(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、水道水には、殺菌用として添加された塩素や、塩素が水道水と反応することにより形成される次亜塩素酸が含まれている。この次亜塩素酸には、塩素と同様、殺菌作用がある。しかし、これらの塩素や次亜塩素酸は、例えば40℃以上の高温で加熱されると分解され易い。そうなると、加熱された水中で菌が繁殖してしまうおそれが生じる。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、比較的高温のアルカリ水や酸性水において菌の繁殖を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、給湯システム(10)と対象とし、浴室に設けられた利用対象(U1,U2)に温水を供給するための給湯回路(12)と、該給湯回路(12)に
少なくとも酸性
水を供給するイオン水供給部(60)とを備え、該イオン水供給部(60)は、貯水タンク(61)と、該貯水タンク(61)の水中に電流経路を形成する電極対(64,64x,64y,65,65x,65y)、及び該電極対(64,64x,64y,65,65x,65y)に電圧を印加する電源部(70,70a,70b,70c)を有する電極ユニット部(62)と、超音波発生部(94)と、上記貯水タンク(61)内と上記給湯回路(12)とを繋ぐイオン水路(63)とを含み、上記電極ユニット部(62)は、上記電極対(64,64x,64y,65,65x,65y)間の電流経路に放電を行うための放電場を形成し、上記放電によって水酸ラジカルを生成するように構成され、
上記貯水タンク(61)内の空間は、イオン交換膜(61a)によって、酸性水が生成される第1室(S1)とアルカリ水が生成される第2室(S2)に区画され、上記超音波発生部(94)は、
上記第1室(S1)だけに設置され、超音波を上記
第1室(S1)の水中に照射することにより、該水中に生成した水酸ラジカルが変化して生成される過酸化水素を水酸ラジカルに変換することを特徴とする。
【0007】
第5,9の各発明は、給湯システム(10)と対象とし、浴室に設けられた利用対象(U1,U2)に温水を供給するための給湯回路(12)と、該給湯回路(12)に酸性水及びアルカリ水のうちの少なくとも一方を供給するイオン水供給部(60)とを備え、該イオン水供給部(60)は、貯水タンク(61)と、該貯水タンク(61)の水中に電流経路を形成する電極対(64,64x,64y,65,65x,65y)、及び該電極対(64,64x,64y,65,65x,65y)に電圧を印加する電源部(70,70a,70b,70c)を有する電極ユニット部(62)と、超音波発生部(94)と、上記貯水タンク(61)内と上記給湯回路(12)とを繋ぐイオン水路(63)とを含み、上記電極ユニット部(62)は、上記電極対(64,64x,64y,65,65x,65y)間の電流経路に放電を行うための放電場を形成し、上記放電によって水酸ラジカルを生成するように構成され、上記超音波発生部(94)は、超音波を上記水中に照射することにより、該水中に生成した水酸ラジカルが変化して生成される過酸化水素を水酸ラジカルに変換することを特徴とする。
【0008】
第1,5,9の各発明では、上記貯水タンク(61)の水中に電極対(64,64x,64y,65,65x,65y)が配置されている。この電極対(64,65)に電圧を印加すると、上記電極対(64,65)間に電流経路が形成されるとともに電流経路に放電場が形成される。そして、この電流経路の形成により、上記貯水タンク(61)の水中で電気分解が起き、この放電場の形成により、放電が起きる。これにより、上記電極対(64,65)における電極A(64)の近傍で酸性水が生成され、上記電極対(64,65)における電極B(65)の近傍でアルカリ水が生成される。又、上記放電場では、放電により、過酸化水素が生成される。また、放電により、水酸ラジカル等の活性種も生成される。水酸ラジカル等の活性種及び過酸化水素は、貯水タンク(61)内の水中で拡散するため、酸性水及びアルカリ水の両方に水酸ラジカル等の活性種及び過酸化水素が含まれる。さらに、水中に照射された超音波により、過酸化水素が水酸ラジカルに変換される。
【0009】
第5,9の各発明において、上記酸性水及びアルカリ水の少なくとも一方は、イオン水路(63)を通じて給湯回路(12)に供給される。そして、該給湯回路(12)を流れた酸性水又はアルカリ水は、浴室に設けられた利用対象(U1,U2)へ供給される。浴室の利用対象(例えばシャワー等)に供給されるのが酸性水である場合、殺菌効果を有する酸性水により、浴槽や人体の皮膚表面等が殺菌される。また、浴室の利用対象に供給されるのがアルカリ水である場合、洗浄効果を有するアルカリ水により、浴室の壁や浴槽等が洗浄される。
【0010】
そして、
第5,9の各発明では、上記酸性水やアルカリ水に含まれる過酸化水素によって、酸性水及びアルカリ水が殺菌・浄化される。また、上記放電により、水酸ラジカル等の活性種も生成する。この活性種によって、酸性水及びアルカリ水に含まれる有害物質が酸化分解されて除去され、酸性水及びアルカリ水が殺菌・浄化される。さらに、超音波照射により、過酸化水素が水酸ラジカルに変換される。殺菌・浄化能力は、過酸化水素よりも水酸ラジカルの方が高いため、過酸化水素を水酸ラジカルに変換することにより、殺菌・浄化作用が向上する。
【0011】
更に、過酸化水素は、比較的高温の条件下においても、水中に残留し易い。具体的に、過酸化水素は、水温が約40℃以上の条件下で、約1時間経過したとしても、約4%程度の濃度しか分解されない。分解されずに残留する過酸化水素は、超音波照射により、水酸ラジカルに変換される。従って、本発明の給湯システム(10)では、利用対象(U1,U2)に供給される水温が比較的高温であっても、水酸ラジカル及び過酸化水素によって水の殺菌・浄化を充分に行うことができる。
【0012】
第2の発明は、第1の発明において、上記イオン水路(63)は、上記貯水タンク(61)のうち酸性水が貯留される部分と上記給湯回路(12)とを繋ぐ酸性水路(63a)、及び上記貯水タンク(61)のうちアルカリ水が貯留される部分と上記給湯回路(12)とを繋ぐアルカリ水路(63b)を含み、上記酸性水路(63a)又は上記アルカリ水路(63b)を選択的に開放する水路開閉機構(80)を更に備えていることを特徴とする。
【0013】
第2の発明では、水路開閉機構(80)によって、酸性水路(63a)又はアルカリ水路(63b)のうちのいずれか一方が開放される。水路開閉機構(80)により酸性水路(63a)の方が開放された場合、貯水タンク(61)内の酸性水が酸性水路(63a)を通じて利用対象(U1,U2)へ供給される。一方、水路開閉機構(80)によりアルカリ水路(63b)の方が開放された場合、貯水タンク(61)内のアルカリ水がアルカリ水路(63b)を通じて利用対象(U1,U2)へ供給される。つまり、第2の発明では、水路開閉機構(80)を切り替えることにより、酸性水又はアルカリ水が利用対象(U1,U2)へ供給される。
【0014】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、上記給湯回路(12)は、水を加熱する加熱部(32b,42b)と、該加熱部(32b,42b)により加熱された温水を上記貯水タンク(61)へ供給する温水路(21)と、を含むことを特徴とする。
【0015】
第3の発明では、イオン水供給部(60)の貯水タンク(61)内に、加熱部(32b,42b)により加熱された温水が供給される。そして、イオン水供給部(60)では、比較的高温となる温水中で水酸ラジカル及び過酸化水素が生成される。その結果、イオン水供給部(60)から給湯回路(12)を通じて利用対象(U1,U2)へ通じる水路には、過酸化水素を含み且つ高温の温水が流れる。過酸化水素は、高温条件下では菌に対する活性が高まるため、上記イオン水供給部(60)から利用対象(U1,U2)へ通じる水路における温水の殺菌効果が向上する。なお、水酸ラジカルは、短時間で過酸化水素に変化するため、貯水タンク(61)の温水中に生成された水酸ラジカルは、イオン水供給部(60)から給湯回路(12)を通じて利用対象(U1,U2)へ供給されるまでの間に、過酸化水素に変化する場合がある。
【0016】
第4の発明は、第1から第3の発明のうちいずれか1つにおいて、上記電極ユニット部(62)は、上記放電の放電場を上記貯水タンク(61)の底部寄りに形成するように構成されていることを特徴とする。
【0017】
第4の発明では、放電が行われる放電場付近の水は、ジュール熱により高温となるため、貯水タンク(61)内の水中を上方へ移動する。すると、貯水タンク(61)内の水のうち上側にある比較的低温の水は、下方へ移動する。すなわち、貯水タンク内の水は対流する。ここで、第4の発明では、放電場が、貯水タンク(61)の底部寄りの位置に形成されるため、貯水タンク内の水は、貯水タンク内の全体に亘って対流する。
【0018】
第5の発明は、
上記の構成に加えて、上記電極対(64,64x,64y,65,65x,65y)に印加する電圧のオン又はオフを制御する第1制御部(1)と、上記超音波発生部(94)の動作を制御する第2制御部(5)とをさらに備え、上記第1制御部(1)及び上記第2制御部(5)は、上記貯水タンク(61)の上記水中に含まれる過酸化水素の濃度が所定の上限値を超えないように、上記電極対(64,64x,64y,65,65x,65y)に印加する電圧のオン又はオフ及び上記超音波発生部(94)の動作をそれぞれ制御することを特徴とする。
【0019】
第6の発明は、第5の発明において、上記貯水タンク(61)の上記水中に含まれる過酸化水素の濃度をモニタするセンサ(7)をさらに備え、上記第1制御部(1)は、上記センサ(7)によるモニタ結果に応じて上記電極対(64,64x,64y,65,65x,65y)に印加する電圧のオン又はオフを制御し、上記第2制御部(5)は、上記センサ(7)によるモニタ結果に応じて上記超音波発生部(94)の動作を制御することを特徴とする。
【0020】
第7の発明は、第6の発明において、少なくとも上記水中の過酸化水素の濃度が上記上限値を越えた場合には、上記第1制御部(1)が、上記電極対(64,64x,64y,65,65x,65y)に印加する電圧をオフにして上記放電を停止させるとともに、上記第2制御部(5)が、上記超音波発生部(94)を動作させることを特徴とする。
【0021】
第8の発明は、第5から第7の発明のうちいずれか1つにおいて、上記第2制御部(5)は、上記貯水タンク(61)の上記水中に含まれる過酸化水素の濃度が上記上限値より低い所定の下限値を超える期間中、上記超音波発生部(94)をオン状態にすることを特徴とする。
【0022】
第9の発明は、
上記の構成に加えて、上記電極対(64,64x,64y,65,65x,65y)に印加する電圧のオン又はオフの制御、及び上記超音波発生部(94)の動作の制御を行う制御部をさらに備え、上記制御部は、上記貯水タンク(61)の上記水中に含まれる過酸化水素の濃度が所定の上限値を超えないように、上記電極対(64,64x,64y,65,65x,65y)に印加する電圧のオン又はオフ、及び上記超音波発生部(94)の動作を制御することを特徴とする。
【0023】
第10の発明は、第9の発明において、上記制御部は、上記貯水タンク(61)の上記水中に含まれる過酸化水素の濃度が所定の上限値を超えた場合には、上記電極対(64,64x,64y,65,65x,65y)に印加する電圧をオフにして上記放電を停止させ、上記水中に含まれる過酸化水素の濃度が上記上限値より低い所定の下限値を超える期間中、上記超音波発生部(94)をオン状態にすることを特徴とする。
【0024】
第11の発明は、第1から第10の発明のうちいずれか1つにおいて、上記貯水タンク(61)の上記水中に泡を吐出する吐出手段(119)と、上記吐出手段(119)に気体を送る送出手段(99)とをさらに備え、上記電極対(64,65)は、板状であって、互いに対向するよう配置されており、上記電源部(70b)は、上記電極対(64,65)にパルス電圧を印加し、上記吐出手段(119)は、上記電極対(64,65)の間であって、上記貯水タンク(61)の底部に配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
上記第1の発明によれば、放電により生成した水酸ラジカル及び過酸化水素、並びに超音波の照射により生成した水酸ラジカルを含む酸性
水が、浴室の利用対象(U1,U2)に供給される温水に添加されるため、利用対象(U1,U2)に供給される比較的高温の酸性
水において菌などの有害物質が繁殖するのを抑制できる。
【0026】
上記
第5,9の各発明によれば、放電により生成した水酸ラジカル及び過酸化水素、並びに超音波の照射により生成した水酸ラジカルを含む酸性水又はアルカリ水が、浴室の利用対象(U1,U2)に供給される温水に添加されるため、利用対象(U1,U2)に供給される比較的高温の酸性水又はアルカリ水において菌などの有害物質が繁殖するのを抑制できる。
【0027】
上記第2の発明によれば、過酸化水素を含む酸性水又はアルカリ水を選択的に利用対象(U1,U2)へ供給することができる。これにより、浴室において、殺菌効果を有する酸性水と洗浄効果を有するアルカリ水とを目的に応じて使い分けることができる。なお、水酸ラジカルは、短時間で過酸化水素に変化するため、貯水タンク(61)の温水中に生成された水酸ラジカルは、利用対象(U1,U2)へ供給するまでの間に、過酸化水素に変化する場合がある。
【0028】
上記第3の発明によれば、貯水タンク(61)に温水が供給されるため、イオン水供給部(60)から利用対象(U1,U2)に至るまでの水路において、過酸化水素による酸性水又はアルカリ水の殺菌効果を向上できる。
【0029】
上記第4の発明によれば、貯水タンク(61)内の全体に亘って水が対流するため、貯水タンク(61)内で生成される水酸ラジカル及び過酸化水素を水中に均一に混合できる。従って、過酸化水素を利用対象(U1,U2)へ安定的に供給できる。
【0030】
上記第5の発明によれば、利用対象(U1,U2)へ供給される水(酸性水又はアルカリ水)中の過酸化水素の濃度が上限値以下に抑えられるので、過酸化水素を除去するための処理が容易になる。
【0031】
上記第6の発明によれば、第1制御部(1)及び第2制御部(5)が、貯水タンク(61)の水中の過酸化水素濃度に応じて放電の制御及び超音波照射の制御をそれぞれ行うので、水中の過酸化水素濃度が所望の範囲内になるよう制御しつつ、浄化処理を行うことができる。
【0032】
上記第7の発明によれば、水中の過酸化水素の濃度が上限値を超えた場合に放電を停止させて過酸化水素の生成を停止させるので、水中の過酸化水素濃度を上限値以下にすることができ、利用対象(U1,U2)へ供給される水中からの過酸化水素の除去を容易にすることができる。
【0033】
上記第8の発明によれば、水中の過酸化水素濃度を下限値以上に制御することができるので、超音波を照射した場合に水酸ラジカルを効率良く発生させることが可能となる。
【0034】
上記第9の発明によれば、水中の過酸化水素の濃度が上限値を超えないように制御部によって制御されるので、過酸化水素を除去するための処理を容易にすることができる。
【0035】
上記第10の発明によれば、水中の過酸化水素濃度を下限値以上に制御することができるので、超音波を照射した場合に水酸ラジカルを効率良く発生させることが可能となる。
【0036】
上記第11の発明によれば、電極対(64,65)にパルス電圧を印加する場合であっても放電を生起させることができるので、水中で水酸ラジカルを効率的に発生させ、超音波照射と組み合わせることでより高い浄化効果を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本願発明者らは、水中での放電による菌の繁殖の抑制効果をさらに検討した結果、水中での放電によって該水中の過酸化水素の濃度が増加すること、及びその際の過酸化水素の濃度は水を電気分解する場合と比べて条件によっては100倍程度にもなることを実験的に確認した。これは、放電によって生じた水酸ラジカルや酸素ラジカルが最終的に過酸化水素になったためと考えられる。
【0039】
さらに、殺菌・浄化能力は、過酸化水素よりも水酸ラジカルの方が高いため、水中に超音波を照射して、過酸化水素を水酸ラジカルに変換することにより、殺菌・浄化作用が向上することを突き止めた。
【0040】
本願発明者らはこれらのことを考え合わせ、放電と超音波照射とを組み合わせることで、水酸ラジカルによって効果的且つ継続的に水を浄化することができるとともに、水中の過酸化水素濃度を一定範囲に制御することができることに想到した。
【0041】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0042】
《発明の実施形態1》
本発明の実施形態1に係る給湯システム(10)の全体構成について、
図1を参照しながら説明する。給湯システム(10)は、利用対象としての浴槽(U1)やシャワー(U2)へ温水を供給するシステムである。そして、実施形態1に係る給湯システム(10)では、利用者が操作パネル(図示省略)等を操作することにより、浴槽(U1)やシャワー(U2)に供給される温水を酸性又はアルカリ性にすることができる。給湯システム(10)は、いわゆるヒートポンプ式の給湯器であり、熱源ユニット(30)と給湯ユニット(40)とを有している。
【0043】
熱源ユニット(30)は、圧縮機(31)と加熱熱交換器(32)と膨張弁(33)と室外熱交換器(34)とを備えている。熱源ユニット(30)では、圧縮機(31)、加熱熱交換器(32)、膨張弁(33)、及び室外熱交換器(34)が冷媒配管を介して順に接続され、閉回路となる冷媒回路(11)が構成される。冷媒回路(11)には、冷媒として二酸化炭素が充填されている。
【0044】
加熱熱交換器(32)は、一次側伝熱部(32a)と二次側伝熱部(32b)とを有している。一次側伝熱部(32a)は、圧縮機(31)と膨張弁(33)との間の高圧ラインに接続されている。二次側伝熱部(32b)は、給湯ユニット(40)側の第1循環流路(13)に接続されている。加熱熱交換器(32)では、一次側伝熱部(32a)を流れる冷媒と、二次側伝熱部(32b)を流れる水とが熱交換する。熱源ユニット(30)では、二次側伝熱部(32b)を流れる水と比較すると、一次側伝熱部(32a)を流れる冷媒の方が温度が高くなる。このため、加熱熱交換器(32)では、一次側伝熱部(32a)を流れる冷媒の熱が、二次側伝熱部(32b)を流れる水へ付与される。つまり、二次側伝熱部(32b)は、第1循環流路(13)を流れる水を加熱する加熱部を構成している。室外熱交換器(34)の近傍には、ファン(35)が設けられている。室外熱交換器(34)では、その内部を流れる冷媒と、ファン(35)が送風する室外空気とが熱交換する。
【0045】
冷媒回路(11)では、圧縮機(31)が運転されて冷媒が循環することで、蒸気圧縮式の冷凍サイクルが行われる。即ち、冷媒回路(11)では、圧縮機(31)で圧縮された冷媒が、一次側伝熱部(32a)で放熱し、膨張弁(33)で減圧される。減圧された冷媒は、室外熱交換器(34)で蒸発し、圧縮機(31)に吸入される。この冷凍サイクルは、冷媒としての二酸化炭素を臨界圧力以上まで圧縮する、いわゆる超臨界サイクルである。
【0046】
給湯ユニット(40)は、給湯タンク(41)と内部熱交換器(42)とを備えている。
【0047】
給湯タンク(41)は、縦長の円筒状の密閉容器で構成されている。給湯タンク(41)には、円筒形の周壁部(41a)と、周壁部(41a)の上側を閉塞する頂壁部(41b)と、周壁部(41a)の下側を閉塞する底壁部(41c)とが形成されている。給湯タンク(41)には、第1循環流路(13)と第2循環流路(14)と供給流路(15)とが接続されている。また、給湯タンク(41)には、該給湯タンク(41)内へ水道水を適宜補給する、給水路(20)も接続されている。給湯タンク(41)及び供給流路(15)は、浴槽(U1)及びシャワー(U2)に温水を供給するための給湯回路(12)を構成している。
【0048】
第1循環流路(13)の始端は、給湯タンク(41)の周壁部(41a)の下部に接続され、給湯タンク(41)内の底壁部(41c)寄りに開口している。第1循環流路(13)の終端は、給湯タンク(41)の周壁部(41a)の上部に接続され、給湯タンク(41)内の頂壁部(41b)寄りに開口している。第1循環流路(13)には、第1ポンプ(43)が設けられている。第1ポンプ(43)は、第1循環流路(13)の始端側から終端側の方向(
図1の矢印で示す方向)へ水を搬送する搬送機構である。第1循環流路(13)には、第1ポンプ(43)の下流側に二次側伝熱部(32b)が接続されている。
【0049】
第2循環流路(14)の始端は、給湯タンク(41)の周壁部(41a)の下部に接続され、給湯タンク(41)内の底壁部(41c)寄りに開口している。第2循環流路(14)の終端は、給湯タンク(41)の頂壁部(41b)に接続され、給湯タンク(41)内の頂壁部(41b)寄りに開口している。第2循環流路(14)には、第2ポンプ(44)が設けられている。第2ポンプ(44)は、第2循環流路(14)の始端側から終端側の方向(
図1の矢印で示す方向)へ水を搬送する搬送機構である。第2循環流路(14)には、第2ポンプ(44)の下流側に内部熱交換器(42)の第1伝熱管(42a)が接続されている。
【0050】
内部熱交換器(42)は、第1伝熱管(42a)と第2伝熱管(42b)とを有している。第1伝熱管(42a)は、第2循環流路(14)に接続されている。第2伝熱管(42b)は、供給流路(15)の第3循環流路(16)に接続されている。
【0051】
供給流路(15)は、主供給路(17)、第1分岐路(18)、第2分岐路(19)、及び第3循環流路(16)を含んでいる。
【0052】
主供給路(17)の始端は給湯タンク(41)の頂壁部(41b)に接続され、給湯タンク(41)内の頂壁部(41b)寄りに開口している。主供給路(17)の終端側は、第1分岐路(18)と第2分岐路(19)とに分岐している。主供給路(17)には、第3ポンプ(45)が設けられている。第3ポンプ(45)は、主供給路(17)の始端側から終端側の方向(
図1の矢印で示す方向)へ水を搬送する搬送機構である。
【0053】
第1分岐路(18)の終端は、第3循環流路(16)を介して浴槽(U1)と連通している。つまり、第1分岐路(18)は、浴槽(U1)側へ温水を供給するための浴槽側供給路を構成している。第1分岐路(18)には、第1開閉弁(46)が設けられている。第2分岐路(19)の終端は、シャワー(U2)と接続している。つまり、第2分岐路(19)は、シャワー(U2)へ温水を供給するシャワー側供給路を構成している。第2分岐路(19)には、第2開閉弁(47)が設けられている。
【0054】
第3循環流路(16)は、浴槽(U1)内の水を循環させる浴槽循環流路を構成している。第3循環流路(16)は、供給循環路(16a)と返送循環路(16b)とを有している。供給循環路(16a)の流出端は、浴槽(U1)の内部における上方寄りに開口している。返送循環路(16b)の流入端は、浴槽(U1)の内部における下方寄りに開口している。供給循環路(16a)には、第4ポンプ(48)が設けられている。第4ポンプ(48)は、主供給路(17)側の水、又は返送循環路(16b)側の水を浴槽(U1)内へ供給する搬送機構である。返送循環路(16b)には、内部熱交換器(42)の第2伝熱管(42b)が接続され、該第2伝熱管(42b)の下流側に第3開閉弁(49)が設けられている。
【0055】
内部熱交換器(42)では、第1伝熱管(42a)を流れる水と、第2伝熱管(42b)を流れる水とが熱交換する。給湯ユニット(40)では、返送循環路(16b)を流れる水と比較すると、第2循環流路(14)を流れる水の温度の方が高くなる。このため、内部熱交換器(42)では、第1伝熱管(42a)を流れる水の熱が、第2伝熱管(42b)を流れる水へ付与される。つまり、第2伝熱管(42b)は、第3循環流路(16)を流れる水を加熱する加熱部を構成している。
【0056】
〈イオン水供給部の詳細構造〉
図1及び
図2に示すように、給湯システム(10)は、イオン水供給部(60)を備えている。イオン水供給部(60)は、電気分解によって酸性水とアルカリ水とを生成するとともに、水中での放電及び水中への超音波照射によって水酸ラジカル及び過酸化水素等の浄化成分を生成して上記酸性水及びアルカリ水へ付与する。そして、イオン水供給部(60)は、この酸性水及びアルカリ水を給湯回路(12)へ供給する。イオン水供給部(60)は、貯水タンク(61)と、電極ユニット部(62)と、超音波発生部(94)と、イオン水路(63)とを備えている。
【0057】
貯水タンク(61)は、密閉型の容器状に形成されている。貯水タンク(61)の上部には、主供給路(17)から分岐する温水路(21)が繋がっている。貯水タンク(61)の下部には、主供給路(17)における第3ポンプ(45)の下流側の部分へと連通するイオン水路(63)が繋がっている。上記温水路(21)には、第5ポンプ(50)が設けられている。第5ポンプ(50)は、主供給路(17)を流れる温水を貯水タンク(61)内へ供給する搬送機構である。
【0058】
貯水タンク(61)内の空間は、イオン交換膜(61a)によって第1室(S1)と第2室(S2)とに区画されている。イオン交換膜(61a)は垂直方向に延びるように配置されている。詳しくは後述するが、貯水タンク(61)内で行われる電気分解により、第1室(S1)では酸性水が生成され、第2室(S2)ではアルカリ水が生成される。従って、第1室(S1)には酸性水が貯留され、第2室(S2)ではアルカリ水が貯留される。
【0059】
電極ユニット部(62)は、電極対(64,65)と電源部(70)と絶縁ケーシング(71)とを備えている。
【0060】
電極対(64,65)は、水中で放電を生起するためのものであり、且つ、水中で電気分解
を行って酸性水及びアルカリ水を生成するためのものである。電極対は、電極A(64)及び電極B(65)で構成されている。
【0061】
電極A(64)は板状に形成され、電源部(70)に接続されている。電極A(64)は、耐腐食性が高い導電性の材料で構成され、例えばステンレス、銅等の導電性の金属材料で構成されている。電極A(64)は、箱状に形成された絶縁ケーシング(71)の内部に収容された状態で、第1室(S1)に配置されている。
【0062】
電極B(65)は板状に形成され、電源部(70)に接続されている。電極B(65)は、耐腐食性が高い導電性の材料で構成され、例えばステンレス、真鍮等の導電性の金属材料で構成されている。電極B(65)は、電極A(64)に対向するように第2室(S2)に配置されている。電極A(64)及び電極B(65)は、貯水タンク(61)の底部付近に配置される。
【0063】
電源部(高電圧発生部)(70)は、電極対(64,65)に所定の電圧(例えば直流電圧)を印加する電源で構成されていてもよい。即ち、電源部(70)は、電極対(64,65)に対して瞬時的に高電圧を繰り返し印加するようなパルス電源ではなく、電極対(64,65)に対して常に数キロボルトの電圧を印加する電源であってもよい。電源部(70)の正極側に電極A(64)が接続され、負極側に電極B(65)が接続されている。又、上記電源部(70)の負極側はアースと接続されている。この電源部(70)には、電極対(64,65)の放電電力を一定に制御する定電力制御部が設けられている(図示省略)。
【0064】
絶縁ケーシング(71)は、例えばセラミックス等の絶縁材料で構成されている。絶縁ケーシング(71)は、一面(右面)が開放された容器状のケース本体(72)と、該ケース本体(72)の右側方の開放部を閉塞する板状の蓋部(73)とを有している。
【0065】
ケース本体(72)は、角形筒状の筒壁部(側壁部)(72a)と、該筒壁部(72a)の左側開口部を閉塞する底部(72b)とを有している。電極A(64)は、底部(72b)の内面に敷設されている。絶縁ケーシング(71)では、蓋部(73)と底部(72b)との間の上下方向の距離が、電極A(64)の厚さよりも長くなっている。つまり、電極A(64)と蓋部(73)との間には、所定の間隔が確保されている。これにより、絶縁ケーシング(71)の内部では、電極A(64)とケース本体(72)と蓋部(73)との間に空間(S)が形成される。
【0066】
図2及び
図3に示すように、絶縁ケーシング(71)の蓋部(73)には、該蓋部(73)を厚さ方向に貫通する1つの開口(74)が形成されている。この開口(74)により、電極A(64)と電極B(65)との間の電界の形成が許容されている。この開口(74)は、
図2に示すように、貯水タンク(61)の底部寄りに配置される。蓋部(73)の開口(74)の内径は、0.02mm以上0.5mm以下であることが好ましい。以上のような開口(74)は、電極対(64,65)の間の電流経路の電流密度を上昇させる電流密度集中部を構成する。
【0067】
以上のように、絶縁ケーシング(71)は、電極対(64,65)のうちの一方の電極(電極A(64))のみを内部に収容し、且つ電流密度集中部としての開口(74)を有する絶縁部材を構成している。加えて、絶縁ケーシング(71)の開口(74)内では、電流経路の電流密度が上昇することで、水がジュール熱によって気化して気泡(B)が形成される。つまり、絶縁ケーシング(71)の開口(74)は、該開口(74)に気相部としての気泡(B)を形成する気相形成部として機能する。
【0068】
イオン水路は(63)は、酸性水路(63a)とアルカリ水路(63b)とを備えている。酸性水路(63a)は、貯水タンク(61)内の第1室(S1)と主供給路(17)とを繋いでいて、アルカリ水路(63b)は、貯水タンク(61)内の第2室(S2)と主供給路(17)とを繋いでいる。
【0069】
〈水路開閉機構の詳細構造〉
給湯システム(10)は、水路開閉機構(80)を備えている。この水路開閉機構(80)は、貯水タンク(61)内で生成される酸性水又はアルカリ水を、選択的に主供給路(17)へ供給するためのものである。水路開閉機構(80)は、酸性水路開閉弁(81)と、アルカリ水路開閉弁(82)と、制御部(83)とを備えている。
【0070】
酸性水路開閉弁(81)及びアルカリ水路開閉弁(82)は、例えば電磁弁で構成されている。酸性水路開閉弁(81)は酸性水路(63a)に設けられ、アルカリ水路開閉弁(82)はアルカリ水路(63b)に設けられている。酸性水路開閉弁(81)は、制御部(83)から送信される信号に応じて、酸性水路(63a)を全開にする開状態と、酸性水路(63a)を全閉にする閉状態とに切り替えられる。アルカリ水路開閉弁(82)は、制御部(83)から送信される信号に応じて、アルカリ水路(63b)を全開にする開状態と、アルカリ水路(63b)を全閉にする閉状態とに切り替えられる。
【0071】
制御部(83)は、外部からの信号に基づいて、酸性水路開閉弁(81)又はアルカリ水路開閉弁(82)を選択的に開放するためのものである。制御部(83)は、酸性水路開閉弁(81)が開状態となる信号を酸性水路開閉弁(81)へ送信し且つアルカリ水路開閉弁(82)が閉状態となる信号をアルカリ水路開閉弁(82)へ送信するか、又は、酸性水路開閉弁(81)が閉状態となる信号を酸性水路開閉弁(81)へ送信し且つアルカリ水路開閉弁(82)が開状態となる信号を酸性水路開閉弁(81)へ送信するように構成されている。
【0072】
〈超音波発生部〉
超音波発生部(94)は、板状の圧電セラミックス(95)と、それらの間に圧電セラミックス(95)を挟むように設けられた一対の金属板(96a,96b)とで構成される。超音波発生部(94)を封入するケース(97)は密閉され、貯水タンク(61)の底部に配置されている。
【0073】
金属板(96a,96b)には、増幅器(9)によって増幅された超音波波形発生部(8)の出力信号(交流電圧)が供給される。これにより、超音波発生部(94)は任意の周波数の超音波を貯水タンク(61)内の水中に照射する。ただし、過酸化水素を分解して水酸ラジカルを効率良く発生させるためには、超音波の周波数が、100kHz以上程度であれば特に好ましい。
【0074】
なお、超音波発生部(94)は、貯水タンク(61)内の水中に超音波を照射できる範囲で任意の位置に設置されていてもよい。例えば、
図4(a)に示すように、超音波発生部(94)が貯水タンク(61)の底部外側に設置されていてもよい。超音波発生部(94)が貯水タンク(61)の底部外側に設置されている場合、超音波は貯水タンク(61)の底部及び壁面を介して水中に伝達される。
【0075】
また、超音波発生部(94)の構成は、
図2に示す例に限られない。例えば、
図4(b)に示すように、金属ケース(97a)の上部と金属板(96)とで板状の圧電セラミックス(95)を挟み、両者の間に交流電圧を供給する構成であってもよい。
【0076】
−給湯システムの運転動作−
給湯システム(10)の基本的な運転動作について
図1を参照しながら説明する。この給湯システム(10)では、浴槽内へ温水を供給する「給湯運転」と、浴槽内の水を循環させながら加熱する「追い炊き運転」とが行われる。
【0077】
〈給湯運転〉
給湯運転では、熱源ユニット(30)の圧縮機(31)が運転され、冷媒回路(11)で冷凍サイクルが行われる。給湯ユニット(40)では、第1ポンプ(43)及び第3ポンプ(45)が運転され、第2ポンプ(44)及び第4ポンプ(48)が停止状態となる。また、第1開閉弁(46)、第2開閉弁(47)が開放状態となり、第3開閉弁(49)は閉鎖状態となる。
【0078】
第1ポンプ(43)が運転されると、給湯タンク(41)内の水が第1循環流路(13)へ流出する。この水は、加熱熱交換器(32)の二次側伝熱部(32b)を流れる。加熱熱交換器(32)では、一次側伝熱部(32a)を流れる冷媒の熱が、二次側伝熱部(32b)を流れる水へ放出され、この水が所定温度まで加熱される。加熱された水は、第1循環流路(13)を経由して給湯タンク(41)内に流入する。これにより、給湯タンク(41)内部には、所定温度の温水が蓄えられる。
【0079】
第3ポンプ(45)が運転されると、給湯タンク(41)内の水(温水)は、主供給路(17)に流出し、第1分岐路(18)と第2分岐路(19)とに分流する。第1分岐路(18)を流れた水は、第3循環流路(16)の供給循環路(16a)に流入する。この水は、貯水タンク(61)を通過した後、浴槽(U1)内へ放出される。これにより、浴槽(U1)内に所定温度の温水が供給される。一方、第2分岐路(19)を流れた水は、シャワー(U2)側に供給される。
【0080】
〈追い炊き運転〉
追い炊き運転では、熱源ユニット(30)の圧縮機(31)が運転され、冷媒回路(11)で冷凍サイクルが行われる。給湯ユニット(40)では、第1ポンプ(43)、第2ポンプ(44)、及び第4ポンプ(48)が運転される。また、第1開閉弁(46)が閉鎖状態となり、第2開閉弁(47)及び第3開閉弁(49)が開放状態となる。
【0081】
第1ポンプ(43)が運転されると、給湯タンク(41)内の水が第1循環流路(13)を流れる。これにより、第1循環流路(13)の水は、加熱熱交換器(32)で加熱されて給湯タンク(41)へ返送される。
【0082】
第2ポンプ(44)が運転されると、給湯タンク(41)内の水は、第2循環流路(14)へ流出する。この水は、内部熱交換器(42)の第1伝熱管(42a)を流れる。内部熱交換器(42)では、第1伝熱管(42a)を流れる水の熱が、第2伝熱管(42b)を流れる水へ放出される。第1伝熱管(42a)で放熱した水は、第2循環流路(14)を経由して給湯タンク(41)内に流入する。
【0083】
第4ポンプ(48)が運転されると、浴槽(U1)の水は第3循環流路(16)の返送循環路(16b)へ吸い込まれる。返送循環路(16b)を流れた水は、内部熱交換器(42)で加熱された後、貯水タンク(61)を通過して浴槽(U1)へ供給される。これにより、浴槽(U1)内の水の温度が徐々に高くなっていく。
【0084】
−イオン水供給部の運転動作−
本実施形態の給湯システム(10)では、イオン水供給部(60)が運転されることで、貯水タンク(61)内で酸性水及びアルカリ水が生成されるとともに、給湯回路(12)を流れる水の浄化がなされる。
【0085】
第5ポンプ(50)が運転されると、給湯タンク(41)内の水は、温水路(21)を通じて貯水タンク(61)へ流入する。この水が所定量に達し、上記絶縁ケーシング(71)の内の空間(S)が浸水した状態(
図2を参照)になると、電極ユニット部(62)が作動する。この作動により、上記電源部(70)から電極対(64,65)へ所定の直流電圧(例えば1kV)が印加され、電極対(64,65)の間に電界が形成される。上述したように、上記電極A(64)の周囲は、絶縁ケーシング(71)で覆われている。このため、電極対(64,65)の間での漏れ電流が抑制されるとともに、上記絶縁ケーシング(71)における開口(74)内の電流経路の電流密度が上昇した状態となる。
【0086】
上記絶縁ケーシング(71)における開口(74)内の電流密度が上昇すると、この開口(74)内のジュール熱が大きくなる。その結果、絶縁ケーシング(71)では、開口(74)の近傍において、水の気化が促進されて気泡(B)が形成される。この気泡(B)は、
図4に示すように、開口(74)のほぼ全域を覆う状態となり、電極B(65)に導通する負極側の水と、正極側の電極A(64)との間に気泡(B)が介在する。従って、この状態では、気泡(B)が、電極A(64)と電極B(65)との間での水を介した導電を阻止する抵抗として機能する。これにより、電極A(64)と電極B(65)との間の漏れ電流が抑制され、電極対(64,65)間では、所望とする電位差が保たれることになる。すると、気泡(B)内では、絶縁破壊に伴い放電が発生する。この放電により、電極B(65)に導通する水から、気泡(B)を介して、電極A(64)に導通する水へ電子が移動する。このように、電子が電極B(65)から電極A(64)へ移動するため、貯水タンク(61)内の水中で電気分解が行われる。
【0087】
上記電極B(65)では、次式(1)に示すような反応が行われる。この反応により、第2室(S2)内で水酸化物イオン(OH
−)が生成される。その結果、PH(水素イオン指数)が上昇し、第2室(S2)内でアルカリ水が生成される。
【0088】
4H
2O+4e
− → 2H
2+4OH
− (1)
一方、上記気泡(B)における気液界面の近傍では、次式(2)に示すような反応が行
われる。この反応により、第1室(S1)内で水素イオン(H
+)が生成される。その結果、PH(水素イオン指数)が減少し、第1室(S1)内で酸性水が生成される。
【0089】
2H
2O → O
2+4H
++4e
− (2)
また、以上のように気泡(B)で放電が行われると、気泡(B)における気液界面の近傍(すなわち第1室(S1)内)では、水酸ラジカル等の活性種や過酸化水素等が生成される。さらに、超音波発生部(94)を作動させて、水中に超音波を照射する。これにより、放電により生成した過酸化水素を分解して、再度、水酸ラジカルに変換する。水酸ラジカル等の活性種や過酸化水素は、イオン交換膜(61a)の微細孔を通過して第2室(S2)にも拡散する。従って、第1室(S1)で形成される酸性水及び第2室(S2)で形成されるアルカリ水の双方に、上記活性種や過酸化水素が含まれることになる。
【0090】
なお、水(H
2O)及び過酸化水素(H
2O
2)等を含む水中に超音波を照射した場合、水(H
2O)から直接に水酸ラジカルは生成されないが、過酸化水素(H
2O
2)は分解されて水酸ラジカルが生成される。このため、水中の過酸化水素の濃度がある程度高くなった後に、超音波照射を開始することが好ましい。逆に、放電のみを継続すると、水中の過酸化水素の濃度が高くなり過ぎる場合がある。従って、水中の過酸化水素の濃度をモニタすることにより、放電と超音波照射とを制御しながら運転することが好ましい。この好ましい制御方法を、後述の実施形態2において説明する。
【0091】
水酸ラジカル等の活性種や過酸化水素は、放電に伴う熱によって貯水タンク(61)内を対流する。これにより、水中での活性種や過酸化水素の拡散が促される。しかも、放電が行われる放電場としての気泡(B)は、貯水タンク(61)の底部寄りに形成されるため、ジュール熱により高温となる気泡(B)付近の水は、貯水タンク(61)の底部付近から上昇する一方、貯水タンク(61)内の水のうち上側にある比較的低温の水は、下方へ移動する。すなわち、貯水タンク(61)内の水は、上下方向において比較的広範囲に亘って対流するため、水中の活性種や過酸化水素の拡散を更に促すことができる。また、気泡(B)で放電が行われると、この放電に伴ってこの気泡(B)でイオン風を生成し易くなる。よって、貯水タンク(61)内では、このイオン風を利用して、活性種や過酸化水素の拡散効果を更に向上できる。
【0092】
また、貯水タンク(61)には、温水路(21)からの温水が貯留されている。これにより、貯水タンク(61)内に比較的温度の低い水が貯留されるような場合と比べて、上記開口(74)における水の温度が上昇しやすくなる。その結果、気泡(B)が発生しやすくなるため、水酸ラジカル等の活性種及び過酸化水素を効率的に生成することができる。
【0093】
−水路開閉機構の運転動作−
浴槽(U1)やシャワー(U2)へ酸性水を供給する場合、制御部(83)は、酸性水路開閉弁(81)が開状態となる信号を酸性水路開閉弁(81)へ送信し、且つ、アルカリ水路開閉弁(82)が閉状態となる信号をアルカリ水路開閉弁(82)へ送信する。これにより、酸性水路開閉弁(81)が開状態となり且つアルカリ水路開閉弁(82)が閉状態となるため、貯水タンク(61)内の酸性水のみが主供給路(17)へ供給される。この酸性水は、給湯システム(10)の給湯運転時に、浴槽(U1)やシャワー(U2)へ供給される。これにより、殺菌効果を有する酸性水で、浴槽(U1)、浴室の壁、人体の皮膚表面などを殺菌することができる。
【0094】
一方、浴槽(U1)やシャワー(U2)へアルカリ水を供給する場合、制御部(83)は、酸性水路開閉弁(81)が閉状態となる信号を酸性水路開閉弁(81)へ送信し、且つ、アルカリ水路開閉弁(82)が開状態となる信号をアルカリ水路開閉弁(82)へ送信する。これにより、酸性水路開閉弁(81)が閉状態となり且つアルカリ水路開閉弁(82)が開状態となるため、貯水タンク(61)内のアルカリ水のみが主供給路(17)へ供給される。このアルカリ水は、給湯システム(10)の給湯運転時に、浴槽(U1)やシャワー(U2)へ供給される。これにより、洗浄効果を有するアルカリ水で、浴槽(U1)、浴室の壁、人体の皮膚表面などを洗浄することができる。
【0095】
上述のように水路開閉機構(80)を切り替えることにより、浴槽(U1)やシャワー(U2)に供給される水を、酸性水又はアルカリ水のいずれかに切り替えることができる。従って、目的に応じて、酸性水とアルカリ水とを使い分けることができる。
【0096】
また、浴槽(U1)やシャワー(U2)に供給される上記酸性水やアルカリ水は、給湯運転により比較的高温の温水となっている。水道水には、殺菌効果を有する塩素や次亜塩素酸が含まれているものの、これらの塩素や次亜塩素酸は、例えば40℃以上の高温下では分解され易い。そうなると、十分に殺菌されていない水が浴槽(U1)やシャワー(U2)へ供給されてしまう虞が生じる。
【0097】
これに対して、実施形態1では、浴槽(U1)やシャワー(U2)へ供給される比較的温度の高い酸性水やアルカリ水には、水酸ラジカル等の活性種及び過酸化水素が含まれている。過酸化水素は、例えば40℃以上の条件下で、約1時間経過したとしても、約4%程度の濃度しか分解されない。分解されずに残留する過酸化水素は、超音波照射により、過酸化水素よりも殺菌・浄化能力が高い水酸ラジカルに変換される。従って、実施形態1における給湯システム(10)では、浴槽(U1)やシャワー(U2)へ供給される水を十分に殺菌・浄化することができる。
【0098】
また、実施形態1では、貯水タンク(61)で貯留される温水中で放電が行われ、水酸ラジカル等の活性種及び過酸化水素が生成される。過酸化水素は、給湯回路(12)を通じて浴槽(U1)やシャワー(U2)に供給される。過酸化水素は、高温条件下では菌に対する活性が高まるため、イオン水供給部(60)から浴槽(U1)やシャワー(U2)へ通じる水路における温水の殺菌効果が向上する。なお、水酸ラジカルは、短時間で過酸化水素に変化するため、貯水タンク(61)の温水中に生成された水酸ラジカルは、貯水タンク(61)から給湯回路(12)を通じて浴槽(U1)やシャワー(U2)に供給されるまでの間に、過酸化水素に変化する場合がある。
【0099】
−実施形態1の効果−
実施形態1では、貯水タンク(61)の水中において、電気分解を行い酸性水とアルカリ水とを生成するとともに、放電を行い水酸ラジカル等の活性種及び過酸化水素を生成するようにしている。過酸化水素は、次亜塩素酸と比較して、水温が上昇しても分解されにくい。具体的に、過酸化水素であれば、水温が約40℃の条件下で約1時間放置されても、約4%程度しか濃度が低下しない。さらに、実施形態1では、水中への超音波照射により、過酸化水素を、過酸化水素よりも殺菌・浄化能力が高い水酸ラジカルに変換する。このため、上記実施形態1では、貯水タンク(61)の水温が高温となっても、充分な殺菌効果を得ることができる。更に、実施形態1では、水路開閉機構(80)を切り替えることにより、十分に殺菌された酸性水又はアルカリ水を、目的に応じて使い分けることができる。
【0100】
実施形態1では、貯水タンク(61)内に貯留される温水中で放電が行われる。これにより、放電が行われる放電場としての気泡(B)が発生しやすくなるため、水酸ラジカル等の活性種及び過酸化水素を効率的に生成することができる。更に、イオン水供給部(60)から利用対象(U1,U2)へ通じる水路には、過酸化水素を含む温水が流れる。過酸化水素は、高温条件下において菌に対する活性が高まる。従って、イオン水供給部(60)から利用対象(U1,U2)に至る水路を流れる水の殺菌効果を向上できる。
【0101】
実施形態1では、放電が行われる放電場としての気泡(B)が、貯水タンク(61)の底部付近に形成される。これにより、貯水タンク(61)内の水が上下方向において広範囲に亘って対流するため、貯水タンク(61)内の水中において水酸ラジカル等の活性種及び過酸化水素を均一に混合できる。
【0102】
〈実施形態1の変形例〉
上記実施形態1では、絶縁ケーシング(71)の蓋部(73)に1つの開口(74)が形成されている。しかしながら、例えば
図6及び
図7に示すように、絶縁ケーシング(71)の蓋部(73)に複数の開口(74)を形成してもよい。この変形例では、絶縁ケーシング(71)の蓋部(73)が、略正方形板状に形成され、この蓋部(73)に複数の開口(74)が等間隔を置きながら碁盤目状に配列されている。一方、電極A(64)及び電極B(65)は、全ての開口(74)に跨るような正方形板状に形成されている。
【0103】
この変形例においても、各開口(74)が、電流密度集中部、及び気相形成部として機能する。これにより、電源部(70)から電極対(64,65)に直流電圧が印加されると、各開口(74)の電流密度が上昇し、各開口(74)で気泡(B)が形成される。その結果、各気泡(B)でそれぞれ放電が生起され、水酸ラジカル等の活性種や、過酸化水素が生成される。
【0104】
《発明の実施形態2》
実施形態2に係る給湯システム(10)は、上述した実施形態1と比べて、イオン水供給部(60)の構成が異なるものである。以下には、上記実施形態1と異なる点を主として説明する。
【0105】
図8に示すように、実施形態2に係るイオン水供給部(60)は、貯水タンク(61)と、電気分解を行って酸性水とアルカリ水とを生成するための電気分解ユニット部(85)と、水浄化ユニット(6)と、制御部(4)と、イオン水路(63)とを備えている。
【0106】
<電気分解ユニット部>
電気分解ユニット部(85)は、陽極(86)及び陰極(87)で構成された電極対(86,87)と、陽極(86)と陰極(87)との間に電圧を印加する電源部(88)とを備えている。陽極(86)は第1室(S1)内に配置される一方、陰極(87)は第2室(S2)内に配置される。電源部(88)により陽極(86)と陰極(87)との間に電圧が印加されると、貯水タンク(61)内で電気分解が起こり、第1室(S1)内では酸性水が、第2室(S2)内ではアルカリ水が、それぞれ生成される。
【0107】
<水浄化ユニット>
図9に示すように、水浄化ユニット(6)は、電極ユニット部(62)と、貯水タンク(61)の水中に超音波を照射する超音波発生部(94)とを有している。水浄化ユニット(6)は、第1室(S1)及び第2室(S2)のそれぞれに配置されている。なお、水浄化ユニット(6)は、第1室(S1)及び第2室(S2)のうち少なくとも一方に配置されていてもよい。
【0108】
−電極ユニット部−
図9に示すように、電極ユニット部(62)は、電極対(64,65)と、この電極対(64,65)に接続され、電圧を印加する高電圧発生部(電源部)(70)と、電極A(64)を内部に収容する絶縁ケーシング(71)とを備えている。
【0109】
電極対(64,65)は、水中で放電を生起するためのものである。電極A(64)は、絶縁
ケーシング(71)の内部に配置されている。電極A(64)は、板状に形成されている。電極A(64)は、高電圧発生部(70)に接続されている。
【0110】
電極B(65)は、絶縁ケーシング(71)の外部に配置されている。この電極B(65)は、もう一方の電極A(64)の上方に設けられている。電極B(65)は、板状に形成され、且つ上下に複数の貫通孔(66)を有するメッシュ形状ないしパンチングメタル形状に構成されている。電極B(65)は、電極A(64)と略平行に配設されている。電極B(65)は、高電圧発生部(70)に接続されている。
【0111】
図8に図示された2つの水浄化ユニット(6)のうち、一方の水浄化ユニット(6)を構成する電極ユニット部(62)が第1室(S1)に配置され、他方の水浄化ユニット(6)を構成する電極ユニット部(62)が第2室(S2)に配置されている。つまり、第1室(S1)に配置された電極ユニット部(62)は、第1室(S1)内に貯留される酸性水中で放電を行う。一方、第2室(S2)に配置された電極ユニット部(S2)は、第2室(S2)内に貯留されるアルカリ水中で放電を行う。なお、第1室(S1)に配置される電極ユニット部(62)の電極対(64,65)間では電気分解が行われるため、電極A(64)近傍では水素イオンが生成され、電極B(65)近傍では水酸化物イオンが生成される。しかし、これらの水素イオン及び水酸化物イオンは、第1室(S1)内で拡散して中和されるため、第1室(S1)における酸性水の生成にはほとんど寄与しない。同様に、第2室(S2)に配置される電極ユニット部(62)でも電気分解が行われて水素イオン及び水酸化物イオンが生成されるが、これらは第2室(S2)におけるアルカリ水の生成にほとんど寄与しない。
【0112】
−超音波発生部−
超音波発生部(94)の具体的な構成は、実施形態1に係るイオン水供給部(60)に設けた超音波発生部(94)と同様である。
【0113】
なお、実施形態2において、酸性水(又はアルカリ水)を連続して生成する場合は、超音波発生部(94)を電極対(64,65)よりも酸性水路(63a)(又はアルカリ水路(63b))側に配置すると良い。これにより、酸性水路(63a)(又はアルカリ水路(63b))側に向かって流れる酸性水(又はアルカリ水)に含まれる過酸化水素を、超音波照射により水酸ラジカルに効果的に変換することができる。また、実施形態2においては、水浄化ユニット(6)を貯水タンク(61)の底部に配置したが、底部寄りの壁面上に配置してもよい。また、水浄化ユニット(6)を構成する電極ユニット部(62)及び超音波発生部(94)のうち少なくとも電極ユニット部(62)を貯水タンク(61)の底部寄りの壁面上に配置してもよい。
【0114】
−制御部−
制御部(4)は、高電圧発生部(70)に接続された放電波形発生部(3)と、電極対(64,65)に印加する電圧のオン又はオフを制御する制御部(1)と、増幅器(9)を介して超音波発生部(94)に所定の周波数の交流電圧を供給する超音波波形発生部(8)と、超音波波形発生部(8)を介して超音波発生部(94)の動作を制御する制御部(5)と、貯水タンク(61)内の水中の過酸化水素濃度をモニタするセンサ(7)とを備えている。なお、図示しないが、センサ(7)のモニタ結果に基づいて制御部(1,5)を制御する中央演算装置(CPU)が設けられていてもよい。制御部(1,5)による電極ユニット部(62)及び超音波発生部(94)の制御方法については、後に説明する。なお、後述のいわゆるフィードフォワード制御を行う場合、センサ(7)は必ずしも設けられなくてもよい。
【0115】
−運転動作−
図10は、実施形態2に係るイオン水供給部(60)による運転動作の基本サイクルを示す図である。
図10に示すように、貯水タンク(61)内に溜められた水は、まず、電気分解ユニット部(85)によって電気分解されて、酸性水及びアルカリ水が生成される。生成された酸性水及びアルカリ水は、電極対(64,65)間に生起される放電によって浄化される。この際、放電によって酸性水及びアルカリ水中に水酸ラジカル等の活性種が生成し、有機物等の分解や殺菌などが行われる(
図10中のステップSt1、St2)。水酸ラジカルは短時間で過酸化水素に変化する(ステップSt3)。
【0116】
次に、超音波発生部(94)から水中へと超音波を伝搬させ、水中の過酸化水素を分解し、水酸ラジカルに変化させる(ステップSt4)。超音波照射により発生した水酸ラジカルは、再度、過酸化水素に変化する。ただし、除菌等、酸性水及びアルカリ水の浄化反応に使われた水酸ラジカルは水に変化するので、放電を停止して超音波照射のみを行った場合には、過酸化水素の濃度は低下して行くことになる。
【0117】
なお、上記の酸性水及びアルカリ水の生成は、1回ごとに貯水タンク(61)内の水を全て入れ替える、いわゆるバッチ処理によって行ってもよい。あるいは、温水路(21)から貯水タンク(61)への注水と貯水タンク(61)から酸性水路(63a)(又はアルカリ水路(63b)への酸性水(又はアルカリ水)の流出を連続的に行う連続処理によって行ってもよい。
【0118】
以下、放電と超音波処理とを組み合わせたイオン水供給部(60)の運転制御の具体例について説明する。
図11(a)は、水中の過酸化水素の濃度を用いてフィードバック制御を行う場合の運転制御の一例を示すタイムチャートである。以下の方法では、水中の過酸化水素はセンサ(7)によって検知される。
【0119】
まず、第5ポンプ(50)が運転されると、給湯タンク(41)内の水は、温水路(21)を通じて貯水タンク(61)へ流入する。この水が所定量に達し、電気分解ユニット部(85)及び上記絶縁ケーシング(71)の内の空間(S)が浸水した状態になると、電気分解ユニット部(85)が作動するとともに、電極ユニット部(62)が作動する。
【0120】
電気分解ユニット部(85)の作動により、電源部(88)から陽極(86)と陰極(87)との間に電圧が印加されると、貯水タンク(61)内で電気分解が起こり、第1室(S1)内では酸性水が、第2室(S2)内ではアルカリ水が、それぞれ生成される。
【0121】
電極ユニット部(62)の作動により、上記電源部(70)から電極対(64,65)へ所定の電圧(例えば1kV)が印加される(制御部(1)により、電極対(64,65)間に所定の電圧が印加される)と、上記絶縁ケーシング(71)における開口(74)内の電流経路の電流密度が上昇する。
【0122】
上記絶縁ケーシング(71)における開口(74)内の電流密度が上昇すると、この開口(74)内のジュール熱が大きくなる。その結果、絶縁ケーシング(71)では、開口(74)の近傍において、水の気化が促進されて気泡が形成される。この気泡は、開口(74)のほぼ全域を覆う状態となり、この状態では、気泡が、電極A(64)と電極B(65)との間での水を介した導電を阻止する抵抗として機能する。これにより、電極A(64)と電極B(65)との間の漏れ電流が抑制され、電極対(64,65)間では、所望とする電位差が保たれることになる。すると、気泡内では、絶縁破壊に伴い放電が発生する。気泡で放電が行われると、気泡における気液界面の近傍では、水酸ラジカル等の活性種や過酸化水素等が生成される。なお、この段階では、超音波発生部(94)はオフ状態にしておく。これにより、水(酸性水及びアルカリ水)が浄化されるとともに、水中の過酸化水素の濃度が上昇する。
【0123】
次いで、水中の過酸化水素濃度があらかじめ設定された下限値を超えた場合、制御部(1)は電極対(64,65)への電圧供給を継続させ、制御部(5)は、超音波発生部(94)をオン状態にして水中に超音波を照射させる。これにより、放電により生成された水酸ラジカルと、過酸化水素から生成された水酸ラジカルとによって水が浄化される。放電によって生成される過酸化水素の量は超音波によって分解される過酸化水素の量よりも多いので、この期間中も水中の過酸化水素の濃度は上昇する。
【0124】
次に、水中の過酸化水素濃度があらかじめ設定された上限値を超えた場合、制御部(1)は電極対(64,65)への電圧供給を停止し、放電を停止させる。制御部(5)は、引き続き超音波発生部(94)をオン状態にして水中に超音波を照射させる。これにより、過酸化水素から生成された水酸ラジカルによって水が浄化される。この期間中、超音波によって過酸化水素が分解されるので、水中の過酸化水素の濃度は減少する。
【0125】
次いで、水中の過酸化水素濃度が上述の下限値を下回った時点で、制御部(1)は電極対(64,65)への電圧供給を再開する。これにより、水中の過酸化水素の濃度は再び上昇する。これ以後、同様に超音波照射のみを行う期間と超音波照射と放電とを組み合わせる期間とを繰り返すことで、水中の過酸化水素濃度を下限値以上、且つ上限値以下の範囲に制御しつつ、水を浄化する。
【0126】
−実施形態2の効果−
実施形態2に係るイオン水供給部(60)では、電気分解ユニット部(85)によって、第1室(S1)内で酸性水が生成され、第2室(S2)内でアルカリ水が生成される。そして、第1室(S1)内に設けられた電極ユニット部(62)によって第1室(S1)内で水酸ラジカル等の活性種及び過酸化水素が生成され、第1室(S1)内に設けられた超音波発生部(94)によって水酸ラジカルが生成される。同様に、第2室(S2)内に設けられた電極ユニット部(62)によって第2室(S2)内で水酸ラジカル等の活性種及び過酸化水素が生成され、第2室(S2)内に設けられた超音波発生部(94)によって水酸ラジカルが生成される。水酸ラジカル等の活性種及び過酸化水素によって、浴槽(U1)やシャワー(U2)に供給される温水が十分に殺菌・浄化される。
【0127】
さらに、実施形態2の制御方法によれば、制御部(1)は、運転動作の開始後に水中の過酸化水素濃度が上限値に達するまでは放電を生起させて水酸ラジカルを発生させ、水を浄化することができる。また、制御部(5)は、水中の過酸化水素濃度が所定の下限値を超える期間中に超音波発生部(94)をオン状態にする、言い換えれば、過酸化水素濃度が所定の下限値を下回る期間中には超音波発生部(94)をオフ状態にする。つまり、水中に十分な過酸化水素が存在する場合に超音波によって水酸ラジカルを発生させるので、水を効果的に浄化することができる。さらに、十分な濃度の過酸化水素の存在下で超音波を継続的に照射することで、継続的に水酸ラジカルを生成することができるので、強い浄化能力を所定の期間中維持することができる。
【0128】
さらに、上述の方法によれば、貯水タンク(61)からイオン水路(63)へと供給される水中の過酸化水素の濃度を上限値以下に抑えることができるので、過酸化水素を除去するための工程を容易にすることができる。
【0129】
実施形態2に係るイオン水供給部(60)によれば、上述のように、水中での放電と、水中への超音波照射とを組み合わせることで、水中の過酸化水素濃度を上昇させずに浄化能力の向上を図ることが可能になる。
【0130】
また、
図9では、電極対(64,65)に印加する電圧のオン又はオフを制御する制御部(1)と、超音波発生部(94)の動作を制御する制御部(5)とを別個に設けたが、1つの制御部で電極対(64,65)に印加する電圧のオン又はオフと超音波発生部(94)の動作とを制御することもできる。
【0131】
なお、実施形態2に係るイオン水供給部(60)では、放電及び超音波照射によって生じる水酸ラジカルによって、水の浄化処理と同時に貯水タンク(61)内に繁殖する細菌等を効果的に殺菌することもできる。
【0132】
<実施形態2の変形例1>
以下、実施形態2の変形例1に係るイオン水供給部の運転動作について説明する。
【0133】
図11(b)は、過酸化水素の濃度変化の測定値を用いてフィードフォワード制御を行う場合の運転制御の一例を示すタイムチャートである。
【0134】
フィードフォワード制御が行われるイオン水供給部には、必ずしもセンサ(7)が設けられていなくてもよい。ただし、放電のみを行った場合に貯水タンク(61)内の水中の過酸化水素濃度が0から下限値に達するまでに要する時間T1、放電と超音波照射とを同時に行った場合に水中の過酸化水素濃度が下限値から上限値になるまでに要する時間T2、超音波照射のみを行った場合に上限値から下限値に達するのに要する時間T3を、それぞれあらかじめ測定しておき、それらの測定データを制御部(1,5)内部又は外部に設けられたメモリ(図示せず)に記憶させておく。制御部(1,5)は測定データに基づいて以下の制御を行う。制御部(1,5)の内部又は外部には、時間をカウントするタイマを設けておく。
【0135】
本変形例に係る制御方法において、まず制御部(1)は、電極対(64,65)間に所定の電圧を印加させ、放電を生起させる。この際、超音波発生部(94)はオフ状態にしておく。これにより、水が浄化されるとともに、水中の過酸化水素の濃度が上昇する。
【0136】
次いで、運転開始から時間T1が経過した時点で、制御部(1)は電極対(64,65)への電圧供給を継続させ、制御部(5)は、超音波発生部(94)をオン状態にして水中に超音波を照射させる。これにより、放電により生成された水酸ラジカルと、過酸化水素から生成された水酸ラジカルとによって水が浄化される。この期間中も水中の過酸化水素の濃度は上昇する。
【0137】
次に、時間T2が経過した時点で、制御部(1)は電極対(64,65)への電圧供給を停止し、放電を停止させる。制御部(5)は、引き続き超音波発生部(94)をオン状態にして水中に超音波を照射させる。これにより、過酸化水素から生成された水酸ラジカルによって水が浄化される。この期間中、水中の過酸化水素の濃度は減少する。
【0138】
次いで、さらに時間T3が経過した時点で、制御部(1)は電極対(64,65)への電圧供給を再開し、この状態を時間T2の間継続する。これにより、水中の過酸化水素の濃度は再び上昇する。これ以後、同様に超音波照射のみを行う期間(時間T3)と超音波照射と放電とを組み合わせる期間(時間T2)とを繰り返すことで、水中の過酸化水素濃度を下限値以上且つ上限値以下の範囲に制御しつつ、水を浄化する。
【0139】
以上の制御方法によっても水中の過酸化水素の濃度を下限値以上、且つ上限値以下の範囲に制御しつつ、水を浄化することができる。なお、これは運転動作の一変形例であって、他の方法によっても水の浄化を行うことができる。
【0140】
《発明の実施形態3》
図12は、本発明の実施形態3に係るイオン水供給部を構成する水浄化ユニット(6)を示す断面図である。
図12では、実施形態2に係る水浄化ユニット(6)と同様の構成については
図9と同じ符号を付している。また、放電波形発生部(3)、制御部(1,5)、増幅器(9)及びセンサ(7)は
図12では図示を省略しているが、実際には本実施形態に係るイオン水供給部に設けられている。以下では、主に実施形態2に係る水浄化ユニット(6)と異なる点について説明する。
【0141】
本実施形態に係る水浄化ユニット(6)は、貯水タンク(61)内に配置された電極対(64x,65x)と、電極対(64x,65x)に接続された高電圧発生部(電源部)(70a)と、貯水タンク(61)の底部に設置された超音波発生部(94)とを備えている。
【0142】
電極(64x)は絶縁ケーシング(71a)の内部に収納され、電極(65x)は絶縁ケーシング(71b)の内部に収納されている。電極(64x)及び電極(65x)は、それぞれ板状に形成されている。また、電極(64x)及び電極(65x)は耐腐食性が高い導電性の金属材料で構成されている。高電圧発生部(70a)は、数キロボルト程度の電圧を電極対(64x,65x)に供給する。
【0143】
絶縁ケーシング(71a,71b)は、例えばセラミックス等の絶縁材料で構成されており、
図2に示す絶縁ケーシング(71)と同様の構成を有している。
【0144】
すなわち、絶縁ケーシング(71a)は、一面(
図12では右側の面)が開放された容器状のケース本体(180a)と、該ケース本体(180a)の開放部を閉塞する板状の蓋部(73a)とを有している。また、絶縁ケーシング(71b)は、一面(
図12では左側の面)が開放された容器状のケース本体(180b)と、該ケース本体(180b)の開放部を閉塞する板状の蓋部(73b)とを有している。
【0145】
絶縁ケーシング(71a)の蓋部(73a)には、該蓋部(73a)を厚さ方向に貫通する1つの開口(74a)が形成されている。絶縁ケーシング(71b)の蓋部(73b)にも、該蓋部(73b)を厚さ方向に貫通する1つの開口(74b)が形成されている。これらの開口(74a,74b)により、電極(64x)と電極(65x)との間の電界の形成が許容されている。開口(74a,74b)の内径は、0.02mm以上0.5mm以下であることが好ましい。以上のような開口(74a,74b)は、電極対(64x,65x)の間の電流経路の電流密度を上昇させる電流密度集中部を構成する。
【0146】
絶縁ケーシング(71a,71b)は、貯水タンク(61)内に、蓋部(73a,73b)同士が対向するように設置されている。言い換えれば、電極(64x)と電極(65x)とは互いに対向するよう配置されている。
【0147】
絶縁ケーシング(71a,71b)の開口(74a,74b)内では、電流経路の電流密度が上昇することで、水がジュール熱によって気化して気泡が形成される。つまり、絶縁ケーシング(71a,71b)の開口(74a,74b)は、該開口(74a,74b)に気相部としての気泡を形成する気相形成部として機能する。この構成により、電圧が電極対(64x,65x)に供給された場合に電極対(64x,65x)間の気泡内に放電を生起させることができる。
【0148】
なお、超音波発生部(94)の具体的な構成は、実施形態1に係るイオン水供給部(60)に設けた超音波発生部(94)と同様である。
【0149】
−実施形態3の効果−
本実施形態に係るイオン水供給部を、
図11(a)又は(b)に示す制御方法で運転することにより、水中の過酸化水素の濃度を所定の範囲内に保持しつつ、貯水タンク(61)内の水を効果的に浄化することができる。
【0150】
《発明の実施形態4》
図13は、本発明の実施形態4に係るイオン水供給部を構成する水浄化ユニット(6)を示す断面図である。
図13では、実施形態2に係る水浄化ユニット(6)と同様の構成については
図9と同じ符号を付している。また、放電波形発生部(3)、制御部(1,5)、増幅器(9)及びセンサ(7)は
図13では図示を省略しているが、実際には本実施形態に係るイオン水供給部に設けられている。以下では、主に実施形態2に係る水浄化ユニット(6)と異なる点について説明する。
【0151】
実施形態4に係る水浄化ユニット(6)は、貯水タンク(61)内に配置された電極対(64,65)と、電極対(64,65)に接続された高電圧発生部(電源部)(70b)と、貯水タンク(61)の底部に設置された超音波発生部(94)とを備えている。
【0152】
実施形態4に係る水浄化ユニット(6)においては、電極A(64)及び電極B(65)がそれぞれ高電圧発生部(70b)の正極側及び負極側にそれぞれ接続され、高電圧発生部(70b)から電極対(64,65)に高電圧のパルス電圧が供給される。
【0153】
また、電極A(64)を囲む絶縁ケーシング(71)は設けられない。電極A(64)及び電極B(65)は共に板状に形成され、貯水タンク(61)内に、互いに対向するように設置される。
【0154】
さらに、水浄化ユニット(6)には、例えば貯水タンク(61)の底部など、少なくとも電極対(64,65)の間であって、電極対(64,65)よりも低い位置に設けられたノズル(吐出手段)(119)と、ノズル(119)に空気等の気体を送るエアポンプ(送出手段)(99)とが設けられている。エアポンプ(99)によって貯水タンク(61)内の気体は、ノズル(119)を介して循環される。ただし、エアポンプ(99)によって貯水タンク(61)内に外部から気体を供給してもよい。
【0155】
超音波発生部(94)の具体的な構成は、実施形態1に係るイオン水供給部(60)に設けた超音波発生部(94)と同様である。超音波発生部(94)は、貯水タンク(61)の底部に設置されていてもよいが、貯水タンク(61)内の水中に超音波を照射できる限りにおいて任意の位置に設置可能である。
【0156】
少なくとも放電処理を行う期間中、ノズル(119)から水中へと泡が吐出される。水中に泡が存在する状態で電極対(64,65)にパルス電圧を供給することにより、泡の内部で放電が生起され、水酸ラジカルが生成する。
【0157】
本実施形態に係るイオン水供給部では、実施形態2に係るイオン水供給部(60)と基本的に同じ制御方法、すなわち
図11(a)又は(b)に示す制御方法で、放電と超音波照射とを組み合わせた水(酸性水及びアルカリ水)の浄化が行われる。ただし、
図11(a)及び(b)に示す放電処理の期間中は、高電圧発生部(70b)から電極対(64,65)へとパルス電圧が間欠的に供給され、電極対(64,65)間に間欠的に放電が生起される。
【0158】
−実施形態4の効果−
以上の構成及び方法によれば、電極対(64,65)間にパルス放電を発生させる場合でも効率良く水酸ラジカルを発生させることができるので、超音波照射と組み合わせることで、過酸化水素濃度を上昇させずに、高い浄化能力を発揮することができる。
【0159】
《発明の実施形態5》
図14は、本発明の実施形態5に係るイオン水供給部を構成する水浄化ユニット(6)を示す断面図である。
図14では、実施形態2及び実施形態3に係る水浄化ユニット(6)と同様の構成については
図9及び
図12と同じ符号を付している。また、放電波形発生部(3)、制御部(1,5)、増幅器(9)及びセンサ(7)は
図14では図示を省略しているが、実際には本実施形態に係るイオン水供給部に設けられている。以下では、主に実施形態3に係るイオン水供給部と異なる点について説明する。
【0160】
本実施形態に係る水浄化ユニット(6)は、貯水タンク(61)内に配置された電極対(64y,65y)と、電極対(64y,65y)に接続された高電圧発生部(電源部)(70c)と、貯水タンク(61)の底部に設置された超音波発生部(94)とを備えている。
【0161】
電極(64y)と電極(65y)とは、それぞれ貯水タンク(61)内に、互いに対向するように設置されている。
【0162】
電極(64y)は、少なくとも1つの導電部(164)と、導電部(164)を囲む絶縁部(165)とを有している。
【0163】
電極(65y)は、少なくとも1つの導電部(166)と、導電部(166)を囲む絶縁部(167)とを有している。
【0164】
以上のように、電極(64y)における導電部(164)の露出面、及び電極(65y)における導電部(166)の露出面の面積は小さいので、電圧を電極対(64y,65y)に供給した場合には導電部(164,166)の表面で電流密度の集中部が形成される。そのため、導電部(164,166)の表面では水がジュール熱によって気化して気泡が形成される。この泡によって導電部(164,166)の露出面が覆われた状態で高電圧発生部(70c)からの電圧供給を継続することにより、泡の内部で放電が生起される。
【0165】
なお、超音波発生部(94)の具体的な構成は、実施形態1に係るイオン水供給部(60)に設けた超音波発生部(94)と同様である。
【0166】
−実施形態5の効果−
本実施形態に係るイオン水供給部を、
図11(a)又は(b)に示す制御方法で運転することにより、水中の過酸化水素の濃度を所定の範囲内に保持しつつ、貯水タンク(61)内の水を効果的に浄化することができる。
【0167】
以上の構成によっても、電極対(64y,65y)間での放電と、超音波照射と組み合わせることで、水中の過酸化水素濃度を上昇させずに、高い浄化能力を発揮することができる。
【0168】
〈実施形態2の変形例2〉
実施形態2の変形例2は、上記実施形態2と、電極ユニット部の構成が異なるものである。以下には、上記実施形態2と異なる点を主として説明する。
【0169】
図15に示すように、実施形態2の変形例2における電極ユニット部(62)は、貯水タンク(61)の外側から内部に向かって挿入されて固定される、いわゆるフランジユニット式に構成されている。また、電極ユニット部(62)は、電極A(64)と電極B(65)と絶縁ケーシング(71)とが一体的に組立てられている。この電極ユニット部(62)は、
図16に示すように、貯水タンク(61)における第1室(S1)側の底部と、第2室(S2)側の底部とに取り付けられている。なお、
図16では、放電波形発生部(3)、制御部(1)及びセンサ(7)は図示を省略しているが、実際には本変形例に係るイオン水供給部に設けられている。
【0170】
絶縁ケーシング(71)は、大略の外形が円筒状に形成されている。絶縁ケーシング(71)は、ケース本体(72)と蓋部(73)とを有している。
【0171】
ケース本体(72)は、ガラス質又は樹脂製の絶縁材料で構成されている。ケース本体(72)は、円筒状の基部(76)と、該基部(76)から貯水タンク(61)側に向かって突出する筒状壁部(77)と、該筒状壁部(77)の外縁部から更に貯水タンク(61)側に向かって突出する環状凸部(78)とを有している。また、ケース本体(72)には、環状凸部(78)の先端側に先端筒部(79)が一体に形成されている。基部(76)の軸心部には、円柱状の挿入口(76a)が軸方向に延びて貫通形成されている。筒状壁部(77)の内側には、挿入口(76a)と同軸となり、且つ挿入口(76a)よりも大径となる円柱状の空間(S)が形成されている。
【0172】
蓋部(73)は、略円板状に形成されて環状凸部(78)の内側に嵌合している。蓋部(73)は、セラミックス材料で構成されている。蓋部(73)の軸心には、実施形態1と同様、蓋部(73)を上下に貫通する円形状の1つの開口(74)が形成されている。
【0173】
電極A(64)は、軸直角断面が円形状となる縦長の棒状の電極で構成されている。電極A(64)は、基部(76)の挿入口(76a)に嵌合している。これにより、電極A(64)は、絶縁ケーシング(71)の内部に収容されている。実施形態2の変形例2では、電極A(64)のうち貯水タンク(61)とは反対側の端部が、貯水タンク(61)の外部に露出される状態となる。このため、貯水タンク(61)の外部に配置される電源部(70)と、電極A(64)とを電気配線によって容易に接続することができる。
【0174】
電極A(64)のうち貯水タンク(61)側の端部(64a)は、絶縁ケーシング(71)の内部の空間(S)に臨んでいる。なお、
図15に示す例では、電極A(64)の端部(64a)が、挿入口(76a)の開口面よりも上側(貯水タンク(61)側)に突出しているが、この端部(64a)の先端面を挿入口(76a)の開口面と略面一としてもよいし、端部(64a)を挿入口(76a)の開口面よりも下側に陥没させてもよい。また、電極A(64)は、実施形態1と同様、開口(74)を有する蓋部(73)との間に所定の間隔が確保されている。
【0175】
電極B(65)は、円筒状の電極本体(65a)と、該電極本体(65a)から径方向外方へ突出する鍔部(65b)とを有している。電極本体(65a)は、絶縁ケーシング(71)のケース本体(72)に外嵌している。鍔部(65b)は、貯水タンク(61)の壁部に固定されて電極ユニット部(62)を保持する固定部を構成している。電極ユニット部(62)が貯水タンク(61)に固定された状態では、電極B(65)の電極本体(65a)の一部が浸水された状態となる。
【0176】
電極B(65)は、電極本体(65a)よりも小径の内側筒部(65c)と、該内側筒部(65c)と電極本体(65a)との間に亘って形成される連接部(65d)とを有している。内側筒部(65c)及び連接部(65d)は、貯水タンク(61)内の水中に浸漬している。内側筒部(65c)は、その内部に円柱空間(67)を形成している。内側筒部(65c)の軸方向の一端は、蓋部(73)と当接して該蓋部(73)を保持する保持部を構成している。また、電極本体(65a)と内側筒部(65c)と連接部(65d)の間には、ケース本体(72)の先端筒部(79)が内嵌している。内側筒部(65c)の軸方向の他端側には、円柱空間(67)を覆うようにメッシュ状の漏電防止材(68)が設けられている。この漏電防止材(68)は、電極B(65)と接触することで、実質的にアースされている。これにより、漏電防止材(68)は、貯水タンク(61)の内部の空間(水中)のうち、円柱空間(67)の内側から外側への漏電を防止している。
【0177】
電極B(65)は、電極本体(65a)の一部が貯水タンク(61)の外部に露出される状態となる。このため、電源部(70)と電極B(65)とを電気配線によって容易に接続することができる。
【0178】
−イオン水供給部の運転動作−
実施形態2の変形例2の給湯システム(10)においても、イオン水供給部(60)が運転されることで、給湯回路(12)を流れる水の浄化がなされる。
【0179】
イオン水供給部(60)の運転の開始時には、
図15に示すように、2つの電極ユニット部(62)は、ともに絶縁ケーシング(71)の内の空間(S)が浸水した状態となっている。電源部(70)から電極対(64,65)に所定の直流電圧(例えば1kV)が印加されると、開口(74)の内部の電流密度が上昇していく。
【0180】
図15に示す状態から、電極対(64,65)へ更に直流電圧が継続して印加されると、
図17に示すように、開口(74)内の水が気化されて気泡(B)が形成される。この状態では、気泡(B)が開口(74)のほぼ全域を覆う状態となり、円柱空間(67)内の負極側の水と、電極A(64)との間に気泡(B)による抵抗が付与される。これにより、電極A(64)と電極B(65)との間の電位差が保たれ、気泡(B)で放電が発生する。その結果、第1室(S1)に設けられた電極ユニット部(62)は、第1室(S1)内に貯留される酸性水中で水酸ラジカルや過酸化水素を生成し、第2室(S2)に設けられた電極ユニット部(62)は、第2室(S2)内に貯留されるアルカリ水中で水酸ラジカルや過酸化水素を生成する。さらに、超音波発生部(94)を作動させて、水中に超音波を照射する。これにより、放電により生成した水酸ラジカルが変化して生成される過酸化水素を分解して、再度、水酸ラジカルに変換する。水酸ラジカル及び過酸化水素等の成分が水の浄化に利用される。
【0181】
なお、上記実施形態2の変形例2において、円板状の蓋部(73)の軸心に1つの開口(74)を形成しているが、この蓋部(73)に複数の開口(74)を形成してもよい。
図18に示す例では、蓋部(73)の軸心を中心とする仮想ピッチ円上に、5つの開口(74)が等間隔置きに配列されている。このように蓋部(73)に複数の開口(74)を形成することで、各開口(74)の近傍でそれぞれ放電を生起させることができる。
【0182】
《その他の実施形態》
上述した実施形態においては、以下のような他の構成とすることもできる。
【0183】
〈給湯システムの構成〉
上記実施形態の給湯システム(10)を
図19に示すような、他の方式としてもよい。
【0184】
具体的に、
図19に示す例の給湯システム(10)は、加熱熱交換器(32)と第1ポンプ(43)とが、熱源ユニット(30)や給湯ユニット(40)と異なるユニット(ハイドロボックス(30a))に収容されている。また、この例では、給湯タンク(41)の内部に、コイル型熱交換器(13a)が収容されている。コイル型熱交換器(13a)は、給湯タンク(41)の底壁部(41c)寄りに配設されている。コイル型熱交換器(13a)では、熱媒体としての水が流れる伝熱管が、給湯タンク(41)の周壁部(41a)に沿うように螺旋状に形成されている。コイル型熱交換器(13a)は、一端が第1循環流路(13)の始端に接続し、他端が第1循環流路(13)の終端に接続している。
【0185】
図19に示す給湯システム(10)では、加熱熱交換器(32)で加熱された水が、コイル型熱交換器(13a)を流れる。これにより、コイル型熱交換器(13a)の伝熱管を流れる水の熱が、伝熱管の外部へ放出される。その結果、給湯タンク(41)内に貯留された水が加熱され、温水が生成される。
【0186】
〈電極ユニット部の構成〉
上述した実施形態1の電源部(70)には、放電の放電電力を一定に制御する定電力制御部を用いている。しかしながら、定電力制御部に代えて、放電時の放電電流を一定に制御する定電流制御部を設けることもできる。この定電流制御を行うと、水の導電率によらず放電が安定するため、スパークの発生も未然に回避できる。
【0187】
また、上述した実施形態1では、電源部(70)の正極に電極A(64)を接続し、電源部(70)の負極に電極B(65)を接続している。しかしながら、電源部(70)の負極に電極A(64)を接続し、電源部(70)の正極に電極B(65)を接続することで、電極対(64,65)の間で、いわゆるマイナス放電を行うようにしてもよい。
【0188】
〈イオン水供給部の配置〉
上記各実施形態では、イオン水供給部(60)を主供給路(17)に接続しているが、この限りでなく、例えば
図20に示すように、イオン水供給部(60)を第3循環流路(16)に接続してもよい。これにより、給湯運転時だけでなく、追い炊き運転時であっても、浴槽(U1)に過酸化水素を含む酸性水又はアルカリ水を供給できる。
【0189】
〈イオン交換膜〉
上記各実施形態では、貯水タンク(61)内の空間を、イオン交換膜(61a)によって第1室(S1)と第2室(S2)とに区画しているが、この限りでなく、例えば、イオン交換膜(61a)の代わりに、板状に形成された絶縁性の仕切板を用いても良い。この場合、仕切板に、第1室(S1)と第2室(S2)とを連通させるための少なくとも1つの開口を設ければ良い。これにより、該開口を介して電極対(64,65)間に電流経路が形成されるため、放電や電気分解が行われる。更に、イオン交換膜(61a)や仕切板が設けられていなくても良い。イオン交換膜(61a)や仕切板を設けなくとも、陽極としての電極A(64)付近では酸性水が生成され、陰極としての電極B(65)付近ではアルカリ水が生成される。