(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記(3)工程において、さらに前記原料として繊維材料を使用し、前記繊維材料の添加量が、前記粉砕粉と前記セメントの合計100質量部に対して10質量部以下であることを特徴とする請求項1に記載の無機質板の製造方法。
前記(3)工程において、さらに前記原料として充填材を使用し、前記充填材の添加量が、前記粉砕粉と前記セメントの合計100質量部に対して50質量部以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の無機質板の製造方法。
【背景技術】
【0002】
けい酸カルシウム板には、主として内装用建材として使用されるJIS A 5430のタイプ2に属するけい酸カルシウム板、主として断熱材として使用されるJIS A 5430のタイプ3に属するけい酸カルシウム板、内外装用建材として使用される高い圧力で成形した高密度の硬質けい酸カルシウム板、外装用建材として使用されている軽量気泡コンクリート(ALC)等がある。これらのけい酸カルシウム板のうち、JIS A 5430のタイプ2に属するけい酸カルシウム板、特に0.8けい酸カルシウム板(以下、単に「けい酸カルシウム板」と記す)は内装用建材として多量に使用されている。
【0003】
けい酸カルシウム板の製造方法としては、抄造法が用いられることが多い。その理由は、繊維が良好に配向し高い曲げ強度が得られること、および厚さが4mm〜12mmの薄い板を効率よく製造できるからである。抄造法によるけい酸カルシウム板の一般的な製造方法は、原料として消石灰等の石灰質原料、珪石粉等のけい酸質原料および繊維材料を使用し、更に必要に応じてワラストナイト、マイカ、石膏、石灰石粉等の充填材を原料に加え、前記原料と水とを混合して原料スラリーとし、丸網抄造機(ハッチェック機)やフローオン抄造機等の抄造機により前記原料スラリーを抄造して薄膜(グリーンフィルム)得、薄膜を抄造機のメーキングロールに所定の厚さまで巻き取り、メーキングロールから取り外して未硬化成形板(グリーンシート)を得、必要に応じて未硬化成形板を一次養生し、次いでオートクレーブ養生を行い、石灰質原料とけい酸質原料とを反応させてけい酸カルシウム水和物を生成させ硬化させるという方法である。
【0004】
このようにして製造されたけい酸カルシウム板は、所定の寸法に切断され製品となるが、その際、廃材として切断屑が発生する。また、用途によっては表面や裏面を研磨するが、その際、廃材として研磨粉が発生する。さらに、検査において、所定の条件を満たさなかった製品も廃材とせざるを得ない場合があり、建築現場において発生する廃材もある。
【0005】
このようなけい酸カルシウム板の廃材は、粉砕し、充填材として新たなけい酸カルシウム板を製造する際の原料として再利用されているが、けい酸カルシウム板の原料に占める充填材の比率を高めると、得られたけい酸カルシウム板の強度等の物性を低下させる危険性がある。
【0006】
一方、けい酸カルシウム水和物は、炭酸化させると炭酸カルシウムとシリカゲルを生成するとともに硬化することから、けい酸カルシウム材料を原料とし、炭酸化養生して調湿建材を製造する方法が知られている(例えば特許文献1および2参照)。
しかし、けい酸カルシウム板の廃材を主たる原料として使用し、炭酸化養生して建材を得ようとすると、以下のような問題(a),(b)が発生する。
【0007】
(a)前述のように加圧成形した未硬化成形板を炭酸化養生しけい酸カルシウム板を製造する場合、炭酸ガスを大気中にあまり放出させないという観点から、炭酸化養生は、ほぼ常温・常圧状態で行なわれている。しかし、未硬化成形板を常温・常圧状態で炭酸化養生すると、外周部から硬化が進行し、その部分に体積膨張を生じ、その結果、硬化した成形板に変形が生じるという問題点がある。この養生時の変形は、強度低下の原因となる。なお、炭酸化養生を行なわずに成形板を製造する方法としては、セメント系材料や石膏系材料のようにマトリックスを形成する原料を水和反応させて硬化させる方法と、前述のような石灰質原料とけい酸質原料と水熱反応させてけい酸カルシウム水和物を生成・硬化させる方法があるが、前者は水和反応が未硬化成形板の全体で進行するので、未硬化成形板の養生時の変形はあまり生じない。また後者は水熱反応が高温高圧の飽和水蒸気下で行われるため、養生中、未硬化成形板は高い圧力を受け続け、この場合も養生時の変形はあまり生じない。したがって、未硬化成形板の養生時の変形は、炭酸化養生を採用する際に必ず生じる問題点であり、従来から改善が求められていた。
【0008】
(b)また、けい酸カルシウム板の製造方法である抄造法は、前述のように抄造した薄膜をメーキングロールに巻き取る際に加圧を受ける製造方法である。良好な抄造性を確保するとともに、加圧を受けながらも比較的低い見掛け密度で薄物建材としての強度を得るために、けい酸カルシウム板の製造においては、叩解処理した長繊維のパルプを少なくとも繊維材料の一部として使用している。その結果、けい酸カルシウム板の廃材の粉砕粉を用いて未硬化成形板を調製すると、繊維材料の存在によりその内部に空隙部分が生じ、その後炭酸化養生を行なったときに、該空隙部分に原料中のカルシウムが炭酸化して生じた炭酸カルシウム結晶が析出する。この現象が未硬化成形板の養生時の変形に結びつき、製品の強度低下の原因となる。
【0009】
なお、けい酸カルシウム板の廃材を粉砕して得た粉砕粉は、粉砕粉同士がパルプを介して連結し、完全には分離していないものも多数含まれていることから、特許文献1および2に開示された従来技術を、そのままけい酸カルシウム板の廃材の再利用を目的として採用することはできない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって本発明の目的は、けい酸カルシウム板の廃材をリサイクルするために、けい酸カルシウム板の廃材を主たる原料として使用し、炭酸化養生を行なう際に生じる未硬化成形板の変形を防止し、良好な強度を備えた無機質板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、見掛け密度が0.5g/cm
3以上1.3g/cm
3未満のけい酸カルシウム板の廃材を利用し、その廃材を所定のサイズに粉砕し、そこにセメントを所定量添加して未硬化成形板を得、該未硬化成形板を一次養生および炭酸化養生することにより、炭酸化養生を行なう際に生じる未硬化成形板の変形が防止され、かつ良好な強度を備えた、見掛け密度0.9g/cm
3以上1.1g/cm
3以下の無機質板が得られることを見出し、本発明を完成することができた。
【0013】
すなわち、請求項1に記載の発明は、
(1)見掛け密度が0.5g/cm
3以上1.3g/cm
3未満のけい酸カルシウム板の廃材を準備する工程と、
(2)前記廃材を、目開きが150μmのフルイを用いたフルイ分け残分が25質量%以下でありかつ、目開きが45μmのフルイを用いたフルイ分け残分が90質量%以上となるように粉砕して粉砕粉を調製する工程と、
(3)前記粉砕粉とセメントとを、質量比で粉砕粉:セメント=90:10〜70:30の範囲で混合して原料を得、前記原料に水を添加し、混合し、加圧成形して板状の未硬化成形板を調製する工程と、
(4)前記未硬化成形板に対して
50℃以上100℃未満で5〜12時間の蒸気養生または室温で24〜48時間の自然養生である一次養生を行い、次いで炭酸化養生を行うことにより、見掛け密度が0.9g/cm
3以上1.1g/cm
3以下の無機質板を調製する工程と
を有することを特徴とする無機質板の製造方法である。
【0014】
請求項2に記載の発明は、前記(3)工程において、さらに前記原料として繊維材料を使用し、前記繊維材料の添加量が、前記粉砕粉と前記セメントの合計100質量部に対して10質量部以下であることを特徴とする請求項1に記載の無機質板の製造方法である。
【0015】
請求項3に記載の発明は、前記(3)工程において、さらに前記原料として充填材を使用し、前記充填材の添加量が、前記粉砕粉と前記セメントの合計100質量部に対して50質量部以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の無機質板の製造方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、見掛け密度が0.5g/cm
3以上1.3g/cm
3未満のけい酸カルシウム板の廃材を利用し、その廃材を前記所定のサイズに粉砕し、そこにセメントを前記所定量添加して未硬化成形板を得、該未硬化成形板を一次養生および炭酸化養生することを特徴としているので、炭酸化養生を行なう際に生じる未硬化成形板の変形が防止され、良好な強度を備えた無機質板を製造することができる。また、本発明はけい酸カルシウム板の廃材のリサイクル技術として有効である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の製造方法をさらに詳細に説明する。
(1)工程
本発明における(1)工程は、見掛け密度が0.5g/cm
3以上1.3g/cm
3未満のけい酸カルシウム板の廃材を準備する工程である。
前記見掛け密度が0.5g/cm
3未満であると原料がかさ高になるので、加圧成形する際の圧縮率が大きくなり、未硬化成形板の炭酸化養生時の変形が生じやすくなる。また、前記見掛け密度が1.3g/cm
3を超えると原料のかさが小さくなり、下記で説明する(4)工程において、得られる無機質板の見掛け密度を0.9g/cm
3以上1.1g/cm
3以下に調整しようとすると加圧成形する際の圧力を低くしなければならず、無機質板の強度が低くなる恐れがあるので好ましくない。
なお、本発明における(1)工程において、見掛け密度が上記範囲外のけい酸カルシウム板の廃材(例えばJIS A 5430のタイプ2の1.0けい酸カルシウム板の廃材)を併用することもできる。その場合は、準備される廃材の平均の見掛け密度が0.5g/cm
3以上1.3g/cm
3未満の範囲内となるように、見掛け密度が上記範囲外のけい酸カルシウム板の廃材の使用量を調整すればよい。一方、ALCやJIS A 5430のタイプ3に属するけい酸カルシウム板の廃材は、本発明の(1)工程で準備される廃材に比べ、原料、製造工程および見掛け密度が相違し、下記で説明する(3)工程で水を加えて混合する際に均一になりにくく、得られた無機質板の性能のバラツキを生じやすいので、併用することは好ましくない。
【0018】
なお本発明において、見掛け密度はJIS A 5430に規定された方法により測定された値を意味する。
【0019】
(2)工程
本発明における(2)工程は、前記廃材を、目開きが150μmのフルイを用いたフルイ分け残分(粗粉分)が25質量%以下でありかつ、目開きが45μmのフルイを用いたフルイ分け残分が90質量%以上となるように粉砕して粉砕粉を調製する工程である。
前記廃材の粉砕は、最初に鬼歯クラッシャー粉砕装置やハンマーミル粉砕装置等の粉砕装置で粗粉砕し、次いで自由ミル粉砕装置等の粉砕装置で微粉砕するのがよい。
【0020】
前記粉砕粉において、目開きが150μmのフルイを用いたフルイ分け残分が25質量%を超えると、得られる無機質板の強度が低下し、また外観を悪化させる恐れがあるのであり好ましくなく、目開きが45μmのフルイを用いたフルイ分け残分が90質量%未満であると、粉砕粉が微粉になり過ぎ、例えば下記(3)工程で加圧成形した際に、脱水された余剰水とともに一部が流れ出てしまい、成形体の中に留まりにくくなるため好ましくない。
本発明の効果の観点から、目開きが150μmのフルイを用いたフルイ分け残分が15質量%以下でありかつ、目開きが45μmのフルイを用いたフルイ分け残分が90質量%以上であるのがさらに好ましい。
【0021】
(3)工程
本発明における(3)工程は、前記粉砕粉とセメントとを、質量比で粉砕粉:セメント=90:10〜70:30の範囲で混合して原料を得、前記原料に水を添加し、均一となるように混合し、加圧成形して板状の未硬化成形板を調製する工程である。
セメントとしては、普通ポルトランドセメントや早強ポルトランドセメント等のポルトランドセメントが好適に使用される。
また前記粉砕粉とセメントの混合比率において、前記粉砕粉とセメントの合計質量を100としたときに、セメントが10を下回ると、未硬化成形板の養生時の変形が生じ、得られる無機質板の強度が低下する。逆にセメントが30を上回ると、けい酸カルシウム板の廃材を主たる原料としてこれをリサイクルするという本発明の目的にそぐわなくなる。
本発明の効果の観点から、前記粉砕粉とセメントとを、質量比で粉砕粉:セメント=85:15〜75:25の範囲に設定するのがさらに好ましい。なおセメントの混合比率は、乾燥状態のセメントを基準にしている。
【0022】
また本発明の(3)工程では、粉砕粉およびセメント以外の原料を併用することもできる。このような原料としては、例えば、繊維材料や充填材等が挙げられる。繊維材料を使用することにより、得られる無機質板の強度や耐衝撃性等を向上させることができる。繊維材料としては、パルプ(セルロースパルプ)等の植物繊維、ポリビニルアルコール(PVA)等の合成有機繊維を使用することができる。また、耐アルカリガラス繊維等の無機繊維も使用することができる。繊維材料を使用する場合、その添加量は、前記粉砕粉とセメントの合計100質量部に対して10質量部以下の範囲とするのがよい。質量比で10質量部を上回ると、未硬化成形板の養生時の変形が大きくなるので好ましくない。繊維材料は、前記粉砕粉とセメントの合計100質量部に対して、3〜7質量部の範囲で使用するのがさらに好ましい。
【0023】
また、充填材は、無機質板の耐熱性や寸法安定性等の性能の向上、および無機質板の見掛け密度の調整等のために使用することができる。充填材としては、ワラストナイト、マイカ、パーライト、炭酸カルシウム粉末等を挙げることができる。充填材を使用する場合、その添加量は、前記粉砕粉とセメントの合計100質量部に対して50質量部以下の範囲とするのがよい。50質量部を上回ると、無機質板の強度が低下する場合があるので好ましくない。充填材は、前記粉砕粉とセメントの合計100質量部に対して、10〜40質量部の範囲で使用するのがさらに好ましい。
なお、けい酸カルシウム板の廃材をリサイクルするという本発明の趣旨からすれば、繊維材料および/または充填材を原料として使用する場合、繊維材料と充填材との合計量は、前記粉砕粉とセメントの合計100質量部に対し、50質量部以下の範囲とするのが好適である。
【0024】
上記した原料に水を添加し、均一になるように混合した後、加圧成形する。水の添加量は、加圧成形の方法によっても異なるが、原料100質量部に対して900〜2400質量部が好ましい。900質量部を下回ると、原料を均一に混合しにくくなるので好ましくない。また、2400質量部を上回ると生産性が低下することから好ましくない。混合は、パルパー、アジター等の混合装置を使用することができる。
【0025】
混合された原料を加圧成形し、板状の未硬化成形板を得る。加圧成形の方法としては、モールド中に混合された原料を投入し加圧するモールドプレス法、混合された原料をウエットマット状に成形しプレスする方法、混合された原料を抄造してグリーンシートを形成しこのグリーンシートをプレスする方法等がある。加圧成形する際の圧力は、1〜15N/mm
2が好ましい。1N/mm
2を下回ると、得られる無機質板の見掛け密度が0.9g/cm
3を下回り、無機質板の強度が低くなる場合があることから好ましくない。また、15N/mm
2を上回ると、得られる無機質板の見掛け密度が1.1g/cm
3を上回る恐れがあるので好ましくない。
【0026】
(4)工程
本発明における(4)工程は、前記未硬化成形板に対して一次養生を行い、次いで炭酸化養生を行うことにより、見掛け密度が0.9g/cm
3以上1.1g/cm
3以下の無機質板を調製する工程である。
前記一次養生は、セメントの水和反応を目的として行う。セメントの水和反応は、炭酸化養生とは異なり、未硬化成形体板の全体においてほぼ同時に始まるので、続く炭酸化養生における変形を防止できる程度に、未硬化成形体板に保形性を付与することができる。したがって、前記一次養生は
、例えば、50℃以上100℃未満で5〜12時間の蒸気養生、室温で24〜48時間の自然養生等の条件が挙げられる。
【0027】
前記一次養生により未硬化成形体に対して保形性を付与した後に、炭酸化養生を行う。炭酸化養生は、公知の方法を用いればよく、例えば、炭酸ガス濃度が2〜100%という条件で、2〜15時間行えばよい。炭酸化養生を行うことにより、建材として必要とされる物性を有する無機質板に付与することができる。
【0028】
また、本発明により製造される無機質板の見掛け密度は、0.9g/cm
3以上1.1g/cm
3以下であるのがよい。見掛け密度が0.9g/cm
3を下回ると、無機質板の強度が低くなることから好ましくない。また、見掛け密度が1.1g/cm
3を上回ると、得られる無機質板が硬く脆い材料となる危険性があるので好ましくない。その理由は、けい酸カルシウム材料を炭酸化すると硬く脆くなりやすいうえに、見掛け密度を高めた場合も、静荷重に対する強度は高くなるものの材料は硬く脆くなる傾向があるからである。
なお、無機質板の見掛け密度が0.9g/cm
3以上1.1g/cm
3以下に調整するには、前記のように充填材の添加量を適宜調節したり、プレス圧を適宜調整したりする等の方法がある。
【実施例】
【0029】
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに説明するが、本発明は下記例に制限されるものではない。
【0030】
実施例1
(1)工程
見掛け密度が0.82g/cm
3のけい酸カルシウム板の廃材を準備した。
(2)工程
前記廃材を、粉砕機としてハンマーミル粉砕装置および自由ミル粉砕装置を用い、目開きが150μmのフルイを用いたフルイ分け残分が25質量%でありかつ、目開きが45μmのフルイを用いたフルイ分け残分が90質量%となるように粉砕して粉砕粉を調製した。
(3)工程
前記粉砕粉と普通ポルトランドセメントとを、質量比で粉砕粉:セメント=90:10の範囲で混合して原料を得、前記原料100質量部に対して水を900質量部添加し、アジターを用いて2分間混合し、モールド中に混合された原料を投入し、プレス機を用い6N/mm
2の圧力で加圧成形し、板状の未硬化成形板を調製した。
(4)工程
前記未硬化成形板に対して、60℃、12時間の条件で蒸気養生を行い、セメントの水和反応により未硬化成形板に一定の保形性を付与した後、ドライアイスを置いた密閉容器内に入れ、ドライアイスの気化圧を利用して炭酸化養生を行なった。炭酸化養生の条件は、養生圧力=0.2MPa、養生温度=40℃、養生時間=12時間とした。
以上の工程により、見掛け密度が0.96g/cm
3の無機質板を調製した。
【0031】
なお、見掛け密度は、JIS A 5430に規定された測定方法に基づき、長さ160mm×幅40mmのサイズの試験片を20±15℃の水中に浸漬し、24時間経過後試験片の水中質量および吸水時の質量を測定し、次に、試験片を105±5℃の攪拌機付乾燥機に入れて24時間乾燥し、乾燥質量を測定し、以下の式で算出した。
見掛け密度(g/cm
3)=乾燥質量(g)/(吸水質量(g)−水中質量(g))
【0032】
得られた無機質板について、下記の測定を行なった。
【0033】
曲げ強さ
JIS A 5430に基づき、長さ160mm×幅40mmのサイズの試験片を60±3℃の攪拌機付乾燥機に入れ、24時間乾燥し、その後、デシケーター中で常温まで徐冷する。続いて、スパン100mm、試験速度1mm/分で試験片に荷重を加え、最大荷重を測定する。曲げ強さは次の式で算出する。
曲げ強さ(N/mm
2)=3×最大荷重(N)×スパン(mm)/(2×試験片の幅(mm)×試験片の厚みの二乗(mm))
曲げ強さは、炭酸化養生を行なう際に生じる未硬化成形板の変形の度合いの指標となる。すなわち、曲げ強さが高い値を示す場合は、該変形が防止されていることを意味する。
【0034】
吸水による長さ変化率
JIS A 5430に基づき、長さ160mm×幅40mmのサイズの試験片にガラスを貼り、標線間距離が140mmになるように標線を刻む。これを60±3℃の攪拌機付乾燥機に入れ、24時間乾燥し、その後、デシケーター中で常温まで徐冷する。この試験片の標線間距離を読み、次に、20±15℃の水中に浸漬し、24時間経過後試験片を水中から取り出して、標線間距離を読む。吸水による長さ変化率は次の式で算出する。
吸水による長さ変化率(%)
=(吸水時の標線間距離(mm)−乾燥時の標線間距離(mm))/乾燥時の標線間距離(mm) × 100 (%)
【0035】
実施例2〜3
実施例1の(2)工程において、目開きが150μmのフルイを用いたフルイ分け残分および目開きが45μmのフルイを用いたフルイ分け残分が表1に示すように粉砕粉を調製したこと以外は、実施例1を繰り返した。結果を表1に示す。
【0036】
実施例4〜5
実施例1の(3)工程において、粉砕粉とセメントとの割合を表1に示すように変更したこと以外は、実施例1を繰り返した。結果を表1に示す。
【0037】
実施例6〜7
実施例1の(3)工程において、セルロースパルプを、粉砕粉とセメントの合計100質量部に対してさらに5重量部(実施例5)または10質量部(実施例6)添加したこと以外は、実施例1を繰り返した。結果を表1に示す。
【0038】
実施例8
実施例1の(3)工程において、セルロースパルプを、粉砕粉とセメントの合計100質量部に対してさらに10質量部添加し、かつ、充填材としてワラストナイトをさらに40質量部添加したこと以外は、実施例1を繰り返した。結果を表1に示す。
【0039】
比較例1
実施例1の(2)工程において、目開きが150μmのフルイを用いたフルイ分け残分および目開きが45μmのフルイを用いたフルイ分け残分が表1に示すように粉砕粉を調製したこと以外は、実施例1を繰り返した。結果を表1に示す。
【0040】
比較例2
実施例1の(3)工程において、粉砕粉とセメントとの割合を表1に示すように変更したこと以外は、実施例1を繰り返した。結果を表1に示す。
【0041】
比較例3
脱水成形する際のプレス圧力を調整して無機質板の見掛け密度を0.8g/cm
3に調整したこと以外は実施例7を繰り返した。結果を表1に示す。
【0042】
【表1】
【0043】
表1の結果から、各実施例の無機質板は、見掛け密度が0.5g/cm
3以上1.3g/cm
3未満のけい酸カルシウム板の廃材を利用し、その廃材を本発明で規定する所定のサイズに粉砕し、そこにセメントを本発明で規定する所定量添加して未硬化成形板を得、該未硬化成形板を一次養生および炭酸化養生して調製されているので、炭酸化養生を行なう際に生じる未硬化成形板の変形が防止され、良好な強度を備え、吸水による長さ変化率も防止される。
これに対し、比較例1では、けい酸カルシウム板の廃材の粉砕粉のサイズが本発明で規定する範囲外であり微粉が多いことから、脱水成形する際に脱水された余剰水と共に微粉の一部が流出するため設定した厚さと見掛け密度とを共に有する成形体が作製出来なかった。従って、表1において、比較例1の見掛け密度、曲げ強さおよび長さ変化率の欄は「−」を記載した。
比較例2では、粉砕粉とセメントとの割合が本発明で規定する範囲外であるので、曲げ強度が低下した。
比較例3では、無機質板の見掛け密度が本発明で規定する範囲外であるので、曲げ強度が低下した。