(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5858548
(24)【登録日】2015年12月25日
(45)【発行日】2016年2月10日
(54)【発明の名称】部品実装機
(51)【国際特許分類】
H05K 13/04 20060101AFI20160128BHJP
【FI】
H05K13/04 A
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-172107(P2014-172107)
(22)【出願日】2014年8月26日
(62)【分割の表示】特願2010-39598(P2010-39598)の分割
【原出願日】2010年2月25日
(65)【公開番号】特開2014-220535(P2014-220535A)
(43)【公開日】2014年11月20日
【審査請求日】2014年8月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】富士機械製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098420
【弁理士】
【氏名又は名称】加古 宗男
(72)【発明者】
【氏名】田中 啓太
(72)【発明者】
【氏名】河口 浩二
(72)【発明者】
【氏名】三浦 慎也
【審査官】
飯星 潤耶
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−204991(JP,A)
【文献】
特開平09−130093(JP,A)
【文献】
特開2007−224957(JP,A)
【文献】
特開平06−283899(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/30,13/00−13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装着ヘッドに保持する吸着ノズルユニットを交換するための少なくとも1つの交換用の吸着ノズルユニットを保管する可動ノズルステーションと、エアシリンダのピストンロッドの往復動により前記可動ノズルステーションを部品吸着・実装動作時の前記吸着ノズルユニットのXY方向の移動範囲とZ方向に重なるノズル交換位置と当該移動範囲とZ方向に重ならない退避位置との間で往復動させる駆動装置とを備え、前記駆動装置は、部品吸着・実装動作時に前記可動ノズルステーションを前記退避位置へ退避させ、前記吸着ノズルユニットの自動交換時に前記可動ノズルステーションを前記ノズル交換位置に移動させるようにした部品実装機であって、
前記駆動装置は、前記エアシリンダのピストンロッドのストローク範囲のうちの該ピストンロッドの引っ込み方向側の所定範囲で該ピストンロッドに突出方向の弾性力を作用させる弾性部材を備えると共に、前記ピストンロッドがその突出方向側の端であるストローク前進端に衝突するときの衝撃を前記エアシリンダ内のエア圧力により緩和するように構成したことを特徴とする部品実装機。
【請求項2】
前記弾性部材は、スプリングであって、前記エアシリンダの外部から前記ピストンロッドに挿着されていることを特徴とする請求項1に記載の部品実装機。
【請求項3】
前記スプリングが前記ピストンロッドにばね力を作用させる範囲では、該スプリングの伸び方向側の端の位置でも該スプリングの長さが自由長よりも短くなり、該スプリングの縮み方向側の端の位置でも該スプリングの縮み量が該スプリング単独の最大縮み量よりも小さくなるように構成されていることを特徴とする請求項2に記載の部品実装機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装着ヘッドに保持する吸着ノズルユニットを交換するための少なくとも1つの交換用の吸着ノズルユニットを保管する可動ノズルステーションを、エアシリンダによってノズル交換位置と退避位置との間で往復動させるように構成した部品実装機に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
エアシリンダを駆動源とする駆動装置は、高速化すると、ピストンロッドのストローク端に衝突する衝撃が大きくなり、騒音や振動が大きくなる問題が発生する。この対策として、特許文献1(特開平8−93718号公報)に示すように、エアシリンダの駆動中にピストンロッドのストローク端付近でピストンロッドを減速させるようにエアシリンダ内のピストン両側の室のエア流量を制御するエア流量制御機構を設けたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−93718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1のように、エアシリンダにエア流量制御機構を設けると、エアシリンダの構成が複雑化してコストアップ幅が大きくなるばかりか、エアシリンダが大型化して省スペース化の要求も満たすことができない。
【0005】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、簡単でコンパクトな構成で、エアシリンダのピストンロッドの移動速度を高速化しながら、ストローク端付近でピストンロッドを減速させてストローク端での衝撃を緩和できる駆動装置を用いて可動ノズルステーションを駆動できる部品実装機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、装着ヘッドに保持する吸着ノズルユニットを交換するための少なくとも1つの交換用の吸着ノズルユニットを保管する可動ノズルステーションと、エアシリンダのピストンロッドの往復動により前記可動ノズルステーションを
部品吸着・実装動作時の前記吸着ノズルユニットのXY方向の移動範囲とZ方向に重なるノズル交換位置と
当該移動範囲とZ方向に重ならない退避位置との間で往復動させる駆動装置とを備え
、前記駆動装置は、部品吸着・実装動作時に前記可動ノズルステーションを前記退避位置へ退避させ、前記吸着ノズルユニットの自動交換時に前記可動ノズルステーションを前記ノズル交換位置に移動させるようにした部品実装機であって、前記駆動装置は、前記エアシリンダのピストンロッドのストローク範囲のうちの該ピストンロッドの引っ込み方向側の所定範囲で該ピストンロッドに突出方向の弾性力を作用させる弾性部材を備えると共に、前記ピストンロッドがその突出方向側の端であるストローク前進端に衝突するときの衝撃を前記エアシリンダ内のエア圧力により緩和するように構成したことを特徴とするものである。
【0007】
この構成では、エアシリンダのピストンロッドをストローク後進端から突出させる方向に駆動する場合は、ピストンロッドのストローク範囲のうちの駆動開始から所定範囲は、弾性部材によってピストンロッドに突出方向の弾性力が作用するため、弾性部材が無い従来構成と比べてピストンロッドの突出速度が弾性部材の補助によって高速化される。これにより、エアシリンダ内でピストンが加速されることで一時的にエアシリンダ内のピストン後側のエア圧力が低下し、弾性部材の弾性力がピストンロッドに作用しなくなった段階でエアシリンダ内のピストン両側のエアの圧力バランスが逆転してエア圧力がピストンに減速方向に作用することで、ピストンロッドの突出速度が減速されてストローク前進端での衝撃が緩和される。
【0008】
反対に、ピストンロッドをストローク前進端から引っ込める方向に駆動する場合は、駆動開始から弾性部材の弾性力作用範囲に到達するまでは、ピストンロッドに弾性部材の弾性力が作用せずに駆動され、ピストンロッドが弾性部材の弾性力作用範囲に到達した段階で弾性部材の弾性力によりピストンロッドの引っ込み速度が減速されてストローク後進端での衝撃が緩和される。
【0009】
このように、本発明は、弾性部材を設けるだけの簡単でコンパクトな構成で、エアシリンダのピストンロッドの移動速度を高速化しながら、前後両側(突出方向側及び引っ込み方向側)のストローク端付近でピストンロッドを減速させて前後両側のストローク端での衝撃を緩和することができる。
【0010】
この場合、弾性部材をエアシリンダ内に設けた構成も考えられるが、請求項2のように、弾性部材としてスプリングを用いて、該スプリングをエアシリンダの外部からピストンロッドに挿着した構成とすれば良い。このようにすれば、従来構造のエアシリンダに対しても、後付けでスプリングをエアシリンダに組み付けることが可能となり、本発明を低コストの改造で実施できる。
【0011】
ところで、スプリングが自由長(無負荷状態でスプリングが伸びきった長さ)まで伸びたり、線間密着状態(スプリングのコイル同志が密着した状態)まで圧縮されたりすることが何回も繰り返されると、スプリングの機械的特性が劣化しやすい。
【0012】
この対策として、請求項3のように、スプリングがピストンロッドにばね力を作用させる範囲では、該スプリングの伸び方向側の端の位置でも該スプリングの長さが自由長よりも短くなり、該スプリングの縮み方向側の端の位置でも該スプリングの縮み量が該スプリング単独の最大縮み量(線間密着状態になるまでの縮み量)よりも小さくなるように構成すると良い。この構成では、スプリングが自由長まで伸びたり、線間密着状態まで圧縮されたりすることを防止できて、スプリングの寿命を延ばすことができ、長期間にわたって安定した衝撃緩和性能を維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は本発明の一実施例における駆動装置のピストンロッドが突出した状態を示す側面図である。
【
図2】
図2は駆動装置のピストンロッドが引っ込んだ状態を示す側面図である。
【
図3】
図3は駆動装置のスプリングの伸びを規制するストッパ構造を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態を具体化した一実施例を説明する。
まず、
図1に基づいて駆動装置10の構成を説明する。
部品実装機の支持台11上にエアシリンダ12が取り付けられ、このエアシリンダ12のピストンロッド13の先端に、連結具14を介して可動ノズルステーション15が連結されている。可動ノズルステーション15は、例えば特願2009−261445の明細書に記載され構成であり、該可動ノズルステーション15は、部品実装機の部品吸着・実装動作時の吸着ノズルユニットの
XY方向の移動範囲とZ方向に重なる位置に配置され、少なくとも1つの交換用の吸着ノズルユニットを保管できるように構成されている。部品吸着・実装動作時に、エアシリンダ12のピストンロッド13をストローク後進端まで引っ込めて、可動ノズルステーション15を吸着ノズルユニットの
XY方向の移動範囲と
Z方向に重なるノズル交換位置から当該移動範囲
とZ方向に重ならない退避位置へ退避させ、吸着ノズルユニットの自動交換時に、エアシリンダ12のピストンロッド13をストローク前進端まで突出させて可動ノズルステーション15をノズル交換位置に移動させる。
【0015】
上述したようなエアシリンダ12を駆動源とする駆動装置10は、高速化すると、ピストンロッド13のストローク端に衝突する衝撃が大きくなり、騒音や振動が大きくなる問題が発生する。
【0016】
そこで、本実施例では、エアシリンダ12のピストンロッド13のストローク端に衝突する衝撃を緩和する手段として、ピストンロッド13のストローク範囲のうちの該ピストンロッド13の引っ込み方向側の所定範囲でピストンロッド13に突出方向の弾性力を作用させるスプリング16(弾性部材)をピストンロッド13に挿着した構成としている。
【0017】
この場合、スプリング16が自由長(無負荷状態でスプリング16が伸びきった長さ)まで伸びたり、線間密着状態(スプリング16のコイル同志が密着した状態)まで圧縮されたりすることが何回も繰り返されると、スプリング16の機械的特性が劣化しやすい。
【0018】
そこで、本実施例では、スプリング16がピストンロッド13にばね力を作用させる範囲では、該スプリング16の伸び方向側の端の位置でも該スプリング16の長さが自由長よりも短くなり、該スプリング16の縮み方向側の端の位置でも該スプリング16の縮み量が該スプリング16単独の最大縮み量(線間密着状態になるまでの縮み量)よりも小さくなるように構成されている。これにより、スプリング16単独の最大縮み量に対して例えば20%〜80%の範囲でスプリング16が伸縮するように構成されている。
【0019】
具体的には、支持台11上に、スプリング16の伸び方向側の端の位置を規制する凹形状のストッパ17(
図3参照)を設けると共に、スプリング16の先端には、凹形状のストッパ17と係止する長円形状の係止プレート18を取り付け、この係止プレート18の中心部に形成された挿通孔にピストンロッド13を移動自在に挿通している。
【0020】
図1に示すように、ピストンロッド13が突出方向側の端(ストローク前進端)に位置する状態では、スプリング16先端の係止プレート18の両端部が凹形状のストッパ17の両側部分に当接して(
図3参照)、スプリング16が自由長より短い長さで伸びが止められた状態となる。一方、
図2に示すように、ピストンロッド13が引っ込み方向側の端(ストローク後進端)に位置する状態では、ピストンロッド13先端の連結具14が係止プレート18を押し込んでスプリング16をそれ単独の最大縮み量の例えば80%程度まで圧縮した状態となる。
【0021】
以上のように構成した駆動装置10では、エアシリンダ12のピストンロッド13をストローク後進端から突出させる方向に駆動する場合は、駆動開始からスプリング16先端の係止プレート18がストッパ17に当接するまでの範囲では、スプリング16によってピストンロッド13に突出方向のばね力が作用するため、スプリング16が無い従来構成と比べてピストンロッド13の突出速度がスプリング16の補助によって高速化される。これにより、エアシリンダ12内でピストンが加速されることで一時的にエアシリンダ12内のピストン後側のエア圧力が低下し、スプリング16先端の係止プレート18がストッパ17に当接してスプリング16の伸びが止められて、スプリング16のばね力がピストンロッド13に作用しなくなった段階で、エアシリンダ12内のピストン両側の圧力バランスが逆転してエア圧力がピストンに減速方向に作用することで、ピストンロッド13の突出速度が減速されてストローク前進端での衝撃が緩和される。
【0022】
反対に、ピストンロッド13をストローク前進端から引っ込める方向に駆動する場合は、駆動開始からピストンロッド13先端の連結具14がスプリング16先端の係止プレート18に当接するまでの範囲では、ピストンロッド13にスプリング16のばね力が作用せずに駆動され、ピストンロッド13先端の連結具14がスプリング16先端の係止プレート18に当接した段階でスプリング16のばね力によりピストンロッド13の引っ込み速度が減速されてストローク後進端での衝撃が緩和される。
【0023】
以上説明した本実施例によれば、エアシリンダ12の外部からスプリング16をピストンロッド13に挿着するだけの簡単でコンパクトな構成で、エアシリンダ12のピストンロッド13の移動速度を高速化しながら、前後両側(突出方向側及び引っ込み方向側)のストローク端付近でピストンロッド13を減速させて前後両側のストローク端での衝撃を緩和することができる。しかも、従来構造のエアシリンダに対しても、ストローク端での衝撃緩和機能を後付けで低コストの改造で実施することができる。
【0024】
しかも、本実施例では、スプリング16がピストンロッド13にばね力を作用させる範囲では、該スプリング16の伸び方向側の端の位置でも該スプリング16の長さが自由長よりも短くなり、該スプリング16の縮み方向側の端の位置でも該スプリング16の縮み量が該スプリング16単独の最大縮み量よりも小さくなるように構成しているため、スプリング16が自由長まで伸びたり、線間密着状態まで圧縮されたりすることを防止できて、スプリング16の寿命を延ばすことができ、長期間にわたって安定した衝撃緩和性能を維持することができる。
但し、本発明は、ストッパ17を省略してスプリング16を自由長まで伸ばす構成としても良く、この場合でも、本発明の所期の目的は十分に達成できる。
【0025】
また、本発明は、スプリング16によってピストンロッド13に突出方向の弾性力を作用させる構成に限定されず、ゴム等の他の弾性部材によってピストンロッド13に突出方向の弾性力を作用させる構成としても良い。また、スプリング16(弾性部材)の装着構造や伸縮量を制限する構成を適宜変更しても良い。
【符号の説明】
【0026】
10…駆動装置、11…支持台、12…エアシリンダ、13…ピストンロッド、14…連結具、15…可動ノズルステーション、16…スプリング(弾性部材)、17…ストッパ、18…係止プレート