【実施例】
【0012】
図1および
図2に示すように、本発明に係る圧縮機用電動機の回転子10は、圧縮機用の電動機の回転子であり、軸孔30を有する円柱状の回転子積層鋼板12と、回転子積層鋼板12の内部に設けられ、回転軸心Zを中心とする円周方向にN極とS極とが交互に6個の極を構成するように配置された永久磁石14とを備える(実施例の回転子10は、6極回転子である)。
【0013】
また、回転子10は、回転子積層鋼板12の両端面に同軸上に設けられ、永久磁石14の軸方向の移動を制限するための円板状の回転子端板16,18と、回転子端板16、18の外面に設けられる円弧板状のバランスウェイト20,22とをさらに備える。バランスウェイト20,22は、図示しない圧縮機構の偏芯回転部分に作用する遠心力を打ち消し、圧縮機全体のバランスを確保するためのものであり、回転軸心Zの周りに互いに位相が180°異なる位置に設けられる。
【0014】
回転子積層鋼板12と回転子端板16,18には、円周方向に等しい角度の間隔(円周方向120°間隔)で配置した3個の軸方向貫通穴24が設けられる。ここで、軸方向貫通穴24は、永久磁石14を回避した位置に設けられる。また、軸方向貫通穴24の数は3個以上あればよく、
図2に示すように、5個配置してもよい。
【0015】
回転子積層鋼板12と回転子端板16,18とは、各軸方向貫通穴24に通される3本のリベット26a,26b,26cで固定される。
【0016】
一方側のバランスウェイト20は、複数枚の薄い金属板を積層した積層金属板から成り、3本のリベットのうち2本のリベット26a,26bにより一方側の回転子端板16に固定される。積層金属板から成るバランスウェイト20は、カシメにより一体化したものでもよいが、2本のリベット26a,26bにより位置決めされて固定されるので、一体化したものでなくてもよい。
【0017】
図3、
図4に示すように、他方側のバランスウェイト22は、複数枚の薄い金属板22a、22bを積層した積層金属板から成り、端側2箇所でカシメられて一体化され、このカシメにより端側2箇所に、凸部28が形成されている。
図5に示すように、カシメにより形成される薄い金属板22aの凸部28aの外径D1と、凸部28aが貫入されて形成される薄い金属板22bの凹部28bの内径D2との寸法関係は、D1=D2となり、凸部28aが凹部28bに圧入されて、複数枚の薄い金属板22a,22bが一体化される。夫々のバランスウェイト20,22の薄い金属板22a,22bの積層枚数は、後述の圧縮機構40のアンバランス量に合わせて調整する。また、バランスウェイト20,22の材質は、後述の電動機42の性能特性に影響しないように、非磁性体とするのがよい。
【0018】
また、これら凸部28に対向する他方側の回転子端板18の2箇所には、凹部32が形成してある。ここで、凹部32は回転子端板18を貫通する貫通穴でもよいし、プレス成形等により形成した凹部でもよい。薄い金属板22bの凸部28の外径D3と、回転子端板18の凹部32の内径D4との寸法関係を、D3<D4として、凸部28を凹部32に嵌合し易くするとよい。
【0019】
他方側のバランスウェイト22は、残りの1本のリベット26cにより他方側の回転子端板18に固定されるとともに、凸部28が凹部32に嵌合することにより他方側の回転子端板18に対して位置決めされる。
【0020】
このように、他方側のバランスウェイト22に、カシメにより凸部28を形成し、回転子端板18に凹部32を設け、凸部28を凹部32に嵌合することにより他方側のバランスウェイト22を回転子端板18に対して位置決めすることができ、バランスウェイト22は、リベット26cを中心に回転することがない。したがって、バランスウェイト22を回転子10に1本のリベット26cで固定する場合に、位置決め用の治具等を使用することなしに、バランスウェイト22を回転子10に対して安定して位置決めすることができる。さらに、この凸部28と凹部32の係合による位置決めによって、回転子の回転駆動中にバランスウェイト22がリベット26c回りに回転することを防止することができる。
【0021】
次に、本発明に係る圧縮機用電動機の回転子10を2シリンダロータリ圧縮機に適用する場合について
図6を参照して説明する。
【0022】
図6に示すように、2シリンダロータリ圧縮機100は、圧縮流体を生成する圧縮機構40と、圧縮機構40を駆動する電動機42(電動機42は、6極電動機である)とを備える。電動機42は、密閉ケーシング44内に固定された固定子46と、本発明の回転子10とからなり、回転子10の軸孔30には圧縮機構40に向けて下側に延出するシャフト軸48が固定してある。シャフト軸48の下側には、圧縮機構40の偏芯クランク部50a,50bが設けてある。
【0023】
圧縮機構40は、上下に配置された2つのシリンダ52a,52bを有しており、各シリンダ52a,52bの内部には上述した偏芯クランク部50a,50bがそれぞれ配置される。この偏芯クランク部50a,50bにはリング状のピストン54a,54bがそれぞれ嵌合してある。
【0024】
電動機42の駆動により回転子10のシャフト軸48が回転すると、偏芯クランク部50a,50bには遠心力Fc1,Fc2が、ピストン54a,54bには遠心力Fp1,Fp2がそれぞれ作用するようになる。
【0025】
一方、電動機42の回転子10の上下に固定されたバランスウェイト20、バランスウェイト22には、遠心力Fb1,Fb2がそれぞれ作用するようになる。
【0026】
ここで、圧縮機全体としてバランスを確保するためには、下記の(1),(2)式が成り立つように、2つのバランスウェイト20,22の位置および質量を予め設定すればよい。
【0027】
(Fc1+Fp1)+Fb2≒(Fc2+Fp2)+Fb1 (1)式
(Fc1+Fp1+Fc2+Fp2)×Lc≒(Fb1+Fb2)×Lb (2)式
ここで、Lcは、遠心力Fc1とFc2の作用点間の軸方向の距離である。
遠心力Fp1とFp2の作用点間の軸方向の距離もLcである。
Lbは、遠心力Fb1とFb2の作用点間の軸方向の距離である。
【0028】
以上説明したように、本発明によれば、圧縮機用電動機42の回転子10において、回転子積層鋼板12と、前記回転子積層鋼板12の内部に設けられ、回転軸心を中心とする円周方向に複数の磁極を構成するように配置された永久磁石14と、前記回転子積層鋼板12の両端面に設けられ、前記永久磁石14の軸方向の移動を制限するための回転子端板16,18と、前記回転子端板16,18の外面にそれぞれ固定される積層金属板から成るバランスウェイト20,22とを有し、前記回転子積層鋼板12と前記回転子端板16,18には円周等配に配置した少なくとも3個の軸方向貫通穴24が設けられ、前記回転子積層鋼板12と前記回転子端板16,18とは前記軸方向貫通穴24に通される3本のリベット26a,26b,26cで固定され、一方側の積層金属板から成るバランスウェイト20は、前記3本のリベット26a,26b,26cのうち2本のリベット26a,26bにより一方側の回転子端板16に固定され、他方側の薄い金属板22a,22bから成るバランスウェイト22は、カシメにより一体化されて凸部28が形成され、残りの1本のリベット26cにより他方側の回転子端板18に固定されるとともに、前記凸部28が他方側の回転子端板18に設けた凹部32または貫通孔に嵌合して他方側の回転子端板18に対して位置決めされる。
【0029】
そのため、バランスウェイト22を回転子10に1本のリベット26cで固定する場合に、位置決め用の治具等を使用することなしに、バランスウェイト22を回転子10に対して安定して位置決めすることができるという効果を奏する。さらに、バランスウェイト22のカシメにより形成された凸部28と回転子端板18に設けた凹部32または貫通孔との嵌合による位置決めによって、回転子10の回転駆動中にバランスウェイト22の個々の薄い金属板22a,22bが、リベット26c回りに個々に回転するのを防止することができる。