【実施例】
【0021】
次に、本発明の実施例について
参考例、比較例と共に詳細に説明する。
(実施例1)
ポリオレフィン系樹脂として重量平均分子量150万の高密度ポリエチレン樹脂粉体100部(重量部、以下同じ)と、無機粉体(カーボンブラックを除く)として比表面積200m
2/gで平均粒径5μmのシリカ微粉体260部と、可塑剤として鉱物オイルの一種であるパラフィン系オイル590部と、カーボンブラックとして平均一次粒子径280nmのサーマルブラック2部とをヘンシェルミキサーで混合し、先端にTダイを取り付けた二軸押出成形機で加熱溶融・混練しながらシート状に押出成形し、次いで成形ロールにて圧延処理して厚さ200μmのシートを得た。次に、このシートをn−ヘキサンの槽に浸漬して可塑剤の所定量を抽出除去し、加熱乾燥して、ポリエチレン樹脂23.5重量%、シリカ微粉体61.0重量%、パラフィン系オイル15.0重量%、カーボンブラック0.5重量%で構成される厚さ200μmの微多孔質フィルムからなる蓄電デバイス用セパレータ(鉛蓄電池用セパレータとして好適)を得た。
【0022】
(実施例2)
カーボンブラックの配合量を8部とした以外は実施例1と同様にして、ポリエチレン樹脂23.1重量%、シリカ微粉体60.0重量%、パラフィン系オイル15.0重量%、カーボンブラック1.8%で構成される厚さ200μmの微多孔質フィルムからなる蓄電デバイス用セパレータを得た。
【0023】
(実施例3)
カーボンブラックの配合量を20部とした以外は実施例1と同様にして、ポリエチレン樹脂22.4重量%、シリカ微粉体58.2重量%、パラフィン系オイル15.0重量%、カーボンブラック4.5%で構成される厚さ200μmの微多孔質フィルムからなる蓄電デバイス用セパレータを得た。
【0024】
(実施例4)
カーボンブラックとして平均一次粒子径280nmのサーマルブラックに代え平均一次粒子径405nmのサーマルブラックを使用した以外は実施例1と同様にして、ポリエチレン樹脂23.5重量%、シリカ微粉体61.0重量%、パラフィン系オイル15.0重量%、カーボンブラック0.5重量%で構成される厚さ200μmの微多孔質フィルムからなる蓄電デバイス用セパレータを得た。
【0025】
(実施例5)
カーボンブラックの配合量を8部とした以外は実施例4と同様にして、ポリエチレン樹脂23.1重量%、シリカ微粉体60.0重量%、パラフィン系オイル15.0重量%、カーボンブラック1.8%で構成される厚さ200μmの微多孔質フィルムからなる蓄電デバイス用セパレータを得た。
【0026】
(実施例6)
カーボンブラックの配合量を20部とした以外は実施例4と同様にして、ポリエチレン樹脂22.4重量%、シリカ微粉体58.2重量%、パラフィン系オイル15.0重量%、カーボンブラック4.5%で構成される厚さ200μmの微多孔質フィルムからなる蓄電デバイス用セパレータを得た。
【0027】
(
参考例1)
カーボンブラックとして平均一次粒子径280nmのサーマルブラックに代え平均一次粒子径120nmのファーネスブラックを使用した以外は実施例1と同様にして、ポリエチレン樹脂23.5重量%、シリカ微粉体61.0重量%、パラフィン系オイル15.0重量%、カーボンブラック0.5重量%で構成される厚さ200μmの微多孔質フィルムからなる蓄電デバイス用セパレータを得た。
【0028】
(比較例1)
カーボンブラックとして平均一次粒子径280nmのサーマルブラックに代え平均一次粒子径29nmのファーネスブラックを使用した以外は実施例1と同様にして、ポリエチレン樹脂23.5重量%、シリカ微粉体61.0重量%、パラフィン系オイル15.0重量%、カーボンブラック0.5重量%で構成される厚さ200μmの微多孔質フィルムからなる蓄電デバイス用セパレータを得た。
【0029】
(比較例2)
カーボンブラックの配合量を8部とした以外は比較例1と同様にして、ポリエチレン樹脂23.1重量%、シリカ微粉体60.0重量%、パラフィン系オイル15.0重量%、カーボンブラック1.8%で構成される厚さ200μmの微多孔質フィルムからなる蓄電デバイス用セパレータを得た。
【0030】
(比較例3)
カーボンブラックの配合量を20部とした以外は比較例1と同様にして、ポリエチレン樹脂22.4重量%、シリカ微粉体58.2重量%、パラフィン系オイル15.0重量%、カーボンブラック4.5%で構成される厚さ200μmの微多孔質フィルムからなる蓄電デバイス用セパレータを得た。
【0031】
(比較例4)
カーボンブラックとして平均一次粒子径280nmのサーマルブラックに代え平均一次粒子径70nmのファーネスブラックを使用した以外は実施例1と同様にして、ポリエチレン樹脂23.5重量%、シリカ微粉体61.0重量%、パラフィン系オイル15.0重量%、カーボンブラック0.5重量%で構成される厚さ200μmの微多孔質フィルムからなる蓄電デバイス用セパレータを得た。
【0032】
(比較例5)
カーボンブラックの配合量を8部とした以外は比較例4と同様にして、ポリエチレン樹脂23.1重量%、シリカ微粉体60.0重量%、パラフィン系オイル15.0重量%、カーボンブラック1.8%で構成される厚さ200μmの微多孔質フィルムからなる蓄電デバイス用セパレータを得た。
【0033】
(比較例6)
カーボンブラックの配合量を20部とした以外は比較例5と同様にして、ポリエチレン樹脂22.4重量%、シリカ微粉体58.2重量%、パラフィン系オイル15.0重量%、カーボンブラック4.5%で構成される厚さ200μmの微多孔質フィルムからなる蓄電デバイス用セパレータを得た。
【0034】
次に、上記実施例
1〜6、参考例1、比較例1〜6にて得られたセパレータを、以下の試験方法により評価した。結果を表1に示す。尚、以下において、MD(方向)とは、連続帯状に製造されるフィルムシートの製造時の流れ方向をいい、CD(方向)とは、MDと直交する方向をいう。
〈カーボンブラックの平均一次粒子径〉
少なくとも1.5〜2.0nmの分解能を有する電子顕微鏡により数万倍の写真を撮影し、直接測定して求めた算術平均値。
〈ベース厚さ〉
ダイヤルゲージ(尾崎製作所社製 ピーコックG−6)を用いて、セパレータの任意の点、数箇所を測定した。
〈引張強度、伸び〉
セパレータから、MDおよびCD方向に、10mm×70mmの大きさで切り取って試験片とする。容量294N以下のショッパ式またはこれに準ずる引張試験機を用い、試験機のつかみの間隔を約50mmとし、試験片を取り付け、毎分200mmの引張速さで行い、試験片が切断した時の引張荷重、距離を読む。引張荷重を断面積で除し、引張強度とし、伸びは、距離を試験機のつかみの間隔で除したものとする。
〈空隙率〉
微多孔質フィルムの細孔容積(水銀圧入法)と真密度(浸漬法)から、次式により算出した。
空隙率=Vp/((1/ρ)+Vp)
但し、Vp:細孔容積(cm
3/g)、ρ:真密度(g/cm
3)
〈平均細孔径〉
水銀圧入時の、圧力と水銀の容量から細孔径分布を算出した。全細孔容積の50%の容積の水銀が圧入された時点の細孔径を平均細孔径(メディアン径)とした。
〈電気抵抗〉
セパレータを70mm×70mmサイズに裁断し試験片とし、SBA S 0402に準拠した試験装置で測定した。
〈耐候性〉
セパレータを、温度65℃、湿度90%RHの環境下で、5日間紫外線を照射した後、CD方向の伸び(%)を測定し、これを耐候性とした。
〈色調(カラー)〉
色彩色差計(ミノルタ社製 CR210)を使用し、セパレータ表面のマンセル表色系(色相、明度、彩度)を測定した。
〈画像検出性〉
セパレータで電極板を包む構成にするために、長方形に裁断したセパレータを長手方向の真ん中で折り曲げ、折り曲げ辺を下にしてその両側端(左右辺)を、ギヤシール(被加工基材を、一対の噛み合いギアからなる加圧治具間へ通すことによって、50〜100kg/cm
2程度の加圧力を与えて加圧圧着し、物理的な作用で接合させるシール方法)し袋状に加工した。次に、シール加工後の検査として、シール加工(封止加工)が良好であったか不良であるかを判別した。これは、ギヤシール部と非ギヤシール部との色の違いを判別して、ギヤシール部を検知(検出)した後、検知(検出)したギヤシール部が正常か否かを見るもので、ギヤシール部は非ギヤシール部に比べて、圧力が加わった分、色が濃く(黒っぽく)なるため、これを画像検出式検査機にて画像検出して、ギヤシール部を特定し、ギヤシール部である所定幅・所定長さの帯状のラインがセパレータ両側端部(左右辺)に正常に存在するかを見ることで、シール加工が正常に行われたかを見るものである。例えば、左右辺の一方において、ギヤシール部である帯状のラインがまったく存在しない(シール加工そのものが施されていない)、または、帯状のラインが一部欠けている(所定幅・所定長さを有していない:シール加工は施されているが正常ではない)場合は、シール加工が不良であったと判定される。しかし、この場合、例えば、ギヤシール部である帯状のラインがまったく存在しない場合は、ギヤシール部を検知(検出)していない状態であるが、これには、ギヤシール部は存在するが、それを画像検出できなかった場合も、含まれることになる。
実施例
1〜6、参考例1、比較例1〜6の各セパレータについて、上記の通り裁断した100枚のセパレータシートをシール加工し、シール加工後のセパレータシートを画像検出式検査機に流し、ギヤシール部の検知(検出)が正常に行われたか否かを判定し、100枚中の正常に検知(検出)されたものの割合を求めた。
【0035】
【表1】
【0036】
表1の結果から以下のことがわかった。
(1)実施例
1〜6、参考例1、比較例1〜6のセパレータは、どちらも、同様の製造方法によって製造された、同様の膜厚さ、空隙率、平均細孔径を有し、ポリエチレン樹脂22.4〜23.5重量%、シリカ粉体58.2〜61.0重量%、鉱物オイル15.0重量%、カーボンブラック0.5〜4.5重量%から構成される微多孔質フィルムである。
(2)カーボンブラックとして平均一次粒子径が
150nm以上である特殊なカーボンブラックを使用した実施例
1〜6では、セパレータの明度(マンセル表色系)が5.0〜7.8であり、画像検出性は97%以上でギヤシール部の検出不良をほぼ完全に防ぐことができている。特に、カーボンブラックの平均一次粒子径が150nm以上、カーボンブラックの含有量が2重量%以下である実施例
1、2、4、5では、セパレータの明度(マンセル表色系)が5.5以上であり、画像検出性は100%となる。
(3)一方、カーボンブラックとして平均一次粒子径が100nm未満である従来のカーボンブラックを使用した比較例1〜6では、セパレータの明度(マンセル表色系)が2.6〜5.3であり、画像検出性は0〜99%である。カーボンブラックの平均一次粒子径を70nm、カーボンブラックの含有量を耐候性を付与するための最低含有量である0.5重量%とした比較例4の場合に、セパレータの明度(マンセル表色系)が5.3であり、画像検出性は99%となるが、それ以外の比較例1〜3、5〜6の場合は、セパレータの明度(マンセル表色系)が2.6〜4.6であり、画像検出性は0〜88%でギヤシール部の検出不良が多く発生する状況である。そして、セパレータの明度(マンセル表色系)が5.3で、画像検出性が99%と良好であった比較例4も、カーボンブラックの平均一次粒子径が100nm未満であることから、カーボンブラックの導電性が高く、蓄電デバイス用セパレータとして用いるには、電極間の電気的絶縁性が低下する危険性があるため実用できない。