特許第5856911号(P5856911)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5856911
(24)【登録日】2015年12月18日
(45)【発行日】2016年2月10日
(54)【発明の名称】ふく進止め構造、及びその構築方法
(51)【国際特許分類】
   E01B 1/00 20060101AFI20160128BHJP
   E01B 26/00 20060101ALI20160128BHJP
   E01B 37/00 20060101ALI20160128BHJP
【FI】
   E01B1/00
   E01B26/00
   E01B37/00 C
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-135803(P2012-135803)
(22)【出願日】2012年6月15日
(65)【公開番号】特開2014-1517(P2014-1517A)
(43)【公開日】2014年1月9日
【審査請求日】2014年11月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162640
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 康樹
(72)【発明者】
【氏名】西谷 仁志
(72)【発明者】
【氏名】小倉 拓也
(72)【発明者】
【氏名】青木 康治
【審査官】 石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭63−185801(JP,U)
【文献】 特開2011−080327(JP,A)
【文献】 米国特許第04703890(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01B 1/00
E01B 26/00
E01B 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
桁部材のふく進止め構造の構築方法であって、
複数の仮受桁を軌道の方向に離間して設ける工程と、
前記軌道を敷設するための第1の桁部材と第2の桁部材とを、前記軌道の方向における端面同士が対向して隙間が設けられるように、隣り合う前記仮受桁同士の間に架け渡す工程と、
前記隙間に充填材を充填することにより、第1の充填部を形成する工程と、
前記軌道と交わる方向に対向する前記第1の桁部材及び前記第2の桁部材の各側面に沿って充填材を充填することにより、第2の充填部を形成する工程と、を備えることを特徴とする桁部材のふく進止め構造の構築方法。
【請求項2】
前記第2の充填部は、前記第1の桁部材及び前記第2の桁部材の前記各側面のうち、前記端面側の一部にのみ形成されていることを特徴とする請求項1記載の桁部材のふく進止め構造の構築方法。
【請求項3】
前記第2の充填部は、前記第1の桁部材及び前記第2の桁部材の前記各側面の前記軌道の方向における全領域に亘って形成されていることを特徴とする請求項1記載の桁部材のふく進止め構造の構築方法。
【請求項4】
前記仮受桁の両側部には、当該仮受桁の上面より低い位置に受面を形成する張出部がそれぞれ設けられ、
前記張出部のそれぞれに、前記第1の桁部材及び前記第2の桁部材が設置され、
前記仮受桁の上面よりも高い位置に配置される前記第1の桁部材及び前記第2の桁部材の上面に、前記軌道が敷設されることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項記載の桁部材のふく進止め構造の構築方法。
【請求項5】
軌道の方向に離間して設けられる複数の仮受桁と、
前記軌道の方向における端面同士が対向して隙間が設けられるように、隣り合う前記仮受桁同士の間に架け渡された第1の桁部材及び第2の桁部材と、
前記第1の桁部材及び前記第2の桁部材の前記隙間に充填材を充填することにより形成される第1の充填部と、
前記軌道と交わる方向に対向する前記第1の桁部材及び前記第2の桁部材の各側面に沿って充填材を充填することにより形成される第2の充填部と、を備えることを特徴とする桁部材のふく進止め構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、桁部材のふく進止め構造、及びその構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の桁部材のふく進止め構造として、例えば特許文献1に挙げるものが知られている。特許文献1に係る構造は、互いに隣合う桁部材の対向する端面に、それぞれ半円状の切欠きを設けることで、桁部材同士の境界部分に円柱状の孔を形成している。当該円柱状の孔に円柱部材を設置することによって、ふく進止め構造が構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4592454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、桁部材の端部と隣の桁部材の端部との間には所定の大きさを持った隙間が形成される場合がある。このような場合、上述の構造では、桁部材のふく進止めとして十分に機能しないという問題がある。従って、桁部材と桁部材の間に隙間が形成される場合にも十分な性能を発揮するふく進止め構造及びその構築方法が求められていた。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、桁部材と桁部材の間に隙間が形成される場合であっても、十分な性能を発揮するふく進止め構造及びその構築方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る桁部材のふく進止め構造の構築方法は、複数の仮受杭を打設する工程と、仮受杭の上端部に、軌道と交わる方向に延びる仮受桁を設ける工程と、軌道を敷設するための第1の桁部材と第2の桁部材とを、軌道の方向における端面同士が対向して隙間が設けられるように、仮受桁に対して設置する工程と、隙間に充填材を充填することにより、第1の充填部を形成する工程と、軌道と交わる方向に対向する第1の桁部材及び第2の桁部材の各側面に沿って充填材を充填することにより、第2の充填部を形成する工程と、を備える。
【0007】
本発明に係るふく進止め構造の構築方法では、第1の桁部材と第2の桁部材との間に、軌道の方向における端面同士が対向して隙間が設けられる。このような隙間に充填材を充填することにより、第1の充填部が形成される。当該第1の充填部によって各桁部材の端面が支持されて軌道の方向における桁部材の移動が規制される。また、第1の桁部材及び第2の桁部材の各側面に沿って充填材を充填することにより、第2の充填部が形成される。当該第2の充填部によって各桁部材の側面が支持されて軌道と交わる方向における桁部材の移動が規制される。以上によって、桁部材と桁部材の間に隙間が形成される場合であっても、十分な性能を発揮するふく進止め構造を構築することが可能となる。
【0008】
本発明に係るふく進止め構造の構築方法において、第2の充填部は、第1の桁部材及び第2の桁部材の各側面のうち、端面側の一部にのみ形成されていることが好ましい。これによって、充填材の量を低減することができる。
【0009】
本発明に係るふく進止め構造の構築方法において、第2の充填部は、第1の桁部材及び第2の桁部材の各側面の軌道の方向における全領域に亘って形成されていることが好ましい。これによって、第2の充填部がしっかりと側面を支持することができる。
【0010】
本発明に係るふく進止め構造の構築方法において、仮受桁の両側部には、当該仮受桁の上面より低い位置に受面を形成する張出部がそれぞれ設けられ、張出部のそれぞれに、第1の桁部材及び第2の桁部材が設置され、仮受桁の上面よりも高い位置に配置される第1の桁部材及び第2の桁部材の上面に、軌道が敷設されることが好ましい。仮受桁の側部に、当該仮受桁の上面より低い位置に受面を形成する張出部を設ける工程を有している。このように、仮受桁の上面より低い位置に形成された張出部の受面に、桁部材が設置されている。また、仮受桁の上面よりも高い位置に桁部材の上面が配置されており、当該上面に軌道を敷設するため、軌道が仮受桁と干渉することや、仮受桁との接触によるショートなどが防止されている。例えば、仮受桁の上面に桁部材を設置する場合、桁部材の下方には仮受桁の上下方向の全長に対応するスペースを確保する必要がある。しかしながら、張出部に桁部材を設置することによって、仮受桁の上面と張出部の受面との間の寸法分だけ、仮受桁を上方へ設置することができる。従って、当該寸法分だけ、高架軌道直下の内空を大きく確保することができる。更に、このような張出部を用いた設置方法を採用することにより、第1の桁部材の端面と第2の桁部材の端面との間に、少なくとも仮受桁の大きさ以上の隙間ができるが、第1の充填部及び第2の充填部によって、十分にふく進止めの性能を発揮することができる。
【0011】
本発明に係るふく進止め構造は、軌道を敷設するための第1の桁部材及び第2の桁部材の、軌道の方向における端面同士が対向して設けられる隙間に充填材を充填することにより形成される第1の充填部と、軌道と交わる方向に対向する第1の桁部材及び第2の桁部材の各側面に沿って充填材を充填することにより形成される第2の充填部と、を備える。
【0012】
本発明に係るふく進止め構造は、各桁部材の端面同士の間に設けられる隙間に充填材を充填することにより形成される第1の充填部を有している。当該第1の充填部によって各桁部材の端面が支持されて軌道の方向における桁部材の移動が規制される。また、ふく進止め構造は、第1の桁部材及び第2の桁部材の各側面に沿って充填材を充填することにより形成される第2の充填部を有している。当該第2の充填部によって各桁部材の側面が支持されて軌道と交わる方向における桁部材の移動が規制される。以上によって、桁部材と桁部材の間に隙間が形成される場合であっても、ふく進止め構造は十分な性能を発揮することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、桁部材と桁部材の間に隙間が形成される場合であっても、ふく進止めの十分な性能を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】架設構造物の一部を示す斜視図である。
図2図1に示す架設構造物を幅方向から見た図である。
図3図3は、図1に示す架設構造物を長さ方向から見た図である。
図4図4は、図1に示す架設構造物を上側から見た図である。
図5】本設後の構造物を上側から見た図である。
図6図5に示すVI−VI線に沿った断面図である。
図7図5に示すVII−VII線に沿った断面図である。
図8】変形例に係るふく進止め構造を適用された構造物を上側から見た図である。
図9図8に示すIX−IX線に沿った断面図である。
図10図8に示すX−X線に沿った断面図である。
図11】変形例に係る構造物を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明では、同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、「上」、「下」の語は、鉛直方向の上方、下方にそれぞれ対応するものである。
【0016】
高架軌道の直下に構造物200を構築する際、PC桁(桁部材)2及び当該PC桁上に延びる軌道3を支持するための架設構造物100を構築した後、構造物200を本設する。なお、本実施形態では、軌道3の方向を「長さ方向D1」、軌道3と直交する水平方向(軌道と交わる方向)を「幅方向D2」、鉛直方向を「上下方向D3」と称する。
【0017】
まず、図1図4を参照して、架設構造物100の構成について説明する。図1は、架設構造物100の一部を示す斜視図である。図2は、図1に示す架設構造物100を幅方向D2から見た図である。図3は、図1に示す架設構造物100を長さ方向D1から見た図である。図4は、図1に示す架設構造物100を上側から見た図である。なお、図2及び図3では、本設の構造物200が点線で示されている。本実施形態では、二つの軌道3が設けられているが、図1は、一方の軌道3のみを示している。
【0018】
図1図4に示すように、架設構造物100は、地面GDに打設されて上下方向に延びる複数の仮受杭11と、幅方向D2に延びる仮受桁12と、を主に備えている。また、仮受桁12にはブラケット(張出部)13が設けられており、当該ブラケット13を介してPC桁2が仮受桁12に支持される。PC桁2の上面2aには、軌道3を構成する一対のレール4が、長さ方向D1に沿って平行に延びた状態で設けられている。
【0019】
本実施形態では、仮受杭11は、幅方向D2に三本設けられている。幅方向D2に隣合う仮受杭11同士は、補強梁14及び補強斜梁16で連結されている。内側の仮受杭11は、両外側の仮受杭11同士の間の略中央位置に配置されている。軌道3は、当該内側の仮受杭11の左右に設けられる。各仮受杭11の上端部11aには、仮受桁12が架け渡されている。仮受桁12は、上フランジ部、下フランジ部及びウェブ部を有するH型鋼である。下フランジ部が仮受杭11の上端部11aに固定される。このような仮受杭11及び仮受桁12の組み合わせが、長さ方向D1に所定間隔で設けられる。長さ方向D1に隣り合う仮受杭11同士は、補強梁14及び補強斜梁16で連結されている。
【0020】
仮受桁12の両側の側部12a(本実施形態ではウェブ部の側面)からは、長さ方向D1に張り出したブラケット13が設けられている。ブラケット13は、少なくとも上フランジ部及び下フランジ部の張出部よりも外側まで張り出している。ブラケット13は、仮受桁12の上面12bよりも低い位置に、PC桁2を受けるための水平に広がる受面13aを形成している。受面13aは、少なくとも仮受桁12の上下方向D3の中央よりも下側に配置されることが好ましい。ブラケット13の幅方向D2における位置及び大きさは、少なくとも少なくともPC桁2が設けられる位置に受面13aを形成することができれば特に限定されない。なお、本実施形態では、仮受桁12の略全長に亘って延びている。
【0021】
PC桁2は、長さ方向D1に延びる矩形板状に形成されている。PC桁2は、水平に広がる上面2a及び下面2cと、長さ方向D1に互いに平行となるように対向する一対の端面2bと、幅方向に互いに平行となるように対向する一対の側面2dと、を有している。PC桁2は、上方から見て長さ方向D1に長尺な長方形をなしており、端面2b及び側面2dには途中に切欠き部などは形成されておらず、真っ直ぐな直線状の辺を描いている(図4参照)。PC桁2は、長さ方向D1に隣り合う仮受桁12同士の間に架け渡されている。PC桁2は、長さ方向D1における端面2b付近の下面2cが、ブラケット13の受面13a上に設置される。設置作業時の位置調整のため、PC桁2の端面2bは、仮受桁12の上フランジ部及び下フランジ部の先端部から離間するように配置されることが好ましい。PC桁2の上面2aは、仮受桁12の上面12bよりも高い位置に配置される。PC桁の上面2aには、長さ方向D1に沿って互いに平行に延びる一対のレール4が設けられている。レール4は、一のPC桁2の端面2bと隣のPC桁2の端面2bとの間に形成される隙間の上方を通過している。当該隙間の位置において、レール4は、仮受桁12の上面12bから上方へ離間した位置に配置されている。これにより、金属製のレール4が、金属製の仮受桁12と接触することによるショートなどが防止される。
【0022】
次に、図5図7を参照して、本設後の構造物200の構成について説明する。図5は、本設後の構造物200を上側から見た図である。図6は、図5に示すVI−VI線に沿った断面図である。図7は、図5に示すVII−VII線に沿った断面図である。図5図7(及び図2も参照)に示すように、本設後の構造物200は、主に、鉄筋コンクリート造のスラブ201、及び柱202を備えている。スラブ201の上面201aは、仮設時に設けられたPC桁2及びレール4を、そのままの位置関係にて支持している。スラブ201の上面201aと、PC桁2の下面2cとの間には、平板状の台座部21が形成されている。この台座部21は、スラブ201の上面201aと、PC桁2の下面2cとの間にCAモルタルなどの充填材を充填することによって形成される。台座部21の幅方向D2における大きさは、PC桁2の幅方向D2における大きさよりも大きい。すなわち、台座部21の側面21dは、PC桁2の側面2dよりも幅方向D2における外側に配置される。本実施形態では、台座部21の長さ方向D1における端面21bは、PC桁2の端面2bよりも長さ方向D1の内側へ配置されている。また、本実施形態では、台座部21の端面21bは、ブラケット13の先端部よりも長さ方向D1の内側へ配置されている。すなわち、一の台座部21の端面21bと、当該台座部21と仮受桁12を挟んで反対側に設けられる他の台座部21の端面21bとの間には、PC桁2の端面2b同士の間の隙間よりも大きな隙間が形成される。当該隙間に仮受桁12及び両側のブラケット13が配置される。
【0023】
PC桁2は、ふく進止め構造30によって支持されている。ふく進止め構造30は、PC桁2の所定箇所に充填材を充填することによって形成されている。ふく進止め構造30を形成するために用いられる充填材として、例えば、コンクリートが挙げられる。なお、ふく進止め構造30の構成を説明するために、一のPC桁2を「第1のPC桁2A」と称し、当該第1のPC桁2Aと長さ方向D1に隣り合う他のPC桁2を「第2のPC桁2B」と称して説明を行う。なお、第1のPC桁2A及び第2のPC桁2Bに対するふく進止め構造30についてのみ説明するが、他の組み合わせに係るPC桁2に対しても同様の構成が適用される。
【0024】
ふく進止め構造30は、第1のPC桁2Aの端面2bと第2のPC桁2Bの端面2bとの間に設けられる隙間に充填材を充填することによって形成される第1の充填部31と、第1のPC桁2Aの側面2d及び第2のPC桁2Bの側面2dに沿って充填材を充填することによって形成される第2の充填部32と、第1のPC桁2A及び第2のPC桁2Bの下面2cとスラブ201の上面201aとの間に充填材を充填することによって形成される第3の充填部33と、を備えている。
【0025】
第1の充填部31は、第1のPC桁2A及び第2のPC桁2Bの端面2bを支持することによって、PC桁2A,2Bの長さ方向D1における移動を規制することができる。第2の充填部32は、第1のPC桁2A及び第2のPC桁2Bの側面2dを支持することによって、PC桁2A,2Bの幅方向D2における移動を規制することができる。第1の充填部31及び第2の充填部32の上面は、PC桁2の上面2aまで達している。第2の充填部32及び第3の充填部33の長さ方向D1における端面は、台座部21の端面21bまで達している。このように、第2の充填部32は、台座部21の端面21bの位置で途切れているため、当該第2の充填部32(及び第3の充填部33)は、PC桁2A,2Bの側面2dのうち、端面2b側の一部にのみ形成される。なお、本実施形態においては、仮設時に用いられた仮受桁12及びブラケット13が残されたまま、各充填部31,32,33が形成される。このとき、図5に示す一点鎖線CTのラインにて仮受桁12及びブラケット13は切断され、各充填部31,32に埋まっていない部分は、取り除かれる。
【0026】
次に、図1図7を参照して、本実施形態に係る構造物100,200の構築方法について説明する。当該構築方法には、PC桁2の設置方法及び、PC桁2のふく進止め構造30の構築方法が含まれている。なお、以下の手順は一例にすぎず、下記の手順のみに限定されるものではない。例えば、各工程の順序を適宜入れ替えてもよい。また、一部の箇所について工程が終了したら、他の箇所で同じ工程を行っているのと同時並行で、当該一部の箇所について次の工程へ移行してもよい(例えば、全ての箇所についての仮受杭11を打設し終わってから仮受桁12を設けてもよく、一部の箇所についての仮受杭11を打設し終わったら、他の箇所で仮受杭11を打設している途中でも、打設し終わった箇所に仮受桁12を設けてもよい)。また、一部の工程を省略したり、他の工程を追加で実行してもよい。
【0027】
まず、図1図4に示すように、軌道上から複数の仮受杭11を打設する工程を実行する。次に、打設された仮受杭11の上端部11aに、幅方向D2に延びる仮受桁12を設ける工程を実行する。この仮受桁12の側部12aには、当該仮受桁12の上面12bよりも低い位置に受面13aを形成するブラケット13が設けられている。すなわち、工場にてH桁にブラケット13を溶接しておき、予めブラケット13が設けられた仮受桁12を仮受杭11に設置する。
【0028】
ブラケット13の受面13aにPC桁2を設置する工程を実行する。ブラケット13の受面13aに設置されたPC桁2は、当該受面13a上にて位置の調整が行われる。PC桁2の上面2aは、仮受桁12の上面12bよりも高い位置に配置されている。PC桁2の端面2bと、隣り合うPC桁2の端面2bとの間には、当該端面2b同士が対向して隙間が設けられる。その後、PC桁2の上面2aにレール4を設置することにより、軌道3を敷設する工程を実行する。同時に、掘削を進め、並行して継材(ブレース)仮設を行うことで、図1図4に示す状態の架設構造物100が完成する。
【0029】
次に、図5図7に示すように、柱202を形成し、梁・スラブ201を形成することで構造物200を本設する工程を実行する。次に、仮受桁12で支持されていたPC桁3を、スラブ201の上面201aによる支持に移し替える工程を実行する。本実施形態では、PC桁3の下面2cとスラブ201の上面201aとの間に充填材を充填することによって、台座部21を形成する工程を実行する。
【0030】
次に、ふく進止め構造30を設ける工程を実行する。具体的には、第1のPC桁2Aの端面2bと第2のPC桁2Bの端面2bとの間の隙間に充填材を充填することによって第1の充填部31を形成する工程を実行する。また、第1のPC桁2A及び第2のPC桁2Bの側面2dに沿って充填材を充填することによって第2の充填部32を形成する工程を実行する。また、第1のPC桁2A及び第2のPC桁2Bの下面2cとスラブ201の上面201aとの間に充填材を充填することによって第3の充填部33を形成する。各充填部31〜33を形成することにより、仮受桁12は当該充填部31〜33内に埋められる。
【0031】
その後、架設構造物100を構成する部材を撤去する。ここでは、仮受杭11や補強梁14や補強斜梁16等を撤去する。なお、図6に示す太線CTのラインにて仮受杭11を切断し、埋まっている部分はそのまま残し、埋まっていない部分を撤去する。以上によって、本設後の構造物200にPC桁2及び軌道3が支持される。
【0032】
次に、本実施形態に係るPC桁2の設置方法、ふく進止め構造30及びその構築方法の作用・効果について説明する。
【0033】
本実施形態に係るPC桁2の設置方法は、仮受桁12の側部12aに、当該仮受桁12の上面12bより低い位置に受面13aを形成するブラケット13が設けられている。このように、仮受桁12の上面12bより低い位置に形成されたブラケット13の受面13aに、PC桁2が設置されている。また、仮受桁12の上面12bよりも高い位置にPC桁2の上面2aが配置されており、当該上面2aに軌道3を敷設するため、軌道3を構成するレール4が仮受桁12と干渉することや、仮受桁12との接触によるショートなどが防止されている。例えば、図2に示す比較例に係る架設構造物300のように、仮受桁12の上面にPC桁2を設置する場合、PC桁2の下方には仮受桁12の上下方向の全長に対応するスペースを確保する必要がある。これに伴って、本設後の構造物の内空の高さ方向の大きさ(図中L2で示されるものとする)を小さくする必要が生じる。しかしながら、本実施形態に係る設置方法で構成された架設構造物100においては、ブラケット13にPC桁2を設置することによって、仮受桁12の上面12bとブラケット13の受面13aとの間の寸法分だけ、仮受桁12を上方へ設置することができる。従って、当該寸法分だけ、高架軌道直下の内空を大きく確保することができる。すなわち、本実施形態に係る設置方法によって構成された本設の構造物200の内空の高さ方向の大きさをL1とした場合、比較例に係る内空の大きさL2よりも、仮受桁12の上面12bとブラケット13の受面13aとの間の寸法分だけ、大きくすることができる。また、杭の支障により、桁を支障しながら施工することも可能である。
【0034】
本実施形態に係るPC桁2の設置方法において、PC桁2は、矩形板状に形成されている。例えばPC桁2に切欠きなどが設けられていたり変則的な形状をしている場合、軌道3の線形変更の阻害となる場合があるが、PC桁2を矩形板状とすることで、このような線形変更が行い易くなる。
【0035】
また、本実施形態に係るPC桁2のふく進止め構造30の構築方法では、第1のPC桁2Aと第2のPC桁2Bとの間に、長さ方向D1における端面2b同士が対向して隙間が設けられる。このような隙間に充填材を充填することにより、第1の充填部31が形成される。当該第1の充填部31によって各PC桁2A,2Bの端面2bが支持されて長さ方向D1におけるPC桁2A,2Bの移動が規制される。また、第1のPC桁2A及び第2のPC桁2Bの各側面2dに沿って充填材を充填することにより、第2の充填部32が形成される。当該第2の充填部32によって各PC桁2A,2Bの側面2dが支持されて幅方向D2におけるPC桁2A,2Bの移動が規制される。以上によって、PC桁2A,2B間に隙間が形成される場合であっても、十分な性能を発揮するふく進止め構造30を構築することが可能となる。
【0036】
本実施形態に係るふく進止め構造30の構築方法において、第2の充填部32は、第1のPC桁2A及び第2のPC桁2Bの各側面2dのうち、端面2b側の一部にのみ形成されている。これによって、充填材の量を低減することができる。
【0037】
本発明に係るふく進止め構造30の構築方法において、仮受桁12の両側部12aにブラケット13が設けられ、当該ブラケット13のそれぞれに、第1のPC桁2A及び第2のPC桁2Bが設置されている。これによって上述で説明した効果が得られる。更に、このようなブラケット13を用いた設置方法を採用することにより、第1のPC桁2Aの端面2bと第2のPC桁2Bの端面2bとの間に、少なくとも仮受桁12の長手方向D1における大きさ以上の隙間ができるが、第1の充填部31及び第2の充填部32によって、十分にふく進止めの性能を発揮することができる。
【0038】
本実施形態に係るふく進止め構造30は、各PC桁2A,2Bの端面2b同士の間に設けられる隙間に充填材を充填することにより形成される第1の充填部31を有している。当該第1の充填部31によって各PC桁2A,2Bの端面2bが支持されて長さ方向D1におけるPC桁2A,2Bの移動が規制される。また、ふく進止め構造30は、第1のPC桁2A及び第2のPC桁2Bの各側面2dに沿って充填材を充填することにより形成される第2の充填部32を有している。当該第2の充填部32によって各PC桁2A,2Bの側面2dが支持されて幅方向D2におけるPC桁2A,2Bの移動が規制される。以上によって、PC桁2A,2B間に隙間が形成される場合であっても、ふく進止め構造30は十分な性能を発揮することができる。
【0039】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。例えば、上述のふく進止め構造30に代えて、図8図10に示すようなふく進止め構造40を採用してもよい。ふく進止め構造40は、第2の充填部42が、第1のPC桁2A及び第2のPC桁2Bの各側面2dの長さ方向D1における全領域に亘って形成されている。なお、長さ方向D1における全領域とは、側面2d自体の全領域を指している語ではなく、上下方向D3においては充填部42が形成されない部分があってもよい。図10に示すように、第2の充填部42は、側面2dのうち下側の領域においては、長さ方向D1の全体に亘って形成されているが、上側の領域には形成されていない。
【0040】
図8図10の構造では、仮受桁12及びブラケット13は撤去されている。ふく進止め構造40は、第1のPC桁2Aの端面2bと第2のPC桁2Bの端面2bとの間に設けられる隙間に充填材を充填することによって形成される第1の充填部41と、第1のPC桁2Aの側面2d及び第2のPC桁2Bの側面2dに沿って充填材を充填することによって形成される第2の充填部42と、を備えている。第1の充填部41及び第2の充填部42は、PC桁2A,2B及び台座部21を取り囲むように形成されている。
【0041】
第1の充填部41は、第1のPC桁2A及び第2のPC桁2Bの端面2bを支持することによって、PC桁2A,2Bの長さ方向D1における移動を規制することができる。第2の充填部42は、第1のPC桁2A及び第2のPC桁2Bの側面2dを支持することによって、PC桁2A,2Bの幅方向D2における移動を規制することができる。第1の充填部41及び第2の充填部42の上面は、PC桁2の側面2dの上下方向D3における略中央まで達している。第2の充填部42は、側面2dの長さ方向D1の全領域に亘って形成されている。すなわち、第2の充填部42は、途中で途切れることなく延びて、第1のPC桁2Aの反対側(第2のPC桁2Bとは反対側)の端面2bに設けられている第1の充填部41まで達している。なお、本実施形態においては、仮設時に用いられた仮受桁12及びブラケット13は除去された状態で、各充填部41,42が形成される。
【0042】
ふく進止め構造40は、次のような手順によって構築される。ここでは、第2のPC桁2Bの側面2dに第2の充填部42を形成するところから説明する。まず、第2のPC桁2Bの下面2c側(ただし、端面2b付近の領域を除く)に台座部21を形成すると共に、スラブ201の上面201aに第2のPC桁2Bの側面2d(ただし、端面2b付近の領域を除く)に沿った長尺の第2の充填部42を形成する。ただし、この段階では、PC桁2A,2B間の仮受桁12及び両ブラケット13を撤去する必要があるので、当該仮受桁12及び両ブラケット13が充填材で埋まらないようにしておく。すなわち、台座部21及び第2の充填部42を、(第2のPC桁2Bを支持する)ブラケット13の先端部の手前で途切れた状態としておく。
【0043】
次は、PC桁2A,2B間の仮受桁12及び両ブラケット13付近の領域に対する充填材の充填はひとまず行わず、第1のPC桁2Aの下面2c側(ただし、両端面2b付近の領域を除く)に台座部21を形成すると共に、スラブ201の上面201aに第2のPC桁2Bの側面2d(ただし、両端面2b付近の領域を除く)に沿った長尺の第2の充填部42を形成する。この段階では、台座部21及び第2の充填部42を、一方の端面2b(第2のPC桁2Bと対向する端面2b)のブラケット13の先端部の手前で途切れると共に、他方の端面2b(第2のPC桁2Bとは反対側の端面2b)のブラケット13の先端部の手前で途切れた状態としておく。このように、PC桁2の両端面2b付近で途切れた状態の台座部21及び第2の充填部42を各PC桁2について形成しておく。
【0044】
次は、PC桁2A,2B間の仮受桁12及び両ブラケット13を撤去する。その後、当該部分にて途切れていた第2の充填部42を形成すると共に、PC桁2A,2B間の隙間に第1の充填部41を形成する。同様に、他の仮受桁12及び両ブラケット13についても、撤去した後、当該部分に充填部41,42を形成する。以上によって、各PC桁2に対してふく進止め構造40を構築する。
【0045】
このようなふく進止め構造40において、第2の充填部42は、第1のPC桁2A及び第2のPC桁2Bの各側面2dの長さ方向D1における全領域に亘って形成されている。これによって、第2の充填部42がしっかりと側面2dを支持することができる。
【0046】
また、上述の実施形態では、スラブ201の上面201aとPC桁2の下面2cとの間に充填材の充填による台座部21を形成する工程が実行されていたが、これに代えて、図11に示すように、角型防振装置60を配置する工程を実行してもよい。この角型防振装置60は、PC桁2の下面2cに取り付けられたプレート62にボルト締結によって固定され、台座モルタル64を介してスラブ201の上面201aに取り付けられたプレート62にボルト締結によって固定されている。
【符号の説明】
【0047】
2…PC桁(桁部材)、2A…第1のPC桁、2B…第2のPC桁、3…軌道、4…レール、11…仮受杭、12…仮受桁、13…ブラケット(張出部)、30,40…ふく進止め構造、31,41…第1の充填部、32,42…第2の充填部、60…角型防振装置、100…架設構造物、200…本設の構造物、201…スラブ。
図1
図2
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図11