図6に参考例を示す。
【0046】
図5は、参考例に係るバックライトの構成を説明する図であって、(a)及び(b)は、それぞれ異なる方向から視た側面図、
図6は、参考例に係るバックライトを構成する集光レンズの斜視図である。
【0047】
図5に示すように、参考例に係るバックライト1は、基板2に搭載された複数の光源3,4と、集光レンズ5とを備えており、このバックライト1は、拡散板6を備えた液晶ディスプレイ7に光を照射する。
図6に示すように、バックライト1を構成する集光レンズ5は、それぞれの光源3,4に対応した複数のレンズ部8,9を有している。
【0048】
このように、このバックライト1は、それぞれの光源3,4に対応したレンズ部8,9を有する集光レンズ5を備えているので、大型化及びコストアップを招いてしまう。
【0049】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【符号の説明】
【0050】
14 液晶ディスプレイ(ディスプレイ)
15,15A バックライト
22,23 光源
31 レンズ部
32 プリズム部
37,38 入光面
41 基板
L1,L2 光