(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、各分割ダクトの連結部を上流側と下流側とで異なる形状とした場合、それぞれのダクト構造に特化した金型がそれぞれ必要となり、製作コストの低減のために金型を小型化しても、そのコスト低減効果は限定的なものとなる。
そこで、本発明では、連結することで車両前部から後部に亘って延在する空調ダクトを構成可能な分割ダクトに関し、金型の数量を減少し、もって金型費用を低減できる構成の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る車両の空調ダクトは、車両の天井に配設され、空調装置の空調空気を車室内へ送給するための空調ダクトであって、この空調ダクトは少なくとも、前記空調装置と連結され空調空気を送給する第1分割ダクトと、前記第1分割ダクトを通過した前記空調空気を送給する第2分割ダクトと、前記空調装置と連結され空調空気を送給する第3分割ダクトと、前記第3分割ダクトを通過した前記空調空気を送給する第4分割ダクトと、を有して構成され、前記第1分割ダクトと前記第3分割ダクトは、それぞれ、前記空調空気が流入する第1の端部と、前記空調空気が流出する第2の端部と、を備え、前記第2分割ダクトと前記第4分割ダクトは、それぞれ、前記空調空気が流入する第3の端部と、第4の端部と、を備え、前記第1分割ダクトと前記第4分割ダクトは、
互いに形状が
同一のダクト本体と互いに形状が異なる端部とをそれぞれ備え、前記第2分割ダクトと前記第3分割ダクトは、
互いに形状が
同一のダクト本体と互いに形状が異なる端部とをそれぞれ備えることを特徴とする(請求項1)。
【0008】
第1分割ダクトと第4分割ダクトと
は、互いに形状が同一のダクト本体と互いに形状が異なる端部とをそれぞれ備えて略同一な形状であるため、同一のブロー成形用金型から生産したダクト(第1ダクト前駆体)から、第1分割ダクトと第4分割ダクトとを、必要に応じて生産することができる。なお、「形状が略同一」とは、ブロー成形後の加工により第1分割ダクトと第4分割ダクトとの形状の相違が生じても「略同一」とみなすことを述べたもので、第1分割ダクトと第4分割ダクトとが完全に同一形状でなくとも、同一の第1ダクト前駆体から形成可能な程度の相違は、本発明の場合、「略同一」に含むものとする。また、第1分割ダクトや第4分割ダクトと同様に、第2分割ダクトと第3分割ダクトと
は、互いに形状が同一のダクト本体と互いに形状が異なる端部とをそれぞれ備え略同一な形状であるため、同一のブロー成形用金型から生産したダクト(第2ダクト前駆体)から、第2分割ダクトと第3分割ダクトとを、必要に応じて生産することができる。このように金型を共通化することで、生産コストを低減することができる。
【0009】
具体的には、前記第1の端部の形状は、前記第4の端部の形状の一部であり、前記第3の端部の形状は、前記第2の端部の形状の一部である(請求項2)。第1の端部を第4の端部から形成することができ、第3の端部を第2の端部から形成することができるので、第1ダクト前駆体を用いて第1分割ダクトと第
4分割ダクトを生産することができる。また、第2分割ダクト前駆体を用いて第
2分割ダクトと第
3分割ダクトを生産することができる。
【0010】
本発明に係る車両の空調ダクトは、さらに、前記第1分割ダクトと前記第3分割ダクトとは、
互いに形状が同一のダクト本体と互いに形状が異なる端部とをそれぞれ備えて、形状が略同一であるとともに、前記第2分割ダクトと前記第4分割ダクトとは、
互いに形状が同一のダクト本体と互いに形状が異なる端部とをそれぞれ備えて、形状が略同一であることを特徴としている(請求項3)。第1ダクト前駆体から第1分割ダクトと第3分割ダクトとを形成できるだけでなく、第2分割ダクトと第4分割ダクトをも形成することができる。即ち、1つの小型化した金型により、4つの分割ダクトを形成することができ、よりいっそう金型の共通化を促進して、生産コストを低減することができる。
【0011】
具体的には、前記第1の端部の形状は、前記第2の端部の形状の一部であり、前記第3の端部の形状は、前記第4の端部の形状の一部である(請求項4)。第1の端部を第2の端部から形成することができるので、第1ダクト前駆体から第1分割ダクトと第3分割ダクトを生産することができる。また、第3の端部を第4の端部から形成することができるので、第1ダクト前駆体から第2分割ダクトと第
4分割ダクトを生産することもできる。即ち、第1ダクト前駆体から4つの分割ダクトを生産することができる。
【0012】
そして本発明に係る車両の空調ダクトは、前記第2の端部の外周の大きさは、前記第3の端部の内周の大きさ以下であることを特徴としている(請求項5)。空調風が、第1分割ダクトから第2分割ダクトへ移動するとき、および、第3分割ダクトから第4分割ダクトへ移動するとき、オス側端部からメス側端部へと流れ込むよう構成したので、空調空気をスムーズに流すことができる。
【0013】
そして本発明に係る車両の空調ダクトは、前記第1分割ダクトと前記第3分割ダクトは、いずれか、またはこの両ダクトから延在される上流側脚部を備え、該上流側脚部により互いに連結され、前記第2分割ダクトと前記第4分割ダクトは、いずれか、またはこの両ダクトから延在される下流側脚部を備え、該下流側脚部により互いに連結されることを特徴とする(請求項6)。第1分割ダクトと第2分割ダクトで形成される長手方向の空調空気の経路と、第3分割ダクトと第4分割ダクトで形成される長手方向の空調空気の経路との間を、強固に連結することができ、空調ダクト全体としての強度を向上することができる。
【0014】
そして本発明に係る車両の空調ダクトは、前記上流側脚部および/または前記下流側脚部は中空状であり、前記空調装置と連通されるとともに、送給された空調空気の一部を流出する開口部を備えたことを特徴とする(請求項7)。乗員へ空調空気を送給する開口部の配設位置検討に関し、設計自由度を高められる。
【0015】
そして本発明では、車両の天井に配設され、空調装置の空調空気を車室内へ送給するための空調ダクトの製造方法に関して、中空状の大径部と、該大径部よりも先端側に設けられる中空状の小径部と、を含む端部を両端に形成した長尺状の第1ダクト前駆体を、ブロー成形で複数成形する第1ダクト前駆体成形工程と、前記第1ダクト前駆体成形工程で成形された一の第1ダクト前駆体の一方の前記端部
の前記
小径部を全て切除してメス側端部を形成するとともに、他方の前記端部を前記小径部で切断してオス側端部を形成し、第1分割ダクトを形成する第1分割ダクト形成工程と、前記第1ダクト前駆体成形工程で成形された他の第1ダクト前駆体の他方の前記端部
の前記
小径部を全て切除してメス側端部を形成し、第4分割ダクトを形成する第4分割ダクト形成工程と、中空状の大径部と、該大径部よりも先端側に設けられる中空状の小径部と、を含む端部を両端に形成した長尺状の第2ダクト前駆体を、ブロー成形で複数成形する第2ダクト前駆体成形工程と、前記第2ダクト前駆体成形工程で成形された一の第2ダクト前駆体の一方の前記端部を前記小径部で切断してオス側端部を形成するとともに、他方の前記端部
の前記
小径部を全て切除してメス側端部を形成し、第3分割ダクトを形成する第3分割ダクト形成工程と、前記第2ダクト前駆体成形工程で成形された他の第2ダクト前駆体の一方の前記端部
の前記
小径部を全て切除してメス側端部を形成し、第2分割ダクトを形成する第2分割ダクト形成工程と、前記第2分割ダクトのメス側端部に前記第1分割ダクトのオス側端部を挿入する第一連結工程と、前記第4分割ダクトのメス側端部に前記第3分割ダクトのオス側端部を挿入する第二連結工程と、を備えることを特徴とする製造方法(請求項8)を提案する。2つのブロー成形金型から4つの分割ダクトを形成し、連結することで、空調ダクトを製造することができる。
【0016】
そして本発明では、車両の天井に配設され、空調装置の空調空気を車室内へ送給するための空調ダクトの製造方法に関して、中空状の大径部と、該大径部よりも先端側に設けられる中空状の小径部と、を含む端部を両端に形成した長尺状のダクト前駆体を、ブロー成形で複数成形するダクト前駆体成形工程と、前記ダクト前駆体成形工程で成形された一のダクト前駆体の一方の前記端部
の前記
小径部を全て切除してメス側端部を形成するとともに、他方の前記端部を前記小径部で切断してオス側端部を形成し、第1分割ダクトを形成する第1分割ダクト形成工程と、前記ダクト前駆体成形工程で成形された二のダクト前駆体の一方の前記端部
の前記
小径部を全て切除してメス側端部を形成し、第2分割ダクトを形成する第2分割ダクト形成工程と、前記ダクト前駆体成形工程で成形された三のダクト前駆体の一方の前記端部を前記小径部で切断してオス側端部を形成するとともに、他方の前記端部
の前記
小径部を全て切除してメス側端部を形成し、第3分割ダクトを形成する第3分割ダクト形成工程と、前記ダクト前駆体成形工程で成形された四のダクト前駆体の他方の前記端部
の前記
小径部を全て切除してメス側端部を形成し、第4分割ダクトを形成する第4分割ダクト形成工程と、前記第2分割ダクトのメス側端部に前記第1分割ダクトのオス側端部を挿入する第一連結工程と、前記第4分割ダクトのメス側端部に前記第3分割ダクトのオス側端部を挿入する第二連結工程と、を備えることを特徴とする製造方法(請求項9)を提案する。1つのブロー成形金型から4つの分割ダクトを形成し、連結することで、空調ダクトを製造することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、空調ダクトを複数の分割ダクトから構成したため、各分割ダクトを樹脂のブロー成形で成形する場合に金型の大きさを小さくすることができ、金型費用を低減することができる。
また、第1分割ダクトと第4分割ダクトは、同一形状の第1ダクト前駆体から形成され、第2分割ダクトと第3分割ダクトは、同一形状の第2ダクト前駆体から形成される。従って、第1分割ダクトと第4分割ダクトの共用化および第2分割ダクトと第3分割ダクトの共用化によって、成形用の金型も共用化することができ、金型費用をさらに低減することができる。
さらに、第1分割ダクト、第2分割ダクト、第3分割ダクト、第4分割ダクトを、同一のダクト前駆体から形成することができる。従って、4つの分割ダクトの共用化によって、成形用の金型を、よりいっそう共用化することができ、金型費用を低減することができる。
このように、本発明に係る空調ダクトによれば、安価なコストで製作することができる
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施形態を図面と共に詳述する。
図1に示すように、車両の天井部分1には、ルーフパネル2の車室内側に車幅方向に沿って延在するルーフボー3が、車両前後方向に所定間隔をおいて複数配設されている。車両前端側(FR側)の2本のルーフボー3,3には、空調空気を送り出す空調装置4が取り付けられている。また、車両中央および後端側(RR側)の5本のルーフボー3,3には、後述する空調ダクト5が取り付けられており、空調装置4の後端部に設けられた筒状の排出部4aと嵌合されている。
【0020】
この空調ダクト5は、本実施形態では4つの分割ダクトから構成されている。具体的には、車両左側かつ前側に配設された第1分割ダクト10と、該第1分割ダクト10の後方側に配設されるとともに嵌合された第2分割ダクト20と、前記第1分割ダクト10の車両右側に配設された第3分割ダクト30と、該第3分割ダクト30の後方側に配設されるとともに嵌合された第4分割ダクト40と、から構成されている。即ち、第2分割ダクト20は、第1分割ダクト10に対して車両前後方向(長手方向)の後側に隣接し、第3分割ダクト30は、第1分割ダクト10に対して車幅方向(短手方向)に隣接して配設されている。第4分割ダクト40は、第3分割ダクト30に対して車両前後方向(長手方向)の後側に隣接して配設されると共に、第2分割ダクト20に対して車幅方向(短手方向)に隣接して配設されている。また、空調装置4および空調ダクト5には、車室内に空調空気を送り出すグリル6,7が複数設けられ、下方に向かって空調空気を送給可能になっている。
【0021】
図2に示すように、第1分割ダクト10は、車両前後方向である長手方向に延在し、筒状のダクト本体11と、該ダクト本体11の前端に配設され、空調装置4に連通して接続される前側接続口12(第1の端部)と、ダクト本体11の後端に配設され、第2分割ダクト20の前端に嵌合する後側接続口13(第2の端部)と、ルーフボー3にボルトを介して取り付けられる取付片14と、ダクト本体11に形成され、車室内に空調風を送り出す開口部15と、車両右側(短手方向)に向けて延在し、第3分割ダクト30に連結される上流側脚部としての前側脚部16および後側脚部17と、を備えている。前記開口部15には、
図1のグリル7が装着される。
【0022】
第4分割ダクト40は、車両前後方向である長手方向に延在し、筒状のダクト本体41と、該ダクト本体41の前端に配設され、第3分割ダクト30の後端に嵌合する前側接続口42(第3の端部)と、ルーフボー3にボルトを介して取り付けられる取付片44と、ダクト本体41に形成され、車室内に空調風を送り出す開口部45と、車両左側(短手方向)に向けて延在し、第2分割ダクト20に連結される下流側脚部としての前側脚部46および後側脚部47と、を備えている。前記開口部45には、
図1のグリル7が装着される。ダクト本体41の後端48(第4の端部)は、本実施形態では封鎖されたものとするが、必要に応じ開口して開口部45としてもよい。
【0023】
第1分割ダクト10と第4分割ダクト40とは、同一の第1ダクト前駆体50から形成される。この第1ダクト前駆体50は、周知の手法である樹脂ブロー成形の技術を用いて中空状でかつ長尺上に形成されるもので、第1乃至第4の端部はブロー成形後、後述する
図3、4に示す構造を備えている。そして、用途に応じて端部を適宜切断し開口することで、第1分割ダクトまたは第4分割ダクトとして、任意に形成される。
【0024】
このため第4分割ダクト40の形状は、第1分割ダクト10を中心点10aを基準にルーフパネル2と並行に180°回転させた形状と、端部を除き、同一となる。
【0025】
また、
図2に示すように、第2分割ダクト20は、車両前後方向である長手方向に延在し、筒状のダクト本体21と、該ダクト本体21の前端に配設され、第1分割ダクト10の後端の後側接続口13に嵌合される前側接続口22(第3の端部)と、ルーフボー3にボルトを介して取り付けられる取付片24と、ダクト本体21に形成され、車室内に空調風を送り出す開口部25と、車両右側(短手方向)に向けて延在し、第4分割ダクト40の前側脚部45と後側脚部47とにそれぞれ連結される、下流側脚部としての前側脚部26と後側脚部27とを備えている。前記開口部25には、
図1のグリル7が装着される。ダクト本体21の後端28(第4の端部)は、本実施形態では封鎖されたものとして説明するが、必要に応じ開口して開口部25としてもよい。
【0026】
第3分割ダクト30は、車両前後方向である長手方向に延在し、筒状のダクト本体31と、該ダクト本体31の前端に配設され、空調装置4に接続される前側接続口32(第1の端部)と、ダクト本体31の後端に配設され、第4分割ダクト40の前端に嵌合する後側接続口33(第2の端部)と、ルーフボー3にボルトを介して取り付けられる取付片34と、ダクト本体31に形成され、車室内に空調風を送り出す開口部35と、車両左側(短手方向)に向けて延在し、第1分割ダクト10の前側脚部16と後側脚部17とにそれぞれ連結される、上流側脚部としての前側脚部36と後側脚部37とを備えている。前記開口部35には、
図1のグリル7が装着される。
【0027】
第2分割ダクト20と第3分割ダクト30とは、同一の第2ダクト前駆体(図示せず)から形成される。この第2ダクト前駆体は、第1ダクト前駆体と同様に、周知の手法である樹脂ブロー成形の技術を用いて中空状でかつ長尺上に形成されるもので、第1乃至第4の端部はブロー成形後、後述する
図3、4に示す構造を備えている。そして、用途に応じて端部を適宜切断し開口することで、第2分割ダクトまたは第3分割ダクトとして、任意に形成される。
【0028】
このため第3分割ダクト30の形状は、第2分割ダクト20を中心点20aを基準にルーフパネル2と並行に180°回転させた形状と、端部を除き、同一となる。
【0029】
次いで、
図3,4を用いて、第1ダクト前駆体50および第2ダクト前駆体の端部の構造と、開口の形成工程を説明する。
【0030】
第1ダクト前駆体50における長手方向の端部(第1から第4の端部)は、ダクト本体側の大径部51と、この大径部51の先端側に配置され、大径部51よりも径が小さく形成された小径部52と、大径部51と小径部52との境界部分に配置され、大径部51よりも径が大きい拡径部53と、から構成されている。この拡径部53には、傾斜面53aが形成され、該傾斜面53aの内側の面と大径部51の内側の面とは滑らかに連続している。
【0031】
本実施形態では、それぞれの分割ダクトは、樹脂のブロー成形によって成形されるため、小径部52の先端52aは封鎖されている。ここで、第1分割ダクト10の後端の後側接続口13は、
図3,4に示す直線L1において、第1ダクト前駆体50の端部を切断して小径部52の先端を開口させて形成する。このように、後側接続口13は、第1ダクト前駆体50の小径部52を残して端縁を切除することによって開口される。
【0032】
また、第4分割ダクト40の前端の前側接続口42と第1分割ダクト10の前側接続口12は、
図3,4に示す直線L2にて切断して形成される。このように、前側接続口42,12は、第1ダクト前駆体50の小径部52を残さずに切除することによって開口される。
【0033】
以上の工程により、第1分割ダクト10の後側接続口13は小径部52となり(オス側端部となり)、第4分割ダクト40の前端の前側接続口42と第1分割ダクト10の前側接続口12は大径部51となる(メス側端部となる)。さらに前側接続口42、12は、開口の縁部に傾斜面53aを残し、大径部51よりも大きな開口を備えることができる。
【0034】
また、図示は省略したが、第2ダクト前駆体の端部(第1乃至第4の端部)の形状も第1ダクト前駆体と同一形状となっている。第2分割ダクト20の前側接続口22、第3分割ダクト30の前側接続口32および後側接続口33も同様に第2ダクト前駆体の端部を適宜切除して形成される。なお、第2分割ダクト20および第4分割ダクト40の後端は、本実施形態では切断せずに封鎖したままの状態とする。そして、第1〜第4分割ダクトの開口部15,25,35,45も、第1、第2ダクト前駆体のダクト本体の下部を切断加工して形成する。
【0035】
以上により、
図5,6に示すように、第1分割ダクト10の後側接続口13は小径部52となり(オス側端部となり)、第2分割ダクト20の前側接続口22は大径部51となる(メス側端部となる)。また、第1分割ダクト10の後側接続口13を第2分割ダクト20の前側接続口22に挿入して嵌合することができる。つまり、
図6に示すように、小径部52となる第1分割ダクト10の後側接続口13(オス側端部)は、大径部51となる第2分割ダクト20の前側接続口22(メス側端部)の内周側に配置される。
【0036】
このため、
図7に示すように、車両前側から後側に向けて空調装置からの空調風Airが流れると、第1分割ダクト10の後側接続口13の先端によって阻害されずにスムーズに流れる。また、傾斜面53aの内側の面と大径部51の内側の面とは滑らかに連続しているから、乱流の発生を抑制することができる。さらに、後側接続口13の縁部に傾斜面53aが残っているので、前側接続口22の後側接続口13への挿入が円滑に行われる。
【0037】
なお、
図8の比較例は、大径部51と小径部52との長手方向の位置関係が逆の場合を示したもので、空調風Airが第1分割ダクト10の後側接続口13の先端13aに当たるため、空調風の流れが乱れてしまい(乱流が発生し)、通気抵抗や騒音の観点から、望ましくない。
【0038】
次いで、本実施形態による作用効果を説明する。
【0039】
(1)本実施形態による空調ダクトは、樹脂のブロー成形によって中空状で長尺状に形成された各々2つずつの第1ダクト前駆体50と第2ダクト前駆体とから成形された第1〜第4分割ダクト10,20,30,40によって構成される。即ち、2つの第1ダクト前駆体のうちの一方の第1ダクト前駆体50における長手方向の第1の端部(前側接続口12)および第2の端部(後側接続口13)を開口させた第1分割ダクト10と、他方の第1ダクト前駆体50における長手方向の第1の端部(前側接続口42)を開口させた第4分割ダクト40と、2つの第2ダクト前駆体のうちの一方の第2ダクト前駆体における長手方向の第1の端部(前側接続口22)を開口させた第2分割ダクト20と、他方の第2ダクト前駆体における長手方向の第1の端部(前側接続口32)および第2の端部(後側接続口33)を開口させた第3分割ダクト30と、を組み付けて構成される。
【0040】
そして、前記第1分割ダクト10の前側接続口12及び前記第3分割ダクト30の前側接続口32は、空調風Airを送り出す空調装置4に嵌合して連通され、前記第1分割ダクト10の後側接続口13と前記第2分割ダクト20の前側接続口22とを嵌合して連通させ、前記第3分割ダクト30の後側接続口33と前記第4分割ダクト40の前側接続口42とを嵌合して連通させている。
【0041】
このように、空調ダクトを4つの分割ダクト10,20,30,40から構成したため、各分割ダクトを樹脂のブロー成形で成形する場合に金型の大きさを小さくすることができ、金型費用を低減することができる。また、第1分割ダクト10と第4分割ダクト40は、同一形状の第1ダクト前駆体50から形成され、第2分割ダクト20と第3分割ダクト30は、同一形状の第2ダクト前駆体から形成される。従って、第1分割ダクト10と第4分割ダクト40の共用化および第2分割ダクト20と第3分割ダクト30の共用化を図ることができ、コストを低減することができる。即ち、成形用の金型を共用化することにより、金型費用がさらに低減される。
【0042】
(2)前記第1ダクト前駆体50および第2ダクト前駆体の端部は、ダクト本体側の大径部51と、該大径部51の先端側に配置されて大径部51よりも径が小さい小径部52とから構成され、前記第1分割ダクト10の後側接続口13と第2分割ダクト20の前側接続口22のうち一方を、ダクト前駆体の小径部52を切除して大径部51に形成し、後側接続口13と前側接続口22のうち他方を小径部52を残して端縁を切除することによって開口させ、この大径部51の内周側に小径部52を挿入して嵌合するようにした。
このように、第1分割ダクト10の後側接続口13と第2分割ダクト20の前側接続口22を、ダクト前駆体の端部を目的に応じた位置で切除するという簡単な方法で成形することができる。
【0043】
(3)前記第1ダクト前駆体50および第2ダクト前駆体の端部は、ダクト本体側の大径部51と、該大径部51の先端側に配置されて大径部よりも径が小さい小径部52とから構成され、前記第3分割ダクト30の後側接続口33と第4分割ダクト40の前側接続口42のうち一方を、ダクト前駆体の小径部52を切除して大径部51に形成し、後側接続口33と前側接続口42のうち他方を小径部52を残して端縁を切除することによって開口させ、この大径部51の内周側に小径部52を挿入して嵌合するようにした。
このように、第3分割ダクト30の後側接続口33と第4分割ダクト40の前側接続口42を、ダクト前駆体の端部を目的に応じた位置で切除するという簡単な方法で成形することができる。
【0044】
(4)前記第2分割ダクト20の前側接続口22と第4分割ダクト40の前側接続口42を、ダクト前駆体の小径部52を切除して大径部51に形成し、前記第1分割ダクト10の後側接続口13と第3分割ダクト30の後側接続口33を小径部52に形成し、前記第1分割ダクト10から第2分割ダクト20に向けて空調風Airを流すと共に、第3分割ダクト30から第4分割ダクト40に向けて空調風Airを流すように構成した。
従って、第2分割ダクト20の前側接続口22の先端または第4分割ダクト40の前側接続口42の先端によって空調風Airの流れが阻害されないため、空調風Airをスムーズに流すことができる。
【0045】
(第2実施形態)
ここまで、4つの分割ダクト10、20、30、40を、2つのダクト前駆体から形成する場合を説明してきたが、1つのダクト前駆体から形成してもよい。以下、本実施形態の空調ダクトについて説明するが、第1実施形態と同一箇所には同一符号を付して説明を省略する。
【0046】
図9に示すように、本実施形態に係る車両の空調ダクトは4つの分割ダクトから構成されている。具体的には、車両左側かつ前側に配設された第1分割ダクト10’と、該第1分割ダクト10’の後方側に配設されるとともに嵌合された第2分割ダクト20’と、前記第1分割ダクト10’の車両右側に配設された第3分割ダクト30’と、該第3分割ダクト30’の後方側に配設されるとともに嵌合された第4分割ダクト40’と、から構成されている。即ち、第2分割ダクト20’は、第1分割ダクト10’に対して車両前後方向(長手方向)の後側に隣接し、第3分割ダクト30’は、第1分割ダクト10’に対して車幅方向(短手方向)に隣接して配設されている。第4分割ダクト40’は、第3分割ダクト30’に対して車両前後方向(長手方向)の後側に隣接して配設されると共に、第2分割ダクト20に対して車幅方向(短手方向)に隣接して配設されている。また、空調装置4および空調ダクト5には、車室内に空調空気を送り出すグリル6,7が複数設けられ、下方に向かって空調空気を送給可能になっている。
【0047】
第1分割ダクト10’は、車両前後方向である長手方向に延在し、筒状のダクト本体11’と、該ダクト本体11’の前端に配設され、空調装置4に連通して接続される前側接続口12’(第1の端部)と、ダクト本体11’の後端に配設され、第2分割ダクト20’の前端に嵌合する後側接続口13’(第2の端部)と、ルーフボー3にボルトを介して取り付けられる取付片14’と、ダクト本体11’に形成され、車室内に空調風を送り出す開口部15’と、車両右側(短手方向)に向けて延在し、第3分割ダクト30’に連結される上流側脚部としての前側脚部16’および後側脚部17’と、を備えている。前記開口部15には、
図1のグリル7が装着される。
【0048】
第4分割ダクト40’は、車両前後方向である長手方向に延在し、筒状のダクト本体41’と、該ダクト本体41’の前端に配設され、第3分割ダクト30’の後端に嵌合する前側接続口42’(第3の端部)と、ルーフボー3にボルトを介して取り付けられる取付片44’と、ダクト本体41’に形成され、車室内に空調風を送り出す開口部45’と、車両左側(短手方向)に向けて延在し、第2分割ダクト20’に連結される下流側脚部としての前側脚部46’および後側脚部47’と、を備えている。前記開口部45’には、
図1のグリル7が装着される。ダクト本体41’の後端48’(第4の端部)は、本実施形態では封鎖されたものとするが、必要に応じ開口して開口部45’としてもよい。
【0049】
第1分割ダクト10’と第4分割ダクト40’とは、同一の第1ダクト前駆体50’(図示せず)から形成される。この第1ダクト前駆体50’は、周知の手法である樹脂ブロー成形の技術を用いて中空状でかつ長尺上に形成されるもので、第1乃至第4の端部はブロー成形後、前述した
図3、4に示す構造を備えている。そして、用途に応じて端部を適宜切断し開口することで、第1分割ダクトまたは第4分割ダクトとして、任意に形成される。
【0050】
このため第4分割ダクトの形状は、第1分割ダクト10’を中心点10’aを基準にルーフパネル2と並行に180°回転させた形状と、端部を除き、同一となる。
【0051】
また、第2分割ダクト20’は、車両前後方向である長手方向に延在し、筒状のダクト本体21’と、該ダクト本体21’の前端に配設され、第1分割ダクト10’の後端の後側接続口13’に嵌合される前側接続口22’(第3の端部)と、ルーフボー3にボルトを介して取り付けられる取付片24’と、ダクト本体21’に形成され、車室内に空調風を送り出す開口部25’と、車両右側(短手方向)に向けて延在し、第4分割ダクト40’の前側脚部45’と後側脚部47’とにそれぞれ連結される、下流側脚部としての前側脚部26’と後側脚部27’とを備えている。前記開口部25’には、
図1のグリル7が装着される。ダクト本体21’の後端28’(第4の端部)は、本実施形態では封鎖されたものとして説明するが、必要に応じ開口して開口部25’としてもよい。
【0052】
第3分割ダクト30’は、車両前後方向である長手方向に延在し、筒状のダクト本体31’と、該ダクト本体31’の前端に配設され、空調装置4に接続される前側接続口32’(第1の端部)と、ダクト本体31’の後端に配設され、第4分割ダクト40’の前端に嵌合する後側接続口33’(第2の端部)と、ルーフボー3にボルトを介して取り付けられる取付片34’と、ダクト本体31’に形成され、車室内に空調風を送り出す開口部35’と、車両左側(短手方向)に向けて延在し、第1分割ダクト10’の前側脚部16’と後側脚部17’とにそれぞれ連結される、上流側脚部としての前側脚部36’と後側脚部37’とを備えている。前記開口部35’には、
図1のグリル7が装着される。
【0053】
そして、第2分割ダクト20’と第3分割ダクト30’とは、前述した同一の第1ダクト前駆体50’から形成される。第2分割ダクト20’は、第1ダクト前駆体50’から形成される第1分割ダクト10’と、第4の端部を除いて同一の形状である。第3分割ダクト30’は、これも第1ダクト前駆体50’から形成される第4分割ダクト40’と、第4の端部を除いて同一の形状となっている。
【0054】
このため第4分割ダクト40’の形状は、第1分割ダクト10’を中心点10’aを基準にルーフパネル2と並行に180°回転させた形状と、端部を除き、同一となるとともに、第2分割ダクト20’を中心点20’aを基準にルーフパネル2と並行に180°回転させた形状と、端部を除き、同一となる。
【0055】
また、第3分割ダクト30’の形状は、第2分割ダクト20’を中心点20’aを基準にルーフパネル2と並行に180°回転させた形状と、端部を除き、同一となるとともに、第1分割ダクト10’を中心点10’aを基準にルーフパネル2と並行に180°回転させた形状と、端部を除き、同一となる。
【0056】
なお、第1ダクト前駆体50’の端部の構造と、第1乃至第4の端部の形成工程とは、第一実施形態の説明で前述した構造、および形成工程と同様である。
【0057】
次いで、本実施形態による作用効果を説明する。本実施形態の効果は、第1実施形態で得られる作用効果に加え、次の効果が得られる。
【0058】
(1)本実施形態による空調ダクトは、樹脂のブロー成形によって中空状で長尺状に形成された4つの第1ダクト前駆体50’から成形された第1〜第4分割ダクト10’,20’,30’,40’によって構成される。即ち、4つの第1ダクト前駆体のうちの1つの第1ダクト前駆体50’(一のダクト前駆体)における長手方向の第1の端部(前側接続口12’)および第2の端部(後側接続口13’)を開口させた第1分割ダクト10’と、他の1つの第1ダクト前駆体50’(二のダクト前駆体)における長手方向の第1の端部(前側接続口22’)を開口させた第2分割ダクト20’と、さらに他の1つの第1ダクト前駆体50’(三のダクト前駆体)における長手方向の第1の端部(前側接続口32’)および第2の端部(後側接続口33’)を開口させた第3分割ダクト30’と、残る1つの第1ダクト前駆体50’(四のダクト前駆体)における長手方向の第1の端部(前側接続口42’)を開口させた第4分割ダクト40’と、を組み付けて構成される。
【0059】
そして、前記第1分割ダクト10’の前側接続口12’及び前記第3分割ダクト30’の前側接続口32’は、空調風Airを送り出す空調装置4に嵌合して連通され、前記第1分割ダクト10’の後側接続口13’と前記第2分割ダクト20’の前側接続口22’とを嵌合して連通させ、前記第3分割ダクト30’の後側接続口33’と前記第4分割ダクト40’の前側接続口42’とを嵌合して連通させている。
【0060】
このように、第1分割ダクト10’と、 第2分割ダクト20’と、 第3分割ダクト30’と、第4分割ダクト40’とは、同一形状の第1ダクト前駆体50’から形成されるので、当該4つの分割ダクトの共用化を図ることができ、コストを低減することができる。即ち、成形用の金型を共用化することにより、金型費用がさらに低減される。