(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記触媒は、アルミナ、シリカ、シリカ−アルミナ、マグネシア、粘土およびこれらの材料の少なくとも2種の混合物によって形成される群から選択される無定形無機担体を含む、請求項1に記載の方法。
前記水素化異性化触媒は、水素化脱水素化機能としての少なくとも1種の第VIII族金属および/または少なくとも1種の第VIB族金属と、水素化異性化機能としての少なくとも1種の無定形無機担体を含む、請求項10に記載の方法。
【背景技術】
【0002】
国際的なレベルで、2005〜2010年は、第一に、欧州共同体内での燃料、特に、軽油(gas oil)ベース燃料の必要性の迅速な増加によって、第二に、地球温暖化および温室効果ガス放出と関係がある主要な問題によって特徴付けられる。したがって、化石起源の原材料に関する限りのエネルギー依存を低減させることおよびCO
2放出を低減させることが望ましい。この背景内で、伝統的な精製および燃料製造設備に容易に統合され得る再生可能な源からの新しい装入材料についての研究は、重要性の高まっている目的である。
【0003】
それ故に、これらの最後数年の間に、リグノセルロースバイオマスの転化または植物油または動物脂肪の製造に由来する植物起源の新しい生成物精製法への統合は、化石材料のコストの増加に起因して興味の復活を経た。同様に、伝統的なバイオ燃料(主としてエタノールまたは植物油のメチルエステル)は、ガソリンプールにおける石油ベースのための補足としての真の地位を得た。
【0004】
軽油燃料についての高い需要は、環境についての著しいレベルの関心に加えて、再生可能な源からの装入材料を用いる際に興味に根拠を与える。これらの装入材料の中で、以下のものが、例として挙げられ得る:藻類起源の植物油(単数種または複数種)、動物脂肪または粗製物形態のまたは予備処理を経た使用済み食用油、およびこのような装入材料の混合物。これらの装入材料は、基本的に、脂肪酸トリエステルおよび脂肪酸の名称によっても当業者が知っているトリグリセリドタイプの化学構造を含む。
【0005】
トリグリセリドの非常に大きい分子量(600g/モル超)および考慮中の装入材料の高い粘度は、直接的なまたは軽油中の混合物としてのそれらの使用は、現代的なHDIエンジンについての問題を示すことを意味する(非常に高い圧力の注入ポンプ、無制御な燃焼、低収率、有毒な未燃焼放出との適合性)。しかしながら、トリグリセリドを作り上げる炭化水素鎖は、主に線状であり、それらの長さ(炭素原子の数)は、軽油中に存在する炭化水素と適合する。さらに、これらの鎖の初期の数は、一般的には0〜3であるが、特に藻類起源油の場合にはより高くあり得る。
【0006】
したがって、当業者に知られている添加剤の混合または添加に続いて、これらの装入材料を転化して良好な品質の軽油ベースおよび/または施行された要件を満足する灯油(kerosene)留分を得ることが必要である。ディーゼルについては、最終燃料は、標準EN590に適合しなければならず、灯油については、それは、IATA(International Air Transport Association:国際航空運送協会)のGuidance Material for Aviation Turbine Fuel Specificationにおいて記載された規格、例えば標準ASTM D1655に適合しなければならない。
【0007】
1つの可能なアプローチは、エステル交換(transesterification)による装入材料の転化に存する。トリグリセリド(本質的にこのような装入材料を本質的に構成する)は、それ故に、脂肪族モノアルコールの存在下、エステル交換反応によって脂肪酸エステルおよびグリセリンに転化される。この反応は、均一または不均一相における触媒によって触媒され得る。この方法の難点は、a)エステル中の酸素の存在に起因する内燃機関の排出ガス中のNO
x放出の増加;b)約360℃のかなり高い沸点(これは、軽油の終点が満足しなければならない規格に関する問題を示し得る);c)最大化されていないセタン価(軽油に最低限要求される約50)を得ること;およびd)炭化水素鎖上の二重結合の存在に起因する酸化反応の安定性に関係する問題を含む。
【0008】
別の可能な方法は、水素存在下の植物油の脱酸素化パラフィン性燃料への接触転化(水素化処理)である。多くの金属または硫黄含有触媒がこのタイプの反応に活性であるとして知られている。植物油の水素化処理のためのこれらの方法は既に周知であり、多くの特許に記載されている。以下の特許は、例として挙げられ得る:特許文献1〜4。
【0009】
例えば、特許文献3には、再生可能な源からの装入材料を脱酸素化反応により転化して、中間留分を製造する方法が記載されている。触媒は、金属酸化物またはカーボンタイプの担体上に分散させられた第VIII族元素によって構成される活性金属相によって構成される。この方法はまた、SAPO−11、SAPO−41、ZSM−22、フェリエライトまたはZSM−23から選択されるモレキュラーシーブと、パラジウム、白金およびニッケルから選択される第VIII族金属とを含有する触媒を用いる適宜の異性化工程を含み、該方法は、200〜500℃の温度および2〜15MPaの圧力で行われる。
【0010】
脱酸素化反応のために用いられる触媒は金属触媒であるので、この方法は、脱炭酸/脱カルボニル化によってパラフィンの排他的な形成を導き、二酸化炭素の生成がもたらされる。これは、水の生成に起因して水素を消費する水素化脱酸素反応と比較して水素消費が低減させられる点で有利であるが、それは、炭化水素のモル当たり1つの炭素原子のCOまたはCO
2の形態での損失のせいで性能品質を向上させることのできる生成物(例えば中間留分)の収率の低下があることを意味する。
【0011】
さらに、脱炭酸/脱カルボニル化反応の結果として生じた炭素酸化物は、大きな難点を有するメタン化反応を生じさせる。実際に、以下の式:
【0012】
【化1】
【0013】
による一酸化炭素および二酸化炭素のメタン化の反応は、
1)水の形成:水/炭素酸化物混合物は、方法中の材料に有害であるさらなる炭素腐食のために当業者に周知である;
2)炭素酸化物を除去するための再利用される水素の精製;これは、例えば、アミンによる洗浄および/またはメタン化を強制的なものにするさらなる工程を必要とし得る;
3)これらの反応と関連した水素消費の増加
を生じさせる。
【0014】
硫化物触媒は以下の水素化処理反応に対して活性であることが知られている:水素化脱硫、水素化脱窒、水素化脱酸素およびヒドロメタル化。
【0015】
多くの著作は、バイオ液体(油性材料またはリグノセルロースに由来する)の燃料への接触転化のために用いられる脱酸素化反応におけるそれらの可能性を扱っている。特に、Senolらは、硫黄触媒CoMoまたはNiMo/Al
2O
3存在下の、植物油中に存在するトリグリセリドの親水性官能基(エステル基)および脂溶性官能基(アルキル鎖)の代表であるエステルモデルタイプの分子の転化を研究した(非特許文献1)。
【0016】
還元金属ベースを有する触媒とは異なり、遷移金属硫化物をベースとする固体の使用は、2つの反応法を経由してエステルタイプの分子からのパラフィンの生成を可能にする:
− 水素化脱酸素:これは、水素消費による水の形成および最初の脂肪酸鎖の炭素数に等しい炭素数を有する炭化水素の形成をもたらす、
− 脱炭酸/脱カルボニル化:これは、炭素酸化物(一酸化炭素COおよび二酸化炭素CO
2)の形成および最初の脂肪酸鎖より1炭素少ない炭素数を有する炭化水素の形成をもたらす。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明は、硫黄含有第VIB族元素によって構成された活性相を含み、該第VIB族元素はモリブデンである、担持型または非担持触媒であって、第VIB族元素を有する担持型触媒である場合の前記触媒は、触媒の全質量に関して該第VIB族元素の酸化物の重量で17〜35%の第VIB族元素含有量を有し、リン、ホウ素およびケイ素から選択されたドープ元素(doping element)を前記担体上に担持されてさらに含む、ものに関する。
【0036】
活性相は、金属群の硫化物の形態の元素(単数種または複数種)を含有する相であり、すなわち、本明細書において、本発明による触媒の活性相は、硫黄含有の第VIB族元素によって構成される。
【0037】
本発明はまた、本発明による触媒を用いる、再生可能な源からの装入材料の、最大10%に制限された脱炭酸/脱カルボニルによる転化を伴う水素化脱酸素法に関する。
【0038】
最初の装入材料は、再生可能な源、例えば、トリグリセリドおよび/または脂肪酸を含有する植物または動物の起源の油および脂肪からの装入材料、または、このような装入材料混合物である。本発明において用いられる植物油は、粗製または精製(完全または一部)の以下の植物に由来するものであり得る:アブラナ、ヒマワリ、ダイズ、パーム、パーム核、トウゴマ種子、オリーブ、ココナッツ、ジャトロファ(このリストは非制限的である)。藻類油または魚油も、本発明において用いられる。全ての動物脂肪が挙げられ得、例えば、ラード、スエットまたは食品産業残渣からなるかまたは外食産業に由来する脂肪、例えば、廃棄台所油である。
【0039】
こうして規定される装入材料は、トリグリセリド構造および/または脂肪酸を含有し、その脂肪鎖は、8〜25の炭素数を有する。
【0040】
本発明による最初の装入材料の転化の間に生じた炭化水素は、
a)最初の脂肪酸鎖の炭素原子数に等しい炭素原子数;もし、機構がカルボキシ基からアルキル基への水素化脱酸素機構であるならば、水素化脱酸素は、水素の消費により水の形成をもたらす;
b)最初の脂肪酸鎖より1つ少ない炭素を含有する炭化水素鎖;用いられる機構が、脱炭酸/脱カルボニル化であるならば、当該機構は、炭素酸化物(一酸化炭素COおよび二酸化炭素CO
2)の形成をもたらす;
c)軽油についての強制規格に適合する低温時特性に対する抵抗性およびセタン価を得るために調節される炭化水素の分枝の程度。
によって特徴付けられる
従来技術から、2つの転化方法a)およびb)、すなわち、水素化脱酸素および脱炭酸/脱カルボニル化が通常硫化物触媒の存在下に共存することが知られている。
【0041】
したがって、本発明の目的は、軽油収率および/または灯油収率を最大にすること、およびa)の下に記載された水素下脱酸素機構を促進する方法を探すことである。したがって、触媒の選択および操作条件は、水素の消費、特に、所望でない反応、例えばメタン化に由来するであろう消費を厳密に必要である消費に制限することを依然として試みながら水素化脱酸素を優先するように選択性を向かわせることを目標とする。
【0042】
本発明の別の目的は、所望でないより軽質のフラクション、例えばナフサ留分へのパラフィンの分解を制限することによる軽油留分からのパラフィンの異性化によって得られる良品質の軽油燃料およびさらには要件を満足する灯油留分によって構成される中間留分を生じさせる一方でナフサの生成を最小にすることである。
【0043】
驚くべきことに、活性相のタイプに応じて、再生可能な源からの装入材料の水素化脱酸素反応の選択性を制御することが可能であったことが分かった。このような方法で、本発明による触媒であって、活性相および場合によってはアルミナタイプのメソ孔担体を含み、該活性相は、1種のみの第VIB族元素によって構成され、該第VIB族元素は、モリブデンである、触媒であり、硫化物形態である、触媒は、水素化脱酸素反応についての非常に高い選択性を有し、脱炭酸/脱カルボニル化反応が制限されること、それ故に、炭素酸化物の形成によって引き起こされる難点が制限されることを可能にする。
【0044】
本発明による触媒は、それ故に、
1)燃料、軽油および灯油ベースの収率を最大にすること、
2)炭素腐食を制限すること、
3)再利用水素の精製を促進すること
4)付加価値なしに反応のための水素消費の増加を引き起こすメタン化反応を制限すること
を可能にする。
【0045】
本発明の方法により得られる生成物(軽油ベースおよび灯油)は、優れた特徴を与えられる。
【0046】
得られた軽油は、再生可能な装入材料、例えば、炭(coal)またはリグノセルロースバイオマスに由来する石油の軽油および/または添加物と混合された後に、以下の優れた品質のものである:
− その硫黄含有量は10重量ppm未満である;
− その芳香族化合物全含有量は5重量%未満であり、多芳香族化合物の含有量は2重量%未満である;
− セタン価は優れており55超である;
− 密度は、840kg/m
3未満、最も頻繁には820kg/m
3超である;
− 40℃におけるその動粘性率は2〜8mm
2/sである;
− 低温時特性(cold property)に対するその抵抗性は、強制基準に適合し、目詰まり点(cold filter-plugging point)は−15℃以下であり、曇り点(cloud point)は−5℃以下である。
【0047】
得られた灯油留分は、再生可能な装入材料、例えば、炭またはリグノセルロースバイオマスに由来する石油の灯油および/または添加剤と混合された後に、以下の特徴を有する:
− 密度:775〜840kg/m
3
− −20℃における粘度:8mm
2/s未満
− 氷点(freezing point):−47℃未満
− 引火点(flash point):38℃超
− 煙点(smoke point):25mm超
(発明の説明)
本発明は、硫黄含有の第VIB族元素によって構成される活性相を含む担持型または非担持型の触媒であって、該第VIB族元素はモリブデンであり、前記触媒は、担持型触媒の場合、触媒の全質量に関して前記第VIB族元素の酸化物の重量で17〜35%の第VIB族元素含有量を有し、リン、ホウ素およびケイ素から選択されたドープ元素を前記担体上に担持されてさらに含む、触媒に関する。
【0048】
本発明によると、前記触媒は、担持型であり得る。前記触媒が担持型であるならば、それは、有利には無定形無機担体を含み、好ましくは、アルミナ、シリカ、シリカ−アルミナ、マグネシア、粘土およびこれら材料の少なくとも2種の混合物によって形成された群から選択され、前記担体は、好ましくはアルミナである。前記担体はまた、有利には、他の化合物、例えば、酸化ホウ素、ジルコニアおよび酸化チタンによって形成された群から選択された酸化物を含有し得る。
【0049】
無定形無機担体は、好ましくはアルミナのみによって、非常に好ましくはη−、δ−、またはγ−アルミナのみによって構成される。それ故に、この好ましい実施形態において、前記担体は、何等の他の化合物も含有せず、100%のアルミナによって構成される。
【0050】
前記触媒が担持型であるならば、第VIB族元素の含有量は、触媒の全質量に関して第VIB族元素の酸化物の重量で有利には18〜33%、非常に好ましくは20〜32%である。
【0051】
本発明によると、および、前記触媒が担持型であるならば、前記触媒は、リン、フッ素およびホウ素から選択される少なくとも1種のドープ元素も含み、好ましくは、ドープ元素は、水素化脱水素法についての反応選択性を維持しながら高い転化率に到達するために、リンである。
【0052】
本発明によると、および、前記触媒が担持型であるならば、前記ドープ元素は、有利には、担体上に担持させられる。担体上にケイ素を、単独でまたはリンおよび/またはホウ素および/またはフッ素と共に担持させることも有利には可能である。
【0053】
当業者は、これらの元素が触媒活性に関して間接的な効果:硫黄含有活性相のより良好な分散および水素化処理反応に有益な触媒の酸性度における増加を有することを知っている(Sun et al., Catalysis Today 86 (2003) 173)。
【0054】
前記触媒が担持型であるならば、ドープ元素の含有量(ドープ元素は好ましくはリンである)は、有利には、触媒の全質量に関して酸化物P
2O
5の重量で厳格に0.5%超かつ8%未満であり、好ましくは1重量%超かつ8重量%未満、非常に好ましくは3重量%超かつ8重量%未満である。
【0055】
本発明による好ましい触媒は、硫黄含有の第VIB族元素によって構成される活性相と無定形無機担体とを含み、該第VIB族元素はモリブデンであり、無定形無機担体は、アルミナのみによって構成される、担持型触媒であって、触媒の全質量に関して第VIB族元素の酸化物の重量で17〜35%の第VIB族元素含有量を有し、リン、ホウ素およびケイ素から選択されるドープ元素を前記担体上に担持されてさらに含む、触媒である。
【0056】
担持型触媒が用いられるならば、水素化機能は、当業者に既知のあらゆる方法、例えば、共混合、乾式含浸によって前記触媒上に導入され得る。
【0057】
本発明によると、前記触媒は、あるいは、非担持型であり得、その場合、前記触媒は、担体を含有しない。
【0058】
前記触媒が非担持型触媒であるならば、第VIB族元素の含有量は、触媒の全質量に関して第VIB族元素の酸化物の重量で有利には92〜100%、好ましくは92重量%超かつ厳密に99.5重量%未満であり、好ましくは92〜99重量%であり、非常に好ましくは92〜97重量%である。
【0059】
本発明による触媒は、前記触媒が非担持型触媒であるならば、有利には、リン、フッ素およびホウ素から選択される少なくとも1種のドープ元素も含有し得るが、好ましくは、ドープ元素は、水素化脱酸素法についての反応選択性を維持しながら高い転化率を達成するために、リンである。
【0060】
前記触媒が非担持型触媒であるならば、前記ドープ元素は、有利には、活性相上に担持させられる。
【0061】
前記触媒が非担持型触媒であるならば、ドープ元素の含有量(前記ドープ元素は好ましくはリンである)は、有利には、触媒の全質量に関して酸化物P
2O
5の重量で厳格に0.5%超かつ8%未満であり、好ましくは1重量%超かつ8重量%未満、非常に好ましくは3重量%超かつ8重量%未満である。
【0062】
前記触媒が非担持型触媒であるならば、それは、当業者に知られている合成法のいずれか、例えば、酸化物前駆体の直接的硫化および金属チオ塩(metal thiosalt)の熱分解から得られる。
【0063】
本発明はまた、新環境標準を満足する軽油燃料ベースおよび規格を満足する灯油留分の、再生可能な源に由来する装入材料からの調製に特にささげられる。
【0064】
したがって、本発明は、本発明の触媒を用いる、120〜450℃の温度、1〜10MPaの圧力、0.1〜10h
−1の毎時空間速度(hourly space velocity:HSV)での、水素/装入材料の比が装入材料の体積(m
3)当たり水素50〜3000Nm
3になるように装入材料と混合された全量の水素の存在下の、最大10%に制限された脱炭酸/脱カルボニル化による転化を伴う、再生可能な源からの装入材料の水素化脱酸素の方法にも関する。
【0065】
本発明の方法における本発明による触媒の使用は、上記に与えられた理由のために、脱炭酸/脱カルボニル化反応を制限することによって炭素酸化物の形成を制限することを可能にする。
【0066】
本発明の枠の中で、再生可能な源に由来する装入材料の全体的な転化を維持することがそれ故に可能であり、すなわち、水素化脱酸素によるおよび脱炭酸/脱カルボニル化の混合による転化は、水素化脱酸素生成物の収率を最大にしながら、有利には90%以上であり、好ましくは装入材料の全体的な転化は100%に等しく、または、水素化脱酸素による転化は、本発明により、それが90%以上、好ましくは95%以上、好ましくは96%以上であるようにとどまる。
【0067】
再生可能な源に由来する装入材料の脱炭酸/脱カルボニル化による転化または脱炭酸/脱カルボニル化の生成物の収率は、有利には多くとも10%、好ましくは多くとも5%、より好ましくは多くとも4%に制限される。
【0068】
水素化脱酸素反応は、水素消費による水の形成および最初の脂肪酸鎖の炭素数に等しい炭素数を有する炭化水素の形成をもたらす。水素化脱酸素に由来する流出物は、C
14〜C
24炭化水素等の偶数の炭化水素化合物を含み、それらは、脱炭酸/脱カルボニル化反応によって得られた、C
15〜C
23等の奇数の炭化水素化合物を超えて大多数を占める。水素化脱酸素法についての選択性は、燃料に品質向上され得る液体フラクション中の偶数の炭素原子を有する炭化水素の総収率および奇数の炭素原子を有する炭化水素の総収率を測定することによって示される。反応選択性(HDO/脱炭酸/脱カルボニル化)に到達することを可能にする、偶数および奇数の炭化水素の収率は、燃料に品質向上させられる液体反応流出物の気相におけるクロマトグラフィー分析によって見出される。気相中のクロマトグラフィー分析による測定技術は、当業者に周知の方法である。
【0069】
HDO基準による一つの選択性は、偶数の炭素原子を有する炭化水素の総収率の奇数の炭素原子を有する炭化水素の総収率に対する比である。
【0070】
本発明の水素化脱酸素法によると、装入材料(場合によっては予備処理された)は、120〜450℃、好ましくは120〜350℃、好ましくは150〜320℃、一層より好ましくは180〜310℃の温度で、本発明による触媒と接触させられる。圧力は、1〜10MPa、好ましくは1〜6MPaである。毎時空間速度は0.1〜10h
−1である。装入材料は、水素の存在下に前記触媒と接触させられる。装入材料と混合される水素の総量は、水素/装入材料比が装入材料の体積(m
3)当たり水素50〜3000Nm
3、好ましくは装入材料の体積(m
3)当たり水素70〜2000Nm
3、好ましくは装入材料の体積(m
3)当たり水素150〜1500Nm
3になるようにされる。
【0071】
本発明による水素化脱酸素法は、有利には、固定床または沸騰床(ebullating bed)において、好ましくは、固定床において行われる。
【0072】
水素化脱酸素法が固定床において行われるならば、前記方法は、120〜450℃、好ましくは120〜350℃、好ましくは150〜320℃、一層より好ましくは180〜310℃の温度で行われる。圧力は、1〜10MPa、好ましくは1〜6MPaである。毎時空間速度は0.1〜10h
−1である。装入材料は、水素の存在下に前記触媒と接触させられる。装入材料と混合される水素の総量は、水素/装入材料の比が装入材料の体積(m
3)当たり水素50〜3000Nm
3、好ましくは装入材料の体積(m
3)当たり水素70〜2000Nm
3、好ましくは装入材料の体積(m
3)当たり水素150〜1500Nm
3になるようにされる。
【0073】
水素化脱酸素法が沸騰床において行われるならば、前記方法は、2〜35MPa、好ましくは2〜15MPa、好ましくは3〜10MPaの絶対圧力、200〜450℃、好ましくは250〜380℃の温度、0.1〜10h
−1、好ましくは0.5〜5h
−1の毎時空間速度で行われ、装入材料と混合される水素の量は、液体装入材料の立方メートル(m
3)当たり50〜5000標準立方メートル(Nm
3)、好ましくは体積(m
3)当たり100〜1000Nm
3、好ましくは体積(m
3)当たり200〜500Nm
3である。
【0074】
本発明による1種の単一触媒または複数種の異なる触媒が同時にまたは連続的に本発明による水素化脱酸素法において用いられたならば、本発明の範囲の外側に来ないだろう。前記方法は、有利には、1以上の触媒床を有する1以上の反応器において、好ましくは、ガスおよび液体の下向きの混合流により、工業的に行われ得る。このタイプの反応器は、通常、当業者によって固定床トリクル流反応器(fixed bed trickle flow reactor)と呼ばれる。
【0075】
用いられる反応は非常に発熱性であることは当業者に周知である。すなわち、それらは、相当な量の熱の放出を伴ってなされる。その結果、反応媒体の温度の大きな上昇があり、このことは、所望でない効果を生じさせ得る。また、温度は、反応速度を増加させる効果を有し、このことにより、その後により多くの熱が放出されることになる。この自立的現象は、完全に制御されなければならないか、あるいは、さもなければそれは、反応器内の材料の融点より高いレベルに達し得る非常に高い温度につながることになる。当該危機にあることなしに、高温は、品質向上させることが困難であり生じるパラフィンの数を比例的に低減させる軽質炭化水素(メタン、エタン)を形成するための分解反応を助ける。一般に、本発明に含まれる発熱反応の使用に関係する温度の上昇を制御することは、安全性の理由並びに方法の全体的な収率の両方にとって不可欠であるようである。
【0076】
そのためには、当業者に周知である種々の技術が想定され得るが、例えば、WO2008/058664に記載された方法がある。
【0077】
有利には、装入材料は、適切な処理によって、再生可能な起源からのバイオ液体中に自然に存在する汚染物質、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属および遷移金属、例えば窒素を除去するために予備処理または予備精製され得る。適切な処理は、例えば、以下であり得る:精製の当業者に周知である熱処理および/または化学処理。
【0078】
好ましくは、場合による予備処理は、反応性の不飽和物を水素化するための前記装入材料の穏やかな予備水素化からなる。穏やかな予備水素化は、有利には50〜400℃の温度、0.1〜10MPaの水素圧力で、好ましくは、150〜200℃の温度で行われる。予備水素化触媒は、有利には、第VIII族および/または第VIB族金属を含み、予備水素化触媒は、好ましくは、パラジウムベース、ニッケル−白金ベース、ニッケル−モリブデンベースの触媒またはコバルト−およびモリブデン−ベースの触媒であり、これらは、金属酸化物または酸化物混合物、例えば、アルミナ、シリカ、チタン、ゼオライト上に分散させられる。
【0079】
本発明による方法の場合による予備処理工程において用いられる触媒の金属は、硫黄含有金属または金属相であり、好ましくは金属相である。
【0080】
改善された特性を有する軽油燃料を製造するために、炭化水素流出物は、次いで、以下の場合による工程において処理される:
本発明による水素化脱酸素法からの流出物は、次いで、少なくとも1回の分離工程、好ましくは、気/液分離工程および水および少なくとも1種の液体炭化水素ベースの分離工程を経、前記工程は、適宜のものであり、任意の順序で行われる。
【0081】
好ましくは、本発明による水素化脱酸素法からの流出物は、気/液分離工程を経る。当該工程の目的は、液体からガスを分離すること、特に、水素を豊富に含み、CO、CO
2、H
2Sおよびプロパンのようなガスも含み得るガスおよび少なくとも1種の液体流出物を回収することであり、前記ガスは、有利には、それ自体当業者に知られている方法、例えば、COをCO
2に転化させるメタン化およびCO
2を除去するためのアミンによる洗浄によってさらに精製され得る。
【0082】
好ましくは、先行する適宜の気/液分離工程からの液体流出物は、次いで、生じた水の少なくとも一部の好ましくは全部および少なくとも1種の液体炭化水素ベースの分離を経る(水は、水素化脱酸素反応の時に生じる)。
【0083】
この工程の目的は、液体炭化水素流出物から水を分離することである。水の除去は、水素化脱酸素反応(hydrodeoxygenation:HDO)によって生じた水の除去であると理解される。大なり小なりの程度の水の除去は、有利には、その後の、本発明の方法の適宜工程において用いられる水素化異性化触媒の水に対する許容範囲に依存する。水は、当業者に知られているあらゆる方法または技術、例えば、乾燥、防湿剤中の通過、フラッシュ蒸発(flash)、溶媒抽出、蒸留およびデカンティングまたはこれらの方法の少なくとも2つの組合せを用いて除かれ得る。
【0084】
場合によっては、種々の汚染物の最終精製工程が、当業者に知られている方法、例えば、水蒸気ストリッピングまたは窒素ストリッピングまたは癒合(coalescence)および/または捕捉塊(capture mass)によって行われ得る。得られた前記炭化水素ベースからの窒素性化合物の除去工程は、有利には、本発明による水素化脱酸素工程と適宜の水素化異性化工程の間に行われ得る。好ましくは、窒素性化合物の除去工程は、前記適宜の水分離工程の後、好ましくは、前記最終精製工程の後に行われる。
【0085】
先行する適宜の水分離工程または好ましくは前記最終精製工程に由来する炭化水素ベースは、一般的には、本発明による方法の水素化脱酸素反応の間に除去されなかった残留窒素性有機化合物を含有する。前記残留窒素性有機化合物は、水素化異性化触媒の阻害物質であり、したがって、適宜の水素化異性化工程中のその通過の前に前記炭化水素ベースから除去されなければならない。残留窒素性有機化合物の除去は、当業者に知られているあらゆる技術によって、例えば、捕捉塊の使用によってなされ得る。用語「捕捉塊」は、活性化されたまたは活性化されない、アルミナ、シリカ−アルミナ、ゼオライト、活性炭、およびイオン交換樹脂に言及するために用いられる。好ましくは、窒素性有機化合物の除去工程は、イオン交換樹脂上で行われる。
【0086】
1つの好ましい実施形態によると、前述の窒素性有機化合物の除去工程の終了時に得られた液体炭化水素ベースの少なくとも一部は、選択的水素化異性化触媒の存在下に水素化異性化される。用いられる水素化異性化触媒は、有利には、二機能性タイプのものであり、すなわち、それらは、水素化/脱水素化機能および水素化異性化機能を有する。
【0087】
前記水素化異性化触媒は、有利には、水素化脱水素化機能としての少なくとも1種の第VIII族金属および/または少なくとも1種の第VIB族金属と、水素化異性化機能としての少なくとも1種のモレキュラーシーブまたは無定形無機担体とを含む。
【0088】
前記水素化異性化触媒は、有利には、少なくとも1種の第VIII族貴金属または少なくとも1種の第VIB族金属のいずれかを、少なくとも1種の第VIII族からの非貴金属と組み合わせて含む。第VIII族貴金属は、好ましくは白金またはパラジウムから選択され、還元された形態において活性である。第VIB族金属は、好ましくはモリブデンまたはタングステンから選択される。第VIII族からの非貴金属は、好ましくは、ニッケルおよびコバルトから選択され、好ましくは、それらの硫黄含有形態において用いられる。
【0089】
水素化異性化触媒が第VIII族からの少なくとも1種の貴金属を含むならば、本発明による方法の工程d)において用いられる水素化異性化触媒の貴金属の全含有量は、最終触媒に関して有利には0.01〜5重量%、好ましくは0.1〜4重量%、非常に好ましくは0.2〜2重量%である。
【0090】
好ましくは、水素化異性化触媒は、白金またはパラジウムを含み、好ましくは、水素化異性化触媒は、白金を含む。
【0091】
水素化異性化触媒が少なくとも1種の第VIB族金属を少なくとも1種の第VIII族非貴金属と組み合わせて含むならば、本発明による方法の工程c)において用いられる水素化異性化触媒中の第VIB族金属の含有量は、有利には、酸化物等価体として、最終触媒に関して5〜40重量%、好ましくは10〜35重量%、非常に好ましくは15〜30重量%であり、前記触媒の第VIII族金属の含有量は、有利には、酸化物等価体として、最終触媒に関して0.5〜10重量%、好ましくは1〜8重量%、非常に好ましくは1.5〜6重量%である。
【0092】
金属の水素化/脱水素化機能は、有利には、当業者に知られているあらゆる方法、例えば、共混合(co-mixing)、乾式含浸、交換による含浸を用いて前記触媒上に導入され得る。
【0093】
1つの好ましい実施形態において、前記水素化異性化触媒は、水素化異性化機能として少なくとも1種の無定形無機担体を含み、前記1種の無定形無機担体は、シリカ−アルミナおよびケイ酸質アルミナから選択されるが、好ましくはシリカ−アルミナである。
【0094】
別の好ましい実施形態によると、前記水素化異性化触媒は、水素化異性化機能として少なくとも1種のモレキュラーシーブ、好ましくは少なくとも1種のゼオライト性のモレキュラーシーブ、より好ましくは少なくとも1種の一次元10MRゼオライトモレキュラーシーブを含む。
【0095】
ゼオライトモレキュラーシーブは、「Atlas of Zeolite Structure Types」,W. M. Meier,D. H. Olson and Ch.Baerlocher,第5改訂版,2001年,Elsevierにおいて定義されている。この文献は、本出願に対しても参考となる。ゼオライトは、そこではそれらの細孔開口またはチャネルのサイズに従って分類される。
【0096】
一次元10MRゼオライトモレキュラーシーブは、10個の酸素原子の環によって規定される開口(10MR開口)を有する細孔またはチャネルを有する。10MR開口を有するゼオライトモレキュラーシーブのチャネルは、有利には、前記ゼオライトの外側に直接的に開口する相互接続されない一次元チャネルである。前記水素化異性化触媒中に存在する一次元10MRゼオライトモレキュラーシーブは、有利には、ケイ素と、アルミニウム、鉄、ガリウム、リンおよびホウ素によって形成された群から選択される少なくとも1種の元素T、好ましくはアルミニウムとを含む。前述のゼオライトのSi/Al比は、有利には、合成において得られたもの、または、当業者に周知である合成後脱アルミニウム化処理、例えば、酸処理(acid attack)に続けられるか続けられない水熱処理または無機または有機酸の溶液による直接的酸処理の後に得られたものである(このリストは、制限的ではない)。それらは、好ましくは、ほとんど全て、酸型であり、すなわち、一価の補償(compensation)カチオン(例えばナトリウム)と固体の結晶ネットワーク中に挿入されたT原子との間の原子比は、有利には、0.1未満、好ましくは0.05未満、非常に好ましくは0.01未満である。それ故に、前記選択的水素化異性化触媒の組成物中のゼオライトは、有利には、焼成され、かつ、少なくとも1種のアンモニウム塩溶液による少なくとも1回の処理によって交換され、アンモニウム型のゼオライトが得られ、このものは、一旦焼成されて、酸型の前記ゼオライトをもたらすことになる。
【0097】
前記水素化異性化触媒の前記一次元10MRゼオライトモレキュラーシーブは、有利には、構造型TON(NU−10等)、FER(フェリエライト等)、EUO(EU−1およびZSM−50から選択される)のゼオライトモレキュラーシーブ(単独または混合される)、またはゼオライトモレキュラーシーブZSM−48、ZBM−30、IZM−1、COK−7、EU−2およびEU−11(単独または混合される)から選択される。好ましくは、前記一次元10MRゼオライトモレキュラーシーブは、ゼオライトモレキュラーシーブZSM−48、ZBM−30、IZM−1およびCOK−7から選択される(単独でまたは混合される)。一層より好ましくは、前記一次元10MRゼオライトモレキュラーシーブは、ZSM−48およびZBM−30ゼオライトモレキュラーシーブから選択される(単独または混合される)。
【0098】
非常に好ましくは、前記一次元10MRゼオライトモレキュラーシーブは、ZBM−30ゼオライトであり、一層より好ましくは、前記一次元10MRゼオライトモレキュラーシーブは、トリエチレンテトラミン有機構造化により合成されたZBM−30ゼオライトである。
【0099】
好ましくは、水素化異性化触媒は、白金によって構成された活性金属相と、水素化異性化するZBM−30ベースの相とを含み、一層より好ましくは、水素化異性化触媒は、白金によって構成された活性金属相と、トリエチレンテトラミン有機構造化により合成されたZBM−30ベースの水素化異性化機能を含む。
【0100】
ZBM−30ゼオライトは、EP-A-46 504において記載されており、COK−7ゼオライトは、EP 1 702 888 A1またはFR 2 882 744 A1において記載されている。
【0101】
IZM−1ゼオライトは、FR-A-2 911 866において記載されている。
【0102】
構造型TONのゼオライトは、「Atlas of Zeolite Structure Types」,W. M. Meier,D. H. Olson and Ch.Baerlocher,第5改訂版,2001年,Elsevierに記載されている。
【0103】
構造型TONのゼオライトは、上記に挙げられた「Atlas of Zeolite Structure Types」において記載されており、ゼオライトNU−10は、EP-65400およびEP-77624において記載されている。
【0104】
ZSM−48ゼオライトは、Schlenker, J.L. Rohrbaugh, W.J., Chu, P., Valyocsik, E.W.and Kokotailo,G.T. Title:“The framework topology of ZSM-48: a high silica zeolite, Reference: Zeolites, 5,355-358 (1985) Material
*ZSM-48”において記載されている。
【0105】
構造型FERのゼオライトは、上記に挙げられた「Atlas of Zeolite Structure Types」において記載されている。
【0106】
一次元10MRゼオライトモレキュラーシーブの含有量は、最終触媒に関して有利には5〜95重量%、好ましくは10〜90重量%、より好ましくは15〜85重量%、非常に好ましくは20〜80重量%である。
【0107】
好ましくは、前記水素化異性化触媒はまた、多孔性の無機マトリクスによって構成されるバインダを含む。前記バインダは、有利には、前記水素化異性化触媒を形状化する工程の間に用いられ得る。
【0108】
好ましくは、形状化は、当業者に知られているあらゆる形態のアルミナを含有するマトリクスによって、非常に好ましくはガンマアルミナを含有するマトリクスにより構成されたバインダを用いて行われる。
【0109】
得られた水素化異性化触媒は、有利には、種々の形状および寸法の粒子の形態に形状化される。それらは、一般に、円筒形のまたは多葉の押出物、例えば、直線のまたは捻れた形状の二葉、三葉、多葉の形態において用いられるが、場合によっては、破砕粉体、タブレット、環、ボール、車輪の形態で製造されかつ用いられ得る。押出以外の技術、例えば、ペレット化または錠剤化(drageification)が、有利には用いられ得る。
【0110】
水素化異性化触媒が少なくとも1種の貴金属を含有するならば、前記水素化異性化触媒中に含有される貴金属は、有利には、還元されなければならない。金属の還元を行うための好ましい方法の一つは、水素中150〜650℃の温度および1〜250バールの全圧での処理である。例えば、還元は、2時間にわたる150℃での平坦域、次いで、分当たり1℃の速さでの450℃への昇温、次いで、2時間にわたる450℃での平坦域にある:この還元工程を通して、水素流量は、触媒の立方メートル当たり水素1000標準立方メートルであり、全圧は、1バールに一定に維持される。現場外(ex-situ)のあらゆる還元法が、有利には、想定され得る。
【0111】
水素化異性化工程において、挿入原料は、有利には、水素の存在下に、前記水素化異性化触媒と、非転化挿入原料の水素化異性化が行われることを有利に可能にする操作温度および圧力で接触させられる。これは、20重量%未満、好ましくは10重量%未満、非常に好ましくは5重量%未満の150℃
+フラクションの150℃
−フラクションへの転化を伴って水素化異性化が起こることを意味する。
【0112】
それ故に、本発明による方法における場合による水素化異性化工程は、有利には150〜500℃、好ましくは150〜450℃、非常に好ましくは200〜450℃の温度、1〜10MPa、好ましくは2〜10MPa、非常に好ましくは1〜9MPaの圧力、有利には0.1〜10h
−1、好ましくは0.2〜7h
−1、非常に好ましくは0.5〜5h
−1の毎時空間速度、炭化水素に対する水素の体積の比が有利には70〜1000Nm
3/m
3(挿入原料)、装入材料の立方メートル当たり水素100〜1000標準立方メートルの水素、好ましくは、装入材料の立方メートル当たり水素150〜1000標準立方メートルの水素流量になるように行われる。
【0113】
好ましくは、場合による水素化異性化工程は、向流で行われる。
【0114】
水素化異性化された流出物は、次いで、有利には、少なくとも一部、好ましくはその全体において、1回以上の分離操作を経る。この工程の目的は、液体からガスを分離すること、特には、水素を豊富に含みかつ軽質留分、例えばC
1−C
4留分も含み得るガス、および少なくとも1種の軽油留分およびナフサ留分を回収することである。ナフサ留分の品質向上は、本発明の目的ではないが、当該留分は、有利には、水蒸気分解装置または接触改質装置に送られ得る。
【0115】
(ガスの加工処理および再利用)
本発明による水素化脱酸素法に由来する適宜の分離工程および/または適宜の水素化異性化工程の間に分離された水素を含有するガスは、必要ならば、有利には、少なくとも一部加工処理されて、その軽質留分(C
1〜C
4)の含有量が低減させられる。
【0116】
先行する適宜の分離工程からの再利用ガスに、熱分解により硫黄含有水素H
2Sを生じさせる所定量の硫黄含有化合物、例えばDMDS(dimethyl disulfide)を加えることが可能である。この装置は、必要ならば、水素化処理触媒および/または水素化異性化触媒を硫黄含有状態に維持することを可能にする。有利には、導入される硫黄含有化合物の量は、再利用ガス中のH
2Sの含有量が少なくとも15容積ppm、好ましくは最小限0.1容積%、さらには最小限0.2容積%である。
【0117】
再利用水素を、本発明による水素化脱酸素法および/または適宜の水素化異性化工程に、本発明による接触水素化脱酸素床および/または水素化異性化床の間にクエンチ水素(quenching hydrogen)の形態で入る装入材料と共に導入することが有利には可能である。
【0118】
以下の実施例は、本発明を明確にするが、しかしながら、本発明の範囲を限定するものではない。
【0119】
(実施例)
(水素化脱酸素:本発明に合致するMoP/Al
2O
3触媒および本発明に合致しないNiMoP/Al
2O
3触媒の性能の比較)
50mL/hの予備精製されたアブラナ油が、100mLの水素化処理触媒を充填された固定床を有する等温反応器に導入される。アブラナ油の密度は920kg/m
3であり、硫黄含有量は10重量ppm未満であり、セタン価は35である。装入材料の立方メートル当たり700Nm
3の水素が、反応器に導入され、該反応器は、300℃の温度および5MPaの圧力に維持される。本発明に合致するMoP/Al
2O
3触媒(HDT1)と本発明と合致しないNiMoP/Al
2O
3(HDT2)触媒とを比較するために用いられるアブラナ油装入材料の主要な特徴が表1に列挙される。
【0120】
本発明により用いられるHDT1触媒は、第VIB族元素、すなわちモリブデンと、リンとによって、それぞれ25.3重量%のMoO
3および6.1重量%のP
2O
5の含有量において、ガンマアルミナ担体上に構成される。
【0121】
比較として用いられるHDT2触媒は、第VIB族元素、すなわち、モリブデンと、リンと、第VIII族元素、すなわちニッケルとによって、それぞれ、21重量%のMoO
3、5重量%のP
2O
5および4.3重量%のNiOの含有量において、同一タイプのアルミナ担体上に分散されて構成される。両方の場合において、質量比Mo/Pは一定に維持される。触媒は、水溶液中の酸化物前駆体の乾式含浸によって調製される。調製方法は、本発明の範囲を制限しない。
【0123】
HDT1触媒およびHDT2触媒は、それらの硫黄含有体において評価され、試験前に、DMDSが加えられた直接蒸留軽油装入材料を用いて現場(in situ)硫化される。350℃で加圧装置において、2重量%のジメチルジスルフィドを直接蒸留軽油に加えることによって行われる現場硫化の後に、装入材料は、100%までアブラナ油により作り上げられた装入材料になるように改変された。
【0124】
触媒を硫化物状態に維持するために、DMDS形態の50重量ppmの硫黄が、アブラナ油に加えられた。反応条件下に、DMDSは、完全に分解し、メタンおよびH
2Sが形成された。
【0125】
HDT1およびHDT2触媒について得られた結果は、表2に列挙される。
【0127】
同一の反応条件下にアブラナ油の全体的な転化について、ニッケルを含まない触媒は、ニッケル存在下の触媒よりはるかに大きい水素化脱酸素法についての選択性を有し、非常に選択的に97重量%超の偶数の炭素原子を有する炭化水素(C
14−C
24)および3重量%未満の奇数の炭素原子を有する炭化水素(C
15−C
23)が形成されたことが留意される。したがって、これは、第一に、より大きい炭素数を有するパラフィンの生成、第二に、炭素酸化物(COおよびCO
2)の形成における非常に大きい制限を意味する。また、軽油燃料に品質向上され得る炭化水素の収率は、それ故に、大いに向上させられる(触媒HDT1の存在下に85重量%および触媒HDT2の存在下に81重量%)。(説明される質量収率は、燃料に品質向上させられた液体反応流出物の気相クロマトグラフィーによって得られる)。
【0128】
(水素化脱酸素工程からの流出物の分離)
工程a)からの水素化処理された流出物の全てが、水素を豊富に含むガスと液体の軽油ベースとを回収するために分離される。
【0129】
(分離工程からの水素化処理された流出物の水素化異性化触媒による水素化異性化)
水素化異性化触媒は、貴金属と一次元10MR ZBM−30ゼオライトとを含有する触媒である。この触媒は、以降に記載される方法を経由して得られる。ZBM−30ゼオライトは、BASF Patent EP-A-46504に従ってトリエチレンテトラミン有機構造化を用いて合成される。合成からの粗製ZBM−30ゼオライトは、乾燥空気流中550℃での12時間にわたる焼成を経る。こうして得られたH−ZBM−30ゼオライト(酸型)は、45のSi/Al比を有する。ゼオライトは、会社Condea-Sasolによって供給されるタイプSB3アルミナゲルと混合される。混合されたペースト状物は、次いで、直径1.4mmのダイを通して押し出される。こうして得られた押出物は、500℃で2時間にわたり空気中で焼成される。H−ZBM−3の重量含有量は20重量%である。担体押出物は、次いで、白金塩Pt(NH
3)
42+,2OH
−の水溶液による乾式含浸工程を経、それらは、次いで、水を有する浸漬ドラム(soaking drum)中24時間にわたる周囲温度での熟成工程を経、次いで、2時間にわたって乾燥空気中通過床において500℃で焼成される(分当たり5℃の速さでの昇温勾配)。最終触媒の白金の重量含有量は、焼成の後、0.48%である。
【0130】
HDT1触媒(本発明に合致する)の存在下のアブラナ油の水素化処理の後に得られた流出物は、水素の喪失を伴って(すなわち、再利用される水素なし)、水素化異性化反応器中の触媒C1により、以下に記載される操作条件下に水素化異性化される:
− HSV(装入材料の容積/触媒の容積/時)=1h
−1
− 全操作圧力:5MPa
− 水素/装入材料の比:700標準リットル/リットル
温度は、水素化異性化の間に5重量%未満の150℃
+フラクションの150℃
−フラクションへの転化を引き出すように調節される。試験に先行して、触媒は、以下の操作条件下に還元工程を経る:
− 水素流量:1時間当たりおよび触媒の容積(リットル)当たり1600標準リットル
− 周囲温度の120℃への上昇:10℃/分
− 1時間にわたる120℃での平坦域
− 120℃から450℃への5℃/分での上昇
− 2時間にわたる450℃での平坦域
− 圧力:0.1MPa
水素化異性化された流出物は、次いで、焼成される。燃料収率および燃料特性は、表3、4および5に与えられる。
【0134】
密度、氷点および引火点についての仕様は、石油の灯油と混合することによって得られる。
【0135】
本発明による方法は、したがって、ナフサの生成を低減させながら軽油および灯油ベースの生成を可能にする。