特許第5857556号(P5857556)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5857556マルチチップ用複合リードフレーム及び半導体装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5857556
(24)【登録日】2015年12月25日
(45)【発行日】2016年2月10日
(54)【発明の名称】マルチチップ用複合リードフレーム及び半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/50 20060101AFI20160128BHJP
   H01L 25/065 20060101ALI20160128BHJP
   H01L 25/07 20060101ALI20160128BHJP
   H01L 25/18 20060101ALI20160128BHJP
【FI】
   H01L23/50 W
   H01L25/08 Z
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-194742(P2011-194742)
(22)【出願日】2011年9月7日
(65)【公開番号】特開2013-58530(P2013-58530A)
(43)【公開日】2013年3月28日
【審査請求日】2014年8月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 修
(72)【発明者】
【氏名】西辻 清明
(72)【発明者】
【氏名】藤戸 大生
(72)【発明者】
【氏名】馬庭 進
【審査官】 小山 和俊
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−204104(JP,A)
【文献】 特開平11−330347(JP,A)
【文献】 特開平03−022544(JP,A)
【文献】 特開平07−045776(JP,A)
【文献】 特開2000−124390(JP,A)
【文献】 特開2009−152329(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/50
H01L 25/065
H01L 25/07
H01L 25/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リードフレーム中心部の上下に異なる半導体チップを搭載するためのリードフレームであって、少なくとも、一方の半導体チップに対応するための該半導体チップに向かうインナーリード群と、別の半導体チップに対応するための該半導体チップに向かうインナーリード群と、前記いずれかのインナーリード群の端部に固定されて支持される有機絶縁樹脂シートからなる半導体チップ用アイランドと、を備え、前記有機絶縁樹脂シートが固定されるインナーリード群の先端部は、別のインナーリード群の先端部より中心に近く、且つ前記樹脂シートが収容されるように、ハーフエッチング加工されることで先端部以外より厚みが薄く、前記有機絶縁樹脂シートは前記ハーフエッチング部に固定されることを特徴とするマルチチップ用複合リードフレーム。
【請求項2】
請求項に記載のマルチチップ用複合リードフレームを使用する半導体装置であって、半導体チップ用アイランドの一方の面に搭載された半導体チップは、一方のインナーリード群とワイヤボンディング接続され、他方の面に搭載された別の半導体チップも別のインナーリード群とワイヤボンディング接続され、その後所定のパッケージング加工が施されたことを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
請求項に記載のマルチチップ用複合リードフレームを使用する半導体装置であって、半導体チップ用アイランドの一方の面に搭載された半導体チップは、一方のインナーリード群とワイヤボンディング接続され、他方の面に搭載された別の半導体チップは別のインナーリード群とフリップチップ接続され、その後所定のパッケージング加工が施されたことを特徴とする半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の半導体チップを搭載可能な複合リードフレームのインナーリード構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ICやLSIのようなシリコン半導体(以下、半導体チップもしくは単にチップと記す。)は、接続用の端子を半導体チップの上面や下面に100〜1000個備えるが、このピッチは一般的に非常に狭く(〜100μm)プリント基板に直接搭載できない。そこで、図3に示すような半導体の端子ピッチを接続の容易なピッチ(〜1mm)にまで拡大する中間基板に搭載した上で、取り扱いが容易な形状に整えるパッケージング加工が行われる。このパッケージング工程は複数の工程を含むが半導体チップは、原則として1個が中間基板としてのリードフレーム1に搭載される。
【0003】
リードフレーム1(以下、LFとも記す。)は、アルミや鉄/ニッケル合金からなる一定の剛性を有する金属板をプレスもしくはエッチング加工して製造され、チップの端子数に相当する複数のリードと1個のアイランド4からなる。リードは、アイランド4に搭載される半導体チップの端子2と電気的に接続するインナーリード9と外部機器接続用の端子につながるアウターリード10がある。インナーリード9とアウターリード10は同じ金属配線であるが前者はアイランド4に向かってピッチが狭く、アウターリード10はアイランド4からインナーリード9を放射状に外側に延ばしたものである。
【0004】
一般的なLFでは、アイランド4に搭載する半導体チップ上の端子2とインナーリード9はAu線3でワイヤーボンディング接続する。このほかLFには、リード類がふらつかずばらけないように一体に保つサポートフレーム8、吊りバー6やダムバー7と称されフレームが付属するが、リード同士が短絡しないようにパッケージング工程の適切な段階で切断される。
【0005】
LF以外の中間基板には、銅箔付樹脂フィルムあるいは銅箔付プラスチック基板を用いて、銅箔をフォトリソ技術により、ピッチ拡張用に放射状に加工した配線基板がある。配線構成や使用法はLFと同じであるが、樹脂からなる支持体のおかげで金属部分の厚みを薄くできるので、エッチング加工でリードをパターニングする場合より微細加工ができるという利点がある。
【0006】
多ピンの半導体チップを搭載するにはリードの数を増やす必要があるが、その際インナーリード9の線幅をより微細化する必要がある。エッチングで微細化するにはリードフレーム1を組成する金属の板厚をインナーリード間の隙間より薄くする必要がある。しかし薄くし過ぎるとインナーリードの自己支持性と、外部接続端子としてのアウターリードに必要な剛性が維持できなくなる。
【0007】
そこで、インナーリード数を増やすために、リードフレーム1のアイランド4とこれに向かうインナーリード9部分を、フィルム上に金属配線を備え、微細加工が容易な配線基板に置換する技術が開発された(TAB)。フィルム等樹脂基板上の銅箔は、LFより板厚が薄いので微細加工が可能である。LFのインナーリードはTAB等のアウターリードと接続される必要がるが、これはアウターリード部をインナーリードに重ねて接合することでなされる(特許文献1)。
【0008】
同じ技術思想に属するものに、フィルム状のTABの代わりにプラスチック配線基板を
使用するものがある(特許文献2)。LF構造を基本に、その中心部をフィルムにするかより剛性のあるプラスチック板にするかの違いしかない。
これらはいずれも、リードフレームの内側のリード先端部と配線基板のアウターリードとが接続されて一体化しており、複合リードフレームと呼ばれる(特許文献2)。
【0009】
リードフレーム1を拡張する別の方向は、複数の半導体チップを搭載できるマルチチップ対応のLFである。このようなマルチチップタイプは、新たな集積回路を開発する場合に、複数の集積回路チップをまとめて1チップ化するよりもTAT(Turn Around Time)が短くてすむので開発投資を低減できる利点がある。既存の半導体チップやその組み立てライン及び試験工程を流用できるため、ハイブリッドICよりもカスタムICを作るのが容易であり、新しく開発するのはLFのみとなる(特許文献3)。
【0010】
複合リードフレームのマルチチップ化として、中央の配線基板上に複数のチップを並べる形態と垂直方向に重ねる形態及びこれらの組み合わせがある。垂直方向についてはひとつのチップの背中に重ねる形態と、基板の表裏にICチップを配置する形態及びこれらの組み合わせがある。チップの接続端子とLFと配線基板のリードとの接続は、通常はワイヤーボンディングで行われ、LFと中心部の配線基板(TABあるいはプラスチック基板)のリードとは重ね合わせて金属接合で接続される。
【0011】
しかしながら、複合フレーム化自体が、1回のエッチングもしくはプレス加工で製造されるLFに、別のエッチング加工で製造したTABあるいはプラスチック配線板を付加するもので、LFに比べて高価になるという問題がある。
特に、プラスチック基板あるいはTABテープ上のリード端子をリードフレーム側のリードに接合させる場合、電気抵抗を低くするために、前者のリード端子にはAuめっきを行い高温で接合することが必要である。この点から複合リードフレーム化は高価になる。
【0012】
さらにまた、有機材料と金属との複合材であるプラスチック基板あるいはTABテープ基材は一般的に高温では基板の膨張があるので、できるだけ低温でLFと接合する必要がある。一方、金属接合の安定化には高温で短時間の接合が求められる。このように有機配線板上の金属端子と金属リードフレームでの相反する熱負荷の影響はトレードオフの関係がある。これに加え、両材料の熱膨張係数には大きな乖離があり、接合後に熱収縮差から引き剥がし応力が発生し、安定な金属接合を得るのが難しい問題がある。
【0013】
複合リードフレームで複数のチップを搭載する場合、中央の配線基板の表裏に金属配線を形成し同時に裏面の配線を表面に導くスルーホール加工をする必要がある。Auめっきしたプラスチック基板あるいはTABテープとAgめっきしたリードフレーム(LF)とを接合するには、リード同士の位置合わせ精度が求められ、作業性が低下する。これらはいずれもコストアップになるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特願平3−154848号公報
【特許文献2】特願平3−170242号公報
【特許文献3】特許第2582013号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
そこで本発明は、リードフレーム中心部の上下に半導体チップを搭載するマルチチップ用複合リードフレーム構造において、金属基板と有機材料基板という異質な2種類の支持基板のリードを接合する際に予め必要となる事前処理や種々の不都合の排除を目的とした
もので、マルチチップ対応の新規な複合リードフレームの構造の提供することを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、リードフレーム中心部の上下に異なる半導体チップを搭載するためのリードフレームであって、少なくとも、一方の半導体チップに対応するための該半導体チップに向かうインナーリード群と、別の半導体チップに対応するための該半導体チップに向かうインナーリード群と、前記いずれかのインナーリード群の端部に固定されて支持される有機絶縁樹脂シートからなる半導体チップ用アイランドと、を備え、前記有機絶縁樹脂シートが固定されるインナーリード群の先端部は、別のインナーリード群の先端部より中心に近く、且つ前記樹脂シートが収容されるように、ハーフエッチング加工されることで先端部以外より厚みが薄く、前記有機絶縁樹脂シートは前記ハーフエッチング部に固定されることを特徴とするマルチチップ用複合リードフレームとしたものである。
【0018】
次に、請求項に記載の発明は、請求項に記載のマルチチップ用複合リードフレームを使用する半導体装置であって、半導体チップ用アイランドの一方の面に搭載された半導体チップは、一方のインナーリード群とワイヤボンディング接続され、他方の面に搭載された別の半導体チップも別のインナーリード群とワイヤボンディング接続され、その後所定のパッケージング加工が施されたことを特徴とする半導体装置としたものである。
【0019】
次に、請求項に記載の発明は、請求項1記載のマルチチップ用複合リードフレーム
を使用する半導体装置であって、半導体チップ用アイランドの一方の面に搭載された半導体チップは、一方のインナーリード群とワイヤボンディング接続され、他方の面に搭載された別の半導体チップは別のインナーリード群とフリップチップ接続され、その後所定のパッケージング加工が施されたことを特徴とする半導体装置としたものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、リードフレームのインナーリードを2つの半導体チップに対応する2群に分けて長さを変えた構成とし、長さの長いほうのインナーリードに有機絶縁樹脂を固定した。リードフレームの中央部の平坦な有機絶縁樹脂をアイランドとして半導体チップ搭載面としたことにより、上下に複数の半導体チップを搭載することが可能になった。
尚、異なる半導体チップは、複数であることが肝要で、同じ半導体チップであっても構わない。
【0021】
アイランドの表裏に半導体チップを搭載できるが、アイランドとしての基板は単に半導体チップを搭載するだけであって、従来の複合リードフレームと異なり配線加工やスルーホール導通を必要としない。したがって、配線端子自体が存在せずAu,Ag等の表面処理が不要である。当然、外側のリードフレームのリードと内側のアイランド基板のリードとの金属接合もなくアライメント工程も不要である。さらに、リード間の金属接合に必要な高温での接合処理もないために、異質な材料を高温で固定したことによる金属接合部の強度低下もない。
【0022】
アイランドの下部の長さの長いインナーリードに有機絶縁樹脂が接着され固定され、その上表面に搭載される半導体チップの端子と短いインナーリードとは、ワイヤーボンディング接続されるが、裏面に搭載される半導体チップと有機絶縁樹脂に固定された長いイン
ナーリードとの接続については、ワイヤーボンディングかフリップチップ接続の選択が可能である。この選択は、裏面に搭載されるチップの大きさによるであろう。チップの下側にインナーリードが侵入するようなチップの大きさであればフリップチップ接続が好ましい。入り込まなければワイヤーボンディングが選択される。
したがって、半導体チップの端子接続方法に制限が少なく、半導体チップの選択範囲が広がり、高機能で多機能な半導体装置が容易に製造できる。
【0023】
従来の複合リードフレームではリードフレームに別の配線基板を張り合わせるために基材の厚さは(リードフレーム+配線基板)のトータル厚になってしまう。一方、LF基材のインナーリードの先端部にハーフエッチング部を設け、ハーフエッチング部上に有機絶縁樹脂を収容するように固定すればより薄い半導体装置とすることができる。
【0024】
更には、複合化に使用するTABあるいはプラスチック基板は加工されたものを使用するので高価になるが、本発明になる複合リードフレームはインナーリード上に設ける絶縁樹脂シートは単に断裁するだけで配線等加工の必要が無いので安価な複合リードフレームを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明になるリードフレームの構造を説明する図面であって、(a)上面視、(b)断面視の図である。
図2】(a)〜(f)本発明になる半導体装置の製造工程を説明する断面視の工程図である。
図3】従来型のリードフレーム構造と半導体チップ搭載の様子を説明するか下面視の図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明になるリードフレーム1は、図1(a)〜(b)にその概略を示すように、一般のリードフレーム(図3)が備えるインナーリード9,アウターリード10及びアイランド4から、アイランド4を取り去り、前記インナーリード9を2つの半導体チップに対応するように長さの異なる第一の群と第二の群に分け、第一の群に属するインナーリード11をアイランドとなる絶縁性樹脂シート14を下支えするように長さを長くし、第二の群12を先端が絶縁性樹脂シート14外に収まるように長さを相対的に短くし、金属製のアイランドの代わりに絶縁性樹脂シート14を用いたものである。
【0027】
さらに、第一群に属する絶縁性樹脂シート14を下支えするインナーリードの先端については、ハーフエッチング加工することで厚みを薄くしたもので、ここに絶縁性樹脂シート14が収まるように敷設すれば、例え半導体チップがその上に搭載されたとしても全体の厚みが厚くならない。
尚、図1(a)ではリードは細分化せずに一塊に記載したがリード配置他の詳細は図3と同様である。また、図1(b)についてはリードが2段に描かれているが、第一群と第二群で長さが異なることを示すために2段にしたものであって実際は同一面内にあるものである。
【0028】
第一群と第二群のインナーリード端部のまとまり方については、図1(a)に示す4角形状あるいは略4角形状のものに限られない。どのような形状であっても構わないが、ある種の中心対称性(回転対称性)があるのが好ましい。第一群と第二群と区分けがされているがリード自体は上述したように同一平面上にあるので、どのように第一群と第二群に分けるかについては搭載する半導体チップの端指数とそれらの配置態様で決めればよい。分けられたすべてのリード11,12を対応する半導体チップの端子と接続する必要があるわけでもない。
【0029】
以下、図2図1を使用して、LF中央の上下に半導体チップを備える複合リードフレーム及びこれをパッケージングした半導体装置について製造工程に即して本発明を説明する。絶縁樹脂シート14上には、半導体チップを電気的に接続できる範囲で並置しても構わない。
【0030】
(リードフレーム製造工程)
リードフレームは、枚葉状あるいは帯状の金属板に、リード及び所定のパターンからなる単位のリードフレームが縦横方向に多面付けで配列された状態で同時に加工されて形成されるが、簡単のため図2では単一のリードフレームについて記載してある。最終的に他面付けが個片に断裁される。
【0031】
まず、鉄−ニッケル等の合金薄板又は銅−ニッケル−錫等の金属合金製の金属板の表面に、フォトレジストを塗布してフォトレジスト層を形成する。次いで、電気的接続エリアを末端に備えるアウターリードとインナーリード、これらリードとつながるサポートフレーム、吊りバーとタイバーとなる部分にレジストパターンを形成するために、所定のパターンを有する露光用フォトマスクを介してフォトレジスト層に紫外線を照射する。
【0032】
次いで、フォトレジスト層に現像、必要に応じて硬膜処理を行う。これにより、インナーリード先端の絶縁性樹脂シートが載る部分以外のリード部分と吊りバーとタイバーとなる部分を残してフォトレジストが現像除去される。
【0033】
同様に、金属板の裏面にもフォトレジストを塗布してフォトレジスト層を形成後、パターン露光、現像等という一連の処理を行う。パターン露光にあたっては、インナーリード全体と吊りバーとタイバーとなる部分を残してフォトレジストが現像除去され、レジストパターンが形成される。
【0034】
次に、金属板の裏面にエッチング防止の耐腐食用の樹脂フィルムを貼着し、金属板1の表面側から表面のフォトレジスト非形成部を所定の深度(概ねLF厚の1/2)まで塩化第二鉄等のエッチャントを用いてエッチング加工処理(ハーフエッチング処理)を行う。絶縁性樹脂シート14が載るエリアもハーフエッチングされる。洗浄後、その表面に耐腐食用の樹脂フィルムを貼着する。
【0035】
次に、金属板の裏面の耐腐食用の樹脂フィルムを剥がし、金属板の裏面側から、裏面のフォトレジスト非形成部を所定の深度(概ねLF厚の1/2)まで塩化第二鉄等のエッチャントを用いてエッチング加工処理を行うと表面、裏面のレジストパターンが形成されていない金属部位に貫通部が形成される。これにより、図面上では詳細が描かれていないが第一群のインナーリード11と第二群のインナーリード12他を備えるリードフレーム1が形成される(図2(b))。
【0036】
インナーリード11先端のハーフエッチングされた部分の裏面側はエッチングされないようにレジストで保護してあるので貫通せず、ハーフエッチング状態に留まる。尚、図2ではハーフエッチングについては省略してある。リードフレーム1を形成するエッチング加工は、表裏の面に各々1回ずつ行い、計2回行っているが、表裏から同時に1回のエッチングで金属板1にエッチング加工を行っても構わない。
【0037】
(絶縁樹脂シートの貼付)
次に、第二のインナーリード群の開口部で第一のインナーリード群のハーフエッチ部に所定の大きさの絶縁樹脂シート14を接着材で固定する(図2(c))。図1(b)に示したようにハーフエッチは必ずしも必要ないが、この場合その分だけ厚くなる。絶縁性樹脂
シート14は、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂、あるいはPPAや液晶ポリマーなど耐熱性のある熱可塑性樹脂をシート状にしたものが好ましい。
【0038】
(半導体チップ搭載工程)
こうして得たリードフレーム1の絶縁性樹脂シート14の上面に、例えば、接着剤により第一の半導体チップ15を貼着(ダイボンド)する。その後ワイヤーボンダーにより、半導体チップの上面の端子と第二のインナーリードの上面の電気的接続エリアとをAuワイヤー16をワイヤーボンディングすることで、半導体チップ15とインナーリード12とを接続する。こうして、リードフレーム1の上面に半導体チップ15を搭載した。
【0039】
次に、前記絶縁性樹脂シート14の下面に、接着剤により第二の半導体チップ17を貼着(ダイボンド)し、その後ワイヤーボンダーにより、半導体チップ17の上面の端子と長い方のリード群の上面の電気的接続エリアとをAuワイヤー16をワイヤーボンディングすることで、第二の半導体チップとインナーリードとを接続する。こうして、半導体発光装置用リードフレーム下面に第二の半導体チップを搭載し電気接続する。
第二のチップ17についてはフリップチップ接続しても構わない。チップの裏面に搭載された半田ボールとAuめっきされたインナーリードとをアライメントしてからリフロー炉を通過させることで導通を採ることができる(図2(d)右側の図)。
【0040】
(めっき処理)
ワイヤーボンディングに先行してLFリード端の電気接続エリアの表面の酸化膜を除去して清浄な表面を形成した後、Agめっき層を形成しておくのが好ましい。めっきは、銀めっきに変えて、金めっき、パラジウムめっきとしても構わない。また、銀めっき、金めっき、パラジウムめっきを行うのに先立ち、耐熱拡散性に優れたNi(ニッケル)めっき等の下地めっきを行っても構わない。
【0041】
(モールド成型工程)
次に、LFに対し、金型を用いた樹脂モールド成型を行うことで、金属板及び半導体チップをモールド樹脂で所定形状に被覆する。モールド樹脂18は、一般に極性基を持つため、これら極性基がLF表面の酸化膜と結合して、LF金属とモールド樹脂との密着性が向上する効果がある。すなわち、モールド樹脂をLFに形成した酸化膜と接触させることで、モールド樹脂とLF金属板の界面の密着性が優れたものになり、耐湿信頼性の高いリードフレーム1が得られる。
【0042】
樹脂モールド成型で用いる金型は、リードフレーム1が収まり射出樹脂が所望の形状となる凹部を予め形成してある金型を用いる。金型は、一般に蓋となる板状の上金型と下金型とで1組の構成である。下金型には、溶融するモールド樹脂を注入する注入口と、リードフレーム1を装填可能な凹部を内部空間として形成しておく。
【0043】
樹脂モールド成型は、先ず、下金型の凹部にリードフレーム1を装填し、次に、上金型で下金型上に蓋をして型締めする。次いで、注入口から、内部空間内に加熱溶融したモールド樹脂を注入して、装填されたリードフレーム1にモールド樹脂18をモールド成型して樹脂が充填されたリードフレームを得る。ここで、モールド樹脂18が金型に注入される際、リードフレーム1のうち、樹脂の注入口の近傍の1単位フレームから、注入口から離れた部位にある別の1単位フレームへと、順次に樹脂が流れていき、樹脂モールドされていく。冷却後金型からはずせばモールドされた半導体装置19が得られる(図2(e))。
【0044】
また、樹脂モールドの際にリードフレーム1の表面と裏面にモールド樹脂18が付着しないよう、下金型の凹部の深さ(内部空間の高さ)はリードフレーム1の厚みと略同一に
形成する。それにより、金型内にリードフレーム1を装填した際に、リードフレーム1の表面は上金型の面に密着させ、裏面は下金型の面に密着させる。
【0045】
このモールド成型で用いるモールド樹脂は、耐熱性、耐光性、熱導電性を有することが望ましく、熱可塑性樹脂あるいは熱硬化性樹脂を用いることができる。例えば、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、シルセシキオキサン系樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネイト樹脂、芳香族系ポリエステル樹脂(不飽和ポリエステル樹脂)、ポリアミド系樹脂(芳香族ポリアミド(PPA))、ポリフタルアミド(PPA)、液晶ポリマ(LCP)、シクロオレフィン系樹脂などの有機高分子材料が望ましく、1種の樹脂又は、複数種の樹脂の混合樹脂を用いて構わない。
【0046】
(金属めっき工程)
次に、図4(e)のように、モールド樹脂18から露出したアウターリードの表面に、耐熱拡散性に優れた光沢或いは半光沢のNi(ニッケル)めっきあるいはCo(コバルト)めっき等の硬質の下地めっき層1cを0.5〜8μmの厚さに形成する。
【0047】
特に、金属板の空隙をモールド樹脂で充填した後にモールド樹脂から露出したアウターリードの表面に金属めっき層を形成すると、リードの表面の一部にモールド樹脂が薄く残留していた場合、その部分には金属めっき層が形成されず、リード表面の残留汚染が容易に検出される。迅速に対応すれば結果として生産性に優れるという利点がある。
【0048】
(個片への分割)
次に、他面付けされた半導体装置を個片に分割する。分割された個片が、個々の半導体装置になる。専用ソケットにアウターリードが容易に収容されるように先端部が折り曲げ加工したり、樹脂モールドをさらに専用のケースで被覆することも行われる。
このようにして所望のマルチチップ対応の半導体装置が得られる(図2(f))。
【符号の説明】
【0049】
1、リードフレーム(又はその基材)
2、接続端子
3、Au線(WB)
4、アイランド
5、タイバー
7、ダムバー
6、吊りバー
8、サポートフレーム
9、インナーリード
10、アウターリード
11、第一のインナーリード
12.第二のインナーリード
13、アウターリード(詳細省略)
14、絶縁性樹脂シート
15、第一の半導体チップ(上側)
16、ワイヤーボンド
17、第二の半導体チップ(下側)
18、モールド樹脂
19、半導体装置
図1
図2
図3