(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5857770
(24)【登録日】2015年12月25日
(45)【発行日】2016年2月10日
(54)【発明の名称】ウォームホイールの製造方法及びウォームホイールの製造装置
(51)【国際特許分類】
F16H 55/08 20060101AFI20160128BHJP
F16H 55/22 20060101ALI20160128BHJP
F16H 55/06 20060101ALI20160128BHJP
F16H 1/16 20060101ALI20160128BHJP
B62D 5/04 20060101ALI20160128BHJP
B29C 45/26 20060101ALI20160128BHJP
【FI】
F16H55/08 Z
F16H55/22
F16H55/06
F16H1/16 Z
B62D5/04
B29C45/26
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-23973(P2012-23973)
(22)【出願日】2012年2月7日
(65)【公開番号】特開2013-160334(P2013-160334A)
(43)【公開日】2013年8月19日
【審査請求日】2015年1月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(72)【発明者】
【氏名】濱北 準
(72)【発明者】
【氏名】満丸 道敏
【審査官】
塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】
特表2003−524741(JP,A)
【文献】
特開2001−280428(JP,A)
【文献】
特開2004−019828(JP,A)
【文献】
米国特許第06776064(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 55/08
B29C 45/26
B62D 5/04
F16H 1/16
F16H 55/06
F16H 55/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウォームに噛み合う複数の歯を備え、前記各歯における回転方向一方側の第1歯面と他方側の第2歯面は、それぞれ、はすば歯車の歯面と同形のヘリカル面部分と、前記ウォームの凸曲面状の歯面に沿う凹曲面部分とを有するウォームホイールの製造方法であって、
前記第1歯面では、前記ウォームホイールの回転軸方向の一方側に前記ヘリカル面部分が配置されると共に他方側に前記凹曲面部分が配置され、前記第2歯面では、前記ウォームホイールの回転軸方向の一方側に前記凹曲面部分が配置されると共に他方側に前記ヘリカル面部分が配置されており、
前記第1歯面を形成する第1歯面形成面とその回転方向反対側に形成された第1分割面とを備えた複数の第1歯面形成部を有する第1の型と、前記第2歯面を形成する第2歯面形成面とその回転方向反対側に形成された第2分割面とを備えた複数の第2歯面形成部を有する第2の型とが、前記第1分割面と前記第2分割面を互いに接触させて配置され、
前記第1の型と前記第2の型との間に合成樹脂を注入する樹脂注入工程と、
前記合成樹脂が固まった後、前記第1の型が前記ウォームホイールの回転軸方向の他方側から一方側へ向かって引き抜かれ、前記第2の型が前記ウォームホイールの回転軸方向の一方側から他方側へ向かって引き抜かれる引抜工程と、
を備えたことを特徴とするウォームホイールの製造方法。
【請求項2】
前記歯の歯溝を挟んで互いに回転方向に相対向する前記第1歯面と前記第2歯面とが、互いに点対称の位置に形成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載するウォームホイールの製造方法。
【請求項3】
前記第1分割面及び前記第2分割面が前記歯の歯筋方向に形成されており、
前記引抜工程では、前記第1歯面形成部と前記第2歯面形成部とが前記歯筋方向に相対移動することによって互いに分離される、
ことを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載するウォームホイールの製造方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載するウォームホイールの製造方法であって、
各前記第1歯面及び各前記第2歯面では前記ヘリカル面部分に前記歯筋方向に引き抜き可能な保持溝が形成されている、
ことを特徴とするウォームホイールの製造方法。
【請求項5】
ウォームに噛み合う複数の歯を備え、前記各歯における回転方向一方側の第1歯面と他方側の第2歯面は、それぞれ、はすば歯車の歯面と同形のヘリカル面部分と、前記ウォームの凸曲面状の歯面に沿う凹曲面部分とを有するウォームホイールの製造装置であって、
前記第1歯面では、前記ウォームホイールの回転軸方向の一方側に前記ヘリカル面部分が配置されると共に他方側に前記凹曲面部分が配置され、前記第2歯面では、前記ウォームホイールの回転軸方向の一方側に前記凹曲面部分が配置されると共に他方側に前記ヘリカル面部分が配置されており、
前記第1歯面を形成する第1歯面形成面とその回転方向反対側に形成された第1分割面とを備えた複数の第1歯面形成部を有する第1の型と、前記第2歯面を形成する第2歯面形成面とその回転方向反対側に形成された第2分割面とを備えた複数の第2歯面形成部を有する第2の型とが、前記第1分割面と前記第2分割面を互いに接触させて配置され、
前記第1分割面及び前記第2分割面は、合成樹脂を注入した後、前記第1の型が前記ウォームホイールの回転軸方向の他方側から一方側へ向かって引き抜かれ、前記第2の型が前記ウォームホイールの回転軸方向の一方側から他方側へ向かって引き抜かれる引抜工程において、前記第1の型及び前記第2の型が互いに分割される分割面である、
ことを特徴とするウォームホイールの製造装置。
【請求項6】
前記第1の型及び前記第2の型では、前記第1分割面及び前記第2分割面が前記歯筋方向に形成されており、
前記第1分割面及び前記第2分割面は、前記引抜工程で前記第1歯面形成部と前記第2歯面形成部とが前記歯筋方向に相対移動する面である、
ことを特徴とする請求項5に記載するウォームホイールの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウォームホイールに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、操舵補助力発生用モータの回転を、ウォームと、このウォームに噛み合うウォームホイールとを介して舵角が変化するように車輪に伝達する電動パワーステアリング装置において、そのウォームホイールを合成樹脂材製とすることで軽量化と騒音低減とが図られている。
【0003】
従来、そのウォームホイールは合成樹脂材をホブ加工することで成形されていた。しかし、ホブ加工を行うと多量のバリが発生するため、そのバリの除去作業に膨大な工数が必要とされていた。また、加工面の表面粗さの仕上がりにより、トルク変動や、異音が発生する場合がでてくるため、精度よく加工する必要があるため、工数大となっている。
【0004】
そこで、ウォームホイールを型成形することが考えられる。しかし、通常のウォームホイールの歯は、歯すじ方向における中央位置では両端位置よりも歯厚が薄く歯丈が大きいため、成形されたウォームホイールを成形型から歯すじ方向に型抜きすることができない。そのため、ウォームホイールを型成形しようとした場合、成形型をウォームホイールの回転周方向において並列する多数の部材から構成し、ウォームホイールの径方向に沿った型抜きが必要になる。そうすると成形型の構造が非常に複雑になって製造コストが増大し、また成形精度が低下する。
【0005】
そこで、
図8に示すように、ウォームホイール100の各歯101における回転方向一方側の歯面101aと他方側の歯面101bを、はすば歯車の歯面と同形のヘリカル面部分101a′、101b′と、ウォーム(図示省略)の凸曲面状の歯面に沿う凹曲面部分101a″、101b″とから構成することが提案されている。(特許文献1)。この従来例においては、各歯面101a、101bにおいて、回転軸方向の一方側にヘリカル面部分101a′、101b′を配置し、他方側に凹曲面部分101a″、101b″を配置している。これにより、各歯面101a、101bにおいて、凹曲面部分101a″、101b″ではヘリカル面部分101a′、101b′との境界に向かうに従い歯丈方向寸法と相対向する歯面間の距離が増加する。また、ヘリカル面部分101a′、101b′では歯丈方向寸法と相対向する歯面間の距離が歯すじ方向において一定になる。よって、ウォームホイール100を型成形した場合に、成形されたウォームホイール100を成形型からヘリカル面部分101a′、101b′の歯すじ方向(図において矢印方向H)に型抜きできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−280428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来のウォームホイール100においては、全ての歯面101a、101bで回転軸方向の一方側にヘリカル面部分101a′、101b′を配置し、他方側に凹曲面部分101a″、101b″を配置している。そのため、ヘリカル面部分の端部厚さcと凹面部分の端部厚さdで、歯厚が異なることになり強度差が発生することになる。また、
図8において2点鎖線で示すようにウォームの歯面102は凸曲面であるため、ヘリカル面部分101a′、101b′との接触領域よりも凹曲面部分101a″、101b″との接触領域が大きくなる。そのため、正逆回転するウォームからウォームホイール100に回転力を伝達する際に、凹曲面部分101a″、101b″が配置された回転軸方向と逆回転ではヘリカル面部分が配置された回転軸方向となるため、強度差のある歯面にまったく逆に偏って力が作用することになる。これにより、正逆回転で円滑な回転伝達が阻害され、ウォームやウォームホイール100の歯面の偏摩耗や破損により寿命が短くなるという場合がある。そこで、本発明は、回転方向で強度差がなく円滑な回転伝達ができるウォームホイールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、
ウォームに噛み合う複数の歯を備え、
前記各歯における回転方向一方側の
第1歯面と他方側の
第2歯面は、
それぞれ、はすば歯車の歯面と同形のヘリカル面部分と、
前記ウォームの凸曲面状の歯面に沿う凹曲面部分とを有するウォームホイール
の製造方法であって、前記
第1歯面
では、
前記ウォームホイールの回転軸方向の一方側に
前記ヘリカル面部分が配置されると共に他方側に
前記凹曲面部分が配置され、
前記第2歯面では、前記ウォームホイールの回転軸方向の一方側に
前記凹曲面部分が配置されると共に他方側に
前記ヘリカル面部分が配置され
ており、前記第1歯面を形成する第1歯面形成面とその回転方向反対側に形成された第1分割面とを備えた複数の第1歯面形成部を有する第1の型と、前記第2歯面を形成する第2歯面形成面とその回転方向反対側に形成された第2分割面とを備えた複数の第2歯面形成部を有する第2の型とが、前記第1分割面と前記第2分割面を互いに接触させて配置され、前記第1の型と前記第2の型との間に合成樹脂を注入する樹脂注入工程と、前記合成樹脂が固まった後、前記第1の型が前記ウォームホイールの回転軸方向の他方側から一方側へ向かって引き抜かれ、前記第2の型が前記ウォームホイールの回転軸方向の一方側から他方側へ向かって引き抜かれる引抜工程と、を備えたことを要旨としている。
【0009】
本発明によれば、
各歯の両端部の歯厚差が小さくなるため、正逆回転方向で強度差が小さく、円滑な回転伝達ができるウォームホイールを製造できる。
その製造においては、射出成形によるウォームホイール歯部の成形に当って、歯面を形成する金型を離型時に進み角線方向に移動できるため、当該歯面を成形する型を、互いにウォームホイールの軸方向にスライドさせることによって型抜きをすることができるようになる。そのため、歯型の歯面においてアンダーカット部分がない状態で成形できるため、精度がよい歯面で、上記ウォームホイールを製造することができる。
【0010】
請求項5に記載の発明は、ウォームに噛み合う複数の歯を備え、前記各歯における回転方向一方側の第1歯面と他方側の第2歯面は、それぞれ、はすば歯車の歯面と同形のヘリカル面部分と、前記ウォームの凸曲面状の歯面に沿う凹曲面部分とを有するウォームホイールの製造装置であって、前記第1歯面では、前記ウォームホイールの回転軸方向の一方側に前記ヘリカル面部分が配置されると共に他方側に前記凹曲面部分が配置され、前記第2歯面では、前記ウォームホイールの回転軸方向の一方側に前記凹曲面部分が配置されると共に他方側に前記ヘリカル面部分が配置されており、前記第1歯面を形成する第1歯面形成面とその回転方向反対側に形成された第1分割面とを備えた複数の第1歯面形成部を有する第1の型と、前記第2歯面を形成する第2歯面形成面とその回転方向反対側に形成された第2分割面とを備えた複数の第2歯面形成部を有する第2の型とが、前記第1分割面と前記第2分割面を互いに接触させて配置され、前記第1分割面及び前記第2分割面は、合成樹脂を注入した後、前記第1の型が前記ウォームホイールの回転軸方向の他方側から一方側へ向かって引き抜かれ、前記第2の型が前記ウォームホイールの回転軸方向の一方側から他方側へ向かって引き抜かれる引抜工程において、前記第1の型及び前記第2の型が互いに分割される分割面である、ことを特徴としている。
【0011】
本発明によれば、 ウォームホイールの回転軸方向の一方側にヘリカル面部分が配置されると共に他方側に凹曲面部分が配置される第1歯面と、その回転軸方向の一方側に凹曲面部分が配置されると共に他方側にヘリカル面部分が配置される第2歯面とで、前記第1歯面は第2歯面に相対向するように配置され、前記第2歯面は第1歯面に相対向するように配置されており、すなわち、各歯面で形成されるウォームホイールは両端部の歯厚差がなく、正逆回転方向で強度差がなく円滑な回転伝達ができるウォームホイール
の製造装置を提供できる。
その製造装置の第1の型と第2の型とを組み合わせた樹脂成形型は、射出成形によるウォームホイール歯部の成形に当って、歯面を形成する金型を離型時に進み角線方向に移動できるため、当該歯面を成形する型を、互いにウォームホイールの軸方向にスライドさせることによって型抜きをすることができるようになる。そのため、歯型の歯面においてアンダーカット部分がない状態で成形できるため、精度がよい歯面で、上記ウォームホイールを製造することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、回転方向で強度差がなく円滑な回転伝達ができるウォームホイールを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第1実施形態のウォームホイールを用いた電動パワーステアリング装置の縦断面図
【
図2】第1実施形態のウォームホイールの部分斜視図
【
図3】第1実施形態のウォームホイールとウォームの側面図
【
図4】第1実施形態のウォームホイールのピッチ円筒面の部分展開図
【
図5】(1)第1実施形態のウォームホイールにおける回転方向一方側の第1歯面を示す図、(2)回転方向他方側の第2歯面を示す図
【
図7】第2実施形態のウォームホイールの部分斜視図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて詳細に説明する。
(第1実施形態)
【0018】
図1に示す電動パワーステアリング装置Pは、ステアリングホイールHの操舵によるステアリングシャフトSの回転を、図外ステアリングギヤを介して車輪に舵角が変化するように伝達する。そのステアリングギヤの形式は、ステアリングシャフトSの回転を車輪に舵角が変化するように伝達できれば限定されず、例えばステアリングシャフトSに連結されたピニオンに噛み合うラックの動きをタイロッドやナックルアーム等を介して車輪に伝達するラックピニオン式ステアリングギヤを採用できる。そのステアリングシャフトSにより伝達される操舵トルクを検出するトルクセンサ1が設けられている。そのトルクセンサ1は、本実施形態では公知の構成であり、センサハウジング2と、入力シャフト3と、この入力シャフト3にトーションバー8を介して同軸心かつ弾性的に相対回転可能に連結される出力シャフト4と、磁気回路を構成する磁束発生用コイル7とを備え、操舵トルクによる両シャフト3、4の弾性的な相対回転量に応じて磁気回路における磁気抵抗が変化し、そのコイル7の出力から操舵トルクを検出する。
【0019】
両シャフト3、4はステアリングシャフトSの一部を構成し、センサハウジング2によりベアリング6a、6bを介して支持される。そのセンサハウジング2に操舵補助力発生用モータMが取り付けられている。その出力シャフト4に金属製スリーブ9を介して合成樹脂材製のウォームホイール10が同行回転するように設けられている。そのウォームホイール10に噛み合うウォーム11が操舵補助力発生用モータMにより駆動される。そのモータMはトルクセンサ1により検出された操舵トルクに応じて図外制御装置により制御される。モータMの回転がウォーム11、ウォームホイール10、ステアリングシャフトSを介して車輪に舵角が変化するように伝達されることで、操舵トルクに応じた操舵補助力が付与される。
【0020】
図2、
図3に示すように、そのウォームホイール10は円環状のホイールボディ10Bと、このホイールボディ10Bの外周において並列する複数の歯10Aとを有し、各歯10Aがウォーム11の歯11Aに噛み合う。
【0021】
図4、
図5の(1)〜(2)に示すように、ウォームホイール10の各歯10Aにおける歯筋方向の回転方向一方側(
図4の上側)の歯面10aと他方側(
図4の下側)の歯面10bは、はすば歯車の歯面と同形のヘリカル面部分10a′、10b′と、ウォーム11の歯11Aの凸曲面状の歯面に沿う凹曲面部分10a″、10b″とを有する。
【0022】
歯面10aでは、ウォームホイール10の回転軸方向における一方側(
図4の右側)にヘリカル面部分10a′が配置されると共に他方側(
図4の左側)に凹曲面部分10a″が配置される。
歯面10bはウォームホイール10の回転軸方向における一方側(
図4の左側)にヘリカル面部分10b′が配置されると共に他方側(
図4の右側)に凹曲面部分10b″が配置される。すなわち、歯面10aと歯面10bとは凹曲面部分10a″、10b″が配置されると共に他方側にヘリカル面部分10a′、10b′が点対象の位置に配置される。
【0023】
また、ウォームホイール10の各歯10Aにおける歯丈方向の歯面については、
図5に示すように、各第1、第2歯面10a、10bにおける凹曲面部分10a″、10b″では、歯丈方向寸法h″と相対向する歯面間の距離m″はヘリカル面部分10a′、10b′との境界nに向かうに従い増加する。また、その凹曲面部分10a″、10b″とヘリカル面部分10a′、10b′は、歯すじ方向における中央位置の境界Oa、Obにおいて、滑らかに連なるものとされている。その境界の位置は、型成形されたウォームホイール10を成形型から型抜きできるように定めればよく、本実施形態では各歯面の歯すじ方向における中央位置とされている。円滑に型抜きする上ではヘリカル面部分10a′、10b′の領域bを凹曲面部分10a″、10b″の領域aと同等以上にすればよい。
【0024】
このウォームホイール10を成形するに際しては、型成形され、例えば射出成形される。この型成形に用いる成形型に上記スリーブ9をインサートしておくことで、ウォームホイール10とスリーブ9を一体化させることができる。
図6において破線で示すように、その成形型30はウォームホイール10の回転軸方向における一方側を成形する第1型31と他方側を成形する第2型32とを有する。その第1型31と第2型32との分割面PLは、ウォームホイール10の径方向視で各歯10Aと重なると共にヘリカル面部分10a′、10b′の歯すじ方向に沿う部分PL1と、互いに対向する第2歯面Bの間の部分よりもウォームホイール10の回転軸方向における一方側に位置する部分PL2と、互いに対向する第1歯面Aの間の部分よりもウォームホイール10の回転軸方向における他方側に位置する部分PL3とを有する。これにより、第1型31により第1歯面Aを成形し、第2型32により第2歯面Bを成形し、第1型31と第2型32とをヘリカル面部分10a′、10b′の歯すじ方向(図において矢印方向H)に沿って相対移動させることで分離することにより、ウォームホイール10を成形型30から型抜き成形できる。
【0025】
上記ウォームホイール10によれば、歯面10aにおいては回転軸方向の一方側にヘリカル面部分10a′、10b′が配置されると共に他方側に凹曲面部分10a″、10b″が配置され、第2歯面bにおいては回転軸方向の一方側に凹曲面部分10a″、10b″が配置されると共に他方側にヘリカル面部分10a′、10b′が配置されている。これにより、ウォーム11の歯面11Aが歯面10aに接する位置と歯面10bに接する位置とで、ウォーム11からウォームホイール10に作用する力の偏り方向が互いに逆になる。よって、ウォーム11からウォームホイール10に作用する力の偏りを抑制できる。しかも、各第1歯面Aは第1歯面Aに相対向するように配置され、各第2歯面Bは第2歯面Bに相対向するように配置され、凹曲面部分10a″、10b″では歯丈方向寸法と相対向する歯面間の距離はヘリカル面部分10a′、10b′との境界に向かうに従い増加し、ヘリカル面部分10a′、10b′では歯丈方向寸法と相対向する歯面間の距離は歯すじ方向において一定とされているので、型成形されたウォームホイール10をヘリカル面部分10a′、10b′の歯すじ方向に型抜きできる。その型成形には上記実施形態の成形型30を用いるのが適している。また、ウォーム11の歯11Aの歯面に対して何れかの歯面10aと何れかの歯面10bとが同時に接触することでウォーム11からウォームホイール10に作用する力の偏りをより抑制できる。
【0026】
(第2実施形態)
図7は、本発明のさらに他の第2実施形態のウォームホイールの要部の概略斜視図を示しているが、歯面50に設けられている保持溝53は、歯面50の凹曲面部51とヘリカル部52の境界から歯筋方向に端部40aまで延びている。保持溝53の断面形状は円弧状であり、その最大深さは例えば0.3mm〜0.5mm程度に設定されている。また、保持溝53の断面形状は矩形でもあってもよいし、三角形であってもよい。保持溝53は、ウォームホイールの歯40の両歯面に設けている。したがって、ウォームホイールの歯40に介在する潤滑剤を両方向回転時確実に保持することができる。
【0027】
このウォームホイール成形方法により、成形と同時に歯面に溝加工が可能であり、この溝に潤滑剤を保持し、この潤滑剤保持溝により、歯面を潤滑する潤滑剤が歯面に常に供給され、歯面の潤滑を確保して、安定した低いトルクを確保できることにより、摩耗やクリープが小さくなり耐久性が向上できる。そのため、回転時に必要部に供給できるための潤滑不良を防止できるウォームホイールを提供できる。
【符号の説明】
【0028】
10 ウォームホイール
10A 歯
10a、10b 歯面
10a′、10b′ ヘリカル面部分
10a″、10b″ 凹曲面部分
11 ウォーム
11A 歯
30 成形型
PL 分割面