特許第5856885号(P5856885)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5856885
(24)【登録日】2015年12月18日
(45)【発行日】2016年2月10日
(54)【発明の名称】成膜装置及び成膜装置用基板搬送装置
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/56 20060101AFI20160128BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20160128BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20160128BHJP
【FI】
   C23C14/56 G
   H05B33/14 A
   H05B33/10
【請求項の数】2
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-70328(P2012-70328)
(22)【出願日】2012年3月26日
(65)【公開番号】特開2013-199700(P2013-199700A)
(43)【公開日】2013年10月3日
【審査請求日】2014年12月25日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成23年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「次世代高効率・高品質照明の基盤技術開発/有機EL照明の高効率・高品質化に係る基盤技術開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
(73)【特許権者】
【識別番号】591097632
【氏名又は名称】長州産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094581
【弁理士】
【氏名又は名称】鯨田 雅信
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 満
【審査官】 安齋 美佐子
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭59−009168(JP,A)
【文献】 特開2004−231999(JP,A)
【文献】 特開平09−241846(JP,A)
【文献】 特開平06−212427(JP,A)
【文献】 特開平10−140351(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00−14/58
C23C 16/00−16/56
H01L 51/50
H05B 33/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を搭載した基板保持部を成膜区間に向けて移送する移送区間と、基板保持部を成膜のために所定方向に移動させる成膜区間とに渡って連続的に形成された搬送路に沿って、複数の基板保持部を順次搬送する搬送機構を備えた成膜装置であって、
前記搬送機構は、前記基板保持部から突設された突部が摺動可能に嵌合又は挿入される溝を有する円筒カムを備えており、
前記円筒カムは、前記移送区間内の最初の位置から第1位置までの間に存在する各基板保持部を、前記第1位置まで、順次、第1速度で搬送するための第1の溝と、前記移送区間内の前記第1位置から前記成膜区間に近い第2位置までの間に存在する各基板保持部を、順次、前記第1速度よりも遅い第2速度で搬送するための第2の溝と、を有しており、
前記円筒カムは、前記移送区間内の前記第2位置から前記成膜区間の終わりの位置までの間に存在する各基板保持部に対しては、直接には力を加えないように構成されており、
前記円筒カムの第1の溝及び第2の溝は、それらの間に前記基板保持部の搬送方向の長さよりも大きな距離が存在するように形成されていることを特徴とする成膜装置。
【請求項2】
基板を搭載した基板保持部を成膜区間に向けて移送する移送区間と、基板保持部を成膜のために所定方向に移動させる成膜区間とに渡って連続的に形成された搬送路に沿って、複数の基板保持部を順次搬送する、成膜装置用基板搬送装置であって、
前記基板保持部から突設された突部が摺動可能に嵌合又は挿入される溝を有する円筒カムを備えており、
前記円筒カムは、前記移送区間内の最初の位置から第1位置までの間に存在する各基板保持部を、前記第1位置まで、順次、第1速度で搬送するための第1の溝と、前記移送区間内の前記第1位置から前記成膜区間に近い第2位置までの間に存在する各基板保持部を、順次、前記第1速度よりも遅い第2速度で搬送するための第2の溝と、を有しており、
前記円筒カムは、前記移送区間内の前記第2位置から前記成膜区間の終わりの位置までの間に存在する各基板保持部に対しては、直接には力を加えないように構成されており、
前記円筒カムの第1の溝及び第2の溝は、それらの間に前記基板保持部の搬送方向の長さよりも大きな距離が存在するように形成されていることを特徴とする成膜装置用基板搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜装置、並びに、成膜装置用の基板搬送装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、複数の基板保持部(基板を搭載した基板保持部)を連続して搬送可能な成膜装置として、例えば特許文献1,2に示す装置が知られている。特許文献1,2が提案する成膜装置においては、搬送開始位置と成膜区間との間に緩衝区間(移送区間)が設けられており、複数の基板保持部の移動速度を相互に可変な搬送機構が設けられている。これらの成膜装置によれば、基板とマスクとの位置合わせに時間がかかったとしても、緩衝区間を移動するときの基板保持部の速度を、成膜区間を通過するときの速度よりも速くすることで、成膜区間へ送られる各基板保持部間の間隔を狭くすることができる。特許文献1,2においては、このように成膜区間を通過する各基板保持部間の間隔を狭くすることにより、各基板保持部に載置された各基板に到達しないまま無駄になってしまう蒸気量が少なくなるため、蒸着材料の消費効率を向上させることができると主張されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−85605号公報
【特許文献2】特開2005−97655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1,2が提案する成膜装置においては、前述のように、緩衝区間を移動するときの基板保持部の速度を成膜区間を通過するときの速度よりも速くすることにより成膜区間へ送られる各基板保持部間の間隔を狭くすることができるだけであり、各基板保持部間の間隔をゼロにすることはできない。そのため、特許文献1,2の装置によるときは、成膜時に各基板に到達しないまま無駄になってしまう成膜材料をゼロにすることはできず、成膜材料の利用効率の向上には限界がある(例えば、1グラム当たり数万円以上するような高額の有機成膜材料を大量に使用して有機EL素子を製造するような場合には、各基板保持部間のわずかな間隔による有機成膜材料のロスが、有機EL素子の製造コストに深刻な影響を与えてしまう)。
【0005】
また、特許文献1,2が提案する成膜装置においては、基板保持部の移動のためにローラーを用いており、前述のように緩衝区間を移動するときの基板保持部の速度が成膜区間を通過するときの速度よりも速くなるように、緩衝区間と成膜区間とでローラーの回転速度を異ならせるようにしているが、そのために、搬送機構の制御が多くの条件設定等で複雑化してしまうという問題がある。
【0006】
さらに、特許文献1,2が提案する成膜装置のように、ローラーを使用する搬送機構により基板保持部を搬送するときは、基板保持部とローラーとの摩擦力により基板保持部に推進力を与えているため、例えば基板保持部に高い加速度を付加しようとする場合などにおいては、ローラーが空回りして、基板保持部を所望の速度で搬送することが困難となる恐れがある。
【0007】
本発明はこのような従来技術の問題点に着目してなされたものであって、成膜時において移動中の各基板に到達しないまま無駄になってしまう成膜材料をほぼゼロとすることにより成膜材料の利用効率を最大化することができる成膜装置及び成膜装置用の基板搬送装置及び方法を提供することを目的とする。また、本発明は、搬送機構の制御を単純化することができ、且つ基板保持部を所望の速度で安定的に搬送することができる成膜装置並びに成膜装置用の基板搬送装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような課題を解決するための本発明による成膜装置は、基板を搭載した基板保持部を成膜区間に向けて移送する移送区間と、基板保持部を成膜のために所定方向に移動させる成膜区間とに渡って連続的に形成された搬送路に沿って、複数の基板保持部を順次搬送する搬送機構を備えた成膜装置であって、前記搬送機構は、前記移送区間の最初の位置から前記移送区間内の前記成膜区間の近傍の位置までの間に存在する各基板保持部Aに対しては、直接に力を加えることにより、前記搬送路に沿って、順次、前記移送区間内の前記成膜区間の近傍の位置まで移動させる第1手段と、前記移送区間内の前記成膜区間の近傍の位置から前記成膜区間の終わりの位置までの間に存在する各基板保持部Bに対しては、直接に力を加えることなく、前記第1手段により移動している後続の基板保持部Aが、先行する前記基板保持部Bをその後方から直接に又は他の基板保持部Bを介して押すことを通じて、前記搬送路に沿って、順次、前記成膜区間の終わりの位置まで移動させる第2手段と、含むことを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明による成膜装置は、基板を搭載した基板保持部を成膜区間に向けて移送する移送区間と、基板保持部を成膜のために所定方向に移動させる成膜区間とに渡って連続的に形成された搬送路に沿って、複数の基板保持部を順次搬送する搬送機構を備えた成膜装置であって、前記搬送機構は、前記移送区間内の最初の位置から第1位置までの間に存在する各基板保持部Aに対しては、直接に力を加えることにより、前記搬送路に沿って、順次、前記第1位置まで、第1速度で移動させる第1手段と、前記移送区間内の前記第1位置から前記成膜区間に近い第2位置までの間に存在する各基板保持部Bに対しては、直接に力を加えることにより、前記搬送路に沿って、順次、前記第2位置まで、前記第1速度よりも遅い第2速度で移動させる第2手段と、前記移送区間内の前記第2位置から前記成膜区間の終わりの位置までの間に存在する各基板保持部Cに対しては、直接に力を加えることなく、前記第2手段により移動している後続の基板保持部Bが、先行する前記基板保持部Cをその後方から直接に又は他の基板保持部Cを介して押すことを通じて、前記搬送路に沿って、順次、前記成膜区間の終わりの位置まで移動させる第3手段と、を含むことを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明による成膜装置は、基板を搭載した基板保持部を成膜区間に向けて移送する移送区間と、基板保持部を成膜のために所定方向に移動させる成膜区間とに渡って連続的に形成された搬送路に沿って、複数の基板保持部を順次搬送する搬送機構を備えた成膜装置であって、前記搬送機構は、前記基板保持部から突設された突部が摺動可能に嵌合又は挿入される溝を有する円筒カムを備えており、前記円筒カムは、各基板保持部を、前記移送区間の最初の位置から前記移送区間内の前記成膜区間の近傍の位置まで、順次移動させるための溝を有しており、且つ、前記円筒カムは、前記移送区間内の前記成膜区間の近傍の位置まで移動した後の各基板保持部に対しては、直接には力を加えないように構成されている、ことを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明による成膜装置は、基板を搭載した基板保持部を成膜区間に向けて移送する移送区間と、基板保持部を成膜のために所定方向に移動させる成膜区間とに渡って連続的に形成された搬送路に沿って、複数の基板保持部を順次搬送する搬送機構を備えた成膜装置であって、前記搬送機構は、前記基板保持部から突設された突部が摺動可能に嵌合又は挿入される溝を有する円筒カムを備えており、前記円筒カムは、前記移送区間内の最初の位置から第1位置までの間に存在する各基板保持部を、前記第1位置まで、順次、第1速度で搬送するための第1の溝と、前記移送区間内の前記第1位置から前記成膜区間に近い第2位置までの間に存在する各基板保持部を、順次、前記第1速度よりも遅い第2速度で搬送するための第2の溝と、を有しており、且つ、前記円筒カムは、前記移送区間内の前記第2位置から前記成膜区間の終わりの位置までの間に存在する各基板保持部に対しては、直接には力を加えないように構成されている、ことを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明による成膜装置においては、前記基板保持部から突設された突部には、前記溝内を滑らかに移動可能とするための低摩擦部材又は摩擦低減機構が備えられていることが望ましい。
【0013】
また、本発明による成膜装置においては、前記円筒カムに形成された第1の溝と第2の溝とは、前記基板保持部の幅寸法より大きな距離を介して形成されていることが望ましい。
【0014】
また、本発明による基板搬送装置は、基板を搭載した基板保持部を成膜区間に向けて移送する移送区間と、基板保持部を成膜のために所定方向に移動させる成膜区間とに渡って連続的に形成された搬送路に沿って、複数の基板保持部を順次搬送する基板搬送装置であって、前記移送区間の最初の位置から前記移送区間内の前記成膜区間の近傍の位置までの間に存在する各基板保持部Aに対して、直接に力を加えることにより、前記搬送路に沿って、順次、前記移送区間内の前記成膜区間の近傍の位置まで移動させる第1手段と、前記移送区間内の前記成膜区間の近傍の位置から前記成膜区間の終わりの位置までの間に存在する各基板保持部Bに対して、直接に力を加えることなく、前記第1手段により移動している後続の基板保持部Aが、先行する前記基板保持部Bをその後方から直接に又は他の基板保持部Bを介して押すことを通じて、前記搬送路に沿って、順次、前記成膜区間の終わりの位置まで移動させる第2手段と、を含むことを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明による基板搬送装置は、基板を搭載した基板保持部を成膜区間に向けて移送する移送区間と、基板保持部を成膜のために所定方向に移動させる成膜区間とに渡って連続的に形成された搬送路に沿って、複数の基板保持部を順次搬送する基板搬送装置であって、前記移送区間内の最初の位置から第1位置までの間に存在する各基板保持部Aに対しては、直接に力を加えることにより、前記搬送路に沿って、順次、前記第1位置まで、第1速度で移動させる第1手段と、前記移送区間内の前記第1位置から前記成膜区間に近い第2位置までの間に存在する各基板保持部Bに対しては、直接に力を加えることにより、前記搬送路に沿って、順次、前記第2位置まで、前記第1速度よりも遅い第2速度で移動させる第2手段と、前記移送区間内の前記第2位置から前記成膜区間の終わりの位置までの間に存在する各基板保持部Cに対しては、直接に力を加えることなく、前記第2手段により移動している後続の基板保持部Bが、先行する前記基板保持部Cをその後方から直接に又は他の基板保持部Cを介して押すことを通じて、前記搬送路に沿って、順次、前記成膜区間の終わりの位置まで移動させる第3手段と、を含むことを特徴とするものである。
【0016】
また、本発明による基板搬送方法は、基板を搭載した基板保持部を成膜区間に向けて移送する移送区間と、基板保持部を成膜のために所定方向に移動させる成膜区間とに渡って連続的に形成された搬送路に沿って、複数の基板保持部を順次搬送する基板搬送方法であって、前記移送区間の最初の位置から前記移送区間内の前記成膜区間の近傍の位置までの間に存在する各基板保持部Aに対して、直接に力を加えることにより、前記搬送路に沿って、順次、前記移送区間内の前記成膜区間の近傍の位置まで移動させる第1工程と、前記移送区間内の前記成膜区間の近傍の位置から前記成膜区間の終わりの位置までの間に存在する各基板保持部Bに対して、直接に力を加えることなく、前記第1工程により移動中の後続の基板保持部Aが、先行する前記基板保持部Bをその後方から直接に又は他の基板保持部Bを介して押すことを通じて、前記搬送路に沿って、順次、前記成膜区間の終わりの位置まで移動させる第2工程と、を含むことを特徴とするものである。
【0017】
さらに、本発明による基板搬送方法は、基板を搭載した基板保持部を成膜区間に向けて移送する移送区間と、基板保持部を成膜のために所定方向に移動させる成膜区間とに渡って連続的に形成された搬送路に沿って、複数の基板保持部を順次搬送する基板搬送方法であって、前記移送区間内の最初の位置から第1位置までの間に存在する各基板保持部Aに対しては、直接に力を加えることにより、前記搬送路に沿って、順次、前記第1位置まで、第1速度で移動させる第1工程と、前記移送区間内の前記第1位置から前記成膜区間に近い第2位置までの間に存在する各基板保持部Bに対しては、直接に力を加えることにより、前記搬送路に沿って、順次、前記第2位置まで、前記第1速度よりも遅い第2速度で移動させる第2工程と、前記移送区間内の前記第2位置から前記成膜区間の終わりの位置までの間に存在する各基板保持部Cに対しては、直接に力を加えることなく、前記第2工程により移動中の後続の基板保持部Bが、先行する前記基板保持部Cをその後方から直接に又は他の基板保持部Cを介して押すことを通じて、前記搬送路に沿って、順次、前記成膜区間の終わりの位置まで移動させる第3工程と、を含むことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明においては、成膜区間に存在する複数の基板保持部が、駆動力を直接に加えられるのではなく、成膜区間の外に存在し駆動力が直接に加えられている後続の基板保持部により直接に又は他の基板保持部を介して押されることにより、成膜区間を、その前後方向に互いに接触し直列に連なった状態で、すなわち、互いの間隔がゼロの状態で移動するようにしている。したがって、本発明によれば、有機蒸着材料などの高価な成膜材料が無駄になることを防止し、成膜材料の利用効率を最大化することができる。また、本発明によれば、基板保持部相互の間隔をゼロにすることにより、成膜装置全体のスケールダウンを図ることが可能となる。
【0019】
また、本発明において、前記移送区間内の最初の位置から第1位置に向かって移動中の各基板保持部Aは高速の第1速度で移動させ、前記移送区間内の第1位置から第2位置に向かって移動中の各基板保持部Bは前記第1速度より遅い低速の第2速度で移動させるようにしたときは、前記最初の位置から第1位置に向かった高速で移動中の基板保持部Aが、前記第1位置から前記第2位置に向かって低速で移動中の基板保持部Bに容易に追い付くことができる。また、本発明において、前記移送区間内の第1位置から第2位置に向かって移動中の各基板保持部Bは前記第1速度より遅い低速の第2速度で移動させるようにしたときは、前記低速の第2速度で移動中の各基板保持部Bの前部が先行する基板保持部B又はCの後部に接触するとき、その接触による衝撃を小さくすることができる。
【0020】
さらに、本発明において、搬送機構として円筒カムを使用するようにしたときは、円筒カムの溝に基板保持部の突起が嵌合又は挿入されることにより基板保持部が駆動されるので、従来のローラーを使用した搬送機構と比較して、基板保持部に強力な推進力を与えることができると共に、基板保持部の重量が大きい場合、複数の基板保持部が互いに接触して一体的に連なっているときの一体となっている複数の基板保持部の全体の重量が大きくなっている場合、又は基板保持部に高い加速度を付加しようとする場合などでも、所望の搬送速度により安定的に基板保持部を搬送させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施形態に係る成膜装置の全体を示す概略図である。
図2】本実施形態に使用される円筒カムを説明するための溝形状の展開図である。
図3】本実施形態に使用される円筒カムの側面図である。
図4】本実施形態に使用される円筒カムの溝に嵌合又は挿入される基板トレイ(基板保持部の一部)とその突起を示す図で、(a)は平面図、(b)は側面図である。
図5】本実施形態に係る成膜装置の動作を説明するための図である。
図6】本実施形態に係る成膜装置の動作を説明するための図である。
図7】本実施形態に係る成膜装置の動作を説明するための図である。
図8】本実施形態に係る成膜装置の動作を説明するための図である。
図9】本実施形態に使用される円筒カムの動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面を用いて説明する。図1は本実施形態に係る成膜装置の構成を示す概略図である。図1において、1,2はそれぞれ互いに異なる材料により基板に成膜するために設置された真空排気可能な成膜室、3は基板トレイ(基板が搭載又は積載されている)へのマスク交換を行なうために前記各成膜室1,2の間に設置されたマスク交換室、4は基板トレイを後述の円筒カムに取り付けてマスクを搭載するためのLL室(ロードロック室)、5は前記成膜室2から搬出された基板トレイを回収するULL室(アンロードロック室)である。このような図1の成膜装置においては、基板トレイが、前記LL室4、前記成膜室1、前記マスク交換室3、前記成膜室2、及び前記ULL室に渡って形成された一つの搬送路上を連続的に搬送されていくようになっている。
【0023】
また、図1において、6は前記LL室4内において基板トレイを前記搬送路上に設置し円筒カムに取り付ける搬送体供給部、7は前記LL室4内において前記搬送路上の基板トレイにマスクAを供給するマスクA供給部、8は前記マスク交換室3内において前記成膜室1から搬出された基板トレイからマスクAを回収するマスクA回収部、9は前記マスク交換室3内において前記マスクAが回収された基板トレイにマスクBを供給するマスクB供給部、10は前記ULL室5内において前記成膜室2から搬出された基板トレイからマスクBを回収するマスクB回収部、11は前記ULL室5内において前記マスクBが回収された基板トレイを前記搬送路から回収する搬送体回収部である。
【0024】
また、図1において、12は各基板トレイを前記LL室4から前記成膜室1内まで順次搬送するための第1の円筒カム、13は各基板トレイを前記成膜室1内から前記マスク交換室3を介して前記成膜室2内まで順次搬送するための第2の円筒カム、14は各基板トレイを前記成膜室2内から前記ULL室5内まで順次搬送するための第3の円筒カムである。前記各円筒カム12,13,14は、その軸方向が各基板トレイの搬送方向と平行となるように構成されている。また前記各円筒カム12,13,14の外周側面には、各基板トレイに突設された突起が摺動自在に嵌合又は挿入されることにより前記各基板トレイを搬送駆動可能とする略螺旋状の溝が形成されている。なお、図1では前記各円筒カム12,13,14は1個ずつ示しているが、本実施形態では、前記各円筒カム12,13,14が配置される各箇所に、それぞれ、基板トレイをその左右(搬送方向から見て左右)から支えられるように一対の円筒カムが配置されている。また、本実施形態では、前記各円筒カム12,13,14は一定速度で回転を継続するように構成されている。
【0025】
本実施形態では、前記円筒カム12,13,14の外周側面に形成される溝の角度などにより、各基板トレイの搬送の制御(加速、減速、停止など)が行われる。すなわち、本実施形態では、基板トレイを搬送経路に沿ったレール(搬送路)上に載置し、基板トレイの突起を円筒カムの溝に嵌合又は挿入した状態で円筒カムを円周方向に回転させることにより、基板トレイが搬送路に沿って移動する。このときの基板トレイの移動速度は、前記各円筒カム12,13,14の周速度及び軸方向に対する溝の傾きにより決まる。すなわち、前記各円筒カム12,13,14の溝の傾きが一定であれば、基板トレイの移動速度は前記各円筒カム12,13,14の周速度に比例する。他方、前記各円筒カム12,13,14の周速度が一定であれば、前記溝の前記円筒カムの軸方向に対する傾きが小さい部分では基板トレイの移動速度が速くなり、前記溝の前記傾きが大きい部分では基板トレイの移動速度が遅くなる。また、前記溝の軸方向に対する傾きが90度になっている領域では、前記各円筒カム12,13,14が回転を継続していても基板トレイは一時的に停止した状態となる。
【0026】
次に図2は本実施形態に使用される円筒カムを説明するための溝形状の展開図、図3は前記円筒カムの側面図、図4は円筒カムの溝に嵌合又は挿入される基板トレイ(基板トレイの一部)の突起を説明するための図である。
【0027】
図2,3に示すように、本実施形態では、各円筒カム12,13,14の外周側面に略螺旋状の溝が形成されている。そして、本実施形態では、この溝の中に、図4で示す基板トレイ21の突起22が嵌合又は挿入され、この状態で円筒カム12,13,14が一定速度で回転することにより、基板トレイに力が加えられ、基板トレイが所定速度で搬送される。なお、本実施形態では、前記突起22には、円筒カムの溝内を円滑に摺動できるように、その摺動面に、例えば、ローラーなどの摩擦低減機構が備えられているか、又は低摩擦素材から成る低摩擦層が形成されている。
【0028】
次に本実施形態に係る成膜装置の動作を図1〜9を参照して説明する。ここで、図5〜8は本実施形態に係る成膜装置の動作を説明するための図、図9は本実施形態における円筒カムの動作を説明するための図である。なお、以下では、前記各成膜室1,2内において成膜が行なわれる区間を、成膜区間という。また、基板トレイにマスクを装着するマスク装着位置(図1のマスクA供給部7の位置)から前記成膜区間の近傍の位置(図1の成膜室1内の前記成膜区間の手前の位置)までの間の区間を、移送区間(緩衝区間)という。
【0029】
(1)LL室4内において、基板を積載された基板トレイ21Aが、前記搬送体供給部6により、搬送開始位置に設置される(図5の(1)〜(4)の説明を参照)。このとき、基板トレイ21Aの突起が前記第1の円筒カム12の溝に嵌合又は挿入されるが、この搬送開始位置に対応する前記円筒カム12の溝の部分a(図2参照)は軸方向に対して90度となるように形成されているため、基板トレイ21Aは、前記溝の部分aを前記突起が摺動する時間だけ、一時的にその位置に停止される。
【0030】
(2)その後、基板トレイ21Aは、この搬送開始位置からLL室4内のマスクA装着位置に向けて、搬送される(図5の(5),(6)の説明を参照)。このとき、前記の搬送開始位置からマスクA装着位置までの間は、この区間に対応する第1の円筒カム12の溝の部分b(図2参照)が前記第1の円筒カム12の軸方向に対して比較的小さく(後述の図2の溝の部分eと比較して小さく)傾斜するように形成されているため、基板トレイ21Aは、比較的高速で(後述の図2の溝の部分eによって基板トレイ21Aが移動する速度よりも高速で)搬送される。なお、この時、後続の基板トレイ21Bが、搬送開始位置に設置される(以降同様に、順次、他の後続の基板トレイ21Bが設置されていく)。
【0031】
(3)その後、基板トレイ21AがマスクA装着位置(図1のマスクA供給部7参照)まで移動すると、このマスクA装着位置に対応する前記円筒カム12の溝の部分c(図2参照)が軸方向に対して90度となるように形成されているため、前記第1の円筒カム12は等速で回転中のままでも、基板トレイ21Aは前記マスクA装着位置で一時的に停止する(図5の(7)の説明を参照)。そして、このマスクAの装着位置で一時的に停止した基板トレイ21Aに対して、前記マスクA供給部7により、マスクAが取り付けられる(図5の(8)〜(11)の説明を参照)。なお、前記搬送開始位置に設置された後続の基板トレイ21Bは、先行の基板トレイ21AにマスクAが取り付けられるまで、すなわち、先行の基板トレイ21Aが図2の溝の部分cにより一時的に停止されている間、前記搬送開始位置で一時的に停止している。なお、先行の基板トレイ21AにマスクAが取り付けられる間、後続の基板トレイ21Bを、搬送開始位置で一時的に停止中とするのではなく、マスクA装着位置に向けて移動中とするようにしてもよいが、その場合は、後続の基板トレイ21BがマスクA装着位置に到達するまでに、基板トレイ21AにマスクAが装着されて基板トレイ21AがマスクA装着位置から離れるようにする必要がある。
【0032】
(4)マスクAが装着された基板トレイ21Aは、このマスク装着位置から、前記成膜区間に向けて搬送される。このマスク装着位置(図2の溝の部分cを参照)から前記移送区間(緩衝区間)中の前記成膜区間へ向かう途中の第1の位置(図2の符号m参照)までの間に対応する第1の円筒カム12の溝の部分d(図2参照)は、軸方向に対して比較的小さく(後述する図2の溝の部分eよりも小さく)傾斜するように形成されている。そのため、基板トレイ21Aは、マスク装着位置(図2の溝の部分cを参照)から前記第1の位置(図2の符号m参照)までの間、比較的高速で搬送される(図6の(12)の説明を参照)。
【0033】
(5)前記第1の位置(図2の符号m参照)を通過した基板トレイ21Aは、さらに、前記移送区間中における前記成膜区間の近傍の第2の位置(図1の成膜室1内)に向けて、搬送される。このとき、前記第1の位置(図2の符号m参照)から前記第2の位置(図2の符号n参照)までの間に対応する前記円筒カム12の溝の部分e(図2参照)は、軸方向に対して比較的大きく(前述の図2の溝の部分dよりも大きく)傾斜するように形成されている。そのため、基板トレイ21Aは、前記第1の位置(図2の符号m参照)から前記第2の位置(図2の符号n参照)までの間、比較的低速で搬送される(図6の(13)の説明を参照)。
【0034】
本実施形態では、前述のように、基板トレイ21Aが、前記移送区間中において前記第1の位置から前記第2の位置へ向けて低速で搬送されているとき、後続の基板トレイ21Bは、前記移送区間中において前記マスクA装着位置から前記第1の位置に向けて高速で搬送されている。そのため、この過程で、高速で搬送されている後続の基板トレイ21Bが低速で搬送中の先行の基板トレイ21Aに追い付き、各基板トレイ21A,B間の距離が狭くなる。その後、後続の基板トレイ21Bは、前記第1の位置(図2の符号m参照)を過ぎてからは低速に移行し、先行の基板トレイ21Aの後部に接触する(図6の(13)の説明を参照。図9のdも参照)。
【0035】
その結果、本実施形態では、先行の基板トレイ21Aと後続の基板トレイ21Bは、前記移送区間中の成膜区間の近傍の前記第1の位置(図2の符号m参照)を過ぎてからは、成膜区間を通過するまでの間、互いに接触して直列に連なり一体化した状態となる。なお、その後も、さらに複数の後続の基板トレイ21B・・・は順次搬送されてくるので、順次、先行の基板トレイに接触しながら全体があたかも数珠繋ぎのように一体になった状態となる。
【0036】
(6)先行の基板トレイ21Aが前記移送区間内の前記成膜区間の近傍である第2の位置(図2の符号n参照)まで移動すると、先行の基板トレイ21Aの突起が第1の円筒カム12の溝の終端から抜けて(溝から外れて)、先行の基板トレイ21Aは第1の円筒カム12の駆動力から開放される(図6の(13)の説明を参照。図9のfも参照)。これに続いて同様に、上記(5)で述べたように低速で搬送中(図2の溝の部分eを参照。図9のeも参照)の先行の基板トレイ21Aに追い付き接触した後続の基板トレイ21Bも、順次、その突起が第1の円筒カム12の溝の終端から抜けて、第1の円筒カム12の駆動力から開放される。
【0037】
しかし、このように先行の基板トレイ21A及びこれに接触した後続の基板トレイ21Bが第1の円筒カム12の駆動力から開放された後も、前述の全体があたかも数珠繋ぎのように一体になった状態にある複数の基板トレイ21A,21B・・・の中、より後続に位置する基板トレイ21B,21Cは、まだ図2の第1の円筒カム12の溝の部分e(図2参照)から駆動力を印加されている。よって、第1の円筒カム12の駆動力から開放された先行の基板トレイ21A,21Bをも含めて前後の基板トレイが互いに接触して直列に連なった状態にある基板トレイ21A,21B・・・が全体として、前記第2の位置n(図2参照)から成膜区間を通過するまでの間、低速で搬送される。
【0038】
このように、先行の基板トレイ21A(及びこれに続く基板トレイ21B)は、円筒カム12の駆動力から開放された後も、それらよりもさらに後続の基板トレイ21B(円筒カム12による駆動力を印加されている後続の基板トレイ21B)に押される形で、前記成膜区間内を低速で移動する(図6の(13)の説明を参照。図9のf参照)。
【0039】
なお、図6は、以上に説明した各基板トレイの動作を示すものである。すなわち、図6において、21Cは、円筒カム12により高速で搬送され(図2の溝の部分d参照)、先行する基板トレイ21Bに近づこう(追い付こう)としている後続の基板トレイを示している。また、21Bは、円筒カム12により低速度で搬送され(図2の溝の部分e参照)、自らの前部に接触している先行の基板トレイ21Aを押している後続の基板トレイを示している。さらに、21Aは、円筒カム12の駆動力から開放されたが、自らの後部に接触している後続の基板トレイ21Bに押されることにより前に進んでいる先行の基板トレイを示している。
【0040】
また、本実施形態において、円筒カム12の外周側面を展開した図2において、前記後続の基板トレイ21Bを高速で移動させるための溝の部分dと前記先行する基板トレイ21Aを低速で移動させるための溝の部分eとの間は基板トレイ21の幅(搬送方向の長さ)よりも大きな距離を有するように形成されている。その理由は、もし前記各溝の部分d,eの間が基板トレイ21A,21Bの幅(搬送方向の長さ)よりも小さく形成された場合は、各基板トレイ21A,21Bが互いにぶつかってしまう恐れがあるからである。
【0041】
このように、本実施形態では、先行の基板トレイ21A(及びこれに続く基板トレイ21B)が前記成膜区間を通過する間、先行の基板トレイ21Aと後続の複数の基板トレイ21B・・・は、前後の基板トレイ同士が互いに接触し相互間の距離がゼロの状態に維持されたまま前記成膜区間を通過するので、前記成膜区間を通過する過程で成膜材料が移動中の基板に到達しないで無駄になってしまうことがほとんど無くなるという効果が得られる。
【0042】
(7)前記成膜区間を通過した先行の基板トレイ21Aは、その突起が第2の円筒カム13の溝に新たに嵌合又は挿入されて、第2の円筒カム13により駆動されるので、それまで接触していた後続の基板トレイ21Bから引き離され、基板トレイ21AからマスクAを取り外すマスクA回収位置(図1のマスクA回収部8参照)へ向けて、搬送される。このとき、前記の成膜区間を通過した位置からマスクA回収位置までの間は、これに対応する第2の円筒カム13の溝の部分が軸方向に対して比較的小さく傾斜するように形成されているため、基板トレイ21Aは、比較的高速で搬送される(図6の(14)の説明を参照)。
【0043】
(8)マスクA回収位置に到達した基板トレイ21Aは、その位置に対応する第2の円筒カム13の溝の部分が軸方向に対して90度となるように形成されているため、その溝の部分を前記突起が摺動する間だけ一時的に停止し、その停止した基板トレイ21AからマスクAが取り外される(図7の(16)〜(18)の説明を参照)。この時、後続の基板トレイ21Bは、マスクA回収位置に向けて接近しているため、先行の基板トレイ21Aは、後続の基板トレイ21BがマスクA回収位置に到達するまでに、マスクAを取り外されてマスクA回収位置から離れるようにする必要がある。
【0044】
(9)マスクA回収位置でマスクAが取り外された基板トレイ21Aは、次のマスクB装着位置に向けて搬送される(図6の(19)の説明を参照)。このとき、前記のマスクA回収位置からマスクB装着位置までの間は、これに対応する第2の円筒カム13の溝の部分が軸方向に対して比較的小さく傾斜するように形成されているため、基板トレイ21Aは、比較的高速で搬送される。
【0045】
(10)その後、基板トレイ21Aは、マスクB装着位置(図1のマスクB供給部9参照)で停止する。なお、この時、後続の基板トレイ21Bは、マスクAの取り外し位置で一時的に停止している。この時、後続の基板トレイ21Bは、マスクB装着位置に向けて接近するようにしてもよいが、基板トレイ21Aは、基板トレイ21BがマスクB装着位置に達するまでに、マスクBが装着されてマスクB装着位置から離れる必要がある。
【0046】
(11)その後、基板トレイ21Aは、上記(4)〜(6)で述べたところと同様の工程を経て、第2の成膜区間を通過する。
【0047】
(12)第2の成膜工程を終えた先行の基板トレイ21Aは、第3の円筒カム14により後続の基板トレイ21Bから引き離され、高速でマスクB回収位置(図1のマスクB回収部10参照)へ搬送される。
【0048】
(13)マスクB回収位置に到達した基板トレイ21Aは、そこで一時的に停止し、前記マスクB回収部10により、マスクBが取り外される(図8の(20)〜(23)の説明を参照)。この時、後続の基板トレイ21Bは、マスクB回収位置に向けて接近しているため、基板トレイ21AのマスクBを取り外す工程は、基板トレイ21BがマスクB回収位置に到達するまでの間に完了する必要がある。
【0049】
(14)マスクBが取り外された基板トレイ21Aは、基板トレイ回収位置(図1の搬送体回収部11参照)まで、高速で搬送される。
【0050】
(15)基板トレイ回収位置に到達した基板トレイ21Aはそこで一時的に停止し、前記搬送体回収部11により回収される。
【0051】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態として述べたものに限定されるものではなく、様々な修正及び変更が可能である。例えば、前記実施形態においては、主として蒸着装置を念頭に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えばスパッタ装置(特にマスク交換を必要とするスパッタ装置)など、複数の処理工程を持ち各処理工程が一貫して連続性を持つような成膜装置にも適用できることは勿論である。
【0052】
また、前記実施形態においては、移送区間の途中までの間においては各基板トレイに直接に駆動力を加えて各基板トレイを搬送しつつ、移送区間の途中から成膜区間を通過するまでの間においては各基板トレイに直接に駆動力を加えることなく各基板トレイを搬送する(すなわち、移送区間の途中から成膜区間を通過するまでの間においては、複数の基板トレイを互いに直列に連なるように前後のもの同士を互いに接触させて、直接に駆動力が加えられている後続の基板トレイが、先行の基板トレイを押すことにより、先行の基板トレイを搬送する)ために、移送区間に存在する後続の基板トレイに対して円筒カムにより駆動力を加えるようにしているが、本発明はこれに限られるものではなく、例えば従来より周知のローラーにより後続の基板トレイを搬送するなど、円筒カム以外の手段により後続の基板トレイに対して駆動力を加えるようにしてもよい。また、前記実施形態では、図1に示す成膜装置の搬送路中の3箇所に、それぞれ、一対(両側に一つずつ)の円筒カム12,13,14を配置するようにしているが、本発明はこれに限定されず、例えば、前記3箇所に設置する円筒カムをそれぞれ一個とすることも、また各箇所に設置する円筒カムを分割する構造とすることも、各箇所に3つ以上の円筒カムを配置する構造とすることも、可能である。
【符号の説明】
【0053】
1,2 成膜室
3 マスク交換室
4 LL室
5 ULL室
6 搬送体供給部
7,9 マスク供給部
8,10 マスク回収部
11 搬送体回収部
12,13,14 円筒カム
21,21A,21B,21C 基板トレイ
22 突起
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9