特許第5856883号(P5856883)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5856883
(24)【登録日】2015年12月18日
(45)【発行日】2016年2月10日
(54)【発明の名称】半導体集積回路装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/50 20060101AFI20160128BHJP
【FI】
   H01L23/50 X
   H01L23/50 S
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-68014(P2012-68014)
(22)【出願日】2012年3月23日
(65)【公開番号】特開2013-201228(P2013-201228A)
(43)【公開日】2013年10月3日
【審査請求日】2015年1月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002325
【氏名又は名称】セイコーインスツル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154863
【弁理士】
【氏名又は名称】久原 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100142837
【弁理士】
【氏名又は名称】内野 則彰
(74)【代理人】
【識別番号】100123685
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 信行
(72)【発明者】
【氏名】原田 博文
【審査官】 松田 直也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−270758(JP,A)
【文献】 特開2010−229346(JP,A)
【文献】 特開平09−120974(JP,A)
【文献】 特開2004−102345(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/50
H01L 21/52
H01L 21/58
H01L 21/312−21/32
H01L 21/47−21/475
H01L 21/447−21/449
H01L 21/60−21/607
H01L 27/04
H01L 27/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
P型の半導体基板を有する半導体集積回路と、
前記半導体集積回路を搭載する金属のダイパッドと、
前記半導体集積回路と前記ダイパッドとを接着する1×1012Ω・cm以上の体積抵抗率を有する絶縁性ペーストと、
からなり、
前記ダイパッドが、半導体集積回路動作上の最低電位となる端子以外の端子となっていることを特徴とする半導体集積回路装置。
【請求項2】
前記半導体集積回路動作上の最低電位となる端子以外の端子が、半導体集積回路動作上の最高電位となる端子であることを特徴とする請求項1記載の半導体集積回路装置。
【請求項3】
N型の半導体基板を有する半導体集積回路と、
前記半導体集積回路を搭載する金属のダイパッドと、
前記半導体集積回路と前記ダイパッドとを接着する1×1012Ω・cm以上の体積抵抗率を有する絶縁性ペーストと、
からなり、
前記ダイパッドが、半導体集積回路動作上の最高電位となる端子以外の端子となっていることを特徴とする半導体集積回路装置。
【請求項4】
前記半導体集積回路動作上の最高電位となる端子以外の端子が、半導体集積回路動作上の最低電位となる端子であることを特徴とする請求項3記載の半導体集積回路装置。
【請求項5】
前記半導体集積回路の消費電流が100μA以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の半導体集積回路装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体集積回路の実装形態に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路を作製するにあたり用いられる半導体基板には用途に応じて様々なものがあるが、多くはリンをはじめとするN型不純物を含むN型半導体基板もしくはボロンなどのP型不純物を含むP型半導体基板である。
【0003】
CMOS回路を含む半導体集積回路を作製する場合、N型半導体基板を使用するときには、図4(1)のような構成とする。すなわちN型半導体基板2にP型ウェル領域6を設け、このP型領域内にNチャネル型MOSトランジスタ(以下NMOSと称す)102、それ以外のN型半導体基板上にPチャネル型MOSトランジスタ(以下PMOSと称す)101を集積しこれらを金属配線で結線して回路を構成する。この時このP型ウェル領域及びN型半導体基板を確実に分離・絶縁するために、P型ウェル領域を半導体集積回路内の最低電位(以下VSS電位と称す)とし、N型半導体基板を半導体集積回路内の最高電位(以下VDD電位と称す)となるよう電位固定し、N型半導体基板とP型ウェル領域において順方向電流が流れる事を防いでいる。
【0004】
具体的には、N型半導体基板上に電位導通させるためのN型高濃度拡散領域13を設け、PMOSのソース端子をはじめ、回路内でVDD電位となる全ての端子と接続し、またP型ウェル領域にP型高濃度拡散領域12を設け、NMOSのソース端子をはじめ、回路内でVSS電位となる全ての端子と接続する。
【0005】
一方P型半導体基板上に半導体素子を集積した場合は図4(2)のように、P型半導体基板1と電位導通させるためのP型高濃度拡散領域12を設け、NMOSのソース端子をはじめ、回路内でVSS電位となる全ての端子と接続し、N型ウェル領域7にN型高濃度拡散領域13を設け、PMOSのソース端子をはじめ、回路内でVDD電位となる全ての端子と接続する。
【0006】
上記のように構成した場合、N型半導体基板を用いた半導体集積回路は半導体基板表面の素子形成領域を除いた半導体基板内部・底面・側面のN型領域全体がVDD電位となり、P型半導体基板を用いた半導体集積回路は半導体基板表面の素子形成領域を除いた半導体基板内部・底面・側面のP型領域全体がVSS電位となる。そのためダイシング工程等を経てチップ個片化した場合、半導体基板表面以外の部分でVDD電位もしくはVSS電位となるような半導体基板が露出することになる。
【0007】
このN型半導体基板/P型半導体基板は様々な理由で使い分けられ、例えば搭載するトランジスタなどの素子の性能や回路的な要請、さらには半導体集積回路装置を搭載するモジュール基板、モジュール回路の構成上の都合などに依存する。
【0008】
一つの例として、回路動作の制約上、半導体集積回路内の特定のMOSのバックバイアスをコントロールする場合が想定される。例えばNMOSのバックバイアスを回路的にコントロールする場合、図4(1)において特定のNMOS102のP型ウェル領域6内のP型高濃度拡散領域12とNMOSのソースの結線を外し、P型高濃度拡散領域に通じる配線をバックバイアスコントロール用の回路に接続することで実現できる。このようにN型半導体基板の場合は、NMOSを搭載するP型ウェル領域を独立に分割形成する事が可能であるため、特定のP型ウェル領域の電位を変化させNMOSのバックバイアスをコントロールする事が可能となる。
【0009】
ところが、図4(2)のようにP型半導体基板を使用する場合、NMOSを搭載するP型領域が全てつながっており同一電位となるため、特定のNMOSのバックバイアスをコントロールすることが不可能である。このような回路的な要請があれば、N型半導体基板を選ぶことになる。
【0010】
図2はこのようなN型半導体基板を使用した半導体集積回路を、ダイシング工程等を経て個片化し、パッケージに実装した様子を表している。図2(1)では個片化した半導体集積回路チップを、成形された金属製のリードフレーム内のダイパッド9に接着用ペースト8で接着し、しかるのちに形成するボンディングワイヤ10を通じて半導体集積回路上に形成している金属のパッドとダイパッドを電気的に接続させている。図2(2)に例示してあるように、半導体集積回路チップは通常複数の電気的接続用パッドを有しており、リードフレーム側もそれぞれそのパッドに対応したリード(端子)を用意しそれぞれボンディングワイヤで接続する。
【0011】
このとき通常接着用ペーストには半導体集積回路チップ下のダイパッドと、むきだしになっている半導体基板との電気的な接続を得るために銀ペーストを用いている。この例では半導体集積回路チップはN型半導体基板を用いているのでN型半導体基板と銀ペーストを介して接着するダイパッドはそのままVDD端子とし、図2(2)のように半導体集積回路チップ表面に形成するVDDパッド103とボンディングワイヤを通じて接続する構成をとる。
【0012】
半導体集積回路チップをダイパッドに接着しボンディングワイヤで導通させる方法は、例えば特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平5−160333号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、半導体基板の極性を変えた場合、従来の実装方法には以下のような課題があった。
半導体集積回路装置のラインナップバラエティを増やしていく際、既存半導体集積回路装置が実装されているモジュールを変更せずに半導体集積回路装置のみ新しい性能のものに付け替えるという制約がある場合、既存モジュールの端子と半導体集積回路装置のダイパッドにつながる端子の属性を一致(ピンコンパチブル化)させる必要が生じる。その場合、最もピンコンパチブル化を阻害する要因が半導体基板の極性の違いである。
【0015】
例えばN型半導体基板を用いた例である図2で用いているダイパッドにはP型半導体基板を用いて作製した同様の機能をもつ半導体集積回路チップを搭載する事はできない。なぜなら図3に示すようにP型半導体基板の電位はVSS電位に設定するので、銀ペーストを通じて接続するダイパッドもそのままVSS端子となり、図2(2)におけるVDD端子は図3(2)の例ではVSS端子に変えざるを得ない。そのため同一のダイパッドを使用するためにはN型半導体基板を予定した回路設計を行う必要があるが、回路的な要請によりそれが不可能な場合があり、設計柔軟性を著しく阻害する。
【0016】
最も確実な方法は、半導体集積回路装置に設計変更を加えず、既存モジュールのピン配置構成に合わせた新たなダイパッドを、搭載するモジュール基板毎に設計・製造する方法が挙げられるが、これは新規ダイパッド作製のためのコストと立ち上げ・確認期間が必要なことや量産効果面でもコスト増につながるというデメリットがある。
そのため、既存モジュール基板のピン属性に関わらず半導体集積回路チップを設計でき、しかも容易に実装工程でピンコンパチブル化を実現できる方法が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するために本発明では以下の手段を用いた。
まず、P型の半導体基板を有する半導体集積回路と、前記半導体集積回路を搭載する金属のダイパッドと、前記半導体集積回路と前記ダイパッドとを接着する1×1012Ω・cm以上の体積抵抗率を有する絶縁性ペーストと、からなり、前記ダイパッドが、半導体集積回路動作上の最低電位となる端子以外の端子となっていることを特徴とする半導体集積回路装置とした。
【0018】
さらに、前記半導体集積回路動作上の最低電位となる端子以外の端子が、半導体集積回路動作上の最高電位となる端子であることを特徴とする半導体集積回路装置とした。
【0019】
また、N型の半導体基板を有する半導体集積回路と、前記半導体集積回路を搭載する金属のダイパッドと、前記半導体集積回路と前記ダイパッドとを接着する1×1012Ω・cm以上の体積抵抗率を有する絶縁性ペーストと、からなり、前記ダイパッドが、半導体集積回路動作上の最高電位となる端子以外の端子となっていることを特徴とする半導体集積回路装置とした。
【0020】
さらに、前記半導体集積回路動作上の最高電位となる端子以外の端子が、半導体集積回路動作上の最低電位となる端子であることを特徴とする半導体集積回路装置とした。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、半導体基板のP,N極性に関わらず同一ダイパッドを採用できる半導体集積回路装置の実装方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】(1)本発明の第1の実施例の半導体集積回路装置を含む模式断面図である。(2)本発明の第1の実施例の半導体集積回路装置を含む平面図である。
図2】(1)従来の半導体集積回路装置を含む模式断面図である。(2)従来の半導体集積回路装置の平面図である。
図3】(1)従来の別の半導体集積回路装置を含む模式断面図である。(2)従来の別の半導体集積回路装置の平面図である。
図4】(1)P半導体基板上に構成されたCMOS回路を含む模式断面図である。(2)N半導体基板上に構成されたCMOS回路を含む模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1(1)、(2)は、本発明の実装方法を採用した半導体集積回路装置の断面図及び平面図である。
図1においては、P型半導体基板1を用いた半導体集積回路チップを、接着用ペースト8を介してダイパッド9に接着している。ここで接着用ペーストは1×1012Ω・cm以上の抵抗率を有する絶縁ペーストを用いている。そのためP半導体基板とその下のダイパッドは電気的な絶縁がなされ、それぞれの電位が異なっても電流が流れる事はない。
【0024】
またこのP型半導体基板を接着したダイパッド9にはボンディングワイヤ10を介して半導体集積回路の最大電位であるVDD端子103と導通する構成をとっている。このVDD端子は、図示はしないが、金属配線とN型高濃度拡散領域を介してN型ウェル領域7(図4(2))に接続している。一方、VSS端子104は別の端子にボンディングワイヤを介して導通する構成をとっており、回路上の最低電位となるP型ウェル領域6や最低電位となる他の素子端子と接続している。
【0025】
この半導体集積回路チップ及びボンディングワイヤはモールド樹脂11に囲まれ、外界の環境から守られている。一方、複数のリードの一端は図1(2)のようにモールド樹脂から外に露出され、他の回路基板と接続できるようにしている。
【0026】
この端子構成は図2におけるN型半導体基板を使用した半導体集積回路装置と同様の端子配置になっており、ピンコンパチブル化が確保されている事が分る。その理由は上述の通り、P型半導体基板を使っているにも関らず、絶縁性ペーストでダイパッドに接着しているためこのダイパッドの電位を上の半導体集積回路チップの基板によらず自由に設定できるからであり、従来例ではVSS端子となるはずのものをVDD端子とすることが可能となっている。
【0027】
図1図2の例ではVDD端子、VSS端子の取り扱いの自由度について述べたが、本発明では半導体集積回路チップを載せるダイパッドの電位を独立に設定できる事から、VDD端子、VSS端子以外の端子、例えば出力電圧端子、ON/OFFスイッチ端子などあらゆる端子に対応可能であることはいうまでもなく、幅の広いピンコンパチビリティが実現できていることがわかる。
【0028】
また、これまで図1に基づき、P型半導体基板に搭載した半導体集積回路を例に説明したが、この技術はN型半導体基板にも同様に適用することはいうまでもない。すなわち、絶縁ペーストを介して半導体集積回路を搭載したN型半導体基板をダイパッドに接着した場合、このN型半導体基板下ダイパッドの電位は従来必ずVDDとなるはずだったものを任意の端子に設定することが出来る。そのため、既存のP型半導体基板を使用している半導体集積回路装置に対しN型半導体基板を使用した半導体集積回路装置で容易にピンコンパチブル化が達成できる。
【0029】
さらにN型半導体基板を使用した半導体集積回路装置におけるメリットは、N型半導体基板を接着するダイパッドの電位を低電位にすることで、金属マイグレーション現象を考慮する必要がない、ということが挙げられる。
【0030】
ところで、本発明で必須となる絶縁性ペーストは一般に熱伝導率が金属ペーストに比べて低いため、半導体集積回路チップが大量の電流を扱う場合、その大電流に起因する発熱を逃がしにくいという特徴がある。これは実装パッケージの許容損失を低下させることにつながるため、高温環境下、大電流動作には適していない。そのため本発明は熱伝導率が気にならない程度の発熱で収まる100μA以下の消費電流をもつ半導体集積回路にとって好ましい技術といえる。
【符号の説明】
【0031】
1 P型半導体基板
2 N型半導体基板
3 ゲート絶縁膜
4 ソース・ドレイン領域
5 Alパッド
6 P型ウェル領域
7 N型ウェル領域
8 接着用ペースト
9 ダイパッド
10 ボンディングワイヤ
11 モールド樹脂
12 P型高濃度拡散領域
13 N型高濃度拡散領域
101 Pチャネル型MOSトランジスタ
102 Nチャネル型MOSトランジスタ
103 VDD端子
104 VSS端子
図1
図2
図3
図4