(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
単離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合断片であって、該抗体又は抗原結合断片は、ヒトc-Metタンパク質に特異的に結合し、該抗体又は抗原結合断片は、CDR3、CDR2及びCDR1を含む重鎖可変ドメインと、CDR3、CDR2及びCDR1を含む軽鎖可変ドメインとを含み、
該可変重鎖CDR3配列は、配列番号21の配列であり;
該可変重鎖CDR2配列は、配列番号20、配列番号83及び配列番号84の配列からなる群から選択され;かつ
該可変重鎖CDR1配列は、配列番号19の配列であり;かつ
該可変軽鎖CDR3配列は、配列番号33の配列であり;
該可変軽鎖CDR2配列は、配列番号32の配列であり;かつ
該可変軽鎖CDR1配列は、配列番号31の配列である、前記単離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合断片。
前記重鎖可変ドメイン(VH)が、配列番号94として示されるアミノ酸配列、又は、配列番号94に対し、少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含み、かつ、前記軽鎖可変ドメイン(VL)が、配列番号95として示されるアミノ酸配列、又は、配列番号95に対し、少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含む、請求項2記載の単離された抗体又は抗原結合断片。
細胞表面にヒトc-Metタンパク質を発現している細胞に対する抗体依存性細胞性細胞傷害作用(ADCC)、補体依存性細胞傷害作用(CDC)及び抗体依存性細胞性貪食作用(ADCP)から選択された1以上のエフェクター機能を提示する、請求項1〜3のいずれか一項記載の抗体又は抗原結合断片。
未変性のヒトFcドメインと比較して改変がなされているFcドメインであって、かつ、細胞表面にヒトc-Metタンパク質を発現している細胞に対する抗体依存性細胞性細胞傷害作用(ADCC)、補体依存性細胞傷害作用(CDC)及び抗体依存性細胞性貪食作用(ADCP)から選択された少なくとも1つのエフェクター機能について、同一の抗原結合特異性を有するが未変性のヒトFcドメインを含む参照抗体と比べ、増強されたエフェクター機能を示すFcドメインを含む、請求項4記載の抗体又は抗原結合断片。
【発明の概要】
【0012】
(発明の説明)
本明細書において、ヒトc-Metタンパク質に特異的に結合する単離された抗体又はその抗原結合断片であって、ここで該抗体は:
(a)ヒトc-Metタンパク質のHGF-媒介性活性化の厳密な拮抗物質であること、
(b)ヒトc-Metタンパク質のHGF-非依存性活性化を阻害すること、及び
(c)細胞表面ヒトc-Metタンパク質の有意なダウンレギュレーションを誘導しないこと:の特性の少なくとも2又は3つ全てを示すものを提供する。
【0013】
一実施態様において、ヒトc-Metタンパク質に特異的に結合する単離された抗体又はその抗原結合断片であって、ここで該抗体が:
(a)ヒトc-Metタンパク質のHGF-媒介性活性化の厳密な拮抗物質であること、及び
(b)ヒトc-Metタンパク質のHGF-非依存性活性化を阻害すること:の特性を示すものを提供する。
【0014】
一実施態様において、ヒトc-Metタンパク質に特異的に結合する、単離された抗体又はその抗原結合断片であって、該抗体が:
(a)ヒトc-Metタンパク質のHGF-媒介性活性化の厳密な拮抗物質であること、及び
(c)細胞表面ヒトc-Metタンパク質の有意なダウンレギュレーションを誘導しないこと:の特性を示すものを提供する。
【0015】
一実施態様において、ヒトc-Metタンパク質に特異的に結合する単離された抗体又はその抗原結合断片であって、ここで該抗体が:
(b)ヒトc-Metタンパク質のHGF-非依存性活性化を阻害すること、及び
(c)細胞表面ヒトc-Metタンパク質の有意なダウンレギュレーションを誘導しないこと:の特性を示すものを提供する。
【0016】
更なる実施態様において、ヒトc-Metタンパク質に特異的に結合する単離された抗体又はその抗原結合断片であって、ここで該抗体が:
(a)ヒトc-Metタンパク質のHGF-媒介性活性化の厳密な拮抗物質であること、
(b)ヒトc-Metタンパク質のHGF-非依存性活性化を阻害すること、及び
(c)細胞表面ヒトc-Metタンパク質の有意なダウンレギュレーションを誘導しないこと:の特性を全てを示すものを提供する。
【0017】
特定の実施態様において、本抗体又は抗原結合断片は、ヒトc-Metタンパク質のIPT領域内のエピトープ、特にヒトc-Metタンパク質のIPTドメイン1-2、2-3又は3-4内のエピトープに結合するか、或いはヒトc-Metタンパク質のPSI-IPT1領域内のエピトープに結合する。
【0018】
更なる実施態様において、本抗体又は抗原結合断片は、該ヒトc-Metタンパク質のPSI-IPT1領域中のアミノ酸配列
【化1】
内のエピトープに結合する。
【0019】
更なる実施態様において、本抗体又は抗原結合断片は、ヒトc-Metタンパク質の高親和性HGF結合部位へのHGFの結合をブロックすることができる。
【0020】
更なる実施態様において、
(a)ヒトc-Metタンパク質のSEMAドメイン内のエピトープに結合し、
(b)細胞表面ヒトc-Metタンパク質のダウンレギュレーションを誘導しない、抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0021】
例証的実施態様において、この抗体又はその抗原結合断片は、ヒトc-MetのSEMAドメイン中のペプチド
【化2】
内のエピトープに結合する。
【0022】
この抗体又は抗原結合断片は、ヒトc-Metタンパク質の低親和性HGF結合部位へのHGFの結合をブロックすることができる。
【0023】
前述の実施態様のいずれかにおいて、本抗体又は抗原結合断片は、完全なヒト配列を有するヒンジ領域を含むことができる。本抗体又は抗原結合断片はまた、本明細書に定義した高ヒト相同性を有することができる。
【0024】
一実施態様において、ヒトc-Met受容体タンパク質に特異的に結合し、且つc-Met受容体のHGF-媒介性活性化を拮抗する、高ヒト相同性を有する抗体を提供する。
【0025】
ある実施態様において、ヒトc-Met受容体タンパク質に特異的に結合する、高ヒト相同性を有する単離された抗体を提供し、ここで該抗体は、c-Met受容体のHGF-媒介性活性化の厳密な拮抗物質であり、且つ完全ヒト配列を有するヒンジ領域を含み、ここでヒトヒンジ領域の存在は、該抗体の拮抗活性に有害に影響を及ぼさない。
【0026】
更なる実施態様において、ヒトc-Metタンパク質に特異的に結合する、高ヒト相同性を有する単離された抗体、又はその抗原結合断片を提供し、ここで該抗体又は抗原結合断片は、該ヒトc-Metタンパク質の高親和性HGF結合部位へのHGFの結合をブロックし、且つc-Met受容体のHGF-媒介性活性化の厳密な拮抗物質である。
【0027】
更なる実施態様において、ヒトc-Metタンパク質に特異的に結合する、高ヒト相同性を有する単離された抗体、又はその抗原結合断片を提供し、ここで該抗体又は抗原結合断片は、該ヒトc-Metタンパク質のIPT領域又はPSI-IPT1領域内のエピトープに結合し、且つc-Met受容体のHGF-媒介性活性化の厳密な拮抗物質である。一実施態様において、本抗体又はその抗原結合断片は、ヒトc-Metタンパク質のIPTドメイン1-2、2-3又は3-4内のエピトープに結合する。
【0028】
更なる実施態様において、該抗体又は抗原結合断片は、ヒトc-Metタンパク質のPSI-IPT1領域中のペプチド
【化3】
内のエピトープに結合する、ヒトc-Metタンパク質に特異的に結合する単離された抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0029】
例証的実施態様において、この抗体又はその抗原結合断片は、ヒトc-Metタンパク質のHGF-媒介性活性化の厳密な拮抗物質であることができ、またヒトc-Metタンパク質のHGF-非依存性活性化を阻害することができ、且つ好ましくは細胞表面ヒトc-Metタンパク質の有意なダウンレギュレーションを誘導しない。
【0030】
別の実施態様において、本抗体又はその抗原結合断片は、IPTドメインの一部に加え、SEMAドメインなどのc-Metの別のドメインの一部を含む、コンホメーションエピトープに結合する。
【0031】
前述の実施態様の各々において、本抗体は、その各々はヒトc-Metタンパク質への二価結合を示すことができる、モノクローナル抗体、完全ヒトモノクローナル抗体、又はヒト化モノクローナル抗体のいずれかであることができる。
【0032】
特定の実施態様において、高ヒト相同性を有する抗体又はその抗原結合断片は、重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含むことができ、ここでVH及びVLドメイン、又はそれらの1以上のCDRは、ラクダ科の動物-由来である。
【0033】
一実施態様において、ヒトc-Metタンパク質に特異的に結合し、且つc-Met受容体のHGF-媒介性活性化の厳密な拮抗物質である、単離された抗体又はその抗原結合断片を提供し、この抗体又は抗原結合断片は、重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、ここでVH及びVLドメイン、又はそれらの1以上のCDRは、ラクダ科の動物-由来である。特定の実施態様において、本抗体又はその抗原結合断片は、ラマVH及びVLドメイン、又はヒト化されたラマVH及びVLドメインを含むことができる。この抗体又は抗原結合断片はまた、本明細書に定義されたような、「高ヒト相同性」を示すことができる。
【0034】
非限定的実施態様において、本発明は、具体的構造上の特徴を参照し定義される、以下の抗体又はその抗原結合断片、すなわち、CDR(配列番号:1-21、71-73若しくは83-85(重鎖CDR)又は配列番号:22-42、74-76、86、87若しくは137-148(軽鎖CDR)の1以上、或いは全可変ドメイン(配列番号:45-58、77、78、88、89、92-121若しくは149-164の1以上)のいずれかの特定されたアミノ酸配列を提供する。これらの抗体は全て、ヒトc-Metタンパク質に特異的に結合し、且つc-Met受容体のHGF-媒介性活性化の厳密な拮抗物質である。特定の実施態様において、以下の構造上の特徴により定義された抗体は追加的に、本明細書に定義されたような、高ヒト相同性を示すことができる。本抗体は、組換え手段により生成されたモノクローナル抗体であることができる。以下のc-Met抗体のCDRは、ラクダ科動物-由来の、すなわちラクダ科の動物(具体的にはラマ)のc-Met抗原による免疫化により生じた通常型抗体から誘導されることができる。本発明はまた、ヒト化又はヒト生殖細胞系列化バリアント、親和性バリアント、及び本明細書に定義されたような、保存的アミノ酸置換を含むバリアントを提供する。具体的に提供されるのは、ヒト抗体、特にヒトIgG1、IgG2、IgG3若しくはIgG4の定常ドメインに融合された、ラクダ科動物-由来のVH及びVLドメインを含むキメラ抗体、又はそれらのヒト化若しくは生殖細胞系列化バリアントである、これらのキメラ抗体は、本明細書に定義されたような、完全ヒト配列を有するヒンジ領域を含むことができる。
【0035】
ここでc-Met抗体の例証的実施態様を、構造上の特徴に関連して更に説明する。
【0036】
一実施態様において、該抗体又は抗原結合断片は、ヒトc-Metタンパク質に特異的に結合し、該抗体又は抗原結合断片は:
配列番号:21 [DVRVIATGWATANALDA]、又はその配列バリアント、
配列番号:15 [VDDYYLGYDY]、又はその配列バリアント、
配列番号:3 [RRDNYYGTSGEYDY]、又はその配列バリアント、
配列番号:6 [DTVVSGNGY]、又はその配列バリアント、
配列番号:9 [DLIGSHDY]、又はその配列バリアント、
配列番号:12 [GPGWYSGSRNDY]、又はその配列バリアント、
配列番号:18 [LEDYELAYDY]、又はその配列バリアント、及び
配列番号:73 [SGYGSSLGDFGS]、又はその配列バリアント:からなる群から選択される配列を含む可変重鎖CDR3を含む重鎖可変ドメインを含み、
ここで該配列バリアントは、列挙された配列中に1、2又は3個のアミノ酸置換(例えば、保存的置換、ヒト化置換又は親和性バリアント)を含む、単離された抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0037】
この抗体の重鎖可変ドメインは更に:
(a)配列番号:XX1 [X
1X
2X
3X
4X
5X
6X
7X
8TYYAESMK]、又はそれらの配列バリアントであり、式中
X1は、任意のアミノ酸、好ましくはT又はAであり;
X2は、任意のアミノ酸、好ましくはIであり;
X3は、任意のアミノ酸、好ましくはS又はNであり;
X4は、任意のアミノ酸、好ましくはWであり;
X5は、任意のアミノ酸、好ましくはNであり;
X6は、任意のアミノ酸、好ましくはD又はGであり;
X7は、任意のアミノ酸、好ましくはI、G又はSであり;及び
X8は、任意のアミノ酸、好ましくはN又はSであるもの;
(b)配列番号:XX2 [
VIAYDGSTX
1YSPSLKS]、又はそれらの配列バリアントであり、式中
X1は、任意のアミノ酸、好ましくはY又はDであるもの;及び
(c)配列番号:XX3 [
RIDPEX
1GGTKYAQKFQG]、又はそれらの配列バリアントであり、式中
X1は、任意のアミノ酸、好ましくはD、N又はEであるもの:からなる群から選択される配列を含む可変重鎖CDR2を更に含み、並びに
ここで該配列バリアントは、列挙された配列中に1、2又は3個のアミノ酸置換(例えば、保存的置換、ヒト化置換又は親和性バリアント)を含む。
【0038】
この抗体の重鎖可変ドメインは更に:
(a)配列番号:XX4 [X
1DYX
2MX
3]、又はそれらの配列バリアントであり、式中
X
1は、任意のアミノ酸、好ましくはD又はSであり;
X
2は、任意のアミノ酸、好ましくはA又はVであり;及び
X
3は、任意のアミノ酸、好ましくはT、N又はSであるもの;
(b)配列番号:XX5 [X
1NYYX
2WS]、又はそれらの配列バリアントであり、式中
X1は、任意のアミノ酸、好ましくはG又はTであり;
X2は、任意のアミノ酸、好ましくはA又はYであるもの;
(c)配列番号:XX6 [X
1X
2X
3ID]、又はそれらの配列バリアントであり、式中
X1は、任意のアミノ酸、好ましくはM又はNであり;
X2は、任意のアミノ酸、好ましくはN又はYであり;
X3は、任意のアミノ酸、好ましくはS又はVであるもの:からなる群から選択される配列を含む可変重鎖CDR1を含み、並びに
ここで該配列バリアントは、列挙された配列中に1、2又は3個のアミノ酸置換(例えば、保存的置換、ヒト化置換又は親和性バリアント)を含む。
【0039】
本抗体又は抗原結合断片は更に:
(a)配列番号:YY1 [
QQGX
1SFPX
2X3]、又はそれらの配列バリアントであり、式中、
X
1は、任意のアミノ酸、好ましくはY又はWであり;
X
2は、任意のアミノ酸、好ましくはY又はLであり;
X
3は、任意のアミノ酸、好ましくはT又はSであるもの;
(b)配列番号:YY2[
ASYRX
1X
2X
3X
4X
5X
6V]、又はそれらの配列バリアントであり、式中、
X1は、任意のアミノ酸、好ましくはS、I、R又はTであり;
X2は、任意のアミノ酸、好ましくはA、S、T又はRであり;
X3は、任意のアミノ酸、好ましくはN又はTであり;
X4は、任意のアミノ酸、好ましくはN、D、R又はKであり;
X5は、任意のアミノ酸、好ましくはA、V、Y、N又はHであり;
X6は、任意のアミノ酸、好ましくはV、A、S又はGであるもの:からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む可変軽鎖CDR3を含む軽鎖可変ドメインを含み、並びに
ここで該配列バリアントは、列挙された配列中に1、2又は3個のアミノ酸置換(例えば、保存的置換、ヒト化置換又は親和性バリアント)を含む。
【0040】
本抗体又は抗原結合断片は更に:
(a)配列番号:YY3 [
WASX
1RES]、又はそれらの配列バリアントであり、式中、
X1は、任意のアミノ酸、好ましくはI又はTであるもの;
(b)配列番号:YY4[X
1VX
2X
3RX
4S]、又はそれらの配列バリアントであり、式中、
X1は、任意のアミノ酸、好ましくはD、A又はEであり;
X2は、任意のアミノ酸、好ましくはN又はSであり;
X3は、任意のアミノ酸、好ましくはR、Y又はKであり;
X4は、任意のアミノ酸、好ましくはA又はPであるもの:からなる群から選択される配列を含む軽鎖可変ドメインCDR2を含み、並びに
ここで該配列バリアントは、列挙された配列中に1、2又は3個のアミノ酸置換(例えば、保存的置換、ヒト化置換又は親和性バリアント)を含む。
【0041】
本抗体又は抗原結合断片は更に、
(a)配列番号:YY5 [
KSSQSVLX
1X
2X
3NX
4KX
5YLA]、又はそれらの配列バリアントであり、式中、
X1は、任意のアミノ酸、好ましくはW、L又はFであり;
X2は、任意のアミノ酸、好ましくはR又はSであり;
X3は、任意のアミノ酸、好ましくはS又はPであり;
X4は、任意のアミノ酸、好ましくはQ又はHであり;
X5は、任意のアミノ酸、好ましくはN又はSであるもの;
(b)配列番号:YY6[X
1GX
2X
3X
4X
5X
6GX
7X
8X
9YX
10S]、又はそれらの配列バリアントであり、式中、
X1は、任意のアミノ酸、好ましくはA又はTであり;
X2は、任意のアミノ酸、好ましくはT又はSであり;
X3は、任意のアミノ酸、好ましくはS又はNであり;
X4は、任意のアミノ酸、好ましくはS又はTであり;
X5は、任意のアミノ酸、好ましくはD又はNであり;
X6は、任意のアミノ酸、好ましくはV又はIであり;
X7は、任意のアミノ酸、好ましくはY、G、D又はNであり;
X8は、任意のアミノ酸、好ましくはG又はYであり;
X9は、任意のアミノ酸、好ましくはN又はYであり;
X10は、任意のアミノ酸、好ましくはV又はLであるもの:からなる群から選択される配列を含む軽鎖可変ドメインCDR1を含み、並びに
ここで該配列バリアントは、列挙された配列中に1、2又は3個のアミノ酸置換(例えば、保存的置換、ヒト化置換又は親和性バリアント)を含む。
【0042】
(36C4、20F1及びそれらのバリアント)
一実施態様において、ヒトc-Metタンパク質に特異的に結合し、該抗体又は抗原結合断片は、可変重鎖CDR3配列が、配列番号:12又は配列番号:21又はそれらの配列バリアントであり、ここで該配列バリアントは、列挙された配列中に1、2又は3個のアミノ酸置換を含む、重鎖可変ドメインを含む、単離された抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0043】
本抗体又はその抗原結合断片の実施態様において、
前記可変重鎖CDR3配列は、配列番号:21又は配列番号:12又はそれらの配列バリアントであり;
該可変重鎖CDR2配列は、配列番号:XX2又はそれらの配列バリアントであり;及び
該可変重鎖CDR1配列は、配列番号:XX5又はそれらの配列バリアントであり、且つ
ここで該配列バリアントは、列挙された配列中に1、2又は3個のアミノ酸置換(例えば、保存的置換、ヒト化置換又は親和性バリアント)を含む。
【0044】
本抗体又はその抗原結合断片の実施態様において、
該可変重鎖CDR3配列は、配列番号:21又はその配列バリアントであり;
該可変重鎖CDR2配列は、配列番号:20若しくはその配列バリアント又は配列番号:83若しくはその配列バリアントであり;及び
該可変重鎖CDR1配列は、配列番号:19又はその配列バリアントであり、且つ
ここで該配列バリアントは、列挙された配列中に1、2又は3個のアミノ酸置換(例えば、保存的置換、ヒト化置換又は親和性バリアント)を含む。
【0045】
本抗体又はその抗原結合断片の実施態様において、
該可変重鎖CDR3配列は、配列番号:12又はその配列バリアントであり;
該可変重鎖CDR2配列は、配列番号:11又はその配列バリアントであり;及び
該可変重鎖CDR1配列は、配列番号:10又はその配列バリアントであり、且つ
ここで該配列バリアントは、列挙された配列中に1、2又は3個のアミノ酸置換(例えば、保存的置換、ヒト化置換又は親和性バリアント)を含む。
【0046】
本抗体又はその抗原結合断片の実施態様において、
該可変軽鎖CDR3配列は、配列番号:YY2又はそれらの配列バリアントであり;
該可変軽鎖CDR2配列は、配列番号:YY4又はそれらの配列バリアントであり;及び
該可変軽鎖CDR1配列は、配列番号:YY6又はそれらの配列バリアントであり、且つ
ここで該配列バリアントは、列挙された配列中に1、2又は3個のアミノ酸置換を含む。
【0047】
本抗体又はその抗原結合断片の実施態様において、
該可変軽鎖CDR3配列は、配列番号:33又はその配列バリアント、配列番号:145又はその配列バリアント、配列番号:146又はその配列バリアント、配列番号:147又はその配列バリアント、及び配列番号:148又はその配列バリアントからなる群から選択され;
該可変軽鎖CDR2配列は、配列番号:32又はその配列バリアントであり;及び
該可変軽鎖CDR1配列は、配列番号:31若しくはその配列バリアント、又は配列番号:144若しくはその配列バリアントであり、且つ
ここで該配列バリアントは、列挙された配列中に1、2又は3個のアミノ酸置換(例えば、保存的置換、ヒト化置換又は親和性バリアント)を含む。
【0048】
本抗体又はその抗原結合断片の実施態様において、
該可変軽鎖CDR3配列は、配列番号:30又はその配列バリアントであり;
該可変軽鎖CDR2配列は、配列番号:29又はその配列バリアントであり;及び
該可変軽鎖CDR1配列は、配列番号:28又はその配列バリアントであり、且つ
ここで該配列バリアントは、列挙された配列中に1、2又は3個のアミノ酸置換(例えば、保存的置換、ヒト化置換又は親和性バリアント)を含む。
【0049】
更なる実施態様において、該抗体又は抗原結合断片は、ヒトc-Metタンパク質に特異的に結合し、該抗体又は抗原結合断片は、重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを含み、ここで:
該可変重鎖CDR3配列は、配列番号:21又はその配列バリアントであり;
該可変重鎖CDR2配列は、配列番号:20、配列番号:83及び配列番号:84又はそれらの配列バリアントからなる群から選択され;並びに
該可変重鎖CDR1配列は、配列番号:19又はその配列バリアントであり;並びに、
該軽鎖可変ドメインは:
(i)可変軽鎖CDR3配列が、配列番号:33又はその配列バリアントであり;
可変軽鎖CDR2配列が、配列番号:32又はその配列バリアントであり;
可変軽鎖CDR1配列が、配列番号:31又はその配列バリアントであり、
ここで該配列バリアントは、列挙された配列中に1、2又は3個のアミノ酸置換(例えば、保存的置換、ヒト化置換又は親和性バリアント)を含むもの;又は
(ii)可変軽鎖CDR3配列が、配列番号:145又はその配列バリアントであり;
可変軽鎖CDR2配列が、配列番号:32又はその配列バリアントであり;
可変軽鎖CDR1配列が、配列番号:144又はその配列バリアントであり、
ここで該配列バリアントは、列挙された配列中に1、2又は3個のアミノ酸置換(例えば、保存的置換、ヒト化置換又は親和性バリアント)を含むもの;又は
(iii)可変軽鎖CDR3配列が、配列番号:146又はその配列バリアントであり;
可変軽鎖CDR2配列が、配列番号:32又はその配列バリアントであり;
可変軽鎖CDR1配列が、配列番号:31又はその配列バリアントであり、
ここで該配列バリアントは、列挙された配列中に1、2又は3個のアミノ酸置換(例えば、保存的置換、ヒト化置換又は親和性バリアント)を含むもの;又は
(iv)可変軽鎖CDR3配列が、配列番号:147又はその配列バリアントであり;
可変軽鎖CDR2配列が、配列番号:32又はその配列バリアントであり;
可変軽鎖CDR1配列が、配列番号:144又はその配列バリアントであり、
ここで該配列バリアントは、列挙された配列中に1、2又は3個のアミノ酸置換(例えば、保存的置換、ヒト化置換又は親和性バリアント)を含むもの;又は
(v)可変軽鎖CDR3配列が、配列番号:148又はその配列バリアントであり;
可変軽鎖CDR2配列が、配列番号:32又はその配列バリアントであり;
可変軽鎖CDR1配列が、配列番号:144又はその配列バリアントであり、
ここで該配列バリアントは、列挙された配列中に1、2又は3個のアミノ酸置換(例えば、保存的置換、ヒト化置換又は親和性バリアント)を含むもの;から選択されるCDRの組合せを含む、単離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0050】
例証的実施態様において、本抗体又はその抗原結合断片は、ヒトc-Metの中のSEMAドメインのペプチド
【化4】
内のエピトープに結合する。
【0051】
例証的実施態様において、この抗体又はその抗原結合断片は、ヒトc-Metタンパク質のHGF-媒介性活性化の厳密な拮抗物質であることができ、またヒトc-Metタンパク質のHGF-非依存性活性化を阻害することができ、且つ好ましくは細胞表面ヒトc-Metタンパク質の有意なダウンレギュレーションを誘導しない。
【0052】
一実施態様において、この抗体は、ヒト抗体、特にヒトIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4のCH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメイン及びCH3ドメインを含むことができる。
【0053】
更なる実施態様において、該抗体又は抗原結合断片は、ヒトc-Metタンパク質に特異的に結合し、該抗体又は抗原結合断片は、重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを含み、ここで:
該可変重鎖CDR3配列は、配列番号:12又はその配列バリアントであり;
該可変重鎖CDR2配列は、配列番号:11又はその配列バリアントであり;及び
該可変重鎖CDR1配列は、配列番号:10又はその配列バリアントであり、
該可変軽鎖CDR3配列は、配列番号:30又はその配列バリアントであり;
該可変軽鎖CDR2配列は、配列番号:29又はその配列バリアントであり;及び
該可変軽鎖CDR1配列は、配列番号:28又はその配列バリアントであり、並びに
ここで該配列バリアントは、列挙された配列中に1、2又は3個のアミノ酸置換を(例えば、保存的置換、ヒト化置換又は親和性バリアント)含む、単離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0054】
例証的実施態様において、この抗体又はその抗原結合断片は、ヒトc-Metタンパク質のHGF-媒介性活性化の厳密な拮抗物質であることができ、またヒトc-Metタンパク質のHGF-非依存性活性化を阻害することができ、且つ好ましくは細胞表面ヒトc-Metタンパク質の有意なダウンレギュレーションを誘導しない。
【0055】
一実施態様において、この抗体は、ヒト抗体、特にヒトIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4のCH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメイン及びCH3ドメインを含むことができる。
【0056】
更なる実施態様において、該抗体又は抗原結合断片は、ヒトc-Metタンパク質に特異的に結合し、該抗体又は抗原結合断片は、重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを含み、該重鎖可変ドメインは、配列番号:51、88、92、94、96及び98からなる群から選択される配列と、少なくとも85%配列同一性、又は少なくとも90%配列同一性、又は少なくとも95%配列同一性、又は少なくとも97%、98%若しくは99%配列同一性を伴うVH配列を含む、単離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0057】
更なる実施態様において、該抗体又は抗原結合断片は、ヒトc-Metタンパク質に特異的に結合し、該抗体又は抗原結合断片は、重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを含み、該重鎖可変ドメインは、配列番号:51、88、92、94、96及び98からなる群から選択されるVHアミノ酸配列を含む、単離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0058】
更なる実施態様において、該抗体又は抗原結合断片は、ヒトc-Metタンパク質に特異的に結合し、該抗体又は抗原結合断片は、重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを含み、該軽鎖可変ドメインは、配列番号:55、93、95、97、99、158、159、160、161、162、163及び164からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%配列同一性、又は少なくとも85%配列同一性、又は少なくとも90%配列同一性、又は少なくとも95%配列同一性、又は少なくとも97%、98%若しくは99%配列同一性を伴うVλ配列を含む、単離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0059】
更なる実施態様において、該抗体又は抗原結合断片は、ヒトc-Metタンパク質に特異的に結合し、該抗体又は抗原結合断片は、重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを含み、該軽鎖可変ドメインは、配列番号:55、93、95、97、99、158、159、160、161、162、163及び164からなる群から選択されるVλアミノ酸配列を含む、単離された抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0060】
更なる実施態様において、ヒトc-Metタンパク質に特異的に結合し、且つ好ましくはc-Met受容体のHGF-媒介性活性化の厳密な拮抗物質である、単離された抗体又はその抗原結合断片を提供し、該抗体又は抗原結合断片は、重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを含み、ここで該重鎖可変ドメインは、配列番号:51、88、92、94、96及び98からなる群から選択される配列と少なくとも85%配列同一性、又は少なくとも90%配列同一性、又は少なくとも95%配列同一性、又は少なくとも97%、98%若しくは99%配列同一性を伴うVH配列を含み、且つ該軽鎖可変ドメインは、配列番号:55、93、95、97、99、158、159、160、161、162、163及び164からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%配列同一性、又は少なくとも85%配列同一性、又は少なくとも90%配列同一性、又は少なくとも95%配列同一性、又は少なくとも97%、98%若しくは99%配列同一性を伴うVλ配列を含む。
【0061】
例証的実施態様において、この抗体は、ヒトc-MetのSEMAドメイン中のペプチド
【化5】
内のエピトープに結合する。
【0062】
例証的実施態様において、この抗体又はその抗原結合断片は、ヒトc-Metタンパク質のHGF-媒介性活性化の厳密な拮抗物質であることができ、またヒトc-Metタンパク質のHGF-非依存性活性化を阻害することができ、且つ好ましくは細胞表面ヒトc-Metタンパク質の有意なダウンレギュレーションを誘導しない。
【0063】
一実施態様において、この抗体は、ヒト抗体、特にヒトIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4のCH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメイン及びCH3ドメインを含むことができる。
【0064】
更なる実施態様において、ヒトc-Metタンパク質に特異的に結合し、且つ好ましくはc-Met受容体のHGF-媒介性活性化の厳密な拮抗物質である、単離された抗体又はその抗原結合断片を提供し、該抗体は、配列番号:51又は配列番号:88として示されたアミノ酸配列又はそれらのヒト化若しくは親和性バリアントを含む重鎖可変ドメイン(VH)、及び配列番号:55として示されたアミノ酸配列、又はそれらのヒト化若しくは親和性バリアントを含む軽鎖可変ドメイン(VL)を含む。
【0065】
例証的実施態様において、この抗体又はその抗原結合断片は、ヒトc-Met受容体タンパク質のHGF-媒介性活性化の厳密な拮抗物質であることができ、またヒトc-Metタンパク質のHGF-非依存性活性化を阻害することができ、且つ好ましくは細胞表面ヒトc-Metタンパク質の有意なダウンレギュレーションを誘導しない。
【0066】
一実施態様において、この抗体は、ヒト抗体、特にヒトIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4のCH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメイン及びCH3ドメインを含むことができる。
【0067】
更なる実施態様において、ヒトc-Metタンパク質に特異的に結合し、且つ好ましくはc-Met受容体のHGF-媒介性活性化の厳密な拮抗物質である、単離された抗体又はその抗原結合断片を提供し、該抗体又は抗原結合断片は、重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを含み、ここで重鎖可変ドメインは、配列番号:51又は配列番号:88として示されたアミノ酸配列と少なくとも85%配列同一性、又は少なくとも90%配列同一性、又は少なくとも95%配列同一性、又は少なくとも97%、98%若しくは99%配列同一性を伴うVH配列を含み、且つ軽鎖可変ドメインは、配列番号:55として示されたアミノ酸配列、又はそれらのヒト化若しくは親和性バリアントと少なくとも80%配列同一性、又は少なくとも85%配列同一性、又は少なくとも90%配列同一性、又は少なくとも95%配列同一性、又は少なくとも97%、98%若しくは99%配列同一性を伴うVλ配列を含む。
【0068】
この抗体又は抗原結合領域は、配列番号:51のCDR1、CDR2及びCDR3又は配列番号:88のCDR1、CDR2及びCDR3と同一である重鎖CDR、並びに配列番号:55のCDR1、CDR2及びCDR3と同一である軽鎖CDRを含むが、フレームワーク領域内にアミノ酸配列変動を示すことができる。
【0069】
例証的実施態様において、この抗体又は抗原結合断片は、ヒトc-MetのSEMAドメイン中のペプチド
【化6】
内のエピトープに結合する。
【0070】
例証的実施態様において、この抗体又はその抗原結合断片は、ヒトc-Metタンパク質のHGF-媒介性活性化の厳密な拮抗物質であることができ、またヒトc-Metタンパク質のHGF-非依存性活性化を阻害することができ、且つ好ましくは細胞表面ヒトc-Metタンパク質の有意なダウンレギュレーションを誘導しない。
【0071】
一実施態様において、この抗体は、ヒト抗体、特にヒトIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4のCH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメイン及びCH3ドメインを含むことができる。
【0072】
更なる実施態様において、ヒトc-Metタンパク質に特異的に結合し、且つ好ましくはc-Met受容体のHGF-媒介性活性化の厳密な拮抗物質である、単離された抗体又はその抗原結合断片を提供し、この抗体は、抗体36C4のヒト生殖細胞系列化バリアントであり、該生殖細胞系列化バリアント抗体は:‐
(a)配列番号:92として示されたアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH)、及び配列番号:93として示されたアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL);又は
(b)配列番号:94として示されたアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH)、及び配列番号:95として示されたアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL);又は
(c)配列番号:96として示されたアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH)、及び配列番号:97として示されたアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL);又は
(d)配列番号:98として示されたアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH)、及び配列番号:99として示されたアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL);又は
(e)配列番号:88として示されたアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH)、並びに配列番号:156、配列番号:157、配列番号:158、配列番号:159、配列番号:160、配列番号:161、配列番号:162、配列番号:163及び配列番号:164からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL):を含む。
【0073】
これらのバリアント36C4抗体又は抗原結合領域は、具体的アミノ酸配列に関して定義されたVHドメイン、及び同じく具体的アミノ酸配列に関して定義されたVLドメイン(Vκ)の組合せを含むとして同定される。列記した具体的VH/VL組合せの各々に関して、この定義は、言及されたVHアミノ酸配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するVHドメインと、言及されたVLアミノ酸配列と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するVLドメインの組合せにより形成された抗体又は抗原結合領域を含むとみなされなければならない。各場合において、言及されたVH及びVLアミノ酸配列に対し%配列同一性が規定されたVH及びVLドメインは、言及されたVH及びVLアミノ酸配列に存在するものと同じCDR配列を保持するが、フレームワーク領域内にアミノ酸配列変動を示すことができる。
【0074】
例証的実施態様において、この抗体又は抗原結合断片は、ヒトc-MetのSEMAドメイン中のペプチド
【化7】
内のエピトープに結合することができる。
【0075】
例証的実施態様において、この抗体又はその抗原結合断片は、ヒトc-Metタンパク質のHGF-媒介性活性化の厳密な拮抗物質であることができ、またヒトc-Metタンパク質のHGF-非依存性活性化を阻害することができ、且つ好ましくは細胞表面ヒトc-Metタンパク質の有意なダウンレギュレーションを誘導しない。
【0076】
一実施態様において、この抗体は、ヒト抗体、特にヒトIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4のCH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメイン及びCH3ドメインを含むことができる。
【0077】
更なる実施態様において、ヒトc-Metタンパク質に特異的に結合し、且つ好ましくはc-Met受容体のHGF-媒介性活性化の厳密な拮抗物質である、単離された抗体又はその抗原結合断片を提供し、この抗体は36C4Qの親和性バリアントであり、該親和性バリアントは、配列番号:88として示されたアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH)、並びに配列番号:156、配列番号:157、配列番号:158、配列番号:159、配列番号:160、配列番号:161、配列番号:162、配列番号:163及び配列番号:164からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL)を含む。
【0078】
例証的実施態様において、この抗体又はその抗原結合断片は、ヒトc-Metタンパク質のHGF-媒介性活性化の厳密な拮抗物質であることができ、またヒトc-Metタンパク質のHGF-非依存性活性化を阻害することができ、且つ好ましくは細胞表面ヒトc-Metタンパク質の有意なダウンレギュレーションを誘導しない。
【0079】
一実施態様において、この抗体は、ヒト抗体、特にヒトIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4のCH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメイン及びCH3ドメインを含むことができる。
【0080】
更なる実施態様において、単離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合断片を提供し、ここで該抗体又は抗原結合断片は、ヒトc-Metタンパク質に特異的に結合し、該抗体又は抗原結合断片は、重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを含み、該重鎖可変ドメインは、配列番号:48として示された配列と少なくとも85%配列同一性、又は少なくとも90%配列同一性、又は少なくとも95%配列同一性、又は少なくとも97%、98%若しくは99%配列同一性を伴うVH配列を含む。
【0081】
更なる実施態様において、該抗体又は抗原結合断片は、ヒトc-Metタンパク質に特異的に結合し、該抗体又は抗原結合断片は、重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを含み、該重鎖可変ドメインは、配列番号:48として示されたVHアミノ酸配列を含む、単離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0082】
更なる実施態様において、該抗体又は抗原結合断片は、ヒトc-Metタンパク質に特異的に結合し、該抗体又は抗原結合断片は、重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを含み、軽鎖可変ドメインは、配列番号:54として示された配列と少なくとも80%配列同一性、又は少なくとも85%配列同一性、又は少なくとも90%配列同一性、又は少なくとも95%配列同一性、又は少なくとも97%、98%若しくは99%配列同一性を伴うVλ配列を含む、単離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0083】
更なる実施態様において、該抗体又は抗原結合断片は、ヒトc-Metタンパク質に特異的に結合し、該抗体又は抗原結合断片は、重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを含み、該軽鎖可変ドメインは、配列番号:48として示されたVλアミノ酸配列を含む、単離された抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0084】
更なる実施態様において、ヒトc-Metタンパク質に特異的に結合し、且つ好ましくはc-Met受容体のHGF-媒介性活性化の厳密な拮抗物質である、単離された抗体又はその抗原結合断片を提供し、該抗体は、配列番号:48として示されたアミノ酸配列、又はそのヒト化若しくは親和性バリアントを含む重鎖可変ドメイン(VH)、及び配列番号:54として示されたアミノ酸配列、又はそのヒト化若しくは親和性バリアントを含む軽鎖可変ドメイン(VL)を含む。
【0085】
一実施態様において、この抗体は、ヒト抗体、特にヒトIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4のCH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメイン及びCH3ドメインを含むことができる。
【0086】
(48A2、38H10、40B8及びそれらのバリアント)
更なる実施態様において、ヒトc-Metタンパク質に特異的に結合する単離された抗体又はその抗原結合断片を提供し、該抗体又は抗原結合断片は、重鎖可変ドメインを含み、ここで該可変重鎖CDR3配列は、配列番号:15若しくは配列番号:18又はそれらの配列バリアントであり、ここで該配列バリアントは、列挙された配列中に1、2又は3個のアミノ酸置換(例えば、保存的置換、ヒト化置換又は親和性バリアント)を含む。
【0087】
本抗体又はその抗原結合断片の実施態様において、
該可変重鎖CDR3配列は、配列番号:15若しくは配列番号:18又はその配列バリアントであり;
該可変重鎖CDR2配列は、配列番号:XX3又はそれらの配列バリアントであり;及び
該可変重鎖CDR1配列は、配列番号:XX6又はそれらの配列バリアントであり、並びに、
ここで該配列バリアントは、列挙された配列中に1、2又は3個のアミノ酸置換(例えば、保存的置換、ヒト化置換又は親和性バリアント)を含む。
【0088】
本抗体又はその抗原結合断片の実施態様において、
該可変重鎖CDR3配列は、配列番号:15又はそらの配列バリアントであり;
該可変重鎖CDR2配列は、配列番号:14若しくはその配列バリアント又は配列番号:85若しくはその配列バリアントであり;及び
該可変重鎖CDR1配列は、配列番号:13又はその配列バリアントであり、並びに
ここで該配列バリアントは、列挙された配列中に1、2又は3個のアミノ酸置換(例えば、保存的置換、ヒト化置換又は親和性バリアント)を含む。
【0089】
本抗体又はその抗原結合断片の実施態様において、
該可変重鎖CDR3配列は、配列番号:18又はその配列バリアントであり;
該可変重鎖CDR2配列は、配列番号:17又はその配列バリアントであり;及び
該可変重鎖CDR1配列は、配列番号:16又はその配列バリアントであり、並びに
ここで該配列バリアントは、列挙された配列中に1、2又は3個のアミノ酸置換(例えば、保存的置換、ヒト化置換又は親和性バリアント)を含む。
【0090】
一実施態様において、本抗体又はその抗原結合断片は、更に軽鎖可変ドメインを含み、ここで
該可変軽鎖CDR3配列は、配列番号:YY1又はそれらの配列バリアントであり;
該可変軽鎖CDR2配列は、配列番号:YY3又はそれらの配列バリアントであり;及び
該可変軽鎖CDR1配列は、配列番号:YY5又はそれらの配列バリアントであり、並びに
ここで該配列バリアントは、列挙された配列中に1、2又は3個のアミノ酸置換(例えば、保存的置換、ヒト化置換又は親和性バリアント)を含む。
【0091】
本抗体又はその抗原結合断片の実施態様において、
該可変軽鎖CDR3配列は、配列番号:87又はその配列バリアント、配列番号:139又はその配列バリアント、及び配列番号:141又はその配列バリアントからなる群から選択され;
該可変軽鎖CDR2配列は、配列番号:23若しくはその配列バリアント又は配列番号:26若しくはその配列バリアントであり;及び
該可変軽鎖CDR1配列は、配列番号:86又はその配列バリアント、配列番号:137又はその配列バリアント、配列番号:138又はその配列バリアント、配列番号:140又はその配列バリアント、配列番号:142又はその配列バリアント、及び配列番号:143又はその配列バリアントからなる群から選択され、並びに
ここで該配列バリアントは、列挙された配列中に1、2又は3個のアミノ酸置換(例えば、保存的置換、ヒト化置換又は親和性バリアント)を含む。
【0092】
本抗体又はその抗原結合断片の実施態様において、
該可変軽鎖CDR3配列は、配列番号:24又はその配列バリアントであり;
該可変軽鎖CDR2配列は、配列番号:23又はその配列バリアントであり;及び
該可変軽鎖CDR1配列は、配列番号:22又はその配列バリアントであり、並びに
ここで該配列バリアントは、列挙された配列中に1、2又は3個のアミノ酸置換(例えば、保存的置換、ヒト化置換又は親和性バリアント)を含む。
【0093】
本抗体又はその抗原結合断片の実施態様において、
該可変軽鎖CDR3配列は、配列番号:27又はその配列バリアントであり;
該可変軽鎖CDR2配列は、配列番号:26又はその配列バリアントであり;及び
該可変軽鎖CDR1配列は、配列番号:25又はその配列バリアントであり、並びに
ここで該配列バリアントは、列挙された配列中に1、2又は3個のアミノ酸置換(例えば、保存的置換、ヒト化置換又は親和性バリアント)を含む。
【0094】
更なる実施態様において、該抗体又は抗原結合断片は、ヒトc-Metタンパク質に特異的に結合し、該抗体又は抗原結合断片は重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを含み、ここで:
該可変重鎖CDR3配列は、配列番号:15又はその配列バリアントであり;
該可変重鎖CDR2配列は、配列番号:14又はその配列バリアントであり;及び
該可変重鎖CDR1配列は、配列番号:13又はその配列バリアントであり、
該可変軽鎖CDR3配列は、配列番号:87又はその配列バリアントであり;
該可変軽鎖CDR2配列は、配列番号:23又はその配列バリアントであり;及び
該可変軽鎖CDR1配列は、配列番号:86又はその配列バリアントであり、並びに
ここで該配列バリアントは、列挙された配列中に1、2又は3個のアミノ酸置換(例えば、保存的置換、ヒト化置換又は親和性バリアント)を含む、単離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0095】
例証的実施態様において、この抗体又はその抗原結合断片は、ヒトc-Metタンパク質のPSI-IPT1領域中のペプチド
【化8】
内のエピトープに結合する。
【0096】
例証的実施態様において、この抗体又はその抗原結合断片は、ヒトc-Metタンパク質のHGF-媒介性活性化の厳密な拮抗物質であることができ、またヒトc-Metタンパク質のHGF-非依存性活性化を阻害することができ、且つ好ましくは細胞表面ヒトc-Metタンパク質の有意なダウンレギュレーションを誘導しない。
【0097】
一実施態様において、この抗体は、ヒト抗体、特にヒトIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4のCH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメイン及びCH3ドメインを含むことができる。
【0098】
更なる実施態様において、該抗体又は抗原結合断片は、ヒトc-Metタンパク質に特異的に結合し、該抗体又は抗原結合断片は、重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを含み、ここで:
該可変重鎖CDR3配列は、配列番号:15又はその配列バリアントであり;
該可変重鎖CDR2配列は、配列番号:14又はその配列バリアントであり;及び
該可変重鎖CDR1配列は、配列番号:13又はその配列バリアントであり;並びに
該軽鎖可変ドメインは:
(i)可変軽鎖CDR3配列が、配列番号:24又はその配列バリアントであり;
可変軽鎖CDR2配列が、配列番号:23又はその配列バリアントであり;及び
可変軽鎖CDR1配列が、配列番号:22又はその配列バリアントであり、並びに
ここで該配列バリアントは、列挙された配列中に1、2又は3個のアミノ酸置換(例えば、保存的置換、ヒト化置換又は親和性バリアント)を含むもの;又は
(ii)可変軽鎖CDR3配列が、配列番号:87又はその配列バリアントであり;
可変軽鎖CDR2配列が、配列番号:26又はその配列バリアントであり;及び
可変軽鎖CDR1配列が、配列番号:137又はその配列バリアントであり、並びに
ここで該配列バリアントは、列挙された配列中に1、2又は3個のアミノ酸置換(例えば、保存的置換、ヒト化置換又は親和性バリアント)を含むもの;又は
(iii)可変軽鎖CDR3配列が、配列番号:139又はその配列バリアントであり;
可変軽鎖CDR2配列が、配列番号:26又はその配列バリアントであり;及び
可変軽鎖CDR1配列が、配列番号:138又はその配列バリアントであり、並びに
ここで該配列バリアントは、列挙された配列中に1、2又は3個のアミノ酸置換(例えば、保存的置換、ヒト化置換又は親和性バリアント)を含むもの;又は
(iv)可変軽鎖CDR3配列が、配列番号:141又はその配列バリアントであり;
可変軽鎖CDR2配列が、配列番号:26又はその配列バリアントであり;及び
可変軽鎖CDR1配列が、配列番号:140又はその配列バリアントであり、並びに
ここで該配列バリアントは、列挙された配列中に1、2又は3個のアミノ酸置換(例えば、保存的置換、ヒト化置換又は親和性バリアント)を含むもの;又は
(v)可変軽鎖CDR3配列が、配列番号:141又はその配列バリアントであり;
可変軽鎖CDR2配列が、配列番号:26又はその配列バリアントであり;及び
可変軽鎖CDR1配列が、配列番号:142又はその配列バリアントであり、並びに
ここで該配列バリアントは、列挙された配列中に1、2又は3個のアミノ酸置換(例えば、保存的置換、ヒト化置換又は親和性バリアント)を含むもの;又は
(vi)可変軽鎖CDR3配列が、配列番号:87又はその配列バリアントであり;
可変軽鎖CDR2配列が、配列番号:26又はその配列バリアントであり;及び
可変軽鎖CDR1配列が、配列番号:86又はその配列バリアントであり、並びに
ここで該配列バリアントは、列挙された配列中に1、2又は3個のアミノ酸置換(例えば、保存的置換、ヒト化置換又は親和性バリアント)を含むもの;又は
(vii)可変軽鎖CDR3配列が、配列番号:87又はその配列バリアントであり;
可変軽鎖CDR2配列が、配列番号:26又はその配列バリアントであり;及び
可変軽鎖CDR1配列が、配列番号:143又はその配列バリアントであり、並びに
ここで該配列バリアントは、列挙された配列中に1、2又は3個のアミノ酸置換(例えば、保存的置換、ヒト化置換又は親和性バリアント)を含むもの:から選択されるCDRの組合せを含む、単離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0099】
例証的実施態様において、この抗体又はその抗原結合断片は、ヒトc-Metタンパク質のPSI-IPT1領域中のペプチド
【化9】
内のエピトープに結合する。
【0100】
例証的実施態様において、この抗体又はその抗原結合断片は、ヒトc-Metタンパク質のHGF-媒介性活性化の厳密な拮抗物質であることができ、またヒトc-Metタンパク質のHGF-非依存性活性化を阻害することができ、且つ好ましくは細胞表面ヒトc-Metタンパク質の有意なダウンレギュレーションを誘導しない。
【0101】
一実施態様において、この抗体は、ヒト抗体、特にヒトIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4のCH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメイン及びCH3ドメインを含むことができる。
【0102】
更なる実施態様において、該抗体又は抗原結合断片は、ヒトc-Metタンパク質に特異的に結合し、該抗体又は抗原結合断片は、重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを含み、
該可変重鎖CDR3配列は、配列番号:18又はその配列バリアントであり;
該可変重鎖CDR2配列は、配列番号:17又はその配列バリアントであり;及び
該可変重鎖CDR1配列は、配列番号:16又はその配列バリアントであり、
該可変軽鎖CDR3配列は、配列番号:27又はその配列バリアントであり;
該可変軽鎖CDR2配列は、配列番号:26又はその配列バリアントであり;及び
該可変軽鎖CDR1配列は、配列番号:25又はその配列バリアントであり、並びに
ここで該配列バリアントは、列挙された配列中に1、2又は3個のアミノ酸置換(例えば、保存的置換、ヒト化置換又は親和性バリアント)を含む、単離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0103】
例証的実施態様において、この抗体又はその抗原結合断片は、ヒトc-Metタンパク質のPSI-IPT1領域中のペプチド
【化10】
内のエピトープに結合する。
【0104】
例証的実施態様において、この抗体又はその抗原結合断片は、ヒトc-Metタンパク質のHGF-媒介性活性化の厳密な拮抗物質であることができ、またヒトc-Metタンパク質のHGF-非依存性活性化を阻害することができ、且つ好ましくは細胞表面ヒトc-Metタンパク質の有意なダウンレギュレーションを誘導しない。
【0105】
一実施態様において、この抗体は、ヒト抗体、特にヒトIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4のCH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメイン及びCH3ドメインを含むことができる。
【0106】
更なる実施態様において、該抗体又は抗原結合断片が、ヒトc-Metタンパク質に特異的に結合し、該抗体又は抗原結合断片は、重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを含み、該重鎖可変ドメインが、配列番号:49、108、110、112、114、116、118及び120からなる群から選択されるアミノ酸配列と、少なくとも85%配列同一性、又は少なくとも90%配列同一性、又は少なくとも95%配列同一性、又は少なくとも97%、98%若しくは99%配列同一性を伴うVH配列を含む、単離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0107】
更なる実施態様において、該抗体又は抗原結合断片は、ヒトc-Metタンパク質に特異的に結合し、該抗体又は抗原結合断片が、重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを含み、該重鎖可変ドメインは、配列番号:49、108、110、112、114、116、118及び120からなる群から選択されるVHアミノ酸配列を含む、単離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0108】
更なる実施態様において、該抗体又は抗原結合断片は、ヒトc-Metタンパク質に特異的に結合し、該抗体又は抗原結合断片は、重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを含み、該軽鎖可変ドメインは、配列番号:52、89、109、111、113、115、117、119、121、149、150、151、152、153、154、155、156及び157からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも75%配列同一性、又は少なくとも80%配列同一性、又は少なくとも85%配列同一性、又は少なくとも90%配列同一性、又は少なくとも95%配列同一性、又は少なくとも97%、98%若しくは99%配列同一性を伴うVκ配列を含む、単離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0109】
更なる実施態様において、該抗体又は抗原結合断片は、ヒトc-Metタンパク質に特異的に結合し、該抗体又は抗原結合断片は、重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを含み、該軽鎖可変ドメインは、配列番号:52、89、109、111、113、115、117、119、121、149、150、151、152、153、154、155、156及び157からなる群から選択されるVLアミノ酸配列を含む、単離された抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0110】
更なる実施態様において、該抗体又は抗原結合断片は、ヒトc-Metタンパク質に特異的に結合し、該抗体又は抗原結合断片は、重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを含み、該重鎖可変ドメインは、配列番号:49、108、110、112、114、116、118及び120からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも85%配列同一性、又は少なくとも90%配列同一性、又は少なくとも95%配列同一性、又は少なくとも97%、98%若しくは99%配列同一性を伴うVH配列を含み、且つ該軽鎖可変ドメインは、配列番号:52、89、109、111、113、115、117、119、121、149、150、151、152、153、154、155、156及び157からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも75%配列同一性、又は少なくとも80%配列同一性、又は少なくとも85%配列同一性、又は少なくとも90%配列同一性、又は少なくとも95%配列同一性、又は少なくとも97%、98%若しくは99%配列同一性を伴うVκ配列を含む、単離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0111】
例証的実施態様において、この抗体又はその抗原結合断片は、ヒトc-Metタンパク質のPSI-IPT1領域中のペプチド
【化11】
内のエピトープに結合する。
【0112】
例証的実施態様において、この抗体又はその抗原結合断片は、ヒトc-Metタンパク質のHGF-媒介性活性化の厳密な拮抗物質であることができ、またヒトc-Metタンパク質のHGF-非依存性活性化を阻害することができ、且つ好ましくは細胞表面ヒトc-Metタンパク質の有意なダウンレギュレーションを誘導しない。
【0113】
一実施態様において、この抗体は、ヒト抗体、特にヒトIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4のCH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメイン及びCH3ドメインを含むことができる。
【0114】
更なる実施態様において、該抗体又は抗原結合断片は、ヒトc-Metタンパク質に特異的に結合し、該抗体又は抗原結合断片は、配列番号:49と少なくとも85%配列同一性、又は少なくとも90%配列同一性、又は少なくとも95%配列同一性、又は少なくとも97%、98%若しくは99%配列同一性を伴うVH配列を含む重鎖可変ドメイン、及び配列番号:52として示されたアミノ酸配列又は配列番号:89として示されたアミノ酸配列と少なくとも75%配列同一性、又は少なくとも80%配列同一性、又は少なくとも85%配列同一性、又は少なくとも90%配列同一性、又は少なくとも95%配列同一性、又は少なくとも97%、98%若しくは99%配列同一性を伴うVκ配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL)を含む、単離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0115】
この抗体又は抗原結合領域は、配列番号:49のCDR1、CDR2及びCDR3と同一である重鎖CDR、並びに配列番号:89のCDR1、CDR2及びCDR3又は配列番号:52のCDR1、CDR2及びCDR3と同一である軽鎖CDRを含むが、フレームワーク領域内にアミノ酸配列変動を示すことができる。
【0116】
例証的実施態様において、この抗体又はその抗原結合断片は、ヒトc-Metタンパク質のPSI-IPT1領域中のペプチド
【化12】
内のエピトープに結合する。
【0117】
例証的実施態様において、この抗体又はその抗原結合断片は、ヒトc-Metタンパク質のHGF-媒介性活性化の厳密な拮抗物質であることができ、またヒトc-Metタンパク質のHGF-非依存性活性化を阻害することができ、且つ好ましくは細胞表面ヒトc-Metタンパク質の有意なダウンレギュレーションを誘導しない。
【0118】
一実施態様において、この抗体は、ヒト抗体、特にヒトIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4のCH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメイン及びCH3ドメインを含むことができる。
【0119】
更なる実施態様において、該抗体は、配列番号:49として示されたアミノ酸配列、又はそのヒト化若しくは親和性バリアントを含む重鎖可変ドメイン(VH)、及び配列番号:52として示されたアミノ酸配列若しくは配列番号:89として示されたアミノ酸配列、又はそれらのヒト化若しくは親和性バリアントを含む軽鎖可変ドメイン(VL)を含む、ヒトc-Metタンパク質に特異的に結合し、且つ好ましくはのc-Met受容体HGF-媒介性活性化の厳密な拮抗物質である、単離された抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0120】
例証的実施態様において、この抗体又はその抗原結合断片は、ヒトc-Metタンパク質のPSI-IPT1領域中のペプチド
【化13】
内のエピトープに結合する。
【0121】
例証的実施態様において、この抗体又はその抗原結合断片は、ヒトc-Metタンパク質のHGF-媒介性活性化の厳密な拮抗物質であることができ、またヒトc-Metタンパク質のHGF-非依存性活性化を阻害することができ、且つ好ましくは細胞表面ヒトc-Metタンパク質の有意なダウンレギュレーションを誘導しない。
【0122】
一実施態様において、この抗体は、ヒト抗体、特にヒトIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4のCH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメイン及びCH3ドメインを含むことができる。
【0123】
更なる実施態様において、該抗体又は抗原結合断片は、配列番号:49として示されたアミノ酸配列、又はそのヒト化若しくは親和性バリアントを含む重鎖可変ドメイン(VH)、及び配列番号:89として示されたアミノ酸配列、又はヒト化若しくは親和性バリアントを含む軽鎖可変ドメイン(VL)を含む、ヒトc-Metタンパク質に特異的に結合する、単離された抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0124】
例証的実施態様において、この抗体又はその抗原結合断片は、ヒトc-Metタンパク質のPSI-IPT1領域中のペプチド
【化14】
内のエピトープに結合する。
【0125】
例証的実施態様において、この抗体又はその抗原結合断片は、ヒトc-Metタンパク質のHGF-媒介性活性化の厳密な拮抗物質であることができ、またヒトc-Metタンパク質のHGF-非依存性活性化を阻害することができ、且つ好ましくは細胞表面ヒトc-Metタンパク質の有意なダウンレギュレーションを誘導しない。
【0126】
一実施態様において、この抗体は、ヒト抗体、特にヒトIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4のCH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメイン及びCH3ドメインを含むことができる。
【0127】
更なる実施態様において、該抗体は、抗体48A2の抗体のヒト生殖細胞系列化バリアントであり、該生殖細胞系列化バリアント抗体は:
(a)配列番号:108として示されたアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH)、及び配列番号:109として示されたアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL);又は
(b)配列番号:110として示されたアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH)、及び配列番号:111として示されたアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL);又は
(c)配列番号:112として示されたアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH)、及び配列番号:113として示されたアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL);又は
(d)配列番号:114として示されたアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH)、及び配列番号:115として示されたアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL);又は
(e)配列番号:116として示されたアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH)、及び配列番号:117として示されたアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL);又は
(f)配列番号:118として示されたアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH)、及び配列番号:119として示されたアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL);又は
(g)配列番号:120として示されたアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH)、及び配列番号:121として示されたアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL);又は
(h)配列番号:49として示されたアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH)、並びに配列番号:149、配列番号:150、配列番号:151、配列番号:152、配列番号:153、配列番号:154、配列番号:155、配列番号:156及び配列番号:157からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL):を含む、
ヒトc-Metタンパク質に特異的に結合し、且つ好ましくはのc-Met受容体HGF-媒介性活性化の厳密な拮抗物質である、単離された抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0128】
これらのバリアント48A2抗体又は抗原結合領域は、具体的アミノ酸配列を参照し定義されるVHドメインと、また具体的なアミノ酸配列を参照し定義されるVLドメイン(Vκ)の組合せを含むとして定義される。列記された具体的なVH/VL組合せの各々について、この定義は、言及されたVHアミノ酸配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するVHドメインと、言及されたVLアミノ酸配列と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するVLドメインの組合せにより形成される抗体又は抗原結合領域を含むと見なされるべきである。各場合において、言及されたVH及びVLアミノ酸配列との%配列同一性により定義されたVH及びVLドメインは、言及されたVH及びVLアミノ酸配列に存在するものと同一のCDR配列を保持する一方で、フレームワーク領域内のアミノ酸配列の変動を示すことができる。
【0129】
例証的実施態様において、この抗体又はその抗原結合断片は、ヒトc-Metタンパク質のPSI-IPT1領域中のペプチド
【化15】
内のエピトープに結合する。
【0130】
例証的実施態様において、この抗体又はその抗原結合断片は、ヒトc-Metタンパク質のHGF-媒介性活性化の厳密な拮抗物質であることができ、またヒトc-Metタンパク質のHGF-非依存性活性化を阻害することができ、且つ好ましくは細胞表面ヒトc-Metタンパク質の有意なダウンレギュレーションを誘導しない。
【0131】
一実施態様において、この抗体は、ヒト抗体、特にヒトIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4のCH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメイン及びCH3ドメインを含むことができる。
【0132】
更なる実施態様において、該抗体が参照抗体48A2の親和性バリアントであり、該親和性バリアント抗体が、配列番号:49として示されたアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH)、並びに配列番号:149、配列番号:150、配列番号:151、配列番号:152、配列番号:153、配列番号:154、配列番号:155、配列番号:156及び配列番号:157からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL)である、ヒトc-Metタンパク質に特異的に結合し、且つ好ましくはc-Met受容体のHGF-媒介性活性化の厳密な拮抗物質である、単離された抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0133】
例証的実施態様において、この抗体又はその抗原結合断片は、ヒトc-Metタンパク質のHGF-媒介性活性化の厳密な拮抗物質であることができ、またヒトc-Metタンパク質のHGF-非依存性活性化を阻害することができ、且つ好ましくは細胞表面ヒトc-Metタンパク質の有意なダウンレギュレーションを誘導しない。
【0134】
一実施態様において、この抗体は、ヒト抗体、特にヒトIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4のCH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメイン及びCH3ドメインを含むことができる。
【0135】
更なる実施態様において、該抗体は、配列番号:50として示されたアミノ酸配列、又はそのヒト化若しくは親和性バリアントを含む重鎖可変ドメイン(VH)、及び配列番号:53として示されたアミノ酸配列、又はそのヒト化若しくは親和性バリアントを含む軽鎖可変ドメイン(VL)を含む、ヒトc-Metタンパク質に特異的に結合し、且つ好ましくはc-Met受容体のHGF-媒介性活性化の厳密な拮抗物質である、単離された抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0136】
例証的実施態様において、この抗体又はその抗原結合断片は、ヒトc-Metタンパク質のHGF-媒介性活性化の厳密な拮抗物質であることができ、またヒトc-Metタンパク質のHGF-非依存性活性化を阻害することができ、且つ好ましくは細胞表面ヒトc-Metタンパク質の有意なダウンレギュレーションを誘導しない。
【0137】
一実施態様において、この抗体は、ヒト抗体、特にヒトIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4のCH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメイン及びCH3ドメインを含むことができる。
【0138】
(20A11、13E6、12G4)
更なる実施態様において、該抗体又は抗原結合断片は、重鎖可変ドメインを含み、ここで該可変重鎖CDR3配列は、可変重鎖CDR3配列が、配列番号:3、配列番号:6又は配列番号:9又はそれらの配列バリアントからなる群から選択され、ここで該配列バリアントは、列挙された配列中に1、2又は3個のアミノ酸置換(例えば、保存的置換、ヒト化置換又は親和性バリアント)を含む、ヒトc-Metタンパク質に特異的に結合する、単離された抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0139】
本抗体又はその抗原結合断片の一実施態様において、
該可変重鎖CDR3配列は、可変重鎖CDR3配列は、配列番号:3、配列番号:6又は配列番号:9又はそれらの配列バリアントからなる群から選択され;
該可変重鎖CDR2配列は、配列番号:XX1又はそれらの配列バリアントであり;及び
該可変重鎖CDR1配列は、配列番号:XX4又はそれらの配列バリアントであり、並びに
ここで該配列バリアントは、列挙された配列中に1、2又は3個のアミノ酸置換(例えば、保存的置換、ヒト化置換又は親和性バリアント)を含む。
【0140】
本抗体又はその抗原結合断片の一実施態様において、
該可変重鎖CDR3配列は、配列番号:3又はその配列バリアントであり;
該可変重鎖CDR2配列は、配列番号:2又はその配列バリアントであり;及び
該可変重鎖CDR1配列は、配列番号:1又はその配列バリアントであり、並びに
ここで該配列バリアントは、列挙された配列中に1、2又は3個のアミノ酸置換(例えば、保存的置換、ヒト化置換又は親和性バリアント)を含む。
【0141】
本抗体又はその抗原結合断片の一実施態様において、
該可変重鎖CDR3配列は、配列番号:6又はその配列バリアントであり;
該可変重鎖CDR2配列は、配列番号:5又はその配列バリアントであり;及び
該可変重鎖CDR1配列は、配列番号:4又はその配列バリアントであり、並びに
ここで該配列バリアントは、列挙された配列中に1、2又は3個のアミノ酸置換(例えば、保存的置換、ヒト化置換又は親和性バリアント)を含む。
【0142】
本抗体又はその抗原結合断片の一実施態様において、
該可変重鎖CDR3配列は、配列番号:9又はその配列バリアントであり;
該可変重鎖CDR2配列は、配列番号:8又はその配列バリアントであり;及び
該可変重鎖CDR1配列は、配列番号:7又はその配列バリアントであり、並びに
ここで該配列バリアントは、列挙された配列中に1、2又は3個のアミノ酸置換(例えば、保存的置換、ヒト化置換又は親和性バリアント)を含む。
【0143】
一実施態様において、本抗体又はその抗原結合断片は更に、軽鎖可変ドメインを含み、ここで
該可変軽鎖CDR3配列は、配列番号:YY2又はそれらの配列バリアントであり;
該可変軽鎖CDR2配列は、配列番号:YY4又はそれらの配列バリアントであり;及び
該可変軽鎖CDR1配列は、配列番号:YY6又はそれらの配列バリアントであり、並びに
ここで該配列バリアントは、列挙された配列中に1、2又は3個のアミノ酸置換(例えば、保存的置換、ヒト化置換又は親和性バリアント)を含む。
【0144】
本抗体又はその抗原結合断片の一実施態様において、
該可変軽鎖CDR3配列は、配列番号:36又はその配列バリアントであり;
該可変軽鎖CDR2配列は、配列番号:35又はその配列バリアントであり;及び
該可変軽鎖CDR1配列は、配列番号:34又はその配列バリアントであり、並びに
ここで該配列バリアントは、列挙された配列中に1、2又は3個のアミノ酸置換(例えば、保存的置換、ヒト化置換又は親和性バリアント)を含む。
【0145】
本抗体又はその抗原結合断片の一実施態様において、
該可変軽鎖CDR3配列は、配列番号:39又はその配列バリアントであり;
該可変軽鎖CDR2配列は、配列番号:38又はその配列バリアントであり;及び
該可変軽鎖CDR1配列は、配列番号:37又はその配列バリアントであり、並びに
ここで該配列バリアントは、列挙された配列中に1、2又は3個のアミノ酸置換(例えば、保存的置換、ヒト化置換又は親和性バリアント)を含む。
【0146】
本抗体又はその抗原結合断片の一実施態様において、
該可変軽鎖CDR3配列は、配列番号:42又はその配列バリアントであり;
該可変軽鎖CDR2配列は、配列番号:41又はその配列バリアントであり;及び
該可変軽鎖CDR1配列は、配列番号:40又はその配列バリアントであり、並びに
ここで該配列バリアントは、列挙された配列中に1、2又は3個のアミノ酸置換(例えば、保存的置換、ヒト化置換又は親和性バリアント)を含む。
【0147】
更なる実施態様において、該抗体又は抗原結合断片は、ヒトc-Metタンパク質に特異的に結合し、該抗体又は抗原結合断片は、重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを含み、ここで:
該可変重鎖CDR3配列は、配列番号:9又はその配列バリアントであり;
該可変重鎖CDR2配列は、配列番号:8又はその配列バリアントであり;及び
該可変重鎖CDR1配列は、配列番号:7又はその配列バリアントであり、
該可変軽鎖CDR3配列は、配列番号:42又はその配列バリアントであり;
該可変軽鎖CDR2配列は、配列番号:41又はその配列バリアントであり;及び
該可変軽鎖CDR1配列は、配列番号:40又はその配列バリアントであり、並びに
ここで該配列バリアントは、列挙された配列中に1、2又は3個のアミノ酸置換(例えば、保存的置換、ヒト化置換又は親和性バリアント)を含む、単離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0148】
例証的実施態様において、この抗体又はその抗原結合断片は、ヒトc-Metタンパク質のHGF-媒介性活性化の厳密な拮抗物質であることができ、またヒトc-Metタンパク質のHGF-非依存性活性化を阻害することができ、且つ好ましくは細胞表面ヒトc-Metタンパク質の有意なダウンレギュレーションを誘導しない。
【0149】
一実施態様において、この抗体は、ヒト抗体、特にヒトIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4のCH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメイン及びCH3ドメインを含むことができる。
【0150】
更なる実施態様において、該抗体又は抗原結合断片は、ヒトc-Metタンパク質に特異的に結合し、該抗体又は抗原結合断片は、重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを含み、ここで:
該可変重鎖CDR3配列は、配列番号:6又はその配列バリアントであり;
該可変重鎖CDR2配列は、配列番号:5又はその配列バリアントであり;及び
該可変重鎖CDR1配列は、配列番号:4又はその配列バリアントであり、
該可変軽鎖CDR3配列は、配列番号:39又はその配列バリアントであり;
該可変軽鎖CDR2配列は、配列番号:38又はその配列バリアントであり;及び
該可変軽鎖CDR1配列は、配列番号:37又はその配列バリアントであり、並びに
ここで該配列バリアントは、列挙された配列中に1、2又は3個のアミノ酸置換(例えば、保存的置換、ヒト化置換又は親和性バリアント)を含む、単離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0151】
例証的実施態様において、この抗体又はその抗原結合断片は、ヒトc-Metタンパク質のHGF-媒介性活性化の厳密な拮抗物質であることができ、またヒトc-Metタンパク質のHGF-非依存性活性化を阻害することができ、且つ好ましくは細胞表面ヒトc-Metタンパク質の有意なダウンレギュレーションを誘導しない。
【0152】
一実施態様において、この抗体は、ヒト抗体、特にヒトIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4のCH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメイン及びCH3ドメインを含むことができる。
【0153】
更なる実施態様において、該抗体又は抗原結合断片は、ヒトc-Metタンパク質に特異的に結合し、該抗体又は抗原結合断片は、鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを含み、ここで:
該可変重鎖CDR3配列は、配列番号:3又はその配列バリアントであり;
該可変重鎖CDR2配列は、配列番号:2又はその配列バリアントであり;及び
該可変重鎖CDR1配列は、配列番号:1又はその配列バリアントであり、
該可変軽鎖CDR3配列は、配列番号:36又はその配列バリアントであり;
該可変軽鎖CDR2配列は、配列番号:35又はその配列バリアントであり;及び
該可変軽鎖CDR1配列は、配列番号:34又はその配列バリアントであり、並びに
ここで該配列バリアントは、列挙された配列中に1、2又は3個のアミノ酸置換(例えば、保存的置換、ヒト化置換又は親和性バリアント)を含む、単離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0154】
例証的実施態様において、この抗体又はその抗原結合断片は、ヒトc-Metタンパク質のHGF-媒介性活性化の厳密な拮抗物質であることができ、またヒトc-Metタンパク質のHGF-非依存性活性化を阻害することができ、且つ好ましくは細胞表面ヒトc-Metタンパク質の有意なダウンレギュレーションを誘導しない。
【0155】
一実施態様において、この抗体は、ヒト抗体、特にヒトIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4のCH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメイン及びCH3ドメインを含むことができる。
【0156】
更なる実施態様において、該抗体又は抗原結合断片は、ヒトc-Metタンパク質に特異的に結合し、該抗体又は抗原結合断片は、重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを含み、ここで:
該重鎖可変ドメインは、配列番号:45、46及び47からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも85%配列同一性、又は少なくとも90%配列同一性、又は少なくとも95%配列同一性、又は少なくとも97%、98%若しくは99%配列同一性を伴うVH配列を含む、単離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0157】
更なる実施態様において、該抗体又は抗原結合断片は、ヒトc-Metタンパク質に特異的に結合し、該抗体又は抗原結合断片は、重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを含み、該重鎖可変ドメインは、配列番号:45、46及び47からなる群から選択されるVHアミノ酸配列を含む、単離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0158】
更なる実施態様において、該抗体又は抗原結合断片は、ヒトc-Metタンパク質に特異的に結合し、該抗体又は抗原結合断片は、重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを含み、該軽鎖可変ドメインは、配列番号:56、57及び58からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%配列同一性、又は少なくとも85%配列同一性、又は少なくとも90%配列同一性、又は少なくとも95%配列同一性、又は少なくとも97%、98%若しくは99%配列同一性を伴うVλ配列を含む、単離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0159】
更なる実施態様において、該抗体又は抗原結合断片は、ヒトc-Metタンパク質に特異的に結合し、該抗体又は抗原結合断片は、重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを含み、該軽鎖可変ドメインは、配列番号:56、57及び58からなる群から選択されるVλアミノ酸配列を含む、単離された抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0160】
更なる実施態様において、ヒトc-Metタンパク質に特異的に結合し、且つ好ましくはc-Met受容体のHGF-媒介性活性化の厳密な拮抗物質であり、該抗体は、配列番号:45として示されたアミノ酸配列、又はそのヒト化若しくは親和性バリアントを含む重鎖可変ドメイン(VH)、及び配列番号:56として示されたアミノ酸配列、又はそのヒト化若しくは親和性バリアントを含む軽鎖可変ドメイン(VL)を含む、単離された抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0161】
例証的実施態様において、この抗体又はその抗原結合断片は、ヒトc-Metタンパク質のHGF-媒介性活性化の厳密な拮抗物質であることができ、またヒトc-Metタンパク質のHGF-非依存性活性化を阻害することができ、且つ好ましくは細胞表面ヒトc-Metタンパク質の有意なダウンレギュレーションを誘導しない。
【0162】
一実施態様において、この抗体は、ヒト抗体、特にヒトIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4のCH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメイン及びCH3ドメインを含むことができる。
【0163】
更なる実施態様において、該抗体が、配列番号:46として示されたアミノ酸配列、又はそのヒト化若しくは親和性バリアントを含む重鎖可変ドメイン(VH)、及び配列番号:57として示されたアミノ酸配列、又はそのヒト化若しくは親和性バリアントを含む軽鎖可変ドメイン(VL)を含む、ヒトc-Metタンパク質に特異的に結合し、且つ好ましくはc-Met受容体のHGF-媒介性活性化の厳密な拮抗物質である、単離された抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0164】
例証的実施態様において、この抗体又はその抗原結合断片は、ヒトc-Metタンパク質のHGF-媒介性活性化の厳密な拮抗物質であることができ、またヒトc-Metタンパク質のHGF-非依存性活性化を阻害することができ、且つ好ましくは細胞表面ヒトc-Metタンパク質の有意なダウンレギュレーションを誘導しない。
【0165】
一実施態様において、この抗体は、ヒト抗体、特にヒトIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4のCH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメイン及びCH3ドメインを含むことができる。
【0166】
更なる実施態様において、該抗体が、配列番号:47として示されたアミノ酸配列、又はそのヒト化若しくは親和性バリアントを含む重鎖可変ドメイン(VH)、及び配列番号:58として示されたアミノ酸配列、又はそのヒト化若しくは親和性バリアントを含む軽鎖可変ドメイン(VL)含む、ヒトc-Metタンパク質に特異的に結合し、且つ好ましくはc-Met受容体のHGF-媒介性活性化の厳密な拮抗物質である、単離された抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0167】
例証的実施態様において、この抗体又はその抗原結合断片は、ヒトc-Metタンパク質のHGF-媒介性活性化の厳密な拮抗物質であることができ、またヒトc-Metタンパク質のHGF-非依存性活性化を阻害することができ、且つ好ましくは細胞表面ヒトc-Metタンパク質の有意なダウンレギュレーションを誘導しない。
【0168】
一実施態様において、この抗体は、ヒト抗体、特にヒトIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4のCH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメイン及びCH3ドメインを含むことができる。
【0169】
(34H7)
更なる実施態様において、該抗体又は抗原結合断片は、重鎖可変ドメインを含み、ここで該可変重鎖CDR3配列は、配列番号:73又はその配列バリアントであり、ここで該配列バリアントは、列挙された配列中に1、2又は3個のアミノ酸置換(例えば、保存的置換、ヒト化置換又は親和性バリアント)を含む、ヒトc-Metタンパク質に特異的に結合する、単離された抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0170】
本抗体又は抗原結合断片の一実施態様において、
該可変重鎖CDR3配列は、配列番号:73又はその配列バリアントであり;
該可変重鎖CDR2配列は、配列番号:72又はその配列バリアントであり;及び
該可変重鎖CDR1配列は、配列番号:71又はその配列バリアントであり、並びに
ここで該配列バリアントは、列挙された配列中に1、2又は3個のアミノ酸置換(例えば、保存的置換、ヒト化置換又は親和性バリアント)を含む。
【0171】
一実施態様において、本抗体又は抗原結合断片は更に、
該可変軽鎖CDR3配列は、配列番号:76又はその配列バリアントであり;
該可変軽鎖CDR2配列は、配列番号:75又はその配列バリアントであり;及び
該可変軽鎖CDR1配列は、配列番号:74又はその配列バリアントであり、並びに
ここで該配列バリアントは、列挙された配列中に1、2又は3個のアミノ酸置換(例えば、保存的置換、ヒト化置換又は親和性バリアント)を含む、軽鎖可変ドメインを含む。
【0172】
例証的実施態様において、6つの列挙された重鎖及び軽鎖CDR全てを含むこの抗体又はその抗原結合断片は、ヒトc-Metタンパク質のHGF-媒介性活性化の厳密な拮抗物質であることができ、またヒトc-Metタンパク質のHGF-非依存性活性化を阻害することができ、且つ好ましくは細胞表面ヒトc-Metタンパク質の有意なダウンレギュレーションを誘導しない。
【0173】
一実施態様において、この抗体は、ヒト抗体、特にヒトIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4のCH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメイン及びCH3ドメインを含むことができる。
【0174】
更なる実施態様において、該抗体又は抗原結合断片は、ヒトc-Metタンパク質に特異的に結合し、該抗体又は抗原結合断片は、重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを含み、該重鎖可変ドメインは、配列番号:77として示されたアミノ酸配列と少なくとも85%配列同一性、又は少なくとも90%配列同一性、又は少なくとも95%配列同一性、又は少なくとも97%、98%若しくは99%配列同一性を伴うVH配列を含む、単離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0175】
更なる実施態様において、該抗体又は抗原結合断片は、ヒトc-Metタンパク質に特異的に結合し、該抗体又は抗原結合断片は、重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを含み、該重鎖可変ドメインは、配列番号:77として示されたVHアミノ酸配列を含む、単離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0176】
更なる実施態様において、該抗体又は抗原結合断片は、ヒトc-Metタンパク質に特異的に結合し、該抗体又は抗原結合断片は、重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを含み、該軽鎖可変ドメインは、配列番号:78として示されたアミノ酸配列と少なくとも80%配列同一性、又は少なくとも85%配列同一性、又は少なくとも90%配列同一性、又は少なくとも95%配列同一性、又は少なくとも97%、98%若しくは99%配列同一性伴うVλ配列を含む、単離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0177】
更なる実施態様において、該抗体又は抗原結合断片は、ヒトc-Metタンパク質に特異的に結合し、該抗体又は抗原結合断片は、重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを含み、該軽鎖可変ドメインは、配列番号:78として示されたVLアミノ酸配列を含む、単離された抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0178】
更なる実施態様において、該抗体は、配列番号:77として示されたアミノ酸配列、又はそのヒト化若しくは親和性バリアントを含む重鎖可変ドメイン(VH)、及び配列番号:78として示されたアミノ酸配列、又はそのヒト化若しくは親和性バリアントを含む軽鎖可変ドメイン(VL)を含む、ヒトc-Metタンパク質に特異的に結合し、且つ好ましくはc-Met受容体のHGF-媒介性活性化の厳密な拮抗物質である、単離された抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0179】
例証的実施態様において、この抗体又はその抗原結合断片は、ヒトc-Metタンパク質のHGF-媒介性活性化の厳密な拮抗物質であることができ、またヒトc-Metタンパク質のHGF-非依存性活性化を阻害することができ、且つ好ましくは細胞表面ヒトc-Metタンパク質の有意なダウンレギュレーションを誘導しない。
【0180】
一実施態様において、この抗体は、ヒト抗体、特にヒトIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4のCH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメイン及びCH3ドメインを含むことができる。
【0181】
特定の抗体又は抗原結合領域が、具体的アミノ酸配列に関して定義されたVHドメイン、及び同じく具体的アミノ酸配列に関して定義されたVLドメイン(Vκ)の組合せを含むものとして同定される場合、列挙された具体的VH/VL組合せの各々に関して(特に指定しない限りは)、この定義は、言及されたVHアミノ酸配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、又は少なくとも99%配列同一性を有するVHドメイン、及び言及されたVLアミノ酸配列と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、又は少なくとも99%配列同一性を有するVLドメインの組合せにより形成される、抗体又は抗原結合領域を含むとみなすことができる。各場合において、言及されたVH及びVLアミノ酸配列に対する%配列同一性により定義されたVH及びVLドメインは、言及されたVH及びVLアミノ酸配列に存在するものと同じCDR配列を保持するが、フレームワーク領域内のアミノ酸配列変動を示すことができる。
【0182】
本出願において別に指定しない限りは、2つのアミノ酸配列間の%配列同一性は、最適な様式で並置され、且つそこで比較されるべきアミノ酸配列は、これら2つの配列間の最適なアラインメントのために参照配列に関して付加又は欠失を含むことができ、これら2つの配列を比較することにより決定することができる。%同一性は、アミノ酸残基が2つの配列間で同一である同一位置の数を決定し、この同一位置の数を比較ウインドウ内の位置の総数で除算し、且つこれら2つの配列間の%同一性を得るために、得られた結果を100倍することにより計算される。例えば、これはBLASTプログラム"BLAST 2 Sequences"(Tatusovaらの文献、「Blast 2 sequences−タンパク質配列及びヌクレオチド配列比較のための新規ツール(Blast 2 sequences - a new tool for comparing protein and nucleotide sequences)」、FEMS Microbiol Lett. 174:247-250)を使用し可能であり、このプログラムはサイトhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/gorf/bl2.html上で入手可能であり、且つ使用したパラメータは、デフォルトで供されたものであり(特にパラメータは、"オープンギャップペナルティ":5、及び"イクステンションギャップペナルティ":2;選択したマトリックスは、例えば、本プログラムにより提唱されたマトリックス"BLOSUM 62"である)、比較されるべき2つの配列間の%同一性は、本プログラムにより直接計算される。
【0183】
本明細書に提供するc-Met抗体又はその抗原結合断片は、各々、以下の特性/特徴の1以上、又は任意の組合せを示すことができる:
本抗体又は抗原結合断片は、c-Met受容体のHGF-非依存性活性化の阻害剤として作用することができる。
【0184】
本抗体又は抗原結合断片は、ヒトc-Metタンパク質のHGF-非依存性二量体化を、より特定するとホモ二量体化及び/又はヘテロ二量体化を阻害することができる。
【0185】
本抗体は、細胞表面上にヒトc-Metタンパク質を発現している細胞に対し、抗体依存性細胞性細胞傷害作用(ADCC)、補体依存性細胞傷害作用(CDC)及び抗体依存性細胞性貪食作用(ADCP)から選択された1以上のエフェクター機能を示すことができる。
【0186】
本抗体は、c-Met-中毒した(addicted)癌細胞に対しADCCを示すことができる。
【0187】
本抗体は、未変性のヒトFcドメインを含む等価抗体である参照抗体と比べ、増強されたADCC機能を示すことができる。非限定的実施態様において、ADCC機能は、未変性のヒトFcドメインを含む参照抗体と比べ、少なくとも10倍増強され得る。この文脈において「等価」とは、増強されたADCC機能を伴う抗体が、実質的に同一の抗原結合特異性を提示し、及び/又は(未変性のヒトFcに比べ)ADCCを増強する目的で何らかの改変が成されることを除き、参照抗体と同一のアミノ酸配列を共有することを意味するとみなすことができる。
【0188】
本抗体は、ヒトIgGの、最も好ましくはヒトIgG1のヒンジ領域、CH2ドメイン及びCH3ドメインを含むことができる。
【0189】
本抗体は、本明細書の別所に記載したように、Fc領域に改変を含むことができる。特に本抗体は、非-フコシル化IgGであることができる。
【0190】
更なる態様において、本発明はまた、前記c-Met抗体及びそれらの抗原結合断片をコードしているポリヌクレオチド分子、加えて該ポリヌクレオチドを含む発現ベクター、該ベクターを含む宿主細胞及びc-Met抗体の組換え発現/生成の方法を提供する。
【0191】
また更なる態様において、本発明は、前述のc-Met抗体及び医薬として許容し得る担体又は賦形剤を含有する医薬組成物を提供する。
【0192】
また更なる態様において、本発明は、特にHGF-依存性癌及びHGF-非依存性癌の両方を含む癌の治療における、前述のc-Met抗体を使用する医学治療の方法に関する。
【0193】
(定義)
「抗体」又は「免疫グロブリン」−本明細書で使用する用語「免疫グロブリン」は、何らかの関連のある特異的な免疫反応性を有するかどうかに関わらず、2本の重鎖及び2本の軽鎖の組合せを有するポリペプチドを含む。「抗体」とは、関心対象の抗原(例えばヒトc-Met)に対し有意な既知の特異的免疫反応活性を有するそのような集成体をいう。用語「c-Met抗体」は、ヒトc-Metタンパク質に関して免疫学的特異性を示す抗体を意味するように本明細書において使用する。本明細書の別所に記載するように、ヒトc-Metに関する「特異性」は、c-Metの種相同体との交差反応を除外しない。抗体及び免疫グロブリンは、軽鎖と重鎖の間の鎖内共有結合を伴う又は伴わずに、軽鎖及び重鎖で構成される。脊椎動物系の基本的免疫グロブリン構造は、かなり良く理解されている。
【0194】
一般的用語「免疫グロブリン」は、生化学的に区別することができる抗体の5つの別個のクラスを含む。抗体の5つのクラスは全て、本発明の範囲内であり、下記の考察は概して免疫グロブリン分子のIgGクラスに関する。IgGに関して、免疫グロブリンは、分子量およそ23,000ダルトンの2本の同一のポリペプチド軽鎖、及び分子量53,000〜70,000の2本の同一の重鎖を含む。これら4本の鎖は、「Y字」配置でジスルフィド結合により連結され、ここで軽鎖は、「Y字」の口で始まり且つ可変領域を通じて続く重鎖を腕木で支えている(bracket)。
【0195】
抗体の軽鎖は、カッパ又はラムダ(κ、λ)のいずれかとして分類される。各重鎖クラスは、κ軽鎖又はλ軽鎖のいずれかと結合される。一般に軽鎖及び重鎖は、互いに共有結合され、これら2本の重鎖の「尾」部は、共有ジスルフィド結合により、又は免疫グロブリンがハイブリドーマ、B細胞若しくは遺伝子操作された宿主細胞のいずれかにより作製される場合は非共有結合により、互いに結合されている。重鎖において、アミノ酸配列は、Y字配置の分岐端であるN-末端から、各鎖の底のC-末端へと並んでいる。当業者は、重鎖は、ガンマ、ミュー、アルファ、デルタ又はイプシロン(γ、μ、α、δ、又はε)として分類され、その一部はサブクラス(例えばγ1-γ4)に分類されることを理解するであろう。これは、抗体の「クラス」を、各々、IgG、IgM、IgA、gG、又はIgEと決定する鎖の性質である。免疫グロブリンサブクラス(アイソタイプ)、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1などは、良く特徴付けられ、機能的特化をもたらすことがわかっている。これらのクラス及びアイソタイプの各々の改変された型を、本開示を考慮し、当業者は容易に識別でき、従ってこれらは本発明の範囲内である。
【0196】
前述のように、抗体の可変領域は、その抗体が、抗原上のエピトープを選択的に認識し、且つ特異的に結合することを可能にする。すなわち、抗体のVLドメインとVHドメインは一緒に、三次元的に抗原結合部位を規定する可変領域を形成する。この4つ一組の抗体構造は、Y字の各アームの端に存在する抗原結合部位を形成する。より詳細には、抗原結合部位は、VH鎖及びVL鎖の各々の上の3つの相補性決定領域(CDR)により規定される。
【0197】
「c-Metタンパク質」又は「c-Met受容体」−本明細書で使用する用語「c-Metタンパク質」又は「c-Met受容体」又は「c-Met」は、互換的に使用し、且つその野生型で、肝細胞増殖因子(HGF)に結合する受容体チロシンキナーゼをいう。用語「ヒトc-Metタンパク質」又は「ヒトc-Met受容体」又は「ヒトc-Met」は、互換的に使用し、ヒト宿主において及び/又はヒト培養細胞株の表面に天然に発現された未変性のヒトc-Metタンパク質、更にはそれらの組換え型及び断片、並びにまた天然の突然変異型、多形体バリアント及び機能活性突然変異型を含む、ヒトc-Metをいう。ヒトc-Metの具体例は、例えば、GenBank寄託番号NM_000245で提供されたヌクレオチド配列によりコードされたヒトポリペプチド、又はGenBank寄託番号NP_000236で提供されたポリペプチド配列によりコードされたヒトタンパク質、又はそれらの細胞外ドメインを含む。1本鎖の前駆体c-Metタンパク質は、翻訳後切断され、α及びβサブユニットを生成し、これらはジスルフィド結合され、成熟型受容体を形成する。本明細書に提供するc-Met抗体は、典型的には、細胞表面上に発現された、例えばヒト胃細胞株MKN-45上に発現された成熟型ヒトc-Metタンパク質、及び組換えヒトc-Metタンパク質(例えば、R&D systems社から入手可能な組換え二量体c-Met、358-MT/CF)の両方に結合する。
【0198】
「結合部位」−本明細書で使用する用語「結合部位」は、関心対象の標的抗原(例えばヒトc-Met)への選択的結合に係わっているポリペプチドの領域を含む。結合ドメイン又は結合領域は、少なくとも1つの結合部位を含む。結合ドメインの例としては、抗体可変ドメインが挙げられる。本発明の抗体分子は、1つの抗原結合部位又は複数(例えば、2、3又は4つ)の抗原結合部位を含むことができる。
【0199】
「から誘導された」−本明細書で使用する用語である指定のタンパク質(例えばc-Met抗体又はその抗原結合断片)「から誘導された」とは、そのポリペプチドの起源をいう。一実施態様において、特定の出発ポリペプチドから誘導されたポリペプチド又はアミノ酸配列は、CDR配列又はそれらに関連した配列である。一実施態様において、特定の出発ポリペプチドから誘導されたアミノ酸配列は、近接していない。例えば一実施態様において、1、2、3、4、5又は6のCDRが、出発抗体から誘導される。一実施態様において、特定の出発ポリペプチド又はアミノ酸配列から誘導されるポリペプチド又はアミノ酸配列は、出発配列のアミノ酸配列又はそれらの部分と本質的に同一であるアミノ酸配列であって、ここで該部分は、少なくとも3〜5個のアミノ酸、少なくとも5〜10個のアミノ酸、少なくとも10〜20個のアミノ酸、少なくとも20〜30個のアミノ酸、又は少なくとも30〜50個のアミノ酸からなるアミノ酸配列、又はそうでなければ当業者が、出発配列にその起源を有するとして同定可能であるアミノ酸配列を有する。一実施態様において、出発抗体から誘導された1以上のCDR配列は、変更され、バリアントCDR配列、例えば親和性バリアントを生じ、ここで該バリアントCDR配列は、c-Met結合活性を維持している。
【0200】
「ラクダ科動物-由来の」−いくつかの好ましい実施態様において、本発明のc-Met抗体分子は、c-Met抗原によるラクダ科動物の能動免疫により生じたラクダ科動物通常型抗体から誘導されたフレームワークアミノ酸配列及び/又はCDRアミノ酸配列を含む。しかし、ラクダ科動物-由来のアミノ酸配列を含むc-Met抗体は、ヒトアミノ酸配列又は他の非-ラクダ科の哺乳動物種から誘導されたフレームワーク配列及び/又は定常領域配列を含むように操作することができる。例えば、ヒト又は非-ヒト霊長類フレームワーク領域、重鎖部分、及び/又はヒンジ部分を、対象のc-Met抗体に含むことができる。一実施態様において、1以上の非-ラクダ科動物アミノ酸が、「ラクダ科動物-由来の」c-Met抗体のフレームワーク領域に存在することができ、例えばラクダ科動物フレームワークアミノ酸配列は、その中に対応するヒト又は非-ヒト霊長類アミノ酸残基が存在する1以上のアミノ酸突然変異を含むことができる。更にラクダ科動物-由来のVHドメイン及びVLドメイン、又はそれらのヒト化されたバリアントは、ヒト抗体の定常ドメインに連結され、本明細書の別所に広く記載するキメラ分子を作製することができる。
【0201】
「保存的アミノ酸置換」−「保存的アミノ酸置換」は、その中のアミノ酸残基が、類似側鎖を持つアミノ酸残基で置き換えられているものである。類似側鎖を持つアミノ酸残基のファミリーは、当該技術分野において定義されており、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β-分枝側鎖(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)、及び芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を含む。従って免疫グロブリンポリペプチド内の非必須アミノ酸残基は、同じ側鎖ファミリーの別のアミノ酸残基と置き換えることができる。別の実施態様において、アミノ酸の列(string)は、側鎖ファミリーメンバーの順番及び/又は組成が異なる構造的に類似した列で置き換えることができる。
【0202】
「重鎖部分」−本明細書で使用する用語「重鎖部分」は、免疫グロブリン重鎖の定常ドメインから誘導されたアミノ酸配列を含む。重鎖部分を含むポリペプチドは、以下の少なくとも1つを含む:CH1ドメイン、ヒンジ(例えば、上部、中央、及び/又は下部ヒンジ領域)ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン、又はそれらのバリアント若しくは断片。一実施態様において、本発明の結合分子は、免疫グロブリン重鎖のFc部分(例えば、ヒンジ部分、CH2ドメイン、及びCH3ドメイン)を含むことができる。別の実施態様において、本発明の結合分子は、定常ドメインの少なくとも一部分(例えば、CH2ドメインの全て又は一部)を欠いている。いくつかの実施態様において、少なくとも1つ、及び好ましくは全ての定常ドメインが、ヒト免疫グロブリン重鎖から誘導されている。例えば好ましい一実施態様において、重鎖部分は、完全にヒトヒンジドメインを含む。別の好ましい実施態様において、重鎖部分は、完全にヒトFc部分(例えば、ヒト免疫グロブリン由来のヒンジ、CH2及びCH3ドメイン配列)を含む。いくつかの実施態様において、重鎖部分の構成的定常ドメインは、異なる免疫グロブリン分子に由来している。例えば、ポリペプチドの重鎖部分は、IgG1分子から誘導されたCH2ドメイン、及びIgG3又はIgG4分子から誘導されたヒンジ領域を含むことができる。他の実施態様において、定常ドメインは、異なる免疫グロブリン分子の部分を含むキメラドメインである。例えば、ヒンジは、IgG1分子由来の第一の部分、及びIgG3又はIgG4分子由来の第二の部分を含むことができる。先に示したように、当業者には、重鎖部分の定常ドメインは、天然の(野生型の)免疫グロブリン分子から、アミノ酸配列が変動するように、改変され得ることは理解されるであろう。すなわち、本明細書に開示された本発明のポリペプチドは、1以上の重鎖定常ドメイン(CH1、ヒンジ、CH2又はCH3)に、及び/又は軽鎖定常ドメイン(CL)に、変更又は改変を含むことができる。改変の例としては、1つ以上のドメイン内の1個以上のアミノ酸の付加、欠失又は置換が挙げられる。
【0203】
「キメラ」−「キメラ」タンパク質は、本来は天然には連結しない第二のアミノ酸配列に連結された第一のアミノ酸配列を含む。これらのアミノ酸配列は、融合ポリペプチドにおいて一緒にされた個別のタンパク質において正常に存在することができるか、或いはこれらは同じタンパク質内において正常に存在するが、融合ポリペプチド内では新たな並びで配置されることができる。キメラタンパク質は、例えば、キメラ合成によるか、又はその中にペプチド領域が所望の関係でコードされているポリヌクレオチドの作製及び翻訳により作製することができる。キメラc-Met抗体の例は、ヒト抗体、例えばヒトIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4の定常ドメインに融合された、ラクダ科動物-由来のVHドメイン及びVLドメイン、又はそれらのヒト化されたバリアントを含む融合タンパク質が挙げられる。
【0204】
「可変領域」又は「可変ドメイン」−用語「可変」とは、可変ドメインVH及びVLのある部分は、抗体間で配列が大きく異なるという事実をいい、且つ特定の抗体の各々のその標的抗原に対する結合及び特異性において使用される。しかしその可変性は、抗体の可変ドメインを通じて均等には分散していない。これは、抗原結合部位の一部を形成しているVLドメイン及びVHドメインの各々において「超可変ループ」と称される3つのセグメントに集中されている。Vλ軽鎖ドメインの第一、第二及び第三の超可変ループは、本明細書においてL1(λ)、L2(λ)及びL3(λ)と称され、且つVLドメインにおいて残基24-33(9、10又は11個のアミノ酸残基からなる、L1(λ))、49-53(3個の残基からなる、L2(λ))及び90-96(5個の残基からなる、L3(λ))を含むと定義され得る(Moreaらの文献、Methods, 20:267-279 (2000))。Vκ軽鎖ドメインの第一、第二及び第三の超可変ループは、本明細書において、L1(κ)、L2(κ)及びL3(κ)と称され、且つVLドメインにおいて残基25-33(6、7、8、11、12又は13個の残基からなる、L1(κ))、49-53(3個の残基からなる、L2(κ))及び90-97(6個の残基からなる、L3(κ))を含むと定義され得る(Moreaらの文献、Methods, 20:267-279 (2000))。VHドメインの第一、第二及び第三の超可変ループは、本明細書において、H1、H2及びH3と称され、且つVHドメインにおいて残基25-33(7、8又は9個の残基からなる、H1)、52-56(3又は4個の残基からなる、H2)及び91-105(長さが高度に変動する、H3)を含むと定義され得る(Moreaらの文献、Methods, 20:267-279 (2000))。
【0205】
用語L1、L2及びL3は、別に指摘されない限りは、各々、VLドメインの第一、第二及び第三の超可変ループを意味し、且つVκ及びVλ両アイソタイプから得られた超可変ループを包含している。用語H1、H2及びH3は、各々、VHドメインの第一、第二及び第三の超可変ループを意味し、且つγ、ε、δ、α又はμを含む、公知の重鎖アイソタイプのいずれかから得られた超可変ループを包含している。
【0206】
前述の超可変ループL1、L2、L3、H1、H2及びH3は、各々、以下に規定するように、「相補性決定領域」又は「CDR」の一部を含むことができる。超可変ループ(HV)は構造を基に規定されるのに対し、相補性決定領域(CDR)は配列可変性を基に規定されるので、用語「超可変ループ」と「相補性決定領域」は、厳密には同義語ではなく(Kabatらの文献、「免疫学的関心のあるタンパク質の配列(Sequences of Proteins of Immunological Interest)」、第5版、Public Health Service、米国国立衛生研究所(NIH)、ベセスダ、MD.、1983)、且つHVとCDRの境界は、一部のVHドメイン及びVLドメインにおいて異なることができる。
【0207】
前記VL及びVHドメインのCDRは、典型的には、下記のアミノ酸を含むと定義されることができる:軽鎖可変ドメイン中の残基24-34(CDRL1)、50-56(CDRL2)及び89-97(CDRL3)、並びに重鎖可変ドメイン中の残基31-35又は31-35b(CDRH1)、50-65(CDRH2)及び95-102(CDRH3);(Kabatらの文献、「免疫学的関心のあるタンパク質の配列」、第5版、Public Health Service、NIH、ベセスダ、MD.、(1991))。従ってこれらのHVは、対応するCDR内に含まれることができ、且つ別に指摘されない限りは、本明細書におけるVH及びVLドメインの「超可変ループ」の言及は、対応するCDRも包含すると解釈されなけばならず、その逆もまた同様である。
【0208】
可変ドメインのより高度に保存された部分は、以下に定義したように、フレームワーク領域(FR)と称される。未変性の重鎖及び軽鎖の可変ドメインは、各々、3つの超可変ループにより接続された、β-シート配置を主として採用している4つのFR(各々、FR1、FR2、FR3及びFR4)を含む。各鎖内の超可変ループは、これらのFRにより密に近接して保持され、且つ他方の鎖由来の超可変ループと一緒に、抗体の抗原結合部位の形成に貢献する。抗体の構造解析は、相補性決定領域により形成された結合部位の配列と形状の間の関係を明らかにした(Chothiaらの文献、J. Mol. Biol., 227:799-817 (1992));Tramontanoらの文献、J. Mol. Biol., 215:175-182 (1990))。それらの高度な配列可変性にもかかわらず、これら6つのループの5つは、「カノニカル構造」と称される、主鎖コンホメーションの小さいレパトアのみを採用している。これらのコンホメーションは、まず第一にループの長さにより決定され、且つ第二に、それらのパッキング、水素結合又は通常でない主鎖コンホメーションを推定する能力を通じ、コンホメーションを決定するループ内及びフレームワーク領域内の特定位置での重要残基の存在により決定される。
【0209】
「CDR」−本明細書で使用する用語「CDR」又は「相補性決定領域」は、重鎖及び軽鎖の両ポリペプチドの可変領域内に認められる近接していない抗原結合部位を意味する。これらの特定の領域は、Kabatらの文献、J. Biol. Chem. 252, 6609-6616 (1977)、及びKabatらの文献、「免疫学的関心のあるタンパク質の配列」(1991)、及びChothiaらの文献、J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987)、及びMacCallumらの文献、J. Mol. Biol. 262:732-745 (1996)に説明されており、そこでこれらの定義は、互いに比較した場合のアミノ酸残基の重複又はサブセットを含んでいる。先に引用した各参考文献により定義されたCDRを包含しているアミノ酸残基を、比較のために示す。好ましくは、用語「CDR」は、配列比較を基にKabatにより定義されるCDRである。
【0211】
「フレームワーク領域」−本明細書で使用する用語「フレームワーク領域」又は「FR領域」は、可変領域の一部であるが、CDRの一部ではない、アミノ酸残基を含む(例えば、CDRのKabat定義を使用する)。従って、可変領域フレームワークは、長さが約100〜120個のアミノ酸であるが、CDRの外側のそれらのアミノ酸のみを含む。重鎖可変領域の具体例及びKabatらにより定義されたCDRについて、フレームワーク領域1は、アミノ酸1-30を包含する可変領域のドメインに相当し;フレームワーク領域2は、アミノ酸36-49を包含する可変領域のドメインに相当し;フレームワーク領域3は、アミノ酸66-94を包含する可変領域のドメインに相当し、且つフレームワーク領域4は、アミノ酸103からその可変領域の末端までの可変領域のドメインに相当している。軽鎖のフレームワーク領域は同様に、軽鎖可変領域CDRの各々により隔てられている。同様に、Chothiaら又はMcCallumらによるCDRの定義を使用し、フレームワーク領域の境界は、先に説明したように、各CDR末端により隔てられる。好ましい実施態様において、CDRは、Kabatにより定義されている。
【0212】
抗体は水性環境においてその三次元立体配置を推定するので、天然の抗体において、各モノマー抗体中に存在する6つのCDRは、抗原結合部位を形成するように特異的に配置されているアミノ酸の短い近接しない配列である。重鎖及び軽鎖可変ドメインの残りは、アミノ酸配列においてより少ない内部分子の可変性を示し、且つフレームワーク領域と称される。これらのフレームワーク領域は大部分、β-シートコンホメーションを採用し、且つこれらのCDRは、β-シート構造に接続し、場合によってはβ-シート構造の一部を形成しているループを形成する。従ってこれらのフレームワーク領域は、鎖内非共有相互作用により正確に方向付けられた6つのCDRの配置を供するスカフォールドを形成するように働く。配置されたCDRにより形成された抗原結合部位は、免疫反応性抗原上のエピトープに対する表面相補性を規定する。この相補性表面は、免疫反応性抗原エピトープに対する抗体の非共有結合を促進する。当業者により、CDRの位置は、容易に同定され得る。
【0213】
「ヒンジ領域」−本明細書で使用する用語「ヒンジ領域」は、CH1ドメインをCH2ドメインに接続する重鎖分子の部分を含む。このヒンジ領域は、およそ25の残基を含み、且つ柔軟性があり、結果的に2つのN-末端抗原結合領域が独立して動くことを可能にしている。ヒンジ領域は、上部、中央、及び下部ヒンジドメインの3つの別のドメインに更に分割することができる(Rouxらの文献、J. Immunol. 1998 161:4083)。「完全にヒト」ヒンジ領域を含むc-Met抗体は、下記表2に示したヒンジ領域配列の一つを含むことができる。
【0215】
「CH2ドメイン」−本明細書で使用する用語「CH2ドメイン」は、慣習的番号付けスキームを使用し、例えば抗体のほぼ残基244から残基360まで伸びる重鎖分子の部分を含む(残基244から360、カバット番号付けシステム;及び、残基231-340、EU番号付けシステム、Kabat EAらの文献、「免疫学的関心のあるタンパク質の配列」、ベセスダ、US Department of Health and Human Services, NIH. 1991)。CH2ドメインは、別のドメインと密に対合しない点で独特である。むしろ、2つのN-連結した分岐した糖鎖が、無傷の未変性のIgG分子の2つのCH2ドメイン間に差し挟まれている。また、CH3ドメインは、CH2ドメインから、IgG分子のC-末端まで伸びていて、およそ108残基を含むことも良く実証されている。
【0216】
「断片」−用語「断片」とは、無傷の又は完全な抗体又は抗体鎖よりも、より少ないアミノ酸残基を含む抗体又は抗体鎖の一部又は部分をいう。用語「抗原結合断片」とは、抗原結合(すなわち、ヒトc-Metへの特異的結合)について、抗原に結合するか、又は無傷の抗体(すなわち、それらが誘導された無傷の抗体)と競合する、免疫グロブリン又は抗体のポリペプチド断片をいう。本明細書で使用する用語抗体分子の「断片」とは、抗体の抗原結合断片、例えば、抗体軽鎖可変ドメイン(VL)、抗体重鎖可変ドメイン(VH)、単鎖抗体(scFv)、F(ab’)2断片、Fab断片、Fd断片、Fv断片、単一ドメイン抗体断片(DAb)、1アーム(一価の)抗体、又はそのような抗原結合断片の組合せ、集成又は複合により形成された任意の抗原結合分子を含む。断片は、例えば、無傷の又は完全な抗体又は抗体鎖の化学処理若しくは酵素処理によるか、又は組換え手段により得ることができる。
【0217】
「結合価」−本明細書で使用する用語「結合価」とは、ポリペプチド中の可能性のある標的結合部位の数をいう。各標的結合部位は、1つの標的分子又は標的分子上の特異的部位に特異的に結合する。ポリペプチドが2以上の標的結合部位を含む場合、各標的結合部位は、同じ又は異なる分子に特異的に結合することができる(例えば、異なるリガンド又は異なる抗原、或いは同じ抗原上の異なるエピトープに結合することができる)。対象の結合分子は、好ましくはヒトc-Met分子に特異的な結合部位を少なくとも1つ有する。特定の実施態様において、本明細書に提供するc-Met抗体は、少なくとも二価であることができる。
【0218】
「特異性」−用語「特異性」とは、所与の標的、例えばc-Metと特異的に結合する(例えば免疫反応する)能力をいう。ポリペプチドは、単一特異性であり、且つ標的に特異的に結合する結合部位を1以上含むことができるか、又はポリペプチドは、多重特異性であり、且つ同じ又は異なる標的に特異的に結合する2以上の結合部位を含むことができる。一実施態様において、本発明の抗体は、2以上の標的に特異的である。例えば、一実施態様において、本発明の多重特異性結合分子は、腫瘍細胞上に発現されたc-Met及び第二の分子に結合する。腫瘍細胞上に発現された抗原に結合する抗原結合部位を含む抗体の例は、当該技術分野において公知であり、且つそのような抗体由来の1以上のCDRは、本発明の抗体に含むことができる。
【0219】
「合成の」−ポリペプチドに関して本明細書で使用する用語「合成の」は、天然ではないアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。例えば、天然ではないポリペプチドは、天然のポリペプチドの改変された形態であるか(例えば、付加、置換又は欠失などの突然変異を含む)、又は事実上天然には連結されない第二のアミノ酸配列(これは天然であってもなくてもよい)に、アミノ酸の線状配列で連結された第一のアミノ酸配列(これは天然であってもなくてもよい)を含む。
【0220】
「操作された」−本明細書で使用する用語「操作された」は、合成手段による(例えば、組換え技術、インビトロペプチド合成、ペプチドの酵素的又は化学的カップリング、又はこれらの技術のいくつかの組合せによる)、核酸又はポリペプチド分子の操作を含む。好ましくは、本発明の抗体は操作されており、例えば、ヒト化及び/又はキメラ抗体、並びに抗原結合、安定性及び/又は半減期又はエフェクター機能などの1以上の特性を改善するよう操作されている抗体を含む。
【0221】
「改変された抗体」−本明細書で使用する用語「改変された抗体」は、天然に生じないように改変された抗体の合成の形態を含み、例えば、少なくとも2つの重鎖部分を含むが2つの完全重鎖は含まない抗体(例えば、ドメイン欠失された抗体又はミニボディ(minibody));2以上の異なる抗原又は単独の抗原上の異なるエピトープに結合するように改変された抗体の多重特異性形態(例えば、二特異性、三特異性など);scFv分子に結合された重鎖分子などがある。scFv分子は、当該技術分野において公知であり、且つ例えば米国特許第5,892,019号に説明されている。加えて、用語「改変された抗体」は、抗体の多価の形態(例えば、同じ抗原の3以上のコピーに結合する三価、四価などの抗体)を含む。別の実施態様において、本発明の改変された抗体は、CH2ドメインを欠く少なくとも1の重鎖部分を含み、且つ受容体リガンド対の一員の結合部分を含むポリペプチドの結合ドメインを含む融合タンパク質である。
【0222】
用語「改変された抗体」は、c-Met抗体のアミノ酸配列バリアントを意味するように本明細書で使用することもできる。当業者には、c-Met抗体は、それが誘導されたc-Met抗体に比べ、アミノ酸配列が変動しているバリアントc-Met抗体を生じるように改変することができることは、理解されるであろう。例えば、保存的置換又は「非必須」アミノ酸残基での変化につながるヌクレオチド又はアミノ酸の置換を行うことができる(例えば、CDR及び/又はフレームワーク残基において)。アミノ酸置換は、1以上のアミノ酸の、天然の又は非天然のアミノ酸との置き換えを含むことができる。
【0223】
「ヒト化(humanising)置換」−本明細書で使用する用語「ヒト化置換」とは、VH又はVLドメイン抗体c-Met抗体(例えば、ラクダ科動物-由来のc-Met抗体)中の特定の位置に存在するアミノ酸残基が、参照ヒトVH又はVLドメイン中の同等の位置に生じるアミノ酸残基と置き換えられるアミノ酸置換をいう。参照ヒトVH又はVLドメインは、ヒト生殖細胞系列によりコードされたVH又はVLドメインであってよく、この場合置換された残基は、「生殖細胞系列化置換」と称される。ヒト化/生殖細胞系列化置換は、本明細書に定義されたように、c-Met抗体のフレームワーク領域及び/又はCDRに行うことができる。
【0224】
「親和性バリアント」−本明細書で使用する用語「親和性バリアント」とは、参照c-Met抗体と比べアミノ酸配列に1以上の変化を示す「バリアント抗体」をいい、ここで該親和性バリアントは、ヒトc-Metタンパク質について参照抗体と比べ改変された親和性を示す。典型的には、親和性バリアントは、ヒトc-Metについて参照c-Met抗体と比べ改善された親和性を示すであろう。この改善は、ヒトc-Metについてより低いK
D、又はヒトc-Metについてより早いオフレート(off-rate)、又は非-ヒトc-Met相同体との交差反応性のパターンの変更のいずれかであることができる。親和性バリアントは典型的には、参照c-Met抗体と比べ、CDRのアミノ酸配列に1以上の変化を示す。そのような置換は、CDRの所定の位置に存在する当初のアミノ酸の、天然のアミノ酸残基又は非天然のアミノ酸残基であってよい異なるアミノ酸残基との置き換えを生じることができる。このアミノ酸置換は、保存的又は非保存的であることができる。
【0225】
「高ヒト相同性」−重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含む抗体は、このVHドメイン及びVLドメインが一緒に、最も良くマッチしているヒト生殖細胞系列VH配列及びVL配列と少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を示す場合に、高ヒト相同性を有するとみなされるであろう。高ヒト相同性を有する抗体は、例えば、ラクダ科動物の通常型抗体のVH及びVLドメインを含む抗体、加えてそのような抗体の操作され、特にヒト化されたバリアント及びまた「完全にヒト」抗体を含む、ヒト生殖細胞系列配列と十分に高い%配列同一性を示す、未変性の非ヒト抗体のVH及びVLドメインを含む抗体を含むことができる。
【0226】
一実施態様において、高ヒト相同性を伴う抗体のVHドメインは、フレームワーク領域FR1、FR2、FR3及びFR4にわたり、1つ以上のヒトVHドメインと、80%以上のアミノ酸配列同一性又は配列相同性を示すことができる。他の実施態様において、本発明のポリペプチドのVHドメインと最も良くマッチしているヒト生殖細胞系列VHドメイン配列の間のアミノ酸配列同一性又は配列相同性は、85%以上、90%以上、95%以上、97%以上、又は最大99%若しくは100%でさえであることができる。
【0227】
一実施態様において、高ヒト相同性を伴う抗体のVHドメインは、フレームワーク領域FR1、FR2、FR3及びFR4にわたり、最も近いマッチしたヒトVH配列と比べ、1以上(例えば1〜10)のアミノ酸配列ミスマッチを含むことができる。
【0228】
別の実施態様において、高ヒト相同性を伴う抗体のVLドメインは、フレームワーク領域FR1、FR2、FR3及びFR4にわたり1つ以上のヒトVLドメインと、80%以上の配列同一性又は配列相同性を示すことができる。他の実施態様において、本発明のポリペプチドのVLドメインと最も近いマッチしたヒト生殖細胞系列VLドメイン配列の間のアミノ酸配列同一性又は配列相同性は、85%以上、90%以上、95%以上、97%以上、又は最大99%若しくは100%でさえであることができる。
【0229】
一実施態様において、高ヒト相同性を伴う抗体のVLドメインは、フレームワーク領域FR1、FR2、FR3及びFR4にわたり、最も近いマッチしたヒトVL配列と比べ、1以上(例えば1〜10)のアミノ酸配列ミスマッチを含むことができる。
【0230】
高ヒト相同性を伴う抗体と、ヒト生殖細胞系列VH及びVLの間の%配列同一性を解析する前に、そのカノニカルフォールドを決定することができ、このことは、H1及びH2又はL1及びL2(及びL3)に関するカノニカルフォールドの同一の組合せを伴うヒト生殖細胞系列セグメントファミリーの同定を可能にする。引き続き、関心対象の抗体の可変領域と最高度の配列相同性を有するヒト生殖細胞系列ファミリーのメンバーが、配列相同性のスコア化のために選択される。超可変ループL1、L2、L3、H1及びH2のショティア(Chothia)カノニカルクラスの決定は、ウェブページwww.bioinf.org.uk/abs/chothia.htmlの頁上で公に利用可能なバイオインフォマティクスツールにより実行することができる。このプログラムのアウトプットは、データファイルにおける重要残基の必要要件を示す。これらのデータファイルにおいて、重要残基の位置は、各位置で可能なアミノ酸と共に示される。関心対象の抗体の可変領域の配列は、インプットとして入力され、且つカバット(Kabat)番号付けスキームを割り当てるために、最初にコンセンサス抗体配列と並置される。このカノニカルフォールドの解析は、Martin及びThorntonにより開発された自動化された方法によりもたらされた重要残基鋳型のセットを使用する(Martinらの文献、J. Mol. Biol. 263:800-815 (1996))。
【0231】
H1及びH2又はL1及びL2(及びL3)に関するカノニカルフォールドの同じ組合せを使用する、公知の特定のヒト生殖細胞系列Vセグメントにより、配列相同性に関するベストマッチングファミリーメンバーを決定することができる。関心対象の抗体のVH及びVLドメインフレームワークアミノ酸配列と、ヒト生殖細胞系列によりコードされた対応する配列の間の%配列同一性は、バイオインフォマティクスツールにより決定することができるが、実際にはこれらの配列の手作業によるアラインメントも適用することができる。ヒト免疫グロブリン配列は、VBase (http://vbase.mrc-cpe.cam.ac.uk/)又はPluckthun/Honeggerデータベース(http://www.bioc.unizh.ch/antibody/Sequences/Germlines)のような、いくつかのタンパク質データベースから同定することができる。ヒト配列を関心対象の抗体のVH又はVLドメインのV領域と比較するために、配列アラインメントアルゴリズム、例えばwww.expasy.ch/tools/#alignなどのウェブサイトを介して利用可能なものを使用することができるが、同じく配列の限定されたセットとの手作業によるアラインメントも行うことができる。カノニカルフォールドの同じ組合せを持ち、且つ各鎖のフレームワーク領域1、2、及び3との最高度の相同性を伴うこれらのファミリーのヒト生殖細胞系列軽鎖及び重鎖配列が選択され、且つ関心対象の可変領域と比較され;またこのFR4は、ヒト生殖細胞系列JH及びJK又はJL領域に対してチェックされる。
【0232】
全体の%配列相同性の計算において、FR1、FR2及びFR3の残基は、カノニカルフォールドの同じ組合せを持つヒト生殖細胞系列ファミリーから最も近いマッチング配列を用いて評価されることに留意されたい。カノニカルフォールドの同じ組合せを持つ最も近いマッチングの又は同じファミリーの他のメンバーと異なる残基のみが、スコア化される(NB-プライマーにコードされた差異は除外する)。しかしヒト化の目的のためには、カノニカルフォールドの同じ組合せを有さない他のヒト生殖細胞系列ファミリーのメンバーと同じフレームワーク領域内の残基は、先に説明されるストリンジェントな条件に従い「ネガティブ」とスコア化されるという事実にもかかわらず、これらは「ヒト」と考えることができる。この前提は、Quと同僚(Quらの文献、Clin. Cancer Res. 5:3095-3100 (1999))並びにOnoと同僚(Ono らの文献、Mol. Immunol. 36:387-395 (1999))により研究されたように、FR1、FR2、FR3及びFR4の各々が、その最も近いマッチングのヒト生殖細胞系列配列と個別に比較され、その結果ヒト化された分子は、異なるFRの組合せを含むという、ヒト化のための「ミックス及びマッチ」法を基本にしている。個々のフレームワーク領域の境界は、ショティア番号付けスキームの改変である、IMGT番号付けスキームを用いて割り当てることができる(Lefrancらの文献、NAR, 27:209-212 (1999);http://imgt.cines.fr)。
【0233】
高ヒト相同性を伴う抗体は、以下に詳細に考察するように、ヒト又はヒト-様のカノニカルフォールドを有する超可変ループ又はCDRを含むことができる。一実施態様において、高ヒト相同性を伴う抗体のVHドメイン又はVLドメインのいずれかの中の少なくとも1つの超可変ループ又はCDRは、非ヒト抗体、例えばラクダ科の種由来の通常型抗体のVHドメイン又はVLドメインから得るか又は誘導することができ、その上ヒト抗体において生じるカノニカルフォールド構造と実質的に同一である予測された又は実際のカノニカルフォールド構造を示す。
【0234】
ヒト生殖細胞系列によりコードされたVHドメイン及びVLドメインの両方に存在する超可変ループの一次アミノ酸配列は、定義により、高度に可変性であるが、VHドメインのCDR H3以外の全ての超可変ループは、カノニカルフォールドと称されるわずかに数種類の独特な構造のコンホメーションを採用し(Chothiaらの文献、J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987);Tramontanoらの文献、Proteins, 6:382-94 (1989))、これは超可変ループの長さ及びいわゆるカノニカルアミノ酸残基の存在の両方に左右される(Chothiaらの文献、J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987))ことは、当該技術分野においてよく確立されている。無傷のVH又はVLドメイン中の超可変ループの実際のカノニカル構造は、構造解析(例えばX線結晶解析)により決定することができるが、特定の構造に特徴的である重要なアミノ酸残基を基に、カノニカル構造を予測することも可能である(以下に更に考察する)。本質的に、各々のカノニカル構造を決定する残基の特異的パターンは、そのカノニカル構造が未知の構造のVH又はVLドメインの超可変ループにおいて認められることを可能にする「署名(signature)」を形成し;その結果カノニカル構造は、一次アミノ酸配列だけを基に予測することができる。
【0235】
高ヒト相同性を伴う抗体中のいずれか所定のVH又はVL配列の超可変ループに関して予測されたカノニカルフォールド構造は、www.bioinf.org.uk/abs/chothia.html、www.biochem.ucl.ac.uk/~martin/antibodies.html、及びwww.bioc.unizh.ch/antibody/Sequences/Germlines/Vbase_hVk.htmlから公に利用可能であるアルゴリズムを用いて解析することができる。これらのツールは、クエリーVH又はVL配列を、公知のカノニカル構造のヒトVH又はVLドメイン配列に対して並置すること、並びにクエリー配列の超可変ループに関してカノニカル構造の予測を行うことを可能にする。
【0236】
VHドメインの場合、H1及びH2ループは、少なくとも下記の第一の判定基準、好ましくは両方の判定基準が満たされる場合、ヒト抗体において生じることがわかっているカノニカルフォールド構造と「実質的に同一の」カノニカルフォールド構造を有するものとして、スコア化することができる:
1.残基の数により決定された、最も近いマッチングのヒトカノニカル構造クラスと、同一の長さ、
2.対応するヒトH1及びH2のカノニカル構造クラスに関して説明された重要なアミノ酸残基との、少なくとも33%の同一性、好ましくは少なくとも50%の同一性。
(前述の解析を目的として、H1及びH2ループは、個別に処理され、且つ各々その最も近いマッチングのヒトカノニカル構造クラスに対し比較されることに留意されたい)。
【0237】
前記解析は、関心対象の抗体のH1及びH2ループのカノニカル構造の予測に頼っている。例えばX線結晶解析を基に関心対象の抗体のH1及びH2ループの実際の構造がわかっている場合は、関心対象の抗体のH1及びH2ループはまた、そのループの長さが最も近いマッチングのヒトカノニカル構造クラスの長さと異なる(典型的には±1又は±2個のアミノ酸)が、関心対象の抗体のH1及びH2ループの実際の構造がヒトカノニカルフォールドの構造とマッチする場合に、ヒト抗体において生じることがわかっているカノニカルフォールド構造と「実質的に同一の」カノニカルフォールド構造を有するものとしてスコア化することができる。
【0238】
ヒトVHドメインの第一及び第二の超可変ループ(H1及びH2)に関してヒトカノニカル構造クラスにおいて認められた重要なアミノ酸残基は、Chothiaらの文献(J. Mol. Biol. 227:799-817 (1992))に記載されており、この文献の内容はその全体が引用により本明細書中に組み込まれている。特に、引用により本明細書中に具体的に組み込まれているChothiaらの文献の802頁の表3は、ヒト生殖細胞系列において認められたH1カノニカル構造の重要な位置での好ましいアミノ酸残基を列記しているのに対し、同じく具体的に引用によりに組み込まれている803頁の表4は、ヒト生殖細胞系列において認められたCDR H2カノニカル構造の重要な位置での好ましいアミノ酸残基を列記している。
【0239】
一実施態様において、高ヒト相同性を伴う抗体のVHドメイン中のH1及びH2の両方は、ヒト抗体において生じるカノニカルフォールド構造と実質的に同一である予測された又は実際のカノニカルフォールド構造を示す。
【0240】
高ヒト相同性を伴う抗体は、そこで超可変ループH1及びH2が、少なくとも1つのヒト生殖細胞系列VHドメインにおいて生じることがわかっているカノニカル構造の組合せと同一であるカノニカルフォールド構造の組合せを形成するVHドメインを含むことができる。H1及びH2でのカノニカルフォールド構造のある種の組合せのみが、ヒト生殖細胞系列によりコードされたVHドメインにおいて実際に生じることが認められている。ある実施態様において、高ヒト相同性を伴う抗体のVHドメイン中のH1及びH2は、非ヒト種、例えばラクダ科種のVHドメインから得ることができ、その上ヒト生殖細胞系列又は体細胞変異されたVHドメインにおいて生じることがわかっているカノニカルフォールド構造の組合せと同一である予測された又は実際のカノニカルフォールド構造の組合せを形成する。非限定的実施態様において、高ヒト相同性を伴う抗体のVHドメイン中のH1及びH2は、非ヒト種、例えばラクダ科種のVHドメインから得ることができ、且つ下記のカノニカルフォールド組合せのひとつを形成する:1-1、1-2、1-3、1-6、1-4、2-1、3-1及び3-5。
【0241】
高ヒト相同性を伴う抗体は、ヒトVHと高い配列同一性/配列相同性の両方を示し、且つヒトVHと構造相同性を示す超可変ループを含むVHドメインを含むことができる。
【0242】
高ヒト相同性を伴う抗体のVHドメイン中のH1及びH2に存在するカノニカルフォールド、並びにそれらの組合せに関して、全体の一次アミノ酸配列の同一性の観点で、高ヒト相同性を伴う抗体のVHドメインと最も近いマッチングを示すヒトVH生殖細胞系列配列に関して「補正」されることは有利である。例として、最も近い配列マッチングがヒト生殖細胞系列のVH3ドメインとである場合、H1及びH2に関して、ヒトVH3ドメインにおいても自然に生じるカノニカルフォールドの組合せを形成することが有利であることができる。非ヒト種から誘導された高ヒト相同性を伴う抗体、例えば、ラクダ科動物の通常型抗体から誘導されたVH及びVLドメインを含む抗体、特にヒト化されたラクダ科動物のVH及びVLドメインを含む抗体の場合、このことは特に重要である。
【0243】
従って一実施態様において、高ヒト相同性を伴うc-Met抗体のVHドメインは、フレームワーク領域FR1、FR2、FR3及びFR4にわたりヒトVHドメインと80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、97%以上、又は最大99%若しくは100%でさえもの配列同一性又は配列相同性を示すことができ、且つ加えて、同じ抗体のH1及びH2は、非ヒトの(例えば、ラクダ科種から誘導された)VHドメインから得られるが、同じヒトVHドメインにおいて天然に生じることがわかっているカノニカルフォールド組合せと同じである予測された又は実際のカノニカルフォールド構造の組合せを形成する。
【0244】
他の実施態様において、高ヒト相同性を伴う抗体のVLドメインのL1及びL2は、各々、非ヒト種のVLドメイン(例えば、ラクダ科動物-由来のVLドメイン)から得られ、且つ各々、ヒト抗体において生じるカノニカルフォールド構造と実質的に同一である予測された又は実際のカノニカルフォールド構造を示す。
【0245】
前述のVHドメインと同様に、Vλ型及びVκ型の両方のVLドメインの超可変ループは、長さにより、及びあるカノニカル位置での重要なアミノ酸残基の存在によっても一部決定される、限られた数のコンホメーション又はカノニカル構造を採用することができる。
【0246】
高ヒト相同性を有する関心対象の抗体内の、非ヒト種、例えばラクダ科種のVLドメインから得られたL1、L2及びL3ループは、少なくとも下記の第一の判定基準、好ましくは両方の判定基準が満たされる場合、ヒト抗体において生じることがわかっているカノニカルフォールド構造と「実質的に同一の」カノニカルフォールド構造を有するものとして、スコア化することができる:
1.残基の数により決定された、最も近いマッチングのヒトの構造クラスと、同一の長さ、
2.Vλ又はVκレパトアのいずれかからの、対応するヒトL1又はL2のカノニカル構造クラスに関して説明された重要なアミノ酸残基との、少なくとも33%同一性、好ましくは少なくとも50%同一性。
(前述の解析を目的として、L1及びL2ループは、個別に処理され、且つ各々その最も近いマッチングのヒトカノニカル構造クラスに対し比較されることに留意されたい)。
【0247】
前記解析は、関心対象の抗体のVLドメインのL1、L2及びL3ループのカノニカル構造の予測に頼っている。例えばX線結晶解析を基にL1、L2及びL3ループの実際の構造がわかっている場合は、関心対象の抗体から誘導されたL1、L2又はL3ループはまた、そのループの長さが最も近いマッチングのヒトカノニカル構造クラスの長さと異なる(典型的には±1又は±2個のアミノ酸)が、これらのラクダ科ループの実際の構造がヒトカノニカルフォールドとマッチする場合に、ヒト抗体において生じることがわかっているカノニカルフォールド構造と「実質的に同一の」カノニカルフォールド構造を有するものとして、スコア化することができる。
【0248】
ヒトVλ及びVκドメインのCDRに関してヒトカノニカル構造クラスにおいて認められた重要なアミノ酸残基は、Moreaらの文献、Methods, 20: 267-279 (2000)、及びMartinらの文献、J. Mol. Biol., 263:800-815 (1996)に説明されている。同じくヒトVκドメインの構造的レパトアは、Tomlinsonらの文献、EMBO J. 14:4628-4638 (1995)に、並びにVλドメインの構造的レパトアは、Williamsらの文献、J. Mol. Biol., 264:220-232 (1996)に説明されている。これらの論文の全ての内容は、引用により本明細書中に組み込まれている。
【0249】
高ヒト相同性を伴う抗体のVLドメイン中のL1及びL2は、ヒト生殖細胞系列VLドメインにおいて生じることがわかっているカノニカルフォールド構造の組合せと同一である予測された又は実際のカノニカルフォールド構造の組合せを形成することができる。非限定的実施態様において、高ヒト相同性を伴う抗体(例えば、ラクダ科動物-由来のVLドメインを含む抗体又はそれらのヒト化されたバリアント)のVλドメイン中のL1及びL2は、下記のカノニカルフォールド組合せのひとつを形成することができる:11-7、13-7(A,B,C)、14-7(A,B)、12-11、14-11及び12-12(Williamsらの文献、J. Mol. Biol. 264:220-32 (1996)に規定され、且つhttp://www.bioc.uzh.ch/antibody/Sequences/Germlines/ VBase_hVL.htmlに示されている)。非限定的実施態様において、Vκドメイン中のL1及びL2は、下記のカノニカルフォールド組合せのひとつを形成することができる:2-1、3-1、4-1及び6-1(Tomlinsonらの文献、EMBO J. 14:4628-38 (1995)に規定され、且つhttp://www.bioc.uzh.ch/antibody/Sequences/Germlines/VBase_hVK.htmlに示されている)。
【0250】
更なる実施態様において、高ヒト相同性を伴う抗体のVLドメインのL1、L2及びL3の3つは全て、実質的なヒト構造を示すことができる。高ヒト相同性を伴う抗体のVLドメインは、ヒトVLと高い配列同一性/配列相同性の両方を示すこと、同じくVLドメイン中の超可変ループはヒトVLと構造相同性を示すことは好ましい。
【0251】
一実施態様において、高ヒト相同性を伴うc-Met抗体のVLドメインは、フレームワーク領域FR1、FR2、FR3及びFR4にわたりヒトVLドメインと80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、97%以上、又は最大99%若しくは100%でさえもの配列同一性を示すことができ、且つ加えて、超可変ループL1及び超可変ループL2は、同じヒトVLドメインにおいて天然に生じることがわかっているカノニカルフォールド組合せと同じである予測された又は実際のカノニカルフォールド構造の組合せを形成することができる。
【0252】
当然、ヒト-コードされたVH/VL対合と最大の配列及び構造の相同性を伴うVH/VL対合(ラクダ科動物-由来したVH/VL対合)を含む高ヒト相同性を伴う抗体を提供するために、ヒトVHと高い配列同一性/配列相同性及びまたヒトVHの超可変ループと構造相同性を示すVHドメインは、ヒトVLと高い配列同一性/配列相同性及びヒトVLの超可変ループと構造相同性を示すVLドメインと組合せられることが認識されている。
【0253】
「厳密な拮抗物質」−本明細書に定義されるように、c-Met受容体のHGF-媒介性活性化の「厳密な拮抗物質」は、以下の特性を有する:(1)c-Met受容体のHGF-媒介性活性化の拮抗物質であること、及び(2)有意な固有の作動活性を示さないこと。
【0254】
本明細書で使用する用語「c-Met受容体のHGF-媒介性活性化の拮抗物質」とは、適切なアッセイシステムにおいてHGF-依存性c-Met活性化/シグナル伝達を阻害することが可能である、c-Met抗体などの分子をいう。有効な拮抗物質抗体は、例えば、HGF-依存性c-Metリン酸化のアッセイ、又はHGF-誘導した腫瘍細胞増殖のアッセイ、細胞生存アッセイなどを含む、HGF-依存性c-Met活性化又はシグナル伝達を検出することが可能である少なくとも1つのアッセイシステムにおいて、HGF最大作用を少なくとも50%、又は少なくとも60%、又は少なくとも70%、又は少なくとも75%、又は少なくとも80%阻害することが可能であることができる。本明細書に提供するc-Met抗体はまた、得られた拮抗活性が、参照抗体c224G11(WO 2009/007427に説明されている)により得られる活性と少なくとも同じくらい強力である場合、c-Met受容体のHGF-媒介性活性化の強力な拮抗物質として認めることができ、この参照抗体は、配列番号:43として示されたアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメイン、及び配列番号:44として示されたアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメイン、及びヒンジ-改変されていない、すなわちヒトIgG1の野生型ヒンジ領域を含むヒト定常領域を含む、IgG1アイソタイプのマウス−ヒトキメラ抗体である。
【0255】
本明細書で使用する用語c-Met抗体の「固有の作動活性」とは、リガンドHGFの非存在下でc-Met受容体を活性化する抗体の能力をいう。固有の作動活性は、好適なアッセイシステム、例えば、HGFの存在下及び非存在下でのc-Metリン酸化のアッセイで試験することができる。一実施態様において、抗体は、HGFの非存在下で生じた作動作用が、同じアッセイシステムにおける最大HGF作用の20%より大きい、又は16%よりも大きい場合に、「有意な固有の作動活性」を示す。逆にc-Met抗体は、HGFの非存在下で生じた作動作用が、同じアッセイシステムにおける最大HGF作用の20%未満、又は16%未満、又は10%未満、又は5%未満である場合、有意な固有の作動活性を示さないとみなされる。例として、c-Met抗体の拮抗活性及び固有の作動活性は、HGFの存在下及び非存在下で細胞分散アッセイを実行することにより、評価することができる。「厳密な拮抗物質」抗体、すなわち有意な固有の作動活性を欠いているものは、典型的には、HGFの非存在下では検出可能な分散作用を生じないが、同じアッセイシステムにおいて、HGF-誘導した分散の強力な阻害を示すであろう。固有の作動活性はまた、本出願の実施例9に説明したリン酸化アッセイを用いて評価することもできる。c-Met抗体は好ましくは、このアッセイシステムにおいて、最大HGF作用の20%未満を示す。
【0256】
本明細書に提供するc-Met抗体はまた、HGFの非存在下で生じた作動作用が、参照抗体c224G11(WO 2009/007427に説明されている)により得られる作用と等しいか又はより低い場合、有意な固有の作動活性を示さないとみなされ、この参照抗体は、配列番号:43として示されたアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメイン、及び配列番号:44として示されたアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメイン、及びヒンジ-改変されていない、すなわちヒトIgG1の野生型ヒンジ領域を含むヒト定常領域を含む、IgG1アイソタイプのマウス−ヒトキメラ抗体である。
【0257】
先にまとめたように、本発明は、ヒトc-Met受容体タンパク質に特異的に結合する高ヒト相同性を有する単離された抗体(これはモノクローナル抗体であってよい)に関連し、ここで該抗体は、c-Met受容体のHGF-媒介性活性化の厳密な拮抗物質である。本発明のc-Met抗体及び抗体断片の特性及び特徴を、ここで更に詳細に説明する。
【0258】
(c-Met結合及び親和性)
ヒトc-Met受容体タンパク質に特異的に結合する高ヒト相同性を有する単離された抗体は、典型的には、ヒトc-Metについて、より特定するとヒトc-Metの細胞外ドメインについて、約10nM以下、又は1nM以下、又は0.1nM以下、又は10pM以下の結合親和性(K
D)を示し、且つ10
-3s
-1以下、又は10
-4s
-1以下のヒトc-Met結合の解離のオフレートを示すことができる。結合親和性(K
D)及び解離速度(k
off)は、付随する実施例に説明するように、例えば表面プラスモン共鳴(BIAcore)などの、当業者に周知の標準技法を用いて測定することができる。
【0259】
本明細書に記載のc-Met抗体は、ヒトc-Met、より詳細にはヒトc-Metの細胞外ドメインへの結合に関して免疫学的特異性を示すが、c-Metの非ヒト相同体との交差反応性は排除されない。c-Metの非ヒト霊長類相同体(例えば、アカゲザルc-Met)で示された結合親和性は、典型的には、ヒトc-Metの結合親和性よりも、1〜10倍、例えば5〜10倍より低い。
【0260】
(拮抗特性/作動特性)
別所記載のように、本明細書に提供するc-Met抗体は、先に示した定義に従い、ヒトc-Met受容体のHGF-媒介性活性化の「厳密な拮抗物質」である。これらの抗体は、最小の作動活性と共に、HGF-媒介性c-Met活性化の強力な拮抗性を示す。先に明らかにされているように(WO 2010/069765)、マウスモノクローナル抗体224G11のキメラ型における作動活性の獲得に付随するインビトロ拮抗活性の喪失は、インビボ拮抗活性の著しい喪失を生じ得るので、この高拮抗活性と最小固有の作動活性の間の均衡は、c-Met抗体の治療上の有用性には重要である。
【0261】
HGF-媒介性c-Met活性化の拮抗性及び/又はc-Met抗体の作動活性を試験するのに適している多くのインビトロ及びインビボアッセイは、当該技術分野において説明されており、且つ当業者は容易に利用可能であろう(例えば、WO 2010/059654、WO 2009/07427、WO 2010/069765、Pacchicinaらの文献、JBC、原稿M110.134031、2010年9月を参照し、そのようなアッセイに関する技術の教示は、引用により本明細書中に組み込まれている)。好適なアッセイは、例えば、分散アッセイ、創傷治癒アッセイ(wound healing assay)、増殖アッセイ、c-Metリン酸化アッセイ、分岐形態形成アッセイ、及び成長阻害/アポトーシスを基にしたアッセイを含む。
【0262】
(HGF-非依存性c-Met 活性化の阻害)
本明細書に提供するc-Met抗体は、c-Met受容体のHGF-非依存性活性化を阻害する能力を有することができる。c-Met受容体のHGF-非依存性活性化を試験するのに適したインビトロアッセイは、付随する実施例に説明している。
【0263】
特定の実施態様において、本c-Met抗体は、HGF-非依存性c-Met受容体活性化を阻害することができ、且つより詳細には、ヒト胃癌細胞株MKN-45においてc-MetのHGF-非依存性リン酸化を阻害することができる。特定の実施態様において、本c-Met抗体は、HGF-非依存性c-Met受容体活性化の少なくとも40%、又は少なくとも50%、又は少なくとも60%、又は少なくとも70%又は少なくとも80%阻害を示すことができる。より詳細には、本c-Met抗体は、リン酸化アッセイにより、例えばヒト胃細胞株MKN-45で実行される本明細書に記載のリン酸化アッセイにより測定して、c-MetのHGF-非依存性自己リン酸化の少なくとも40%、又は少なくとも50%、又は少なくとも60%、又は少なくとも70%又は少なくとも80%阻害を示すことができる。
【0264】
本c-Met抗体は、好ましくは、参照抗体c224G11と少なくとも同じ効力を示さなければならず、且つ好ましくは特にMKN-45細胞のリン酸化アッセイにより測定される場合、参照抗体c224G11よりもc-MetのHGF-非依存性活性化(自己リン酸化)のより強力な阻害を示さなければならない。いくつかの本明細書に提供されたc-Met抗体、特に36C4、48A2の抗原結合ドメインを含む抗体及びそれらの生殖細胞系列化バリアントは、参照抗体c224G11よりもc-MetのHGF-非依存性自己リン酸化のより強力な阻害物質であるが、依然参照抗体c224G11よりもHGF-依存性c-Met活性化の同等の(又はより良い)拮抗性を、並びに参照抗体c224G11よりも固有の作動活性のより低いレベルを発揮することが示されている。本明細書別所に注記するように、参照抗体c224G11(WO 2009/007427に説明された)は、配列番号:181として示されたアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメイン、及び配列番号:182として示されたアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメイン、及びヒンジ改変されない、すなわちヒトIgG1の野生型ヒンジ領域を含むヒト定常領域を含む、IgG1アイソタイプのマウス−ヒトキメラ抗体である。
【0265】
本明細書に提供するc-Met抗体はまた、このアッセイシステムにおいていかなる阻害も示していない参照抗体5D5よりも、c-MetのHGF-非依存性自己リン酸化の実質的により強力な阻害を示す。
【0266】
(c-Met二量体化の阻害)
本明細書に提供するc-Met抗体は、c-Met受容体の二量体化を阻害する能力を、及びより特定すると腫瘍細胞の細胞表面上に存在する膜結合型c-Met受容体のホモ二量体化及び/又はヘテロ二量体化を阻害する能力を示すことが好ましい。c-Met二量体化を阻害する抗体は、HGF-非依存性c-Met-関連した癌、加えてHGF-依存性活性化されたc-Met癌の治療において有用であるので、c-Met二量体化を阻害する能力は、c-Met抗体の治療上の有用性に関連している。c-Metのヘテロ二量体化は、Trusolinoらの文献、Nature Reviews, Molecular Cell Biology., 2010, 11: 834-848において考察されている。
【0267】
c-Met抗体のc-Met二量体化を阻害する能力を試験するのに適したアッセイは、当該技術分野において説明されており、且つ当業者には容易に利用可能であろう(例えば、WO 2009/07427及びWO 2010/069765を参照し、そのようなアッセイに関するこれらの技術的教示は引用により本明細書中に組み込まれている)。
【0268】
特定の実施態様において、c-Met抗体は、例えばEBC-1細胞などの、「Met-中毒」細胞株におけるc-Met二量体化の阻害を示すことができる。特に、c-Met抗体は、EBC-1細胞などのc-Met-中毒細胞株において、c-Met(ホモ)二量体化の少なくとも20%、又は少なくとも25%、又は少なくとも30%、又は少なくとも35%、又は少なくとも40%、又は少なくとも45%、又は少なくとも50%の阻害を示すことができる。「Met-中毒」の表現型は、Smolenらの文献、PNAS, vol.103, pp2316-2321, 2006に記載されているように、MET癌遺伝子の安定した染色体増幅を示す細胞株において起こる。
【0269】
(細胞表面c-Metタンパク質発現のダウンレギュレーション)
本明細書に提供するc-Met抗体は、細胞表面ヒトc-Metタンパク質の有意なダウンレギュレーションを誘導しないことが好ましい。所定のc-Met抗体の細胞表面ヒトc-Metタンパク質のダウンレギュレーションを誘導する能力は、例えばMKN-45などのc-Metを発現している細胞株においてフローサイトメトリーを使用し評価することができる。一実施態様において、本明細書に提供するc-Met抗体が、このアッセイシステムにおいてc-Metタンパク質の20%未満、又は15%未満、又は10%未満、又は5%未満のダウンレギュレーションを誘導する場合、これらは、細胞表面ヒトc-Metタンパク質の有意なダウンレギュレーションを誘導しないとみなされる。また本明細書に提供するc-Met抗体が、本明細書に記載の参照抗体c224G11と等しい又はより少ないc-Metタンパク質のダウンレギュレーションを誘導する場合も、これらは、細胞表面ヒトc-Metタンパク質の有意なダウンレギュレーションを誘導しないとみなされる。
【0270】
細胞表面c-Metタンパク質の有意なダウンレギュレーションを誘導しないc-Met抗体は、抗体エフェクター機能、すなわちADCC、CDC、ADCP、及び特に増強されたエフェクター機能から恩恵を受ける治療的適用に特に適し得る。細胞表面c-Metタンパク質の有意なダウンレギュレーションを誘導しないc-Met抗体は、インターナリゼーションされず、従ってインターナリゼーションされたc-Met抗体よりも有意により長く、細胞表面c-Metに結合され続けることができる。インターナリゼーションの低下した割合(又は有意なインターナリゼーションの欠如)は、ADCC、CDC又はADCPの少なくとも1つを介してエフェクター機能を示すc-Met抗体の、明確な利点である。従って、エフェクター機能(又は増強されたエフェクター機能)を示し、且つ細胞表面c-Metタンパク質の有意なダウンレギュレーションを誘導しない本明細書に記載のc-Met抗体は、いくつかの治療的適用、例えば、抗体エフェクター機能から恩恵を受ける癌治療に特に有利であることができる。
【0271】
(c-Metエピトープ)
本明細書に記載のc-Met抗体は、ヒトc-Metの細胞外ドメイン内のエピトープに結合し、且つHGFのc-Metの細胞外ドメインへの結合を、変動する程度でブロックする。
【0272】
本明細書に提供されたc-Met抗体のHGFのc-Metへの結合をブロックする能力は、競合アッセイにより測定することができる。典型的には、c-Met抗体は、HGFのc-Metへの結合をIC
50 0.5nM以下でブロックする。
【0273】
用語「エピトープ」とは、それに抗体又は抗体断片が結合するペプチド又はタンパク質上に配置されたアミノ酸の特異的配置をいう。エピトープは、アミノ酸又は糖側鎖などの分子の化学的に活性のある表面の基群(grouping)からなることが多く、且つ特異的な三次元構造の特徴に加え、特異的な電荷の特徴を有する。エピトープは、線状、すなわちアミノ酸の1つの配列への結合に関与するか、又はコンホメーション、すなわち必ずしも近接していない抗原の様々な領域において、アミノ酸の2以上の配列への結合に関与するかであることができる。
【0274】
本明細書に提供するc-Met抗体は、ヒトc-Metタンパク質の細胞外ドメイン内の異なる(重複又は非重複の)エピトープに結合することができる。
【0275】
本c-Met抗体のいくつかは、ヒトc-MetのSEMAドメイン内のエピトープに結合することができる。SEMAドメインは、成熟型ヒトc-Metタンパク質(
図25に示すようにシグナル配列を欠いている)のアミノ酸残基1-491内に含まれ、且つc-MetリガンドHGFへの結合部位を含むことが当該技術分野において認められている。
【0276】
一つの特定の実施態様において、本明細書に提供するc-Met抗体は、ヒトc-Metのペプチド
【化16】
内のエピトープに結合することができる。特に、36C4と記される抗体及びそれらの生殖細胞系列化バリアント及び親和性バリアントは全て、SEMAドメインのこのペプチド領域内のエピトープに結合する。SEMAドメインのこの領域は、c-MetリガンドHGFの結合部位を含むことがわかっているので、重要である。ヒトc-MetのSEMAドメイン内のこのペプチドエピトープに結合し、且つ細胞表面c-Metタンパク質の有意なダウンレギュレーションを誘導しない、c-Met抗体、例えば36C4の抗原結合領域を含む抗体又はそれらの生殖細胞系列化若しくは親和性バリアントは、特に有利である。そのような抗体は更に、ADCC、CDC及びADCPから選択された1以上のエフェクター機能、又は増強されたエフェクター機能を示す。
【0277】
本明細書に提供する他のc-Met抗体は、ヒトc-MetのIPT領域内のエピトープに結合することができる。このIPT領域は、シグナルペプチドを欠いている成熟型ヒトc-Metタンパク質のアミノ酸残基544-909を含むことがわかっている。IPT領域それ自身は、
図25に示したように、IPTドメイン1、2、3及び4に更に分割されている。エピトープマッピングにより、本明細書に記載のいくつかのc-Met抗体は、ヒトc-MetのIPTドメイン1-2内のエピトープに結合する(IPT-1は、成熟型ヒトc-Metのアミノ酸残基544-632を含み;IPT-2は、成熟型ヒトc-Metのアミノ酸633-717を含む)のに対し、他のものは、ヒトc-MetのIPTドメイン2-3内のエピトープに結合し(IPT-2は、成熟型ヒトc-Metのアミノ酸残基633-717を含み;IPT-3は、成熟型ヒトc-Metのアミノ酸残基718-814を含む)、並びに残りは、c-MetのIPTドメイン3-4内のエピトープに結合する(IPT-3は、成熟型ヒトc-Metのアミノ酸残基718-814を含み;IPT-4は、成熟型ヒトc-Metのアミノ酸残基815-909を含む)ことが決定された。
【0278】
IPTドメイン3-4は、リガンドHGFの高親和性結合部位を含むものとして同定されているが(例えば、引用により本明細書中に組み込まれている、EP 2119448を参照されたい)、今日まで、IPTドメイン3-4に結合し且つc-MetのHGF-媒介性活性化を拮抗することが可能な抗体は説明されていない。IPTドメイン、特にIPTドメイン1-2、2-3及び3-4へ結合するか、又はヒトc-MetのPSI-IPT領域へ結合する、強力で厳密な拮抗性のc-Met抗体がここで本明細書に提供される。重要なのは、これらの抗体は、本明細書に定義されるように高ヒト相同性を示すことができ、且つ著しく拮抗活性を損なうか又は作動活性を得ることなく、特にヒトIgG1アイソタイプの、完全にヒトヒンジ領域及びFcドメインを含む組換え型を提供することができる。更に本明細書に提供する他のc-Met抗体は、ヒトc-MetのIPT領域内の認識部位の一部又は全てを持つコンホメーションエピトープに結合することができる。
【0279】
特異的治療上の有用性は、c-Met抗体の、先に定義したIPTドメインへの、又はIPTドメイン間の接合部への、又はヒトc-MetのIPT領域内の認識部位の一部又は全てを持つコンホメーションエピトープへの標的化により達成することができる。
【0280】
本明細書に提供する他のc-Met抗体は、PSIドメインとIPTドメイン1の間の接合部にまたがるヒトc-Metの領域(PSI-IPT1)内のエピトープに結合することができる。ヒトc-MetのPSIドメインは、成熟型ヒトc-Metタンパク質(シグナルペプチドを欠いている)のアミノ酸残基492-543にまたがるのに対し、IPTドメイン1は、成熟型ヒトc-Metの残基544-632にまたがる。一つの特定の実施態様において、c-Met抗体は、ヒトc-Metタンパク質のPSI-IPT1領域内のアミノ酸配列
【化17】
内のエピトープに結合することができる。特に、本明細書において48A2と記されるc-Met抗体、並びに本明細書に記載の48A2の生殖細胞系列化バリアント及び親和性バリアントは、ヒトc-MetのこのPSI-IPT1ペプチド内のコンホメーションエピトープに結合することが明らかにされている。c-Met抗体のPSI-IPT1領域内のエピトープへの結合、及びより詳細には抗体48A2及びそのバリアントにより結合されたエピトープへの結合は、c-MetリガンドHGFのIPT領域内の結合部位への結合をブロックすること、及び通常HGFのc-Metへの結合に付随するコンホメーション変化を妨害することの両方により、作用をもたらすことができる。
【0281】
(ラクダ科動物-由来のc-Met抗体)
本発明の抗体は、ヒトc-Met抗原による、非近交系ラクダ科動物、例えばラマの能動免疫により得られた、VH及び/又はVLドメイン、又はそれらのCDRなどの、ラクダ科ファミリーの種のVHドメイン又はVLドメインから得られる、少なくとも1つの超可変ループ又は相補性決定領域を含むことができる。
【0282】
「ラクダ科ファミリーの種のVHドメイン又はVLドメインから得られる超可変ループ又は相補性決定領域」は、その超可変ループ(HV)又はCDRが、ラクダ科免疫グロブリン遺伝子によりコードされている超可変ループ又はCDRのアミノ酸配列と同一であるか、又は実質的に同一であるアミノ酸配列を有することを意味する。この文脈において、「免疫グロブリン遺伝子」は、生殖細胞系列遺伝子、再編成を受けている免疫グロブリン遺伝子、及び同じく体細胞変異された遺伝子を含む。従って、ラクダ科種のVH又はVLドメインから得られたHV又はCDRのアミノ酸配列は、成熟したラクダ科通常型抗体に存在するHV又はCDRのアミノ酸配列と同一であることができる。この文脈において用語「から得られた」とは、c-Met抗体のHV又はCDRは、ラクダ科免疫グロブリン遺伝子により当初コードされたアミノ酸配列(又はそれらの重要でないバリアント)を具現化するという意味での構造的関係を暗示している。しかしこれは、c-Met抗体の調製に使用される製造方法の観点から特定の関係を必ずしも暗示していない。
【0283】
ラクダ科動物-由来のc-Met抗体は、とりわけ、ラマ、ヒトコブラクダ、アルパカ、ヴィクーニャ、グアナコ又はラクダを含む、任意のラクダ科動物の種に由来することができる。
【0284】
ラクダ科動物-由来のVH及びVLドメイン、又はそれらのCDRを含むc-Met抗体は、典型的には組換えにより発現されたポリペプチドであり、且つキメラポリペプチドであることができる。用語「キメラポリペプチド」とは、そうでなければ近接して生じることのない2つ以上のペプチド断片の並立により作製される人工の(非天然の)ポリペプチドをいう。この定義に含まれるのは、例えばラクダ科動物とヒトのような、2以上の種によりコードされたペプチド断片の並立により作製された「種」キメラポリペプチドである。
【0285】
ラクダ科動物-由来のCDRは、配列番号:1-21、71-73若しくは83-85として示されたCDR配列(重鎖CDR)の1つ、又は配列番号:22-42、74-76、86、87若しくは137-148として示されたCDR配列(軽鎖CDR)の1つを含むことができる。
【0286】
一実施態様において、全VHドメイン及び/又は全VLドメインは、ラクダ科ファミリーの種から得ることができる。特定の実施態様において、ラクダ科動物-由来のVHドメインは、配列番号:45、46、47、48、49、50、51、77又は88として示されたアミノ酸配列を含むのに対し、ラクダ科動物-由来のVLドメインは、配列番号:52、53、54、55、56、57、58、78、89又は149-164として示されたアミノ酸配列を含む。次にラクダ科動物由来のVHドメイン及び/又はラクダ科動物由来のVLドメインは、1つ以上のアミノ酸の置換、挿入又は欠失がラクダ科動物アミノ酸配列に導入されるタンパク質操作に供される。これらの操作された変化は、ラクダ科動物配列に対するアミノ酸置換を含むことが好ましい。このような変化は、ラクダ科動物-コードされたVH又はVLドメイン中の1個以上のアミノ酸残基が、相同のヒト-コードされたVH又はVLドメイン由来の同等の残基と置き換えられる「ヒト化」又は「生殖細胞系列化(germlining)」を含む。
【0287】
ヒトc-Met抗原によるラクダ科動物(例えばラマ)の能動免疫により得られた単離されたラクダ科動物VH及びVLドメインは、本発明に従い抗原結合ポリペプチドを操作するための基礎として使用することができる。無傷のラクダ科動物VH及びVLドメインから出発し、この出発ラクダ科動物配列から逸脱する1つ以上のアミノ酸の置換、挿入又は欠失を操作することが可能である。いくつかの実施態様において、そのような置換、挿入又は欠失は、VHドメイン及び/又はVLドメインのフレームワーク領域中に存在することができる。一次アミノ酸配列におけるそのような変化の目的は、恐らく好ましくない特性(例えば、ヒト宿主における免疫原性(いわゆるヒト化)、可能性のある生成物の不均一性及び/又は不安定性の位置(グリコシル化、脱アミド化、異性体化など)を減らすか、或いはこの分子のいくつかの他の好ましい特性(例えば、溶解度、安定性、生物学的利用能など)を増強することである。別の実施態様において、一次アミノ酸配列の変化は、能動免疫により得られたラクダ科VH及び/又はVLドメインの1つ以上の超可変ループ(又はCDR)において操作することができる。このような変化は、抗原結合親和性及び/若しくは特異性を増強するために、又は恐らく好ましくない特性、例えばヒト宿主における免疫原性(いわゆるヒト化)、可能性のある生成物の不均一性及び/又は不安定性の位置、グリコシル化、脱アミド化、異性体化などを減少するために、或いはこの分子のいくつかの他の好ましい特性、例えば溶解度、安定性、生物学的利用能などを増強するために導入することができる。
【0288】
従って一実施態様において、本発明は、ラクダ科動物-由来のVH又はVLドメインと比べ、VHドメイン又はVLドメインのいずれかの少なくとも1つのフレームワーク又はCDR領域に少なくとも1つのアミノ酸置換を含む、バリアントc-Met抗体を提供し、その例は、配列番号:45、46、47、48、49、50、51、77又は88として示されたアミノ酸配列を含むラクダ科動物VHドメイン、及び配列番号:52、53、54、55、56、57、58、78、89又は149-164として示されたアミノ酸配列を含むラクダ科動物VLドメインを含むが、これらに限定されるものではない。
【0289】
他の実施態様において、ラクダ科動物-由来のVH及びVLドメイン(又はそれらの操作されたバリアント)並びに非ラクダ科動物の抗体由来の1つ以上の定常ドメイン、例えばヒト-コードされた定常ドメイン(又はそれらの操作されたバリアント)を含む、「キメラ」抗体分子を提供する。そのような実施態様において、VHドメイン及びVLドメインは両方とも、ラクダ科動物の同じ種から得ることが好ましく、例えば、VH及びVLの両方がラマ・グラマ由来であるか、又はVH及びVLの両方がラマ・パコス由来である(操作されたアミノ酸配列の変動の導入前)ことは好ましい。そのような実施態様において、VH及びVLドメインの両方は、単独の動物、特にヒトc-Met抗原により能動免疫化された単独の動物に由来することができる。
【0290】
ラクダ科VH及び/又はVLドメインの一次アミノ酸配列において変化を操作する代わりに、個別のラクダ科動物-由来の超可変ループ若しくはCDR、又はそれらの組合せを、ラクダ科動物VH/VLドメインから単離し、且つCDRグラフティングすることにより、代替(すなわち非ラクダ科)フレームワーク、例えばヒトVH/VLフレームワークへ移すことができる。特に非限定的実施態様において、ラクダ科動物-由来のCDRは、配列番号:1-21、71-73若しくは83-85として示されたアミノ酸配列を有するCDR(重鎖CDR)、又は配列番号:22-42、74-76、86、87若しくは137-148として示されたアミノ酸配列を有するCDR(軽鎖CDR)から選択することができる。
【0291】
ラクダ科動物-由来のVH及びVLドメイン、又はそれらのCDRを含むc-Met抗体は、VHドメイン及びVLドメインの両方が存在する様々な異なる実施態様をとることができる。本明細書において用語「抗体」は、最も広い意味で使用され、且つそれらがヒトc-Metタンパク質について適切な免疫学的特異性を示す限りは、モノクローナル抗体(完全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば二重特異性抗体)を包含するが、これらに限定されるものではない。本明細書において使用する用語「モノクローナル抗体」は、実質的に均質な抗体の集団から得られた抗体をいい、すなわちその集団を構成する個々の抗体は、少量存在し得る可能性のある天然の変異を除いて、同一である。モノクローナル抗体は、高度に特異性があり、単独の抗原部位に対し向けられている。更に、抗原上の異なる決定基(エピトープ)に対し向けられた様々な抗体を典型的には含む通常型(ポリクローナル)抗体調製品とは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の単独の決定基又はエピトープに対して向けられる。
【0292】
「抗体断片」は、完全長抗体の一部、一般にそれらの抗原結合又は可変ドメインを含む。抗体断片の例は、Fab、Fab'、F(ab')2、二重特異性Fab'、及びFv断片、ダイアボディ、線状抗体、単鎖抗体分子、単鎖可変部断片(scFv)、ドメイン抗体及び抗体断片から形成された多重特異性抗体を含む(Holliger及びHudsonの文献、Nature Biotechnol., 23:1126-36 (2005)を参照することとし、その内容は引用により本明細書中に組み込まれている。)。
【0293】
非限定的実施態様において、ラクダ科動物-由来のVH及びVLドメイン、又はそれらのCDRを含むc-Met抗体は、CH1ドメイン及び/又はCLドメインを含むことができ、それらのアミノ酸配列は、完全に又は実質的にヒトである。本発明の抗原結合ポリペプチドが、ヒト治療上の使用が意図された抗体である場合、これは、その抗体の定常領域全体、又は少なくともそれらの一部について典型的には、完全に又は実質的にヒトアミノ酸配列を有する。従って、CH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメイン、CH3ドメイン及びCLドメイン(並びに存在するならばCH4ドメイン)の1つ以上若しくは任意の組合せは、そのアミノ酸配列に関して完全に又は実質的にヒトであることができる。
【0294】
有利なことに、CH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメイン、CH3ドメイン及びCLドメイン(並びに存在するならばCH4ドメイン)は全て、完全に又は実質的にヒトアミノ酸配列を有することができる。ヒト化又はキメラ抗体、又は抗体断片の定常領域の文脈において、用語「実質的にヒト」とは、ヒト定常領域との少なくとも90%、又は少なくとも95%、又は少なくとも97%、又は少なくとも99%のアミノ酸配列同一性をいう。この文脈において用語「ヒトアミノ酸配列」は、生殖細胞系列、再編成された及び体細胞変異された遺伝子を含む、ヒト免疫グロブリン遺伝子によりコードされたアミノ酸配列をいう。本発明はまた、「完全にヒト」ヒンジ領域の存在が明確に必要とされるそれらの実施態様を除き、ヒト配列に関して1つ以上のアミノ酸の付加、欠失又は置換により変更されている「ヒト」配列の定常ドメインを含むポリペプチドも意図している。
【0295】
本発明のc-Met抗体中の「完全にヒト」ヒンジ領域の存在は、該抗体の免疫原性を最小化し且つ安定性を最適にするという両方の恩恵がある。
【0296】
本明細書の別所において考察するように、1つ以上のアミノ酸の置換、挿入又は欠失は、重鎖及び/又は軽鎖の定常領域内、特にFc領域内に作製されることが意図されている。アミノ酸置換は、置換されたアミノ酸の、異なる天然のアミノ酸との、又は非天然若しくは改変されたアミノ酸との置き換えを生じることができる。例えばグリコシル化パターンの変化(例えば、N-又はO-連結されたグリコシル化部位の付加又は欠失による)などの、他の構造上の改変も許される。抗体の意図された用途に応じて、Fc受容体へのその結合特性に関して本発明の抗体を改変すること、例えばエフェクター機能を調節することが望ましいことがある。例えば、システイン残基は、Fc領域に導入することができ、これによりこの領域内での鎖内ジスルフィド結合形成が可能になる。こうして作出されたホモ二量体型抗体は、改善されたインターナリゼーション能並びに/又は増強された補体媒介性細胞傷害作用及び抗体依存性細胞性細胞傷害作用(ADCC)を有し得る。Caronらの文献、J. Exp. Med. 176:1191-1195 (1992)及びShopes B.の文献、J. Immunol. 148:2918-2922 (1992)を参照されたい。あるいはc-Met抗体は、二重Fc領域を有し、且つこれにより増強された補体溶解能及びADCC能を有し得るよう、操作することができる。Stevensonらの文献、Anti-Cancer Drug Design, 3:219-230 (1989)を参照されたい。本発明はまた、化学療法薬、毒素(例えば、細菌、真菌、植物若しくは動物起源の酵素的に活性がある毒素、又はそれらの断片)、又は放射性同位元素(すなわち、放射性複合体)などの、細胞毒性物質に複合された、本明細書に記載の抗体を含む免疫複合体も意図している。またChan及びCarterにより説明されているように(引用により本明細書中に組み込まれている、Nature Reviews: Immunology, Vol.10, pp301-316, 2010)、Fc領域を、半減期を延長するように操作することもできる。
【0297】
本明細書に記載のように、タンパク質操作によりFc領域が改変されているバリアントc-Met抗体はまた、Fc改変を伴わない等価抗体(すなわち、等価抗原結合特性)と比べ、(例えば癌治療における)有効性の改善を示すことができる。
【0298】
更に別の実施態様において、Fc領域は、抗体依存性細胞性細胞傷害作用(ADCC)を媒介する抗体の能力を増大し、及び/又は1以上のアミノ酸の改変によりFcγ受容体に対する抗体の親和性を増加するように改変される。
【0299】
また別の実施態様において、該抗体のグリコシル化が改変される。例えば、無グリコシル化抗体を作製することができる(すなわち、抗体はグリコシル化されない)。グリコシル化は、例えば、c-Met標的抗原に対する抗体の親和性を増大するように、変更することができる。そのような糖改変は、例えば抗体配列内の1以上のグリコシル化部位の変更により達成することができる。例えば、1以上の可変領域フレームワークグリコシル化部位の排除を生じ、これによりその部位でのグリコシル化を排除する1以上のアミノ酸置換を行うことができる。そのような無グリコシル化は、抗原に対する抗体の親和性を増大することができる。
【0300】
またフコシル基の量が減少した低フコシル化抗体又は非フコシル化抗体(Natsumeらの文献、Drug Design Development and Therapy, Vol.3, pp7-16, 2009に説明されている)、又は増加した二分岐GlcNac構造を有する抗体などの、変更されたグリコシル化型を有するバリアントc-Met抗体が、想定されている。そのような変更されたグリコシル化パターンは、抗体のADCC活性を増大し、典型的には「未変性の」ヒトFcドメインを含む等価抗体と比べADCCの10倍の増強を生じることが明らかにされている。そのような糖改変は、例えば変更されたグリコシル化酵素機構を持つ宿主細胞において抗体を発現することにより達成することができる(Yamane-Ohnuki及びSatohの文献、mAbs 1:3, 230-236, 2009に説明されている)。
【0301】
c-Met抗体のまた更なる実施態様は、抗体のFc部分は、天然にエフェクター機能を欠いているか、又はヒトIgG1、例えば、ヒトIgG2若しくはヒトIgG4よりも著しくより弱いエフェクター機能を示すアイソタイプであるから、或いはArmour, K. L.らの文献(Eur. J. Immunol., 1999, 29: 2613-2624)に記載のように、抗体のFc部分が、エフェクター機能を低下するか又は実質的に排除するように操作されているからといういずれかの理由により、エフェクター機能を欠くことがある。
【0302】
また更なる実施態様において、c-Met抗体のFc部分は、異なる可変ドメインを含む2本の抗体重鎖が対合し二重特異性抗体のFc部分を形成する、二重特異性抗体の優先的形成を促進するように操作することができる。そのような改変の例は、Ridgway JB、Presta LG、Carter P.の文献、「重鎖ヘテロ二量体化のために抗体CH3ドメインの”ノブ-イントゥ-ホール”操作(“Knobs-into-holes” engineering of antibody CH3 domains for heavy chain heterodimerization)」、Protein Eng. 1996 Jul;9(7):617-21、及びMerchant AM、Zhu Z、Yuan JQ、Goddard A、Adams CW、Presta LG、Carter P.の文献「ヒト二重特異性IgGへの効率的経路(An efficient route to human bispecific IgG)」、Nat Biotechnol. 1998 Jul;16(7):677-81により説明された「ノブ-イントゥ-ホール(knobs-into-hole)」改変を含む。
【0303】
本発明は、いくつかの実施態様において、キメララクダ科/ヒト抗体、及び特にVH及びVLドメインが完全にラクダ科動物の配列(例えば、ラマ又はアルパカ)のものであり、且つその抗体の残りが完全にヒト配列のものであるキメラ抗体を包含している。c-Met抗体は、ラクダ科動物-由来のVH及びVLドメイン、又はそれらのCDRの「ヒト化」又は「生殖細胞系列化」バリアント、並びにVH及びVLドメインが、ヒトc-Met抗原によるラクダ科動物の能動免疫により得られたラクダ科動物VH及びVLドメインと比べ、そのフレームワーク領域内に1つ以上のアミノ酸置換を含む、ラクダ科動物/ヒトキメラ抗体を含むことができる。そのような「ヒト化」は、出発のラクダ科VH又はVLドメイン中のミスマッチしたアミノ酸残基を、ヒト生殖細胞系列-コードされたVH又はVLドメイン中に認められた等価残基と置き換えることにより、ヒト生殖細胞系列VH又はVLドメインとの%配列同一性を増大する。
【0304】
c-Met抗体はまた、ラクダ科動物抗体に、例えばヒトc-Metタンパク質による能動免疫により生じたラクダ科動物c-Met抗体に由来した、又はそうでなければラクダ科動物遺伝子によりコードされたCDR(又は超可変ループ)が、ヒトVH及びVLフレームワーク上にグラフティングされており、その抗体の残りも完全にヒト起源である、CDR-グラフティング抗体であることもできる。そのようなCDR-グラフティングc-Met抗体は、配列番号:1-21、71-73若しくは83-85として示されたアミノ酸配列を有するCDR(重鎖CDR)、又は配列番号:22-42、74-76、86、87若しくは137-148として示されたアミノ酸配列CDR(軽鎖CDR)を含むことができる。
【0305】
前述のヒト化、キメラ及びCDR-グラフティングc-Met抗体、特にヒトc-Met抗原によるラクダ科動物の能動免疫から誘導された超可変ループ又はCDRを含む抗体は、関心対象のポリペプチドを作出するように操作され、且つ非限定的に細菌細胞、酵母細胞、哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞を含む、原核宿主細胞又は真核宿主細胞を使用し、通常型組換えDNA操作及び発現技術を用い、容易に産生することができ、それらの一部は本明細書に説明され且つ付随する実施例において例示されている。
【0306】
ラクダ科動物-由来のc-Met抗体は、VHドメイン及び/又はVLドメインの超可変ループ又はCDRは、ヒトc-Metに対し生じた通常型ラクダ科動物抗体から得られるが、該(ラクダ科動物由来の)超可変ループ又はCDRの少なくとも1つは、ラクダ科動物-コードされた配列と比べ1つ以上のアミノ酸の置換、付加又は欠失を含むように操作されている、バリアントを含む。そのような変化は、超可変ループ/CDRの「ヒト化」を含む。この方式で操作されているラクダ科動物由来のHV/CDRは、ラクダ科動物-コードされたHV/CDRのアミノ酸配列と「実質的に同一」であるアミノ酸配列を依然示すことができる。この文脈において、「実質的同一性」とは、ラクダ科動物-コードされたHV/CDRとの、わずかに1つ、又はわずかに2つのアミノ酸配列ミスマッチを容認することができる。c-Met抗体の特定の実施態様は、配列番号:1-21、71-73若しくは83-85として示されたCDR配列(重鎖CDR)のヒト化されたバリアント及び/又は配列番号:22-42、74-76、86、87若しくは137-148として示されたCDR配列(軽鎖CDR)のヒト化されたバリアントを含むことができる。
【0307】
本明細書に提供するラクダ科動物-由来のc-Met抗体は、任意のアイソタイプであることができる。ヒト治療上の使用が意図された抗体は、典型的にはIgA、IgD、IgE、IgG、IgM型であり、頻繁にはIgG型であり、その場合これらは4種のサブ-クラスIgG1、IgG2a及びb、IgG3又はIgG4のいずれかに属することができる。これらのサブ-クラスの各々において、そのFc部分内に1つ以上のアミノ酸の置換、挿入若しくは欠失を生じるか、又は例えばFc-依存型機能性を増強若しくは低下させるために、他の構造上の改変を生じることが可能である。
【0308】
(ラクダ科動物-由来のVH及びVLドメインのヒト化(生殖細胞系列化))
ラクダ科動物通常型抗体は、引用により本明細書中に組み込まれているUS 12/497,239に考察されているように、以下の要因のために、ヒト治療薬としての有用性のある抗体の調製のための都合の良い出発点として提供する:
1)ラクダ科動物VH及びVLドメインとそれらのヒト対応物の間の高い%配列相同性;
2)ラクダ科動物VH及びVLドメインのCDRと、それらのヒト対応物(すなわち、ヒト-様カノニカルフォールド構造及びカノニカルフォールドのヒト-様組合せ)の間の高度な構造相同性。
【0309】
ラクダ科動物(例えばラマ)のプラットフォームはまた、得ることができるc-Met抗体の機能多様性に関して著しい利点を提供する。
【0310】
ヒト治療に関するラクダ科動物VHドメイン及び/又はラクダ科動物VLドメインを含むc-Met抗体の有用性は、例えば、それらのヒト宿主に対する免疫原性を少なくするために、天然のラクダ科動物VH及びVLドメインの「ヒト化」又は「生殖細胞系列化」により更に改善することができる。ヒト化の全般的目的は、ヒト対象へ導入された場合に、親のVH及びVLドメインにより形成された抗原結合部位の特異性及び親和性は維持しつつも、VH及びVLドメインが最小の免疫原性を示す分子を生じることである。
【0311】
ヒト化、いわゆる「生殖細胞系列化」の一つの手法は、ラクダ科動物VH又はVLドメインのアミノ酸配列において、これをヒトVH又はVLドメインの配列に近いものにする変化を操作することに関与している。
【0312】
ラクダ科動物VH(又はVL)ドメインとヒトVH(又はVL)ドメインの間の相同性の決定は、(所定のVH又はVLドメイン中の)変化されるべきラクダ科動物アミノ酸残基の選択及び適切な代替アミノ酸残基の選択の両方について、ヒト化プロセスの重要な工程である。
【0313】
ラクダ科動物通常型抗体をヒト化するための手法は、多数の新規ラクダ科動物VH(及びVL)ドメイン配列、典型的には標的抗原に結合することがわかっている体細胞変異されたVH(又はVL)ドメインの、ヒト生殖細胞系列VH(又はVL)配列、ヒトVH(及びVL)コンセンサス配列、加えてラマ・パコスから入手可能な生殖細胞系列配列情報とのアラインメントを基に、開発されている。
【0314】
以下の節は、(i)ラクダ科動物-由来のVH若しくはVLドメイン又はそれらのCDRにおける置き換えのための「ラクダ科動物」アミノ酸残基を選択すること、及び(ii)いずれか所定のラクダ科動物VH(又はVL)ドメインをヒト化する場合に、置換するための置き換え「ヒト」アミノ酸残基を選択すること:に適用することができる原理を概説している。この手法を使用し、配列番号:1-21、71-73若しくは83-85として示されたアミノ酸配列を有するラクダ科動物-由来のCDR(重鎖CDR)又は配列番号:22-42、74-76、86、87若しくは137-148として示されたアミノ酸配列を有するラクダ科動物-由来のCDR(軽鎖CDR)のヒト化されたバリアント、並びにまた配列番号:45-51、77若しくは88として示された配列を有するラクダ科動物-由来のVHドメインの及び配列番号:52-58、78、89若しくは149-164として示された配列を有するラクダ科動物-由来のVLドメインのヒト化のためのものを調製することができる。
【0315】
工程1. ヒト化されるべき成熟型ラクダ科動物配列と最高の相同性/同一性を示す、ヒト(生殖細胞系列)ファミリー及びこのファミリーのメンバーの選択。いずれか所定のラクダ科動物VH(又はVL)ドメインと最も近いマッチのヒト生殖細胞系列を同定するための全般的手順が、以下に概説されている。
工程2. 生殖細胞系列化に使用される特異的ヒト生殖細胞系列ファミリーメンバーの選択。これは、最高の相同性を伴う生殖細胞系列、又は同じファミリー由来の別の生殖細胞系列ファミリーメンバーであることが好ましい。
工程3. 選択されたヒト生殖細胞系列に最も近いラクダ科動物生殖細胞系列に関するアミノ酸利用の表を基にした生殖細胞系列化について考えられる好ましい位置の同定。
工程4. 最も近いヒト生殖細胞系列から逸脱しているラクダ科動物生殖細胞系列におけるアミノ酸を変更する試み;FR残基の生殖細胞系列化は、CDR残基よりも好ましい。
【0316】
a. 生殖細胞系列化に使用される選択されたヒト生殖細胞系列から逸脱している位置が好ましく、これについてラクダ科動物配列に認められたアミノ酸は、選択された生殖細胞系列とマッチせず、且つ同じサブクラスの他の生殖細胞系列においては認められない(Vに加えJコードされたFRアミノ酸の両方)。
b. 選択されたヒト生殖細胞系列ファミリーメンバーから逸脱しているが、同じファミリーの他の生殖細胞系列において使用される位置も、生殖細胞系列化プロセスにおいて扱うことができる。
c. 選択されたヒト生殖細胞系列への追加のミスマッチ(例えば、追加の体細胞突然変異に起因する)も、扱うことができる。
【0317】
以下の手法を使用し、所定のラクダ科動物VH(又はVL)ドメインについて、最も近いマッチのヒト生殖細胞系列を決定することができる:
ラクダ科とヒト生殖細胞系列VH及びVLの間の%配列同一性を分析する前に、それらのカノニカルフォールドを最初に決定することができ、これはH1及びH2又はL1及びL2(及びL3)についてカノニカルフォールドの同一の組合せを持つヒト生殖細胞系列セグメントのファミリーの同定を可能にする。引き続き、関心対象のラクダ科可変領域との最高度の配列相同性を有するヒト生殖細胞系列ファミリーメンバーを、配列相同性のスコア化のために選択する。超可変ループL1、L2、L3、H1及びH2のショティア(Chothia)カノニカルクラスの決定を、ウェブページwww.bioinf.org.uk/abs/chothia.htmlの頁において公に入手可能なバイオインフォマティクスツールにより実行することができる。このプログラムのアウトプットは、データファイルにおける重要な残基必要要件を示している。これらのデータファイルにおいて、重要な残基の位置が、各位置で容認されるアミノ酸と共に示される。該抗体の可変領域の配列は、インプットとして入力し、且つカバット(Kabat)番号付けスキームに割りあてるために、最初にコンセンサス抗体配列と並置する。カノニカルフォールドの分析は、Martin及びThorntonにより開発された自動化された方法(Martinらの文献、J. Mol. Biol. 263:800-815 (1996))により誘導された重要残基鋳型のセットを使用する。個々のフレームワーク領域の境界は、ショティアの番号付けスキームの改変であるIMGT番号付けスキーム(Lefrancらの文献、NAR 27: 209-212 (1999);http://imgt.cines.fr)を用いて割りあてることができる。
【0318】
H1及びH2又はL1及びL2(及びL3)についてのカノニカルフォールドの同じ組合せを使用する、既知の特定のヒト生殖細胞系列Vセグメントにより、配列相同性に関して最良のマッチングのファミリーメンバーを決定することができる。ラクダ科VH及びVLドメインフレームワークアミノ酸配列とヒト生殖細胞系列によりコードされた対応する配列の間の%配列同一性は、バイオインフォマティクスツールを用いて決定することができるが、配列の手作業のアラインメントも使用することができる。ヒト免疫グロブリン配列は、VBase(http://vbase.mrc-cpe.cam.ac.uk/)又はPluckthun/Honeggerデータベース(http://www.bioc.unizh.ch/antibody/Sequences/Germlines)などのいくつかのタンパク質データベースから同定することができる。ヒト配列をラクダ科VH又はVLドメインのV領域と比較するために、www.expasy.ch/tools/#alignなどのウェブサイトを介して入手可能であるような配列アラインメントアルゴリズムを使用することができるが、また手作業のアラインメントを、限定された配列セットで行うこともできる。カノニカルフォールドの同じ組合せ、並びに各鎖のフレームワーク領域1、2及び3との最高度の相同性を持つファミリーのヒト生殖細胞系列軽鎖及び重鎖配列を選択し、且つ関心対象のラクダ科可変領域と比較することができ;またFR4は、ヒト生殖細胞系列JH及びJK又はJL領域に対しチェックされる。
【0319】
全体の%配列相同性の計算において、FR1、FR2及びFR3の残基は、カノニカルフォールドの同一の組合せを持つヒト生殖細胞系列ファミリーからの最も近いマッチした配列を用いて評価されることに留意されたい。カノニカルフォールドの同じ組合せを持つ同じファミリーの最も近いマッチのメンバー又は他のメンバーとは異なる残基のみ、スコア化される(NB−何らかのプライマーでコードされた差異は除外される)。しかし、ヒト化の目的のためは、カノニカルフォールドの同一の組合せを有さない、他のヒト生殖細胞系列ファミリーのメンバーと同じフレームワーク領域の残基は、前述のストリンジェントな条件に従い「ネガティブ」とスコア化されるという事実にも関わらず、これらはヒト化のために考慮することができる。この仮定は、Qu及びその同僚(Quらの文献、Clin. Cancer Res. 5:3095-3100 (1999))及びOno及びその同僚(Onoらの文献、Mol. Immunol. 36:387-395 (1999))により実施されたように、FR1、FR2、FR3及びFR4の各々がその最も近いマッチしているヒト生殖細胞系列配列と個別に比較され、且つその結果ヒト化された分子は、異なるFRの組合せを含むという、ヒト化のための「ミックス及びマッチ」手法を基にしている。
【0320】
単に例として、配列番号:45-51、77又は88として示されたアミノ酸配列を持つVHドメインのヒト化されたバリアントは、下記表に列記された位置の1以上で生じるアミノ酸残基が、ヒトVHドメイン、例えばヒト生殖細胞系列-コードされたVHドメインにおいて同等の位置に生じるアミノ酸残基により置き換えられているバリアントを含むことができることが意図されている。適切なアミノ酸置換は、前述のヒト化に関する一般的プロトコールに従い、誘導することができる。
【0322】
単に例として、配列番号:52-58、78、89又は137-148として示されたアミノ酸配列を持つVLドメインのヒト化されたバリアントは、下記表に列記された位置の1以上で生じるアミノ酸残基が、ヒトVLドメイン、例えばヒト生殖細胞系列-コードされたVLドメインにおいて同等の位置に生じるアミノ酸残基により置き換えられているバリアントを含むことができることが意図されている。適切なアミノ酸置換は、前述のヒト化に関する一般的プロトコールに従い、誘導することができる。
【0324】
(交差競合する抗体)
本明細書に開示された分子と「交差競合する」モノクローナル抗体又はそれらの抗原結合断片は、本c-Met抗体が結合する部位と同一の、又はその部位と重複する部位でヒトc-Metに結合するものである。競合するモノクローナル抗体又はそれらの抗原結合断片は、例えば抗体競合アッセイにより、同定することができる。例えば、精製された又は部分的に精製されたヒトc-Metの試料は、固形支持体に結合することができる。次に本発明の抗体化合物又はそれらの抗原結合断片、及びそのような本発明の抗体化合物と競合し得ることが疑われるモノクローナル抗体又はそれらの抗原結合断片が添加される。これら2種の分子の一方は、標識されている。標識化合物及び非標識化合物が、c-Met上の個別の離れた部位に結合する場合、標識化合物は、疑わしい競合する化合物が存在するかどうかに関わらず、同じレベルで結合するであろう。しかしこの相互作用の部位が同じ又は重複する場合、非標識化合物は競合し、且つ該抗原に結合した標識化合物の量は減少するであろう。非標識化合物が過剰に存在する場合、結合するとしても非常にわずかな標識化合物が結合するであろう。本発明の目的のために、競合するモノクローナル抗体又はそれらの抗原結合断片は、本抗体化合物のc-Metへの結合を、約50%、約60%、約70%、約80%、約85%、約90%、約95%、又は約99%減少するものである。そのような競合アッセイを実行する手順の詳細は、当該技術分野において周知であり、且つ例えばHarlow及びLaneの著書「抗体、実験マニュアル(Antibodies, A Laboratory Manual)」、Cold Spring Harbor Laboratory Press社、コールドスプリングハーバー、ニューヨーク州、567-569頁、ISBN 0-87969-314-2(1988)において認めることができる。そのようなアッセイは、精製された抗体を用い、定量的に実行することができる。標準曲線は、1つの抗体の、それ自身に対する滴定により確立され、すなわち、標識物と競合物の両方で同じ抗体が使用される。非標識の競合するモノクローナル抗体又はそれらの抗原結合断片が、プレートへの標識分子の結合を阻害する能力が、滴定される。これらの結果は、プロットされ、所望の結合阻害度を達成するために必要な濃度が比較される。
【0325】
(c-Met抗体をコードしているポリヌクレオチド)
本発明はまた、本発明のc-Met抗体をコードしているポリヌクレオチド分子、同じく宿主細胞又は無細胞発現システムにおいて本抗原結合ポリペプチドの発現を可能にする調節配列に機能的に連結された本発明のc-Met抗体をコードしているヌクレオチド配列を含む発現ベクター、並びにこの発現ベクターを含む宿主細胞又は無細胞発現システムも提供する。
【0326】
特定の実施態様において、本発明のc-Met抗体をコードしているポリヌクレオチドは、その配列が、c-Met抗体のVH又はVLドメインをコードしている配列番号:59-70、79-82、90、91、122-135若しくは165-180として示されたポリヌクレオチド配列の1以上、又はc-Met抗体の機能性VH又はVLドメインをコードしているバリアント配列を含むことができ、ここで該バリアント配列は、配列番号:59-70、79-82、90、91、122-135若しくは165-180の1つと最適に並置される場合、少なくとも80%、85%、90%、95%、97%又は99%の配列同一性を示す。この文脈において、2つのポリヌクレオチド配列間の%配列同一性は、最適な様式で並置され、且つ比較されるべきポリヌクレオチド配列がこれら2つの配列間の最適アラインメントのための参照配列に関して付加又は欠失を含み得る、これら2つの配列を比較することにより決定することができる。%同一性は、これら2つの配列間でヌクレオチド残基が同一である同一位置の数を決定し、この同一位置の数を、比較ウインドウ内の位置の総数で除算し、且つこれら2つの配列間の同一性の比率を得るために、得られた結果に100を積算することにより、算出される。例えば、サイトhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/gorf/bl2.html上で入手可能であるBLASTプログラム、「BLAST 2 Sequences」(Tatusovaらの文献、「Blast 2 Sequences −タンパク質及びヌクレオチド配列の比較のための新規ツール(Blast 2 Sequences - a new tool for comparing protein and nucleotide sequences)」、FEMS Microbiol Lett. 174:247-250)を使用し、パラメータはデフォルトで示されたものを使用し(特にパラメータ"オープンギャップペナルティ":5、及び"イクステンションギャップペナルティ":2;選択されたマトリックスは、例えば本プログラムにより提唱されたマトリックス"BLOSUM 62")、比較されるべき2つの配列の間の%同一性を、このプログラムにより直接計算することが可能である。
【0327】
本発明のc-Met抗体をコードしているポリヌクレオチド分子は、例えば、組換えDNA分子を含む。用語「核酸」、「ポリヌクレオチド」又は「ポリヌクレオチド分子」は、本明細書において互換的に使用され、且つ1本鎖又は二本鎖のいずれかのDNA又はRNA分子、及び1本鎖の場合、その相補配列の分子をいう。核酸分子の考察において、特定の核酸分子の配列又は構造は、5'から3'方向で配列が提供される通常の慣習に従い本明細書において説明する。本発明の一部の実施態様において、核酸又はポリヌクレオチドは、「単離され」ている。この用語は、核酸分子に適用される場合、それが起源とする生物の天然のゲノム内でそれが直ぐ近接している配列から分離されている核酸分子をいう。例えば「単離された核酸」は、プラスミドベクター若しくはウイルスベクターなどのベクターに挿入されたDNA分子、又は原核細胞又は真核細胞若しくは非-ヒト宿主生物のゲノムDNAに組み込まれたDNA分子を含むことができる。RNAに適用される場合、用語「単離されたポリヌクレオチド」とは、主に先に定義された単離されたDNA分子によりコードされたRNA分子をいう。あるいは、この用語は、その自然の状態(すなわち細胞又は組織内)ではそれが会合されるであろう他の核酸から精製/分離されたRNA分子をいうことができる。単離されたポリヌクレオチド(DNA又はRNAのいずれか)は、生物学的手段又は合成手段により直接作製され、且つその作製時に存在する他の成分から分離された分子を更に表すことができる。
【0328】
本発明のc-Met抗体の組換え生成に関して、これをコードしている組換えポリヌクレオチドは、(標準の分子生物学的技術を用いて)調製され、且つ選択された宿主細胞、又は無細胞発現システムにおいて発現するために、複製可能なベクターに挿入されることができる。好適な宿主細胞は、原核細胞、酵母細胞、又はより高等な真核細胞、具体的には哺乳動物細胞であることができる。有用な哺乳動物宿主細胞株の例は、SV40により形質転換されたサル腎CV1株(COS-7、ATCC CRL 1651);ヒト胎児腎株(293細胞又は懸濁培養における増殖のために継代された293細胞、Grahamらの文献、J. Gen. Virol. 36:59 (1977));ベビーハムスター腎細胞(BHK、ATCC CCL 10);チャイニーズハムスター卵巣細胞/-DHFR(CHO、Urlaubらの文献、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4216 (1980));マウスセルトリ細胞(TM4、Matherの文献、Biol. Reprod. 23:243-251 (1980));マウス骨髄腫細胞SP2/0-AG14(ATCC CRL 1581;ATCC CRL 8287)又はNSO(HPAカルチャーコレクション番号85110503);サル腎細胞(CV1、ATCC CCL 70);アフリカミドリザル腎細胞(VERO-76、ATCC CRL-1587);ヒト子宮頸癌細胞(HELA、ATCC CCL 2);イヌ腎細胞(MDCK、ATCC CCL 34);バッファロー系ラット肝細胞(BRL 3A、ATCC CRL 1442);ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL 75);ヒト肝細胞(Hep G2、HB 8065);マウス乳癌(MMT 060562、ATCC CCL51);TRI細胞(Matherらの文献、Annals N. Y. Acad. Sci. 383:44-68 (1982));MRC 5細胞;FS4細胞;並びに、ヒト肝癌株(Hep G2)、更にはDSMのPERC-6細胞株である。これらの宿主細胞の各々における使用に適した発現ベクターも、概して当該技術分野において公知である。
【0329】
用語「宿主細胞」は一般に、培養された細胞株をいうことは留意しなければならない。本発明の抗原結合ポリペプチドをコードしている発現ベクターが導入されているヒト全体は、「宿主細胞」の定義から明白に除外される。
【0330】
(抗体産生)
重要な態様において、本発明はまた、c-Met抗体の発現が可能である条件下で、c-Met抗体をコードしているポリヌクレオチド(例えば発現ベクター)を含む宿主細胞(又は無細胞発現システム)を培養すること、及び発現されたc-Met抗体を回収することを含む、本発明のc-Met抗体を産生する方法を提供する。この組換え発現プロセスは、ヒト治療上の使用が意図されたモノクローナル抗体を含む、本発明のc-Met抗体の大規模製造において使用することができる。インビボ治療上の使用に適した組換え抗体の大規模製造に好適なベクター、細胞株及び製造プロセスは、一般に、当該技術分野において入手可能であり、且つ当業者には周知であろう。
【0331】
(c-Met抗体の治療的有用性)
本明細書に提供するc-Met抗体は、HGF-依存性及びHGF-非依存性の両方の癌の治療に使用することができる。
【0332】
c-Metの不適切な活性化は、特異的な遺伝子病変、転写のアップレギュレーション又はリガンド-依存性オートクリン若しくはパラクリン機構により誘導される(Comoglioらの文献、Nature Reviews Drug Discovery, 7:504-516,2008)。本c-Met抗体により治療され得るHGF-依存性及びHGF-非依存性の癌は、胃癌、食道癌、髄芽腫、結腸癌から肝臓への転移、乳頭状腎癌、頭頸部扁平上皮癌、甲状腺癌、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、腎細胞癌、肝細胞癌、乳癌及び結腸直腸癌、膠芽細胞腫、横紋筋肉腫及び骨肉腫を含むが、これらに限定されるものではない。
【0333】
用語「治療する」又は「治療」は、症状、障害、状態又は疾患の重症度を遅延、中断、阻止、管理、停止、軽減することを意味するが、必ずしも全ての疾患に関連した症状、状態又は障害の全体の排除に関与しない。
【0334】
ヒト治療上の使用に関して、本明細書に記載のc-Met抗体は、「有効量」で治療を必要とするヒト対象へ投与することができる。用語「有効量」は、ヒト患者への単回又は反復投与量での投与時に、疾患の治療における治療的有効性を提供するc-Met抗体の量又は投与量をいう。本c-Met抗体の治療的有効量は、1回の投与量当たり約0.1mg/kg〜約20mg/kgの範囲の量を含むことができる。任意の個々の患者に関する治療的有効量は、腫瘍組織内の細胞表面c-Metなどのバイオマーカーに対するc-Met抗体の作用を、又は腫瘍退縮などの症状をモニタリングすることにより、医療の専門家により決定することができる。いずれか所定の時点で投与される抗体の量は、単独での使用又は他の治療薬との組合せての使用かに関わらず、c-Met抗体の最適量が治療過程で投与されるように、変動することができる。
【0335】
併用療法として、他の癌治療と組合せて、本明細書に記載のc-Met抗体、又はそのような抗体を含有する医薬組成物を投与することも意図される。
【0336】
(医薬組成物)
本発明の範囲は、1以上の医薬として許容し得る担体又は賦形剤と共に製剤化された、本発明のc-Met抗体、又はそれらの抗原結合断片の1つ又は組合せを含有する医薬組成物を含む。そのような組成物は、c-Met抗体の1つ又は組合せ(例えば、2以上の異なる)を含むことができる。例えば、本発明の医薬組成物は、ヒトc-Met上の異なるエピトープに結合する抗体の組合せ、例えば、ヒトc-MetのPSI-IPTドメイン内で結合する抗体と組合せたヒトc-MetのSEMAドメインに結合する抗体を含有することができる。
【0337】
ヒト治療上の使用のためのモノクローナル抗体の製剤技術は、当該技術分野において周知であり、且つ例えば、Wangらの文献、Journal of Pharmaceutical Sciences, 第96巻、1-26頁、2007年において検証されている。
【実施例】
【0364】
(実施例)
本発明は、以下の非限定的な実験的実施例を参照し、更に理解されるであろう。
【0365】
(実施例1:ラマの免疫化)
ラマの免疫化及び末梢血リンパ球(PBL)の収集に加え、引き続きのRNA抽出及び抗体断片の増幅を、De Haardとその同僚により説明されたように行った(De Haard Hらの文献、JBC., 274: 18218-30, 1999)。8頭のラマを、c-Metを過剰発現しているヒト胃細胞株MKN-45(DMSZ, ACC409)により免疫化した(c-Met過剰発現は、PE複合された抗-HGFR抗体(R&D Systems社、カタログ番号FAB3582P)を使用するフローサイトメトリーにより確認した)。別の2頭のラマを、肺癌細胞株NCI-H441細胞により免疫化した。これらのラマは、6週間にわたる1週間に1回頸部への筋肉内注射により免疫化した。およそ10
7個細胞を、頸筋に注射し、且つフロイントの不完全アジュバントを、これらの細胞の注射部位から数cm離れた位置の第二の領域に注射した。
【0366】
免疫応答を調べるために、血液試料10mlを免疫化前及び後に採取した。最後の免疫化から3〜4日後、血液400mlを採取し、且つ総RNAを、フィコール-パク勾配法及びChomczynski Pらの文献に説明された方法(Anal. Biochem. 162: 156-159, 1987)を用い、調製したPBLから抽出した。平均RNA収量は、450μgであった。その後De Haard Hらの文献(Biol. Chem. 274, 1999)に説明されたようにFab-含有ファージミドライブラリーを構築するために、抽出されたRNAを、重鎖及び軽鎖V-領域(Vλ及びVκ)のランダムcDNA合成及びPCR増幅に使用した。得られたライブラリーは、良好なレベルの多様性(1〜7×10
8)を示した。
【0367】
MKN-45細胞又はNCI-H441細胞に対する免疫応答を、フローサイトメトリーを用いて調べた。希釈した血清100μl/ウェルを、これらの細胞(2×10
5個細胞/ウェル)に添加し、4℃で30分間インキュベーションした。PBS及び1%BSAで洗浄した後、FITC-複合されたヤギ抗-ラマ抗体(BETHYL社, #A160-100F)0.1μg/100μl/ウェルを添加し、4℃で30分間インキュベーションした。PBS及び1%BSAで洗浄した後、FACS Calibur上で結果を読み取り、平均蛍光を、血清の希釈に対してプロットした(
図1)。
【0368】
c-Metに対する特異的免疫応答を、免疫前及び免疫後血清(各々、0日目及び45日目)を使用する、固定した組換えc-Met(R&D Systems社, 358-MT/CF)によるELISAを用い決定した。固定されたc-Metに結合したラマIgG1を、マウス抗-ラマIgG1(Daley LPらの文献、Clin. Diagn. Lab Immunol. 12: 380-386, 2005)及びHRP-複合されたロバ抗-マウス抗体(Jackson社)を用いて検出した。
図2は、10頭の免疫化したラマのうちの4頭の免疫応答を示す。同様の免疫応答が、MKN-45細胞で免疫化した別のラマ4頭で認められたが、NCI-H441細胞で免疫化したラマについては認められなかった。
【0369】
(実施例2:c-Met-特異性Fabの選択及びスクリーニング)
Fabを発現しているファージを、標準プロトコールに従い作製し、更に固定された組換え二量体c-Met(R&D systems社, 358-MT/CF)又はc-Metの組換え細胞外ドメイン上で選択した。トリプシンによるc-Met結合ファージの総溶出を、標準ファージディスプレイプロトコールに従い行った。
【0370】
2〜4回の選択を行い、ファージにより発現されたc-Met-特異性Fabを濃厚化した。個々のコロニーを単離し、ペリプラスム画分(ペリス(peris))を、標準プロトコールに従い全てのライブラリーからIPTG誘導により生成した。
【0371】
固定されたc-Metへの結合に関する成熟型HGFとの競合についてのc-Met-特異性Fabのスクリーニングは、ELISA-ベースの競合アッセイを用いて行った。ヤギ抗-ヒトFcγ抗体(Jackson社)2μg/mlを、マキシソーブプレート上に固定し、PBS中の1%カゼインで2時間ブロックした後、組換え二量体c-Met 100ng/mlを添加し、室温で1時間インキュベーションした。洗浄後、Fab含有ペリス50μlを添加し、捕獲されたc-Metへ結合させ、その後N-末端ビオチニル化した成熟型HGF(R&D systems社, 294-HGN/CF) 25ng/mlを添加した。N-末端ビオチニル化は、Thermo Scientific社により提供されたプロトコールに従い、50mMリン酸緩衝液(pH6.5)中、5倍過剰なNHS-LCビオチンにより、4℃で24時間行った。ビオチニル化された成熟型HGFを、室温で1時間インキュベーションし、その後洗浄し、ホースラディッシュ-複合されたストレプトアビジン(strep-HRP)を添加し、更に1時間インキュベーションした。TMBを添加し、このプレートを620nmで読み取った。関係のないペリプラスム抽出物及び50倍過剰なコールド(非-ビオチニル化)HGFを、全てのプレートにおいて陽性対照として含んだ。HGFと競合するFab-含有ペリスの例を、
図3に示す。
【0372】
HGF-競合するクローンを、VH領域及びVL領域において配列決定し、VHのCDR3の配列を基にVHファミリーへ分割した。これらのVHファミリーを更に、解離(k
off)及びSEMA-PSI又はc-Met細胞外ドメイン(デコイ)の認識について、表面プラスモン共鳴(SPR)により試験した。1000〜2000RUの間の二量体c-Met、SEMA-PSI又はデコイc-Metを、酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.5)中のアミンカップリングにより、VIAチップ上に固定した。Fab-含有ペリスを、流量30μl/分で添加し、且つRUの増加が認められる場合、Fabを結合しているとみなした。k
offは、各試料について2分間測定した。表8には、様々なVHファミリーに関するドメイン認識及びk
offをまとめている。
【0373】
いくつかのVHファミリーは、SEMA-PSIドメインを認識したのに対し、他のものは、デコイc-Metのみを認識した。これらのFabは、10
-3〜10
-4s
-1の範囲のk
offを有し、最良のもの(12G4)はk
off 1.3×10
-4s
-1を有した。
【0374】
拮抗性クローンのVHドメイン及びVLドメインを、ヒト定常IgG1ドメインと、並びにヒトCκドメイン又はCλドメインと融合させ、特許出願WO 2009/145606において説明されたシステムにおいて、二価モノクローナル抗体として作製し、その発現は、プロテインA精製後、15〜30μg/mlを生じた。
【0375】
【表5】
【0376】
【表6】
【0377】
【表7】
【0378】
(実施例3:エピトープマッピング)
c-Metの異なるエクトドメイン(デコイ、SEMA、SEMA-PSI、SEMA-PSI-IPT1-2及びIPT3-4)(C. Basilicoらの文献、J Biol. Chem. 283:21267-2127, 2008)を、マキシソーブプレート上に、PBS中、4℃で一晩固定した(1μg/ml)。抗体(mAb)を、1μg/mlで開始する3倍希釈で添加し、室温で1時間結合させた。この反応をH
2SO
4で停止した後、結合をHRP-複合されたプロテインA及びTMBにより明らかにし、450nmで読み取った。
【0379】
この結合の結果を基に、デコイc-Metのみに結合し且つ試験した他のドメインのいずれにも結合しなかったいくつかのmAbを除き、mAbをc-Metの異なるドメインにマッピングすることができた(表8)。デコイc-Metにのみ結合する幾つかの抗体は、IPT2-3領域又は組換えc-Metタンパク質断片には認められないコンホメーションエピトープに結合することができる。IPT1-2ドメインに結合する抗体40B8の例は、
図4Aに示し、且つSEMAドメインに結合する36C4は、
図4Bに示している。
【0380】
【表8】
【0381】
(実施例4:分散アッセイ)
血清欠乏状態のヒト膵臓癌(HPAF)細胞を、96-ウェルプレートに、7000個細胞/ウェルで播種した。2日目に、抗体を濃度30、10、3及び1μg/mlで3つ組で添加し、且つこれらの細胞を30分間インキュベーションし、その後1.25ng/ml HGF/ウェルを添加した。HPAF細胞をまた、HGFの非存在下で、抗体と一緒にインキュベーションした。3日目に、細胞を固定し、クリスタルバイオレットで染色した。分散量のスコア化を、3回独立して、二人の別人が行った。
【0382】
結果は、mAbによるHGF-誘導した分散の投与量-依存性の阻害を示し、試験した13のうち8つの抗体について強力なブロックを示し、そのうちの5つ(12G4、20A11、38H10、36C4及び40B8)は、30μg/mlで分散の完全なブロックを示した。また8つの拮抗性mAb(12G4、13E6、20F1、20A11、38H10、34H7、36C4及び40B8)は全て、HGFの非存在下、30μg/mlで、作動作用を欠いていた。
図5は、媒体対照及びHGF対照と比較した、HGFの存在及び非存在下での、38H10の分散の結果の例を示している。
【0383】
(実施例5:アカゲザル及びマウスc-Metに対する交差反応性)
アカゲザル(Maccaca mulatta, US20090191580_5)c-Met ECD及びマウスc-Met(R&D systems社、カタログ番号:527-ME)への交差反応を、結合ELISAにおいて行った。アカゲザルECDを、PBS(1μg/ml)中で、96-ウェルマキシソーブプレート上に固定し、且つ4℃で一晩インキュベーションした。PBS中1%カゼインでブロックした後、10μg/mlから開始する希釈した抗体を添加し、室温で1時間結合させた。プレートを洗浄し、且つヤギ抗-ヒトFcγ抗体(Jackson社)を添加し、室温で1時間インキュベーションした。洗浄後、TMBを添加し、プレートを620nmで読み取った。
【0384】
マウスc-MetはまたFc部分を含むので、それらのmAb(2μg/ml)を、96ウェルマキシソーブプレート上に4℃で一晩固定し、且つブロックした後、100ng/mlのマウスc-Metを添加し、室温で1時間インキュベーションした。HRP複合されたマウス抗-His抗体(Serotech社)を添加し、室温で1時間インキュベーションした。洗浄後、TMBを添加し、プレートを620nmで読み取った。ビオチニル化されたヤギ抗-マウスc-Met抗体は、マウスc-Metの陽性対照としてストレプ-HRPを使用し、明らかにした。
【0385】
マウスc-Metへの有意な結合(>10倍)は、いずれのmAbについても認められなかった。
試験した6つのmAbは全て、アカゲザルc-Met ECDとの交差反応性を示し、ヒトECD c-Met(デコイ)に対する交差反応性と比べ、ほぼ同じ結合を伴った(表9)。
【0386】
【表9】
【0387】
(実施例6:c-Metへの結合に関するHGFとの競合)
固定されたc-Metへの結合に関するN-末端ビオチニル化されたHGFとの競合は、ELISA-ベースの競合アッセイを用いて行った。マウス抗-His抗体(Serotech社)5μg/mlを、マキシソーブプレート上に固定し、PBS中の1%カゼインにより2時間ブロックした後、組換え二量体c-Met 100ng/mlを添加し、室温で1時間インキュベーションした。洗浄後、抗体の希釈物を添加し、捕獲されたc-Metに30分間結合させ、その後N-末端ビオチニル化HGF(R&D systems社, 294-HGN/CF)25ng/mlを添加した。ビオチニル化されたHGFを、室温で1時間インキュベーションし、その後洗浄した。ホースラディッシュ-複合されたストレプトアビジン(strep-HRP)を添加し、更に1時間インキュベーションした。TMBを添加し、プレートを620nmで読み取った。マウスの5D5抗体に加え、アイソタイプ対照(hIgG1λ)を、対照として含んだ。競合は、対照(strep-HRPのみ又はhIgG1λ)と比べた競合率(%)として表し、抗体の濃度に対してプロットした。IC
50は、GraphPad Prismを用いて算出した(表10)。抗体13E6及び20A11は、部分的にのみHGFに取って代わり(約50%)、これはこれら2つのmAbがc-Met上で認識するエピトープに関連し得る。
図6は、c-Met結合に関してHGFと競合する抗-c-Met抗体の例を示している。
【0388】
【表10】
【0389】
(実施例7:HGF-依存性膵臓BxPC3細胞を使用する増殖アッセイにおいて測定したmAbの作動特性及び拮抗特性)
ヒト膵臓BxPC3細胞(ATCCカタログ番号CRL-1687)は、HGFに反応し、更に8種の候補mAbを調べる増殖アッセイに使用した。簡単に述べると、15,000個の細胞を、血清の存在下で播種し、次に接着後(播種の4〜6時間後)血清を一晩欠乏させた。mAbを投与量20ng/ml〜40μg/mlで、拮抗性及び作動性を試験するために、各々、HGF 75ng/mlの存在下又は非存在下で添加した。3日間インキュベーション後、これらの細胞にアラマーブルーを添加し、37℃で4時間インキュベーションし、その後励起波長550nm及び発光波長590nmで蛍光を読み取り、これにより細胞増殖に関する測定値(read-out)を得た。このアッセイを3回繰り返した。作動性に関して独立して行った1つの実験の例(
図7A)、及び拮抗性について行った1つの例(
図7B)は、候補mAb及びキメラ224G11(c224G11、Pierre Fabre社)を含むベンチマークmAbについて示した。増殖は、HGF 75ng/mlで得られた増殖の百分率として表した。3種のmAb(38H10、40B8及び36C4)は、20%未満の誘導された増殖を示し、38H10はベンチマークc224G11と同じ範囲であった。
【0390】
(実施例8:親和性向上のためのVLシャッフリング)
VL鎖シャッフリングを使用し、2つのmAbである38H10及び48A2の親和性を向上した。この方法において、親クローンの重鎖(36C4又は38H10のVHCH1)を、ファージミド-軽鎖ライブラリーに再度導入した(実施例1参照)。この重鎖は、選択手順における親軽鎖の混入を更に避けるために、展示に必要なバクテリオファージ-由来の遺伝子3を欠いている発現ベクターから抽出した。重鎖をファージミド-軽鎖ライブラリーにクローニングし、且つライゲーションされたDNAを、大腸菌TG1細胞へ電気穿孔させ、軽鎖シャッフリングライブラリーを作製した。このライブラリーのサイズは、10
8クローンを上回った。
【0391】
オフ-レート洗浄と組合せた親和性選択を行い、c-Metについて向上された親和性を持つ鎖シャッフリングされたFabを選択した。異なる量のFab-発現しているファージを、溶液中で異なる濃度のFc-Metと共にインキュベーションする設定を選択した(表11参照)。望ましい親和定数よりも低い濃度だが、ファージを上回る過剰なc-Metの添加により、より高い親和性のファージの結合にとって好都合であった。次にFc-Met:ファージ複合体を、抗-Fc mAbによりコートされたマイクロタイタープレート上で捕獲した。捕獲されたFc-Metへの解離したファージの再度の結合を防止するために、このプレートを、デコイc-Met溶液により37℃で洗浄した。比較的低親和性バリアントを洗浄除去することによりより良いオフ-レートを持つファージを選択するために、各ラウンドで、洗浄時間を延長した(表11参照)。ファージは、トリプシンで溶出し、大腸菌TG1細胞の感染に使用した。合計で5ラウンドの選択を実行した。加えて投入したファージの量は、後続のラウンドで減少し、一方でバックグラウンドを減少し、且つ他方でmAb濃度をより低くし、これにより選択のストリンジェンシーを増大した。
【0392】
選択ラウンドIII、IV及びVからの少なくとも30クローンのスクリーニングを実行した。これらのクローンを、深いウェルプレート(1ml発現)において増殖し、且つペリプラスム画分を調製した。これらのペリプラスム抽出物を、ELISAにおいてHGFとの競合について最初に試験した(実施例2参照)。38H10について、低いELISAシグナルを生じる競合するクローンの頻度は、後続の選択ラウンドにおいて増加し、これらの異なるラウンドにおいてこの競合物質は明らかに濃厚化している。
【0393】
その後これらのクローンを、表面プラスモン共鳴により、それらの解離定数について試験した。ペリプラスム抽出物から明らかな結合プロファイルを得るために、Fc-Metのおよそ3000RUをCM5チップ上に直接固定した。向上したオフ-レートを有するクローンは、配列決定に送った。
【0394】
当初の対合した軽鎖(38H10についてのVκ及び36C4についてのVλの両方)を、軽鎖シャッフリング後に得たが、親Fabを上回る向上したオフ-レートは、38H10バリアント48A2についてのみ認められた(表面プラスモン共鳴により10倍)。36C4に関して、親和性の向上は得られず、そのため親mAbを更なる作業のために保持した。
【0395】
【表11】
【0396】
多くのVLが、38H10重鎖可変ドメイン(配列番号:49)を共有するFabとシャッフリングした。シャッフリングされた軽鎖を、対応するFab(各Fabは重鎖として38H10を含む)に関するオフ-レートと一緒に、以下に列記している(アミノ酸配列及びヌクレオチド配列は、表6及び表7に列記している)(表19)。
【0397】
【表12】
【0398】
多くのVLが、36C4Q重鎖可変ドメイン(配列番号:88)を共有するFabとシャッフリングした。シャッフリングされた軽鎖を、対応するFab(各Fabは重鎖として36C4Qを含む)に関するオフ-レートと一緒に、以下に列記している(アミノ酸配列及びヌクレオチド配列は、表6及び表7に列記している)(表20)。
【0399】
【表13】
【0400】
(実施例9:HGF-依存性NSCLC A549細胞を使用するリン酸化アッセイにおいて測定したmAbの作動特性及び拮抗特性)
更にmAbを調べるために、HGF-依存性NSCLC A549細胞(ATCC、番号CCL-185)を使用するリン酸化アッセイを設定した。これらの細胞を、各抗体の作動活性を評価するためにHGFの非存在下で、更には各抗体の拮抗力を評価するためにHGFの存在下の両方で、インキュベーションした。簡単に述べると、40,000個の細胞を播種し、且つプレートへの接着後(播種の4〜6時間後)血清を一晩欠乏させた。その後細胞を、mAbにより、37℃で15分間処理した。拮抗性アッセイについては、HGF 100ng/mlを添加し、37℃で更に15分間インキュベーションした。またHGF単独(100ng/ml)を、この実験に関する参照値を提供するために試験した。細胞を、冷PBSで洗浄し、且つPMSFを含有する弱い(mild)溶解緩衝液(1mM PMSF, Sigma Aldrich社を含むCell signaling社 #9803)により、氷上で15分間溶解した。この溶解液50μlを、ヤギ抗-c-Met抗体で予備-コートされた96-ウェルプレートの1ウェルにつき添加し、且つ1%カゼイン-PBSによりブロックした。次にこの溶解液中のc-Metを4℃で一晩結合させた。ホスホ-c-Metは、ウサギ抗-pY1234/1235抗体(Cell signaling社)及びHRP-複合されたヤギ抗-ウサギ抗体(Jackson Laboratories社)により明らかになった。TMBを添加し、その反応を1M H
2SO
4により停止し、450nmで読み取った。
【0401】
これらの抗体は、異なる濃度で2つ組で試験し、且つ陽性対照及び陰性対照としてのHGFのみ及び細胞のみと平行して、対照mAb U16(無関係のmAb、陰性対照)、キメラ224G11(c224G11、Pierre Fabre社)及びマウス224G11(mPF、Pierre Fabre社)を、各試行において含んだ。
図8A-Bは、対照と比べ、3つのmAbの低い作動作用を示している。ベンチマークc224G11と比べ、抗体38H10、48A2及び36C4(示さず)は全て、より低いレベルのリン酸化されたc-Metを生じている。
図9は、ベンチマークc224G11と比べた、HGF-誘導したリン酸化のブロックにおけるmAb 48A2、36C4及び40B8の効力を示し、36C4が最良のブロック能を有している。リン酸化の比率は、HGF 100ng/mlにより誘導された最大リン酸化の百分率として表している。
【0402】
BxPC3細胞を使用するリン酸化アッセイを、A549細胞について同じ方式で行い、前記結果は、A549細胞について得られた結果(データは示さず)と非常に良く相関していた。
【0403】
(実施例10:cMet自己リン酸化MKN-45細胞に対する抗-cMet抗体の阻害作用)
構成的に活性化された細胞におけるリン酸化を阻害するmAbの能力を試験するために、本発明者らは、胃MKN-45細胞(DMSZ社、カタログ番号ACC 409)を使用した。これらの細胞は、c-Met遺伝子増幅を有し、結果的にc-Metの過剰発現を生じ、これにより構成的、すなわちHGFに非依存式のリン酸化を生じる。
【0404】
簡単には、5,000個の細胞を、血清存在下で播種し、異なる濃度のmAbと一緒に37℃で24時間インキュベーションした。リン酸化されたc-Metの定量には、実施例8に記載したように、ELISAを行った。
【0405】
図10において、mAbのMKN-45細胞におけるcMetリン酸化のブロック作用を認めることができる(%阻害)。この反応は、陰性対照mAb U16.1(0%阻害)に対して規準化した。SIMPLE(商標)抗体36C4は、MKN-45細胞におけるHGF-非依存性リン酸化の最も強力な阻害物質であると結論づけることができる。c224G11は、36C4及び48A2程は強力ではなかった。40B8のみは、最高濃度でおよそ40%ブロックし、急激に横ばいになった。
【0406】
(実施例11:MKN-45細胞における抗体が誘導したADCC)
MKN-45細胞200,000個を、抗体添加の前日に播種した。抗体の希釈物を細胞に添加し、且つ60分間予備インキュベーションし、その後エフェクター細胞(標的細胞への添加前に一晩インキュベーションした、1名のドナーからの全血由来のPBMC)を、E:T比(ナチュラルキラー細胞(NK):標的細胞株)5:1で添加した。PBMC中のNK細胞の小集団を、各ドナーについてフローサイトメトリーにより、抗-CD16対抗-CD56の比として決定した。4時間インキュベーションした後、プレートを、Dead-Cellプロテアーゼキット(Promega社のCytoTox-Glo(商標)細胞傷害アッセイ(カタログ番号G9291))を用いて読み取り、溶解した細胞の比率を得た。
【0407】
図11は、c224G11と比べた、投与量反応で試験した3種のmAbである48A2、40B8及び36C4により誘導された特異的溶解を示している。3種の試験したmAbのEC50は、同じ範囲のc224G11と同じであった(48A2、40B8及び36C4について4.3、4.6、5.0ng/ml、並びにc224G11について2.8ng/ml)。
【0408】
(実施例12:NCI-H441細胞におけるPotelligent(商標)36C4誘導したADCC)
脱フコシル化された36C4を、Potelligent(商標)CHO細胞(Biowa社)において作製し、且つプロテインAにより精製した。3名のドナーからのヒト末梢血単核細胞(PBMC)を、標準フィコール分離によりヘパリン処理した全血から個別に精製し、エフェクター細胞として使用した。これらの細胞を、ヒトIL-2 200U/mlを含有する培地内に2×10
6個/mlで浮遊させ、37℃で一晩インキュベーションした。翌日、接着細胞及び非接着細胞を収集し、且つ培養培地において1回洗浄した。
【0409】
標的対エフェクター比1:50を使用した。これらの細胞を、5×10
6個細胞/mlで浮遊させ、1ウェルにつき100μl添加した。
【0410】
10
6個の標的細胞NCI-H441を、FCS 0.5ml中の
51Cr 100μCiと一緒に、水浴中、37℃で60分間インキュベーションした。細胞を洗浄し、1ml FCS中に再浮遊させ、水浴中37℃で30分間インキュベーションした。その後細胞を、培地で2回洗浄し、最終容積2×10
5個細胞/mlとし、1ウェルにつき50μlを添加した。
【0411】
このアッセイは3つ組で実行した。標識した細胞50μlを、エフェクター細胞100μl及び抗体50μlと一緒にインキュベーションした。
51Crの自発的放出を制御するために、96-ウェルプレートの1列は、標的細胞のみを含んだ。別の96-ウェルプレートにおいて、ウェルの1列は、1%Triton-Xで処理した標的細胞のみを含み(細胞を完全に溶解するため)、
51Crの最大放出の読み値を生じた。37℃で4時間インキュベーションした後、上清50μlを収集し、Lumaplate-96に移し、乾燥させ、且つβ線カウンターによりカウントした。
【0412】
溶解率を、次式により決定した:%溶解=((試料CPM−自発放出CPM)/(最大放出CPM−自発放出CPM))×100。
図12は、正常にフコシル化された36C4に対する、Potelligent(商標)36C4によるNCI-H441細胞の溶解率(脱フコシル化により増強されたADCC)を示している。脱フコシル化された36C4(Potelligent(商標)36C4)は、NCI-H441細胞の優れた溶解を誘導し、IC50は0.13ng/mlであったのに対し、正常にフコシル化された36C4は、NCI-H441細胞のいかなる溶解も誘導しなかった。c224G11により誘導された溶解率は、非常に低かった。明らかに36C4の脱フコシル化は、そのNCI-H441細胞のADCCの誘導能を劇的に増強する。
【0413】
(実施例13:NCI-H441細胞に対するADCC-増強された36C4のインビトロ作用)
Potelligent(商標)技術による非フコシル化mAbは、マウスのインビボにおいて有意な作用を有さない。しかし、Fc突然変異(S239D、I332E)は、インビボにおいて作用を有し、マウスFcγRIII、CD16に対する親和性の増大によりmAbのADCC作用を増強することが示された(Lazar GAらの文献、PNAS, 103. 2006)。
【0414】
S239D、I332E突然変異を、特異的プライマーによる部位特異的突然変異誘発を使用し、36C4のIgG1へ挿入し、36C4Eを作製した。36C4Eは、HEK293E細胞を使用し親36C4と同じ方式で生成し、且つプロテインAを用いて精製した。突然変異後のELISAベースの競合アッセイにおいて、親36C4と比べ、生成レベル又はHGF置換レベルにおいて、差異は存在しなかった。ADCC作用は、NCI-H441細胞に対する
51Cr放出アッセイ(実施例12記載)で調べた。36C4の作用は存在せず、且つPotelligent 36C4は、ADCC-増強されたFc突然変異体36C4Eよりもわずかに低い溶解率を示した。36C4-POT対36C4EのEC
50は、0.04μg/ml対0.26μg/mlであった。
【0415】
(実施例14:MKN-45異種移植片に対するADCC-増強された36C4のインビボ作用)
6〜8週齢のCD-1ヌードマウスに、MKN-45細胞300万個を皮下注射した。注射の8日後、腫瘍は測定可能となり、9日目に、異なる量の被験抗体の1週間に2回の腹腔内注射により治療を開始した。6匹のマウス群に、36C4E(30、10、3及び1mg/kg)を注射し、腫瘍容積を測定した(注射時に行った)。c224G11に加え、IgG1アイソタイプ対照(Synagis(登録商標))を、対照に含み、両方共最高濃度30mg/kgであった。
【0416】
細胞の注射後23日目(治療開始後15日目)に、腫瘍容積に対する投与量-依存性作用が、36C4-Eで治療したマウスにおいて認められた。c224G11は、アイソタイプ対照と比べ、腫瘍成長に対する作用を有さなかった(
図13)。
【0417】
(実施例15:ヒト-ラマ・グラマキメラc-Met融合タンパク質)
前記mAbのドメイン認識のマッピングのために、ヒト-ラマ・グラマキメラc-Met ECD融合タンパク質を、ヒト及びラマ・グラマc-MetのIPTドメインを交換することにより構築した。この構築は、標準組換えDNA法及びPCR法を用いて行った。ラマ・グラマ及びヒトのc-Metを、各種の2匹のドナーからの末梢血リンパ球(PBL)由来のRNAから増幅しcDNAへ変換した。ラマ及びヒトc-Met ECD(aa 25-932)を、HEK293細胞による可溶性タンパク質の発現のためにHisタグを持つ真核生物発現ベクターへクローニングした。スプライシング及び重複伸長PCRを使用し、ラマ由来のIPT1-4(aa 568-932)を、ヒトc-Met内のヒトIPT1-4と交換し、且つ逆にヒトIPT1-4をラマc-Met内のラマIPT1-4と交換した。4種の構築体であるラマc-Met、ラマ/ヒト-IPT、ヒトc-Met、ヒト/ラマIPTを全て、HEK293細胞において発現し、IMACカラムを用いて精製した。
図15は、ヒトc-Met(Genbank X54559)の2匹のドナー由来のPBLから増幅されたラマ・グラマc-Metとのアラインメント(88%同一性)を示している。
【0418】
(実施例16:キメラc-Met ECDを使用するmAbのドメインマッピング)
異なるキメラ組換えcMetタンパク質200ngを、マキシソーブプレート上に4℃で一晩固定した。PBSで洗浄後、プレートを0.1%カゼインにより室温で2時間ブロックし、その後mAbを添加し、c-Metへ室温で1時間結合させた。洗浄後、HRP-複合されたヤギ抗-ヒト抗体(1/5000希釈、Jackson Labs社)を添加し、室温で1時間インキュベーションし、その後追加洗浄し、且つTMBを添加した。620nmでの吸光度を読み取り、これらの値をmAb濃度に対しグラフに示した。
【0419】
図16Aは、36C4のヒトc-Met(WT)及びヒト/ラマIPT1-4への結合を示し、結果的にSEMA-PSI領域へ結合することを示している。
図16Bは、mAb 13E6のヒトc-Met及びラマ/ヒトIPT1-4への結合を示している。いずれのmAbについても、ラマc-Metへの結合は認められなかった。48A2も試験したが、ヒトSEMA-PSIを持つ構築体との結合が主に示され、且つヒトIPTを持つ構築体とは一部結合し、これはPSI-IPTドメインの重複領域への結合が存在することを指摘している。
【0420】
(実施例17:表面プラスモン共鳴を使用する36C4及び48A2のc-Met上の非重複エピトープへの結合)
2種のmAb、36C4及び48A2が非重複エピトープへ結合するかどうかを調べるために、36C4又は48A2の3000RUを、CM5チップにカップリングさせた。40μg/mlモノマー性デコイMetの60μlを注入し、チップ上に複合体を形成した。10μg/ml 36C4の60μlを注入した(
図16A)。
図16Aに示したように、Met:48A2複合体のみへの結合が認められた。同様に、48A2 mAbのMet:36C4複合体及びMet:48A2複合体への結合を、CM5チップに結合した36C4又は48A2の3000RUを使用し行った。40μg/mlデコイMetの60μlを注入し、チップ上に複合体を形成した。その後10μg /ml 48A2の60μlを注入した。
図16Bに示したように、Met:36C4複合体のみへの結合が認められた。これらの結果は、mAb 36C4及び48A2の非重複エピトープの認識を示している。
【0421】
(実施例18:抗-cMet抗体の組合せを使用するc-Met自己リン酸化に対する阻害作用の増大)
Biacoreにより示されるようにc-Met上の非重複エピトープを認識する2つのmAb 36C4及び48A2(
図16)を、実施例10に記載のようにHGF-非依存性MKN-45細胞を使用するリン酸化アッセイにおいて、比1:1で一緒にした。この抗体混合物を、c-Met自己リン酸化をブロックする能力について、濃度範囲にわたり、36C4及び48A2と比較した(この混合物の総抗体濃度は、個々の抗体の総抗体濃度と等しいことに留意されたい:すなわち、投与量0.2nMの混合物は、各々0.1nMの36C4及び48A2であるが、純粋なmAbに関しては、これは36C4又は48A2を0.2nM含有する)。この組合せは、個々のmAbと比較して、cMet自己リン酸化の有意により良い阻害を示した。0.78nM mAbで、36C4及び48A2単独では42%及び32%であるのに比べ、この混合物はリン酸化の75%阻害を示した(
図17)。36C4及び48A2の組合せはまた、NSCLC EBC-1細胞の自己リン酸化のブロックで、個々の抗体よりもより強力であった(データは示さず)。
【0422】
(実施例19:NSCLC A549細胞を使用するリン酸化アッセイにおけるより低いレベルの作動性及びより良いブロック能を示す非重複mAbの組合せ)
NSCLC A549細胞を使用するリン酸化アッセイを、mAb 36C4及び48A2を、組合せて(比1:1)又は個別のいずれかで、それらの作動活性及び拮抗活性について(各々、HGFの非存在下又は存在下)調べるために、実施例9のように試行した。作動性レベルは、組合せ(36C4と48A2)の方がこれらのmAbのいずれか単独よりもより低く(
図18A)、且つHGF-誘導したリン酸化のブロック作用は、組合せ(36C4と48A2)について、これらのmAbのいずれか単独と比べ有意に増加した(
図18B)。
【0423】
(実施例20:U87-MG異種移植片モデルにおける腫瘍成長の阻害)
36C4 mAbのインビボにおける腫瘍成長に対する阻害作用を調べるために、オートクリンHGF(ATCC HTB-14)を伴うU87-MG細胞3×10
6個を、ヌードCD1 nu/nuマウスの右後方横腹に皮下注射した。腫瘍が70〜120mm
3に達した時点(19日目)で、マウスを階層化し(stratified)、36C4、c224G11又はアイソタイプ対照抗体の1週間に2回の30mg/kgの腹腔内投与(i.p.)による治療を開始した。この治療を、腫瘍細胞注射後35日目まで継続し、この時点で実験を終了した。mAbが投与される実験期間中は、腫瘍サイズを定期的に測定し、結果を
図19に示している。比較用(comoparator)mAb c224G11に加え、36C4 30mg/kgは、U87-MG腫瘍成長を阻害した。
【0424】
(実施例21:36C4及び48A2の生殖細胞系列化)
36C4及び48A2のVH配列及びVL配列を、ヒト生殖細胞系列VH配列及びVL配列に対し芽細胞化(blasted)し、且つ36C4は、IGHV4-30-4*01(66/76フレームワーク同一性)及びIGLV2-18*02(61/69フレームワーク同一性)の生殖細胞系列配列と密接に関連していた。48A2は、IGHV1-46*01(66/76フレームワーク同一性)及びIGKV4-1*01(53/70フレームワーク同一性)の生殖細胞系列配列と密接に関連していた。
【0425】
生殖細胞系列化のプロセスは、WO 2010/001251及びBacaらの文献(J. Biol. Chem. (1997) 272: 1067810684)及びTsurushitaらの文献(J. Immunol. Methods (2004) 295: 9-19)に説明されている。これは、その中にヒト及びラマの両方の残基に関して逸脱しているFR残基が組み入れられている、ライブラリー/ファージディスプレイ手法である。VH36C4又は48A2並びにVL36C4及び48A2の生殖細胞系列化されたライブラリーを、いくつかの位置に特異的突然変異を持つ重複しているオリゴヌクレオチド(表3及び4において同定された)を使用し、PCR-ベースの遺伝子集成により作製した。これらの突然変異は、ヒトに加えラマのアミノ酸をコードするために、縮重し(degenerate)、このことはその野生型残基が高親和性結合にとって決定的である場合の結合の完全な喪失を防いでいる。集成された遺伝子は、ヒトCH及びCLを持つファージミドベクターにクローニングし、且つTG1大腸菌を形質転換し、全体のサイズ10
9クローンのライブラリーを作製した。
【0426】
機能性Fabを選択するために、ストリンジェントな選択条件(抗原及びファージの量を減少し、且つc-Metの接近を伴う競合的洗浄の長さを延長する選択を3〜5ラウンド)を適用するファージディスプレーを使用した(実施例8に記載)。個々のクローンを、オフ-レートについてスクリーニングし、且つベストヒットを配列決定し、ヒト配列同一性を決定した。>94%のヒト同一性を持つクローンを、HEK293E細胞のトランスフェクション時の一過性発現により作製し、生成が>15μg/mlであった場合、これらを更に特徴付けた。
【0427】
【表14】
【表15】
【表16】
【表17】
【0428】
(実施例22:効力の喪失に繋がらない36C4の生殖細胞系列化)
36C4に関して、4種の生殖細胞系列化されたクローン(55A12-54E、53E2-54E、53E3、53A11)を、実施例9に説明したようにA549リン酸化アッセイにおける作動特性及び拮抗特性について、更に特徴付けた。
図20Aに示したように、親36C4と比べ、生殖細胞系列化されたmAbである55A12-54E及び53E2-54Eの作動特性の増加は存在しなかった。生殖細胞系列化バリアント53E3及び53A11は、同じ結果を示した。生殖細胞系列化mAbの拮抗作用は、55A12-54E及び53E2-54Eにより例示された
図20Bに示したようにいずれも有意には変更されなかった。
【0429】
(実施例23:生殖細胞系列化36C4 mAbのPBS安定性)
PBS+0.02%Tween-80中のIgG 3mg/mlの安定性を、4℃、室温(RT)及び37℃で貯蔵後、0、1、7、14、28、56日目に調べた。全ての試料を、それらの効力について表面プラスモン共鳴により、カップリングされたc-Met(15,000〜17,000 RU)への結合を調べ、流量30μl/分での100〜130秒の間の勾配を決定することにより試験した。機能性mAbの比率を、参照(-20℃で貯蔵された生殖細胞系列化mAb)を基に計算した。
図21は、様々な温度でのインキュベーションの56日後に、機能の有意な喪失が存在しないことを示しており、且つこれら4種の生殖細胞系列化mAbの間に有意差は存在しないように見える。
【0430】
(実施例24:生殖細胞系列化36C4及び48A2 mAbの熱耐性)
生殖細胞系列化36C4及び48A2 mAbの熱耐性を、様々な温度で1時間インキュベーションし、その後試料(0.5μg/ml)を、15,000〜17,000RUデコイc-MetをカップリングさせたCM-5チップ上を流し、流量30μl/分での100〜130秒の間の勾配を決定することにより調べた。機能性mAbの比率を、100%と設定した参照(4℃でインキュベーション)を基に計算した。
図22Aに示したように、生殖細胞系列化mAbの融解温度(EC50)は、36C4について67.2℃、55A12-54Eについて67.1℃、53E2-54Eについて66.1℃、53E3について68.2℃、及び53A11について65.5℃であった。48A2、生殖細胞系列化mAb 56F3について、65.4℃から71.1℃への融解温度の有意な改善が存在した(
図22B)。
【0431】
(実施例25:ヒト-ラマキメラc-Metを使用するmAb 36C4及び48A2のc-Metペプチド結合部位の決定)
mAb 36C4及び48A2が結合しているc-Metアミノ酸(aa)の一部配列を更に規定するために、ヒトからラマc-Metへのおよそ20〜300個のaa交換を含むキメラc-Met構築体を、PCR増幅、並びにFlagタグ及びストレプタグを持つヒトc-Metを含むベクターへのライゲーションを用いて調製した。
図23Aは、SEMAドメインに結合する36C4のペプチドマッピングに使用したキメラc-Met構築体を示しているのに対し、
図23Bは、PSI-IPT1ドメインに結合する48A2のペプチドマッピングのためのキメラc-Met構築体を示している。
【0432】
ラマヒトc-Metキメラは、HEK293E細胞において生成し、且つストレプ-タクチンセファロースHPを用いて精製し(11℃で2〜3時間)、その後結合していないタンパク質を洗浄した。結合したタンパク質を、2.5mMデスチオビオチンpH8.2により溶出し、1.5ml画分を収集した。タンパク質濃度を、Nanodropにより決定した。タンパク質は、SDS-PAGEにより品質管理した。
【0433】
ELISAを試行し、mAbの異なるキメラへの結合を調べた。36C4又は48A2の2μg/mlを固定し、ブロックした後、c-Metキメラを添加し、1/10,000ストレプトアビジン-HRPにより明らかにした(表16のELISA)。
【0434】
また表面プラスモン共鳴(SPR)を用い、mAbの異なるラマ-ヒトc-Metキメラへの結合を調べた。36C4、48A2及びHGFの3000RUを、10mM NaAc(pH4.5)中のCM-5チップにカップリングさせた。異なるc-Metキメラ10μg/ml溶液の60μlを、このチップ上を流量30μl/分で流し、且つ2分間の会合を評価した。チップは、20mM NaOH及び1M NaClにより再生した。
【0435】
表16は、ヒトc-Metとラマc-Metペプチドと交換されたアミノ酸(ヒトc-Metの成熟タンパク質においてaa Eで始まる)を含むキメラ、並びにプラスモン共鳴及びELISAを使用する結合の結果を示している。これらの結果は一貫しており、且つ36C4結合はaa 199で停止することを示し、これはヒトc-Metのaa 98-199内に認識部位があることを示唆している。これは、Stamosらにより公表された結晶構造(EMBO J, 2004)で示されたように、HGFβ-鎖結合部位を含むSEMAドメインの一部である。
【0436】
48A2 mAbは、PSIドメインとIPT1ドメインの両方の部分を対象としている、ヒトc-Metのaa 523-633に結合し、これは両方のドメイン内のコンホメーションエピトープを認識することを示唆している。
【0437】
還元条件下で試行したc-Metによるウェスタンブロットを使用し、36C4及び48A2が、線状エピトープ又はコンホメーションエピトープに結合したかどうかを調べた。36C4又は48A2について結合は認められず、これはコンホメーションエピトープを認識することを示唆し(データは示さず)、このことはキメラc-Metタンパク質により確認した。
【0438】
【表18】
【0439】
mAb 36C4により認識されたヒトc-Metペプチドの配列(aa98-199) 配列番号:181
【化18】
mAb 48A2により認識されたヒトc-Metペプチドの配列(aa523-633) 配列番号:136
【化19】
【0440】
(実施例26:MKN-45細胞上のmAbによる総c-Metのダウンレギュレーション)
mAbとのインキュベーション後にMKN-45細胞の表面上に存在する総cMetの量を、フローサイトメトリーを用いて測定した。
【0441】
96-ウェルプレート中の25,000個MKN-45細胞/ウェルを播種し、且つ37℃、5%CO
2で24時間インキュベーションした。これらの細胞を8時間血清欠乏させ、その後mAb及び血清-非含有培地中に希釈した10又は1μg/mlのHGFを3つ組で添加した。マウス5D5抗体及びHGFを、総c-Metのダウンレギュレーションに関する対照として含んだ。陰性対照は、36C4及び48A2と同じ様式で生成された無関係のIgG1 mAbであった。
【0442】
これらの細胞を、PBSで洗浄し、且つ酵素-非含有細胞解離溶液50μl/ウェルを添加し、37℃で15分間インキュベーションした。細胞を、FACSプレート中に収集し、且つ結合緩衝液(PBS+1%BSA)100μlを添加し、その後2000rpmで3分間遠心分離した。この時点から細胞を4℃で維持した。細胞を結合緩衝液で2回洗浄し、次にマウス抗-c-Met抗体(R&D Systems社)2.5μg/mlを添加した。その後細胞を、4℃で振盪しながら1時間インキュベーションし、引き続き結合緩衝液で2回洗浄した。APC-複合されたヤギ抗-マウス抗体(Jackson Lab社)を、濃度1/500で添加し、且つ細胞を振盪しながら1時間インキュベーションした。次に細胞を、結合緩衝液で洗浄し、FACS Caliburで読み取った。2000事象を収集し、そのダウンレギュレーションを、培地対照におけるダウンレギュレーションに対する百分率として表した。
【0443】
一晩のインキュベーション後両方共50〜60%のcMetのダウンレギュレーションを誘導する5D5又はHGFのいずれかと比較して、mAb 36C4及び48A2は、MKN-45細胞の表面上のc-Metの有意なダウンレギュレーションを誘導しないことを示している(
図24参照)。