特許第5856874号(P5856874)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5856874
(24)【登録日】2015年12月18日
(45)【発行日】2016年2月10日
(54)【発明の名称】ダイカスト成形品の堰折り装置
(51)【国際特許分類】
   B22D 31/00 20060101AFI20160128BHJP
【FI】
   B22D31/00 Z
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-42444(P2012-42444)
(22)【出願日】2012年2月28日
(65)【公開番号】特開2013-176790(P2013-176790A)
(43)【公開日】2013年9月9日
【審査請求日】2014年11月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003458
【氏名又は名称】東芝機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100159651
【弁理士】
【氏名又は名称】高倉 成男
(74)【代理人】
【識別番号】100091351
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 哲
(74)【代理人】
【識別番号】100088683
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100109830
【弁理士】
【氏名又は名称】福原 淑弘
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100095441
【弁理士】
【氏名又は名称】白根 俊郎
(74)【代理人】
【識別番号】100084618
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 貞男
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100119976
【弁理士】
【氏名又は名称】幸長 保次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140176
【弁理士】
【氏名又は名称】砂川 克
(74)【代理人】
【識別番号】100158805
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 守三
(74)【代理人】
【識別番号】100124394
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 立志
(74)【代理人】
【識別番号】100112807
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 貴志
(74)【代理人】
【識別番号】100111073
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 美保子
(74)【代理人】
【識別番号】100134290
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 将訓
(72)【発明者】
【氏名】黒川 幸夫
【審査官】 池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−326066(JP,A)
【文献】 特開昭59−001061(JP,A)
【文献】 特開平05−228747(JP,A)
【文献】 特開平03−131445(JP,A)
【文献】 特開昭61−076241(JP,A)
【文献】 特開昭53−060775(JP,A)
【文献】 特開平04−146039(JP,A)
【文献】 特開2010−188469(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 31/00
B22D 17/00−17/32
B23Q 3/00−3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
製品部と該製品部にオーバーフロー部及び湯口側凝固部が一体的に形成されたダイカスト成形品の前記湯口側凝固部を保持するクランプ機構と、
前記ダイカスト成形品の上方に配置され、前記オーバーフロー部に向かって突出するプッシャを有する昇降ユニットと、
前記昇降ユニットを上下方向に移動させ前記クランプ機構によって保持された前記ダイカスト成形品に対し、前記昇降ユニットを下降させることにより前記プッシャの端を前記オーバーフロー部に当接させるとともに前記プッシャによって前記オーバーフロー部を下方に押してオーバーフロー側の堰部を破断させる昇降機構と、
記ダイカスト成形品の前記製品部を下側から支え前記製品部の輪郭に倣って変形する形状可変部材を有する支持体と、を具備し
前記形状可変部材が、前記ダイカスト成形品の鋳造余熱の温度域で前記製品部の輪郭に応じた形状に塑性変形を生じる熱可塑性材料からなることを特徴とするダイカスト成形品の堰折り装置。
【請求項2】
前記昇降ユニットは、前記プッシャを取り付けるための取付孔が形成されている基盤を有し、前記取付孔は、前記基盤に所定間隔で複数配置されていることを特徴とする請求項1記載の堰折り装置。
【請求項3】
前記プッシャは、前記オーバーフロー部に対応する第1のプッシャと、前記製品部に対応する前記第1のプッシャよりも短い第2のプッシャと、を含むことを特徴とする請求項2記載の堰折り装置。
【請求項4】
前記第2のプッシャは、前記基盤の前記取付孔へ取付ける際に工具によって保持する操作部を有し、前記製品部に接触する先端部には保護部材が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の堰折り装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋳造されたダイカスト成形品から製品部以外の不要部分を除去するための堰折り装置に係り、特に製品部を支持する支持体に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイカスト成形機の一例では、金属の溶湯をスリーブ内に供給したのち、スリーブ内の溶湯をプランジャ(ショットピストンあるいはチップとも称される)によって金型内のキャビティに高速かつ高圧で射出するようになっている。キャビティ内で冷却され固化したダイカスト成形品は、金型が開くことによって金型から取出される。金型から取出されたダイカスト成形品は、製品部と、製品部の周囲で製品部と一体に固化している湯口側凝固部およびオーバーフロー部等のいわゆる“大バリ”を含んでいる。湯口側凝固部には、ビスケット部およびランナー部などが含まれている。また製品部の周囲には金型同士の合わせ面(パーティングライン)に沿ってバリが生じていることもあるが、このようなバリはバフ研磨やグラインダ等による仕上げ加工によって除去される。
【0003】
前記湯口側凝固部およびオーバーフロー部等の“大バリ”を製品部から分離させるために、特許文献1に開示されている装置が公知である。特許文献1の装置は、サーボモータやシリンダ等のアクチュエータを備えた押さえ具によって、ダイカスト成形品の下側1箇所を支持し、オーバーフロー部を除去する際にチッピングハンマによってオーバーフロー側の堰部を破断させ、湯口側凝固部を除去する際には、チッピングハンマを水平方向等に移動させたのち、このチッピングハンマによって湯口側の堰部を破断させるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−326066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のように、サーボモータやシリンダ等のアクチュエータを備えた押さえ具によってダイカスト成形品を支持する装置では、ダイカスト成形品の形状によってはサーボモータを動作させるプログラムの変更や、シリンダの伸縮距離の調整などの手間のかかる準備が必要となり、そのための事前調整に時間がかかるという問題があった。
【0006】
そこで、サーボモータやシリンダ等のアクチュエータを使用する代りに、簡単な構成の支持台の上にダイカスト成形品を単に乗せるだけの支持手段も考えられた。しかしダイカスト成形品のオーバーフロー部は、製品部の周辺部の片側(湯口とは反対側)に形成されているため、オーバーフロー部をプッシャによって上方から突き押して破断させる堰折り装置に使用した場合に、プッシャがオーバーフロー部の上面に当接してさらに下方に移動すると、オーバーフロー部が下方に曲がるにつれてダイカスト成形品に横方向のモーメントが作用し、その結果、ダイカスト成形品の下面と支持台の上面とが擦れ、ダイカスト成形品に傷が付くおそれがあった。
【0007】
従って本発明の目的は、オーバーフロー部をプッシャによって上方から突き押して堰部を破断させる堰折り装置において、製品部を好ましい状態で支持することができる簡易な構成の支持体を備えたダイカスト成形品の堰折り装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の堰折り装置は、製品部と該製品部にオーバーフロー部及び湯口側凝固部が一体的に形成されたダイカスト成形品の前記湯口側凝固部を保持するクランプ機構と、前記ダイカスト成形品の上方に配置され、前記オーバーフロー部に向かって突出するプッシャを有する昇降ユニットと、前記昇降ユニットを上下方向に移動させ前記クランプ機構によって保持された前記ダイカスト成形品に対し、前記昇降ユニットを下降させることにより前記プッシャの端を前記オーバーフロー部に当接させるとともに前記プッシャによって前記オーバーフロー部を下方に押してオーバーフロー側の堰部を破断させる昇降機構と、前記ダイカスト成形品の前記製品部を下側から支え前記製品部の輪郭に倣って変形する形状可変部材を有する支持体と、を具備している。前記形状可変部材は、前記ダイカスト成形品の鋳造余熱の温度域で前記製品部の輪郭に応じた形状に塑性変形を生じる熱可塑性材料からなる
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、プッシャが下降してオーバーフロー部に突き当たり、さらに下降することによってオーバーフロー側の堰部が破断される際に、ダイカスト成形品の製品部の下面に応じた形状に変形している前記形状可変部材の上面によって、製品部が支持される。このためオーバーフロー側の堰部をプッシャによって破断する際にダイカスト成形品が横方向等に動くような力が働いても製品部が動くことを抑制でき、たとえ動いたとしても形状可変部材がその動きに追従できるため、支持体が製品部と擦れることによる傷を回避できる。しかもこの支持体の形状可変部材は様々な形状の製品部に対応できるため、製品部に応じて行なわれる事前調整が簡素化し、堰折り作業の準備に要する時間を短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の1つの実施形態に係る堰折り装置とダイカスト成形品を模式的に示す側面図。
図2】ダイカスト成形機の一部を示す断面図。
図3】ダイカスト成形品のパーティングラインに沿う断面図。
図4図1に示された堰折り装置の昇降ユニットを下方から見た斜視図。
図5図4に示された昇降ユニットのプッシャとダイカスト成形品との位置関係を示す底面図。
図6】前記堰折り装置による堰折り処理の流れを示すフローチャート。
図7】堰折り装置にダイカスト成形品が搬入された状態を模式的に示す側面図。
図8】支持体が前進した状態を模式的に示す側面図。
図9】昇降ユニットが前進した状態を模式的に示す側面図。
図10】昇降ユニットが第1の高さに下降した状態を模式的に示す側面図。
図11】支持体が後退した状態を模式的に示す側面図。
図12】昇降ユニットが第2の高さに下降した状態を模式的に示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明の1つの実施形態に係る堰折り装置について、図1から図12を参照して説明する。
図1にダイカスト成形品Wと堰折り装置20が示されている。ダイカスト成形品Wは、例えば図2に一部を示すダイカスト成形機1によって予め鋳造されている。
【0012】
図2は、ダイカスト成形機1の一例を模式的に示している。このダイカスト成形機1は、固定ダイプレート2と、移動ダイプレート3とを含んでいる。固定ダイプレート2に固定側の金型4が取付けられている。移動ダイプレート3に移動側の金型5が取付けられている。金型4,5が閉じた状態において、金型4,5間にダイカスト成形品Wに応じた形状のキャビティ6が形成される。キャビティ6は、湯口であるゲート7と、湯道であるランナー8を介して、溶湯供給機構10に連通している。
【0013】
溶湯供給機構10は、スリーブ11と、スリーブ11に挿入されたプランジャチップ12を有するプランジャ13と、プランジャ13を駆動するための駆動源(図示せず)などを含んでいる。注湯口14からスリーブ11内に溶融金属が供給されたのち、プランジャ13が前進することにより、スリーブ11内の溶融金属がランナー8とゲート7を経て、キャビティ6に供給される。この溶融金属がキャビティ6内で固化することにより、ダイカスト成形品Wが鋳造される。
【0014】
キャビティ6の上方にオーバーフロー空間15が形成されている。キャビティ6に流入した溶融金属の一部は、オーバーフロー空間15に入り込んで固化する。また、溶融金属の一部はプランジャチップ12の先端面とランナー8との間に残留し、固化する。
【0015】
このためダイカスト成形機1によって鋳造されたダイカスト成形品Wは、図3に一例を示すように、製品部Wと、製品部Wの周囲において製品部Wと一体に固化しているオーバーフロー部Wと、湯口側凝固部Wとを含んでいる。製品部Wとオーバーフロー部Wとの間に、断面積が狭まった形状のオーバーフロー側の堰部Wが形成されている。
【0016】
湯口側凝固部Wは、ビスケット部Wと、ランナー部Wとを含んでいる。ビスケット部Wは、プランジャチップ12(図2に示す)の端面側で凝固したものである。製品部Wとランナー部Wとの間には、断面積が狭まった形状の湯口側の堰部Wが形成されている。オーバーフロー側の堰部Wと湯口側の堰部Wは、堰折り装置20によって破断させる対象となる堰の一例である。なお、金型4,5の合わせ面(パーティングラインX)に沿ってバリが生じることもあるが、このようなバリは、バフ研磨やグラインダ等による仕上げ加工によって除去される。
【0017】
図1に示す堰折り装置20は、ダイカスト成形品Wを保持するクランプ機構30と、ダイカスト成形品Wの上方に配置される昇降ユニット31と、ダイカスト成形品Wの下方に配置される支持体32と、制御部として機能するコントローラ33などを備えている。コントローラ33には、ダイカスト成形品Wに応じて堰折り装置20を電気的に制御するためのコンピュータプログラムとメモリ等が組込まれている。
【0018】
クランプ機構30は、開閉可能なチャック40,41と、チャック40,41を駆動するチャック駆動機構42を含んでいる。チャック駆動機構42は、例えば産業用ロボットを利用でき、チャック40,41によって保持されたダイカスト成形品Wを所望の位置に向けて上下方向(図1に矢印Aで示す方向)および水平方向(図1に矢印Bで示す方向)に移動させることができるようになっている。チャック40,41を閉じると、ダイカスト成形品Wのビスケット部Wが保持され、チャック40,41を開けると、ビスケット部Wが解放される。このチャック駆動機構42は、例えばコントローラ33によって制御される。
【0019】
昇降ユニット31は、昇降機構50によって上下方向(図1に矢印Cで示す方向)に往復するようになっている。昇降機構50は、例えば上下方向に伸縮する二段シリンダ51を有し、図9に示す初期位置Hから、図10に示す第1の高さHと、第1の高さHよりも低い第2の高さH図12に示す)とにわたって、二段階のストロークで昇降ユニット31を移動させるものである。
【0020】
なお、昇降機構50としては、二段シリンダ51以外のアクチュエータ、例えばボールねじとサーボモータを用いてもよいし、あるいは上下方向に移動するリニアモータなどが使用されてもよい。要するに初期位置Hから第1の高さHと第2の高さHとの間を移動させることができるものであればよい。この昇降ユニット31は、位置決め機構52によって、水平方向(図1に矢印Dで示す方向)に移動させることも可能である。これら昇降機構50と位置決め機構52は、コントローラ33によって制御される。
【0021】
図4は、昇降ユニット31を下側から見た斜視図である。この昇降ユニット31は、フレーム55に固定された基盤56を有している。この基盤56には、水平方向に所定ピッチP1,P2で複数の取付孔60が形成されている。各取付孔60の一例は、基盤56を上下方向に貫通するねじ孔である。
【0022】
基盤56の下面側には、複数(例えば3本)の第1のプッシャ61と、1本の第2のプッシャ62が取付けられている。第1のプッシャ61と第2のプッシャ62は、いずれも基盤56の下面から下方に突出している。図1に示すように第1のプッシャ61の長さL1は、第2のプッシャ62の長さL2よりも大きい。
【0023】
第1のプッシャ61は、前記クランプ機構30によって保持された状態のダイカスト成形品Wのオーバーフロー部Wと対応した位置に設けられている。すなわち第1のプッシャ61は、基盤56に形成された多数の取付孔60のうち、オーバーフロー部Wと対応した位置の取付孔60を選択して挿入し、ねじ込むことにより、基盤56に固定されている。このためオーバーフロー部Wの形態が異なる複数種類のダイカスト成形品に対応することができる。
【0024】
第1のプッシャ61の一例は、頭部に六角穴70を有する六角穴付きボルトであり、第1のプッシャ61を基盤56に取付ける際に六角棒レンチによって回転させることにより、第1のプッシャ61のねじ部71を取付孔60にねじ込むことができるようになっている。
【0025】
第1のプッシャ61の長さL1は、昇降ユニット31が初期位置H図9に示す)にあるときにはオーバーフロー部Wの上面に届かないが、昇降ユニット31が第1の高さH図10に示す)まで下降するとオーバーフロー部Wの上面に当接してオーバーフロー部Wを下方に突き押すことができる寸法としている。なお、第1のプッシャ61の数は3つに限ることはなく、要するにオーバーフロー部Wの数や形状に応じて基盤56に設けられていればよい。また、複数本の第1のプッシャ61のそれぞれの長さL1が互いに異なっていてもよい。
【0026】
第2のプッシャ62は、ダイカスト成形品Wの製品部Wと対応した位置に設けられている。第2のプッシャ62もねじ部75を有しており、ねじ部75を基盤56のいずれかの取付孔60を選択してねじ込むことによって、基盤56に固定されている。すなわち第2のプッシャ62は、基盤56に形成された多数の取付孔60のうち、製品部Wと対応した位置の取付孔60を選択して挿入し、ねじ込むことにより、基盤56に固定されている。このため製品部Wの形態が異なる複数種類のダイカスト成形品に対応することができる。
【0027】
第2のプッシャ62の長さL2は、昇降ユニット31が第1の高さH図10に示す)にあるときには製品部Wの上面に届かないが、昇降ユニット31が第2の高さH図12に示す)まで下降すると製品部Wの上面に当接して製品部Wを下方に向けて押すことができる寸法としている。
【0028】
第2のプッシャ62の下端には、製品部Wに当接した際に製品部Wを損傷させることを避けるために、ある程度の弾性を有する耐熱性の保護部材76(図4に示す)が設けられている。またこの第2のプッシャ62には、プッシャ62を取付孔60にねじ込む際にレンチ等の工具によって保持する操作部77が設けられている。なお、第2のプッシャ62の数は2つ以上であってもよく、要するに製品部W1を上から突き押すことができるように、少なくとも1つ設けられていればよい。
【0029】
図1に示すように、クランプ機構30によって保持されたダイカスト成形品Wの製品部W1の下方に支持体32が設けられている。この支持体32は、支持体駆動機構80によって、上下方向(図1に矢印Eで示す方向)と、水平方向(矢印Fで示す方向)に移動させることが可能である。支持体駆動機構80はコントローラ33によって制御され、支持体駆動機構80によって支持体32が前進させられると支持体32が製品部W1の真下に位置し、支持体32が後退させられると支持体32が製品部W1の下から側方に退避するようになっている。支持体32の下方には、上面側が開口した堰収容箱90と製品収容箱91とが配置されている。上方から見たときの堰収容箱90の開口面積は製品収容箱91の開口面積よりも大きい。
【0030】
支持体32は、トレイ32aと、トレイ32aに収容された形状可変部材32bとを有している。形状可変部材32bは、ダイカスト成形品Wの製品部W1と接する上面32cを有し、この上面32cが製品部W1の下面の輪郭に倣って変形することができる材料によって構成されている。すなわち製品部W1が形状可変部材32bに乗せられた状態において、形状可変部材32bの上面32cの少なくとも一部が製品部W1の下面の輪郭に応じて変形するようになっている。形状可変部材32bの上面32cには、形状可変部材32bがダイカスト成形品Wに付着しないように、剥離性のあるカバーが設けられているとよい。
【0031】
前記形状可変部材32bは、ダイカスト成形品Wの鋳造後の余熱の温度域(例えば100〜200℃)のもとで製品部W1の輪郭に応じて塑性変形を生じる熱可塑性材料、例えば熱可塑性のエラストマー(TPE)であってもよい。あるいは製品部W1の輪郭に倣う形状に移動可能な多数の粒子の集合体、例えば多数のガラスビーズの集合体あるいは砂の上面を変形可能なカバーで覆ったものでもよい。また、玉砂利等の粒子の集合体の上面に耐熱マットを敷いたものでもよいし、常温で流動性のあるゼリー状の樹脂(例えばジェルマット)の上面に耐熱カバーを敷いたものでもよい。また、耐熱性の気密袋に圧縮空気あるいは液体等の流体を封入したものや、粘性あるいは粘弾性を有する流動性のある材料を封入してなる流体マットが使用されてもよい。いずれにしても形状可変部材32bの上面32cが製品部W1の輪郭に完全に一致した形状に変形する必要はなく、製品部W1の輪郭の少なくとも一部に沿った形状に変形することにより、凹凸のある製品部W1を面で支持することができればよい。
【0032】
次に、前記構成の堰折り装置20の動作(堰折り処理)について、図6に示すフローチャートと、図7から図12に示す工程説明図を参照して説明する。
ダイカスト成形機1によって鋳造されたダイカスト成形品Wは、図6の動作S1において堰折り装置20に搬入される。このダイカスト成形品Wは、動作S2において、図7に示すように、ビスケット部Wがクランプ機構30によって保持される。保持されたダイカスト成形品Wは、そのパーティングラインXが概ね水平となるように横に倒した姿勢となる。このため、製品部Wの上面とオーバーフロー部Wの上面とが概ね同じ高さとなる。
【0033】
図6の動作S3において、図8に示すように、支持体32がダイカスト成形品Wの製品部Wの下方の位置まで前進する。さらに図9に示すように、支持体32が上昇することにより、支持体32によって製品部Wが支持される。この状態において、形状可変部材32bの上面32cの少なくとも一部が、製品部Wの下面に応じた形状となっている。そして昇降ユニット31がダイカスト成形品Wの上方の位置まで移動する。このとき昇降ユニット31は初期位置Hにある。このため、第1のプッシャ61の下端がオーバーフロー部Wの上面と離間対向し、かつ、第2のプッシャ62の下端が製品部Wの上面と離間対向する。
【0034】
図6の動作S4では、図10に示すように、昇降ユニット31が前記初期位置Hから第1の高さHまで下降する。そうすると、第1のプッシャ61の下端がオーバーフロー部Wに突き当たり、その位置からさらに下降する。このとき製品部Wは支持体32によって支持されており、しかも形状可変部材32bの上面32cが製品部Wの下面の輪郭に応じて凹凸のある形状となっている。このため第1のプッシャ61がオーバーフロー部Wを押す際に、製品部Wは、形状可変部材32bの変形した上面32cによって、面で支えられることになる。このように支持された製品部Wに対して、オーバーフロー部Wのみが第1のプッシャ61によって強制的に押下げられることにより、オーバーフロー側の堰部Wが破断し、オーバーフロー部Wが堰収容箱90内に落下する。
【0035】
図6の動作S5では、図11に示すように、支持体32が製品部Wの下方から側方の退避位置まで後退する。後退した支持体32の上面32cには、それまで支持していた製品部Wの輪郭に応じた凹部32dが残っている。このため、これ以降の堰折りサイクルで処理されるダイカスト成形品Wの形状が1つ前のダイカスト成形品Wと共通であれば、既に形成されている凹部32dに次のダイカスト成形品Wの製品部Wを挿入することが可能である。
【0036】
図6の動作S6では、図12に示すように、昇降ユニット31が前記第1の高さHから第2の高さHまで下降する。そうすると、第2のプッシャ62の下端が製品部Wに突き当たり、その位置からさらに下降する。このとき湯口側凝固部Wがクランプ機構30によって支持されているため、湯口側凝固部Wに対して製品部Wのみが第2のプッシャ62によって強制的に押下げられることにより、湯口側の堰部Wが破断し、製品部Wが製品収容箱91内に落下する。
【0037】
図6の動作S7において、昇降ユニット31が上昇する。さらに動作S8において、クランプ機構30が所定のビスケット回収部まで移動し、ビスケット部Wを解放(アンクランプ)することにより、ビスケット部Wを含む湯口側凝固部Wがビスケット回収部に回収される。そして動作S9において、製品収容箱91に収容された製品部Wが、例えばロボットアーム等の移送手段によって所定位置に搬出されることにより、堰折り処理の1サイクルが終了となる。
【0038】
以上説明した堰折り装置20は、第1のプッシャ61と第2のプッシャ62とを備えた昇降ユニット31を、昇降機構50によって初期位置Hから第1の高さHと第2の高さHとに順次下降させるだけで、オーバーフロー側の堰部Wと湯口側の堰部Wを能率良く破断させることができる。このためオーバーフロー部Wと湯口側凝固部Wとを製品部Wから能率良く除去することができる。
【0039】
本実施形態の堰折り装置20によれば、第1のプッシャ61が下降してオーバーフロー側の堰部Wが破断される際に、ダイカスト成形品Wの製品部Wの外形に沿って変形している形状可変部材32bの上面32cによって製品部Wが支持される。このため堰部Wが破断される際に、製品部Wは上下方向だけでなく横方向等に働く力に対しても支持されることになる。
【0040】
このためオーバーフロー部Wを第1のプッシャ61によって上方から押す際に、図1に示すようにオーバーフロー部Wが下方に曲がるにつれてモーメントMが生じ、ダイカスト成形品Wを水平方向等にずれ動かすような力が働いても、凹凸のある立体形状の上面32cによって製品部Wの横方向の動きが抑制され、たとえ動いたとしても形状可変部材32bの上面32cがその動きに追従するため、製品部Wが支持体32の上面32cに対して擦れることによる傷の発生を回避できる。しかも形状可変部材32bによって製品部Wが面(上面32c)で支持されるため、特定の箇所に応力が集中することを回避できる。形状可変部材32bの上面32cは、様々な形状の製品部Wの輪郭に対応できるため、製品部Wに応じて形状可変部材32bの位置を微調整したり、プログラムを変更したりする必要がなく、堰折り作業に際しての準備を短時間に行なうことができる。
【0041】
前記したように本実施形態では、第1のプッシャ61によって、オーバーフロー側の堰部Wを破断させたのち、第2のプッシャ62によって湯口側の堰部Wを破断させているが、1種類のプッシャのみを備えた昇降ユニットによってオーバーフロー側の堰部Wのみを破断させるようにしてもよい。
【0042】
また本発明を実施するに当たって、ダイカスト成形品やダイカスト成形機の具体的な形状や構成をはじめとして、堰折り装置を構成する昇降ユニット、昇降機構、支持体、プッシャの数や形状および配置等、発明を構成する種々の要素の具体的な態様を必要に応じて変更して実施できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0043】
W…ダイカスト成形品、W…製品部、W…オーバーフロー部、W…湯口側凝固部、W…オーバーフロー側の堰部、W…ビスケット部、20…堰折り装置、30…クランプ機構、31…昇降ユニット、32…支持体、32b…形状可変部材、32c…上面、50…昇降機構、61…プッシャ。
図1
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