(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
カチオン化ヒドロキシプロピルセルロース(A)、陰イオン界面活性剤(B)、及び油剤(C)を含有し、油剤(C)の含有量が1〜40質量%であり、カチオン化ヒドロキシプロピルセルロース(A)に対する油剤(C)の質量比〔油剤(C)/カチオン化ヒドロキシプロピルセルロース(A)〕が1〜400である皮膚洗浄剤組成物の製造方法であって、下記工程(I)〜工程(III)を有する皮膚洗浄剤組成物の製造方法。
工程(I):カチオン化ヒドロキシプロピルセルロース(A)と陰イオン界面活性剤(B)とを混合し、混合物を得る工程
工程(II):工程(I)により得られた混合物と油剤(C)とを混合し、エマルションを得る工程
工程(III):工程(II)により得られたエマルションと、界面活性剤及び水とを混合し、皮膚洗浄剤組成物を得る工程
カチオン化ヒドロキシプロピルセルロース(A)に対する陰イオン性界面活性剤(B)の質量比〔陰イオン性界面活性剤(B)/カチオン化ヒドロキシプロピルセルロース(A)〕が1〜300である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の皮膚洗浄剤組成物の製造方法。
工程(I)における、カチオン化ヒドロキシプロピルセルロース(A)に対する陰イオン界面活性剤(B)の質量比[陰イオン界面活性剤(B)/カチオン化ヒドロキシプロピルセルロース(A)]が0.01〜1.0である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の皮膚洗浄剤組成物の製造方法。
前記エマルション中における、カチオン化ヒドロキシプロピルセルロース(A)に対する油剤(C)の質量比〔油剤(C)/カチオン化ヒドロキシプロピルセルロース(A)〕が1〜400である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の皮膚洗浄剤組成物の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の皮膚洗浄剤組成物は、カチオン化ヒドロキシプロピルセルロース(A)、陰イオン性界面活性剤(B)、及び油剤(C)を含有する。
皮膚洗浄剤組成物にカチオン化ヒドロキシプロピルセルロース(A)を含有させることによって、大量の油剤を配合しても安定した乳化が可能であり、洗浄時の泡立ちを良好なものとし、かつ皮膚に油剤を効率的に残留させ、乾燥後の肌に保湿感を付与できる理由は明らかではないが、次のように考えられる。
すなわち、本発明の皮膚洗浄剤組成物は、カチオン化ヒドロキシプロピルセルロース(A)と陰イオン界面活性剤(B)の一部がコンプレックスを形成し、このコンプレックスが油剤(C)を安定に乳化してエマルションを形成する。洗浄からすすぎの過程において、シェア(ずり応力)がかかることによりエマルションが皮膚上で崩壊し、油剤(C)が皮膚に付着して、カチオン化ヒドロキシプロピルセルロース(A)と陰イオン界面活性剤(B)とのコンプレックスが油剤(C)を覆うように皮膚に残留して、皮膚に保湿感が付与されると考えられる。また、カチオン化ヒドロキシプロピルセルロース(A)を用いることで、陰イオン性界面活性剤(B)の大部分が、油剤(C)の乳化に使われずに泡に使われるため、泡立ちが良好になると考えられる。
【0009】
(カチオン化ヒドロキシプロピルセルロース(A))
本発明において、カチオン化ヒドロキシプロピルセルロース(A)(以下、「C−HPC」ともいう)とは、カチオン性基及びプロピレンオキシ基を有するセルロースを意味する。カチオン性基におけるカチオンとしては四級アンモニウムカチオンが好ましい。
【0010】
C−HPCは、下記一般式(1)で表されるアンヒドログルコース由来の主鎖を有し、かつカチオン化エチレンオキシ基の置換度が0.01〜3.0であり、プロピレンオキシ基の置換度が0.01〜2.9であるものが好ましい。
【0012】
(式中、R
1、R
2及びR
3は、それぞれ独立に下記一般式(2)で表されるカチオン化エチレンオキシ基及びプロピレンオキシ基を有する置換基を示す。nはアンヒドログルコースの平均重合度を示し、nは20〜5000である。)
【0014】
(式中、Y
1及びY
2は、一方が水素原子であり、他方が下記一般式(3)で表されるカチオン性基を示し、POはプロピレンオキシ基を示す。pは一般式(2)中に含まれるカチオン化エチレンオキシ基(−CH(Y
1)−CH(Y
2)−O−)の数を、qは前記一般式(2)中に含まれるプロピレンオキシ基(−PO−)の数を示し、それぞれ0又は正の整数である。p及びqのどちらもが0でない場合、カチオン化エチレンオキシ基とプロピレンオキシ基の付加順序は問わず、更にp及び/又はqが2以上である場合は、ブロック結合又はランダム結合のいずれであってもよい。)
【0016】
(式中、R
4、R
5及びR
6は、それぞれ独立に炭素数1〜3の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を示し、X
-はアニオンを示す。)
【0017】
<一般式(1)で表されるアンヒドログルコース由来の主鎖>
本発明に用いられるカチオン化ヒドロキシプロピルセルロース(A)は、前記一般式(1)に示されるアンヒドログルコース由来の主鎖を有する。
前記一般式(1)において、R
1、R
2及びR
3は、それぞれ独立に前記一般式(2)で表される置換基であり、R
1、R
2及びR
3は、同一であっても、異なっていてもよい。また、n個のR
1、n個のR
2、n個のR
3は、それぞれ同一であっても、異なってもよい。
【0018】
本発明の皮膚洗浄剤組成物の洗浄時の起泡性、及び乾燥後の肌に保湿感を付与する観点から、前記一般式(1)における平均重合度nは、20以上が好ましく、50以上がより好ましく、100以上が更に好ましい。また、上記と同様の観点及び製造の容易さの観点から、前記一般式(1)における平均重合度nは、5000以下が好ましく、3000以下がより好ましく、2000以下が更に好ましい。これらの観点を総合すると、平均重合度nは、20〜5000が好ましく、50〜3000がより好ましく、100〜2000が更に好ましい。
なお、本発明において平均重合度とは、銅−アンモニア法により測定される粘度平均重合度をいい、具体的には実施例に記載の方法により算出される。
【0019】
<一般式(2)で表される置換基>
前記一般式(1)における置換基R
1、R
2、R
3は、下記一般式(2)に示される通り、カチオン化エチレンオキシ基及びプロピレンオキシ基を有する。
【0021】
上記一般式(2)において、Y
1及びY
2は、一方が水素原子であり、他方が前記一般式(3)で表されるカチオン性基を示し、POはプロピレンオキシ基を示す。
pは前記一般式(2)中に含まれるカチオン化エチレンオキシ基(−CH(Y
1)−CH(Y
2)O−)の数を示し、0又は正の整数である。製造の容易さの観点から、pは0〜3の整数であることが好ましく、0〜2の整数であることがより好ましく、0又は1であることが更に好ましい。
qは前記一般式(2)中に含まれるプロピレンオキシ基(−PO−)の数を示し、0又は正の整数である。製造の容易さの観点から、qは0〜4の整数であることが好ましく、0〜2の整数であることがより好ましく、0又は1であることが更に好ましい。
C−HPC分子内に複数の一般式(2)で表される置換基が存在する場合、該置換基間においてp、qの値はそれぞれ異なっていてよい。
pとqの合計は、製造の容易さの観点から、1〜5の整数であることが好ましく、1〜4の整数であることがより好ましく、1〜3の整数であることが更に好ましく、1又は2であることがより更に好ましい。
p及びqのどちらもが0でない場合、前記カチオン化エチレンオキシ基とプロピレンオキシ基の付加順序は問わないが、製造の容易さの観点から、前記一般式(2)に記載した順序であることが好ましい。
また、p及びqのどちらもが0でなく、かつp及び/又はqが2以上である場合は、ブロック結合又はランダム結合のいずれであってもよいが、製造の容易さの観点から、ブロック結合であることが好ましい。
n個のR
1、n個のR
2、n個のR
3において、少なくとも1つは、前記一般式(2)のpが0ではなく、また、少なくとも1つは、前記一般式(2)のqが0ではない。
【0022】
<一般式(3)で表されるカチオン性基>
前記一般式(2)におけるY
1、Y
2であるカチオン性基は、下記一般式(3)で表される構造を有する。
【0024】
上記一般式(3)において、R
4、R
5及びR
6は、それぞれ独立に炭素数1〜3の直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、その具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基及びイソプロピル基が挙げられる。これらの中では、C−HPCの水溶性の観点から、メチル基又はエチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
前記一般式(3)において、X
-は、アンモニウムカチオンの対イオンであるアニオンを示す。X
-はアニオンであれば特に限定されない。その具体例としてはアルキル硫酸イオン、硫酸イオン、リン酸イオン、アルキル炭酸イオン、及びハロゲン化物イオン等が挙げられる。これらの中では、製造の容易さの観点から、ハロゲン化物イオンが好ましい。ハロゲン化物イオンとしては、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン及びヨウ化物イオンが挙げられるが、C−HPCの水溶性及び化学的安定性の観点から、塩化物イオン、臭化物イオンが好ましく、塩化物イオンがより好ましい。
【0025】
前記一般式(1)で表されるC−HPCにおいて、本発明の皮膚洗浄剤組成物による洗浄時の起泡性、及び乾燥後の肌に油剤を効率的に残留させ保湿感を付与する観点、及び製造の容易さの観点から、カチオン化エチレンオキシ基の置換度は、3.0以下が好ましく、2.0以下がより好ましく、1.0以下が更に好ましい。また、本発明の皮膚洗浄剤組成物による洗浄時の起泡性、及び乾燥後の肌に保湿感を付与する観点から、カチオン化エチレンオキシ基の置換度は、0.01以上が好ましく、0.05以上がより好ましく、0.1以上が更に好ましい。これらの観点を総合すると、カチオン化エチレンオキシ基の置換度は、0.01〜3.0が好ましく、0.05〜2.0がより好ましく、0.1〜1.0が更に好ましい。
なお、本発明において、カチオン化エチレンオキシ基の置換度とは、セルロース主鎖を構成するアンヒドログルコース単位(以下「AGU」ともいう)1モルあたりのC−HPCの分子中に存在するカチオン化エチレンオキシ基の平均モル数をいう。カチオン化エチレンオキシ基の置換度は、後述の実施例に記載の方法により測定される。
【0026】
また、前記一般式(1)で表されるC−HPCにおいて、本発明の皮膚洗浄剤組成物により乾燥後の肌に油剤を効率的に残留させ保湿感を付与する観点、及び製造の容易さの観点から、プロピレンオキシ基の置換度は、2.9以下が好ましく、2.5以下がより好ましく、2.1以下が更に好ましい。また、本発明の皮膚洗浄剤組成物による洗浄時の起泡性の観点から、プロピレンオキシ基の置換度は、0.01以上が好ましく、0.05以上がより好ましく、0.1以上が更に好ましい。これらの観点を総合すると、プロピレンオキシ基の置換度は、0.01〜2.9が好ましく、0.05〜2.5がより好ましく、0.1〜2.1が更に好ましい。
なお、本発明において、プロピレンオキシ基の置換度とは、セルロース主鎖を構成するAGU1モルあたりのC−HPC分子中に存在するプロピレンオキシ基の平均モル数をいう。プロピレンオキシ基の置換度は、後述の実施例に記載の方法により測定される。
【0027】
前記一般式(1)で表されるC−HPCの製造の容易さの観点から、カチオン化エチレンオキシ基の置換度とプロピレンオキシ基の置換度の和は、3.5以下であることが好ましく、3.2以下であることがより好ましく、3.0以下であることが更に好ましい。また、皮膚洗浄剤組成物で洗浄した後の洗浄時の起泡性、及び乾燥後の肌に保湿感を付与する観点から、カチオン化エチレンオキシ基の置換度とプロピレンオキシ基の置換度の和は、0.01以上であることが好ましく、0.05以上であることがより好ましく、0.1以上であることが更に好ましい。これらの観点を総合すると、カチオン化エチレンオキシ基の置換度とプロピレンオキシ基の置換度の和は、0.01〜3.5が好ましく、0.05〜3.2がより好ましく、0.1〜3.0が更に好ましい。
【0028】
(カチオン化ヒドロキシプロピルセルロース(A)の製造)
本発明に用いられるカチオン化ヒドロキシプロピルセルロース(A)は、例えば、以下の(1)〜(3)の製造方法により得ることができる。
(1):過剰の水や溶媒を用いず、粉末状、ペレット状又はチップ状のセルロースと、カチオン化剤及び酸化プロピレンとを塩基の共存下に反応させる方法。
(2):セルロースと大量の水及び大過剰のアルカリ金属水酸化物とをスラリー状態で混合し、カチオン化剤及び酸化プロピレンと反応させる方法。
(3):塩化リチウムを含むジメチルアセトアミドを溶媒として用い、更にアミン類やアルコラート触媒を添加してセルロースを溶解させ、カチオン化剤及び酸化プロピレンと反応させる方法。
前記(1)〜(3)のC−HPCの製造方法において、カチオン化剤との反応、及び酸化プロピレンとの反応はどちらを先に行ってもよく、同時に行ってもよい。
これらの製造方法の中では、製造の容易さの観点から、前記(1)の製造方法が好ましい。前記(1)のC−HPCの製造方法の具体例としては、(1−1)セルロース含有原料のカチオン化及びヒドロキシプロピル化を行う方法、及び(1−2)セルロース含有原料のアルカリセルロース化を行った後、カチオン化及びヒドロキシプロピル化を行う方法等が挙げられる。
以下、前記(1)のC−HPCの製造方法について、具体的に説明する。
【0029】
<(1−1)セルロース含有原料のカチオン化及びヒドロキシプロピル化を行う方法>
〔セルロース含有原料〕
C−HPCの製造に用いられるセルロース含有原料は、(i)結晶性を低下させたセルロース含有原料、例えば低結晶性の粉末セルロースや、(ii)結晶性の高いセルロース含有原料、例えばパルプが好適に用いられる。
【0030】
〔(1−1−i)結晶性を低下させたセルロース含有原料を使用するC−HPCの製造〕
≪結晶性を低下させたセルロース含有原料の製造≫
結晶性を低下させたセルロース含有原料、例えば低結晶性の粉末セルロースは、汎用原料として得られるシート状やロール状のセルロース純度の高いパルプから調製することができる。低結晶性粉末セルロースの調製方法は特に限定されない。例えば、特開昭62−236801号公報、特開2003−64184号公報、特開2004−331918号公報等に記載の方法を挙げることができる。これらの中では、結晶性を低下させたセルロース含有原料、例えば低結晶性の粉末セルロースの生産性を向上させる観点から、メカノケミカル処理して得られた低結晶性又は非結晶性粉末セルロース(以下、総称して「低結晶性粉末セルロース」ともいう)を使用することがより好ましい。
ここで、低結晶性粉末セルロースの「低結晶性」とは、セルロースの結晶構造においてアモルファス部の割合が多い状態を意味する。具体的には、カチオン化剤及び酸化プロピレンと反応性を高める観点から、下記計算式(1)により求められる結晶化度が30%以下であることが好ましく、20%以下がより好ましく、10%以下が更に好ましく、該結晶化度がほぼ0%である完全非晶化セルロースを用いることがより更に好ましい。
結晶化度(%)=[(I
22.6−I
18.5)/I
22.6]×100 (1)
(式中、I
22.6は、X線回折における格子面(002面)(回折角2θ=22.6°)の回折強度を示し、I
18.5は、アモルファス部(回折角2θ=18.5°)の回折強度を示す。)
【0031】
メカノケミカル処理による低結晶性粉末セルロースの製造方法としては、例えばシート状パルプを粗粉砕して得られるチップ状パルプを粉砕機で処理することによる方法が挙げられる。粉砕機による処理の前にチップ状パルプを押出機で処理しておくこともできる。
この方法に用いられる押出機としては、単軸又は二軸の押出機、好ましくは二軸押出機が挙げられるが、強い圧縮せん断力を加える観点から、スクリューのいずれかの部分に、いわゆるニーディングディスク部を備えるものが好ましい。
押出機を用いる処理方法としては、特に制限はないが、チップ状パルプを押出機に投入し、連続的に処理する方法が好ましい。
粉砕機としては高圧圧縮ロールミルやロール回転ミル等のロールミル、リングローラーミル、ローラーレースミル又はボールレースミル等の竪型ローラーミル、転動ボールミル、振動ボールミル、振動ロッドミル、振動チューブミル、遊星ボールミル又は遠心流動化ミル等の容器駆動媒体ミル、塔式粉砕機、攪拌槽式ミル、流通槽式ミル又はアニュラー式ミル等の媒体攪拌式ミル、高速遠心ローラーミルやオングミル等の圧密せん断ミル、乳鉢、又は石臼等が挙げられる。これらの中では、セルロースの結晶化度を効率的に低下する観点、及び生産性の観点から、容器駆動式媒体ミル又は媒体攪拌式ミルが好ましく、容器駆動式媒体ミルがより好ましく、振動ボールミル、振動ロッドミル及び振動チューブミル等の振動ミルがより好ましく、振動ボールミル、振動ロッドミルが更に好ましい。
【0032】
処理方法としては、バッチ式、連続式のどちらでもよい。
ボール、ロッド等の媒体の充填率は、粉砕機の機種により好適な範囲が異なるが、好ましくは10〜97%、より好ましくは15〜95%、更に好ましくは30〜80%の範囲である。充填率がこの範囲内であれば、原料パルプと媒体との接触頻度が向上するとともに、媒体の動きを妨げずに、粉砕効率を向上させることができる。ここで充填率とは、粉砕機の攪拌部の容積に対する媒体の見かけの体積をいう。
ボールミルの場合、媒体として用いるボールの材質には特に制限はなく、例えば、鉄、ステンレス、アルミナ、ジルコニア等が挙げられる。ボールの外径は、セルロースの結晶化度を効率的に低下させる観点から、好ましくは0.1〜100mm、より好ましくは1〜50mmである。
また、セルロースの結晶化度を効率的に低下させる観点から、粉砕機の処理時間は、好ましくは5分〜72時間、より好ましくは10分〜30時間である。また、粉砕機処理の際には、発生する熱による変性や劣化を最小限に抑える観点から、好ましくは250℃以下、より好ましくは5〜200℃の範囲で処理を行うことが望ましい。
【0033】
粉砕機の媒体として用いるロッドとは棒状の媒体であり、ロッドの断面が四角形、六角形等の多角形、円形、楕円形等のものを用いることができる。
ロッドの外径としては、好ましくは0.5〜200mm、より好ましくは1〜100mm、更に好ましくは5〜50mmの範囲である。ロッドの長さとしては、粉砕機の容器の長さよりも短いものであれば特に限定されない。ロッドの大きさが上記の範囲であれば、所望の粉砕力が得られ効率的にセルロースを低結晶化させることができる。
ロッドを充填した振動ミルの処理時間、処理温度に特に制限はないが、前記のボールミルと同様の処理時間、処理温度で行うことができる。
【0034】
上記の方法によれば、分子量の制御も可能であり、一般には入手困難な、重合度が高く、かつ低結晶性の粉末セルロースを容易に調製することが可能である。低結晶性粉末セルロースの平均重合度は、好ましくは20〜5000であり、より好ましくは50〜3000であり、更に好ましくは100〜2000である。
また、低結晶性粉末セルロースの平均粒径は、粉体として流動性のよい状態が保てればよく特に限定されないが、300μm以下が好ましく、150μm以下がより好ましく、50μm以下が更に好ましい。また、粉末セルロースの取り扱い性向上の観点から、20μm以上が好ましく、25μm以上がより好ましい。しかしながら、凝集等による微量な粗大粒子の混入を避けるため、反応には必要に応じて300〜1000μm程度の目開きの篩を用いた篩下品を用いるのが好ましい。
【0035】
≪結晶性を低下させたセルロース含有原料のカチオン化≫
上記のようにして得られた結晶性を低下させたセルロース含有原料、例えば低結晶性粉末セルロースに、塩基存在下、グリシジルトリアルキルアンモニウム塩を反応させてカチオン化し、カチオン化セルロースを製造する。
カチオン化剤として用いるグリシジルトリアルキルアンモニウム塩としては、グリシジルトリメチルアンモニウムクロリド、グリシジルトリエチルアンモニウムクロリド、グリシジルトリメチルアンモニウムブロミド、グリシジルトリエチルアンモニウムブロミド、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリド等が上げられるが、入手性の観点から、グリシジルトリメチルアンモニウムクロリドが好ましい。
グリシジルトリアルキルアンモニウム塩の添加量は、皮膚洗浄剤組成物により乾燥後の肌に油剤を効率的に残留させ、保湿感を付与する観点から、セルロースのアンヒドログルコース単位1モルに対して、0.01〜10.0倍モルが好ましく、0.05〜8.0モルがより好ましく、0.08〜7.0倍モルが更に好ましく、0.1〜6.0倍モルがより更に好ましい。
カチオン化時に存在させる塩基としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等が挙げられるが、入手性、汎用性、経済性の観点から水酸化ナトリウム、水酸化バリウムがより好ましい。塩基の添加量は、セルロースの種類等により異なるが、セルロースとカチオン化剤を効率的に反応させる観点から、セルロースのアンヒドログルコース単位1モルに対して、通常0.05〜1.0倍モルが好ましく、0.07〜0.5倍モルがより好ましく、0.1〜0.3倍モルが更に好ましい。
反応系内の水分含有量は、原料として用いたセルロースに対し100質量%以下であることが好ましい。セルロースに対する水分含有量がこの範囲内であれば、セルロースが過度に凝集することなく、流動性のある粉末状態で反応させることができる。この観点から、反応系内の水分含有量は80質量%以下がより好ましく、5〜50質量%が更に好ましい。
反応温度は、通常10〜85℃であり、好ましくは15〜80℃である。
【0036】
≪カチオン化セルロースのヒドロキシプロピル化≫
上記のようにして得られたカチオン化セルロースを、酸化プロピレンと反応させてヒドロキシプロピル化することにより、C−HPCを製造することができる。
ここで、酸化プロピレンの使用量は、洗浄時の起泡性、及び乾燥後の肌に油剤を効率的に残留させ保湿感を付与する観点から、セルロース分子中のアンヒドログルコース単位1モルに対して、0.01〜10倍モルが好ましく、0.1〜8.0倍モルがより好ましく、0.2〜6.0倍モルが更に好ましい。
【0037】
ヒドロキシプロピル化の触媒としては、塩基又は酸を用いることができる。塩基触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属水酸化物、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属水酸化物、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン等の3級アミン類が挙げられる。酸触媒としては、ランタニドトリフラート等のルイス酸触媒等が挙げられる。
これらの中では、原料セルロースの重合度の低下を抑制する観点から、塩基触媒が好ましく、アルカリ金属水酸化物がより好ましく、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが更に好ましい。これらの触媒は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
触媒の使用量は、特に制限はないが、セルロース分子中のアンヒドログルコース単位1モルに対して、通常0.05〜1.0倍モルであり、0.07〜0.7倍モルが好ましく、0.1〜0.3倍モルがより好ましい。
カチオン化工程を先に行う場合は、カチオン化工程で用いた塩基を、そのままヒドロキシプロピル化における触媒として用いることができ、ヒドロキシプロピル化工程において新たに触媒を添加しなくてもよい。
【0038】
酸化プロピレンの添加方法に特に制限はなく、例えば(a)カチオン化セルロースに触媒を添加した後に酸化プロピレンを滴下する方法、(b)カチオン化セルロースに酸化プロピレンを一括で添加し、その後に触媒を徐々に加えて反応させる方法が挙げられるが、(a)法がより好ましい。
反応系内の水分含有量は、原料として用いたセルロースに対し100質量%以下であることが好ましい。セルロースに対する水分含有量がこの範囲内であれば、カチオン化セルロースが過度に凝集することなく、流動性のある粉末状態で反応させることができる。この観点から、反応系内の水分含有量は80質量%以下が好ましく、5〜50質量%がより好ましい。
本発明においては、カチオン化セルロース、触媒及び酸化プロピレンを流動性のある粉末状態で反応させることが好ましいが、カチオン化セルロース粉末と触媒とを予めミキサー等の混合機や振とう機、又は混合ミル等で必要に応じて均一に混合分散させた後に、酸化プロピレンを添加して反応させることも可能である。
【0039】
ヒドロキシプロピル化の反応温度は、0〜150℃が好ましいが、酸化プロピレン同士が重合するのを避け、かつ急激に反応が起こるのを避ける観点から、10〜100℃がより好ましく、20〜80℃が更に好ましい。反応は常圧で行うことができる。
また、反応中のセルロース鎖の解裂による分子量の低下を避ける観点から、窒素等の不活性ガス雰囲気下で行うのが好ましい。
反応終了後は、未反応酸化プロピレンを除去した後、必要に応じて、中和処理、精製処理等を行った後、乾燥することにより、本発明で用いられるC−HPCを得ることができる。
中和処理は、常法により行うことができる。例えば触媒として塩基触媒を用いた場合は、酢酸等の液体酸、酸と不活性有機溶媒との混合溶液又は酸水溶液を添加することにより行うことができる。酸の種類は特に限定されず、装置の腐食等を考慮して適宜選択すればよい。精製処理は、含水イソプロパノール、含水アセトン溶媒等の溶剤及び/又は水による洗浄又は透析膜により行うことができる。
上記〔(1−1−i)結晶性を低下させたセルロース含有原料を使用するC−HPCの製造〕におけるカチオン化、ヒドロキシプロピル化の反応の順序は、セルロース含有原料中のセルロースのヒドロキシプロピル化を行った後にカチオン化を行ってもよいし、同時に行ってもよい。
カチオン化エチレンオキシ基及びプロピレンオキシ基の置換度の制御の観点から、原料セルロースにカチオン化を行った後、ヒドロキシプロピル化を行うことが好ましい。
また、カチオン化エチレンオキシ基の置換度を高める観点から、カチオン化反応、ヒドロキシプロピル化反応を行った後、更にカチオン化反応を行ってもよい。
上記〔(1−1−i)結晶性を低下させたセルロース含有原料を使用するC−HPCの製造〕におけるカチオン化反応工程及びヒドロキシプロピル化反応工程においては、主鎖となるセルロース骨格の解裂は実質上生じないため、得られるC−HPCの平均重合度は、低結晶化処理後の粉末セルロースの平均重合度で近似することもできる。
【0040】
〔(1−1−ii)結晶性の高いセルロース含有原料を使用するC−HPCの製造方法:a法〕
以下の記載において、上記(1−1−ii)のC−HPCの製造方法を「a法」ともいう。
≪結晶性の高いセルロース含有原料のカチオン化≫
セルロース含有原料として前述の結晶性を低下させたセルロース含有原料、例えば低結晶性粉末セルロースを使用せずに、結晶性の高いセルロース含有原料、例えば、パルプ(以下、セルロース含有原料とは、代表的にパルプを意味する)を使用する場合は、セルロース含有原料の反応性を改善するため、カチオン化の際に低結晶化を行うことが好ましい。
具体的には、セルロース含有原料にカチオン化剤を添加して粉砕機処理による低結晶化を行い、その後塩基を添加して粉砕機処理による低結晶化を行いながらセルロース含有原料とカチオン化剤の反応を行うこと、又はセルロース含有原料に塩基を添加して粉砕機処理による低結晶化を行い、その後カチオン化剤を添加して粉砕機処理による低結晶化を行いながらセルロース含有原料とカチオン化剤の反応を行うことで、カチオン化セルロースを得ることができる。また、高いカチオン化エチレンオキシ基の置換度を持つC−HPCを得る観点から、セルロース含有原料にカチオン化剤を添加して粉砕機処理を行い、その後、塩基を添加して粉砕機処理を行い、更にカチオン化剤を添加して粉砕機処理を行うことが好ましい。塩基を添加して後のカチオン化剤の添加は、多段階で行ってもよい。
このカチオン化を経て得られるC−HPCの水への溶解性の観点から、セルロースのカチオン化においては、初めにセルロース含有原料にカチオン化剤を添加して粉砕機処理による低結晶化を行い、その後塩基を添加して粉砕機処理による低結晶化を行いながらセルロース含有原料とカチオン化剤の反応を行うことが好ましい。
【0041】
原料セルロースとして用いるパルプの形状は、製造装置内への導入に支障が出ない限り特に限定されないが、操作上の観点からシート状パルプやシート状パルプを裁断又は粗粉砕して得られるペレット状又はチップ状パルプや、微粉砕して得られる粉末状セルロースを用いることが好ましい。
原料セルロースとして用いるパルプの結晶化度に限定はない。しかしながら、一般に、セルロースの結晶化度低下処理には、セルロース鎖の切断に伴う分子量の低下が伴うため、結晶化度が低い原料セルロースは分子量が低い。したがって、高分子量のC−HPCを得る観点から、結晶性が高いセルロースを用いることが好ましい。また、逆に前記計算式(1)による結晶化度が95%を超える極めて結晶化度の高いセルロースも入手が困難である。よって、原料セルロースの前記計算式(1)による結晶化度は10〜95%が好ましく、30〜90%がより好ましく、60〜80%が更に好ましい。
原料セルロースの平均重合度にも限定はないが、高分子量のC−HPCを得る観点から、より重合度の大きい原料セルロースを用いることが好ましい。この観点から原料セルロースの平均重合度は、50〜5000が好ましく、100〜2000がより好ましい。
【0042】
カチオン化剤の種類並びに量、塩基の種類、粉砕機の種類、低結晶化の方法並びに条件等の好ましい様態は、低結晶化のための粉砕機の処理時間及び塩基の量を除き、上記〔(1−1−i)結晶性を低下させたセルロース含有原料を使用するC−HPCの製造〕の項で記載のものと同様である。
低結晶化のための粉砕機の処理時間は、セルロースの結晶化度を効率的に低減し、かつ重合度の低下を抑制する観点から、1分〜5時間が好ましく、2分〜3時間がより好ましく、5分〜2時間が更に好ましい。
塩基の量は、セルロースとカチオン化剤を効率的に反応させる観点から、原料セルロースのアンヒドログルコース単位1モルに対して、0.05〜1.5倍モルが好ましく、0.07〜1.0倍モルがより好ましく、0.1〜0.6倍モルが更に好ましい。
カチオン化剤及び塩基添加後の低結晶化の際にカチオン化は進行するが、反応の進行が不十分である場合、好ましくは10〜100℃、より好ましくは30〜80℃で熟成を行うことにより、反応を進行させることができる。
カチオン化反応の進行が十分である場合であっても、更にカチオン化剤であるグリシジルトリアルキルアンモニウム塩を加えて、上記熟成を行うことにより、カチオン化エチレンオキシ基の置換度が高いカチオン化セルロースを得ることができる。
熟成時の水分量、及びその好ましい様態は、原料として低結晶性粉末セルロースの替わりに結晶化度の高いセルロース含有原料を用いている点を除き、前述の低結晶性粉末セルロースのカチオン化の場合と同様である。
また、反応中のセルロース鎖の解裂による分子量の低下を避ける観点から、窒素等の不活性ガス雰囲気下で行うのが好ましい。
【0043】
≪カチオン化セルロースのヒドロキシプロピル化≫
〔1−1−ii)結晶性の高いセルロース含有原料を使用するC−HPCの製造:a法〕におけるカチオン化セルロースのヒドロキシプロピル化で使用する酸化プロピレン量、触媒、反応条件、反応終了後の処理及びそれらの好ましい様態は、上記〔(1−1−i)結晶性を低下させたセルロース含有原料を使用するC−HPCの製造〕におけるヒドロキシプロピル化に記載のものと同様である。
上記〔(1−1−ii)結晶性の高いセルロース含有原料を使用するC−HPCの製造:a法〕におけるカチオン化、ヒドロキシプロピル化の反応の順序は、セルロース含有原料のヒドロキシプロピル化を行った後にカチオン化を行ってもよいし、同時に行ってもよいが、カチオン化エチレンオキシ基及びプロピレンオキシ基の置換度の制御の観点から、セルロース含有原料にカチオン化を行った後、ヒドロキシプロピル化を行うことが好ましい。
また、カチオン化エチレンオキシ基の置換度を高める観点から、カチオン化反応、ヒドロキシプロピル化反応を行った後、更にカチオン化反応を行ってもよい。
【0044】
<(1−2)セルロース含有原料のアルカリセルロース化を行った後、カチオン化、ヒドロキシプロピル化を行う方法>
〔セルロース含有原料〕
C−HPCを製造するためのセルロース含有原料は、〔(1−1)セルロース含有原料のカチオン化、ヒドロキシプロピル化を行う方法〕と同様に、(i)結晶性を低下させたセルロース含有原料や、(ii)結晶性の高いセルロース含有原料が好適に用いられる。
【0045】
〔(1−2−i)結晶性を低下させたセルロース含有原料を使用するC−HPCの製造方法:b法〕
以下の記載において、上記(1−2−i)のC−HPCの製造方法を「b法」ともいう。
≪結晶性を低下させたセルロース含有原料の製造≫
結晶性を低下させたセルロース含有原料については、〔(1−1−i)結晶性を低下させたセルロース含有原料を使用するC−HPCの製造〕に記載したものと同様である。
結晶性を低下させたセルロース含有原料の生産性を向上させる観点から、結晶性の高いセルロース含有原料、例えば、ウッドパルプを粉砕処理して得られるものが好ましい。
また、結晶性を低下させたセルロース含有原料の結晶化度は、後述するアルカリセルロースとカチオン化剤及び酸化プロピレンとの反応性を高める観点、及びセルロース含有原料の重合度を高める観点から、10〜50%が好ましく、10〜40%がより好ましく、10〜30%が更に好ましい。
【0046】
≪結晶性を低下させたセルロース含有原料のアルカリセルロース化≫
結晶性を低下させたセルロース含有原料、塩基及び水を混合することにより、アルカリセルロースを得ることができる。
塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属水酸化物、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属水酸化物、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン等の3級アミン類等が挙げられる。これらの中ではアルカリ金属水酸化物、又はアルカリ土類金属水酸化物が好ましく、アルカリ金属水酸化物がより好ましく、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが更に好ましい。これらの塩基は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
塩基の量は、アルカリセルロースの収率を向上させる観点、及び後述するアルカリセルロースとカチオン化剤及び酸化プロピレンとの生産性を高める観点から、セルロース含有原料中のセルロースを構成するAGU1モルに対して、0.6〜1.5倍モルが好ましく、0.7〜1.3倍モルがより好ましく、0.8〜1.2倍モルが更に好ましい。
水の添加量は、アルカリセルロースの収率を向上させる観点、及び後述するアルカリセルロースとカチオン化剤及び酸化プロピレンとの生産性を高める観点から、セルロース含有原料中のセルロースに対して、20〜100質量%以上が好ましく、25〜70質量%がより好ましく、30〜60質量%が更に好ましい。
【0047】
結晶性を低下させたセルロース含有原料、塩基、及び水の混合方法は、特に限定はないが、生産性を向上させる観点から、結晶性を低下させたセルロース含有原料に塩基及び水を添加することが好ましい。添加する方法としては、一括添加でも、分割添加でもよい。また、予め塩基と水を混合したものを噴霧して添加してもよい。
混合を行う装置としては、塩基をセルロース含有原料中に分散可能な装置であれば特に限定はない。例えば、リボン型混合機、パドル型混合機、円錐遊星スクリュー型混合機、ニーダー等の混合機が挙げられる。これらの中では、水平軸型パドル型混合機がより好ましく、具体的には、チョッパー翼を有する水平軸型のパドル型混合機であるレディゲミキサーが好ましい。
結晶性を低下させたセルロース含有原料、塩基、及び水を混合した後、アルカリセルロースの生成速度を向上させる観点から、熟成することが好ましい。熟成温度は、35〜90℃が好ましく、38〜80℃がより好ましく、40〜70℃が更に好ましい。また、熟成時間は、0.1〜24時間が好ましく、0.5〜12時間がより好ましく、1〜6時間が更に好ましい。
セルロース含有原料からアルカリセルロースへの変化は、X線結晶回折測定により確認することができる。
【0048】
≪アルカリセルロースのヒドロキシプロピル化≫
アルカリセルロースのヒドロキシプロピル化における酸化プロピレン量、触媒種、触媒量、反応条件の好ましい態様は、上記〔(1−1−i)結晶性を低下させたセルロース含有原料を使用するC−HPCの製造〕における≪カチオン化セルロースのヒドロキシプロピル化≫に記載のものと同様である。
【0049】
≪ヒドロキシプロピルセルロースのカチオン化≫
上記のようにして得られたヒドロキシプロピルセルロースに、触媒存在下、カチオン化剤を反応させてカチオン化する。
カチオン化剤としては、グリシジルトリメチルアンモニウムクロリド、グリシジルトリエチルアンモニウムクロリド、グリシジルトリメチルアンモニウムブロミド、グリシジルトリエチルアンモニウムブロミド、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリド等のグリシジルトリアルキルアンモニウム塩が挙げられ、入手性の観点及び製造の容易さの観点から、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドが好ましい。
カチオン化剤の添加量は、皮膚洗浄剤組成物による乾燥後の肌に油剤を効率的に残留させ、保湿感を付与する観点から、セルロースのアンヒドログルコース単位1モルに対して、0.01〜10.0倍モルが好ましく、0.05〜8.0倍モルがより好ましく、0.08〜7.0倍モルが更に好ましく、0.1〜6.0倍モルがより更に好ましい。
ヒドロキシプロピルセルロースのカチオン化における、触媒種、触媒量及び反応条件の好ましい態様は、上記〔(1−1−i)結晶性を低下させたセルロース含有原料を使用するC−HPCの製造〕における≪結晶性を低下させたセルロース含有原料のカチオン化≫に記載のものと同様である。
【0050】
〔(1−2−ii)結晶性の高いセルロース含有原料を使用するC−HPCの製造方法:c法〕
以下の記載において、上記(1−2−ii)のC−HPCの製造方法を「c法」ともいう。
≪セルロース含有原料のアルカリセルロース化≫
セルロース含有原料を塩基と共に、実質的に水が存在しない条件下で粉砕処理して、セルロース・塩基混合粉砕物を得た後、水を混合することにより、アルカリセルロースを得ることができる。
セルロース含有原料の種類、形状、結晶化度、平均重合度の好ましい態様は、前述したa法における≪結晶性の高いセルロース含有原料のカチオン化≫に記載のものと同様である。
また、塩基の種類、塩基の量の好ましい態様は、前述したb法における≪結晶性を低下させたセルロース含有原料のアルカリセルロース化≫に記載のものと同様である。
塩基は、粉砕時の水分量を低減する観点から、水分を含有しない状態で混合することが好ましい。
粉砕機処理は、実質的に水が存在しない条件下で行うことが好ましい。すなわち、粉砕効率や水分除去の簡便性等の生産性を向上させる観点から、セルロース含有原料に対する水分量が10質量%以下が好ましく、0.01〜8質量%がより好ましく、0.1〜6質量%が更に好ましく、1〜5質量%がより更に好ましい。
【0051】
粉砕機の種類、及び粉砕条件の好ましい態様は、上記〔(1−1−i)結晶性を低下させたセルロース含有原料を使用するC−HPCの製造〕における≪結晶性を低下させたセルロース含有原料の製造≫に記載のものと同様である。
アルカリセルロースの生成速度を向上させる観点、アルカリセルロースの収率を向上させる観点、及びセルロースの平均重合度の低下を抑制する観点から、セルロース・塩基混合粉砕物中のセルロースの平均粒径が10〜150μmになるまで粉砕することが好ましく、20〜130μmがより好ましく、40〜100μmが更に好ましく、50〜80μmがより更に好ましい。セルロース・塩基混合粉砕物中のセルロースの平均粒径は、実施例に記載の方法により測定される。
アルカリセルロースの収率を向上させる観点、及び後述するアルカリセルロースとカチオン化剤及び酸化プロピレンとの生産性を高める観点から、セルロース・塩基混合粉砕物の水分量が、セルロース含有原料中のセルロースに対して30〜100質量%になるように、水をセルロース・塩基混合粉砕物に混合することが好ましく、35〜70質量%がより好ましく、40〜60質量%が更に好ましい。
【0052】
≪アルカリセルロースのヒドロキシプロピル化≫
アルカリセルロースのヒドロキシプロピル化における酸化プロピレン量、触媒種、触媒量、反応条件の好ましい態様は、上記〔(1−1−i)結晶性を低下させたセルロース含有原料を使用するC−HPCの製造〕における≪カチオン化セルロースのヒドロキシプロピル化≫に記載のものと同様である。
≪ヒドロキシプロピルセルロースのカチオン化≫
ヒドロキシプロピルセルロースのカチオン化におけるカチオン化剤種、カチオン化剤量、触媒種、触媒量及び反応条件の好ましい態様は、上記〔(1−2−i)結晶性を低下させたセルロース含有原料を使用するC−HPCの製造〕における≪結晶性を低下させたセルロース含有原料のカチオン化≫に記載のものと同様である。
【0053】
上記b法、c法におけるヒドロキシプロピル化、カチオン化の反応順序は、逆でもよいが、カチオン化エチレンオキシ基の置換度を高める観点から、ヒドロキシプロピル化反応、カチオン化反応の順に行うことが好ましい。
【0054】
本発明で用いるC−HPCの製造方法としては、本発明の皮膚洗浄剤組成物による洗浄時の起泡性、及び乾燥後の肌に保湿感を付与する観点から、前記(1−1)の方法において、[(1−1−ii)結晶性の高いセルロース含有原料を使用するC−HPCの製造]に記載の方法(下記a法)、及び(1−2)に記載の方法(下記b法及びc法)が好ましい。
具体的には、C−HPCは、洗浄した後の洗浄時の起泡性、及び乾燥後の肌に保湿感を付与する観点から、下記工程(a−1)〜(a−3)を有する方法によって得られるもの、下記工程(a−4)及び(a−5)を有する方法によって得られるもの、下記工程(b−1)〜(b−4)を有する方法によって得られるもの、又は下記工程(c−1)〜(c−4)を有する方法によって得られるものが好ましく、下記a法:工程(a−1)〜(a−3)を有する方法によって得られるもの、下記b法:工程(b−1)〜(b−4)を有する方法によって得られるもの、又は下記c法:工程(c−1)〜(c−4)を有する方法によって得られるものがより好ましい。
【0055】
a法:
工程(a−1):セルロース含有原料にカチオン化剤を添加して粉砕機処理を行う工程
工程(a−2):工程(a−1)で得られた粉砕機処理物に塩基を添加して粉砕機処理を行いながらセルロース含有原料とカチオン化剤の反応を行ってカチオン化セルロースを得る工程
工程(a−3):工程(a−2)で得られたカチオン化セルロースと酸化プロピレンとを反応させてカチオン化ヒドロキシプロピルセルロース(A)を得る工程
工程(a−4):セルロース含有原料に塩基を添加して粉砕機処理による低結晶化を行い、その後カチオン化剤を添加して粉砕機処理による低結晶化を行いながらセルロース含有原料とカチオン化剤の反応を行ってカチオン化セルロースを得る工程
工程(a−5):工程(a−4)で得られたカチオン化セルロースと酸化プロピレンとを反応させてカチオン化ヒドロキシプロピルセルロース(A)を得る工程
【0056】
b法:
工程(b−1):セルロース含有原料を粉砕処理して、結晶化度が10〜50%であるセルロースを含有するセルロース含有原料を得る工程
工程(b−2):工程(b−1)で得られたセルロース含有原料に対して、該セルロースを構成するAGU1モルあたり0.6〜1.5倍モルの塩基、及び該セルロース含有原料中のセルロースに対して20〜100質量%の水を添加してアルカリセルロースを得る工程
工程(b−3):工程(b−2)で得られたアルカリセルロースと酸化プロピレンとを反応させてヒドロキシプロピルセルロースを得る工程
工程(b−4):工程(b−3)で得られたヒドロキシプロピルセルロースとカチオン化剤とを反応させてカチオン化ヒドロキシプロピルセルロース(A)を得る工程
【0057】
c法:
工程(c−1):セルロース含有原料及びセルロース含有原料中のセルロースを構成するAGU1モルに対して0.6〜1.5倍モルの塩基との混合物を、該セルロース含有原料中のセルロースに対する水分量が10重量%以下の条件下で粉砕機処理し、セルロースの平均粒径が10〜150μmであるセルロース・塩基混合粉砕物を得る工程
工程(c−2):工程(c−1)で得られたセルロース・塩基混合粉砕物に水を添加し、該セルロース・塩基混合粉砕物中の水分量を、工程(c−1)で用いたセルロース含有原料中のセルロースに対して30〜100質量%に調整して、アルカリセルロースを得る工程
工程(c−3):工程(c−2)で得られたアルカリセルロースと酸化プロピレンとを反応させてヒドロキシプロピルセルロースを得る工程
工程(c−4):工程(c−3)で得られたヒドロキシプロピルセルロースとカチオン化剤とを反応させてカチオン化ヒドロキシプロピルセルロース(A)を得る工程
【0058】
(陰イオン界面活性剤(B))
本発明の皮膚洗浄剤組成物は、陰イオン性界面活性剤(B)を含有する。陰イオン性界面活性剤の具体例としては、硫酸エステル塩、スルホン酸塩、カルボン酸塩、リン酸エステル塩及びアミノ酸塩のものが好ましい。
具体的には、アルキル硫酸塩、アルケニル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩等の硫酸エステル塩;スルホコハク酸アルキルエステル塩、ポリオキシアルキレンスルホコハク酸アルキルエステル塩、アルカンスルホン酸、アシルイセチオン酸塩、アシルメチルタウレート等のスルホン酸塩;高級脂肪酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸塩等のカルボン酸塩;アルキルリン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸塩等のリン酸エステル塩;アシルグルタミン酸塩、グリシン誘導体、アラニン誘導体、アルギニン誘導体等のアミノ酸塩等が挙げられる。
【0059】
これらの中では、本発明の皮膚洗浄剤組成物の洗浄性、及び洗浄時の泡量、泡質及び洗浄時の起泡性の観点から、ラウリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ラウリン酸カリウム等の高級脂肪酸塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテルスルホコハク酸ナトリウム等のスルホコハク酸アルキルエステル塩、N−アシル−L−グルタミン酸ナトリウム等のアシルグルタミン酸塩、アシルサルコシン塩、アシルグリシン塩、アシルイセチオン酸塩、アシルメチルタウレート、アルキルリン酸塩が好ましく、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン(1)ラウリルエーテル硫酸アンモニウム(ラウレス−1硫酸アンモニウム)、ポリオキシエチレン(2)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム(ラウレス−2硫酸ナトリウム)、ポリオキシエチレン(3.0)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ラウリン酸カリウム、ポリオキシエチレン(2.5)ラウリルエーテル酢酸ナトリウム、ポリオキシエチレン(4.5)ラウリルエーテル酢酸ナトリウム(ラウレス−4.5酢酸ナトリウム)、ポリオキシエチレン(10)ラウリルエーテル酢酸ナトリウム、ポリオキシエチレン(2.0)オレイルエーテル酢酸ナトリウム、ポリオキシエチレン(5.0)オレイルエーテル酢酸ナトリウム、ポリオキシエチレン(9.0)オレイルエーテル酢酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(2)スルホコハク酸ナトリウム(ラウレス−2スルホコハク酸ナトリウム)、ココイルグルタミン酸ナトリウムがより好ましい。
これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0060】
(油剤(C))
本発明の皮膚洗浄剤組成物は、油剤(C)を含有する。油剤(C)は、通常、医薬品、医薬部外品、化粧料、トイレタリー、雑貨等で用いられる油性成分であって、20℃における水100gに対する溶解量が0〜1gである難水溶性又は非水溶性の油剤であれば、いずれも用いることができる。本発明の皮膚洗浄剤組成物における油剤(C)は、洗浄乾燥後の肌に保湿感を付与することができる。
油剤(C)の具体例としては、20℃における水100gに対する溶解量が0〜1gである(i)エステル油、(ii)エーテル油、(iii)炭化水素油、(iv)高級アルコール、(v)シリコーン油等が挙げられる。これらのうち、洗浄時の起泡性、及び乾燥後の肌に保湿感を付与する観点から、(i)エステル油が好ましく、皮膚刺激性を低減する観点から、植物性エステル油がより好ましい。
【0061】
(i)エステル油としては、洗浄時の起泡性、及び乾燥後の肌に保湿感を付与する観点から、下記一般式(4)又は(5)で表されるエステル油、及びジペンタエリスリトールの疎水性カルボン酸エステルが好ましい。
R
7−COO−R
8 (4)
(式中、R
7は炭素数8〜22の直鎖又は分岐鎖のアルキル基である。R
8は炭素数1〜22の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を示す。)
一般式(4)において、洗浄時の起泡性、及び乾燥後の肌に保湿感を付与する観点から、R
7の炭素数は10〜20が好ましく、12〜18がより好ましい。同様の観点から、R
8は炭素数1〜20が好ましく、1〜18がより好ましい。R
8は、プロピレンオキシ基、又はフェニル基で分断されていてもよい炭素数1〜18の直鎖又は分岐のアルキル基又はアルケニル基が更に好ましい。
【0063】
(式中、R
9、R
10及びR
11は、それぞれ独立に水素原子、又は一般式(6)で示される基であって、全てが水素原子であることはない。)
【0065】
(式中、R
12は、カルボン酸エステル基で分断されていてもよく、水酸基が置換していてもよい炭素数8〜22の直鎖又は分岐のアルキル基又はアルケニル基である。)
一般式(6)において、洗浄時の起泡性、及び乾燥後の肌に保湿感を付与する観点から、R
12の炭素数は8〜20が好ましく、8〜18がより好ましい。
一般式(4)又は(5)で表されるエステル油の具体例としては、ヒマシ油、カカオ油、ミンク油、アボカド油、オリーブ油、ヒマワリ油、ツバキ油、キョウニン油、アーモンド油、コムギ胚芽油、テオブロマグンジフロルム種子油、ブドウ種子油、ババス油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、ユチャ油、シア脂油、トウツバキ種子油、メドウフォーム油、ミツロウ等の植物性エステル油、ラノリン、還元ラノリン、ラノリン脂肪酸オクチルドデシル、エイコセン酸カプリリル、ダイマー酸ジイソプロピル、2−エチルヘキサン酸ミリスチル、2−エチルヘキサン酸セチル、2−エチルヘキサン酸ステアリル、オクタン酸オクチル、オクタン酸ラウリル、オクタン酸ミリスチル、オクタン酸イソセチル、プロピルへプチル酸オクチル、イソノナン酸セトステアリル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、ラウリン酸メチル、ラウリン酸ヘキシル、ラウリン酸オクチル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸2−エチルヘキシル、パルミチン酸オクチル、パルミチン酸セチル、オレイン酸メチル、オレイン酸オレイル、オレイン酸デシル、オレイン酸イソブチル、ステアリン酸メチル、ステアリン酸2−エチルヘキシル、ステアリン酸オクチル、ステアリン酸イソセチル、ステアリン酸ステアリル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸イソトリデシル、イソステアリン酸イソプロピル、イソステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソステアリル、イソステアリン酸プロピレングリコール、ヒドロキシステアリン酸2−エチルヘキシル、エルカ酸オレイル、プロパンジオールジカプリン酸エステル、アジピン酸ジイソプロピル、コハク酸ジエトキシエチル、コハク酸2−エチルヘキシル、ポリダイズ脂肪酸スクロース、ポリベヘン酸スクロース、テトライソステアリン酸スクロース、トリベヘン酸グリセリル、ヒドロキシアルキル(C16−18)ヒドロキシダイマージリノレイルエーテル、トリイソステアリン、テトラステアリン酸ペンタエリスチル等が挙げられる。
これらの中では、本発明の皮膚洗浄剤組成物による洗浄時の起泡性、及び、乾燥後の肌に保湿感を付与する観点から、ヒマワリ油、アボカド油、ツバキ油、マカデミアナッツ油、シア脂油、ラウリン酸オクチル、ミリスチン酸オクチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ミリスチル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸2−エチルヘキシル、パルミチン酸オクチル、パルミチン酸セチル、ステアリン酸メチル、ステアリン酸2−エチルヘキシル、ステアリン酸オクチル、ステアリン酸イソセチル、ステアリン酸ステアリル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸イソトリデシルが好ましく、ヒマワリ油、アボカド油、ツバキ油、マカデミアナッツ油、シア脂油、ラウリン酸オクチル、ミリスチン酸オクチル、ミリスチン酸ミリスチル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸オクチル、パルミチン酸セチル、ステアリン酸オクチル、ステアリン酸イソセチル、ステアリン酸ステアリル、ステアリン酸イソステアリル、イソステアリン酸イソステアリルから選ばれる1種以上がより好ましく、ヒマワリ油、アボカド油、ツバキ油、マカデミアナッツ油及びシア脂油から選ばれる1種以上が更に好ましい。
【0066】
(ii)エーテル油の具体例としては、プロピレンオキシ基の平均付加モル数が、3〜15であるポリオキシプロピレンヘキシルエーテル、ポリオキシプロピレンオクチルエーテル、ポリオキシプロピレン2−エチルヘキシルエーテル、ポリオキシプロピレンデシルエーテル、ポリオキシプロピレンイソデシルエーテル、ポリオキシプロピレンラウリルエーテル、ポリオキシプロピレンミリスチルエーテル、ポリオキシプロピレンパルミチルエーテル、ポリオキシプロピレンセチルエーテル、ポリオキシプロピレンステアリルエーテル、ポリオキシプロピレンイソステアリルエーテル、ポリオキシプロピレンオクチルデシルエーテル、ポリオキシプロピレンイコシルエーテル、ポリオキシプロピレンベヘニルエーテル等が挙げられる。
【0067】
(iii)炭化水素油の具体例としては、スクワレン、スクワラン、流動パラフィン、流動イソパラフィン、重質流動イソパラフィン、α―オレフィンオリゴマー、シクロパラフィン、ポリブテン、ワセリン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、セレシンが挙げられ、乾燥後の肌に保湿感を付与する観点から、スクワラン、スクワレン、流動パラフィン、パラフィンワックスが好ましく、スクワラン、流動パラフィンから選ばれる1種以上が更に好ましい。
【0068】
(iv)高級アルコールの具体例としては、ヘキシルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、オクチルアルコール、デシルアルコール、イソデシルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、パルミチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、2−オクチルドデカノール、イコシルアルコール、ベヘニルアルコールが挙げられる。
【0069】
(v)シリコーン油の具体例としては、塗布時の感触の点から、ジメチルポリシロキサン、ジメチコノール、及びアミノ変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、グリセリル変性シリコーン、アミノ誘導体シリコーン、シリコーンワックス、シリコーンエラストマーから選ばれる1種以上が好ましい。
これらの油剤(C)は、単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0070】
[皮膚洗浄剤組成物]
本発明の皮膚洗浄剤組成物は、カチオン化ヒドロキシプロピルセルロース(A)、陰イオン界面活性剤(B)、及び油剤(C)を含有し、油剤(C)の含有量が1〜40質量%である。また、本発明の皮膚洗浄剤組成物中における、C−HPC(A)に対する油剤(C)の質量比〔油剤(C)/C−HPC(A)〕は、洗浄時の起泡性と乾燥後の保湿感の向上の観点から、1〜400であり、5〜200が好ましく、10〜100がより好ましく、15〜50が更に好ましい。
【0071】
本発明の皮膚洗浄剤組成物中におけるC−HPC(A)の含有量は、洗浄時の起泡性、及び乾燥後の肌に油剤を効率的に残留させ保湿感を付与する観点から、皮膚洗浄剤組成物中0.01〜5.0質量%が好ましく、0.02〜4.0質量%がより好ましく、0.05〜3.0質量%がより好ましく、0.08〜2.0質量%が更に好ましく、0.1〜1.0質量%がより更に好ましい。
【0072】
本発明の皮膚洗浄剤組成物中における陰イオン界面活性剤(B)の含有量は、洗浄力及び洗浄時の起泡性を向上し、乾燥後の保湿感を付与する観点から、1〜30質量%が好ましく、より好ましくは2〜25質量%、更に好ましくは5〜20質量%、より更に好ましくは7〜15質量%である。
【0073】
本発明の皮膚洗浄剤組成物中における油剤(C)の含有量は、乾燥後の保湿感を付与する観点から、1〜40質量%であり、好ましくは3〜38質量%、より好ましくは5〜35質量%、更に好ましくは10〜30質量%である。
【0074】
本発明の皮膚洗浄剤組成物中における、C−HPC(A)に対する陰イオン界面活性剤(B)の質量比〔陰イオン界面活性剤(B)/C−HPC(A)〕は、洗浄時の起泡性と乾燥後の保湿感を付与する観点から、1〜300が好ましく、5〜250がより好ましく、5〜100が更に好ましく、10〜50がより更に好ましい。
【0075】
本発明の皮膚洗浄剤組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、通常の皮膚洗浄剤に用いられる他の成分を目的に応じて適宜含有することができる。このような任意成分としては、従来公知の感触向上剤、増粘剤、陰イオン界面活性剤(B)以外の界面活性剤、油剤、ビタミン類、殺菌剤、抗炎症剤、香料、紫外線吸収剤、可視光吸収剤、キレート剤、酸化防止剤、着色剤、防腐剤、pH調整剤、粘度調整剤、パール光沢剤、湿潤剤等が挙げられる。他の成分の配合量としては、0.01〜35質量%が好ましく、より好ましくは0.05〜30質量%、更に好ましくは0.1〜25質量%である。
【0076】
本発明の皮膚洗浄剤組成物の剤型は特に制限されず、液体状、泡状、ペースト状、クリーム状、固形状、粉末状等、任意の剤型とすることができるが、使用時の利便性の観点から、液体状、ペースト状又はクリーム状とすることが好ましく、液体状とすることがより好ましい。
【0077】
液体状とする場合には、液体媒体として水、ポリエチレングリコール、エタノール等を用いるのが好ましく、水を配合する場合、配合量は、全組成物中10〜99質量%が好ましく、15〜90質量%がより好ましく、20〜80質量%が更に好ましく、30〜70質量%がより更に好ましい。
【0078】
本発明の皮膚洗浄剤組成物は、pH3〜11、更にpH4〜10、特にpH4.5〜7であるのが、皮膚への刺激が少なく、優れた洗浄力が損なわれることなく、洗浄時の起泡性に優れるので好ましい。本発明において、pHは、皮膚洗浄剤組成物をイオン交換水で20倍に希釈して5質量%水溶液を得た後、25℃でpHメーター(株式会社堀場製作所製、型番F−22)を用いて測定される。
【0079】
[皮膚洗浄剤組成物の製造方法]
本発明の皮膚洗浄剤組成物は、洗浄時の起泡性と乾燥後の保湿感の向上の観点から、下記工程(I)〜工程(III)を有する製造方法によって製造されることが好ましい。したがって、本発明によれば、下記工程(I)〜工程(III)を有する、前記皮膚洗浄剤組成物の製造方法(以下、「本発明の製造方法」ともいう。)が提供される。
工程(I):カチオン化ヒドロキシプロピルセルロース(A)と陰イオン界面活性剤(B)とを混合し、混合物を得る工程
工程(II):工程(I)により得られた混合物と油剤(C)とを混合し、エマルションを得る工程
工程(III):工程(II)により得られたエマルションと、界面活性剤及び水とを混合し、皮膚洗浄剤組成物を得る工程
【0080】
(工程(I))
工程(I)は、カチオン化ヒドロキシプロピルセルロース(A)と陰イオン界面活性剤(B)とを混合し、混合物を得る工程である。この工程(I)により、カチオン化ヒドロキシプロピルセルロース(A)と陰イオン界面活性剤(B)のコンプレックスが効率よく形成されると考えられる。
工程(I)において、C−HPC(A)と陰イオン界面活性剤(B)との混合方法に特に制限はないが、C−HPC(A)の水溶液を調製した後に、陰イオン界面活性剤(B)と混合するのが好ましい。C−HPC(A)と陰イオン界面活性剤(B)のコンプレックスが効率よく形成される観点から、上記C−HPC水溶液の濃度は、0.01〜20.0質量%が好ましく、0.1〜15.0質量%がより好ましく、1.0〜10.0質量%が更に好ましい。
工程(I)における、混合物中のC−HPC(A)の含有量は、洗浄時の起泡性、及び乾燥後の肌に油剤を効率的に残留させ保湿感を付与する観点から、0.01〜10.0質量%が好ましく、0.05〜5.0質量%がより好ましい。上記と同様の観点から、混合物中の陰イオン界面活性剤(B)の含有量は、0.01〜20.0質量%が好ましく、0.05〜10.0質量%がより好ましい。
また、工程(I)における、C−HPC(A)に対する陰イオン界面活性剤(B)の質量比[陰イオン界面活性剤(B)/C−HPC(A)]は、上記と同様の観点から、0.01〜1.0が好ましく、0.03〜1.0がより好ましく、0.05〜0.5が更に好ましい。
C−HPC(A)と陰イオン界面活性剤(B)の混合時の温度は、均一なコンプレックスを得ることができる観点から、10〜50℃が好ましく、15〜40℃がより好ましく、20〜30℃が更に好ましい。また、C−HPC(A)及び陰イオン界面活性剤(B)を混合するときの撹拌速度は、同様の観点から、50〜1000rpmが好ましく、100〜800rpmがより好ましく、150〜600rpmが更に好ましく、200〜400rpmが更に好ましい。
工程(I)における混合時間は、好ましくは1〜60分間、より好ましくは5〜30分間である。
【0081】
(工程(II))
工程(II)は、工程(I)により得られた混合物と油剤(C)とを混合してエマルションを得る工程である。この工程(II)により、エマルションが効率よく形成されると考えられる。
前記エマルション中の油剤(C)の含有量は、洗浄時の起泡性、及び乾燥後の肌に油剤を効率的に残留させ保湿感を付与させる観点から、好ましくは5〜99質量%、より好ましくは20〜97質量%、更に好ましくは30〜95質量%である。
前記エマルション中における、C−HPC(A)に対する油剤(C)の質量比〔油剤(C)/C−HPC(A)〕は、洗浄時の起泡性と乾燥後の保湿感の向上の観点から、1〜400が好ましく、5〜200がより好ましく、10〜100が更に好ましく、15〜50がより更に好ましい。
前記混合物と油剤(C)との混合は、均一なエマルションを得る観点から、前記混合物に対して油剤(C)を少量ずつ添加することが好ましい。混合時の温度は、上記と同様の観点から、10〜50℃が好ましく、15〜40℃がより好ましく、20〜30℃が更に好ましい。また、混合時の撹拌速度は、上記と同様の観点から、50〜3000rpmが好ましく、100〜1000rpmがより好ましく、150〜600rpmが更に好ましく、200〜400rpmがより更に好ましい。また、混合時の周速度は、同様の観点から、0.1〜8m/sが好ましく、0.3〜3m/sがより好ましく、0.4〜2m/sが更に好ましい。
工程(II)における混合時間は、好ましくは1〜60分間、より好ましくは5〜30分間である。
【0082】
(工程(III))
工程(III)は、工程(II)により得られたエマルションと、界面活性剤及び水とを混合し、皮膚洗浄剤組成物を得る工程である。この工程(III)により、油剤(C)を皮膚に効率的に残留させ、乾燥後の肌に保湿感を付与することができる皮膚洗浄剤組成物を製造できると考えられる。
工程(III)において使用される界面活性剤には、従来公知の界面活性剤が使用できるが、洗浄力の向上、洗浄時の起泡性、及び乾燥後の肌に油剤を効率的に残留させ保湿感を付与する観点から、前述の陰イオン界面活性剤(B)であることが好ましい。
工程(III)では、前記エマルションと、界面活性剤及び水とを混合する。さらに、前述した従来公知の添加剤を混合してもよい。前記エマルションと界面活性剤、水、及び添加剤との混合の順序は、特に制限されない。
混合時の温度は、効率的に混合する観点から、10〜90℃が好ましく、15〜60℃がより好ましく、20〜50℃が更に好ましいが、前記エマルションを添加した後は、エマルションの崩壊を防ぐ観点から、加熱しないことが好ましく、具体的には10〜40℃、より好ましくは20〜30℃の範囲で混合することが好ましい。混合時の撹拌速度は、同様の観点から、50〜2000rpmが好ましく、60〜1000rpmがより好ましく、80〜500rpmが更に好ましく、100〜200rpmが更に好ましい。また、混合時の周速度は、同様の観点から、0.1〜5m/sが好ましく、0.2〜3m/sがより好ましく、0.2〜2m/sが更に好ましい。
工程(III)における混合時間は、好ましくは1〜60分間、より好ましくは5〜40分間である。
以上の工程(I)〜工程(III)を有する製造方法により、本発明の皮膚洗浄剤組成物を効率よく製造することができる。
【0083】
上述した実施形態に関し、本発明は以下の皮膚洗浄剤組成物及びその製造方法を開示する。
[1]カチオン化ヒドロキシプロピルセルロース(A)、陰イオン界面活性剤(B)、及び油剤(C)を含有し、油剤(C)の含有量が1〜40質量%、好ましくは3〜38質量%、より好ましくは5〜35質量%、更に好ましくは10〜30質量%であり、カチオン化ヒドロキシプロピルセルロース(A)に対する油剤(C)の質量比〔油剤(C)/カチオン化ヒドロキシプロピルセルロース(A)〕が1〜400であり、好ましくは5〜200、より好ましくは10〜100、更に好ましくは15〜50である、皮膚洗浄剤組成物。
[2]前記カチオン化ヒドロキシプロピルセルロース(A)が、前記一般式(1)で表されるアンヒドログルコース由来の主鎖を有し、かつカチオン化エチレンオキシ基の置換度が0.01〜3.0、好ましくは0.05〜2.0、より好ましくは0.1〜1.0であり、プロピレンオキシ基の置換度が0.01〜2.9、好ましくは0.05〜2.5、より好ましくは0.1〜2.0である、前記[1]記載の皮膚洗浄剤組成物。
[3]前記一般式(1)における平均重合度nが、20〜5000、好ましくは50〜3000、より好ましくは100〜2000である、前記[1]又は[2]に記載の皮膚洗浄剤組成物。
[4]カチオン化ヒドロキシプロピルセルロース(A)の含有量が0.01〜5.0質量%、好ましくは0.02〜4.0質量%、より好ましくは0.05〜3.0質量%、更に好ましくは0.08〜2.0質量%、更に好ましくは0.1〜1.0質量%である、前記[1]〜[3]のいずれかに記載の皮膚洗浄剤組成物。
[5]カチオン化ヒドロキシプロピルセルロース(A)に対する陰イオン性界面活性剤(B)の質量比〔陰イオン性界面活性剤(B)/カチオン化ヒドロキシプロピルセルロース(A)〕が1〜300、好ましくは5〜250、より好ましくは5〜100、更に好ましくは10〜50である、前記[1]〜[4]のいずれか1項に記載の皮膚洗浄剤組成物。
[6]下記工程(I)〜工程(III)を有する製造方法によって得られるものである、前記[1]〜[5]のいずれか1項に記載の皮膚洗浄剤組成物。
工程(I):カチオン化ヒドロキシプロピルセルロース(A)と陰イオン界面活性剤(B)とを混合し、混合物を得る工程
工程(II):工程(I)により得られた混合物と油剤(C)とを混合し、エマルションを得る工程
工程(III):工程(II)により得られたエマルションと、界面活性剤及び水とを混合し、皮膚洗浄剤組成物を得る工程
[7]陰イオン界面活性剤(B)が、硫酸エステル塩、スルホン酸塩、カルボン酸塩、リン酸エステル塩及びアミノ酸塩からなる群から選ばれる1種以上である、前記[1]〜[6]のいずれか1項に記載の皮膚洗浄剤組成物。
[8]油剤(C)が、植物性エステル油である前記[1]〜[7]のいずれか1項に記載の皮膚洗浄剤組成物。
[9]下記工程(I)〜工程(III)を有する、前記[1]〜[8]のいずれか1項に記載の皮膚洗浄剤組成物の製造方法。
工程(I):カチオン化ヒドロキシプロピルセルロース(A)と陰イオン界面活性剤(B)とを混合し、混合物を得る工程
工程(II):工程(I)により得られた混合物と油剤(C)とを混合し、エマルションを得る工程
工程(III):工程(II)により得られたエマルションと、界面活性剤及び水とを混合し、皮膚洗浄剤組成物を得る工程
[10]工程(I)における、カチオン化ヒドロキシプロピルセルロース(A)に対する陰イオン界面活性剤(B)の質量比〔陰イオン界面活性剤(B)/C−HPC(A)〕が0.01〜1.0、好ましくは0.03〜1.0、より好ましくは0.05〜0.5である、前記[9]に記載の皮膚洗浄剤組成物の製造方法。
[11]前記エマルション中における、C−HPC(A)に対する油剤(C)の質量比〔油剤(C)/C−HPC(A)〕が1〜400、好ましくは5〜200、より好ましくは10〜100、更に好ましくは15〜50である、前記[9]又は[10]に記載の皮膚洗浄剤組成物の製造方法。
[12]前記[1]〜[8]のいずれか1項に記載の組成物の皮膚洗浄剤としての使用。
【実施例】
【0084】
以下の実施例及び比較例において、特記しない限り、「部」は「質量部」、「%」は「質量%」を意味する。また、各種物性の測定法は以下のとおりである。
【0085】
(1)パルプ及び粉末セルロースの水分含量の測定
パルプ、粉末セルロースの水分量は、赤外線水分計(株式会社ケット科学研究所製、「FD−610」)を使用した。測定温度120℃で、30秒間の重量変化率が0.1%以下となる点を測定の終点とした。
【0086】
(2)パルプ及び粉末セルロースの結晶化度の算出
株式会社リガク製のX線回折装置「Rigaku RINT 2500VC X−RAY diffractometer」を用いて、以下の条件で測定したX線回折スペクトルのピーク強度から、前記計算式(1)に基づいて算出した。
X線源:Cu/Kα−radiation、管電圧:40kV、管電流:120mA
測定範囲:2θ=5〜45°
測定サンプル:面積320mm2×厚さ1mmのペレットを圧縮して作成
X線のスキャンスピード:10°/min
【0087】
(3)粉末セルロース、セルロース・塩基混合粉砕物中のセルロースの平均粒径の測定
粉末セルロースの平均粒径は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置「LA−920」(株式会社堀場製作所製)を用いて測定した。測定試料として粉末セルロース0.1gを5mLの水に加え、超音波で1分間処理した試料分散液を用いた。体積基準のメジアン径を、温度25℃にて測定し、これを平均粒径とした。
セルロース・塩基混合粉砕物中のセルロースの平均粒径は、同様の測定装置を用い、セルロース・塩基混合粉砕物にエタノールに加え、透過率が70-95%の範囲に入るように濃度に調節し、超音波で1分間処理し、NaOHを溶解させた試料分散液を用いた。
【0088】
(4)C−HPCの置換度の算出
製造例で得られたC−HPCを透析膜(分画分子量1000)により精製後、水溶液を凍結乾燥して精製C−HPCを得た。得られた精製C−HPCの塩素含有量(%)を元素分析によって測定し、C−HPC中に含まれるカチオン性基の数と対イオンである塩化物イオンの数を同数であると近似して、下記計算式(2)から、C−HPC単位質量中に含まれるカチオン化エチレンオキシ基(−CH(Y
1)−CH(Y
2)O−)の量(a(モル/g))を求めた。
a(モル/g)=元素分析から求められる塩素含有量(%)/(35.5×100) (2)
分析対象がヒドロキシプロピルセルロースではなく精製C−HPCであることを除き、日本薬局方記載の「ヒドロキシプロピルセルロースの分析法」に従って、ヒドロキシプロポキシ基含有量(%)を測定した。下記計算式(3)から、ヒドロキシプロポキシ基含有量〔式量(OC
3H
6OH=75.09〕(bモル/g)を求めた。
b(モル/g)=ガスクロ分析から求められるヒドロキシプロポキシ基含有量(%)/(75.09×100) (3)
得られたa及びbと下記計算式(4)、(5)からカチオン化エチレンオキシ基の置換度(k)及びプロピレンオキシ基の置換度(m)を算出した。
a=k/(162+k×K+m×58) (4)
b=m/(162+k×K+m×58) (5)
〔式中、k及びKは、それぞれ、カチオン化エチレンオキシ基の置換度及び式量を示し、mはプロピレンオキシ基の置換度を示す。〕
【0089】
(5)平均重合度の測定(銅アンモニア法)
(5−1)パルプ及び粉末セルロースの粘度平均重合度の測定
(i)測定用溶液の調製
メスフラスコ(100mL)に塩化第一銅0.5g、25%アンモニア水20〜30mLを加え、完全に溶解した後に、水酸化第二銅1.0g、及び25%アンモニア水を加えて標線の一寸手前までの量とした。これを30〜40分撹拌して、完全に溶解した。その後、精秤したセルロースを加え、標線まで上記アンモニア水を満たした。空気が入らないように密封し、12時間、マグネチックスターラーで撹拌して溶解し、測定用溶液を調製した。添加するセルロース量を20〜500mgの範囲で変えて、異なる濃度の測定用溶液を調製した。
(ii)粘度平均重合度の測定
上記(i)で得られた測定用溶液(銅アンモニア溶液)をウベローデ粘度計に入れ、恒温槽(20±0.1℃)中で1時間静置した後、液の流下速度を測定した。種々のセルロース濃度(g/dL)の銅アンモニア溶液の流下時間(t(秒))とセルロース無添加の銅アンモニア水溶液の流下時間(t
0(秒))から、下記式により、それぞれの濃度における還元粘度(η
sp/c)を下記式により求めた。
η
sp/c={(t−t
0)/t
0}/c
(c:セルロース濃度(g/dL)
更に、還元粘度をc=0に外挿して固有粘度[η](dL/g)を求め、下記式により粘度平均重合度(DP)を求めた。
DP=2000×[η]
【0090】
(5−2)C−HPCの粘度平均重合度の測定
(iii)測定溶液の調製
精秤したセルロースの替わりに精秤したC−HPCを用いた点を除き、上記(i)の測定溶液の調製と同様にして測定溶液を調製した。
(iv)粘度平均重合度の測定
測定溶液の濃度としてセルロース換算濃度(g/dL)を用いた点を除き、上記(ii)の粘度平均重合度の測定と同様にして測定した。
ここで、セルロース換算濃度(c
cell)とは、測定溶液1dL中に含まれるセルロース骨格部分の質量(g)をいい、下記計算式(6)で定義する。
c
cell=u×162/(162+k×K+m×58) (6)
〔式中、uは測定溶液の調製時に用いた精秤したC−HPCの質量(g)を示し、k、K、mは、それぞれ前記計算式(4)及び(5)と同じ意味を表す。〕
【0091】
(6)プロピレンオキシ基(−PO−)の置換度の算出
分析対象がヒドロキシプロピルセルロースではなく、上記透析膜による精製・凍結乾燥を行ったC−HPCであることを除き、「日本薬局方」に記載のヒドロキシプロピルセルロースの分析法に従って、プロピレンオキシ基の置換度を算出した。
【0092】
製造例1〔C−HPC(1)の製造〕
(1)チップ化工程
シート状木材パルプ〔テンベック社製「Biofloc HV+」、平均重合度1770、結晶化度74%、水分含量7.0%〕をシートペレタイザー(株式会社ホーライ製「SGG−220」)で処理して3〜5mm角のチップ状にした。
(2)カチオン化工程(1)
上記(1)で得られたチップ状パルプ86gに、グリシジルトリメチルアンモニウムクロリド水溶液(阪本薬品工業株式会社製、水分含量20%、純度90%以上)(以下「GMAC」という)20.0g(AGU1モルあたり0.2モル相当量)を乳鉢で混合した後、バッチ式振動ミル(中央化工機株式会社製「MB−1」:容器全容積3.5L、媒体:φ30mm、長さ218mm、断面形状が円形のSUS304製ロッド13本、充填率57%)に投入した。12分間粉砕処理(振動数20Hz、振幅8mm、温度30〜70℃)を行い、セルロースとGMACの粉末状混合物を得た。
得られた粉末状混合物に、48%水酸化ナトリウム水溶液8.8g(AGU1モルあたり0.2モル相当量)を乳鉢で混合した後、前記バッチ式振動ミルに投入した。同様の条件にて60分間粉砕処理を行い、カチオン化セルロース(i)を得た。
(3)カチオン化工程(2)
上記(2)で得られたカチオン化セルロース(i)114gに、GMAC32g(AGU1モルあたり0.32モル相当量)を加えて乳鉢で混合した後、得られた混合物を、還流管を取り付けた1Lニーダー(株式会社入江商会製、PNV−1型)に仕込み、50℃、窒素雰囲気下、50rpmで攪拌しながら5時間熟成を行い、カチオン化セルロース(ii)を得た。
(4)カチオン化工程(3)
上記で得られたカチオン化セルロース(ii)から、減圧下(13.3kPa)撹拌しながら、60℃で水分量が10.5%(対原料セルロース)になるまで脱水した後、更にGMAC100g(AGU 1モルあたり1.0モル相当量)を加え、50℃で終夜反応を行って、カチオン化セルロース(iii)を得た。
(5)ヒドロキシプロピル化工程
前記カチオン化セルロース(iii)140g(未中和・未精製品)を減圧下(13.3kPa)撹拌しながら、60℃で水分量が9.3%(対原料セルロース)になるまで脱水した後、70℃に昇温し、酸化プロピレン(関東化学株式会社製、特級試薬)20g(AGU1モルあたり1.0モル相当量)を加えて9時間反応を行った。
反応終了混合物をニーダーから取り出し、粗C−HPC粉末を得た。この粗C−HPC粉末を採取して酢酸で中和した。プロピレンオキシ基及びカチオン化エチレンオキシ基の置換度を求める目的で、中和物を透析膜(分画分子量1000)により精製後、水溶液の凍結乾燥を行い、精製C−HPC(1)を得た。
得られた精製C−HPC(1)のカチオン化エチレンオキシ基の置換度、及びプロピレンオキシ基の置換度は、それぞれ0.77、及び0.2と算出された。また平均重合度は、1326であった。
【0093】
製造例2〔C−HPC(2)の製造〕
(1)チップ化工程
セルロースとして、シート状木材パルプ〔テンベック社製「Biofloc HV10」、平均重合度1508、結晶化度74%、水分含量7.0%〕をシートペレタイザー(株式会社ホーライ製「SGG−220」)で処理して3〜5mm角のチップ状にした。
(2)カチオン化工程(1)
上記(1)で得られたチップ状パルプ989g(水分含量7.0%)に、GMAC559g(AGU1モルあたり0.52モル相当量)とイオン交換水24gを加え、ポリ袋中で混合を行った後、バッチ式振動ミル(中央化工機株式会社製「FV−10」:容器全容量35L、媒体:φ30mm、長さ510mm、断面形状が円形のSUS304製ロッド63本、充填率64%)に投入した。12分間粉砕処理(振動数20Hz、振幅8mm、温度10〜40℃)を行い、セルロースとGMACの粉状混合物を得た。
更に振動ミル内に顆粒状水酸化ナトリウム(有効分100%)136.2g(AGU1モルあたり0.60モル相当量)を投入した。再び112分間粉砕処理を行い、カチオン化セルロースを得た。
(3)ヒドロキシプロピル化工程
上記(2)で得られたカチオン化セルロース95.0gを製造例1で用いた還流管を取り付けたニーダーに仕込み、ニーダーを70℃に昇温し、酸化プロピレン35.4g(AGU1モルあたり2.0モル相当量)を攪拌しながら滴下して、酸化プロピレンが消費され還流が止むまで7時間反応を行った。反応終了混合物をニーダーから取り出し、薄褐色の粗C−HPC粉末を得た。
(4)カチオン化工程(2)
上記(3)で得られた粗C−HPC粉末10.6gにGMAC16.2g(AGU1モルあたり3.5モル相当量)を添加し、乳鉢で混合を行った後、恒温槽中50℃にて24時間熟成を行った。得られた粗C−HPCに水:エタノール:イソプロピルアルコール=5:45:50(質量比)の混合溶媒100gを用いて分散を行い、酢酸を加え中和し、沈殿精製を行った。沈殿物をろ過収集し乾燥機中60℃にて一晩減圧乾燥を行い、薄褐色塊状の粗C−HPCを得た。
プロピレンオキシ基及びカチオン化エチレンオキシ基の置換度を求める目的で、生成物を透析膜(分画分子量1000)により精製後、水溶液の凍結乾燥を行い、精製C−HPC(2)を得た。
得られた精製C−HPC(2)のカチオン化エチレンオキシ基の置換度、及びプロピレンオキシ基の置換度は、それぞれ1.00、及び1.3と算出された。また平均重合度は、464であった。
【0094】
製造例3〔C−HPC(3)の製造〕
原料パルプを粉末セルロース(日本製紙ケミカル株式会社製「セルロースパウダーKCフロックW−400G」、平均重合度191、結晶化度77%、水分含量7.0%)に変え、カチオン化工程(1)、ヒドロキシプロピル化工程、及びカチオン化工程(2)を表1に示す量に変えた以外は製造例2と同様に行った。
得られた精製C−HPC(3)のカチオン化エチレンオキシ基、プロピレンオキシ基の置換度は、それぞれ1.40、及び0.2と算出された。平均重合度は295であった。
【0095】
製造例4〔C−HPC(4)の製造〕
カチオン化工程(1)を表1に示す条件に変え、カチオン化工程(2)を行わず、ヒドロキシプロピル化工程を表1に示す条件に変えた以外は、製造例1と同様に行った。
得られた精製C−HPC(4)のカチオン化エチレンオキシ基、プロピレンオキシ基の置換度は、それぞれ0.24、及び2.2と算出された。平均重合度は478であった。
【0096】
製造例5〔C−HPC(5)の製造〕
原料パルプを粉末セルロース(日本製紙ケミカル株式会社製「セルロースパウダーKCフロックW−400G」、平均重合度191、結晶化度77%、水分含量7.0%)に変え、カチオン化工程(1)、ヒドロキシプロピル化工程、及びカチオン化工程(2)を表1に示す量に変えた以外は製造例2と同様に行った。
得られた精製C−HPC(5)のカチオン化エチレンオキシ基、プロピレンオキシ基の置換度は、それぞれ2.36、及び0.2と算出された。平均重合度は432であった。
【0097】
製造例6〔C−HPC(6)の製造〕
カチオン化工程(1)を表1に示す条件に変え、カチオン化工程(2)を行わず、ヒドロキシプロピル化工程を表1に示す条件に変えた以外は製造例1と同様に行った。得られた精製C−HPC(6)の結果を表1に示す。
得られた精製C−HPC(6)のカチオン化エチレンオキシ基、プロピレンオキシ基の置換度は、それぞれ0.22、及び1.1と算出された。平均重合度は539であった。
【0098】
製造例7〔C−HPC(7)の製造〕
カチオン化工程(1)を表1に示す条件に変え、カチオン化工程(2)を行わず、ヒドロキシプロピル化工程を表1に示す条件に変えた以外は製造例1と同様に行った。
得られた精製C−HPC(7)のカチオン化エチレンオキシ基、プロピレンオキシ基の置換度は、それぞれ0.35、及び2.7と算出された。平均重合度は964であった。
【0099】
【表1】
【0100】
製造例8〔C−HPC(8)の製造〕
(1)チップ化工程
シート状木材パルプ〔テンベック社製「Biofloc HV+」、平均重合度1481、結晶化度74%、水分含量4.6%〕をシートペレタイザー(株式会社ホーライ製「SGG−220」)で処理して、3〜5mm角のチップ状パルプを得た。得られたチップ状パルプを、乾燥器(アドバンテック東洋株式会社製「VO−402」)に投入し、105℃で2時間乾燥して、乾燥チップ状パルプを得た。
(2)粉末/低結晶化工程
得られた乾燥チップ状パルプをバッチ式振動ミル(中央化工機株式会社製「MB−1」:容器全容量3.5L、媒体:φ30mm、長さ218mmのSUS304製ロッド13本使用、充填率57%)によって1時間粉砕処理(振動数20Hz、振幅8mm、温度30〜70℃)を行い、低結晶性の粉末セルロース(結晶化度−11.2%、平均重合度765、水分含量0.6%)を得た。
(3)カチオン化工程
上記工程(2)で得られた低結晶性の粉末セルロース20.0g(水分含量0.6%)に、80%GMAC水溶液9.4g(AGU1モルあたり0.4モル相当量)を一括添加し、乳鉢で混合した。その後、11%水酸化ナトリウム水溶液4.5g(AGU1モルあたり0.1モル相当量)を一括添加し、乳鉢で混合した(セルロースに対する水分量:30質量%)。得られた混合物を、還流管を取り付けた1Lニーダー(株式会社入江商会製、PNV−1型)に移し、系内を窒素置換後、70℃まで昇温し、2.5時間反応熟成を行い、カチオン化セルロースを得た。
(4)ヒドロキシプロピル化工程
引き続き、上記(3)のカチオン化セルロースに、酸化プロピレン7.1g(AGU1モルあたり1.0モル相当量)を70℃において1時間で滴下し、更に2時間熟成を行った。この酸化プロピレンの滴下から熟成までの反応工程を5回繰り返した(滴下した酸化プロピレンの総量35.5g:AGU1モルあたり5.0モル相当量)。この粗C−HPC粉末を製造例(1)と同様に、中和、精製、凍結乾燥を行い、精製C−HPC(8)を得た。
得られた精製C−HPC(8)のカチオン化エチレンオキシ基、プロピレンオキシ基の置換度は、それぞれ0.18、及び1.8と算出された。平均重合度は732であった。
【0101】
製造例9〔C−HPC(9)の製造〕
(1)チップ化工程
シート状木材パルプ〔テンベック社製「Biofloc HV+」、平均重合度1481、結晶化度74%、水分量4.6%〕をシートペレタイザー(株式会社ホーライ製「SGG−220」)で処理して、3〜5mm角のチップ状パルプを得た。得られたチップ状パルプを、乾燥器(アドバンテック東洋株式会社製、商品名;VO−402)に投入し、105℃で2時間乾燥して、乾燥チップ状パルプ(水分含有量0.8%)を得た。
(2)粉末/低結晶化工程
得られた乾燥チップ状パルプをバッチ式振動ミル(中央化工機株式会社製「FV−10」:全容器量35L、媒体:φ30mm、長さ510mm、断面形状が円形のSUS304製ロッド63本使用、充填率65%)に投入した。10分間粉砕処理(振動数30Hz、振幅8mm、温度10〜40℃)を行い、低結晶性の粉末セルロース(結晶化度14%、平均重合度1198、水分含有量1.0%)を得た。
(3)アルカリセルロース化工程
上記工程(2)で得られた低結晶性の粉末セルロース4450gをプロシェアミキサーに投入し、主翼1m/s、チョッパー翼1800rpmで撹拌しながら、42.6%水酸化ナトリウム水溶液2396g(AGU1モルあたり0.93モル相当量)を1.0L/minにて噴霧添加した。噴霧後、内温を50℃に昇温し、2時間熟成し、アルカリセルロースを得た。
(4)ヒドロキシプロピル化工程
上記工程で得られたアルカリセルロース6846gを、上記プロシェアミキサー内で、主翼1m/s、チョッパー翼1800rpmで撹拌しながら50℃まで昇温し、その後、酸化プロピレン5580g(AGU1モルあたり3.5モル相当量)を12回に分割して滴下した。滴下終了後50℃で2時間熟成した。
(5)カチオン化反応工程
上記工程で得られた反応混合物192.0gをバーティカルグラニュレーターに投入し撹拌しながら、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドの70%水溶液77.25g(AGU1モルあたり0.52モル相当量)を0.2L/minにて噴霧添加し、50℃にて2時間反応させ、粗C−HPCを得た。この粗C−HPC粉末を製造例1と同様に、中和、精製、凍結乾燥を行い、精製C−HPC(9)を得た。
得られた精製C−HPC(9)のカチオン化エチレンオキシ基の置換度、及びプロピレンオキシ基の置換度は、それぞれ0.22、2.1と算出された。また平均重合度は212であった。
【0102】
製造例10〔カチオン化セルロース(1)の製造〕
ヒドロキシプロピル化工程を行わなかった以外は、製造例1と同様に行い、精製カチオン化セルロース(1)を得た。得られた精製カチオン化セルロース(1)の結果を表1に示す。
得られた精製カチオン化セルロース(1)のカチオン化エチレンオキシ基の置換度は、0.77と算出された。また平均重合度は、1288であった。
製造例1〜9で得られたC−HPC(1)〜(9)、及び製造例10で得られたカチオン化セルロース(1)の平均重合度、カチオン化エチレンオキシ基の置換度、及びプロピレンオキシ基の置換度を表2にまとめて示す。
【0103】
【表2】
【0104】
実施例1〜9(ボディーシャンプーの製造、評価)
(1)皮膚洗浄剤組成物の調製
製造例1〜9で得られたC−HPC(1)〜(9)を用いて、表3の実施例1〜9に示す組成となる皮膚洗浄剤組成物を調製した。具体的には以下の通りである。
(工程(I))
C−HPC(A)水溶液(C−HPC濃度4%)及び表3の工程(I)に示される量の陰イオン界面活性剤(B)をビーカーに取り、25℃、300rpm(0.78m/s)で10分間、均一になるまで混合し、C−HPC(A)と陰イオン界面活性剤(B)とを含む混合物を調製した。
(工程(II))
上記混合物に、表1に示される量の油剤(C)を徐々に加え、25℃、300rpm(0.78m/s)で撹拌しながら乳化した。油剤を全て添加してから10分間撹拌して乳化し、エマルションを得た。
(工程(III))
上記エマルションと、表1の工程(III)に示される量の陰イオン界面活性剤(B)、他成分及び水とを混合し、25℃、100rpm(0.26m/s)で30分間攪拌して、皮膚洗浄剤組成物(ボディーシャンプー)を得た。
【0105】
(2)油滴の平均粒径の測定
油滴の平均粒径は、動的光散乱粒径測定装置LA−950(株式会社堀場製作所製)を用いて測定した。測定時の泡の混入を防ぐ為、LA−950のセル中で乳化物を完全に分散後(測定条件;攪拌7、循環7)、撹拌および循環を停止させてから測定した。体積基準のメジアン径を、温度25℃にて測定し、これを平均粒径とした。
油滴の平均粒径が小さいほど、油剤(C)の乳化力が大きく、粒径が大きいほど、乳化力が小さいことを意味している。
【0106】
(3)乳化状態の評価
カチオン化ヒドロキシプロピルセルロース(A)、陰イオン界面活性剤(B)を混合し、油剤(C)を徐々に加え、撹拌乳化を行うことにより得られた乳化物の乳化状態について、乳化物の外観から下記の評価基準により評価した。
(評価基準)
・乳化状態
A:乳化可能
B:乳化不可能(油滴合一)
【0107】
(4)油剤残留量の測定
50mlビーカーに皮膚洗浄剤組成物1mlをイオン交換水で10mlにメスアップした10倍希釈液を作製した。そこに、3cm四方のモデル皮膚((有)いづみ恒商店製)を入れ、指先で10秒間攪拌し、この操作を洗浄とした。500mlビーカーに500ml水を入れ、その水にモデル皮膚を5回出し入れさせ、この操作をすすぎとした。自然乾燥後、5mlクロロホルムで15秒間抽出した。これを3回繰り返し、5mlジニトロベンゼン(2000ppm)と共に抽出液を乾燥させた後、1ml重クロロホルムに再溶解し、
1H−NMRを測定した。ジニトロベンゼンによる内部標準法により、モデル皮膚の油剤残留量(mg/cm
2)を定量した。
【0108】
(5)皮膚洗浄剤組成物の性能評価
両手を濡らし、皮膚洗浄剤組成物0.5mLを両手に塗布し、10秒間泡立てた後、洗浄時の起泡性について、下記の評価基準により評価した。
その後、その両手を10秒間流水中ですすぎ、タオルで両手の水分をふき取り、乾燥後の皮膚の保湿感について、下記の評価基準により評価した。
評価はいずれも5人の専門パネラーが行い、得られた結果の平均値を表3〜6に示した。
評価の平均値が3.5以上であれば、その評価において明らかに優れた性能を有するといえる。
【0109】
(評価基準)
・洗浄時の起泡性:
5:泡量多い
4:やや多い
3:普通(基準:表3の比較例7の起泡性)
2:やや少ない
1:少ない
・乾燥後の皮膚の保湿感:
5:強く感じられる
4:やや感じられる
3:普通(基準:表3の比較例7の保湿感)
2:あまり感じられない
1:保湿感がない
【0110】
比較例1〜6(ボディーシャンプーの製造、評価)
C−HPC(1)〜(9)の代わりに、製造例10で得られたカチオン化セルロース、又は市販のポリマーを用いて、表3に示す組成の皮膚洗浄剤組成物(ボディーシャンプー)を実施例1と同様にして調製し、評価した。結果を表3に示す。
【0111】
比較例7
工程Iを行わなかった以外は、実施例1と同様にして皮膚洗浄剤組成物(ボディーシャンプー)を調製し、評価した。結果を表3に示す。なお、比較例7では、工程(III)で添加した界面活性剤により油剤を乳化している。
【0112】
【表3】
【0113】
実施例10〜31、比較例8〜9(ボディーシャンプーの製造、評価)
実施例1〜9と同様の方法で、表4及び5の実施例10〜31及び比較例8〜9に示す組成となる皮膚洗浄剤組成物を調製し、評価した。結果を表4及び5に示す。
【0114】
【表4】
【0115】
【表5】
【0116】
実施例32〜40(ボディーシャンプーの製造、評価)
実施例1〜9と同様の方法で、表6の実施例32〜40に示す組成となる皮膚洗浄剤組成物を調製し、評価した。結果を表6に示す。油剤(C)の種類を替えても、実施例1〜31の組成物と同様に乳化が可能であった。
【0117】
【表6】