(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記接着剤層はアクリル酸系熱硬化性樹脂からなる接着剤層であり、厚さが0.005mm以上0.05mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の多層アセンブリ。
前記側壁が、前記第一剛性層又は前記第二剛性層から離れる方向で且つ前記上壁に近づく方向に角度αで伸び、該角度αは20°以上90°以下であることを特徴とする請求項1に記載の多層アセンブリ。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】保持特徴部を欠く例示の多層アセンブリの断面図である。
【
図2】保持特徴部を有する例示の多層アセンブリの上面図である。
【
図3】
図2の多層アセンブリの断面図であり、固定装置が多層アセンブリに連結されていない。
【
図4】
図2の多層アセンブリの断面図であり、固定装置が多層アセンブリに連結されている。
【
図5】保持特徴部を有する別の例示の多層アセンブリの上面図であり、示される保持特徴部は種々の固定装置に対応するよう設計されている。
【
図6】保持特徴部を有する別の例示の多層アセンブリの上面図であり、示される保持特徴部は追加の内側壁を有する。
【
図7】
図6の多層アセンブリの断面図であり、固定装置は多層アセンブリに連結されていない。
【
図8】
図6の多層アセンブリの断面図であり、固定装置が多層アセンブリに連結されている。
【
図9】保持特徴部を有する別の例示の多層アセンブリの上面図であり、示される保持特徴部は種々の固定装置に対応するよう設計されている。
【
図10】保持特徴部を有する別の例示の多層アセンブリの上面図であり、各保持特徴部は単一の固定装置に対応するよう設計されている。
【
図11】保持特徴部を有する別の例示の多層アセンブリの上面図であり、各保持特徴部は単一の固定装置に対応するよう設計されている。
【
図12】保持特徴部を有する別の例示の多層アセンブリの上面図であり、各保持特徴部は単一の固定装置に対応するよう設計されている。
【
図13】保持特徴部を有する別の例示の多層アセンブリの断面図であり、保持特徴部が第一剛性層及び第二剛性層に形成されている。
【
図14】保持特徴部を有する別の例示の多層アセンブリの斜視図であり、保持特徴部が剛性層の端に沿って形成されている。
【
図16】保持特徴部を有する別の例示の多層アセンブリの斜視図であり、保持特徴部が剛性層の端に沿って形成され且つ追加のフランジを有する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の好ましい例示の実施形態について添付された図面を参照して以下に記載する。図面において類似の構成要素には類似の参照符号を付している。
【0009】
間に接着層を挟んだ二つの外側金属層からなる積層体の形態で与えられた多層アセンブリを例にとると、このような多層アセンブリは騒音減衰構造としてしばしば用いられる。ナット/ボルト結合又は他の固定装置が多層アセンブリの孔を通って異なる層同士を固定すると、孔の周囲の圧縮された領域において圧縮力が生じ得る。この圧縮力は接着剤層に作用して、ある期間にわたって、ナット/ボルト結合の下から接着剤層が絞り出され又は押し出されて永続的な圧縮状態となる可能性がある。周囲領域から絞り出された若しくは押し出された接着剤層又は永続的な圧縮を受けている接着剤層によって、多層アセンブリの全体的な厚さが減少するとともに、ナット/ボルト結合に対するトルクの量が時間と共に減少する。したがって、固定装置付近で生じるトルク損失を防止又は減少させるために、以下に記載する保持特徴部を騒音減衰構造などの多層アセンブリに追加してもよい。このような多層アセンブリは、洗濯機、乾燥機、オーブン、皿洗い機及び電子レンジなどの家事用途、ダッシュパネル又は耐火壁、フード、天井、ラゲージドア、ドアパネル、予備車輪容器、トランクフロア、車輪格納庫、フロアパン及び油受けなどの自動車部品、農業設備、芝生及び庭設備並びにディスクドライブなどの電気製品を含む、しかしこれらに限定されない、さまざまな用途に用いることができる。多くの場合、多層アセンブリは、振動又は騒音減衰及び断熱性の向上並びに構造的一体性の付加などの目的で用いられる。
【0010】
図1を参照すると、本発明に係る保持特徴部を有していない多層アセンブリ10において起こり得る、上述の絞り出し及びその結果生じるトルク減少に関する問題を、例示的に説明している。多層アセンブリ10は、第一剛性層12、接着剤層14及び第二剛性層16を有する。ボルト20とナット22を用いるナット/ボルト結合などの固定装置18が最初に多層アセンブリ10上に締結して取り付けられると、ボルトはその長さ方向にある程度伸張し、意図するトルクを維持するために伸長したままの状態を保つ必要がある。ナット/ボルト結合により加えられた圧縮力は、時にいくらかの接着剤層14を、固定孔28の周囲の領域24、26の外に絞り出す又は押し出す可能性がある。これにより、ボルト20がその元の長さに近づくよういくらか縮まる。したがって、時間の経過とともに、領域24、26における多層アセンブリ10の全体的な厚さが、多層アセンブリの他の圧縮されていない領域よりもいくらか薄くなり、これにより固定装置18のトルクが減少し得る。トルクの損失又は減少は望ましくなく、固定装置を緩める又は固定装置の効果を弱める原因となる。当然のことながら、
図1を含む図面は説明を目的としているにかすぎず、多層アセンブリにおいて生じる実際の変形及び材料の反応は図面に描写されているものと異なってもよい。
【0011】
本明細書に示される実施形態によれば、多層アセンブリ10は積層体又はサンドイッチ状の構造であり、第一剛性層12と、接着剤層14と、第二剛性層16とを有する。勿論、後述の保持特徴部を、他の構造、層、層結合などを有する他の多層アセンブリと共に用いてもよく、本明細書に記載の例示の多層アセンブリに限定されない。一般的に、接着剤層14は、第一及び第二剛性層12、16同士を接着し、また接着剤層の組成や用いられる特定用途に依って振動及び/又はノイズ減衰などの他の機能を果たすこともできる。一実施形態において、接着剤層14は、アクリル酸系熱硬化性樹脂からなる粘弾性の接着剤層であり、厚さが約0.005mm以上0.05mm以下であるが、他の接着剤組成及び厚さを使用してもよい。以下で明らかとなる理由から、接着剤層14は、時間と共に接着剤から蒸発するキャリア又は溶剤成分を含む溶剤系材料とは対照的な無溶剤系又は100%反応可能材料であってもよい。第一及び第二剛性層12、16は、硬質プラスチック並びにステンレス鋼、亜鉛めっき鋼、冷延鋼板(非被覆、被覆、ペイント加工などされたもの)、アルミニウム及びそれらの合金などの金属を含む任意の数の異なる材料から構成されてもよい。また、使用される材料に依って、第一及び第二剛性層12、16を、巻かれた圧延ストック材料又は予め打ち抜き、トリミング、スタンピング若しくは金属加工により個別の片に形成された平らなブランク材から作成してもよく、これらの異なる可能性については以下により詳細に説明する。実施形態によれば、各第一及び第二剛性層12、16は金属層であり厚さが約0.10mm以上1.00mm以下であるが、勿論他の材料及び他の厚さを用いることも可能である。
【0012】
別の実施形態において、多層アセンブリ10は、パッチの形態又は積層の形態で提供される。例示のパッチの形態において、第一剛性層12は強化される及び/又は減衰される部品又は構成要素であり、第二剛性層16はそれよりも小さいパッチであり、第二剛性層を、より大きな第一剛性層の強化及び/又は振動減衰を必要とする特定領域内に接着してもよい。また、複数の分離した離間した第二剛性層パッチ又は片を、第一剛性層の異なる場所に接着してもよい。一方、例示の積層の形態において、第二剛性層16は、第一剛性層12の全体を覆う単一の片である。本明細書に記載の例示のパッチ及び積層の形態以外の他の実施形態においても本明細書に記載の保持特徴部を採用することができる。例えば、多層アセンブリに、例えば本明細書に記載の実施形態よりも少ない又は多い数の層からなる組合せを含む異なる数及び/又は組合せの層を設けてもよい。
【0013】
多層アセンブリの種々の層間の接着又は接合を強化するために、本明細書に記載のナット/ボルト結合などの固定装置18を多層アセンブリ10と共に用いて、例えば他の構成要素を多層アセンブリに固定してもよく(例えばブレーキブースターを多層車両防火壁に固定することができ、この場合一以上の固定装置が必要となる)、及び/又は多層アセンブリを他の構造に取り付け若しくは搭載してもよい(例えば多層車両防火壁を一以上の車両横材又は他の車両フレーム材に搭載することができる)。本明細書に用いる「固定装置」は、広い意味で、多層アセンブリと係合して上述のような一種の機械的な係止手段を形成する任意の種類の装置や部品などを含む。いくつかの非限定的な固定装置の例は、ナット/ボルト、ネジ、釘、リベット、留め具、スポット溶接などを含む。
【0014】
図2−4を参照すると、上述のトルクの減少に関する問題に対する可能性のある解決手段は、例示の保持特徴部40を用い、保持特徴部40は多層アセンブリ10の一以上の層内に形成され固定孔28付近に位置する。保持特徴部40は、固定孔28の周囲の領域に剛性及び向上した硬さを与えるとともに固定孔を囲む領域内に接着剤層14が付着されることを防止し、これにより固定装置18を締結して取り付けた際に接着剤が絞り出される又は押し出される問題が回避される。保持特徴部40は、第一剛性層12及び/又は第二剛性層16内に形成されてもよく、さまざまな形態であってもよい。第一実施形態において、保持特徴部40は、盛り上がった、凹凸のある、突出した又は他の種類の起伏のある特徴部であり、そして、固定孔28を囲むように第二剛性層16にのみ形成される(
図3)。保持特徴部40の形状は、上から見たときに、円形(
図2に示す)、楕円形、正方形、長方形又は任意の他の適切な形状であってもよい。本実施形態において、保持特徴部40は全体的に円形であり、固定孔28を囲む隆起したエンボス部であり、側壁42及び上壁44を有する。保持特徴部40は、第一及び第二剛性層12、16の間の接着剤層14を欠く空間46の形成を助ける。
【0015】
側壁42は、保持特徴部40の外周を構成し、上壁44を、側壁の外に位置する第二剛性層16の隆起していない部分よりも上に隆起させる。ナット/ボルト結合を締結すると、側壁42は、ボルト20及びナット22により加えられる圧縮力が原因で起こり得る保持特徴部40の変形に対していくらか抵抗する。本明細書に示す実施形態によれば、側壁42は、一端(側壁の径方向外側の端)が第二剛性層16の隆起していない部分に接続し、他端(側壁の径方向内側の端)が上壁44に接続する。側壁42と、第二剛性層16の隆起していない部分の水平軸Hとの間の角度が角度αに形成されてもよい。角度αは、さまざまな値でもよく、図示される45°又は図示しない90°でもよい(即ち、角度αは20°以上90°以下の範囲でもよい)。当然ながら、本明細書において側壁42は第二剛性層16の隆起していない部分から全体的に直線的に隆起しているものの、側壁はそれ以外に凸状、ドーム状、リブ状又は他の種類の形状でもよい。
【0016】
上壁44は、側壁42から伸び、保持特徴部40の内側部分、即ち固定孔28に全体的に接近して囲む部分、を構成してもよい。ナット/ボルト結合を締結すると、上壁44はボルト20のヘッドの下側及び/又はワッシャなど(図示せず)と直接接触する。本明細書に記載の実施形態において、上壁44は、一端(上壁の径方向外側の端)が側壁42に接続し、他端(上壁の径方向内側の端)が固定孔に近接する全体的に環状の表面である。上壁44は、水平軸Hと平行であり、したがって第一及び第二剛性層12、16のうちの少なくとも一方と平行である。空間46は、側壁42及び/又は上壁44の下側に位置し、以下に詳細に述べるように接着剤層14からの接着剤材料を欠く。言い換えれば、空間46は、第二剛性層16の内表面50と対向側の第一剛性層12の内表面52との間に形成されてもよく、そして本実施形態において固定孔28を囲む(
図3参照)。また、上壁44を全体的に省略してもよく、あるいは部分的に省略して側壁42の径方向内側端が固定孔28で終端する又は固定孔28内に開くようにしてもよい。
【0017】
一般的に、保持特徴部40の厳密な形状及び寸法は、大きく異なることができ、また、とりわけ対応する固定装置18及び/又は固定孔28の形状及び寸法に依存してもよい。例えば、保持特徴部40は、固定孔28を完全に又は大きく囲むように構成されてもよく、そして、ナット/ボルト結合の取り付け又は締結の際に第一及び/又は第二剛性層12、16の圧縮を許可するように構成されてもよく、これにより、内表面50、52において接着剤層14からの接着剤を欠いた金属−金属接合部48が形成される(
図4参照)。保持特徴部40があるために、固定孔28を囲む領域内(即ち空間46)において接着剤層14からの接着剤材料がほとんど又は全く存在しない。したがって、固定装置18を締結しても、上記の保持特徴部を有していない他の多層アセンブリ(
図1参照)では起こり得るような、接着剤が金属−金属接合部48から時間と共に絞り出される又は押し出されることは、起こらない。したがって、多層アセンブリ10により固定装置18の圧縮力に対して与えられるスプリングバック力又は反力は、長い期間、材料の損失及び対応するアセンブリの厚さの減少が原因となって弱まることはない。当然のことながら、
図4に示す例示の図から、固定装置18が締結された後に側壁42が大きく変形しても又は変形しなくてもよい。このことも、保持特徴部40の一部におけるスプリングバックの向上に貢献する。したがって、接着剤の緩やかな押し出し(圧縮状態)によるトルク損失の減少及び多層アセンブリのスプリングバック力の増大により、保持特徴部40は、固定装置18の性能を長い期間にわたって改善する。
図4は、第一及び第二剛性層間に金属−金属接合部48が形成されるように変形した保持特徴部の例を示しているが、これは必須ではなく、二つの剛性層が互いに接触しなくともよい。
【0018】
図5を参照すると、保持特徴部140の第二の実施形態が示され、これは第一の実施形態の保持特徴部40にいくつかの点で類似している。差異の一つは、保持特徴部140が複数の固定孔128に対応するよう設計されている点であり、このことは、第一の実施形態のものと比べて、保持特徴部の寸法が物理的に大きい及び/又は固定孔の寸法が物理的に小さいことを意味する。この実施形態において、保持特徴部140は盛り上がった、凹凸のある、突出した又は他の種類の起伏のある特徴部であり、そして、複数の固定孔128を囲むように第二剛性層116に形成される。
図5の上から見た図において、保持特徴部140の形状は円形であるが、保持特徴部140は楕円形、正方形、長方形又は任意の他の適切な形状であってもよい。また、保持特徴部40のように、保持特徴部140は、第一及び第二剛性層間に空間(図示せず)を形成する側壁142と上壁144とからなる隆起したエンボス部であってもよい。これらの構成要素は、第一の実施形態のものと類似しており、したがってここでは説明しない。
【0019】
保持特徴部140に大きな表面積を有する上壁144が設けられている場合、大きな上壁の下に支持体がないので、保持特徴部の形成後に固定孔128を打ち抜くことは難しい。そのような状況への対策として、一つには、固定孔128を打ち抜く前に、上壁144において第一及び第二剛性層の内表面を共に抵抗溶接又はスポット溶接する方法がある。例えば、以下の例示の工程を用いることができ、それは、まず、第一及び/第二剛性層において保持特徴部140を形成し、次に、保持特徴部140を含む剛性層の内表面又は下側に接着剤層を付着する(これにより、ローラー又は他の工具が保持特徴部により形成された凹凸の上を通過したときに保持特徴部が全体的に接着剤を欠くこととなる。このことは以下により詳細に説明する)。その後、接着剤層をセット又は硬化可能に第一及び第二剛性層を互いに接合して、次に、保持特徴部140を、対向側の剛性層に、上壁144上の一以上のスポット溶接部において抵抗溶接し、これにより第一及び第二剛性層間に一以上の金属−金属接合部を形成する。そして最後に、別のナット/ボルト結合又は他の固定装置を固定孔128内に挿入して多層アセンブリに設置する。勿論、上述の工程は単に可能性の一つであり、他の工程及び工程の順序を代わりに用いてもよい。
【0020】
図6−8を参照すると、第一の実施形態の保持特徴部40にいくつかの点で類似した保持特徴部240の第三の実施形態が示される。差異の一つは、保持特徴部240が、外側壁242、上壁244及び追加の内側壁248を有し、下に横たわる第一剛性層212と共に空間246を形成している点である。外側経来242及び上壁244は、第一の実施形態の側壁42及び上壁44にそれぞれ類似しており、したがってここでは説明しない。内側壁248は、一端(内側壁の径方向外側の端)が上壁244に接続し、第二剛性層212に向かって下向きに伸びる。内側壁248は、すでに側壁42を参照して記載したように外側壁242と同じ角度がつけられてもよく、その角度は異なってもよい。この実施形態において、単一の固定孔228が保持特徴部240の内部に設けられてもよく、空間246が外側壁242、上壁240及び内側壁248の下に位置し且つ全体的に接着剤層214を欠いてもよい。
図6の上から見た図において、保持特徴部240は環状形状であるが、長円形、矩形、正方形、楕円形又は別の適切な形状であってもよい。
【0021】
図9を参照すると、第三の実施形態の保持特徴部240といくつかの点で類似した保持特徴部340の第四の実施形態が示される。差異の一つは、保持特徴部340が複数の固定孔328に対応するよう設計されている点であり、各固定孔は、固定孔が中心に設けられて上壁が固定孔を囲むのとは対照的に、実際には保持特徴部の上壁に形成されている。本実施形態において、保持特徴部340の中心には固定孔は設けられてなく、平らな中心部350が、第二剛性層の隆起していない部分である。保持特徴部340は、外側壁342、上壁344及び内側壁348からなる隆起した環状のエンボス部であり、下に横たわる第一剛性層と共に空間を形成する。固定孔328は実際には環状の上壁344に形成される。上で説明したように、一以上の抵抗溶接部又は他の種類の溶接部を平らな中心部350上に配置してそのスポットにおいて第一及び第二剛性層同士を溶接することも可能である。この例では、固定装置がナット/ボルトと溶接部との両方を含んでもよい。
図9の上から見た図において、保持特徴部340は環状形状であるが、矩形、楕円形又は別の適切な形状であってもよい。
【0022】
その他の実施形態において、保持特徴部は、上記の実施形態のように完全な即ち連続的な形状である必要はなく、その代わりに不連続でもよく複数の分離した異なる隆起した構成要素を有してもよい。例えば、
図10において、保持特徴部440は、第二剛性層416に形成された複数の円弧状特徴部460を有し、各円弧状隆起部分の間に位置する隆起していない部分462を有する。円弧状特徴部460は、単一の固定孔428の周りに間隔をあけて設けられているが、例えば
図5及び
図9に示されるように複数の固定孔を特徴部の周りに配置してもよい。
図11において、保持特徴部540は、第二剛性層516に形成された多数のくぼみ状の隆起部分又は突起570を有し、各隆起部分の間に位置する隆起していない部分562を有する。また、
図12に示される別の実施形態において、保持特徴部640は、第二剛性層616に形成された複数の長方形の隆起部分680を有し、それらの間に位置する隆起していない部分662を有する。上記の不連続な各実施形態において、種々の隆起特徴部又は部分460、570、680と各固定孔との間に少量の接着剤が存在してもよいが、このような状況においては上述の圧縮状態に関する問題が生じ得る。しかしながら、固定装置がナット/ボルト結合又は溶接部であっても、固定装置により加えられる圧縮力は隆起部分に集中するので、そのような特徴部と固定孔との間に位置する接着剤の大部分は、固定装置の設置後に時間をかけてゆっくりと押し出されるのとは対照的に、固定装置の設置中に押し出されるであろう。したがって、圧縮状態の影響が軽減されるとともにトルク減少が軽減される。また、他の実施形態、構成、配置、形状なども可能である。
【0023】
上記の保持特徴部の実施形態は、多層アセンブルの製造工程中に保持特徴部内及び/又は付近の所定の領域に接着剤が付くことを回避する又は少なくとも低減するよう設計され、これにより固定孔の周囲の領域におけるトルク損失の可能性に関する問題を軽減する。厳密な製造工程は異なってもよく、とりわけ多層アセンブリがパッチの形態が又は積層体の形態かによって部分的に依存する。
【0024】
例示のパッチの形態の製造工程において、第一及び/又は第二剛性層は、打ち抜き、スタンピング又は他の適切な加工によって、適切な寸法の片又はパッチに形成することができる。特定の保持特徴部は、打ち抜き加工の前、間又は後に、圧印加工、エンボス加工又は別の適切な加工などのスタンピング加工によって、第一及び/又は第二剛性層に形成することができる。
【0025】
保持特徴部の形成後、ロールコーティングなどによって接着剤層を剛性層に付着する。例示のロールコーティング工程において、剛性層の内表面の上に設置され且つ保持特徴部などによりくぼんでいない表面と接触するローラーを用いて、接着剤層が剛性層の内表面に付着される。保持特徴部の位置などにおいてくぼんでいる場所では、ローラーが保持特徴部の上側を通る時に剛性層の内表面はローラーから離れているので、ローラー上の接着剤はくぼみの下側には塗布又は付着されない。また、例えば、接着剤層を引き下ろしバー又は他の材料付着手法を用いて付着させることも可能であり、あるいは用意したものを切断して接着剤の薄いストリップを作成してフィルム状のストリップを台地及び/又は第二剛性層に付着させてもよい。接着剤層は、時間と共に接着剤から蒸発するキャリア又は溶剤成分を含む溶剤系材料とは対照的な無溶剤系又は100%反応可能材料であることが望ましい。通常、100%反応可能な材料は、接着剤層の全体厚さの約半分を占め得る溶剤又はキャリア成分を含まないので、対応する溶剤系の層よりも薄い。したがって、保持特徴部は、大きくくぼませる必要はなく(即ちより浅く形成できる)、それでもなお付着工程中に接着剤を回避することができる。接着剤層がフィルム層である場合、接着剤層を剛性層の一つに付着させる前又と後に、薄い接着剤層を抜き加工、レーザーカット又は孔を形成することができ、孔が具体的に固定孔位置に位置付けられる。そのような手法は通常かなり高い正確さを必要とする。このようにして、固定孔の周囲の領域に接着剤が無い又はほとんど無いこととなり、したがって上述の障害の一部が回避される。
【0026】
接着剤層を付着した後、結合した剛性/接着剤層を他の剛性層の内表面に接触させ、接着剤が強化及び硬化し並びに/又は接着剤層同士を接着させる。熱処理、紫外線(UV)照射、加圧、嫌気性及び他の周知の方法を用いて接着剤層を硬化してもよい。このとき、接着剤層14は、第一及び第二剛性層12、16の間に存在するものの、保持特徴部の領域内には通常存在しない。その後、任意のスタンピング又は他の金属加工処理を用いて多層アセンブリ自体をさらに形成及び/又は成形してもよく、例えば、多層アセンブリを完成品又は部品に成形してもよい。スタンピング又は他の金属加工処理を用いて保持特徴部を平らに打ち延ばしてもよく、−このとき接着剤層が付着され硬化されており、そして接着剤層は固定孔の周囲の領域には存在しない−、これにより保持特徴部が元の形状に戻る。実際には、用途上の要求に応じて、保持特徴部を平らに戻して又は全体にわたって滑らかにして容易に見えないようにしてもよい。穿孔加工又は他の適切な加工を用いて一以上の工程孔を第一及び第二剛性層に形成してもよい。穿孔加工は、剛性層が打ち抜き加工など施されているときに各剛性層に別個に施してもよく、あるいは任意のスタンピング加工中に剛性層同士が接着された後に同時に施してもよく、あるいは別のときに別の方法で施してもよい。
【0027】
例示の積層体の形態の製造工程において、第一及び第二剛性層をまず分離した巻かれた巻きものとして用意してもよい。個別の巻きものを解いて一緒にした後、圧印加工、エンボス加工又は別の適切な加工などのスタンピング加工を用いて特定の保持特徴部を第一及び/第二剛性層に形成することができる。保持特徴部の形成工程の最後において、上記のようなローラーを剛性層の内表面の上に配置しながらくぼんだ特徴部には接着剤を塗布しないよう構成された例示のロールコーティングを用いて、接着剤層を剛性層の内表面に付着することができる。その後、結合した剛性/接着剤層を他の剛性層の内表面に接触させ、接着剤が強化及び硬化し並びに/又は接着剤層同士を接着させる。前述したように、熱処理、UV照射、加圧、嫌気性手法及び他の周知の方法を用いて接着剤層を硬化してもよい。この時点で結合した多層アセンブリは、搬送及び後続工程のために、別々の片に打ち抜き加工されて又は再び巻かれてもよい。上述のように、穿孔加工又は他の適切な加工を用いて、一以上の工程孔を第一及び第二剛性層に形成してもよい。穿孔加工は、剛性層同士が接合されているときに各剛性層に別個に施してもよく、例えば、あるいは剛性層同士が接着された後に剛性層に同時に施してもよく、あるいは別のときに別の方法で施してもよい。
【0028】
当然ながら、多層アセンブリの製造工程は、パッチ及び積層体の形態の異なる実施形態においてさまざまである。例えば、上記の工程及び加工は、互いに異なる時点で実施することができ、全てを実施する必要はなく、また記載していない追加の工程及び/又は加工を実施してもよい。さらに、任意の又は全ての工程及び加工は、第二剛性層に対して用いられることが記載されているが、第一剛性層に対して用いられてもよい。
【0029】
図4を参照すると、ボルト20を固定孔28内に挿入してナット22をボルトの軸に締結するとともにボルトのヘッドが空間46上で第二剛性層16の上に位置するようにしてもよい。ナット/ボルト結合が締結されると、第一及び/又は第二剛性層12、16は圧縮されて接合し、空間46にかぶさってつぶれ、これにより第一及び第二剛性層の内表面50、52間に金属−金属接触部又は接合部48が形成される。側壁42は、保持特徴部40の内部領域に比べて変形に対するより大きな耐性を提供してもよく、これにより側壁は潰れない又は一部のみが潰れるので、図に示すように、締結後に空間46が側壁に近接した位置のまま保たれる。金属−金属接合部によりそして接着剤が存在しないことによりボルト20はたいして縮小せず、したがってナット/ボルト結合によってトルクの減少が防止される。類似の金属−金属接合部を記載の他の実施形態に形成してもよく、特に
図8の第三の実施形態に具体的に示される。
【0030】
本願発明の実施形態ではないが、図13に示すさらに別の実施形態において、保持特徴部740は、上記のように製造工程中に接着剤層714の付着を妨げず、しかしながら第一及び第二剛性層712、716に対して十分な剛性及び向上した硬さを与えることによって、接着剤層が顕著に押し出されることを防止して関連するトルクの損失を減少させる。図示した実施形態において、保持特徴部740は、第一及び第二剛性層712、716の両方に形成された環状のリブ状の突出部分であり、剛性層に外側壁790、792及び内側壁794、796が設けられている。勿論、この例と同様の機能を果たすような、例えば
図2、
図10、
図11及び
図12に示されたものを含む他の形状及び構造も可能である。多層アセンブリ710の製造工程は上述のものと類似していてもよい。ここで、接着剤層714は、スプレーコーティングを含む他の工程を用いて適用することができ、保持特徴部740は、接着剤層714が硬化された後に、圧印、エンボス加工又は別の適切な加工を用いて多層アセンブリ710において両第一及び第二剛性層712、716に形成することができる。使用において、ボルト720のヘッドは内側壁及び外側壁790、792、794、796の両方にわたって横方向に伸びて、側壁に直接締結力を与える。側壁は、ナット/ボルト結合の締結力に応じて起こり得る変形に対して抵抗し、したがって結合におけるトルクの損失を防止又は少なくとも軽減する。
【0031】
当然ながら、上述の実施形態の少なくとも一つを修正して、保持特徴部を、ナット/ボルト結合などの固定装置の代わりに溶接部を収容するように設計してもよい。例えば、
図3に示す保持特徴部40において、固定孔28を省き、代わりに孔又は開口が形成されていない平坦な上壁44を設けるように修正してもよい。そのような場合、平坦な上壁44は、溶接面として作用するとともに、溶接電極を位置決めするための小さな凹凸又は他の特徴部を有してもよい。多層アセンブリ10の形成後、抵抗溶接部、スポット溶接部又は他の種類の溶接部を保持特徴部に形成してもよく、これにより上壁44がくぼんで第一剛性層12内に付勢され、これにより溶接用の金属−金属接合部48が形成される。スポット溶接手段の電極を用いてこのくぼみの形成と溶接を同時に行ってもよい。他の手法を用いてもよい。
【0032】
図14及び
図15を参照すると、剛性層の縁に沿って保持特徴部が形成された種々の実施形態が示される。多層アセンブリ810は、第一及び第二剛性層812、816及びそれらの間に位置する接着剤層814を含む。ブランク材又は材料の残部と均一に同一面内である典型的な縁の代わりに、第二剛性層816には、剛性層の縁に沿って伸びる上を向いたフランジである保持特徴部820が設けられている。保持特徴部820は屈曲しており、上向きに且つ剛性層の残部から離れる方向に伸び、これにより接着剤の付着中に接着剤がアセンブリの縁に沿って蓄積されない(
図14の断面図に示す)。接着剤の硬化後、保持特徴部又は上向きのフランジ820を曲げて又はブランク材の残部と一列になるように折り戻され、これにより縁が共に固定される。一実施形態において、第一及び第二剛性ブランク材812、816の縁を、レーザ溶接、マッシュシーム溶接又は他の手段で溶接し、そして溶接部の領域に接着剤が介在しないことから、溶接部は接着剤により汚染されない。このような汚染の状態は、レーザ溶接においてレーザより接着剤が溶けたときに起こり、副産物により溶接部が望ましくない多孔質となる。当然ながら、保持特徴部820は単なる例であり、代わりに異なる形状及び構成を有する保持特徴部を用いることが可能である。例えば、保持特徴部は、平坦なフランジではなく丸形又は屈曲した形状でもよく、図示されるフランジから離れる方向により長く又はより短く伸びてもよく、平坦な棚状の伸張部920(
図15参照)を縁に形成するように複合した屈曲部を含んでもよく、剛性層の全長に沿ってのみ伸びる代わりに剛性層の縁の全長の一部だけに沿って伸びてもよく(即ち保持特徴部は溶接部の配置が予想される縁の領域にのみ伸びてもよい)、第一及び第二剛性層のどちらか一方だけではなくその両方に形成されてもよく、あるいは縁に沿って伸びるだけでなく剛性層の内側に伸びてもよい。これらは可能性の一部であり、他の実施形態も勿論可能である。
【0033】
本明細書の記載は本発明自体を定義するものではなく、本発明の一以上の好ましい実施例を記載していることが分かる。本発明は本明細書に開示される特定の(複数の)実施形態に限定されない。さらに、本明細書に含まれる記載は、具体的な実施形態に関するものであり、用語又は表現が本明細書内で明確に定義されている場合を除いては本発明の範囲又は特許請求項の範囲に使用される用語に対する限定として解釈されるべきではない。さまざまな他の実施形態並びに記載された(複数の)実施形態に対する種々の変更及び修正は当業者に明らかとなる。そのような他の実施形態、変更及び修正は全て本明細書に添付された特許請求の範囲に記載される。
【0034】
本明細書及び特許請求の範囲の中で使用される場合、用語「例えば」、「など」、「場合によって」及び「のような」並びに動詞「有する」、「含む」、「設けられた」及び他の動詞形態は、各々、一以上の構成要素又は他の部品のリストと共に使用された場合には追加可能であり、即ちリストは他の追加の構成要素又は部品を排除するものではない。他の用語は、異なる解釈が要求される内容で使用されていない限り、それらの最も広い適切な意味を用いて解釈される。