(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
光源からの光を各画素について変調して感光材料上に結像する露光装置であって、光学素子が二次元状に配列された配列素子と、当該配列素子を保持するホルダと、前記配列素子を介した光を感光材料上に結像する投影光学系と、を備えた露光装置について、前記ホルダを、前記投影光学系に対する位置が固定されている被固定部に固定する固定方法において、
前記ホルダを前記被固定部に吸着で保持する第1工程と、
前記第1工程で保持されている前記ホルダを前記被固定部に固定具で固定する第2工程と、
を有することを特徴とする固定方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態の露光装置を示す概略構成図である。
露光装置1は、空間光変調素子で変調した光を投影光学系に通し、この光による像を感光材料(レジスト)上に結像させて露光するものである。このような露光装置は、空間光変調素子で画像を直接形成するため、マスク(ないしはレチクル)が不要であり、DI(ダイレクト・イメージ:直描)露光装置とよばれる。
露光装置1は、露光ヘッドユニット10と、露光対象となる基板(ワーク)Wを搬送する搬送系20と、露光ヘッドユニット10及び搬送系20を設置する設置台30とを備える。ここで、ワークWは、例えばレジストを塗布した樹脂製のプリント基板である。
【0013】
露光ヘッドユニット10は、複数の露光ヘッド(光学エンジン)11と、ここでは図示を省略した光源とを備える。露光ヘッド11は、上述した空間光変調素子を内蔵しており、光源から光を供給され、予め設定されたパターンで光を照射するものである。これら複数の露光ヘッド11は、共通のベースプレート12によって支持されている。このベースプレート12は、設置台30を跨ぐように設けられた門状のガントリー31に固定されており、ガントリー31の各端部(脚部)は、それぞれ設置台30の側面に固定されている。
【0014】
ここで、ベースプレート12は、ガントリー31の2つの脚部を繋ぐ水平の梁部の上に直接搭載されている。ガントリー31の梁部には、露光ヘッド11が貫通する貫通孔(不図示)が形成されており、ベースプレート12は、その貫通孔を跨いで、両端部(ここではX方向の端部)をガントリー31の梁部に固定した構造となっている。すなわち、ベースプレート12は、ガントリー31に両持ち梁状に固定されている。
【0015】
なお、ベースプレート12のガントリー31に対する固定方法は、剛性を確保できる手法であれば適宜適用可能である。例えば、露光ヘッドユニット10が外枠フレームを備え、当該外枠フレームとガントリー31とを固定する構成である場合には、ベースプレート12を露光ヘッドユニット10の外枠フレームを介してガントリー31に固定することもできる。この場合、ベースプレート12は、外枠フレームに両持ち梁状に固定されることになる。
【0016】
また、搬送系20は、真空吸着等の方法によりワークWを吸着保持する平板状のステージ21と、ステージ21の移動方向に沿って延びる2本のガイド22と、ステージ21の移動機構を一例として構成する電磁石23とを備える。
ここでは、上記移動機構として、リニアモータステージを採用する例を説明する。この場合、リニアモータステージは、碁盤目状に強磁性体の凸極が設けられた平面状のプラテンの上に移動体(ステージ)をエアーにより浮上させ、移動体に磁力を印加して、移動体とプラテンの凸極との間の磁力を変化させることにより移動体(ステージ)を移動させる機構である。
【0017】
ステージ21は、その長手方向がステージ移動方向に向くように配置されると共に、ガイド22によって真直度を補償した状態で往復移動可能に支持されている。
本明細書では、ステージ21の移動方向をX方向とし、X方向に垂直な水平方向をY方向、鉛直方向をZ方向とする。ワークWは方形であり、一辺の方向がX方向に向き、他方の辺がY方向を向いた姿勢でステージ21上に保持されている。なお、以下の説明では、X方向をワークWの長さ方向、Y方向をワークWの幅方向ということもある。
ステージ21の移動経路は、露光ヘッドユニット10の真下を通るように設計されており、搬送系20は、ワークWを各露光ヘッド11による光の照射位置に搬送し、且つその照射位置を通過させるように構成されている。この通過の過程で、各露光ヘッド11によって形成した像のパターンがワークWに露光される。
【0018】
次に、露光ヘッド11の光学的構成について説明する。
図2は、露光ヘッド11の光学的な構成を概念的に示す図である。この
図2に示すように、露光ヘッド11は、入射光学系14と、空間光変調素子15と、第一の投影レンズ16と、マイクロレンズアレイ(MLA)17と、第二の投影レンズ18とを備える。
入射光学系14は、光源13の出力光を空間光変量素子15に入射させるものであり、光ファイバ14aと、コリメートレンズ14bと、ミラー14cとを備える。ここで、光源13は、405nmや365nmといった波長を出射するランプやレーザダイオードであり、光ファイバ14aとしては、例えば石英のファイバを用いる。
【0019】
光源13の出力光は、光ファイバ14aで導かれてコリメートレンズ14bに入射され、コリメートレンズ14bは、光ファイバ14aから出射して広がる光を平行光に変換して出射する。コリメートレンズ14bを通過した光は、ミラー14cによって反射され、角度θで空間光変調素子15に入射する。
空間光変調素子15としては、デジタルミラーデバイス(DMD)を使用する。DMDは、例えば13.68μm角程度の微小なミラー(画素ミラー)を二次元状に配列した配列素子である。配列数は、例えば1024×768個であり、空間光変調素子(DMD)15の全体の大きさは、例えば14mm×10.5mm程度である。
【0020】
DMD15の各画素ミラーの角度は、制御部(不図示)によって制御される。制御部は、所望のパターンを形成する反射光のみを第一の投影レンズ16に入射するように、DMD15の各画素ミラーの角度を制御するための制御信号を出力する。
すなわち、DMD15の各画素ミラーの角度は、形成すべき画像のパターンに応じて選択的に制御される。具体的には、形成すべきパターンに応じ、光をワークWに到達させるべき位置の画素ミラーは、当該画素ミラーによって反射した光が第一の投影レンズ16に入射する角度(第一の角度)とされ、それ以外の画素ミラーは、当該画素ミラーによって反射した光が第一の投影レンズ16に入射しない角度(第二の角度)に制御される。
このように、第一の角度の画素ミラーにより反射した光のみがワークWの表面に到達し、第二の角度の画素ミラーに反射した光はワークWに到達しないようになっている。
第一の投影レンズ16は、DMD15からの像を例えば2倍から5倍に拡大してMLA17上に投影する拡大投影レンズである。
【0021】
また、MLA17は、
図3Aに断面図、
図3Bに平面図を示すように、微小なレンズ(以下、レンズ素子と呼ぶ)17aを二次元状に多数配列した光学部品(配列素子)である。各レンズ素子17aは、DMD15の各画素ミラーに1対1で対応している。すなわち、各レンズ素子17aが一つの画素ミラーの像をワークWの表面に結像するものである。
【0022】
さらに、第二の投影レンズ18は、MLA17によりスポット状に集光した光を、例えば1倍(等倍)から1/2倍程度に縮小してワークW上に投影する等倍投影レンズまたは縮小投影レンズである。
このように、DI露光装置1では、MLA17の前段(光入射側)と後段(光出射側)とに、それぞれ第一の投影レンズ16と第二の投影レンズ18とを配置している。これら第一の投影レンズ16、MLA17及び第二の投影レンズ18により、DMD15に対する投影光学系を構成している。また、第二の投影レンズ18は、MLA17に対する投影光学系を構成している。
【0023】
図4は、露光ヘッド11による画像形成エリアについて示した斜視概略図である。
この
図4において、各露光ヘッド11による画像形成エリアは、ワークWの表面上の四角い枠(符号E)で示している。この枠で示された画像形成エリアE内に、一つの露光ヘッド11による像が形成される。
図4に示すように、露光ヘッド11はX方向において2列設けられており、ワークWの移動方向に対して後ろ側の群の各露光ヘッド11は、前側の群の各露光ヘッド11のY方向の間の位置に配置されている。
このように各露光ヘッド11を配置することにより、ワークWをX方向に移動しながら露光する際、前側の群の各露光ヘッド11による画像形成エリアEで露光できない部分を、後ろ側の各露光ヘッド11による画像形成エリアEにより露光することができる。そして、これら露光ヘッド11全体により所望の一つのパターンが形成されるようにする。
【0024】
すなわち、不図示の制御部は、形成すべき画像(露光パターン)のデジタルデータ(元データ)を記憶しており、搬送系20に制御信号を送り、ワークWが載置されたステージ21を所定速度で移動させる。また、同時に制御部は、DMD15に制御信号を送り、ワークW上に元データに基づいた露光パターンが形成されるように所定のタイミング及びシーケンスで各画素ミラーの角度を制御する。
この結果、レジストを塗布したワークWが画像形成エリアEを通過し、ワークWに、元データによる露光パターンが形成される。
【0025】
ここで、投影光学系の各構成要素をベースプレート12に対して固定する構成について説明する。
図5は、ベースプレート12に対する投影光学系の固定方法を概念的に示す図である。なお、この
図5では、ガントリー31の図示は省略している。
ベースプレート12には、DMD15により反射された光が通過する貫通孔12aが形成されている。
【0026】
そして、ベースプレート12の上面には、貫通孔12aの上方にMLA17が配置されるように、当該MLA17を保持したマイクロレンズアレイホルダ(MLAホルダ)17bを固定する。MLAホルダ17bは、ねじ17cによってベースプレート12にねじ止めされている。
さらに、ベースプレート12の上面には、MLA17の上方に第一の投影レンズ16が配置されるように、当該第一の投影レンズ16を保持する第一の投影レンズホルダ16aを固定する。ここで、第一の投影レンズ16は、例えば、ねじ止めにより第一の投影レンズホルダ16aに保持される。また、第一の投影レンズホルダ16aは、ねじ16bによってベースプレート12にねじ止めされている。
また、第一の投影レンズ16の上部には入射光学系14が、例えば、ねじ止めにより固定され、その入射光学系14に、DMD15を保持したDMDホルダ15aが固定されている。
【0027】
一方、ベースプレート12の下面には、貫通孔12aの下方に第二の投影レンズ18が配置されるように、当該第二の投影レンズ18を保持する第二の投影レンズホルダ18aを固定する。ここで、第二の投影レンズ18は、例えば、ねじ止めにより第二の投影レンズホルダ18aに保持される。また、第二の投影レンズホルダ18aは、ねじ18bによってベースプレート12にねじ止めされている。
【0028】
このように、露光ヘッド11を構成する各要素はベースプレート12に対して直接、あるいは間接に固定されているが、入射光学系14、第一の投影レンズ16、および第二の投影レンズ18については、DMD15(およびDMDホルダ15a)やMLA17(およびMLAホルダ17b)に較べると高精度な位置合わせが求められないので、単にねじとねじ穴とを合わせたらねじ止めによって固定され得る。これに対し、MLA17(およびMLAホルダ17b)は、ワークWの移動方向を基準とした特定の角度に合わせる高精度な位置合わせが必要とされ、DMD15(およびDMDホルダ15a)は、MLA17の位置と角度に合わせる高精度な位置合わせが必要とされる。そして、そのような高精度な位置合わせの後で、位置合わせの精度を乱さずに固定することが求められる。
【0029】
以下、本実施形態におけるDMD15(およびDMDホルダ15a)とMLA17(およびMLAホルダ17b)の具体的な固定方法について詳細に説明する。
図6は、DMDホルダとMLAホルダの固定位置を示す図である。
この
図6には、
図5で概念的に示したDMDホルダとMLAホルダの固定位置が具体的に示されている。
MLAホルダ17bは、第一の投影レンズホルダ16aにほぼ覆われた状態でベースプレート12に固定されており、後で詳述する調整用のアームが第一の投影レンズホルダ16aから外に突き出している。
上述したように、第一の投影レンズホルダ16aはベースプレート12にねじ止めされ、その第一の投影レンズホルダ16aの上部には第一の投影レンズ16がねじ止めされている。その第一の投影レンズ16の上部に入射光学系14がねじ止めされ、その入射光学系14の上部にDMDホルダ15aが固定される。
【0030】
図7は、DMDホルダの詳細構造の一例を示す断面図であり、
図8は、DMDホルダの詳細構造の一例を示す斜視図である。
図7において、DMDホルダ15aは、三つの押さえ金具151,152,153とベース板158を備えている。半導体チップであるDMD15は基板15bに搭載されており、三つの押さえ金具151,152,153は、DMD15を基板15bごと挟み込んで互いにねじ止めされることで一体化している。このように一体化した押さえ金具151,152,153は、チルト調整用のシム(ステンレスの薄板)155を間に挟んでベース板158にねじ156で固定されている。シム155は、DMDホルダ15aが固定される入射光学系14の上面に対してDMD15の反射面が平行となるように適宜選択された枚数だけ挟まれている。このようなシム155によるチルト調整によって、DMD15から第一の投影レンズ16へと向かう光の方向は、第一の投影レンズ16の光軸に平行な方向(即ち
図1に示すZ軸の方向)となる。
【0031】
DMDホルダ15aはこのような構造によりDMD15と一体化してDMD15を保持している。DMD15と一体化したDMDホルダ15aは、DMDホルダ15aに対する被固定部である入射光学系14の上部に固定される。この入射光学系14の上部には、DMDホルダ15aを真空吸着するための孔141と吸着用の継ぎ手142が設けられている。孔141の一端は、DMDホルダ15aに対向した上面に沿って溝状に延びており、このように溝状に延びた孔141を介した真空吸着によってDMDホルダ15aは入射光学系14の上部に強く保持される。なお、充分な保持力が得られる限り、孔141の端は溝状である必要はなく、例えば丸孔などであってもよい。
【0032】
DMDホルダ15aは、高精度な位置調整の後、真空吸着によって被固定部である入射光学系14の上部に一時的に保持される。真空吸着に代表される吸着保持は、精密に調整されたDMDホルダ15aの位置を乱すことなくDMDホルダ15aを入射光学系14の上部(被固定部)に保持することができる。このように保持されたDMDホルダ15aはねじ15cによって入射光学系14の上部に強固に固定され、その後、真空吸着は解除されてよい。ねじ15cによる固定作業中は真空吸着によってDMDホルダ15aが保持されているので、固定作業に伴うDMDホルダ15aの位置ずれは抑制される。このような固定方法により、DMDホルダ15a(およびDMD15)は被固定部に精密かつ強固に固定されることとなる。なお、ここの例では吸着用の継ぎ手142および孔141を被固定部側に設けているが、継ぎ手142および孔141をDMDホルダ15a側に設ける態様であっても吸着の作用が同様に得られることは当然である。
【0033】
DMDホルダ15aの位置調整としては、第一の投影レンズ16の光軸に対して垂直な面(即ち
図1に示すZ軸に垂直なXY面)内における、縦横位置および角度の調整が行われる。この位置調整は精密な調整であるため、調整用の治具が用いられる。
図9は、DMDホルダの調整用治具の一例を示す図であり、
図10は、調整用治具のアームの一例を示す図である。
調整用治具40は、DMDホルダ15aの位置調整に際して一時的に取り付けられるものであり、位置調整後にDMDホルダ15aが固定されると取り外される。
【0034】
図9および
図10において、調整用治具40は、三本のアーム41,42,43を備えており、第一と第二のアーム41,42はアームの長さ方向(XY面内のX方向)に進退し、第三のアーム43はXY面内のY方向に進退する。第一と第二のアーム41,42の同方向への進退によってDMDホルダ15aはX方向に移動し、第三のアーム43の進退によってDMDホルダ15aはY方向に移動する。また、第一と第二のアーム41,42が互いに逆方向へ進退することでDMDホルダ15aはXY面内で回転する。各アーム41,42,43は、作業者の操作に従って高精度に進退するので、作業者はDMDホルダ15aを所望の位置および角度に高精度に位置合わせすることができる。この所望の位置および角度はMLA17の位置および角度を基準とする。
【0035】
次にMLA17(およびMLAホルダ17b)の具体的な固定方法について説明する。
図11は、MLAホルダの詳細な構造の一例を示す断面図であり、
図12は、MLAホルダの詳細な構造の一例を示す斜視図である。
MLAホルダ17bは、上部ホルダ171と下部ホルダ172とを備えており、上部ホルダ171は下部ホルダ172に対して精密に回転可能となっている。MLA17は、接着剤により上部ホルダ171に接着されることで上部ホルダ171と一体化している。また、上部ホルダ171には、角度調整用のアーム177が設けられている。
【0036】
下部ホルダ172はチルト調整用のシム173を間に挟んでベースプレート12にねじ174で固定されている。シム173は、MLA17の光軸の方向が第一の投影レンズ16の光軸や第二の投影レンズ18の光軸に平行な方向(即ち
図1に示すZ軸の方向)となるように適宜選択された枚数だけ挟まれている。このようにチルト調整されてベースプレート12に固定された下部ホルダ172は、上部ホルダ171が固定される被固定部となっている。下部ホルダ172には、上部ホルダ171を真空吸着するための孔175と吸着用の継ぎ手176が設けられている。孔175の一端は、上部ホルダ171に対向した上面に沿って溝状に延びており、このように溝状に延びた孔175を介した真空吸着によって上部ホルダ171は下部ホルダ172に強く保持される。なお、この孔175も、充分な保持力が得られる限り、端が溝状ではなくて丸孔などであってもよい。
【0037】
上部ホルダ171は、
図1に示すZ軸に垂直なXY面における精密な角度調整の後、真空吸着によって被固定部である下部ホルダ172に一時的に保持される。この保持も、吸着による保持であるため、精密に調整された角度位置を乱すことなく上部ホルダ171を保持することができる。このように保持された上部ホルダ171はねじ17cによって下部ホルダ172に強固に固定され、その後、真空吸着は解除される。ねじ17cによる固定作業中は真空吸着によって上部ホルダ171が下部ホルダ172に保持されているので、固定作業に伴う上部ホルダ171の位置ずれ(例えばねじを締める力による位置ずれ)は抑制される。このような固定方法により、上部ホルダ171は下部ホルダ172に精密かつ強固に固定され、延いてはMLA17がベースプレート12に精密かつ強固に固定されることとなる。ここの例でも吸着用の継ぎ手176および孔175を被固定部である下部ホルダ172側に設けているが、継ぎ手176および孔175を上部ホルダ171側に設ける態様であっても吸着の作用が同様に得られることは当然である。
【0038】
上部ホルダ171の角度調整も精密な調整であるため、調整用の治具が用いられる。
図13は、上部ホルダ171の調整用治具の一例を示す図である。
調整治具50は、上部ホルダ171のアーム177を作業者の操作に従って高精度に押すことができるので、作業者は上部ホルダ171およびMLA17を所望の角度に高精度に合わせることができる。この所望の角度は、
図1に示すステージ21によるワークWの移動方向を基準とした特定の角度である。
なお、XY面内におけるMLA17の位置(即ち下部ホルダ172の位置)については、MLA17に配列されたレンズ素子の数が、DMD15に配列された画素ミラーの数よりも余裕を持って多めの数となっているため、MLA17の角度調整に較べると高精度な位置合わせが求められないので、単にねじとねじ穴とを合わせたらねじ止めによってそのまま固定される。
【0039】
ここで、
図11,12に示したMLAホルダ17bに変えて採用可能な変形例のMLAホルダについて説明する。
図14は、変形例のMLAホルダを示す図である。
この変形例のMLAホルダ117bでは、上部ホルダ171と下部ホルダ172のそれぞれに、固定用の張り出し板178,179が設けられており、それら張り出し板178,179が互いに接着剤60によって固定されることで上部ホルダ171が下部ホルダ172に固定される。接着剤60でも上部ホルダ171は下部ホルダ172に対して十分に強固に固定される。
この変形例の場合、例えば接着剤60を塗布する際の応力などによる上部ホルダ171の位置ずれが抑制され、上部ホルダ171は下部ホルダ172に精密かつ強固に固定されることとなる。
以上で変形例の説明を終了する。
【0040】
次に、MLA17を基準としたDMD15の位置合わせについて説明する。DMD15は、上述したように調整用治具40が用いられて位置調整されるが、その位置調整におけるDMDホルダ15aの所望の位置および角度(即ちDMD15の所望の位置および角度)は、本実施形態の場合、MLA17の位置と角度を基準としており、具体的には、DMD15の各画素ミラーから出た光がMLA17の対応した各レンズ素子に入射する位置と角度である。DMD15が所望の位置および角度に位置合わせされていると、DMD15の各画素ミラーから出た光は、対応した各レンズ素子を経由して最終的には露光ヘッド11の光照射位置で点状に結像される。しかし、DMD15の位置および角度が所望の位置および角度からずれていると、クロストークと称される余分な光点が生じてしまい露光精度が低下する。そこで、DMD15は、そのようなクロストークの発生状態がカメラとモニタによって確認されながら、クロストークの発生が減るように位置調整される。
【0041】
図15は、クロストークの発生パターンと調整方向との関係を表す図である。
この
図15には、正常に結像された光点が斜線を付して示され、クロストークの光点が白抜きで示されている。また、この
図15には、DMD15のX方向位置が所望の位置からずれているパターン1と、DMD15のY方向位置が所望の位置からずれているパターン2と、DMD15の角度が所望の角度からずれているパターン3が示されている。いずれのパターンにおいてもDMD15は、正常に結像された光点の方へとクロストークの光点が、図に示す矢印のように近づく方向へと、
図9に示した調整治具を使って位置調整される。
このような位置調整によってDMD15がMLA17に対して精密に位置合わせされ、クロストークの少ない高精度な露光が実現する。