(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5857777
(24)【登録日】2015年12月25日
(45)【発行日】2016年2月10日
(54)【発明の名称】連続鋳造用スプレー顆粒状発熱型モールドパウダーの製造方法
(51)【国際特許分類】
B22D 11/108 20060101AFI20160128BHJP
【FI】
B22D11/108 F
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-26585(P2012-26585)
(22)【出願日】2012年2月9日
(65)【公開番号】特開2013-163193(P2013-163193A)
(43)【公開日】2013年8月22日
【審査請求日】2014年11月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001971
【氏名又は名称】品川リフラクトリーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(72)【発明者】
【氏名】岩本 行正
(72)【発明者】
【氏名】小形 裕文
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 純哉
【審査官】
酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】
特開平06−023502(JP,A)
【文献】
特開平10−156492(JP,A)
【文献】
特開2006−043725(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D11/00−11/22
C21C7/076
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スプレー顆粒状発熱型モールドパウダーの製造方法において、粒子径が45〜105μmの範囲内にある金属シリコン粉またはシリコン合金粉を0.1〜8質量%、かつ粒径が45μm未満の金属粉を1.0質量%以下の量で含有してなる原料配合物のスラリーをスプレー造粒法により造粒することを特徴とするスプレー顆粒状発熱型モールドパウダーの製造方法。
【請求項2】
セルロース類、デキストリン類及び澱粉類からなる群から選択される1種または2種以上を外掛けで0.3〜5質量%の範囲内で含有する、請求項1記載のスプレー顆粒状発熱型モールドパウダーの製造方法。
【請求項3】
スプレー顆粒状発熱型モールドパウダーの製造方法において、予めシリコーンオイル、流動パラフィン及びエチレングリコールからなる群から選択される1種または2種以上を金属に対して0.01〜5質量%の範囲内でコーティングした金属粉を0.1〜8質量%の量で含有してなる原料配合物のスラリーをスプレー造粒法により造粒することを特徴とするスプレー顆粒状発熱型モールドパウダーの製造方法。
【請求項4】
セルロース類、デキストリン類及び澱粉類からなる群から選択される1種または2種以上を外掛けで0.3〜5質量%の範囲内で含有する、請求項3記載のスプレー顆粒状発熱型モールドパウダーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼の連続鋳造用モールドパウダーに関し、更に詳細には、鋼の連続鋳造においてモールド内に添加され使用される連続鋳造用スプレー顆粒状発熱型モールドパウダーに関する。
【背景技術】
【0002】
モールドパウダーは鋼の連続鋳造においてモールド内へ注入された溶鋼表面上へ投入され、溶鋼からの熱を受けて滓化溶融する。このとき上方から未溶融の原パウダー層、焼結層、溶融スラグ層からなる層状構造を形成し、溶融スラグはモールドと凝固シェル間に流入し消費される。その間の主な役割としては、(1)溶鋼の保温作用;(2)溶鋼の再酸化防止作用;(3)溶鋼から浮上する介在物の吸収除去作用;(4)モールドと凝固シェル間の潤滑作用;(5)凝固シェルからモールドへの抜熱制御などが挙げられる。
【0003】
この内、(1)はモールドパウダーの重要な役割の一つであり、保温性の悪いパウダーを使用すると、溶鋼表面が凝固するディッケルが発生するなど操業安定性を損なう。ディッケルが発生しないまでも、保温性が悪いと、凝固シェル先端がメニスカスに沿って延びて、所謂爪状凝固シェルを形成する。ここに、溶鋼中から浮上してきたアルミナ等の非金属介在物や、気泡が補足され、鋳片表層下にノロ噛み、ピンホールなどの欠陥ができてしまい、圧延時に線状疵やヘゲ疵の原因となる。特に、自動車外板材などに使用される表面品質が厳しい極低炭素鋼では鋳片表層下の気泡や介在物を低減するためにモールドパウダーの保温性が重要である。
【0004】
モールドパウダーの保温性を上げるためには、金属を添加し金属の酸化発熱反応を利用する方法が有効である。また、モールドパウダーの形態は、粉末状と顆粒状に大別できるが、発塵を抑制し作業環境を改善するために最近では顆粒状モールドパウダーが使用されることが多くなってきた。粉末状モールドパウダーと顆粒状モールドパウダーの溶鋼の保温性を比較すると、顆粒状モールドパウダーは保温性に劣ることから、鋼の品質向上のためには顆粒状モールドパウダーの方が金属を添加する必要性が強い。しかし、顆粒状モールドパウダーは造粒時にバインダーとして水を添加するため、金属との反応によって水素が発生する問題から、顆粒状パウダーには金属を添加しないのが一般的である。
【0005】
従来の金属を含むモールドパウダーとしては、例えば、特許文献1及び特許文献2には、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム及び硝酸ナトリウムよりなる群から選択された1種または2種以上の発熱材3〜30質量%並びに炭素、シリコン及びシリコン合金よりなる群から選択された1種または2種以上の還元材3〜30質量%を含有してなる発熱型モールドパウダーが開示されている。また、特許文献3には、アルカリ金属炭酸塩、炭酸水素塩及び硝酸塩よりなる群から選択された1種または2種以上の発熱材2〜30質量%並びに還元材としての炭素質原料0.5〜5質量%及びシリコンまたはシリコン合金またはそれら両者1〜20質量%を含有してなる発熱型モールドパウダーが開示されている。これらの発熱型モールドパウダーは、保温性を向上させて鋼の品質向上に効果を上げている。ここで、発熱型モールドパウダーに添加されている金属は、粒度が小さい方が酸化発熱反応が進行しやすく、発熱特性が良好であることから、−325メッシュ品(篩目開き45μm)のものが一般的に使用されている。また、特許文献4には、平均粒径3.5〜100μmの粉末金属Siと、10.0質量%以下のCa−Siを含むフラックス(モールドパウダー)が開示されている。しかしながら、顆粒状モールドパウダーの造粒時にバインダーとして水を添加すると、水と金属との反応によって水素が発生するという問題があり、顆粒状モールドパウダーには、金属を添加しないのが一般的であった。
【0006】
そこで、顆粒状モールドパウダーに金属を添加する方法として、例えば、特許文献5には、金属または合金からなる発熱剤を有する連続鋳造用モールドパウダーにおいて、発熱剤の表面を水に不溶性の被覆剤、もしくはこれらの被覆剤に粒径100μm以下の無機質の粒子を分散した被覆剤によって被覆したカプセルを、基材原料、シリカ原料、フラックス、火炎抑制材、炭素質材料とを混合して顆粒状としたことを特徴とする鋼の連続鋳造用発熱型顆粒状モールドパウダー(請求項1);発熱剤とともにカプセル中の金属または合金と反応するアルカリ金属炭酸塩、炭酸水素塩、硝酸塩の1種または2種以上からなる発熱剤の一部もしくは全部を、前記被覆剤で被覆したカプセルを含有することを特徴とする前記鋼の連続鋳造用発熱型顆粒状モールドパウダー(請求項2)が開示されている。
【0007】
また、特許文献6には、金属または合金からなる発熱剤を含有してなる鋼の連続鋳造用モールドパウダーにおいて、有機樹脂を有機溶剤に溶解したものをバインダーとして用い、発熱剤と基材原料、シリカ原料、フラックス原料及び/または炭素質原料等を混合、造粒して顆粒状としたことを特徴とする鋼の連続鋳造用発熱型顆粒状モールドパウダーが開示されている。
【0008】
更に、特許文献7には、炭酸塩組成物および/または金属発熱剤を配合した粉末原料に水を添加して造粒し、乾燥する連続鋳造用顆粒状モールドパウダーの製造方法において、粉末原料に水を添加してスラリーとし、スラリー温度を30℃以下に維持してから噴霧造粒乾燥して中空顆粒状モールドパウダーを製造することを特徴とする連続鋳造用顆粒状モールドパウダーの製造方法(請求項1)が開示されている。
【0009】
また、特許文献8には、内部造粒物と、該内部造粒物の外表面に形成された少なくとも1層の表層部から構成される多層構造モールドパウダーにおいて、表層部がpH=8未満のカーボンブラック、炭素含有化合物、炭酸塩及び金属からなる群から選択された1種以上を30重量%以上含有してなることを特徴とする多層構造モールドパウダーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平3−226341号公報
【特許文献2】特開平3−226342号公報
【特許文献3】特開平4−200962号公報
【特許文献4】特開2003−53497号公報
【特許文献5】特開平6−23502号公報
【特許文献6】特開平6−63713号公報
【特許文献7】特許第3215970号公報
【特許文献8】特開平11−320055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献5に記載されているようなガプセルの作製には多大なコストと時間を要し、好ましいものではない。また、特許文献6に記載されている鋼の連続鋳造用発熱型顆粒状モールドパウダーでは、有機溶媒の処理や茫漠対策が必要となり、この際に多大な費用が発生して経済的でない。更に、特許文献7に記載されている連続鋳造用顆粒状モールドパウダーの製造方法は、金属と水が反応して、ある程度酸化が進み、水素の発生を容認するものであるが、スラリー温度を30℃以下に冷却するために多大なエネルギーを必要とするため、経済的ではなく、また、冷却にドライアイスを使用するために地球温暖化対策としても好ましい方法ではない。また、特許文献8に記載されている多層構造モールドパウダーは、造粒方法の制約がある上、カーボンブラック等をコーティングする際に顆粒が壊れて微粉が増加する問題があり、また、カーボンブラック等をコーティングするため触ると汚れ易い問題点がある。また、表層部を構成する組成物に金属シリコンのような純金属を添加することができることも開示されているが、製造コスト等の面から実用化されていないのが現状である。
【0012】
従って、本発明の目的は、金属を含む顆粒状モールドパウダーの造粒時に、金属と水が反応して発熱しながら水素が発生するのを抑制しつつ、造粒することができるスプレー顆粒状発熱型モールドパウダーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、スプレ
ー顆粒状
発熱型モールドパウダー
の製造方法において、粒子径が45〜105μmの範囲内にある金属シリコン粉またはシリコン合金粉を0.1〜8質量%
、かつ粒径が45μm未満の金属粉を1.0質量%以下の量で含有
してなる原料配合物のスラリーをスプレー造粒法により造粒することを特徴とするスプレー顆粒状発熱型モールドパウダー
の製造方法に係る(以下、「第1発明」と記載する)。
【0015】
更に、本発明のスプレー顆粒状発熱型モールドパウダーは、セルロース類、デキストリン類及び澱粉類からなる群から選択される1種または2種以上を外掛けで0.3〜5質量%の範囲内で含有することを特徴とする。
【0016】
また、本発明は、 スプレ
ー顆粒状
発熱型モールドパウダー
の製造方法において、予めシリコーンオイル、流動パラフィン及びエチレングリコールからなる群から選択される1種または2種以上を金属に対して0.01〜5質量%の範囲内でコーティングした金属粉を0.1〜8質量%の量で含有
してなる原料配合物のスラリーをスプレー造粒法により造粒することを特徴とするスプレー顆粒状発熱型モールドパウダー
の製造方法に係る(以下、「第2発明」と記載する)。
【0017】
更に、本発明のスプレー顆粒状発熱型モールドパウダーは、セルロース類、デキストリン類及び澱粉類からなる群から選択される1種または2種以上を外掛けで0.3〜5質量%の範囲内で含有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明のスプレー顆粒状発熱型モールドパウダーは、金属シリコン粉またはシリコン合金粉のような金属粉を添加しても、スプレー造粒時に発熱を伴った水素の発生を抑制することができ、それによって、水素爆発の危険性がなくなり、また、スラリー温度の上昇を防止することができ、実機による鋼の連続鋳造に際して、設計した発熱量よりも発熱量が低下しないという効果を奏するものである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の第1発明に係るスプレー顆粒状発熱型モールドパウダーは、粒子径が45〜105μmの範囲内にある金属シリコン粉またはシリコン合金粉を0.1〜8質量%の量で含有するところに特徴を有する。
【0020】
本発明の第1発明に係るスプレー顆粒状発熱型モールドパウダーにおいて、水と金属シリコン粉、シリコン合金粉のような金属粉の反応による水素の発生量は、金属粉の表面積に比例すると考えられるので、金属粉の表面積を小さくするため使用する金属粉粒径を大きくすることによって抑制できると考えられる。金属粉末の粒子形状が粒径によらず相似形だと仮定すると、粒径が2倍になれば、同一重量物の総表面積は1/2となり、水素の発生量も理論的に1/2に抑制できる。そこで、粉末状発熱型モールドパウダーに通常使用している金属粉よりも粒径が粗い金属粉を顆粒状発熱型モールドパウダーのスプレー造粒法に使用したところ、金属粉の粒子の直径を2倍にすると水素発生量が約1/4に低減したことから表面積の低下以上の効果が認められた。これは水と金属粉の反応による水素の発生は温度が高いほど進行が促進されるため、一旦、水と金属粉の反応が始まると温度が上昇し、連鎖的に反応が進行しやすくなって水素の発生が助長されることによるものと考えられる。よって水素の発生抑制のためには初期反応の抑制が重要であり、そのためにも大きな粒径の金属粉を使うのが効果的である。
【0021】
ここで、シリコン合金粉としては、カルシウム−シリコン合金(Ca−Si)粉が好ましい。なお、金属アルミニウム粉は水との反応によって激しく水素を発生し、粒度を粗くしても水素の発生を抑制する効果が小さいため好ましくない。
【0022】
金属シリコン粉またはシリコン合金粉のような金属粉の粒径は45〜105μmの範囲内にあることが好ましく、より好ましくは45〜75μmの範囲内である。ここで、粒径が105μmを超える金属粉を添加すると、表面に酸化物層が形成され中心部まで酸化発熱が起こらず、金属粉の添加量に見合う発熱量を有するスプレー顆粒状発熱型モールドパウダーが得られないため好ましくない。更に、スプレー顆粒状発熱型モールドパウダーを構成する他のモールドパウダー原料よりも金属粉の粒径が著しく大きいとスプレー造粒時に偏析を起こし易い問題もある。スラリーを作成するとき、比重の大きい金属粉の粒径を大きくすると、スラリー中で金属粉だけが選択的に沈降し、成分偏析を起こす問題もある。
【0023】
スプレー顆粒状発熱型モールドパウダーにおいて、水素の発生抑制には金属粉の添加量を低減することも有効であるが、金属粉の添加量が少ないと本来の金属粉の添加の目的である実機鋳造時のスプレー顆粒状発熱型モールドパウダーの発熱量も少なくなるため好ましくない。従って、金属粉の添加量は、0.1〜8質量%が好ましく、より好ましくは0.2〜4質量%であり、更に好ましくは0.5〜3質量%である。金属粉の添加量が8質量%を超えると、水素の発生量が多くなることがあるため好ましくない。また、金属粉の添加量が0.1質量%未満であると、少なすぎると金属の酸化によるスプレー顆粒状発熱型モールドパウダーの発熱量が小さくなり、スプレー顆粒状発熱型モールドパウダー本来の保温性を向上させる目的に達しないため好ましくない。
【0024】
なお、粒径が45μm未満の小さい金属粉を添加すると水素の発生を助長させるため、粒径が45μm未満の金属粉は、1.0質量%以下、好ましくは0.8質量%以下の量で存在することが好ましい。
【0025】
更に、本発明の第1発明に係るスプレー顆粒状発熱型モールドパウダーには、澱粉類、デキストリン類及びセルロース類からなる群から選択された1種または2種以上の成分を配合することができる。これら成分を配合することにより、水と金属粉との反応による水素の発生量を低減させることができる。これら中でもカルボキシルメチルセルロースが最も効果があり、デキストリン、澱粉も効果が認められた。なお、これらの成分は、スプレー造粒時のバインダーとして水の代わりに、水溶液として添加することが好ましい。水溶液としては、濃度0.2〜8質量%、好ましくは0.5〜5質量%程度のものが使用できる。
【0026】
澱粉類、デキストリン類及びセルロース類からなる群から選択された1種または2種以上の成分の配合量は、上記成分並びに後述の基材の合計量に対して外掛けで0.3〜5質量%、好ましくは1.0〜3.0質量%の範囲内である。なお、これら成分の配合量が0.3質量%未満であると、配合効果が発現しないために好ましくなく、また、5質量%を超えると、スプレー顆粒状発熱型モールドパウダーを実機にて使用中に火炎の発生量が多くなりすぎるために好ましくない。
【0027】
本発明の第1発明に係るスプレー顆粒状発熱型モールドパウダーには、酸化材を配合することができる。酸化材としては、例えば、粉末状発熱型モールドパウダーに通常使用されている炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マンガン、酸化マンガン、硝酸ナトリウム等を使用できる。ただし、粒度が粗い金属粉を使用すると、反応終了までの発熱量は変化ないが、表面積が小さいだけ発熱反応速度が遅くなる。そのため、金属との反応性に富む酸化材を活用するか、酸化剤の添加量を多くする必要がある。酸化材の配合量は、2〜18質量%、好ましくは4〜15質量%の範囲内である。
【0028】
本発明の第1発明に係るスプレー顆粒状発熱型モールドパウダーは、上記成分の他に、CaOとSiO
2からなる基材原料、シリカ原料、フラックス原料、カーボン原料、その他の成分から構成することができる:
基材原料としては、例えば、合成珪酸カルシウム、セメント類、ウォラストナイト、リンスラグ、ダイカルシウムシリケート、炭酸カルシウム等を使用することができる。ここで、基材原料の配合割合は、40〜80質量%、好ましくは50〜70質量%の範囲内である。なお、基材原料の配合割合が40質量%未満の場合には、CaO成分が少なくなりすぎるために好ましくなく、また、80質量%を超えると、CaOとSiO
2以外の成分が少なくなりすぎるために好ましくない。
次に、シリカ原料としては、例えば珪石、ガラス、珪藻土等を使用することができる。ここで、シリカ原料の配合割合は0〜25質量%、好ましくは5〜15質量%の範囲内である。なお、シリカ原料の配合割合が25質量%を超えると、SiO
2成分が多くなりすぎるために好ましくない。
また、フラックス原料としては、例えばフッ化ナトリウム、蛍石、等を使用することができる。ここで、フラックス原料の配合割合は5〜45質量%、好ましくは6〜40質量%の範囲内である。なお、フラックス原料の配合割合が5質量%未満では、モールドパウダーの融点、凝固温度が高くなりすぎるために好ましくなく、また、45質量%を超えるフラックス原料を添加する必要はない。
更に、カーボン原料としては、例えばカーボンブラック、コークス、黒鉛、膨張性黒鉛等を使用することができる。ここで、カーボン原料の配合割合は0〜20質量%、好ましくは1〜10質量%の範囲内である。なお、カーボン原料の配合割合が20質量%を超えると、モールドパウダーの溶融が遅くなりすぎるために好ましくない。
また、その他の成分としては、例えばマグネシア、アルミナ等を使用することができる。ここで、その他の成分の配合割合は、0〜20質量%、好ましくは0〜10質量%の範囲内である。なお、20質量%を超えるその他の成分を添加する必要はない。
【0029】
本発明の第1発明に係るスプレー顆粒状発熱型モールドパウダーは、スプレー造粒法により製造することができる。スプレー造粒法は、原料粉末にバインダー水溶液を添加し、スラリー濃度50〜70質量%、好ましくは55〜65質量%とし、400〜700℃の熱風を吹き込んだスプレードライヤー内にスプレーノズルからスラリーを噴霧して造粒する方法である。なお、スラリーを製造する際に、金属粉と水の反応性を抑制するために、激しく攪拌しないほうが良い。例えばスラリーを高速ミキサーで攪拌すると、金属の粒径を大きくしても活性な金属表面が常に露出されることと、攪拌による運動エネルギーによってスラリー温度が上昇するため、水素の発生が助長される。また、ボールミルを使用しても、活性な金属表面が露出されやすいので、水素の発生が助長され、ボールミル等の使用は好ましくない。
【0030】
次に、本発明の第2発明に係るスプレー顆粒状発熱型モールドパウダーは、予めシリコーンオイル、流動パラフィン及びエチレングリコールからなる群から選択される1種または2種以上を金属に対して0.1〜5質量%の範囲内でコーティングした金属粉を0.1〜8質量%の量で含有することを特徴とする。
【0031】
本発明の第2発明に係るスプレー顆粒状発熱型モールドパウダーに使用する予めシリコーンオイル、流動パラフィン及び/またはエチレングリコールで被覆された金属粉に使用される金属粉としては、上述の第1発明と同様の金属シリコン粉またはシリコン合金粉を例示することができる。ここで、金属粉の粒径は、105μm以下、好ましくは5〜75μmの範囲内であることが好ましい。
【0032】
金属シリコン粉、シリコン合金粉のような金属粉へのシリコーンオイル、流動パラフィン及び/またはエチレングリコールの被覆は、慣用のコンクリートミキサーのような低速回転するミキサーに金属粉を装填し、混合しながら噴霧ノズルによってシリコーンオイル、流動パラフィン及び/またはエチレングリコールを噴霧するなどの方法により行うことができ、混合後は乾燥等の特別な処置をすることなく、金属粉表面にシリコーンオイル、流動パラフィン及び/またはエチレングリコールがコーティングしている状態で使用することができる。
【0033】
ここで、シリコーンオイル、流動パラフィン及び/またはエチレングリコールの使用量は、金属粉に対して0.01〜5質量%、好ましくは0.1〜1.0質量%の範囲内である。シリコーンオイル、流動パラフィン及び/またはエチレングリコールの使用量が0.01質量%未満であると、シリコーンオイル、流動パラフィン及び/またはエチレングリコールによる金属粉のコーティング効果が発現しないために好ましくなく、また、5質量%を超えると、コーティング量の増加に見合う水素発生抑制効果が得られないために好ましくない。
【0034】
上述のようにして得られたコーティング済み金属粉の添加量は、0.1〜8質量%、好ましくは0.2〜4質量%の範囲内である。コーティング済み金属粉の添加量が8質量%を超えると、水素の発生量が多くなることがあり、また、0.1質量%未満であると、金属粉の酸化によるスプレー顆粒状発熱型モールドパウダーの発熱量が小さくなり、スプレー顆粒状発熱型モールドパウダー本来の保温性を向上させる目的に達しないため好ましくない。
【0035】
予め金属粉とシリコーンオイル、流動パラフィン及び/またはエチレングリコールを混合して金属粉表面をコーティングすることにより、水との反応を十分に抑制することができることが判明し、例えば、流動パラフィンを金属シリコン粉に0.4質量%添加して混合・コーティングすることによって水素の発生量が1/3に低減できることを確認した。これは、金属シリコン粉の表面には薄い酸化皮膜が形成されているが、シリコーンオイル、流動パラフィン及び/またはエチレングリコールをコーティングすることで、この酸化皮膜に強固に固着し、スラリー作成時の混合でも酸化皮膜が剥がれ難くなり、シリコーンオイル、流動パラフィン及び/またはエチレングリコールが水を弾く特性によって水と金属粉表面の直接接触を低減できるためだと考えられる。
【0036】
なお、本発明の第2発明に係るスプレー顆粒状発熱型モールドパウダーを構成する他の原料並びに製造方法については、上記第1発明に係るスプレー顆粒状発熱型モールドパウダーと同様である。
【実施例】
【0037】
以下、実施例により本発明のスプレー顆粒状発熱型モールドパウダーを更に説明する。
実施例1(第1発明)
以下の表1に記載する配合割合の原料配合物を、バインダーとして水、2質量%カルボキシメチルセルロース(CMC)水溶液、または2質量%デキストリン水溶液を添加することによりスラリー濃度60質量%のスプレー造粒用のスラリーを形成し、得られたスラリーについて水素発生量を測定した。水素発生量は密閉容器内でスラリー1kgを作製し、1時間放置後の水素発生量(ml)を測定したものであり、水素発生量が概ね20ml以下であれば、水素の発生を効果的に抑制できたと判断した。
また、上記スラリーを用いて実機にてスプレー造粒を行った際のスラリー温度を測定した。なお、スプレー造粒は、スプレードライヤー内に温度550℃の熱風を吹き込みながら、スプレーノズルからスラリーを噴霧することによって行われた。水素の発生は、スラリー温度が高い程促進されるので、スラリー温度は低い方が好ましく、35℃以下であれば、水素の発生を効果的に抑制できたと判断した。
造粒の可否は、問題なく造粒できたものを○、水素発生量が多く、水素爆発の危険性が高まったり、スラリー移送配管内での水素発生による問題からスプレー造粒を行うことができなかったものを×とした。
パウダーの発熱量は、同一配合品のスプレー造粒前後の発熱量を示差熱法で比較し、スプレー造粒前の発熱量に対するパウダーの発熱量の割合で示したものである。
【0038】
【表1】
【0039】
実施例2(第2発明)
以下の表2に記載する配合割合の原料配合物について実施例1と同様に評価した。
なお、コーティング済み金属シリコン粉は、金属シリコン粉に対して0.2質量%の流動パラフィンをコンクリートミキサーにて混合することにより得られたものである。
【0040】
【表2】