特許第5856907号(P5856907)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5856907
(24)【登録日】2015年12月18日
(45)【発行日】2016年2月10日
(54)【発明の名称】噴霧用透明液体芳香剤組成物
(51)【国際特許分類】
   A61L 9/01 20060101AFI20160128BHJP
   A61L 9/14 20060101ALI20160128BHJP
【FI】
   A61L9/01 V
   A61L9/14
【請求項の数】7
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2012-118457(P2012-118457)
(22)【出願日】2012年5月24日
(65)【公開番号】特開2013-244093(P2013-244093A)
(43)【公開日】2013年12月9日
【審査請求日】2015年3月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078732
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 保
(74)【代理人】
【識別番号】100089185
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100149250
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 耕一郎
(72)【発明者】
【氏名】的場 隆志
【審査官】 中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−133073(JP,A)
【文献】 特開2011−236517(JP,A)
【文献】 特開2013−063160(JP,A)
【文献】 特開昭54−059498(JP,A)
【文献】 特表2003−526644(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 9/01
A61L 9/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)成分を約0.0005〜約0.1質量%、(b)成分を約0.05〜約1質量%、(c)成分及び水を含有する噴霧用透明液体芳香剤組成物。
(a)成分:式(1)で表されるケイ酸エステル化合物
【化1】
〔式中、R1、R2、R3及びR4は独立に、水素原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1〜30のアルキル基若しくはアリール基であり、R1、R2、R3及びR4のうち1つ又は2つは、フェノール性水酸基を有する香料からフェノール性水酸基を除いた残基であり、R1、R2、R3及びR4のうち2つ又は3つは、炭素数6〜20の2級又は3級アルコールから1つの水酸基を除いた残基である。〕
(b)成分:下記一般式(b1)又は(b2)で表される、陽イオン界面活性剤
【化2】

〔式中、R1bは、それぞれ同一でも異なっていてもよい炭素数8〜10の脂肪族炭化水素基であり、R2bは、それぞれ同一でも異なっていてもよい炭素数1〜3のアルキル基及び炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基から選ばれる基であり、Q-は陰イオン基である。〕
【化3】

〔式中、R3bは炭素数8〜14の脂肪族炭化水素基であり、R4b、R5bは炭素数1〜3のアルキル基及び炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基から選ばれる基であり、Q-は陰イオン基である。〕
(c)成分:エタノール
【請求項2】
更に、(d)成分として、2〜6価で1分子の総炭素数が2〜12の多価アルコールを含有する、請求項1に記載の噴霧用透明液体芳香剤組成物。
【請求項3】
更に、(e)成分として、分子量104〜300の2価又は3価のカルボン酸及びその塩から選ばれる1種又は2種以上の化合物を含有する、請求項1又は2に記載の噴霧用透明液体芳香剤組成物。
【請求項4】
25℃におけるpHが6〜8.5である、請求項1〜3のいずれかに記載の噴霧用透明液体芳香剤組成物。
【請求項5】
フェノール性水酸基を有する香料が、ラズベリーケトン、オイゲノール、イソオイゲノール、バニリン、エチルバニリン、チモール、及びカルバクロールから選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜4のいずれかに記載の噴霧用透明液体芳香剤組成物。
【請求項6】
2級又は3級アルコールが、水酸基が環状脂肪族炭化水素を構成する骨格炭素原子に直に結合している2級アルコールである、請求項1〜5のいずれかに記載の噴霧用透明液体芳香剤組成物。
【請求項7】
請求項1〜のいずれかに記載の噴霧用透明液体芳香剤組成物をスプレー容器に充填してなる、スプレー式芳香剤物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、噴霧用透明液体芳香剤組成物及びこれを用いたスプレー式芳香剤物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自分の香りを周りにアピールする為に、身体に適用する香水が用いられてきた。近年、身体に適用する香水のみならず、着用したり使用する衣類から、自分が気に入った香りを香らせ、自らを周囲にアピールする行動が増えてきている。それに伴い、トイレタリーメーカー各社から、衣類に種々の香りを付与し、香りの持続性に優れる柔軟剤組成物が販売されている。また、居住空間にも香りを香らせる置型の芳香剤や、スプレーで噴霧する芳香剤の市場も大きくなってきている。
【0003】
特許文献1、2には、ケイ酸エステル化合物と非イオン界面活性剤とを含有し、香りの持続性に優れ、繊維製品に噴霧するのに適した、繊維製品処理剤組成物が開示されている。
特許文献3には、衣類・布製品などにあらかじめスプレーして用いられる、不快臭の発生を抑制する第4級アンモニウム型抗菌剤を配合した抗菌消臭剤について、抗菌効果の持続性を向上させ、ひいては消臭効果の持続性に優れる抗菌消臭剤組成物として、特定の構造を有する非イオン性界面活性剤、第4級アンモニウム塩型抗菌剤及び水溶性多価カルボン酸を含有する、消臭性能に優れた消臭剤組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−209494号公報
【特許文献2】特開2010−133073号公報
【特許文献3】特開2009−153788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1、2に記載のケイ酸エステル化合物を含む組成物を、衣類に付着させることで、衣類から香るほのかな香りが長期間持続することが知られている。
しかしながら、ケイ酸エステル化合物の含有量が低く、多量の水を含有し、透明な外観を有し、且つ、噴霧に適した透明液体芳香剤組成物中では、ケイ酸エステル化合物は、白濁乳化した液体芳香剤組成物における存在形態のように分散剤に覆われた状態とは異なり、溶液状態で存在するため、水との接触割合が大きく、加水分解しやすくなる為、更なる改善が望まれていた。
また、芳香剤、消臭剤などをはじめとして、噴霧用の組成物には、抗菌剤として、ジデシルジメチルアンモニウムクロリド等の陽イオン界面活性剤を用いることが多い。しかしながら、ケイ酸エステル化合物を低濃度で含有する透明液体芳香剤組成物に、ジデシルジメチルアンモニウムクロリド等の陽イオン界面活性剤を使用すると、組成物中でのケイ酸エステル化合物の加水分解が促進されることが明らかとなった。すなわち、透明な外観とするために水中にケイ酸エステル化合物を低濃度で配合した組成物に、陽イオン界面活性剤を使用すると、ケイ酸エステル化合物の安定性に課題が生じることが新たに見出された。とりわけ、フェノール性水酸基を有する香料から、フェノール性水酸基を除いた残基を、置換基として有するケイ酸エステル化合物は、加水分解が起こりやすく、更なる加水分解安定性の改善が望まれていた。
特許文献3では、第4級アンモニウム型の陽イオン界面活性剤と水溶性ポリカルボン酸が水和ゲルを形成することで、抗菌剤の効果をより高めることが記載されているが、ケイ酸エステル化合物の加水分解に関することは記載されていない。
【0006】
本発明の課題は、特定のケイ酸エステル化合物と陽イオン界面活性剤とを含有し、香りの持続性に優れた噴霧用透明液体芳香剤組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、ケイ酸エステル化合物の置換基として、特定構造の基を、特定の数、有することで、水中にケイ酸エステル化合物を低濃度で含有する噴霧用透明液体芳香剤組成物であっても、ケイ酸エステル化合物の加水分解を適度に抑制できることを見出した。とりわけ、フェノール性水酸基を有する香料から、フェノール性水酸基を除いた残基を、置換基として有するケイ酸エステル化合物の加水分解を適度に抑制できる。
すなわち、本発明は、以下の[1]及び[2]に関する。
[1] 下記(a)成分を約0.0005〜約0.1質量%、(b)成分を約0.05〜約1質量%、(c)成分及び水を含有する噴霧用透明液体芳香剤組成物。
(a)成分:式(1)で表されるケイ酸エステル化合物
【化1】
〔式中、R1、R2、R3及びR4は独立に、水素原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1〜30のアルキル基若しくはアリール基であり、R1、R2、R3及びR4のうち1つ又は2つは、フェノール性水酸基を有する香料からフェノール性水酸基を除いた残基であり、R1、R2、R3及びR4のうち2つ又は3つは、2級又は3級アルコールから1つの水酸基を除いた残基である。〕
(b)成分:4級アンモニウム基を1つ有し、該4級アンモニウム基の窒素上に、炭素数8〜14の脂肪族炭化水素基を1つ又は2つ有する、陽イオン界面活性剤
(c)成分:エタノール
[2] [1]の噴霧用透明液体芳香剤組成物をスプレー容器に充填してなる、スプレー式芳香剤物品。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ケイ酸エステル化合物と陽イオン界面活性剤とを含有していても、ケイ酸エステル化合物の加水分解が適度に抑制され、香りの持続性に優れた噴霧用透明液体芳香剤組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の噴霧用透明液体芳香剤組成物は、下記(a)成分を約0.0005〜約0.1質量%、(b)成分を約0.05〜約1質量%、(c)成分及び水を含有する。
(a)成分:式(1)で表されるケイ酸エステル化合物
【化2】
〔式中、R1、R2、R3及びR4は独立に、水素原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1〜30のアルキル基若しくはアリール基であり、R1、R2、R3及びR4のうち1つ又は2つは、フェノール性水酸基を有する香料からフェノール性水酸基を除いた残基であり、R1、R2、R3及びR4のうち2つ又は3つは、2級又は3級アルコールから1つの水酸基を除いた残基である。〕
(b)成分:4級アンモニウム基を1つ有し、該4級アンモニウム基の窒素上に、炭素数8〜14の脂肪族炭化水素基を1つ又は2つ有する、陽イオン界面活性剤
(c)成分:エタノール
このように、(a)成分のケイ酸エステル化合物として、2級又は3級アルコールから1つの水酸基を除いた残基を2つ又は3つ有することで、ケイ酸エステル化合物の加水分解を適度に抑制することができ、香りの持続性に優れた噴霧用透明液体芳香剤組成物が得られると考えられる。とりわけ、フェノール性水酸基を有する香料からフェノール性水酸基を除いた残基を、置換基として有する、ケイ酸エステル化合物の加水分解を適度に抑制できる。
以下、本発明の噴霧用透明液体芳香剤組成物の各成分について詳細に説明する。
【0010】
[(a)成分:ケイ酸エステル化合物]
本発明の噴霧用透明液体芳香剤組成物の(a)成分は、式(1)で表されるケイ酸エステル化合物である。
【化3】
(式中、R1、R2、R3及びR4は独立に、水素原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1〜30のアルキル基若しくはアリール基であり、R1、R2、R3及びR4のうち1つ又は2つは、フェノール性水酸基を有する香料からフェノール性水酸基を除いた残基であり、R1、R2、R3及びR4のうち2つ又は3つは、2級又は3級アルコールから1つの水酸基を除いた残基である。)
【0011】
本発明の式(1)で表されるケイ酸エステル化合物(a)は、以下のi)〜iii)の態様が好ましい。
i)R1、R2、R3及びR4のうち1つがフェノール性水酸基を有する香料からフェノール性水酸基を除いた残基であり、R1、R2、R3及びR4のうち3つが2級又は3級アルコールから水酸基を除いた残基である態様
ii)R1、R2、R3及びR4のうち2つがフェノール性水酸基を有する香料からフェノール性水酸基を除いた残基であり、R1、R2、R3及びR4のうち2つが2級又は3級アルコールから水酸基を除いた残基である態様
iii)R1、R2、R3及びR4のうち1つがフェノール性水酸基を有する香料からフェノール性水酸基を除いた残基であり、R1、R2、R3及びR4のうち2つが2級又は3級アルコールから水酸基を除いた残基であり、R1、R2、R3及びR4のうち1つが、水素原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1〜30のアルキル基若しくはアリール基(但し、フェノール性水酸基を有する香料からフェノール性水酸基を除いた残基、及び2級若しくは3級アルコールから水酸基を除いた残基を除く)である態様
上記i)〜iii)の何れの態様も本願所望の効果を奏するが、フェノール性水酸基を有する香料の香り持続性の観点から、i)及びiii)の態様がより好ましく、i)の態様がさらに好ましい。
【0012】
本発明において、フェノール性水酸基を有する香料とは、芳香族炭化水素基の水素原子の一つが水酸基に置換された構造を有する香料として用いられるアルコールを意味する。
フェノール性水酸基を有する香料としては、例えば、ラズベリーケトン(4−(4−ヒドロキシフェニル)−2−ブタノン)、オイゲノール、イソオイゲノール、バニリン、エチルバニリン、チモール、カルバクロールが挙げられる。
フェノール性水酸基を有する香料としては、オルト位(水酸基に対し)に極性官能基(例えばエーテル、エステル、アルデヒド、ケトン、ハロゲンなど)を有していないものが、水系製品中における保存安定性の観点から好適である。具体例としては、ラズベリーケトン、チモールが挙げられる。
【0013】
フェノール性水酸基を有する香料の水系製品中における分解・放出を抑制し、実使用系において該香料を長期に亘り安定に徐放させるにあたって、ケイ酸エステル化合物(a)において、R1、R2、R3及びR4のうち2つ又は3つが、2級又は3級アルコールから1つの水酸基を除いた残基であることが重要である。ここで、かかる2つ又は3つの置換基は、そのいずれもが2級アルコールから1つの水酸基を除いた残基であっても、いずれもが3級アルコールから1つの水酸基を除いた残基であっても、あるいはまた、2級アルコールから1つの水酸基を除いた残基と3級アルコールから1つの水酸基を除いた残基の両方を組み合わせて有してもよい。
本発明の噴霧用透明液体芳香剤組成物中でのケイ酸エステル化合物(a)の加水分解を抑制する観点から、R1、R2、R3及びR4のうち2つ又は3つが、3級アルコールから1つの水酸基を除いた残基が好ましい。
本発明の噴霧用透明液体芳香剤組成物中でのケイ酸エステル化合物(a)の加水分解を抑制し、且つ対象物に当該組成物を噴霧し、対象物に付着させた後に、香りを適度な強さで香らせる観点から、R1、R2、R3及びR4のうち2つ又は3つが、2級アルコールから1つの水酸基を除いた残基が好ましい。特に好ましくは、ケイ酸エステル化合物において、R1、R2、R3及びR4のうち、2つ又は3つが2級アルコールから水酸基を除いた残基とすることが好適である。
本願所望の効果を得る観点から、2級又は3級アルコールとしては、炭素数6〜20のものが好ましく、炭素数6〜15のものがより好ましく、炭素数9〜13のものが更に好ましい。
【0014】
上記の2級アルコールとしては、特に制限されないが、例えば、チンベロール(1−(2,2,6−トリメチルシクロヘキサン−1−イル)−ペンタン−2−オール)、メントール(p−メンタン−3−オール)、アンバーコア、p−tertブチルシクロヘキサノール、o−tert−ブチルシクロヘキサノール、カルベオール、コヒノール(3,4,5,6,6−ペンタメチル−2−ヘプタノール)、サンダロア(3−メチル−5−(2,2,3−トリメチルシクロペンテン−1−イル)−ペンタン−2−オール)、2−オクチルアルコール、2−ノニルアルコール、オシロール、フォルロージア(4−イソプロピルシクロヘキサノール)、イソプレゴール、3−ヘプタノール、3−オクタノール、2−ウンデカノール、1−ペンテン−3−オール、1−オクテン−3−オール、1−ノネン−3−オール、4−メチル−3−デセン−5−オール、メチルサンデフロール、ジヒドロカルベオール、α−フェンキルアルコール(1,3,3−トリメチルビシクロ(2.2.1)ヘプタン−2−オール)、ボルネオール、カメコール(α,3,3−トリメチルビシクロ(2.2.1)ヘプタン−2−メタノール)、ジメチルサイクロモル(2(or3),4−ジメチル−3a,4,5,6,7,7a−ヘキサヒドロ−4,7−メタノ−1H−インデン−5−オール)、イソカンフィルシクロヘキサノール、β−カリオフィレンアルコール、セドロール、p−α−ジメチルベンジルアルコール、α−フェニルエチルアルコール、α−プロピルフェニルエチルアルコール、イソブチルベンジルカルビノール、デカヒドロ−β−ナフトールなどが挙げられる。
【0015】
上記の3級アルコールとしては、特に制限されないが、例えば、ミルセノール(2−メチル−6−メチレン−7−オクテン−2−オール)、テルピネオール、リナロール、2,6−ジメチルヘプタノール、2−メチル−3−ブテン−2−オール、アンブリノール、ジヒドロリナロール、テトラヒドロリナロール、テトラヒドロムゴール(2,6−ジメチル−2−オクタノール及び3,7−ジメチル−3−オクタノール)、ムゴール(2,6−ジメチル−3,5−オクタジエン−2−オール及び3,7−ジメチル−4,6−オクタジエン−3−オール)、ジヒドロミルセノール(2,6−ジメチル−7−オクテン−2−オール)、テトラヒドロミルセノール(2,6−ジメチル−2−オクタノール)、オシメノール、3,6−ジメチル−3−オクタノール、エチルリナロール、テルピネオール、ジヒドロテルピネオール、4−ツヤノール、ネロリドール、ビサボロール、パチュリアルコール、イソフィトール(3,7,11,15−テトラメチル−1−ヘキサデセン−3−オール)、ゲラニルリナロール、スクラレオール、α、α−ジメチルフェニルエチルアルコール、p−メチルジメチルベンジルカルビノール、ジメチルフェニルエチルカルビノール、3−メチル−1−フェニル−3−ペンタノール、フロロール(2−イソブチル−4−メチルテトラヒドロ−2H−ピラン−4−オール)などが挙げられる。
これらの2級又は3級アルコールの中でも、水酸基が環状脂肪族炭化水素を構成する骨格炭素原子に直に結合している2級アルコールが好ましく、本発明の噴霧用透明液体芳香剤組成物の(a)成分のフェノール性水酸基を有する香料由来の残基の加水分解を抑制する観点から、メントール、フォルロージアがより好ましい。
【0016】
水素原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1〜30のアルキル基若しくはアリール基は、持続性の観点から、炭素数1〜15の1級アルコールから水酸基を除いた残基が好ましく、炭素数6〜12の1級アルコールから水酸基を除いた残基がより好ましい。
かかる1級アルコールの具体例としてはエタノール、ブタノール等の炭素数1〜4のアルキル基を有する1級アルコール、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール等の炭素数6〜12の1級の脂肪アルコール、2−エチルヘキサノール、4−ブチルオクタノール等のゲルベアルコール、ゲラニオール(3,7−ジメチル−トランス−2,6−オクタジエン−1−オール)、シトロネロール等の香料アルコール等が挙げられる。
これらの1級アルコールの中でも、ゲラニオールが好ましい。
【0017】
ケイ酸エステル化合物(a)は、複数種の物質を含む混合組成物として本発明の噴霧用透明液体芳香剤組成物に添加してもよい。混合組成物は、ケイ酸エステル化合物(a)以外に、これらケイ酸エステル化合物(a)の製造の際に副生する副生物や、これらケイ酸エステル化合物(a)の縮合物、あるいは製造原料を含んでいてもよい。混合組成物中のケイ酸エステル化合物(a)の含有量は、長期に亘り安定に香料を徐放させる観点から、10質量%以上が好ましく、15質量%がより好ましい。混合組成物中のケイ酸エステル化合物(a)の含有量の上限は、100質量%であるが、上記のケイ酸エステル化合物(a)を含む混合組成物の製造の容易性から、90質量%以下が好ましい。
ケイ酸エステル化合物(a)は、特開2010−133073号公報の段落0030〜0041などに記載されている方法で入手することができる。
【0018】
[(b)成分:陽イオン界面活性剤]
本発明の(b)成分は、4級アンモニウム基を1つ有し、該4級アンモニウム基の窒素上に、炭素数8〜14の脂肪族炭化水素基を1つ又は2つ有する、陽イオン界面活性剤である。
中でも下記一般式(b1)又は(b2)で表される陽イオン界面活性剤を含有することが好ましい。
【化4】
〔式中、R1bは、それぞれ同一でも異なっていてもよい炭素数8〜10の脂肪族炭化水素基であり、R2bは、それぞれ同一でも異なっていてもよい炭素数1〜3のアルキル基及び炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基から選ばれる基であり、Q-は陰イオン基である。〕
【化5】
〔式中、R3bは炭素数8〜14の脂肪族炭化水素基であり、R4b、R5bは炭素数1〜3のアルキル基及び炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基から選ばれる基であり、Q-は陰イオン基である。〕
【0019】
一般式(b1)で表される陽イオン界面活性剤〔以下「(b1)成分」ともいう〕としては、抗菌性の観点から前記R1bは、アルキル基が好ましく、なかでも炭素数10のアルキル基が好ましい。炭素数10のアルキル基の具体例としては1−デシル基が好ましい。
2bの炭素数1〜3のアルキル基は、製造の容易性の観点から、メチル基及びエチル基から選ばれる基が好ましい。
2bの炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基は、製造の容易性の観点から、2−ヒドロキシエチル基が好ましい。
-の陰イオン基として好ましくは、製造の容易性の観点から、塩素イオン、メチル硫酸イオン及びエチル硫酸イオンから選ばれる基が好ましい。
(b1)成分の好ましい具体例としては、N,N−ジ(1−デシル)−N,N−ジメチルアンモニウムクロリド及びN,N−ジ(1−デシル)−N,N−ジメチルアンモニウムメチルサルフェートから選ばれる化合物が挙げられ、これらの中でも、より好ましくは、N,N−ジ(1−デシル)−N,N−ジメチルアンモニウムクロリドである。
【0020】
一般式(b2)で表される陽イオン界面活性剤〔以下「(b2)成分」ともいう〕としては、R3bは、抗菌性の観点から、アルキル基が好ましく、なかでも炭素数8のアルキル基、炭素数12のアルキル基、又は炭素数14のアルキルが好ましい。炭素数8のアルキル基の具体例としては1−オクチル基が好ましい。炭素数12のアルキル基としては1−ドデシル基、炭素数14のアルキル基としては1−テトラデシル基が好ましい。
4b、R5bの炭素数1〜3のアルキル基としては、製造の容易性の観点から、メチル基及びエチル基から選ばれる基が好ましい。
4b、R5bの炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基としては、製造の容易性の観点から、2−ヒドロキシエチル基が好ましい。
-の陰イオン基として好ましくは、製造の容易性の観点から、塩素イオン、メチル硫酸イオン及びエチル硫酸イオンから選ばれる基が好ましい。
これらの(b2)成分の中でも、抗菌効果を有する化合物として、N−(1−オクチル)−N,N−ジメチル−N−ベンジルアンモニウムクロリド、N−(1−ドデシル)−N,N−ジメチル−N−ベンジルアンモニウムクロリド及びN−(1−テトラデシル)−N,N−ジメチル−N−ベンジルアンモニウムクロリドから選ばれる化合物が好ましく、より好ましくは、N−(1−ドデシル)−N,N−ジメチル−N−ベンジルアンモニウムクロリド、及びN−(1−テトラデシル)−N,N−ジメチル−N−ベンジルアンモニウムクロリドから選ばれる化合物がより好ましい。
【0021】
[(c)成分:エタノール]
本発明の(c)成分は、エタノールである。エタノールは合成アルコール、発酵アルコール又はバイオエタノール等のいずれを用いてもよい。エタノールは、繊維等の対象物に噴霧した後の、水を含有する組成物の乾燥性を高めたり、香料と共に揮発することで、香り立ちを良くする為に用いられる。また、本発明においては、組成物中に含有するエタノールの量により、ケイ酸エステル化合物の加水分解の程度が影響されることが見出された。
【0022】
[(d)成分:多価アルコール]
本発明においては、持続的な香りを発現させる観点から、更に(d)成分として、2〜6価で1分子の総炭素数が2〜12の多価アルコールを含むことが好ましい。具体的には、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール、又は、グリセリンのアルキル(炭素数1〜8)のモノエーテル誘導体が挙げられる。
これらの中では、持続的な香りをより発現させる観点から、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、2−エチルヘキシルグリセリルエーテルが好ましく、加水分解率の低下を抑制し、且つ持続的な香りを発現させる観点から、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコールが好ましい。
【0023】
[(e)成分]
本発明においては、更に(e)成分として、分子量104〜300の2価又は3価のカルボン酸及びその塩から選ばれる1種又は2種以上の化合物を含むことが、(a)成分の加水分解抑制の観点から好ましい。この分子量は、酸型化合物の分子量である。
本発明では、(e)成分として前記カルボン酸の塩を配合することもできるが、酸型のカルボン酸を、水を含有する組成物に添加し、そのpHを6.0〜8.5とすることで塩として存在させることができる。当業者において、水を含有する組成物中でのpHが、該カルボン酸のpKa付近か、又は高ければ、該カルボン酸は一部、塩として存在することは自明である。
より具体的な化合物としては、マロン酸(分子量:104)〔以下( )内の数値は分子量を表す。〕、マロン酸の水素原子の1個又は2個が炭素数1〜3のアルキル基で置換されたマロン酸誘導体(118〜186)、マレイン酸(116)、マレイン酸の水素原子の1個又は2個が炭素数1〜3のアルキル基で置換されたマレイン酸誘導体(130〜200)、コハク酸(118)、コハク酸の水素原子の1個又は2個が炭素数1〜3のアルキル基で置換されたコハク酸誘導体(132〜230)、グルタル酸(132)、グルタル酸の水素原子の1個又は2個が炭素数1〜3のアルキル基で置換されたグルタル酸誘導体(146〜216)、クエン酸(164)、及びこれらの酸の塩が挙げられる。前記アルキル基はメチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基が挙げられる。
本発明の(b)成分と、ケイ酸エステル化合物を安定化しやすい複合体の形成しやすさの観点から、分子量115〜280の2価又は3価のカルボン酸及びその塩から選ばれる1種又は2種以上の化合物が好ましく、分子量130〜230の2価又は3価のカルボン酸及びその塩から選ばれる1種又は2種以上の化合物がより好ましく、分子量140〜220の2価又は3価のカルボン酸及びその塩から選ばれる1種又は2種以上の化合物がより特に好ましい。
具体的には、化合物が容易に入手できる観点から、マロン酸塩、マレイン酸、コハク酸、グルタル酸、クエン酸、及びそれらの塩から選ばれる1種又は2種以上の化合物が好ましく、(a)成分の加水分解抑制の観点から、グルタル酸、クエン酸、及びそれらの塩から選ばれる1種又は2種以上の化合物がより好ましく、クエン酸及びその塩から選ばれる1種又は2種以上の化合物が更に好ましい。
【0024】
[噴霧用透明液体芳香剤組成物]
本発明の噴霧用液体芳香剤組成物は透明である。ここで、噴霧用透明液体芳香剤組成物についての「透明」とは、紫外可視分光光度計において、光路長が1cmの石英セルを用い、対照セルにイオン交換水(25℃)を入れ、測定セルに噴霧用液体芳香剤組成物(25℃)を入れて測定した場合に、660nmの波長の透過率が80%以上、好ましくは90%以上であることをいう。透過率の上限は、100%であり、特に限定されないが、99%が好ましい。
尚、噴霧用液体芳香剤組成物中に、ケイ酸エステル化合物が溶解しており、例えばラテックス等の660nmの透過率を低下させ、見かけ上濁ったように見せる成分が含まれている場合には、その濁りの要因となる成分を除いた組成物又は含まない組成物の前記透過率が80%以上であれば、本発明の技術範囲とみなす。
本発明の噴霧用透明液体芳香剤組成物中の(a)成分、(b)成分の含有量は、使用形態、繊維製品の種類、香らせる香りの強さの程度などによって適宜調整することができる。
(a)成分の組成物中の含有量は、約0.0005〜約0.1質量%である。より具体的には、持続性のある香りの賦与の観点から、0.0005質量%以上であり、衣類等に持続性のある適度な強さの香りを賦与する観点から、0.001質量%以上が好ましい。経済的な観点から0.1質量%以下であり、香りが強すぎないという観点から、0.05質量%以下が好ましく、0.03質量%以下がより好ましい。
【0025】
(b)成分の組成物中の含有量は、約0.05〜約1質量%である。より具体的には、噴霧用透明液体芳香剤組成物に抗菌性を賦与する点、又は噴霧した衣類等の対象物に抗菌性を賦与する観点から、0.05質量%以上であり、0.08質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上が更に好ましい。また(b)成分の含有量は、1質量%以下であり、ケイ酸エステル化合物の加水分解を促進しすぎないようにする観点から、0.5質量%以下が好ましく、ケイ酸エステル化合物の加水分解抑制の観点から、0.4質量%以下が好ましく、0.2質量%以下がより好ましい。尚、本明細書において、(b)成分の含有量とは、(b)成分の陽イオン界面活性剤の含有量に換算した値を示す(すなわち対イオンである陰イオン部分の含有量は考慮しない)。
【0026】
(c)成分の含有量は、香り立ちの観点から、噴霧用透明液体芳香剤組成物中、1質量%以上が好ましく、2質量%以上がより好ましく、2.5質量%以上が更に好ましい。ケイ酸エステル化合物の加水分解安定性の観点から、噴霧用透明液体芳香剤組成物中、15質量%以下であり、12質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、7質量%以下が更に好ましい。
【0027】
(d)成分の含有量は、本発明の噴霧用透明液体芳香剤組成物において、持続的な香りを発現させる観点から、(a)成分に対する(d)成分の質量比〔(d)成分/(a)成分〕は、5000〜4が好ましく、より好ましくは3000〜5、更に好ましくは500〜6である。
【0028】
(e)成分の含有量は、(e)成分に対する(b)成分の質量比〔(b)成分/(e)成分〕で、ケイ酸エステル化合物の加水分解抑制の観点から、30以下が好ましく、25以下がより好ましく、20以下が更に好ましく、14以下がより更に好ましく、10以下が特に好ましい。当該質量比は、経済的な観点及び組成物のpH調整のし易さの観点から1以上が好ましく、経済的な観点及び組成物のpH調整のし易さの観点から1.5以上が好ましい。(e)成分はこの質量比を満たす含有量で組成物中に配合されることが好ましい。尚、(b)成分は陽イオンの質量に換算した値であり、(e)成分は酸型に換算した値を用いる。
【0029】
本発明の噴霧用透明液体芳香剤組成物において、(a)成分及び(b)成分以外の残部は水とすることができる。使用する水は、蒸留水やイオン交換水等からイオン成分を除去したものが好ましい。組成物中の水の含有量は、噴霧用透明液体芳香剤組成物の調製のし易さの観点から、75〜99.94質量%が好ましく、75〜96.5質量%がより好ましく、80〜96質量%が更に好ましい。
また必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、更に、界面活性剤〔(f)成分ともいう。但し、(b)成分は除く〕、硫酸ナトリウム等の塩、pH調整剤、酸化防止剤、防腐剤、香料、染料、顔料、紫外線吸収剤等の他の成分を添加することができる。
【0030】
前記(f)成分の界面活性剤としては、下記一般式(f1)で表される非イオン性界面活性剤が好ましい。
1f−Z−[(EO)s/(PO)t]−R2f (f1)
〔式(f1)中、R1fは、炭素数10〜16の脂肪族炭化水素基、R2fは、水素原子、又は炭素数1〜3のアルキル基であり、Zは−O−又は−COO−のいずれかであり、EOは、オキシエチレン基であり、POはオキシプロピレン基であり、(EO)と(PO)はランダム付加でもブロック付加でもいずれでもよく、(EO)と(PO)の付加順序は問わない。s及びtは整数であり、sは4〜50の数、tは2以下の数である。〕
1fは、(b)成分と(c)成分が形成する複合体に対する親和性が高いという観点から、炭素数12〜14の脂肪族炭化水素基が好ましく、炭素数12〜14のアルキル基又はアルケニル基が好ましく、炭素数12〜14のアルキル基がより好ましい。脂肪族炭化水素基としては、1級又は2級の炭化水素基が好ましく、1級又は2級のアルキル基又はアルケニル基がより好ましく、1級又は2級のアルキル基がより好ましい。
炭素数12のアルキル基としては、1−ドデシル基、2級のドデシル基が好ましく、炭素数13のアルキル基としては、2級のトリデシル基が好ましく、炭素数14のアルキル基としては、1級のテトラデシル基、2級のテトラデシル基が好ましい。
sは、(a)成分の加水分解抑制の観点から6〜40の数が好ましく、7〜35の数が好ましい。tは、分散性の観点から1以下の数が好ましく、より好ましくは0である。
噴霧用透明液体芳香剤組成物中の(f)成分の含有量は、(a)成分の加水分解安定性の点から、0.005〜0.5質量%が好ましく、より好ましくは0.008〜0.3質量%であり、特に好ましくは0.01〜0.2質量%である。
【0031】
本発明の噴霧用透明液体芳香剤組成物の25℃におけるpHは、持続的な強い香りを発現させる観点から、6〜8.5が好ましく、6.5〜8.5がより好ましく、7.0〜8.3が更に好ましく、7.0〜8.0がより更に好ましく、7.0〜7.7が最も好ましい。本発明の噴霧用透明液体芳香剤組成物のpHは、塩酸等の酸、又は水酸化ナトリウム等のアルカリを添加することにより調整することができる。噴霧用透明液体芳香剤組成物のpHは実施例に記載の方法で測定した値である。
【0032】
本発明の噴霧用透明液体芳香剤組成物の25℃における粘度は、スプレー容器での噴霧適性の観点から、15mPa・s以下が好ましく、より好ましくは1〜10mPa・s、更に好ましくは1〜5mPa・sである。本発明の噴霧用透明液体芳香剤組成物において、25℃における粘度が15mPa・s以下であると噴霧パターンが適正となる。粘度は、東京計器株式会社製、B型粘度計(モデル形式BM)に、No.1のローターを取り付け、噴霧用透明液体芳香剤組成物を200mL容量のガラス製トールビーカーに充填し、ウォーターバスにて25±0.3℃に調整し、ローターの回転数を60r/minに設定し、測定を始めてから60秒後の指示値である。
【0033】
[スプレー式芳香剤物品]
本発明の噴霧用透明液体芳香剤組成物をスプレー容器に充填してスプレー式芳香剤物品を得ることができる。本発明のスプレー式芳香剤物品は、本発明の噴霧用透明液体芳香剤組成物と、スプレー容器とを含んで構成される物品である。本発明の噴霧用透明液体芳香剤組成物は水を含有するミストタイプであり、これをスプレー容器に充填し、一回の噴霧量を0.1〜3mlに調整したものが好ましい。使用するスプレー容器としては、トリガースプレー容器(直圧あるいは蓄圧型)やディスペンサータイプのポンプスプレー容器、耐圧容器を具備したエアゾールスプレー容器等が挙げられる。性能を効果的に発現するために、トリガー式スプレーヤーあるいはエアゾールスプレーヤーを具備するスプレー容器が好ましく、本発明においては、耐久性や布付着性の点から、トリガー式スプレーヤーを具備するスプレー容器がより好ましい。
【0034】
スプレー容器としては、噴射口から噴射方向に10cm離れた地点における噴霧液滴の平均粒径が10〜200μmとなり、噴射口から噴射方向に15cm離れた地点における粒径200μmを超える液滴の数が噴霧液滴の総数の1%以下となり、噴射口から噴射方向に10cm離れた地点における粒径10μm未満の液滴の数が噴霧液滴の総数の1%以下となる噴霧手段を備えたものが好ましい。噴霧液滴の粒子径分布は体積平均粒子径であり、例えば、レーザー回折式粒度分布計(日本電子株式会社製)により測定することができる。
【0035】
本発明の噴霧用透明液体芳香剤組成物及びスプレー式芳香剤物品は、繊維製品用として好適であり、かかる噴霧用透明液体芳香剤組成物は、噴霧により繊維製品に付着させて、対象物に香りを付与することができる。前記スプレー式芳香剤物品はこの方法に好適に用いられる。繊維製品としては、スーツ、セーター等の衣類、カーテン、ソファー等が挙げられる。
【0036】
本発明の噴霧用透明液体芳香剤組成物を、噴霧より繊維製品に対象物に付着させる方法が本発明の効果を享受できる観点から好ましい。付着させる量は、対象物が繊維製品である場合には、噴霧された繊維製品の乾燥時間を短くする観点から、噴霧用透明液体芳香剤組成物が付着した範囲の繊維製品の質量に対して、100質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましい。繊維製品に対して均一に付着させる観点から、噴霧用透明液体芳香剤組成物が付着した範囲の繊維製品の質量に対して5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましい。対象物の質量が容易に測定できない場合(例えば、大型家具などの布張部分、建物等に固定されている繊維製品等)には、対象物の10cm2の面積に対して0.1〜3g、好ましくは0.3〜2.5g、より好ましくは0.5〜2.0gとなる量の噴霧用透明液体芳香剤組成物を付着させることが、本発明の効果が得られる観点から好ましい。
【0037】
上述した実施の形態に関し、本発明は以下の組成物及び物品を開示する。
<1> 下記(a)成分を約0.0005〜約0.1質量%、(b)成分を約0.05〜約1質量%、(c)成分及び水を含有する噴霧用透明液体芳香剤組成物。
(a)成分:式(1)で表されるケイ酸エステル化合物
【化6】
〔式中、R1、R2、R3及びR4は独立に、水素原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1〜30のアルキル基若しくはアリール基であり、R1、R2、R3及びR4のうち1つ又は2つは、フェノール性水酸基を有する香料からフェノール性水酸基を除いた残基であり、R1、R2、R3及びR4のうち2つ又は3つは、2級又は3級アルコールから1つの水酸基を除いた残基である。〕
(b)成分:4級アンモニウム基を1つ有し、該4級アンモニウム基の窒素上に、炭素数8〜14の脂肪族炭化水素基を1つ又は2つ有する、陽イオン界面活性剤
(c)成分:エタノール
<2> (a)成分の式(1)が、i)〜iii)のいずれかである、<1>に記載の噴霧用透明液体芳香剤組成物。
i)R1、R2、R3及びR4のうち1つがフェノール性水酸基を有する香料からフェノール性水酸基を除いた残基であり、R1、R2、R3及びR4のうち3つが2級又は3級アルコールから水酸基を除いた残基である。
ii)R1、R2、R3及びR4のうち2つがフェノール性水酸基を有する香料からフェノール性水酸基を除いた残基であり、R1、R2、R3及びR4のうち2つが2級又は3級アルコールから水酸基を除いた残基である。
iii)R1、R2、R3及びR4のうち1つがフェノール性水酸基を有する香料からフェノール性水酸基を除いた残基であり、R1、R2、R3及びR4のうち2つが2級又は3級アルコールから水酸基を除いた残基であり、R1、R2、R3及びR4のうち1つが、水素原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1〜30のアルキル基若しくはアリール基(但し、フェノール性水酸基を有する香料からフェノール性水酸基を除いた残基、及び2級若しくは3級アルコールから水酸基を除いた残基を除く)である。
<3> 2級又は3級アルコールが、メントール及びフォルロージアから選ばれる1種又は2種である、<1>又は<2>に記載の噴霧用透明液体芳香剤組成物。
<4> (b)成分が、下記一般式(b1)又は(b2)で表される陽イオン界面活性剤である、<1>〜<3>のいずれかに記載の噴霧用透明液体芳香剤組成物。
【化7】
〔式中、R1bは、それぞれ同一でも異なっていてもよい炭素数8〜10の脂肪族炭化水素基であり、R2bは、それぞれ同一でも異なっていてもよい炭素数1〜3のアルキル基及び炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基から選ばれる基であり、Q-は陰イオン基である。〕
【化8】
〔式中、R3bは炭素数8〜14の脂肪族炭化水素基であり、R4b、R5bは炭素数1〜3のアルキル基及び炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基から選ばれる基であり、Q-は陰イオン基である。〕
<5> (b)成分が(b1)成分であり、(b1)成分が、N,N−ジ(1−デシル)−N,N−ジメチルアンモニウムクロリド及びN,N−ジ(1−デシル)−N,N−ジメチルアンモニウムメチルサルフェートから選ばれる1種又は2種の化合物であり、より好ましくは、N,N−ジ(1−デシル)−N,N−ジメチルアンモニウムクロリドである、<4>に記載の噴霧用透明液体芳香剤組成物。
<6> (b)成分が(b2)成分であり、(b2)成分が、N−(1−オクチル)−N,N−ジメチル−N−ベンジルアンモニウムクロリド、N−(1−ドデシル)−N,N−ジメチル−N−ベンジルアンモニウムクロリド及びN−(1−テトラデシル)−N,N−ジメチル−N−ベンジルアンモニウムクロリドから選ばれる1種又は2種以上の化合物であり、より好ましくは、N−(1−ドデシル)−N,N−ジメチル−N−ベンジルアンモニウムクロリド、及びN−(1−テトラデシル)−N,N−ジメチル−N−ベンジルアンモニウムクロリドから選ばれる1種又は2種の化合物である、<4>に記載の噴霧用透明液体芳香剤組成物。
<7> 更に、(d)成分として、2〜6価で1分子の総炭素数が2〜12の多価アルコールを含有する、<1>〜<6>のいずれかに記載の噴霧用透明液体芳香剤組成物。
<8> 更に、(e)成分として、分子量104〜300の2価又は3価のカルボン酸及びその塩から選ばれる1種又は2種以上の化合物を含有する、<1>〜<7>のいずれかに記載の噴霧用透明液体芳香剤組成物。
<9> 25℃におけるpHが6〜8.5である、<1>〜<8>のいずれかに記載の噴霧用透明液体芳香剤組成物。
<10> 660nmの波長の光の透過率が80%以上、好ましくは90%以上である、<1>〜<9>のいずれかに記載の噴霧用透明液体芳香剤組成物。
<11> (a)成分の組成物中の含有量が、0.001〜0.005質量%であり、より好ましくは0.001〜0.03質量%である、<1>〜<10>のいずれかに記載の噴霧用透明液体芳香剤組成物。
<12> (b)成分の組成物中の含有量が、0.08〜0.5質量%であり、好ましくは0.1〜0.4質量%であり、より好ましくは0.1〜0.2質量%である、<1>〜<11>のいずれかに記載の噴霧用透明液体芳香剤組成物。
<13> (c)成分の含有量が、1〜15質量%であり、好ましくは2〜12質量%であり、より好ましくは2.5〜10質量%であり、更に好ましくは2.5〜7質量%である、<1>〜<12>のいずれかに記載の噴霧用透明液体芳香剤組成物。
<14> (a)成分に対する(d)成分の質量比〔(d)成分/(a)成分〕は、5000〜4であり、より好ましくは3000〜5であり、更に好ましくは500〜6である、<7>に記載の噴霧用透明液体芳香剤組成物。
<15> (e)成分に対する(b)成分の質量比〔(b)成分/(e)成分〕が、1〜30であり、好ましくは1〜25であり、より好ましくは1〜20であり、更に好ましくは1〜14であり、より更に好ましくは1.5〜10である、<8>に記載の噴霧用透明液体芳香剤組成物。
<16> 更に、(f)成分として、下記一般式(f1)で表される非イオン性界面活性剤を含む、<1>〜<15>のいずれかに記載の噴霧用透明液体芳香剤組成物。
1f−Z−[(EO)s/(PO)t]−R2f (f1)
〔式(f1)中、R1fは、炭素数10〜16の脂肪族炭化水素基、R2fは、水素原子、又は炭素数1〜3のアルキル基であり、Zは−O−又は−COO−のいずれかであり、EOは、オキシエチレン基であり、POはオキシプロピレン基であり、(EO)と(PO)はランダム付加でもブロック付加でもいずれでもよく、(EO)と(PO)の付加順序は問わない。s及びtは整数であり、sは4〜50の数、tは2以下の数である。〕
<17> <1>〜<16>のいずれかに記載の噴霧用透明液体芳香剤組成物をスプレー容器に充填してなる、スプレー式芳香剤物品。
<18> <1>〜<17>のいずれかに記載の噴霧用透明液体芳香剤組成物を、繊維製品の質量に対して100質量%以下となる量を噴霧し付着させる、繊維製品の処理方法。
【実施例】
【0038】
実施例及び比較例で用いた各配合成分をまとめて以下に示す。
【0039】
(a)成分
・a−1:下記合成例1で得られたケイ酸エステル化合物を含む混合組成物
・a−2:下記合成例2で得られたケイ酸エステル化合物を含む混合組成物
・a−3:下記合成例3で得られたケイ酸エステル化合物を含む混合組成物
・a−4:下記合成例4で得られたケイ酸エステル化合物を含む混合組成物
【0040】
(a’)成分
・a’−1:下記比較合成例1で得られたケイ酸エステル化合物を含む混合組成物
【0041】
(b)成分
・b−1:N,N−ジ(1−デシル)−N,N−ジメチルアンモニウムクロリド
・b−2:N,N−ジ(1−オクチル)−N,N−ジメチルアンモニウムクロリド
・b−3:N−(1−ドデシル)−N,N−ジメチル−N−ベンジルアンモニウムクロリド
【0042】
(c)成分
・c−1:エタノール
【0043】
(d)成分
・d−1:ジエチレングリコール
・d−2:2−エチルヘキシルグリセリルエーテル
【0044】
(e)成分
・e−1:クエン酸(分子量:164)
【0045】
(f)成分
・f−1:ポリオキシエチレン(数平均付加モル数は8モル)−1−ドデシルエーテル
【0046】
〔(a)成分の合成〕
合成例で用いた香料は以下の通りである。
ラズベリーケトン:4-(4-Hydroxyphenyl)-2-butanone、フェノール性水酸基を有する香料
テトラヒドロミルセノール:2,6-Dimethyl-2-octanol、3級アルコール
フォルロージア:4-isopropylcyclohexanol、2級アルコール
メントール:p-Mnethan-3-ol、2級アルコール
ゲラニオール:3,7-Dimethyl-trans-2,6-octadien-1-ol、1級アルコール
【0047】
合成例1:Si(ORasp)(OFolrosia)3等のケイ酸エステル化合物(a)の合成
500mLの四つ口フラスコにテトラエトキシシラン83.32g(0.40mol)、ラズベリーケトン72.25g(0.44mol)、フォルロージア187.76g(1.32mol)、5.275%ナトリウムエトキシドエタノール溶液0.55gを入れ、窒素気流下エタノールを留出させながら150℃で約2時間攪拌した。その後、槽内の圧力を徐々に4kPaまで下げ、エタノールを留出させながら約150℃でさらに15時間攪拌した。その後、冷却、減圧を解除した後、濾過を行い、ラズベリーケトンとフォルロージアのモル比1:3のケイ酸エステル化合物〔Si(ORasp)(OFolrosia)3〕を含む247.66gの黄色油状物を得た。得られた油状物をガスクロマトグラフィーにより分析を行い、表1に示す組成のケイ酸エステル化合物を含む混合組成物を得た。
【0048】
【表1】
*1:Raspはラズベリーケトンからフェノール性水酸基を1つ除いた残基、Folrosiaはフォルロージアから水酸基を1つ除いた残基を示す。
【0049】
合成例2:Si(ORasp)(OMenthyl)2(OGer)等のケイ酸エステル化合物(a)の合成
500mLの四つ口フラスコにテトラエトキシシラン83.33g(0.40mol)、ラズベリーケトン78.82g(0.48mol)、メントール125.02g(0.80mol)、ゲラニオール74.04g(0.48mol)、5.275%ナトリウムエトキシドエタノール溶液0.77gを入れ、窒素気流下エタノールを留出させながら160℃で約2時間攪拌した。2時間後、槽内の圧力を徐々に6kPaまで下げ、エタノールを留出させながら約160℃でさらに9時間攪拌した。その後、冷却、減圧を解除した後、濾過を行い、ラズベリーケトン、メントール及びゲラニオールのモル比1:2:1のケイ酸エステル化合物〔Si(ORasp)(OMenthyl)2(OGer)〕を含む285.89gの橙色油状物を得た。得られた油状物をガスクロマトグラフィーにより分析を行い、表2に示す組成のケイ酸エステル化合物を含む混合組成物を得た。
【0050】
【表2】
*1 Raspはラズベリーケトンからフェノール性水酸基を1つ除いた残基、Menthylはメントールから水酸基を1つ除いた残基、Gerはゲラニオールから水酸基を1つ除いた残基を示す。
【0051】
合成例3:Si(ORasp)(OTHmyrcenyl)3等のケイ酸エステル化合物(a)の合成
500mLの四つ口フラスコにメチルエチルケトン35ml、テトラクロロシラン11.89g(0.07mol)を添加した。テトラヒドロミルセノール33.24g(0.21mol)及びイミダゾール21.45g(0.32mol)をメチルエチルケトン(105ml)に溶解させた溶液をフラスコに10分間掛けて滴下した。次に、ラズベリーケトン11.49g(0.07mol)及びイミダゾール7.15g(0.11mol)をメチルエチルケトン(35ml)に溶解させた溶液をフラスコに5分間掛けて滴下した。その後、反応溶液を1時間加熱還流(81℃)を行った。フラスコにイオン交換水150mlを入れ反応のクエンチを行った。ヘキサンで抽出を行った後、ヘキサン溶媒を飽和食塩水で洗浄し硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を減圧除去し、ラズベリーケトン、テトラヒドロミルセノールのモル比1:3のケイ酸エステル化合物〔Si(ORasp)(OTHmyrcenyl)3〕を含む32.20gの黄色油状物を得た。得られた油状物をガスクロマトグラフィーにより分析を行い、表3に示す組成のケイ酸エステル化合物の混合組成物を得た。
【0052】
【表3】
*1:Raspはラズベリーケトンからフェノール性水酸基を1つ除いた残基、THmyrcenylはテトラヒドロミルセノールから水酸基を1つ除いた残基を示す。
【0053】
合成例4:Si(ORasp)(OMenthyl)3等のケイ酸エステル化合物(a)の合成
500mLの四つ口フラスコにテトラエトキシシラン83.33g(0.40mol)、ラズベリーケトン72.25g(0.44mol)、メントール206.28g(1.32mol)、5.275%ナトリウムエトキシドエタノール溶液0.71gを入れ、窒素気流下エタノールを留出させながら135〜160℃で約2時間攪拌した。2時間後、槽内の圧力を徐々に6kPaまで下げ、エタノールを留出させながら約160℃でさらに22時間攪拌した。その後、冷却、減圧を解除した後、濾過を行い、ラズベリーケトンとメントールのモル比1:3のケイ酸エステル化合物〔Si(ORasp)(OMenthyl)3〕を含む291.30gの黄色油状物を得た。得られた油状物をガスクロマトグラフィーにより分析を行い、表4に示す組成のケイ酸エステル化合物の混合組成物を得た。
【0054】
【表4】
*1 Raspはラズベリーケトンからフェノール性水酸基を1つ除いた残基、Menthylはメントールから水酸基を1つ除いた残基を示す。
【0055】
比較合成例1:Si(ORasp)4等のケイ酸エステル化合物の合成
200mLの四つ口フラスコにテトラエトキシシラン20.83g(0.10mol)、ラズベリーケトン59.12g(0.36mol)、5.6%ナトリウムメトキシドメタノール溶液0.15gを入れ、窒素気流下エタノールを留出させながら約160℃で約2時間攪拌した。2時間後、槽内の圧力を徐々に8kPaまで下げ、エタノールを留出させながらさらに3時間攪拌した。その後、冷却、減圧を解除した後、濾過を行い、1分子中に4つのラズベリーケトン残基が導入されたケイ酸エステル化合物〔Si(ORasp)4〕を含む61.53gの黄色油状物を得た。得られた油状物のガスクロマトグラフィー分析を試みたが、分解のため定量できなかった。核磁気共鳴装置(NMR;バリアン社製、MERCURY400)を用いて、結合状態にあるラズベリーケトン(即ち、Si(ORasp)n、ここでn=1、2、3又は4)とフリーのラズベリーケトン(即ち、Rasp−OH)のモル比を求めた結果、Si(ORasp)n:Rasp−OH=65.4:34.6(モル比)であった。
【0056】
実施例1〜14及び比較例1〜3
<噴霧用透明液体芳香剤組成物の調製>
表5に示す組成の噴霧用透明液体芳香剤組成物を各400g調製した。表中、(a)成分の質量%は合成例の混合組成物中の(a)成分の質量に基づくものであり、(b)成分の質量%は陽イオン部分の質量に基づくものであり、(e)成分の質量%は酸型化合物の質量に基づくものである。
500mLのガラスビーカーに、一枚の長さが2.5cmのタービン型羽根が3枚ついた攪拌羽根を設置(攪拌羽根底部がビーカー底面より1cm上部になるように設置)し、繊維製品処理剤組成物の出来上がり質量が400gになるのに必要な量の95%相当量のイオン交換水及び(b)成分、(c)成分及び(f)成分を投入した。次いで、ウォーターバスで62℃まで昇温した。62±3℃の温度範囲で、500rpmで5分間攪拌した。(d)成分及び(e)成分を使用する場合には、前記攪拌の後に投入し、更に10分間攪拌した後に(a)成分(または(a’)成分)を添加した。10分攪拌後、所定のpHにするのに必要な量の35%塩酸水溶液及び/又は48%水酸化ナトリウム水溶液を添加した。5分間攪拌した後に5℃のウォーターバスで30℃まで冷却した。
得られた組成物のpHを再度確認し、必要に応じて、0.1規定の塩酸又は0.1規定の水酸化ナトリウム水溶液を用いて表1〜3に示すpH(25℃)に調整し、出来上がり質量(300g)になるように、イオン交換水を投入した。
実施例1〜14及び比較例1〜3で得られた組成物について、下記方法で香りの強さを評価した。噴霧用透明液体芳香剤組成物のpHの測定は以下の測定方法で行った。
また、表5の噴霧用透明液体芳香剤組成物と透過率を紫外可視分光光度計を用いて測定した。紫外可視分光光度計において、光路長が1cmの石英セルを用い、対照セルにイオン交換水(25℃)を入れ、測定セルに噴霧用透明液体芳香剤組成物(25℃)を入れ、660nmの波長の透過率を測定した結果、実施例1〜14及び比較例1〜3の何れもが透過率が90%以上であり、目視においても外観は透明な外観であった。
【0057】
<基準組成物(I)の調製>
表1〜4において示した(a)成分に代えて、(a)成分の原料に用いた複数のアルコール系香料を、(a)成分を製造する際の質量比で混合したアルコール系香料混合物を用いて、実施例1〜14及び比較例1〜3の(a)成分と同じ量で使用した基準組成物(I)を調製した。基準組成物(I)のpHは表5記載の噴霧用透明液体芳香剤組成物と同じpH(25℃)になるように、0.1規定の塩酸又は0.1規定の水酸化ナトリウム水溶液で調製した。
【0058】
<pHの測定方法>
pHの測定で使用したpH測定装置及びpH標準液を下記に示す。
〔pH標準液〕
(株)堀場製作所製pH標準液を用いた。
・pH標準液100−7(中性りん酸塩標準液、精度;±0.02pH)
・pH標準液100−9(ホウ酸塩標準液、精度;±0.02pH)
〔pH測定装置〕
・(株)堀場製作所製のpHメータ「D−52S」
・pH電極:6367−10D
【0059】
pH測定装置は測定の1時間前に電源を入れた。未使用のpH電極を用い、電極を予め25℃±0.2℃のイオン交換水に24時間浸しておいたものを使用した。ゼロ校正とスパン校正は、以下に記載のpH標準液を用いて、25℃におけるpHの指示値が、標準pH±0.02になるまで繰り返し校正を行った。
【0060】
噴霧用透明液体芳香剤組成物200gを200mL容量のガラス製トールビーカーに入れ、サランラップ(登録商標)で封をし、ウォーターバス中で、噴霧用透明液体芳香剤組成物の温度が25±0.2℃になるように調整した。
【0061】
校正後にpH電極に25℃のイオン交換水200mLをかけて洗浄後、各噴霧用透明液体芳香剤組成物を3回繰り返し測定した。得られた3回の測定値の平均値をpH測定値とした。
【0062】
〔ケイ酸エステル化合物(a)の保存安定性(加水分解安定性)試験〕
表5に記載された噴霧用透明液体芳香剤組成物を調製した直後の該組成物中に含まれるケイ酸エステル化合物(a)の量、及び40℃で7日間保管した噴霧用透明液体芳香剤組成物中に含まれるケイ酸エステル化合物(a)の量を下記の方法で測定し、下記式に従ってケイ酸エステル化合物(a)の残存率(%)を測定した。なお、組成物の保管は、表5に記載の噴霧用透明液体芳香剤組成物150gを、規格瓶(透明広口、No.13、容量200ml)に入れ40℃の恒温槽に入れ7日間保管して行った。
ケイ酸エステル化合物(a)の残存率(%)=(X/Y)×100
X:40℃で7日間保管した後の噴霧用透明液体芳香剤組成物中に含まれるケイ酸エステル化合物(a)の量
Y:調製直後の噴霧用透明液体芳香剤組成物中に含まれるケイ酸エステル化合物(a)の量
残存率(%)の値が高ければ高い程、加水分解安定性に優れる。50%以上であることが好ましい、残存率に5%以上の差があれば有意な差があると言える。
【0063】
*ケイ酸エステル化合物(a)の量の測定方法
超高速液体クロマトグラフ((株)日立ハイテクノロジーズ製、LaChromUltra)にて、カラム(逆相カラム、メルク(株)製):LiChroCART(登録商標) 250−4 Lichrospher(登録商標)100 RP−18 endcapped(5μm)を用い、表5記載の噴霧用透明液体芳香剤組成物について、調製直後の該組成物、及び40℃で7日間保管した該組成物を、それぞれ80μLカラムに注入し、溶離液:メタノール、流量:1mL/min、検出UV波長:220nm、測定時間:60min、カラム温度:40℃の条件で、ケイ酸エステル化合物(a)の測定を行った。検量線用として、ケイ酸エステル化合物(a)成分をメタノールで0.1〜10ppmに希釈した既知濃度のサンプルを同様に測定し、ピーク面積比から各組成物中のケイ酸エステル化合物(a)成分の含有量を算出した。
【0064】
〔香りの持続性の評価〕
(1)評価用布の調製
綿メリヤスニット布((株)谷頭商店製、染色試材、綿ニット未シル)2kgを市販の弱アルカリ性洗剤(花王(株)製、アタック高活性バイオEX(登録商標)、2009年発売品)を用いて全自動洗濯機(日立NW−7FT)で洗濯した(洗剤濃度0.0667質量%、水道水(20℃)40L使用、標準コース、洗濯9分−すすぎ2回−脱水6分)。洗濯終了後の綿メリヤスニット布を、25℃、50%RHの恒温室に干し、12時間乾燥させた。綿メリヤスニット布を裁断(10cm×10cm)し評価用布とした。
【0065】
(2)香りの持続性の評価方法
(2−1)試験布の調製
前記評価用布1枚を用い、200メッシュのステンレス製金網の上に平らに置いた。評価用布の乾燥時質量(前記(1)評価用布の調製において、洗濯終了後に25℃、50%RHで12時間乾燥した直後の質量)に対して、表5に示す噴霧用透明液体芳香剤組成物を40℃で7日間保管した組成物を、5℃の水で30℃まで冷却し、50質量%噴霧した後、25℃/50%RHの恒温室にて72時間保管して試験布を得た。スプレー容器は、キャニオン製T−7500を用いた。試験布は、各実施例又は比較例ごとに、1組成当たり5枚調製した。
【0066】
(2−2)基準試験布(1)の調製
表5に記載の実施例1〜14及び比較例1〜3の噴霧用透明液体芳香剤組成物に対応する基準組成物(I)を用いた以外は、前記「(2−1)試験布の調製」と同じ方法で、各実施例又は比較例に対応する基準試験布を調製した。
【0067】
(2−3)基準試験布(2)の調製
調製した直後の表5に記載の噴霧用透明液体芳香剤組成物を用いた以外は、前記「(2−1)試験布の調製」と同じ方法で、各実施例又は比較例に対応する基準試験布(2)を調製した。
【0068】
(3)香りの強さの評価
各条件ごとに1組成当たり5枚の試験布を用い、5枚の試験布を重ねて、30歳代の男性5人及び女性5人の計10人のパネラーで経時的な香りの強さを評価した。5枚の基準試験布を重ねて用いて下記の基準で比較評価し、その平均値を求め、表5に示した。72時間保管後の香りの強さとしては、香りの持続性の観点から、いずれの香りの強さも平均点1以上であることが好ましい。香りの強さの差が0.3以上あれば有意な差として認知できる。
0:試験布は基準試験布(2)よりも、基準試験布(1)に近い香りの強さ
1:試験布は基準試験布(2)と基準試験布(1)の間の香りの強さ
2:試験布は基準試験布(1)よりも、基準試験布(2)に近い香りの強さ
【0069】
【表5】